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【発明の名称】 軽油組成物
【発明者】 【氏名】田中 英治

【氏名】荒木 泰博

【要約】 【課題】酸化防止剤などの添加剤を添加することなしに、酸化安定性を良好に保持する硫黄分が5質量ppm以下の軽油組成物を提供する。

【構成】硫黄分が5質量ppm以下、窒素分が1質量ppm以下、留出温度220℃以下の留出量が8.0容量%以下、1環芳香族が1.0〜17.0容量%、次式で表される留分指数(Z)が850以下である軽油組成物、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄分が5質量ppm以下、窒素分が1質量ppm以下、蒸留性状において留出温度220℃以下の留出量が8.0容量%以下、1環芳香族が1.0〜17.0容量%、次の式(1)で表される留分指数(Z)が850以下であることを特徴とする軽油組成物、
Z=4×V220−250−13×V250−280+18×V280−310−12×V310−340+4×V340−+5×A1−57×A2+99×A3+13×CI・・・(1)
(ここで、V220−250は留出温度220〜250℃の留出量(容量%)、V250−280は留出温度250〜280℃の留出量(容量%)、V280−310は留出温度280〜310℃の留出量(容量%)、V310−340は留出温度310〜340℃の留出量(容量%)、V340−は留出温度340℃以上の留出量(容量%)、A1は1環芳香族含有量(容量%)、A2は2環芳香族含有量(容量%)、A3は3環以上の芳香族含有量(容量%)、及び、CIはセタン指数を示す)。
【請求項2】
色相(セーボルト)が−16〜+25である請求項1に記載の軽油組成物。
【請求項3】
常圧蒸留装置、接触分解装置、又は熱分解装置から得られる140〜400℃の留分を脱硫後、220℃以下の軽質留分を蒸留分離することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の軽油組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油組成物に関し、特には極めて低い硫黄含有量の軽油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
軽油は、ディーゼルエンジン用燃料に使用されるが、排気ガス浄化触媒の被毒防止から硫黄分が殆どない、いわゆるサルファーフリーの燃料油が2005年1月から市場に投入されている。また、燃費規制や二酸化炭素排出量低減を背景に、軽油の硫黄分は10質量ppmよりもさらに低下することが要求されている。しかしながら、硫黄分を高度に除去する過程において高温で熱負荷を受けることにより、軽油中に不安定な物質が生成されやすく、酸化安定性が悪化する場合がある。一般に軽油を詳細分析して酸化安定性を悪化させる物質を求めるのは難しく、また臭素価や臭素指数の様なJISに規定された試験方法では比較的酸化安定性が良好なオレフィンや芳香族等が、顕著に酸化安定性が悪いオレフィン等との総和量で求められることや、酸化安定性改善効果を持つ成分含有量が臭素価や臭素指数では評価できないため、臭素価や臭素指数の大小だけでは酸化安定性を説明することができない。
【0003】
一方、軽油の硫黄分を除去する反応において温度を下げて、炭化水素構造が酸素に対して不安定な物質の生成を抑えることが考えられるが、水素化脱硫の触媒活性が低下してくると硫黄分除去が困難になり、また一般に原料油に用いられる接触分解軽油や熱分解軽油等に多く含まれる窒素化合物が水素化脱硫後も製品に残留しやすくなり、酸化安定性を悪化させる。
また、ディーゼルエンジンは排気ガス規制強化により、コモンレールによる燃料噴射の高圧化が一段と進むことで軽油への熱負荷が増大し、酸化劣化物生成により噴射ノズルコーキングを引き起こしやすいことから従来以上に軽油の酸化安定性を高める必要がある。
【0004】
これらにより、軽油の酸化安定性を向上させるために、例えば酸化防止用添加剤を添加することが考えられ、硫黄分を10質量ppm以下に低減した軽油に酸化防止剤を添加することが提案されている(特許文献1参照)。また、酸化防止剤が添加された灯油を軽油に添加する方法も考えられる。しかし、添加剤を添加する方法は製造コストを引き上げるばかりでなく、ディーゼルエンジンの燃料供給ラインに設置されている異物除去用フィルタを目詰まりさせたり、前記の噴射ノズルコーキング等の懸念があるため、望ましいものではない。また、最近比較的酸化安定性の悪いバイオ燃料に酸化防止剤を適当量添加し、これをディーゼル燃料に混合することが推進される方向にある。しかし、ベース軽油の酸化安定性が悪いと、バイオ燃料混合時に、バイオ燃料に添加されている酸化防止剤が消費され、顕著な酸化劣化物の生成や腐食性を帯びることで錆を発生させ、噴射ノズルコーキングを引き起こすこととなる。
【特許文献1】特開2004−225000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するもので、酸化防止剤などの添加剤を添加することなしに、酸化安定性を良好に保持する硫黄分が5質量ppm以下の軽油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を進めた結果、酸化安定性の悪化が軽油中の硫黄分を低減する過程で起こる微量のオレフィン類の生成や2環以上芳香族類の減少に起因し、オレフィン類の中でも顕著に酸化安定性が悪い成分が脱硫後の軽質留分にあること、さらにこれらの成分による酸化安定性を抑制するために比較的簡易な試験方法を用いて得られた性状を特定範囲内に制限することにより、酸化防止剤を添加することなく酸化安定性の悪化を抑制できることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の軽油組成物は、硫黄分が5質量ppm以下、全窒素分が1質量ppm以下、留出温度220℃以下の流出量が8.0容量%以下、1環芳香族分が1.0〜17.0容量%、次の式(1)で表される留分指数(Z)が850以下である軽油組成物である。
Z=4×V220−250−13×V250−280+18×V280−310−12×V310−340+4×V340−+5×A1−57×A2+99×A3+13×CI・・・(1)
(1)式中、V220−250は留出温度220〜250℃の留出量(容量%)、V250−280は留出温度250〜280℃の留出量(容量%)、V280−310は留出温度280〜310℃の留出量(容量%)、V310−340は留出温度310〜340℃の留出量(容量%)、V340−は留出温度340℃以上の留出量(容量%)、A1は1環芳香族含有量(容量%)、A2は2環芳香族含有量(容量%)、A3は3環以上の芳香族含有量(容量%)、及びCIはセタン指数を示す。また、本発明の軽油組成物の色相(セーボルト)は−16〜+25であることが好ましい。
また、本発明は、常圧蒸留装置、接触分解装置、熱分解装置から得られる140〜400℃の留分を脱硫後、220℃以下の軽質留分を蒸留分離することにより前記の軽油組成物を製造する軽油組成物を製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の軽油組成物は、硫黄分が5質量ppm以下であるので、燃焼によって生ずる亜硫酸ガス等に基づく悪臭や環境負荷が低減される。また、通常、硫黄分を低減する製造過程で不安定な物質の生成や比較的酸化安定性の良好な物質が低減すると、貯蔵時や高圧なディーゼルエンジン内の熱負荷によって燃料の噴射時に酸化重合物の生成が促進され易くなる。これらを改善するために一般的には酸化防止添加剤を添加するが、本発明の軽油組成物は酸化安定性に極めて優れたものであるから、添加剤を添加する必要がなく、製造コストを低減できるという格別の効果を奏する。また、軽油成分の中で酸化安定性に影響する幾つかの特定化合物を求め、これらを影響度に応じてパラメータ化し制御する等の方法は煩雑であるばかりでなく、多大な試験コストが掛かるのに対して、本発明の軽油組成物は比較的簡易な試験法を用い、試験結果に対するフィードバック制御が比較的容易である特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による軽油組成物は、硫黄分が5質量ppm以下、燃費低減から好ましくは1質量ppm以下、さらに好ましくは0.1質量ppm以下である。また、全窒素分が0.1質量ppm以下である。留出温度220℃以下の留出量が8.0容量%以下、好ましくは7.5容量%以下、さらに好ましくは7.0容量%以下、特には6.0容量%以下である。220℃以下の流出量が8.0容量%を超えると、酸化安定性の悪い軽質分が多くなるため好ましくない。
【0010】
1環芳香族分は1.0〜17.0容量%である。ゴム膨潤性を良好にし、発熱量を高くすることから、好ましくは2.0容量%以上、さらに好ましくは3.0容量%以上、特には4.0容量%以上であり、粒子状物質排出量増加や二酸化炭素排出量増加から、好ましくは16.5容量%以下、さらに好ましくは16.0容量%以下、特には15.0容量%以下である。
【0011】
下記の式(1)で表される留分指数(Z)は850以下、酸化安定性改善から好ましくは840以下、さらに好ましくは830以下、特には800以下である。留分指数(Z)を算出する式は硫黄分10質量ppm以下の軽油を組成物数十点調査し、各留出温度の留出量や他一般性状と、軽油の酸化安定性について検討を行い、因子間の内部相関を整理した結果、留出温度と留出量、芳香族含有量、セタン指数に最も相関性が高いことを見出し、多重相関式を作成した。これをさらに硫黄分5質量ppm以下に適用できるように、各留出温度における留出量に乗じる係数を補正し、留分指数(Z)の算出式を得た。
【0012】
Z=4×V220−250−13×V250−280+18×V280−310−12×V310−340+4×V340−+5×A1−57×A2+99×A3+13×CI・・・(1)
式中、V220−250は留出温度220〜250℃の留出量(容量%)、V250−280は留出温度250〜280℃の留出量(容量%)、V280−310は留出温度280〜310℃の留出量(容量%)、V310−340は留出温度310〜340℃の留出量(容量%)、V340−は留出温度340℃以上の留出量(容量%)、A1は1環芳香族含有量(容量%)、A2は2環芳香族含有量(容量%)、A3は3環以上の芳香族含有量(容量%)、及びCIはセタン指数である。
【0013】
本発明の軽油組成物は、酸化安定性改善や燃費向上から初留点が好ましくは180℃以上、さらに好ましくは184℃以上である。なお、軽質留分減少による低温流動性悪化防止から、初留点は240℃以下が好ましく、さらに好ましくは235℃以下、特には230℃以下である。また、酸化安定性を良好にする芳香族分が重質分に多く含まれることや、低温流動性向上剤の添加効果を良好にすることから、留出温度310℃以上の留出量が24.0容量%以上であり、好ましくは24.5容量%以上、さらに好ましくは25.0容量%以上である。また留出温度310℃以上の留出量が高すぎると排気ガス中の粒子状物質が多くなることから、好ましくは28.0容量%以下、さらに好ましくは27.0容量%以下、特には26.0容量%以下である。
【0014】
芳香族分は一般的には少ないほうが環境面からは好ましいが、燃料系統のゴム材料に影響を及ぼすのである程度含有されている必要がある。1環芳香族分については既に述べたとおりである。2環芳香族分は酸化安定性改善やゴム膨潤性を良好にすることから、好ましくは0.2容量%以上、さらに好ましくは0.4容量%以上であり、1環芳香族分に対する容量比は好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上、特に好ましくは0.1以上である。
【0015】
また、色相(セーボルト)が−16〜+25、外観の維持や試験法の下限から好ましくは−15以上、さらに好ましくは−10以上、特には−5以上であり、色相が良すぎると不安定物質が生成され易く、また酸化安定性が良好な成分が減少し易くなるため好ましくは+24以下、さらに好ましくは+22以下、特には+20以下である。
【0016】
また、本発明は、ことによって上記の軽油組成物を製造する方法である。本発明の軽油組成物は、常圧蒸留装置、接触分解装置、熱分解装置等から得られる沸点が140〜400℃の範囲で留出する軽油留分を水素化脱硫処理及び/又は収着脱硫処理し、適宜250℃以下の軽質留分を除去することにより得られる。また、この得られた留分に20%留出温度が220℃以下の灯油を0〜40容量%混合しても構わない。
【0017】
上記の140〜400℃の軽油留分としては、常圧蒸留装置、接触分解装置、又は熱分解装置から得られたものを用いるが、原油を常圧蒸留して得られた直留軽油留分を用いることが好ましい。直留軽油留分単独で用いてもよいが、熱分解油や接触分解油を直留軽油留分に混合した混合軽油留分を用いることもできる。さらには、軽油相当の留分であれば他のプロセス油も、原料となる軽油留分に混合することができる。直留軽油留分は、原油を常圧蒸留して得られ、おおよそ10容量%留出温度が200〜290℃、50容量%留出温度が260〜320℃、90容量%留出温度が300〜370℃である。
【0018】
熱分解油とは、重質油留分に熱を加えて、ラジカル反応を主体にした分解反応により得られる軽質留分油で、例えば、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法あるいはフルードコーキング法等により得られる留分をいう。留出温度が140〜400℃の範囲内にある留分を用いる。
【0019】
接触分解油としては、中間留分や重質留分、特には減圧軽油留分や常圧蒸留残油等をゼオライト系触媒と接触分解する際に得られる留分が挙げられ、特に高オクタン価ガソリン製造を目的とした流動接触分解装置において副生する分解軽油留分が好ましい。この留分は、一般に、沸点が相対的に低い軽質接触分解油と沸点が相対的に高い重質接触分解油とが別々に採取されている。本発明においては、これらの留分のいずれをも用いることができるが、前者の軽質接触分解油、いわゆるライトサイクルオイル(LCO)を用いることが好ましい。このLCOは、一般に、10容量%留出温度が200〜250℃、50容量%留出温度が250〜290℃、90容量%留出温度が300〜355℃の範囲内にある。また、重質接触分解油、いわゆるヘビーサイクルオイル(HCO)は、10容量%留出温度が280〜340℃、50容量%留出温度が390〜420℃、90容量%留出温度が450℃以上にある。
【0020】
水素化脱硫処理は、水素化脱硫触媒として、周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素を含む触媒が好適に用いられる。周期律表第6族の元素としてはモリブデン、タングステン、第9族の元素としてはコバルト、第10族の元素としてはニッケルが特に好ましい。これら周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素は、無機多孔質酸化物担体に担持して用いられることが好ましい。無機多孔質酸化物担体としては、周期律表第2、第4、第13、及び第14族の元素の酸化物を用いることができる。このうちでも、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、ボリア(B)、カルシア(CaO)等が好適であり、これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用すると良い。特には、アルミナ(γ、δ、η、χ等の各結晶構造を有するもの)、シリカ−アルミナ、シリカ、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア、アルミナ−シリカ−マグネシアが好ましい。
【0021】
水素化脱硫触媒による水素化脱硫処理における反応装置は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等、反応形式に特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化処理触媒に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。固定床流通式反応装置によって行う水素化脱硫処理は、反応温度が200〜450℃、特には250〜400℃、水素圧力が2〜10MPa、特には3〜8MPa、水素/油供給比が100〜1000NL/L、特には100〜400NL/L、LHSVが0.1〜5hr−1、特には0.5〜2hr−1の条件の範囲で適宜選択して、上述した本発明の軽油組成物が得られるようにする。特には、水素圧、水素/オイル比は大きい方が良いが、あまり大きいと多環芳香族分が除去されるため、上限を超えない様にする。また反応温度は酸化安定性悪化防止から低めにするとよい。
【0022】
また、収着脱硫処理は、水素の共存下で硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤と接触させる方法を用いる。本発明に用いる上記硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤とは、有機硫黄化合物中の硫黄原子を脱硫剤に固定化するとともに、有機硫黄化合物中の硫黄原子以外の炭化水素残基については、有機硫黄化合物中の炭素−硫黄結合が開裂することによって脱硫剤から脱離させる機能をもった多孔質脱硫剤をいう。この炭化水素残基が脱離する際には、硫黄との結合が開裂した炭素に、系内に存在する水素が付加する。したがって、有機硫黄化合物から硫黄原子が除かれた炭化水素化合物が生成物として得られることになる。ただし、硫黄原子が除かれた炭化水素化合物が、さらに水素化、異性化、分解等の反応を受けた生成物を与えることがあっても構わない。一方、硫黄は脱硫剤に固定化されるため、水素化精製とは異なり、生成物として硫化水素などの硫黄化合物を発生しない。
【0023】
この多孔質脱硫剤は、有機硫黄化合物に対する収着機能を有するものであれば特に限定はないが、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。ただし、多孔質脱硫剤に含まれる金属が、亜鉛のみでは硫化水素しか除去できず、他の金属でも1種だけでは有機硫黄化合物を十分に脱硫することはできない。脱硫剤への硫黄取込容量を大きくするためには第1の金属として亜鉛、第2の金属として銅、ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれる金属が好ましい。特に好ましくは、第1の金属が亜鉛で、第2の金属がニッケルの組み合わせである。好ましい脱硫剤は、ニッケル、亜鉛などの金属成分を金属成分の合計で50〜85質量%、特には60〜80質量%含有する。脱硫性能を向上させるためや工業的に使用するためには、さらに他の成分を添加して成形することが好ましい。また、成形、焼成された脱硫剤にさらに金属成分を含浸、担持して、焼成してもよい。脱硫剤は、水素雰囲気下で還元処理して用いるのが好ましい。脱硫剤の比表面積は、好ましくは30〜200m/g、特には50〜150m/g、さらには50〜100m/gである。
【0024】
上記の多孔質脱硫剤を用いる脱硫処理は、バッチ式で行っても、流通式で行っても特に支障はないが、固定床流通式反応装置に充填された硫黄収着機能をもった多孔質脱硫剤に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。脱硫処理する温度は0〜400℃の範囲から選ぶことができ、好ましくは100〜380℃、さらには200〜350℃の範囲から選ぶとよい。脱硫処理する圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下、さらには3MPa以下、特には0.5〜3MPaがよい。固定床流通式で多孔質脱硫剤と軽油留分を接触させて脱硫処理を行う場合、LHSVは0.01〜10,000hの範囲、好ましくは1〜100h−1の範囲、さらには2〜30h−1の範囲、特には3〜10h−1の範囲から選ぶことが好ましい。水素/油供給比は0.01〜10,000NL/Lの範囲、好ましくは0.02〜1,000NL/Lの範囲、さらには10〜500NL/Lの範囲、特には100〜500NL/Lの範囲から選ぶことが好ましい。
【0025】
硫黄分を5質量ppm以下の軽油組成物は、上記の水素化脱硫又は収着脱硫で硫黄分を除去して得ることができるが、原料油の硫黄分が高濃度の場合は水素化脱硫、低濃度の場合には収着脱硫が効率的、経済的である。したがって、水素化脱硫、収着脱硫の順に両者を組み合わせて脱硫処理することが好ましい。
窒素分1質量ppm以下の軽油組成物は、通常、硫黄分が5質量ppm以下であれば、大体達成されている。窒素分1質量ppmを超えるような場合には、水素化脱硫のシビアリティを若干挙げることで解決される。
【0026】
蒸留性状において留出温度220℃以下の留出量を8.0容量%以下に調整するためには、水素化脱硫後に軽質ナフサ留分の抜き出し量を増やすか、あるいは220℃以下の軽質留分を精密蒸留分離することで実現可能である。
また、1環芳香族分を1.0〜17.0容量%にするには、脱硫処理する圧力を上げ、水素/油供給比を高めることが有効である。
【0027】
留分指数(Z)の値を所望の範囲にコントロールするには、前記の220℃以下の軽質留分を少なくすることに加えて、340℃以上の重質留分を少なくすることが効果的である。この340℃以上の重質留分を少なくする方法として、水素化脱硫後に精密蒸留により重質留分を分離することが挙げられるが、この分離に要するエネルギーが大きいため、好ましくは原料油の340℃以上を多く含む基材の混合比率を少なくするか、基材の340℃以上留分を予め精密蒸留により分離する。また、水素化脱硫後に3環芳香族をあまり含有しない2環芳香族を多く含む340℃以下の接触分解軽油の水素化脱硫基材を用いる、あるいは接触改質ガソリンの340℃以下で2環芳香族を多く含む留分を混合することも有効な方法である。
また、280〜310℃留分を少なくすることもZの値を抑えるためには有効な方法である。この280〜310℃留分を少なくする方法として、水素化脱硫後に精密蒸留分離するのは、この分離に要するエネルギーが大きいため、好ましくは原料油の280〜310℃留分を多く含む基材の混合比率を少なくするか、水素化脱硫後に灯油留分を混合する場合、この灯油留分の280〜310℃留分含有量が少ない灯油を選択する。
【0028】
なお、上記方法で得られた軽油組成物は、低温流動性を改善するために酸化安定性が軽油に比較して良好な灯油組成物と適宜の割合で混合することができる。
また、低温流動性向上剤、耐摩耗性向上剤、セタン価向上剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤を添加してもよい。低温流動性向上剤としては、エチレン共重合体などを用いることができるが、特には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの飽和脂肪酸のビニルエステルが好ましく用いられる。耐摩耗性向上剤としては、例えば長鎖脂肪酸(炭素数12〜24)又はその脂肪酸エステルが好ましく用いられる。10〜500ppm、好ましくは50〜100ppmの添加量で十分に耐摩耗性が向上する。
【実施例】
【0029】
本発明をより具体的に実施例により説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0030】
軽油組成物の調製
まず以下のようにして、評価試験のために用いる軽油(供試軽油1〜5)を調製した。
供試軽油1:担持法にて調製した水素化脱硫触媒CoMo/アルミナ(コバルト含有量3重量%、モリブデン含有量13重量%)とNiMo/アルミナ(ニッケル含有量3重量%、モリブデン含有量12重量%)とを容積比で1:2となるように充填した反応管に、前処理としてジメチルジスルフィド1重量%を含む軽油を300℃、5MPaの水素共存下で通油して硫化処理を行った後、常圧蒸留装置から留出した沸点範囲140〜370℃の留分を、反応温度:340℃、反応圧力:6MPa、水素/オイル比:200Nm/kL、LHSV:0.7h−1の条件下で水素化精製した。
【0031】
供試軽油2:担持法にて調製した水素化脱硫触媒CoMo/アルミナ(コバルト含有量3重量%、モリブデン含有量13重量%)を充填した反応管に、前処理としてジメチルジスルフィド1重量%を含む軽油を300℃、5MPaの水素共存下で通油して硫化処理を行った後、上記のよう脱硫した供試軽油1と水素を通し、反応温度:300℃、反応圧力:5.0MPa、LHSV:1.0h−1、水素/油供給比:500Nm/Lの条件下でさらに水素化精製した。
【0032】
供試軽油3:供試軽油2を、塔頂温度129℃、ボトム温度187℃、減圧度100mmHg(絶対圧660mmHg)、還流比1/1〜2/5で減圧蒸留し、留出量が10容量%までの留分を抜き出して、蒸留釜残油を得、供試軽油3とした。
【0033】
供試軽油4:共沈法にて調製した収着脱硫用の脱硫剤、ニッケル亜鉛複合酸化物(ニッケル含有量7質量%、亜鉛含有量68質量%)を反応管に充填し、これに水素ガスを温度300℃にて6時間流通させ、還元処理を行った。その後、この反応管に供試軽油1と水素を通し、反応温度300℃、反応圧力1.0MPa、LHSVが5.0h−1、水素/油供給比が200Nm/Lの条件で反応させた。
【0034】
供試軽油5:供試軽油2を、塔頂温度129℃、ボトム温度187℃、減圧度100mmHg、還流比1/1〜2/5で、留出量10%までの留分(0〜10%留分)を抜き出した後、供試軽油3に相当する留分をさらに塔頂温度243℃、ボトム温度272℃、減圧度50mmHgになるまで還流比1/1〜2/5で減圧蒸留して、留出量10%から90%までの留分を抜き出して10〜90%留分(供試軽油5)を得た。
【0035】
また、供試軽油2を、塔頂温度129℃、ボトム温度187℃、減圧度100mmHg、還流比1/1〜2/5から、塔頂温度243℃、ボトム温度272℃、減圧度50mmHgになるまで還流比1/1〜2/5で、減圧蒸留した。留出量が0〜10容量%、10〜30容量%、30〜50容量%、50〜70容量%、70〜90容量%の各流分を抜き出して5個の留出留分と1個の留出量90容量%以上の釜残油を得た。便宜的に、前記の留出留分と釜残油の6個を軽い方から順に分留油2a、分留油2b、分留油2c、分留油2d、分留油2e及び分留油2fとする。
【0036】
次にこれらの分留油2a〜2fについて、各150mLを、酸化防止剤を添加せずに、ASTM D873に準じ、耐圧容器に入れ、酸素を封入後、密閉状態で100℃の恒温槽で16時間保持して強制的に酸化劣化させた。その後、恒温槽から取り出し、室温にまで降温し、常圧まで圧力を低下させ、濾過(メンブランフイルター0.8μm、47mmφ使用)した。濾過後、濾液の過酸化物価及び色(セーボルト)をそれぞれ石油学会法(JPI−5S−46−96)及び上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。
また、供試軽油1〜5についても、上記と同様に強制的な酸化劣化試験を実施した。結果を表2に示す。
【0037】
【表1】


【0038】
【表2】


【0039】
なお、表1及び表2に記載の物性、成分組成等の測定方法、及び評価方法は、次に示した方法で行った。
1)密度:JIS K2249「原油及び石油製品密度試験方法」に規定された方法。
2)動粘度:JIS K2283「動粘度試験方法」に規定された方法により、30℃で測定。
3)硫黄分:JIS K2541−6「硫黄分試験方法(紫外蛍光法)」に規定された方法。
4)窒素分:JIS K2609「窒素分試験方法(化学発光法)」に規定された方法。
【0040】
5)芳香族分:JPI−5S−49−97「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」に規定された方法。
6)蒸留性状:JIS K2254「蒸留試験方法」に規定された方法。
7)各温度での収率:蒸留性状から、温度と留出量との関係を求め、所定温度間での留出量を算出する。
8)セタン指数:JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」に規定された方法。
9)色(セーボルト):JIS K2580「石油製品−色試験方法(付属書1)」に準拠した方法。
10)過酸化物価:JPI−5S−46−96「灯油の過酸化物価試験方法」に規定された方法。
【0041】
11)ワックス量:全自動恒温濾過試験器(コスモトレードアンドサービス製、型式AF−301)を用いて、試料の曇り点より1℃高い温度から、試験温度まで1℃/分の冷却速度で徐冷し、30分間保持してミリポアフィルター(ミリポア社製LSタイプ、直径47mm、孔径5μm)により濾過し、メチルエチルケトン(JIS試薬特級)により洗浄後、濾紙を試験温度に保持された恒温槽で12分間放置後、取り出し3分間風乾後秤量し、濾紙残留物量を求めた。
【0042】
表1から、供試軽油2を分留して得られた分留油2a〜2fの酸化処理後の過酸化物価は、軽質留分になるほど顕著に高くなり、酸化安定性が悪いことが判る。逆に、重質留分になるほど、酸化処理後の過酸化物価は低下し、酸化安定性に優れていることが判る。また重質留分になるほど、酸化処理前の色相(セーボルト)が低くなるため、酸化処理前の色相(セーボルト)が低い方向が、酸化安定性が良好になる方向に一致することが判る。
また、重質留分は−10℃で析出するワックス量が多く、冬季に市販されているJIS2号軽油が−10℃で析出するワックス量が平均2.0容量%弱で多くても4.0〜5.0容量%以下であることから、この重質留分を多くして酸化安定性を良好にする場合は、軽油全体に占めるワックスの比率を20容量%以下に留める必要があることが判る。
表2から、供試軽油1、供試軽油2の酸化安定性が悪いのに対し、供試軽油3、4、5の酸化安定性が良好である。これらの結果から、本願発明は酸化防止剤を添加しなくても、酸化処理前後での過酸化物価の増加率が低く、また、色相の悪化程度も低い、すなわち、貯蔵安定性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の軽油組成物は、ディーゼルエンジン用燃料又はその混合基材として利用できる。
【出願人】 【識別番号】304003860
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエナジー
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100133905
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良夫

【識別番号】100113837
【弁理士】
【氏名又は名称】吉見 京子

【識別番号】100127421
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 さなえ

【識別番号】100090941
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清也


【公開番号】 特開2008−7675(P2008−7675A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180922(P2006−180922)