トップ :: C 化学 冶金 :: C10 石油,ガスまたはコ−クス工業;一酸化炭素を含有する工業ガス;燃料;潤滑剤;でい炭

【発明の名称】 環境対応軽油の製造方法
【発明者】 【氏名】十河 清二

【氏名】田中 英治

【要約】 【課題】硫黄分、芳香族分が十分に低く、かつ、実用上十分な低温性能および発熱量を確保した環境対応軽油およびその製造方法を提供する。

【解決手段】密度が0.78g/cm以上、硫黄分が1質量ppm以下、曇り点が−10℃以下、目詰まり点が−5℃以下、10%留出温度が200℃以上、90%留出温度が340℃以下、炭素数10〜13のノルマルパラフィン含有量が2.0質量%以下、炭素数14〜21のノルマルパラフィン含有量が8.0質量%以下、炭素数24以上のノルマルパラフィン含有量が0.1%以下、かつ、芳香族分が5質量%以下である環境対応軽油、および、ノルマルパラフィン原料を接触水素化分解および異性化し、得られた生成油を分留して10%留出温度が200℃以上、90%留出温度が340℃以下の軽油留分を得る前記環境対応軽油の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカアルミナを含む担体に水素化活性金属を担持した触媒を用いて水素化分解および異性化を行うことでノルマルパラフィン原料から生成油を得る工程と、この生成油を分留して10%留出温度が200℃以上、90%留出温度が340℃以下の軽油留分を得る工程を含む環境対応軽油の製造方法。
【請求項2】
前記ノルマルパラフィン原料がフィッシャー・トロプシュ法により合成された請求項1記載の環境対応軽油の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は環境への影響を低減した環境対応軽油およびその製造方法に関し、詳しくは硫黄分、芳香族分を低減することで環境問題に配慮しつつかつ十分な低温特性および発熱量を確保した軽油およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の高まりからディ−ゼル自動車技術に種々の工夫が加えられ、燃料として用いられる軽油中の硫黄分、芳香族分の低減が求められている。石油系の軽油を既存の水素化精製技術により、硫黄分を1質量ppm以下、かつ芳香族分を5質量%以下にすることは困難である。
【0003】
一方、フィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)法によれば天然ガス等の改質で得られる合成ガス(水素と一酸化炭素よりなる)からノルマルパラフィンを主成分とし、硫黄と芳香族をほとんど含まない炭化水素を合成することができる。この合成された炭化水素を原料として合成軽油を製造することが近年注目されている(例えば、特許文献1〜7参照。)。しかし、このような合成軽油は、硫黄分、芳香族分が十分に低いものではあるが、石油系の軽油と比較すると、低温性能が十分でなく、発熱量も低い。
【0004】
【特許文献1】特表平11−513729号公報
【特許文献2】特表平11−513730号公報
【特許文献3】特表2001−511207号公報
【特許文献4】特表2001−522382号公報
【特許文献5】特表2002−507635号公報
【特許文献6】特表2002−526636号公報
【特許文献7】特表2002−526637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するもので、硫黄分、芳香族分が十分に低く、かつ、実用上十分な低温性能および発熱量を確保した環境対応軽油およびその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ノルマルパラフィンを原料にして特定の触媒を用い水素化分解および異性化を行って得られた生成油の特定の留分を用いて軽油を製造することにより、このような課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明による環境対応軽油の製造方法は、シリカアルミナを含む担体に水素化活性金属を担持した触媒を用いて水素化分解および異性化を行うことでノルマルパラフィン原料から生成油を得る工程と、この生成油を分留して10%留出温度が200℃以上、90%留出温度が340℃以下の軽油留分を得る工程を含む環境対応軽油の製造方法であり、特には、前記ノルマルパラフィン原料がFischer−Tropsch法により合成されたものであることが好ましい。
【0008】
また、本発明による環境対応軽油は、密度が0.78g/cm以上、硫黄分が1質量ppm以下、曇り点が−10℃以下、目詰まり点が−5℃以下、10%留出温度が200℃以上、90%留出温度が340℃以下、炭素数10〜13のノルマルパラフィン含有量が2.0質量%以下、炭素数14〜21のノルマルパラフィン含有量が8.0質量%以下、炭素数24以上のノルマルパラフィン含有量が0.1%以下、かつ、芳香族分が5質量%以下のものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による環境対応軽油は、特定の性状を有し、特定の蒸留特性を有し、かつ、特定のノルマルパラフィン含有量分布を有するものであるから、特に硫黄分、芳香族分が極めて低く、と同時に、十分な低温性能および発熱量を有するものであるから、本発明により、実用性能に優れ、かつ環境保全に優れた環境対応軽油を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔ノルマルパラフィン原料〕
本発明の製造方法で用いるノルマルパラフィン原料は、軽質ノルマルパラフィンは水素化分解および異性化の反応性が低いので、必要に応じてあらかじめ蒸留等により原料油の軽質留分をカットしたものが好ましく、具体的には初留点としては300℃以上、特には310℃以上、10%留出温度としては350℃以上、特には360℃以上の原料を使用することが好ましい。また、このノルマルパラフィン原料の重質分は、分解により軽油留分のノルマルパラフィンに転換されるので、同じく蒸留などにより重質過ぎる留分をカットすることが好ましく、終点としては600℃以下、特には590℃以下とすること、90%留出温度としては560℃以下、特には550℃以下とすることが好ましい。これらにより水素化分解および異性化の反応率、軽油収率を高くすることができる。
【0011】
ノルマルパラフィン原料中のノルマルパラフィン含有量は85質量%以上、特には95質量%以上が好ましい。不純物含有量としては、硫黄分500ppm以下、特には50ppm以下、また、窒素分100ppm以下、特には10ppm以下が好ましい。
ノルマルパラフィン原料は、上記の性状を有するものが好ましく使用することができる。特にその種類を限定するものではないが、石油精製工程、例えば潤滑油製造工程の1つである溶剤脱ろう工程から得られるスラックワックスや、Fischer−Tropsch法により合成された合成ワックスなどを用いることができる。これらのワックスには様々な種類のものがあるが、単独で用いても良く、2種以上混合して用いても良く、スラックワックスと合成ワックスとを混合して用いも良い。特にはFischer−Tropsch法による合成ワックスを単独で用いることが好ましい。なお、Fischer−Tropsch法とは、一酸化炭素と水素を、触媒を用いて反応させ、主にノルマルパラフィン、また少量ではあるがオレフィンやアルコール等を合成する方法である。
【0012】
〔触媒〕
本発明の環境対応軽油の製造方法で用いる触媒は、シリカアルミナを含む担体に水素化活性金属を担持したものである。例えば、特表2002−523231号公報あるいは特許第2901047号公報に開示されている触媒が、好ましく用いられる。
【0013】
本発明の製造方法において、好ましく用いることができる担体は、シリカアルミナを含む無機多孔質酸化物からなる担体である。シリカアルミナを、アルミナをバインダーとして担体に成形させたものが好ましい。シリカアルミナは、非晶質または結晶質のものを用いることができるが、非晶質のものを用いることが好ましい。非晶質シリカアルミナのシリカ/アルミナモル比の範囲は3〜8がこのましい。担体にはアルミニウム、ケイ素の酸化物以外は含まれていない方が好ましいが、マグネシア、ジルコニア、ボリア、カルシア等を含ませることもできる。
【0014】
担持される水素化活性金属に特に制限はないが、周期律表の第6族、第9族、および第10族から選ばれる1種または2種以上の金属成分を含むことが好ましい。第6族、第9族、第10族から選ばれる金属としては、モリブデン、タングステン、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、パラジウムが挙げられ、特にモリブデン、タングステン、コバルト、ニッケルなどの非貴金属が水素化活性成分として好ましく用いられる。水素化活性金属の担持量は、金属元素の合計量が0.05〜35質量%、特には0.1〜30質量%となるように添加、担持することが好ましい。
【0015】
〔水素化分解および異性化〕
本発明の製造方法で用いる水素化分解および異性化は、反応温度が300〜400℃、特には320〜350℃、水素圧力が1〜20MPa、特には3〜9MPa、水素/オイル比が100〜2000NL/L、特には300〜1500NL/L、液空間速度(LHSV)が0.5〜5hr−1の反応条件で行うことが好ましい。
【0016】
ノルマルパラフィン原料中の360℃以上の成分うち、360℃未満の成分となった割合を分解率として定義すると、軽油留分の異性化率と収率を上げるためには、分解率は50〜85質量%が好ましい。85質量%を超える分解率では、軽油留分が二次分解を起こしてしまう。
【0017】
〔軽油留分〕
本発明の製造方法では、水素化分解および異性化工程による生成油から、10%留出温度が200℃以上好ましくは240℃以上、90%留出温度が340℃以下好ましくは330℃以下の軽油留分を分留する。なお、この軽油留分よりも重質な留分は、原料として再度使用することもできる。
【0018】
〔配合〕
本発明の製造方法では、上述の軽油留分をそのまま軽油として、あるいは他の軽油基材と混合して製品軽油を調製するための軽油基材として用いることができる。他の軽油基材としては、例えば、原油を精製して生産される灯油、軽油、あるいはそれらの半製品、中間製品などの配合用基材が挙げられる。また植物油メチルエステルなども他の軽油基材として配合することができる。本発明の軽油留分と他の軽油基材とを配合して軽油を調製する場合、所望の品質の軽油となるように適宜の割合で配合することができるが、他の軽油基材の配合割合は、20質量%以下、特には5〜15質量%にすることが好ましい。
【0019】
軽油への添加剤としては、低温流動性向上剤、耐摩耗性向上剤、セタン価向上剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤を添加してもよい。低温流動性向上剤としては、エチレン共重合体などを用いることができるが、特には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの飽和脂肪酸のビニルエステルが好ましく用いられる。耐摩耗性向上剤としては、長鎖(例えば、炭素数12〜24)の脂肪酸またのその脂肪酸エステルが好ましく用いられる。10〜500ppm、好ましくは50〜100ppmの添加量で十分に耐摩耗性が向上する。
【0020】
〔環境対応軽油〕
本発明による環境対応軽油は、密度(15℃)が0.78g/cm以上、好ましくは0.785〜0.815g/cm、硫黄分が1質量ppm以下、芳香族分が5質量%以下、好ましくは2質量%以下である。
【0021】
本発明による環境対応軽油の低温特性は、曇り点が−10℃以下、好ましくは−15℃〜−35℃、目詰まり点が−5℃以下、好ましくは−15℃〜−30℃であり、流動点は−10℃以下、特には−25℃〜−50℃が好ましい。
【0022】
本発明による環境対応軽油の蒸留性状は、10%留出温度が200℃以上好ましくは250℃〜290℃、90%留出温度が340℃以下好ましくは300℃〜335℃である。
【0023】
本発明による環境対応軽油のノルマルパラフィン含有量は、炭素数10〜13のノルマルパラフィン含有量が2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、炭素数14〜21のノルマルパラフィン含有量が8.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、また、炭素数24以上のノルマルパラフィン含有量が0.1質量%以下であり、好ましくは炭素数24以上のノルマルパラフィンは含まれていない。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、この実施例により、本発明が限定して解釈されるものではない。
【0025】
〔触媒Aの調製〕
シリカアルミナ粉体および擬ベーマイト粉体を混合、混練して、シリンダー状に成形した後、乾燥し、600℃で焼成することで担体を調製した。この担体は、乾燥担体基準で、シリカアルミナ80質量%およびアルミナ20質量%からなり、直径約1.6mmのシリンダー形状であった。シリカアルミナ粉体としては、シリカ/アルミナモル比4.4、凝集粒径1〜10μmのもの94.4質量%、強熱減量16.9質量%の粉体を用いた。
【0026】
この担体に、メタタングステン酸アンモニウムを含有する水溶液、および硝酸ニッケルを含有する水溶液を含浸し、乾燥後、500℃で焼成して、触媒中にタングステンを11.0質量%およびニッケルを1.0質量%含む触媒Aを調製した。
【0027】
〔触媒Bの調製〕
モルデナイト粉体および擬ベーマイト粉体を混合、混練して、シリンダー状に成形した後、乾燥し、600℃で焼成することで担体を調製した。この担体は、乾燥担体基準で、モルデナイト7質量%およびアルミナ93質量%からなり、直径1.4mmのシリンダー形状であった。モルデナイト粉体としては、シリカ/アルミナモル比210、ゼオライト細孔長径7.0オングストロームの粉体を用いた。
この担体に、モリブデン酸アンモニウムを含有する水溶液、硝酸ニッケルを含有する水溶液、燐酸を含有する水溶液を含浸し、乾燥後、500℃で焼成して、触媒中にモリブデンを12質量%、ニッケルを4質量%およびリンを2.5質量%含む触媒Bを調製した。
【0028】
〔水素化分解・異性化〕
触媒充填量100mLの固定床流通式反応装置に触媒Aを充填し、予備硫化した後、後述のノルマルパラフィン原料を用い、圧力4MPa、水素/原料油供給比660NL/L、LHSV=1.0h−1、反応温度330℃の反応条件で水素化分解・異性化反応を行い、得られた生成油から軽油留分を分留して、本発明の軽油A(実施例)を得た。
【0029】
触媒Aの代わりに触媒Bを用い、反応温度362℃とする以外は、触媒Aの場合と同様にして、軽油B(比較例1)を得た。
【0030】
ノルマルパラフィン原料としては、SMDS(Shell Middle Distillate Synthesis)製SX−50を用いた。これは、15℃換算での密度0.81g/mL、初留点316℃、10%留出温度379℃、90%留出温度457℃、終点489℃であり、Fischer−Tropsch法により合成されたものである。
【0031】
得られた軽油A、Bと比較例2として示す市販軽油の性状を表1に示す。なお、性状測定について、密度はJISK 2249、硫黄分はJIS K 2541、曇り点と流動点はJIS K 2269、目詰まり点はJISK 2288、蒸留性状はJIS K 2254、そして発熱量は、真発熱量をJIS K 2279によりそれぞれ測定した。芳香族分およびノルマルパラフィン含有量は、ガスクロマトグラフィにより分析した。
【0032】

【表1】


【0033】
上記表1から、軽油Aは、硫黄分が1ppm以下および芳香族分が1質量%以下と市販軽油より極めて低く、さらに、軽油Bや市販軽油と比べて、発熱量はほぼ同等でありながら、曇り点、目詰まり点、流動点などの低温特性に特に優れていることがわかる。
【出願人】 【識別番号】304003860
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエナジー
【識別番号】591054554
【氏名又は名称】株式会社ジョモテクニカルリサーチセンター
【出願日】 平成19年10月24日(2007.10.24)
【代理人】 【識別番号】100133905
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良夫

【識別番号】100113837
【弁理士】
【氏名又は名称】吉見 京子

【識別番号】100127421
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 さなえ

【識別番号】100090941
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清也


【公開番号】 特開2008−101214(P2008−101214A)
【公開日】 平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願番号】 特願2007−276262(P2007−276262)