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【発明の名称】 ディーゼルエンジン用燃料を製造する方法
【発明者】 【氏名】山下 邦彦

【要約】 【課題】動物油および/または植物油とを原料として、酸価が低いディーゼルエンジン用燃料を製造する方法を提供する。

【構成】水と動物油および/または植物油とを、温度150〜400℃、圧力0.5〜45MPaで加水分解し、得られた加水分解物からグリセリン及び水を除去した反応物を得る第一工程と、この第一反応物と所定のアルコールとを、温度25〜200℃で、カチオン交換樹脂と固−液接触させ、副生する水を逐次除去してエステル化反応を行う第二工程、および、第二工程で得られたエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を得る第三工程とからなる。簡便に酸価の低いディーゼルエンジン用燃料を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と動物油および/または植物油とを、温度150〜400℃、圧力0.5〜45MPaで加水分解し、得られた加水分解物からグリセリンと水とを除去した反応物を得る第一工程、
温度25〜200℃で、前記反応物とROH(Rは、炭素数1〜24の飽和または不飽和の脂肪族基を示す。)で示されるアルコールとをカチオン交換樹脂と固−液接触させ、エステル化反応液に含まれる副生する水を逐次除去してエステル化反応を行う第二工程、および、
第二工程で得られたエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を得る第三工程、
とからなるディーゼルエンジン用燃料の製造方法。
【請求項2】
前記第二工程は、第一工程反応物と前記アルコールとをカチオン交換樹脂と固−液接触させエステル化反応を行う工程と、エステル化反応液に含まれる前記アルコールと水の濃度を低減する工程、および前記アルコールと水の濃度を低減した反応液に新たにアルコールを添加して前記固−液接触によるエステル化反応を行う工程とからなる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記第二工程は、第一工程反応物と前記アルコールとの混合液および/またはエステル化反応液を、カチオン交換樹脂を充填した連設するn個の反応器に順次導入して固−液接触によるエステル化反応を行い、前記反応器内のアルコール蒸気によってエステル化反応液中の副生水をストリッピングして水分濃度を低減した後に各反応器に導入することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応器のエステル化反応液中の水分濃度は、8質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記第二工程は、上記第一工程で得た反応物に含まれる脂肪酸1モルに対して1〜20モルのアルコールを混合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
上記カチオン交換樹脂は、強酸性カチオン交換樹脂である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記動物油が、魚油、牛脂および豚脂からなる群から選択される1種以上であり、前記植物油が、ひまわり油、サフラワー油、桐油、アブラギ油、アマニ油、大豆油、菜種油、綿実油、オリーブ油、椿油、ヤシ油およびパーム油からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記動物油および/または植物油が、下記式(1)で示されるトリグリセリドを含有するものである、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【化1】


【請求項9】
前記第三工程で得た脂肪酸モノエステル化物の酸価が、0.5以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記アルコールが、メタノールである、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記動物油および植物油に含まれるトリグリセリドの合計量に対する水のモル比(水/動物油および植物油)が、3〜500である、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
上記第一工程および/または第二工程で除去した水を、第一工程の加水分解用の水として再使用することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
上記第二工程および/または第三工程で分離したアルコールを、第二工程で再使用することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、動物油および/または植物油を原料としてディーゼルエンジン用燃料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物油や動物油を原料として脂肪酸モノエステル化物を製造し、これをディーゼルエンジン用燃料として使用する試みが行われている。植物油や動物油は、硫黄分の含有率が低いため、ディーゼルエンジン用の燃料として用いた場合に硫黄酸化物(SOX)がほとんど発生せず、しかも、使用済み植物油や動物油の大部分は焼却廃棄処理されているため、資源の有効利用になる。
【0003】
植物や動物由来の油(以下、本発明では油脂を含むものとする。)の主成分は脂肪族トリグリセリドであり、例えば(1)植物油や動物油をアルカリを触媒としてアルコール溶媒中でエステル交換し、対応する脂肪酸モノエステルを製造する方法、(2)触媒を使用せず、植物油や動物油に水を添加して超臨界または亜臨界条件で加水分解し、次いで加水分解物にアルコールを添加して超臨界または亜臨界条件でエステル化し、脂肪酸モノエステルを製造する方法、更に(3)植物油や動物油にアルコールを添加して超臨界または亜臨界条件でエステル交換し、脂肪酸モノエステルを製造する方法がある。しかしながら、植物油や動物油は一般に遊離脂肪酸を含むため、上記(1)の触媒を添加して行う脂肪酸モノエステルの製造方法は、遊離脂肪酸がアルカリと反応して脂肪酸塩などを副生して収率が低下し、触媒や脂肪酸塩の除去のため工程が複雑化するといった問題がある。一方、上記(2)、(3)の方法は、超臨界または亜臨界条件でエステル交換やエステル化するものであり、触媒を使用せず、脂肪酸塩なども副生されず、工程も簡潔で優れている。
【0004】
このような方法として、油脂類を主成分とする油脂原料を加水分解して遊離脂肪酸を生成させる工程と、前記工程で得られた遊離脂肪酸を主成分とする脂肪酸原料と、アルコールとを混合し、アルコールが超臨界となる条件でエステル化反応を行わせて脂肪酸エステルを生成させる工程とからなる脂肪酸エステルの製造方法がある(特許文献1)。該方法によれば、油脂類を主成分とする油脂原料を加水分解して得た遊離脂肪酸にアルコールを反応させてエステル化するため、エステル交換反応よりも効率的に脂肪酸エステルを製造することができるという。
【0005】
また、油脂とアルコールから脂肪酸エステルを製造する方法であって、触媒を添加せず、油脂および/またはアルコールが超臨界状態になる条件で反応させることを特徴とする脂肪酸エステルの製造方法がある(特許文献2)。終了後の反応混合物は、脂肪酸エステル、グリセリン、過剰の未反応アルコールを含み、さらに未反応の原料、その他の不純物を含むこともあり、この反応混合物から、それぞれの用途に必要な純度まで、脂肪酸エステルを精製してもよい、とする。実施例では、大豆油を原料油脂として使用し、該大豆油に10〜400モル倍のアルコールを使用した場合に、転化率100%という結果を得ている。
【0006】
同様に、動物油または植物油を、超臨界状態または亜臨界状態のアルコールを溶媒として用いて無触媒下に処理し、選択的かつ短時間のうちに、溶媒として使用したアルコールに対応する脂肪酸モノエステル化物を得る方法もある(特許文献3)。該公報では、遊離の脂肪酸はエステル化反応によりそれぞれモノエステル化物に変換できるため、脂肪酸トリグリセリドのみならず遊離脂肪酸を含む植物油や動物油もそのモノエステル化物に効率よく変換され、従来法では、分離が必要である遊離脂肪酸も、超臨界状態または亜臨界状態のアルコールにより同時かつ効果的に脂肪酸モノエステル化物に変換できる、という。
【特許文献1】特開2004−263011号公報
【特許文献2】特開2000−143586号公報
【特許文献3】特開2000−204392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の方法は、油脂類を主成分とする油脂原料を加水分解する際に、触媒や乳化剤を使用するため工程が複雑となる。また、超臨界条件でエステル化反応を行った後の反応液から、蒸留によってアルコール、水、グリセリンおよび高沸点不純物などを分離して脂肪酸エステルを単離しているが、これはエステル化反応液に副生水が含まれていることを意味するものであり、副生水によってエステル化物が加水分解されるため、反応液中のエステル化反応率が低いものと推定される。また、高沸点物質は超臨界条件でエステル化反応を行う場合に発生しやすく、粘度の低いディーゼルエンジン用燃料を製造するには精製工程が必要となる。これは、終了後の反応混合物からそれぞれの用途に必要な純度まで脂肪酸エステルを精製してもよいとする特許文献2においても同様である。
【0008】
また、上記特許文献3記載の方法で得られた脂肪酸モノエステル化物画分は、欧州やアメリカ規格で定められているバイオディーゼルエンジン用燃料の酸価基準を満たさず、酸価0.5を超える場合がある。エステル交換反応では、動物油などに含まれるトリグリセリドが直接アルコールと反応して脂肪酸モノエステル化物を生成するが、同時に水が存在するとトリグリセリドが加水分解して脂肪酸になり、脂肪酸のエステル化によって水を副生する。このため、脂肪酸とアルコールとから脂肪酸モノエステル化物が生成される反応平衡が、水の存在によって逆反応側に移行する。この傾向は温度が高いほど大きくなり、超臨界条件などではことさらである。酸価を下げるには、反応液中の水分を十分下げることが重要な要素となるが、脂肪酸を含む油脂類を原料にすると水を副生するため、酸価0.5以下を達成することは非常に難しい。原料に水分が含まれる場合も同様である。
【0009】
一方、原料に含まれる遊離の脂肪酸や水分など、酸価を増加させ得る原因物質を除去すればよいが、原料油である大量の動物油や植物油から遊離の脂肪酸を除去することは容易でなく、このような前処理は、廃油のリサイクル効率を低下させる一因となる。
【0010】
更に、上記特許文献2のように、転化率を100%とするために、アルコールを原料油脂の400モル倍も使用したのでは、装置や設備が巨大となる。
【0011】
本発明は、こうした状況のもとになされたものであって、その目的は、従来技術における不都合を発生させず、植物油や動物油、さらには使用済天ぷら油などの廃食用油をディーゼルエンジン用燃料として満足できる脂肪酸モノエステル化物に効率良く変換する技術を提供することにある。すなわち、本発明は、低粘度、高揮発性で、悪臭がなく、黒煙やSOX成分の排出の少ない、しかも酸価0.5以下のディーゼルエンジン用燃料を、容易かつ効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
植物油や動物油に含まれる脂肪酸トリグリセリドから脂肪酸モノエステル化物を得る方法について詳細に検討した結果、触媒を使用することなくいわゆる亜臨界状態で脂肪酸トリグリセリドを加水分解できることを見出し、および、この加水分解物から水とグリセリンとを除去して得た反応液とアルコールとをカチオン交換樹脂と固−液接触させ、副生する水を除去しつつエステル化すると、使用するアルコール量が少なくても効率的に脱水およびエステル化反応を行うことができ、このエステル化反応液から酸価の低いディーゼルエンジン用燃料を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
また、該方法によれば、原料に遊離脂肪酸や水分が含まれていてもよいため、広範囲の植物油や動物油を原料として使用することができ、しかも脂肪酸モノエステル化物の収率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、脂肪酸とアルコールとカチオン交換樹脂と固−液接触によりエステル化反応を行い、副生水を除去しつつエステル化するため、反応時間が短くてもエステル化率が向上する。
【0015】
本発明は、エステル化反応が超臨界条件よりも低温かつ低圧力条件で行われるため、高沸点物質などの副生物の発生を抑制することができ、簡便な工程で低粘度のディーゼルエンジン用燃料を製造することができる。また、従来のアルカリ触媒を用いる均一系反応では製品品質確保のために触媒残渣やケン化物を除去すべく大量の水による水洗をしたり、活性白土による精製など複雑な後処理が必要であったが、本発明は、不均一系の固−液接触反応のため固液分離が容易であり、エステル化物の精製が簡単である。
【0016】
本発明は、油脂類の加水分解を無触媒で行うものであり、酸化亜鉛などの金属酸化物触媒を使用する不均一系触媒反応方式と相違して、後処理として複雑な触媒除去操作が必要でなく、このため高純度のグリセリンを回収することができる。
【0017】
本発明によれば、原料に含まれる遊離脂肪酸の含有量や水分量に係わらず脂肪酸モノエステル化物を製造することができるため、製造方法が簡便で廃油などのリサイクル効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、水と動物油および/または植物油とを、温度150〜400℃、圧力0.5〜45MPaで加水分解し、得られた加水分解物からグリセリンと水とを除去した反応物を得る第一工程、
温度25〜200℃で、前記反応物とROH(Rは、炭素数1〜24の飽和または不飽和の脂肪族基を示す。)で示されるアルコールとをカチオン交換樹脂と固−液接触させ、エステル化反応液に含まれる副生する水を逐次除去してエステル化反応を行う第二工程、および、
第二工程で得られたエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を得る第三工程、
とからなるディーゼルエンジン用燃料の製造方法である。
【0019】
脂肪酸とアルコールとを反応させると、対応する脂肪酸モノエステル化物と副生水とを生成し、この副生水によって脂肪酸モノエステル化物が加水分解して遊離脂肪酸となるが、上記第二工程において脂肪酸とアルコールとをカチオン交換樹脂と所定温度で固−液接触させ、副生水を逐次除去しながらエステル化すると、使用するアルコール量が少なくても効率的にエステル化でき、かつエステル化反応時間を短縮し得ると共に酸価を低減することができる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
(1)原料
本発明において、「動物油」とは、動物由来の油であり、油脂を含む概念である。本発明で使用できる動物油としては、イワシ油、サバ油、ニシン油、サンマ油、マグロ油、タラ肝油など魚類の体から得られる魚油;ラード脂、ニワトリ脂、バター脂、牛脂、牛骨脂、鹿脂、イルカ脂、馬脂、豚脂、骨油、羊脂、牛脚油、ネズミイルカ油、サメ油、マッコウクジラ油、鯨油などがあり、魚油、牛脂および豚脂からなる群から選択される1以上の油であることが好ましく、これらの油が複数混合したもの、ジグリセリドやモノグリセリドを含む油脂、一部、酸化、還元等の変性を起こした油でもよい。
【0021】
また、本発明において、「植物油」とは、植物由来の油であり、油脂を含む概念である。本発明で使用できる植物油としては、ココアバター脂、トウモロコシ油、ラッカセイ油、棉実油、ダイズ油、ヤシ油、オリーブ油、サフラワー油、アブラギ油、アマニ油、ココナッツ油、カシ油、アーモンド油、アンズの仁油、ヒマシ油、大風子油、シナ脂、綿実油、綿実ステアリン、ゴマ油、パーム油、パーム核油、コメ油、カポック油などがあげられ、より好ましくは、ひまわり油、サフラワー油、桐油、アマニ油、大豆油、菜種油、綿実油、オリーブ油、椿油、ヤシ油およびパーム油から選択される1種以上であるが、これらには限定されない。また、これらの油が複数混合したもの、ジグリセリドやモノグリセリドを含む油脂、一部、酸化、還元等の変性を起こした油でもよい。
【0022】
上記動物油や植物油は、原料動物や植物から直接採取したものであってもよいが、食用油などとして使用した後、廃棄されたものであってもよい。これらには、下記式(1)で示されるトリグリセリドが主成分として含まれるため、エステル交換によって脂肪酸モノエステル化物を効率的に製造することができるからである。
【0023】
【化1】


上記トリグリセリドに含まれるR1、R2およびR3の置換基としては、水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基などがあり、上記トリグリセリドに含まれる脂肪族基としては、原料の動物種や植物種によって適宜選択することができる。
【0024】
上記動物油や植物油には、遊離脂肪酸や水分が含まれていてもよい。後記する第二工程によって水分濃度を低下させ、酸価を低減できるからである。なお、一般には、動物や植物から採取した動物油や植物油、または食用等に使用された後の廃動物油や廃植物油には、1〜5質量%の遊離脂肪酸および0〜50質量%の水分が含まれている。食用油精製工程から副生するダーク油では、50〜100質量%の遊離脂肪酸を含有している。本発明では、このような原料から遊離脂肪酸や水分を除去することなく、脂肪酸モノエステル化物を効率的に製造することができる。なお、本発明では、上記動物油および/または植物油に加えて、更に、これらが加水分解されて得た脂肪酸が原料に含まれていてもよい。このような脂肪酸としては、R4COOH(R4は、置換基を有していてもよい、炭素数6〜24の飽和または不飽和の脂肪族基である。)で示される。
【0025】
本発明で使用するアルコールは、ROH(Rは、炭素数1〜24の飽和または不飽和の脂肪族基を示す。)で示され、Rのうち炭素数1から24の飽和または不飽和の脂肪族基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基などがあげられる。
【0026】
Rがアルキル基であるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノールなどが例示される。
【0027】
Rがアラルキル基であるアルコールとしてはベンジルアルコール、α−フェネチルアルコール、β−フェネチルアルコールが例示され、ベンジルアルコールが好ましい。
【0028】
Rがアルケニル基であるアルコールとしては、アリルアルコール、1−メチルアリルアルコール、2−メチルアリルアルコール、3−ブテン−1−オ−ル、3−ブテン−2−オ−ルなどが例示され、アリルアルコールが好ましい。
【0029】
Rがアルキニル基であるアルコールとしては、2−プロピン−1−オール、2−ブチン−1−オ−ル、3−ブチン−1−オ−ル、3−ブチン−2−オ−ルなどが例示される。
【0030】
この中で、アルコールとしては、Rが炭素数1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコールである。より好ましくはメタノール、エタノールであり、さらに好ましくはメタノールである。アルコールは、単独でも、二種以上を混合して用いても良い。また、アルコールは、光学異性体が存在する場合には、光学異性体を含んでもよい。
【0031】
(2)第一工程
本発明では、水と動物油および/または植物油とを、温度150〜400℃、より好ましくは170〜350℃、特に好ましくは180〜350℃、圧力0.5〜45MPa、より好ましくは1〜40MPa、特に好ましくは2〜30MPaで反応させる。より好ましくは、これらの条件の中で、水の亜臨界または超臨界条件で加水分解することである。400℃を超える温度では、植物油や動物油の熱分解が著しくなり、製品の収率が低下する場合がある。また、反応圧力が45MPaを越えても製品の収率や反応時間の改善はみられない。なお、本明細書において、亜臨界とは臨界温度をTc、臨界圧力をPcで示し、反応時の圧力、温度をそれぞれP、Tとしたときに、0.5Pc<P<Pc、0.5Tc<Tの状態、または0.5Pc<P、0.5Tc<T<Tcの状態をいう。
【0032】
反応時間は、上記動物油および/または植物油に含まれる脂肪酸トリグリセリドが、上記水によって加水分解するに足る時間である。一般には、反応時間は反応条件に応じて1分から10時間、より好ましくは3分〜5時間である。
【0033】
また、水の配合量としては、理論的には動物油や植物油に含まれるトリグリセリド1モルに対し、3モルの水と反応させると、1モルのグリセリンと3モルの対応する脂肪酸が生成する。しかしながら本発明では、動物油および植物油の合計量に含まれるトリグリセリド1モルに対し、3〜500モル、より好ましくは6〜400モル、特に好ましくは15〜300モルの水を添加する。未反応の動物油および/または植物油や、ジグリセリド、モノグリセリドは、第二工程以降で加水分解されにくいため含まれていないことが望ましいが、上記範囲で効率的に、加水分解し遊離脂肪酸を得ることができる。3モルを下回ると加水分解反応が不十分となり、一方、500モルを超えると反応装置が巨大化して不経済である。また、1モルのトリグリセリドから3モルの脂肪酸が遊離するため、原料に脂肪酸が含まれる場合には、その脂肪酸含有量に対して上記水のモル数を減じればよい。なお、得られた加水分解物には、遊離脂肪酸、水およびグリセリンが含まれる。
【0034】
本発明では、加水分解物からグリセリン及び水を除去する方法に限定はなく、いずれの方法でもよい。例えば、上記加水分解物を静置すると、水とグリセリンとを主成分とする水溶性層と、遊離脂肪酸を主成分とする油性層との二層に分離される。この場合には、水溶性層を除去すればよい。
【0035】
なお、水溶性層を蒸留すると、水とグリセリンとを分離することができる。このように、本発明では、前記第一工程の加水分解物を静置分離により水とグリセリンとを含む水溶性層を得て、該水溶性層からグリセリンを回収することができる。アルカリ触媒を使用してエステル交換を行う場合には、生成したグリセリンが触媒と水を含むメタノール層に溶解するため、グリセリンのみの回収が困難であるが、本発明によれば、上記方法によって高純度でグリセリンを回収することができる。なお、本発明では、この工程で得られた水を加水分解用の水に再使用することができ、これによって廃水量を低減することができる。
【0036】
本発明の第一工程は、上記加水分解工程と、得られた加水分解物からグリセリンと水とを除去する工程とを連続式で行っても、バッチ式で行ってもよい。この工程を実施する装置の形式も特に規定せず、加水分解反応を行う反応器に、加水分解物からグリセリンと水とを除去する分離器を連設させた装置が例示できる。したがって、バッチ式反応器、連続式槽型反応器、ピストンフロー型流通式反応器、塔型流通式反応器などを使用することができる。なお、反応器は一基に限定されず、複数を連設するものであってもよい。また、上記水と動物油および/または植物油との接触方法は、水と動物油および/または植物油を同方向に流して接触させる並流接触であっても、上記水と動物油および/または植物油を逆方向に流して接触させる、向流接触であってもよい。特に、動物油および/または植物油を加水分解反応して脂肪酸とグリセリンとを生成する反応は平衡が存在するが、向流接触反応器を使用し、反応の進行にしたがって生成するグリセリンを除去すれば、グリセリン濃度を低減させ、加水分解を効率的に進行することができる。このような向流接触反応器として、コルゲート・エメリー法反応器などがある。
【0037】
(3)第二工程
ついで、上記した加水分解物からグリセリンと水とを除去した第一工程反応物と上記ROHで示されるアルコールとを、温度25〜200℃で、カチオン交換樹脂と固−液接触させ、副生する水を逐次除去してエステル化反応を行う。カチオン交換樹脂はエステル化の触媒作用を発揮し、副生水の逐次除去と相まって、エステル化反応時間を短縮することができる。
【0038】
このように使用するカチオン交換樹脂としては、官能基にスルフォン酸基(R−SO3−H+)を持つもの強酸性カチオン交換樹脂や、官能基としてカルボン酸基、スルホン酸基、フォスフィン酸基、フェノキシド基、亜ヒ酸基などを有する弱酸性カチオン交換樹脂がある。本発明では、脂肪酸モノエステル画分に含まれる脂肪酸をエステル化できるものであるならばいずれの樹脂でもよい。好ましくは、pK値(25℃)が0〜7、より好ましくは0〜5である。なかでも、官能基にスルフォン酸基(R−SO3−H+)を持つもの強酸性カチオン交換樹脂が好ましい。また本発明では、スチレン系架橋重合体または(メタ)アクリル酸エステル系架橋重合体からなるカチオン交換樹脂を用いることが好ましい。スチレン系架橋重合体としては、例えばスチレン−ジビニルベンゼン(以下、DVBと略す。)の架橋重合体などが挙げられる。その樹脂構造は、スチレンとDVBを単純に重合してできるゲル型でも良いし、多孔性で樹脂の表面積がゲル型よりもはるかに大きいポーラス型、ハイポーラス型でも良い。本発明では、オルガノ株式会社製の商品名「オルガノアンバーリスト15DRY」、「オルガノアンバーリスト15JS−HG/dry」、「オルガノアンバーリスト35Dry」、「アンバーリスト36Dry」、「アンバーリスト70」などを好適に使用することができる。なお、カチオン交換樹脂は、固定床として使用してもよく、撹拌懸濁させて使用してもよい。
【0039】
エステル化の際の反応温度は、温度25〜200℃、より好ましくは30〜160℃、特に好ましくは35〜140℃である。エステル化自体は、200℃を超えても可能であるが、これを超えるとカチオン交換樹脂が劣化する場合がある。一方、25℃を下回ると反応時間が長くなり、不利である。また、反応圧には制限はないが、第一工程反応物と前記アルコールとが液相で反応するのに必要な量のアルコール液が確保できる圧力である。カチオン交換樹脂などの不均一系触媒を固定床として使用する場合、アルコールを気体で供給する気−液―固接触ではアルコールの上昇ガス流が発生し、均一混合が困難で片流れなどの偏流を生じ易く反応時間を充分に取る必要があり、単位時間の原料反応率が低下する場合がある。本発明では、第一工程反応物とアルコールとをカチオン交換樹脂と固−液接触させることで、短時間にエステル化反応を行うことができる。
【0040】
なお、アルコールをガス状で供給すると、カチオン交換樹脂と接触するアルコール濃度が低くなり、特にエステル化反応が進行して脂肪酸が少ない状況になった場合には、アルコール濃度の低下によって加水分解が進行する場合がある。また、アルコール濃度の低下に伴ってカチオン交換樹脂から官能基が脱離して触媒劣化を早めたり、官能基の混入による品質劣化を起こす場合がある。しかしながら、カチオン交換樹脂との固−液接触によれば、充分な液量が確保され、上記問題を回避することができる。
【0041】
(3−a)態様1
本発明において、上記第一工程反応物に対するアルコールの使用量は、前記第一工程反応物に含まれる脂肪酸1モルに対して、アルコール1〜20モル、好ましくは1.1〜15モル、より好ましくは1.2〜10モルである。なお、後記するように、第二工程では、複数の反応器を使用して逐次水を除去しつつエステル化反応を行い、各反応器に含まれる脂肪酸量も反応器ごとに異なる場合がある。したがって、上記アルコール量は、第二工程における全供給アルコール量とする。本発明は、前記第一工程反応物とアルコールとを液相で混合しカチオン交換樹脂と固−液接触し、副生する水を逐次除去してエステル化するものであるが、上記範囲のアルコールであれば、エステル化反応液に含まれる副生水を効率的にストリッピングなどにより除去することができ、エステル化率を向上させることができる。なお、副生する水の除去とは、必ずしもエステル化反応液に含まれる水分量を0%にする必要はなく、水分濃度が低減する場合も含む。本発明においては、反応器出口の水分濃度は8質量%以下が望ましく、好ましくは6質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
【0042】
本発明の第二工程で使用する装置には特に制限はない。例えば、カチオン交換樹脂を仕込んだ反応器に蒸留塔を連設させた装置が例示できる。本発明の第二工程を実施しうる態様の一例を図1に示す。図1では、カチオン交換樹脂(60)を仕込んだ反応器(50)が蒸留塔(100)に配設され、この反応器(50)に第一工程反応物(10)とアルコール(20)とが導入されてカチオン交換樹脂(60)と固−液接触され、次いで、反応液は蒸留塔(100)の上部に導入される。蒸留塔に導入された反応液は、塔底に設けたリボイラー(30)によって加熱され、塔底液は、逐次前記反応器(50)に循環される。蒸留塔(100)内は、塔下部から上部に向かって水分濃度が高くなるため、蒸留塔の塔底液を抜き出して反応器(50)でエステル化反応を行い、反応液を蒸留塔(100)の上部に還流すれば、より水分量の少ない塔内液を使用してエステル化反応を行うことができる。なお、蒸留塔(100)の塔頂からの留出液は、塔頂に配設した蒸留塔(91)に導入されアルコールと水とに分離され、蒸留塔(91)の塔底から水を抜き出すことで、エステル化反応の副生水を系外に排出することができる。蒸留塔(91)の塔頂から留出したアルコールは第二工程で再使用することができる。この方法では、連続的にエステル化と脱水とを行うことができる。なお、蒸留塔(100)には、図1に示すように棚段または充填物(40)などを設けてもよい。
【0043】
上記態様によれば、蒸留塔(100)によってエステル化反応液に含まれる水が除去されるため、経時的に反応器(50)内の水分量が低減し、エステル化率が向上する。なお、第三工程で使用するエステル化反応液(80)としては、前記蒸留塔(100)において、最も水分量が少ない塔底液(70)を好適に使用することができる。
【0044】
(3−b)態様2
本発明の第二工程では、副生する水を逐次除去してエステル化反応を行うことを特徴とするが、エステル化の進行と脱水とを同時を行う場合に限定されず、エステル化反応の後に副生する水を除去し、再度エステル化反応を行う場合など、エステル化反応と脱水工程とが同時でない場合も含む。したがって、前記第二工程は、第一工程反応物と前記アルコールとをカチオン交換樹脂と固−液接触してエステル化反応を行う工程と、エステル化反応液に含まれる前記アルコールと水との濃度を低減する工程、および前記アルコールと水の濃度を低減した反応液に新たにアルコールを添加して前記固−液接触によるエステル化反応を行う工程とを含み、またはこれを繰り返すものであってもよい。
【0045】
例えば、カチオン交換樹脂を仕込んだ反応器に前記第一工程反応物とアルコールとを供給し、該反応器を所定温度および圧力に制御し、カチオン交換樹脂を懸濁撹拌しつつ固−液接触させてエステル化反応を行わせ、エステル化反応液を蒸留塔に導入してアルコールと水とを塔頂から留出させ、前記反応器に塔底液と新たに添加したアルコールとを導入して再度エステル化反応を行い、これを繰り返す態様などでもよい。なお、カチオン交換樹脂は、反応器に固定床として仕込んでもよい。
【0046】
(3−c)態様3
本発明において、前記第二工程は、第一工程反応物と前記アルコールとのエステル化反応液の少なくとも一部を、カチオン交換樹脂を充填した連設するn個、好ましくは2〜10個の反応器に順次導入して固−液接触によるエステル化反応を行うものであり、前記反応器に導入される反応液は水分濃度を低減した後に各反応器に導入されるものであってもよい。なお、本願明細書において、「カチオン交換樹脂を充填」とは、反応器にカチオン交換樹脂を固定床として仕込む態様、反応器内でカチオン交換樹脂が撹拌される態様、その他、反応器内で第一工程反応物と前記アルコールとがカチオン交換樹脂と固−液接触できるいずれの態様も含むものとする。また、反応器に導入されるエステル化反応液は、少なくともその一部を順次反応器に導入すればよく、必ずしも全量を供給する場合に限定されない。また、水分濃度の低減方法にも限定はなく、減圧蒸留、脱水剤の使用など、いずれであってもよい。第一工程反応物の流れる順に、第一反応器から第n反応器と称すれば、アルコールが第一反応物と並流で反応器に供給する態様の一例を図2に示す。図2では、カチオン交換樹脂(60)を充填した3個の反応器(51、53、55)のそれぞれに蒸留塔(93、95、97)が連設され、第一反応器(51)に第一工程反応物(10)と上記アルコール(20)とを所定モル比で供給してカチオン交換樹脂と固−液接触させエステル化している。第一反応器(51)のエステル化反応液の全量を第一蒸留塔(93)に導入し、塔頂からアルコールと水とを留出させ、得られた第一蒸留塔(93)の塔底液を、前記塔底液に含まれる脂肪酸モノエステル化物に対して所定モル比となるようにアルコールを添加して第二反応器(53)に供給しカチオン交換樹脂と固−液接触させてエステル化する。同様に、第二反応器(53)のエステル化反応液を第二蒸留塔(95)に導入し、塔頂からアルコールと水とを留出させ、第二蒸留塔(95)の塔底部と、前記塔底液に含まれる脂肪酸モノエステル化物に対して前記所定モル比となるアルコールとを第三反応器(55)に供給してカチオン交換樹脂と固−液接触させてエステル化する。同様にして、第三蒸留塔(97)の塔頂からアルコールを留去させると、第三蒸留塔(97)の塔底液(70)を第三工程で使用するエステル化反応液(80)とすることができる。該塔底液(70)から脂肪酸モノエステル化物を回収することができる。なお、第一蒸留塔(93)、第二蒸留塔(95)、第三蒸留塔(97)の塔頂からの留出液にはアルコールと水とが含まれているため、これを第四蒸留塔(91)に導入し、塔頂からアルコールを留出させ、これを第一反応器(51)、第二反応器(53)、第三反応器(55)などに供給して再使用してもよい。なお、副生水は、第四蒸留塔(91)の塔底から抜き出すことで系外に排出することができる。または、第一工程の加水分解用の反応水として使用しても良い。
【0047】
(3−d)態様4
上記態様3と同様に、第一工程反応物と前記アルコールとのエステル化反応液の少なくとも一部をカチオン交換樹脂を充填した連設するn個、好ましくは2〜10個の反応器に順次導入してエステル化反応を行うものであって、アルコールと第一反応物とが向流で反応器に供給される態様の一例を図6に示す。
【0048】
図6では、カチオン交換樹脂(60)を懸濁した3個の攪拌槽型反応器(51、53、55)が連設され、第一反応器(51)へ第一工程反応物(10)が導入され、第一反応器(51)のエステル化反応液は、カチオン交換樹脂分離装置(52)を経て第二反応器(53)に導入され、第二反応器(53)のエステル化反応液は、カチオン交換樹脂分離装置(52)を経て第三反応器(53)に導入される。一方、蒸気状態のアルコールは、第三反応器(55)から導入され、第三反応器(55)の気相部が、第二反応器(53)に導入され、第二反応器(53)の気相部が第一反応器(51)に導入される。これら気相部はアルコールを主成分とし、エステル化反応によって生じた副生水も含まれる。なお、第三反応器(55)に導入される蒸気状態のアルコールおよび前記気相部は、各反応器(51、53、55)に導入される際に、各反応器内の圧力によって液化され、各反応器内では、第一工程反応物とアルコールとがカチオン交換樹脂と固−液接触し、エステル化反応が行なわれる。第一反応器(51)の気相部を蒸留塔(91)に導入し、副生水を前記蒸留塔(91)の塔底から抜き出すことで、逐次系外に排出することができる。このようなn個の反応器を連設した場合、第三工程で使用するエステル化反応液(80)として、第n反応器の反応液を使用することが好ましい。最も水分含有量が少なくエステル化率が高いからである。図6では、第三反応器(55)のエステル化反応液をカチオン交換樹脂分離装置(52)を経て取り出たものが該当する。
【0049】
上記態様は、n個の反応器を連設し、第一工程で得た反応物を第一反応器から第n反応器に向かって供給し、第n反応器から第一反応器に向かってアルコールを供給するものである。これによれば、第n反応器の副生水がより上流の第一反応器に順次移動するため、副生水の濃度が上流に向かって上昇する濃度勾配となり、エステル化反応で副生する水分を第一反応器に集めることができる。上記態様によれば、複数の反応器を使用する場合でも、図6に示すように、例えば第一反応器(51)の反応液を蒸留塔(91)に供給し、塔底から水を塔頂からアルコールを留出させることで、第二工程で発生する副生水を一基の蒸留塔によって逐次除去することができる。上記したように、第一反応器には副生水が集まるため、第一反応器の反応液を脱水することで効率的に脱水することができ、上記操作により、各反応器のエステル化反応の平衡を、エステル生成方向に移動させることができる。なお、各攪拌槽型反応器に配置されたカチオン交換樹脂分離装置(52)としては、静置沈降分離装置やカチオン交換樹脂粒子を通過させないフィルターなど、エステル化反応液とカチオン交換樹脂を分離できるものを広く使用することができる。
【0050】
(3−e)態様5
本発明の第二工程において、カチオン交換樹脂を充填した連設するn個の反応器は、各反応器が直接連設するものであってもよく、脱水装置などを介して連設されるものでもよい。したがって、脱水装置として1の蒸留塔にn個の反応器を接続し、前記蒸留塔を介して水分濃度が順次漸減された後に各反応器へ供給液が導入される態様であってもよい。また、脱水装置として使用される蒸留塔には、更にデミスターや棚段或いは充填物のような気液接触装置、ディストリビュータ、チムニートレイなどが配設されていてもよい。
【0051】
この態様の一例を図3に示す。図3では、n=3とし、蒸留塔(100)にチムニートレイ(44、46)と気液接触装置(47、43、42)が配設され、該蒸留塔(100)にカチオン交換樹脂(60)を充填した反応器(55、57、59)が連設されている。第一工程反応物(10)は第一反応器(55)を経て蒸留塔(100)に供給され、アルコール(20)は、第三反応器(59)を経て蒸留塔(100)に供給される。蒸留塔(100)内では、塔底に設けたリボイラー(30)によって塔内が加熱され塔底液は気体となって塔内を上昇し、気液接触装置(47、43、42)に接触する際に水がストリッピング(脱水)され、蒸留塔(100)の下方から上方に向かって塔内液中の水分量が上昇する濃度勾配が形成される。脱水後の塔内液は、蒸留塔(100)に設けたチムニートレイ(44、46)からそれぞれ抜き出され、その一部が下段の気液接触装置(42、43)上に還流され、大部分は、カチオン交換樹脂(60)を充填した反応器(55、57、59)に導入され、ここで固−液接触によりエステル化反応が行なわれる。なお、得られたエステル化反応液は前記気液接触装置(42、43、47)の上方に還流される。この態様によれば、蒸留塔(100)を介して連設される各反応器(55、57、59)に供給されるエステル化反応液中の水分量は、第一反応器(55)から第三反応器(59)に向かい順次低減されるため、エステル化反応の平衡を、エステル化物生成方向に移行させることができる。このため、反応の進行に伴い、各反応器(55、57、59)に含まれる脂肪酸量を、順次漸減させることができる。
【0052】
上記方法によれば、蒸留塔(100)におけるリボイラー(30)の焚き上げ量を変化することでアルコール(20)の還流量を変えることが出来、各反応器(55、57、59)に導入される第一工程反応物やエステル化反応液に含まれる脂肪酸量に対する前記アルコール量を調整することができる。たとえば、リボイラー(30)負荷を増加させると各反応器内に存在する脂肪酸量に対するアルコール量を、第一反応器から第三反応器に向かい漸増させることが出来、各反応器(55、57、59)におけるエステル化率を漸増することができる。これにより、水分濃度の低減と、残存する脂肪酸に対するアルコール添加量の増減とがあいまって、第三反応器のエステル化反応率を極めて高率に制御することができる。この態様では、最も水分量の少ない第三反応器(59)内の反応液を第三工程のエステル化反応液として好適に使用することができる。
【0053】
なお、塔頂からの留出液は、塔頂に配設した蒸留塔(91)に導入されアルコールと水とに分離され、蒸留塔(91)の塔底から水を抜き出すことでエステル化反応の副生水を逐次系外に排出することができる。なお、蒸留塔(91)の塔頂から留出したアルコールは第二工程で再使用することができる。
【0054】
上記態様において、第三工程で使用するエステル化反応液(80)としては、最も副生水量の少ない、第三反応器(59)からのエステル化反応を使用することが好ましい。
【0055】
(4)第三工程
次いで、第二工程で得たエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を分離する。本発明において、エステル化反応液には、脂肪酸モノエステル化物、アルコールが含まれるが水はほとんど含まれない。このエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を得る方法に限定はなく、いずれの方法でおこなってもよい。例えば、第二工程のエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を分離する方法として、エステル化反応液を蒸留塔に導入し、蒸留条件を選択すれば、塔頂からアルコールと共に水を留出させ、及び塔底から脂肪酸モノエステル化物を回収することができる。なお、本発明では、反応器にカチオン交換樹脂が含まれているため、反応器から反応液を分取する際には、カチオン交換樹脂が系外に排出されない分離手段を設けてもよい。
【0056】
なお、前記したように、第三工程で使用するエステル化反応液は、第二工程における最もエステル化率が高い塔底液や反応液である。第二工程において、水分の除去と同時にアルコールが除去され、この結果、エステル化反応液には、脂肪酸モノエステル化物のみが残存する場合がある。これは、第二工程で得られたエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を得る工程である。したがって、本発明では副生水を逐次除去しつつエステル化するという第二工程と、第二工程で得られたエステル化反応液から脂肪酸モノエステル化物を得るという第三工程とを同時に行うこともできる。
【0057】
(4)ディーゼルエンジン用燃料
本発明のディーゼルエンジン用燃料は、上記第一工程から第三工程によって製造される脂肪酸モノエステル化物からなり、好ましくは酸価0.5以下である。ディーゼルエンジン用燃料として使用するには、酸価が0.5以下であることの他、低粘度、高揮発性で、悪臭がなく、黒煙やSOX成分の排出の少ないことが好ましいが、原料が植物油や動物油であるためSOx成分が少なく、エステル化反応の後に、脂肪酸モノエステル化物画分を単離しているため、悪臭がなく、かつ脂肪酸モノエステル化物は高揮発性であり、ディーゼルエンジン用燃料として好適に使用することができる。本発明のディーゼルエンジン用燃料は、そのまま使用することもでき、従来のディーゼルエンジン用燃料に混合して使用することもできる。
【0058】
特に、脂肪酸を含む動物油や植物油を原料とする場合には、反応液中で水が副生するため脂肪酸モノエステル化物の酸価を下げることは非常に困難であるが、本発明では、第二工程で副生水を逐次除去しつつエステル化反応を行うことでエステル化率を向上させ、遊離脂肪酸の含有量を低減することができ、これによって酸価が低減されたモノエステル化物を製造することができる。
【0059】
本発明によって製造されるディーゼルエンジン用燃料は、地球の循環系に組み込まれたバイオマス資源を原料としたもので、化石資源由来の軽油に比べ環境への負荷の低減に大きく寄与するものである。本発明の製造方法は、調理などに使われた廃食用油などの産業・家庭廃棄物の大量処理技術、特にそれらを有用化合物に選択的かつ効果的に変換する技術としても大いに期待できる。
【実施例】
【0060】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではなく、上記発明の趣旨に即して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0061】
比較例1
図4に示す工程図に従って、植物油として菜種油を用い反応を行った。
【0062】
原料油脂タンクに接続される内径5mm×長さ3.5mの外部電気ヒーター付きステンレス製油脂加熱管から原料油脂を0.565kg/hの流速で供給し、水タンクに接続される内径5mm×長さ10.8mの外部電気ヒーター付きステンレス製水加熱管から水を1.839kg/hの流速で供給した。供給水と油質量比(供給水/油質量比)は3.25であり、水と油とのモル比(供給水/油モル比)は、160であった。両加熱管の末端を集合させ、内径21mm×長さ7.3mの外部電気ヒーター付きステンレス製加水分解反応管内で、温度270℃、圧力20MPaにて30.2分間反応させた。ついで、得られた加水分解物を静置し、水溶性層と油性層とに分離した(第一工程)。この油性層に含まれるトリグリセリド(TG)、ジグリセリド(DG)、モノグリセリド(MG)、グリセリン(G)、脂肪酸(FA)の合計量に対する質量百分率を表1に示す。
【0063】
【表1】


次いで、メタノールで置換した後のカチオン交換樹脂(オルガノ社製、商品名「オルガノアンバーリスト15JS−HG/dry」40mlを仕込んだ500mlのナスフラスコを配設したロータリーエバポレーターを使用し、このナスフラスコに第一工程で得られた油性層100gとメタノール22.7gとを仕込んだ。メタノールと油性層に含まれる脂肪酸とのモル比(供給メタノール/脂肪酸モル比)は2.0であった。電気ヒーター付き温水貯槽の温水を64℃に保ち、ナスフラスコを温水貯槽に浸水し、ロータリーエバポレーターを40rpmで回転し、温度を64℃、圧力は大気圧に保ちながら、ナスフラスコ中のカチオン交換樹脂と油質およびメタノールを攪拌混合しながらエステル化反応を行った。時間経過ごとにサンプリングし、エステル化反応液中のエステル量と水分量とを測定した。その結果を表2に示す。
【0064】
【表2】


実施例1
図5に示す工程図に従って、植物油として菜種油を用い反応を行った。
【0065】
比較例1と同様に操作し、油性層を得た(第一工程)。
【0066】
この油性層を使用し、比較例1と同じ装置を使用し、ナスフラスコに第一工程で得られた油性層100gとメタノール22.7gとを仕込んだ。メタノールと油性層に含まれる脂肪酸とのモル比(供給メタノール/脂肪酸モル比)は2.0であった。電気ヒーター付き温水貯槽の温水を64℃に保ち、ナスフラスコを温水貯槽に浸水し、ロータリーエバポレーターを40rpmで回転し、温度を64℃、圧力は大気圧に保ちながら、ナスフラスコ中のカチオン交換樹脂と油脂およびメタノールとを攪拌混合しながら固−液接触によりエステル化反応を行った。4時間経過時点で、ロータリーエバポレーターを減圧してナスフラスコ中のメタノールと水とを除去する操作を行い、再度メタノールを追添して、メタノールと脂肪酸とのモル比(供給メタノール/脂肪酸モル比)が2.0になるように調整してエステル化反応を行った。このエステル化工程において、時間経過ごとに反応液の一部を取り出し、エステル化反応液中のエステル量および水分量を測定した結果を表3に示す。なお、酸価は4.45であった。
【0067】
【表3】


次いで、上記表3に示すエステル化反応液を得た後、更にロータリーエバポレーターに留めたまま減圧して、ナスフラスコ中のメタノールと水とを除去する操作を行い、次いで、再度メタノールを追添して、メタノールと油とのモル比(供給メタノール/油モル比)が2.0になるように調整し、エステル化を行った(第二工程)。このエステル化工程において、時間経過ごとにサンプリングし、エステル化物量、水分量および酸価を測定した。その結果を表4に示す。
【0068】
【表4】


次いで、ロータリーエバポレーターを減圧してナスフラスコ中のメタノールと水とを除去する操作を行い、脂肪酸モノエステル化物を得た(第三工程)。脂肪酸モノエステル化物の酸価は0.40であり、エステル化率は、99%以上であった。
【0069】
なお、第二工程および第三工程で減圧蒸発により回収したアルコールと水の混合物は、蒸留塔に導入してメタノールと水とに分離し、メタノールを第二工程で再使用した。
実施例2
実施例1の第一工程で得られた油性層を用いてエステル化を実施した。図2に示すプロセスフローと同様にして、実施例2の第二工程と第三工程を行った。
【0070】
内径30mm、高さ70cmのジャケット付反応器を3基連接し、各反応器には、カチオン交換樹脂(オルガノ社製、商品名「オルガノアンバーリスト15JS−HG/dry」をそれぞれ417ml充填し、反応器のジャケット部には110℃の温水を流した。図示しない電気ヒーター付きステンレス製原料タンクから、第一工程で得られた油性層282g/hrとメタノール160g/hrとを110℃に加温して第一反応器(51)に供給した。メタノールと脂肪酸とのモル比は5.0である。反応器内の温度は110℃、圧力は500kPa(abs)に保ちエステル化反応を行った。第一反応器(51)の反応液を110℃で55mmHgに保持された第一蒸留塔(93)に供給して塔頂からメタノールと水を留出させて、メタノールと(脂肪酸+脂肪酸メチルエステル合計)とのモル比が2.0になるように第一蒸留塔(93)の塔底液にメタノールを添加(図示せず)した後、この塔底液を453ml/hの流速で第二反応器(53)に供給した。第二反応器内の温度を110℃、圧力を500kPa(abs)に保ちエステル化反応を行った。第二反応器(53)の反応液を110℃で55mmHgに保持された第二蒸留塔(95)に供給し、該蒸留塔(95)の塔頂からメタノールと水を留出させ、メタノールと(脂肪酸+脂肪酸メチルエステル合計)とのモル比が0.5になるように第二蒸留塔(95)の塔底液にメタノールを添加(図示せず)した。次いで、この塔底液を386ml/hの流速で第三反応器(55)に供給した。第三反応器内の温度を110℃、圧力600kPa(abs)に保ってエステル化反応を行い、ついで第三反応器(55)の反応液を110℃で55mmHgに保持された第三蒸留塔(97)に供給して塔頂からメタノールと水を留出させた(第二工程)。各反応器出口のエステル化率および水濃度を測定した。その結果を表5に示す。
【0071】
【表5】


なお、第一、第二、第三蒸留塔から留出させたメタノールと水の混合液は第四蒸留塔(91)に供給し、該蒸留塔(91)の塔頂からメタノールを留出させ、第一、第二、第三反応器に供給するメタノールとして循環させた。
【0072】
次いで、第三蒸留塔(97)の塔底から脂肪酸モノエステル化物を抜き出した(第三工程)。この脂肪酸モノエステル化物の酸価は0.2であり、エステル化率は、99.9%であった。
実施例3
実施例1の第一工程で得られた油性層を用い、図3に準じて第二工程と第三工程を行った。
【0073】
反応器(55、57、59)を三基結合し、塔内にチムニートレイ(44、46)と気液接触装置(42、43、47)とを配設した、内径80mm、高さ4mの蒸留塔(100)を使用した。前記反応器(55、57、59)は、内径60mm、高さ75cmのジャケット付反応器であり、カチオン交換樹脂(オルガノ社製、商品名「オルガノアンバーリスト15JS−HG/dry」を2000ml充填した。
【0074】
図示しない電気ヒーター付き原料タンクに第一工程で得られた油性層を仕込み、原料タンクで90℃に加温した後、282g/hrの流速で第一反応器(55)に供給した。また、メタノールを温度90℃に加温した後、240g/hrの流速で第三反応器(59)に供給した。なお、各反応器(55、57、59)は、温度90℃、圧力600kPa(abs)に保った。蒸留塔(100)は大気圧に保持した。第一チムニートレイ(46)から抜き出した塔内液を、原料タンクの油性層282g/hr共に第一反応器(55)に導入して固−液接触によりエステル化反応を行い、得られたエステル化反応液を、前記第一気液接触装置(47)の上部に供給した。前記第一チムニートレイ(46)から抜き出した塔内液の一部を第二チムニートレイ(44)の上部へ還流させた。これにより、前記第一チムニートレイ(46)が保持する塔内液面が一定になるように調節される。同様にして、第二チムニートレイ(44)から抜き出した塔内液を第二反応器(57)に導入して固−液接触によりエステル化反応を行い、得られたエステル化反応液を前記第二気液接触装置(43)の上部に供給した。前記第二チムニートレイ(44)から抜き出した塔内液の一部を第三気液接触装置(42)の上部へ還流させた。これにより、前記第二チムニートレイ(44)が保持する塔内液面が一定になるように調節される。一方、塔底液を第三反応器(59)に導入して固−液接触によりエステル化反応を行い、得られたエステル化反応液を前記第三チムニートレイ(42)の上部に供給した。第三反応器(59)で得られたエステル反応液の一部は第三工程へ抜き出される。なお、これにより前記塔底液の液面高さが一定になるように調節される。
【0075】
なお、蒸留塔(100)のリボイラー(30)の焚き上げ負荷を調整して、還流量を調整し、第一反応器(55)出口のメタノールと脂肪酸とのモル比が0.6に、第二反応器(57)出口におけるメタノールと(脂肪酸+脂肪酸メチルエステル合計)とのモル比が0.6に、第三反応器(59)出口におけるメタノールと(脂肪酸+脂肪酸メチルエステル合計)とのモル比が1.0になるように調整した(第二工程)。なお、蒸留塔(100)の塔頂より留出したメタノールと水とは水/メタノール分離用蒸留塔(91)に供給し、この蒸留塔(91)の塔頂から留出させ、第三反応器(55)に供給するメタノールとして循環させた。時間経過ごとにサンプリングし、各反応器出口のエステル化率および水濃度を測定した。その結果を表6に示す。
【0076】
【表6】


第三反応器(55)の反応液を図示しない第二蒸留塔に導入し、メタノールと水を留出させた(第三工程)。第二蒸留塔の塔底から抜き出した脂肪酸モノエステル化物の酸価は0.43であり、エステル化率は、99.0%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、水や脂肪酸が含まれる油脂原料を使用して、エステル化率を向上させ、かつ酸価の低いディーゼルエンジン用燃料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】蒸留塔を用いて第一工程反応物とアルコールとを接触させ、カチオン交換樹脂を充填した反応器に塔内液を導入してエステル化反応を行う態様の装置を示す図である。
【図2】複数の反応器と複数の蒸留塔とを用いて、第一工程反応液とアルコールとを並流で固−液接触させ、逐次脱水しつつエステル化反応を行う際の装置を示す図である。
【図3】気液接触装置を配設した蒸留塔を使用して、第一工程反応物とアルコールとを固−液接触させ、カチオン交換樹脂を充填した反応器に塔内液を導入してエステル化反応を行う態様の装置を示す図である。
【図4】比較例1のディーゼルエンジン用燃料の製造工程を示す図である。
【図5】実施例1のディーゼルエンジン用燃料の製造工程を示す図である。
【図6】複数の懸濁攪拌槽型反応器と一基の蒸留塔とを用いて、第一工程反応液とアルコールとを向流で固−液接触させ、逐次脱水しつつエステル化反応を行う際の装置を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10・・・第一工程反応液、
20・・・アルコール、
30・・・リボイラー、
40・・・棚段、
52・・・カチオン交換樹脂分離装置、
50、51、53、55、57、59・・・反応器、
60・・・カチオン交換樹脂、
70・・・塔底液、
80・・・第三工程で使用するエステル化反応液、
91、93、95、97、100・・・蒸留塔。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【出願日】 平成18年7月27日(2006.7.27)
【代理人】 【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏


【公開番号】 特開2008−31257(P2008−31257A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205110(P2006−205110)