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【発明の名称】 バイオマス資源のリサイクル燃料
【発明者】 【氏名】鈴木 勉

【氏名】柴田 晃

【要約】 【課題】炭化で得られる炭とタールとピッチの全成分(以下全タールと称する)の完全利用を可能とするバイオマス資源のリサイクル燃料を提供する。

【構成】炭の粉砕物(微粉炭1)と全タール2とを複合して熱圧成形したもの。具体的には、前記炭の粒度を2mm以下に調整して全タール2と重量比1:2から1:1で混練器10に仕込んで所定時間混合・混練し、金属型枠に流し込み、常温で10分冷圧した後120〜160℃、圧力50〜200Kg/cmで0〜20分保持して熱圧成型し、放冷後、固形化物11を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの熱分解処理により得られた固体生成物と、バイオマスの熱分解処理により得られたタール分とを複合し、熱圧成形したことを特徴とするバイオマス資源のリサイクル燃料。
【請求項2】
前記固体生成物が炭又は木炭であることを特徴とする請求項1記載のバイオマス資源のリサイクル燃料。
【請求項3】
前記固体生成物とタール分に鉄化合物を配合、複合化して熱圧成形したことを特徴とする請求項1又は2記載のバイオマス資源のリサイクル燃料。
【請求項4】
前記鉄化合物は、酸化第二鉄Fe以外の鉄化合物であって、金属鉄を含むことを特徴とする請求項3記載のバイオマス資源のリサイクル燃料。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、バイオマス資源のリサイクル燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、間伐材や剪定枝、建設廃材などの木質系廃棄物や食品の非可食部や生ゴミなどの食品廃棄物等の未利用バイオマス資源の大半は焼却処分され、有害ガス(COや炭化水素)等と共にCOが放出される結果として大気汚染が助長されている。このような認識に立って建設リサイクル法や食品リサイクル法などの各種リサイクル法が順次施行され、木質系バイオマスや食品系バイオマスなどの未利用バイオマス資源のリサイクルが国家的に推進されている。
【0003】
この未利用バイオマス資源については、これらを熱分解(炭化)技術により固体生成物(炭化物)やその熱分解炭化時に発生する煙の冷却液化物(水溶性液化物、油溶性液化物)に変換し回収してリサイクルすることが考えられる。
【0004】
このバイオマス資源のうち、固体生成物である炭や木炭は、バーベキュー燃料、土壌改良、床下調湿等に利用され、水溶性液化物である木酢液・食酢は、入浴剤、薬品、肥料等に利用されている。しかしながら、炭・木酢液の消費量に見合う油溶性液化物(タール・ピッチ)の実用的な用途が見出せないでいる。
【0005】
したがって、上記熱分解技術(炭化法)がより広く普及するには、利用困難物とされるタール・ピッチを安価、且つ大量に実用可能な消費方法の開発が必要である。
【0006】
安価な大量実用法として、木タールについては発泡後加熱成形して構造材(壁材や調湿材、床下材など)とする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
ところが、これら木タール製品はピッチ(タール中の高沸点成分もしくはタールの蒸留残渣)成分を含んでいる為、品質・性能において既存の石油由来製品に及ばないという問題があった。
【0008】
そして、タール中からピッチを除去する工程を行うと、安価ではなくなり採算が合わないという問題があった。
【0009】
また、上記ピッチについては、種々のバイオマス原料や熱分解炭素のバインダーとして配合し固形燃料の一部として利用する方法が開発されている。(例えば、特許文献2)
ところが、ピッチ配合燃料は、消石灰(水酸化カルシウム)や炭酸ナトリウムを添加すれば燃焼性が向上するというものであって、カルシウムやナトリウムは金属製燃焼器の腐食を引き起こすという問題があった。
【0010】
上述の通り、タール・ピッチを大量消費することは困難であり、熱分解炭化時に発生する煙の冷却液化物を完全に利用することは困難であった。
【0011】
なお、家畜排泄物、下水汚泥、わら類、農集排汚泥、メタンガスの発酵残渣、プラスチック類の混合物などのその他のバイオマスにおいても同等の問題があった。
【特許文献1】特開2002−201302号公報
【特許文献2】特開2000−319676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこでこの発明は、炭化で得られる炭とタールの全成分(以下全タールと称する)の完全利用を可能とするバイオマス資源のリサイクル燃料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
【0014】
(請求項1記載の発明)
この発明のバイオマス資源のリサイクル燃料は、バイオマスの熱分解処理により得られた固体生成物と、バイオマスの熱分解処理により得られたタール分とを複合し、熱圧成形したことを特徴とする。
【0015】
このバイオマス資源のリサイクル燃料では、固体生成物(微粉炭)とタール分(全タール)にバイオマスの炭素分が固定化されており、しかもこれらがタール成分のバインダー作用もあって複合しているので、熱源として使い勝手がよいものとなっている。
【0016】
(請求項2記載の発明)
この発明のバイオマス資源のリサイクル燃料は、請求項1記載の発明について、前記固体生成物が炭又は木炭であることを特徴とする。
【0017】
炭又は木炭(微粉炭)とタール分(全タール)が一体化して完全燃焼するので、微粉化前の原料炭と同等の優れた燃焼性を有する安価で無公害な固形燃料である。
【0018】
さらに、石炭や石油などのような化石由来ではなくバイオマス由来であるから、地域で小規模生産が可能である。
【0019】
(請求項3記載の発明)
この発明のバイオマス資源のリサイクル燃料は、請求項1又は2記載の発明について、固体生成物とタール分に鉄化合物を配合、複合化して熱圧成形したことを特徴とする。
【0020】
このバイオマス資源のリサイクル燃料では、鉄化合物を配合すると、これら配合物が燃焼促進の触媒として機能して酸化を促進するので、着火性、燃焼性が向上した易燃焼性のより高級な固形燃料となる。上述のように、カルシウムやナトリウムは金属燃焼器の腐食を引き起こすが、鉄添加ではそうした不都合性が生じないことも大きな利点である。
【0021】
そのうえ、鉄化合物を配合して熱圧成形したので、密度、機械的強度が増大してハンドリング性が向上する。
【0022】
(請求項4記載の発明)
この発明のバイオマス資源のリサイクル燃料は、請求項3記載の発明について、鉄化合物は、酸化第二鉄Fe以外の鉄化合物であって、金属鉄を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0024】
炭と全タールの完全利用を可能とし、利用困難物とされるタール・ピッチを安価に大量消費することによって、バイオマス炭化を普及させ、地球温暖化防止の一助となる技術である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、この発明のバイオマス資源のリサイクル燃料を実施するための最良の形態として実施例について詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
(熱分解について)
この実施例1ではバイオマス資源のリサイクル燃料を製造するため、先ず未利用バイオマス資源(間伐材や剪定枝、建設廃材などの木質系廃棄物や食品の非可食部や生ゴミなどの食品廃棄物等)を約300〜900℃の炭化処理により炭を得た。また、乾留の際の煙を冷却液化した後、粗酢液(水溶性部分)を蒸留により除去して全タール(タールオイル、ピッチを含有)を得た。ここで、前記バイオマスとして化石エネルギーに代わる生物エネルギー資源、木質系バイオマスや食品系バイオマスなどを挙げることができる。前記バイオマスの炭化として、乾留や分留を挙げることができる。前記の炭として木炭、竹炭、籾炭などを挙げることができる。
【0027】
(バイオマス資源のリサイクル燃料の製造について)
次に得られた炭の粉砕物(微粉炭1)と全タール2とを複合して熱圧成形した。
【0028】
表1、2はそれぞれ用いた微粉炭1と全タール2の性状を示している。下記の温度、圧力、保持時間で微粉炭1と全タール2複合体の熱圧成型を行った。
【0029】
【表1】


【0030】
【表2】


具体的には、図1に示すように前記微粉炭1の粒度を2mm以下に調整して全タール2と重量比1:2から1:1で混練器10に仕込んで所定時間混合・混練し、金属型枠に流し込み、常温で10分冷圧した後120〜160℃、圧力50〜200Kg/cmで0〜20分保持して熱圧成型し、放冷後、固形化物11(全タール2配合粉炭)を得た。
【0031】
このバイオマス資源のリサイクル燃料では、炭(微粉炭1)と全タール2にバイオマスの炭素分が固定化され固形化物11となっており、しかもこれらがタール成分のバインダー作用によって複合しているので、熱源として使い勝手がよいものとなっているが、燃料としての適合性はその燃焼挙動から評価、判定する必要がある。そこで図2に示した構成の装置を用い、表3に記した条件で燃焼試験を行った。
【0032】
図2に示した装置は、上記固形化物11を試料3として電気炉4で燃焼させるものである。通常、全タール2のみを試料3として燃焼させた場合、不完全燃焼となり、発煙が生じ気体流動管30や氷水トラップ31にタール成分が付着する。固形化物11を試料3に用いると、前記付着物は確認されず、99%以上がCOとなりガスバッグ32に貯めることが可能である。したがって、試料3は完全燃焼していると考えられる。
【0033】
微粉炭1・全タール2の複合体である固形化物11の燃焼挙動は、図3に見られる通り50、100、200Kg/cmのいずれの成形圧でも炭と全タール2分が一体化して完全燃焼し、燃焼性はナラ木炭と同等である。
【0034】
このように、微粉炭1に全タール2が複合されたものとすると、利用困難物を効果的に資源化することができ、微粉炭1・全タール2の複合体はタール中の難燃成分(悪臭物質)も完全燃焼する無公害の優れた固形燃料であり、炭と全タールの完全利用につながるという利点がある。
【0035】
また、このバイオマス資源のリサイクル燃料である固形化物11は成型が容易で型崩れを起こしにくいものである為、固体燃料としても優れたものである。
【0036】
【表3】


表4に示す通り、前記微粉炭1と全タール2の配合量は1:1.4〜1:1.6の範囲に設定すると、熱圧成型時にタールが流出せず配合タールを無駄なく複合化でき、加熱時間が短縮できるという利点がある。
【0037】
前記配合量は成形機周辺を汚さないという点からも好ましい。成形温度と保持時間は140℃、0分(昇温のみ)でよく、この組み合わせは投入する熱エネルギーの節約の点で好ましい。
【0038】
【表4】


(この発明のその他の有用性について)
このバイオマス資源のリサイクル燃料は、石炭や石油などのような化石由来ではなくバイオマス由来であるから、地域で小規模生産が可能である。
【実施例2】
【0039】
実施例1の熱分解によって、得られた炭の粉砕物(微粉炭1)と全タール2とを複合し、さらに金属鉄を含む種々の鉄化合物を配合して熱圧成形した。
【0040】
具体的には、前記炭の粒度を2mm以下に調整して全タール2と重量比1:2から1:1で混練器10に仕込んで所定時間混合・混練し、金属鉄を含む種々の鉄化合物を微粉炭1と全タール2の総重量に対して鉄元素として1〜5wt%配合し、金属型枠に流し込み、常温で10分冷圧した後120〜160℃、圧力50〜200Kg/cmで0〜20分保持して熱圧成型し、放冷後、固形化物11を得た。
【0041】
表5は配合した鉄化合物を示している。
【0042】
【表5】


実施例1と同様に、前記微粉炭1と全タール2の配合量は1:1.4〜1:1.6の範囲に設定すると、熱圧成型時にタールが流出せず配合タールを無駄なく複合化でき、加熱時間が短縮できるという利点がある。前記配合量は成形機周辺を汚さないという点からも好ましい。成形温度と保持時間は140℃、0分(昇温のみ)でよく、この組み合わせは投入する熱エネルギーの節約の点で好ましい。
【0043】
鉄化合物の配合量は1.0wt%に設定すると混練が容易、配合コストの低減、実燃焼器からの不燃残渣(灰)掻き出し操作の軽減という利点がある。
【0044】
このようにして得たリサイクル燃料は、図4に例示するように微粉化前の原料炭(500℃ナラ木炭)より密度が高く、機械的強度(せん断強度)は鉄配合では同等かそれ以上であるからハンドリング性は向上している。図4に基づき、微粉炭1の粒度、全タール2の配合量、熱圧成型条件(温度、圧力、保持時間)等によって密度やせん断強度を比較的広範囲に調整できることを示し、用いる型枠によって多様な材状に仕上げることができることも可能である。
【0045】
(燃料の使用状態について)
酸化第二鉄以外の鉄化合物を配合した微粉炭1・全タール2複合体では、図5の3%添加四三酸化鉄で代表されるように、ナラ木炭より燃焼温度が低く、成形圧が高いほど燃焼温度域が低下した。
【0046】
これは鉄の形態が被酸化性なら(鉄の酸化数が3以下なら)燃焼促進の触媒として機能する結果として着火性、燃焼性が向上した、その触媒効果は成形圧増加に伴って増大したという利点を示している。しかし、図6に示すように、鉄量を1%に減らしても5%に増加しても燃焼温度域には差はないので、配合量は1%で十分であった。
【0047】
ただし、図7に示すように、鉄の触媒効果は化学形態によって異なり、同じ鉄元素量であれば(金属鉄)>(塩基性酢酸鉄)≒(硝酸第二鉄)≧(四三酸化鉄)>(塩化第二鉄、硫酸鉄第二鉄)>(酸化第二鉄)=(無添加)であった。即ち、酸化第二鉄以外の鉄化合物は燃焼促進効果を有し、最も大きな効果を発揮するのは金属鉄であった。
【0048】
金属鉄はいわゆる鉄粉であり、一般の鉄工所等で容易に入手できるので最も安価な鉄物質の一つである。従って、金属鉄(鉄粉)添加微粉炭1・全タール2複合体は燃焼性、排ガスのクリーン性に加えて製造コストの点でも最も好ましいものである。
【0049】
図8は金属鉄とピッチ分の燃焼促進に有効とされる水酸化カルシウムCa(OH)(特許文献2)の効果を比較したものである。この図から金属鉄はCa(OH)よりはるかに大きな燃焼促進効果を有することが確認され、金属腐食性がないことを考え合わせると鉄使用の優位性は明らかである。すなわち、Ca(OH)添加では無添加、炭酸カルシウムCaCO添加と燃焼温度域が同じであるから、着火性は改善しなかった。ただし、Ca(OH)添加ではCaCO添加よりCO発生量が増大し、このことは陰イオンの形態が燃焼挙動に影響を与えることを示唆するが、その詳細は不明である。なお、図4に示すように、金属鉄を含む鉄化合物を配合した微粉炭1・全タール2複合体の密度とせん断強度は微粉炭1・全タール2のみからなる複合体より高く、ハンドリング性も優れている。
【0050】
(この発明の効果について)
微粉炭1と全タール2が一体化して完全燃焼するので、微粉化前の原料炭と同等の優れた燃焼性を有する安価で無公害な固形燃料である。さらに、酸化第二鉄以外の鉄化合物を配合すると、これら配合物が燃焼促進の触媒として機能して酸化を促進するので、着火性、燃焼性が向上した易燃焼性のより高級な固形燃料となる。上述のように、カルシウムやナトリウムは金属燃焼器の腐食を引き起こすが、鉄添加ではそうした不都合性が生じないことも大きな利点である。
【0051】
そのうえ、鉄化合物を配合して熱圧成形したので、密度、機械的強度が増大してハンドリング性が向上する。
【0052】
(この発明の有用性について)
以上のような鉄無配合微粉炭1、鉄配合微粉炭1・全タール2複合体は石炭や石油などのような化石由来ではなくバイオマス由来であるので、地域での小規模生産が可能であるという利点がある。
【0053】
このバイオマス燃料は原料である未利用バイオマスが基本的に地表のCOを増やさないカーボンニュートラルな材料であるので、重油や灯油、石炭など従来からの化石資源由来の熱源の代替エネルギーとして高い効率でCO排出量の削減が可能となる。
【0054】
なお、この燃料を燃焼した後に残るバイオマス由来灰分や鉄酸化物については、これ土壌に還元することにより土壌改良剤や肥料として作物生育助剤としての利用できるなどの波及的な用途・効果がある。
【0055】
また、家畜排泄物、下水汚泥、わら類、農集排汚泥、メタンガスの発酵残渣、プラスチック類の混合物などのその他のバイオマスにおいても同様にこの発明は有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】バイオマス資源のリサイクル燃料の製造方法の説明図である。
【図2】燃焼実験装置を示す説明図である。
【図3】鉄無添加微粉炭・全タール複合体の燃焼性を示すグラフである。
【図4】微粉炭・全タール複合体の密度とせん断強度を示すグラフである。
【図5】Fe3%添加の成形圧の影響を示すグラフである。
【図6】Feの添加量の違いによる影響を示すグラフである。
【図7】各種鉄化合物の添加効果を示すグラフである。
【図8】金属鉄と比較した水酸化カルシウム、炭酸カルシウムの添加効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 微粉炭
2 全タール
3 試料
4 電気炉
【出願人】 【識別番号】504136373
【氏名又は名称】RISCARBO株式会社
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義

【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士

【識別番号】100129986
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓生


【公開番号】 特開2008−1860(P2008−1860A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175078(P2006−175078)