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【発明の名称】 脱窒、脱硫、含酸素化合物の製造のための炭化水素基質の選択酸化方法
【発明者】 【氏名】ユ ジンソン

【氏名】リー サンチョル

【氏名】キム ホトン

【要約】 【課題】従来の除去し難い(refractory)硫黄化合物を革新的に除去してほぼ硫黄のない超深度脱硫を達成し、これと同時に脱窒までも除去する効果を示す選択酸化方法を提供すること。

【解決手段】n+/第1溶媒またはM1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒で表現される均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、輸送燃料油、例えば揮発油または軽油などを含む炭化水素基質内でセタン価またはオクタン価の増進剤として作用する有用な含酸素化合物を多量または所望の量に調節して生産するうえ、脱窒と脱硫を同時に直接行うか或いは少なくとも除去が容易な硫黄または窒素含有前駆体に変換させることが可能な、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、
前記均一触媒は、Mn+/第1溶媒、M1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒の中から選択され、
前記Mn+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、VO23+、W6+、WO42-、Cr3+、Ti4+、Fe3+、Ni2+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Ce4+、およびCe3+の中から選択され、
前記M1n+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、およびMoO4-2-の中から選択され、
前記M2m+は、Co3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、V5+、VO3+、VO23+、Cr3+、Ti4+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Re4+、Ru4+、Sm4+、Pr3+、およびCe3+の中から選択され、
前記第1溶媒、第2溶媒、および第3溶媒は、互いに同一または異なり、それぞれ水、アルコール類、CH3CN、DMF、N−ピロリドン、ギ酸、酢酸、オクタン酸(octanoic acid)、トリフルオロ酢酸、酢酸−水混合物、脂肪族または芳香族C6〜C16炭化水素、H供与性溶媒(H−donor solvent)、軽油、揮発油、LCO、およびこれらの混合物の中から選択された
ことを特徴とする炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項2】
(a)均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、(b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、
前記均一触媒は、Mn+/第1溶媒、M1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒の中から選択され、
前記Mn+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、VO23+、W6+、WO42-、Cr3+、Ti4+、Fe3+、Ni2+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Ce4+、およびCe3+の中から選択され、
前記M1n+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、およびMoO4-2-の中から選択され、
前記M2m+は、Co3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、V5+、VO3+、VO23+、Cr3+、Ti4+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Re4+、Ru4+、Sm4+、Pr3+、およびCe3+の中から選択され、
前記第1溶媒、第2溶媒、および第3溶媒は、水、アルコール類、CH3CN、DMF、N−ピロリドン、ギ酸、酢酸、オクタン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸−水混合物、脂肪族または芳香族C6〜C16炭化水素、H供与性溶媒、軽油、揮発油、およびLCOから選択された
ことを特徴とする炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項3】
均一触媒および酸化剤の存在の下で二相(biphasic)の反応系で炭化水素基質を酸化処理することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行うと同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、
前記均一触媒は、Mn+/第1溶媒、M1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒の中から選択され、
前記Mn+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、VO23+、W6+、WO42-、Cr3+、Ti4+、Fe3+、Ni2+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Ce4+、およびCe3+の中から選択され、
前記M1n+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、およびMoO4-2-の中から選択され、
前記M2m+は、Co3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、V5+、VO3+、VO23+、Cr3+、Ti4+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Re4+、Ru4+、Sm4+、Pr3+、およびCe3+の中から選択され、
前記溶媒は、水、アルコール類、CH3CN、DMF、N−ピロリドン、ギ酸、酢酸、オクタン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸−水混合物、脂肪族または芳香族C6〜C16炭化水素、H供与性溶媒、軽油、揮発油、およびLCOの中から選択された
ことを特徴とする炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項4】
前記Mn+および前記M1n+は、互いに同一または異なり、それぞれMo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、およびVO23+の中から選択された
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、O2/CO2の混合気体、O2/CO2/He混合気体、O2/CO2/Ar混合気体、H22、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、H22/HCOOH、H22/CF3COOH、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、およびシクロへキシルペルオキソジカーボネート((C611226)の中から選択された一つ以上である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項6】
前記O2/CO2の混合気体は、7〜80体積%のCO2を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項7】
前記O2/CO2の混合気体は、10〜60体積%のCO2を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項8】
前記O2/CO2の混合気体は、5〜30体積%のヘリウムまたはアルゴンを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項9】
前記O2/CO2の混合気体は、窒素を20体積%以下で含む
ことを特徴とする請求項8に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項10】
前記炭化水素基質は、(i)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品等、(ii)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(i)の炭化水素基質、(iii)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、(iv)原油から分離されたアスパルチン、(v)精油工程を経ていない全体原油、(vi)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、(vii)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H−coal)、(viii)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに(ix)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項11】
前記炭化水素基質は化学的に脱灰分過程と無機硫黄を脱硫させる過程を経た石炭であり、
前記均一触媒はFe3+/[C242-であり、主に[Fe(C2433-の形をしており、
前記酸化剤はO2/CO2混合気体である
ことを特徴とする請求項10に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項12】
前記炭化水素基質は、(i)水添工程によって脱硫、脱窒処理を行い、選択酸化によって含酸素化合物を含むように改質された揮発油、(ii)水添工程を経た軽サイクル油、重サイクル油、重留分およびこれらの混合物、並びに(iii)水添工程によって脱硫、脱窒処理を行い、選択酸化によって含酸素物を含むように改質されたディーゼルの中から選ばれた輸送油である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項13】
前記炭化水素基質は、改質された揮発油または水添処理されたディーゼルの中から選択された輸送油であり、
前記改質された揮発油は、水添処理されたディーゼルは水添工程によって脱硫および脱窒処理を行ったものである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項14】
前記ベンジリックまたはアリリック化合物は、テトラリン;アルキルテトラリン誘導体;部分的に水素化されたナフタレンおよびナフテン;キシレン、キュメン、イソプロピルベンゼン、メシチレン、シュードクメン、デュレンなどのアルキルベンゼン誘導体;およびこれらの混合物よりなる群から選択され、
前記含酸素化合物は、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、有機酸エステル類、芳香族または脂肪族有機酸類、エーテル類、およびこれらの混合物の中から選択され、
前記硫黄含有化合物は、ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT、2,5−DMDBT)、4−アルキルジベンゾチオフェン(4−MDBT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、アルキルベンゾチオフェン、ベンゾチオフェン(BT)、ジアルキルチオフェン、チオフェン、ジフェニルスルフィド、チオフェノール、メチルフェニルスルフィド、アルキルジスルフィド、およびこれらの混合物よりなる群から選択され、
前記硫黄含有前駆体は、前記硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホン形態の含酸素硫黄化合物であり、
前記窒素含有化合物は、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール、カルバゾール、およびこれらのアルキル誘導体、芳香族および脂肪族アミン類、並びにこれらの混合物の中から選択され、
前記窒素含有前駆体は、前記窒素含有化合物のNオキシド、オキシム、ニトロン、ニトロソベンゼン、ニトロベンゼンまたはインジゴ形態の含酸素窒素化合物である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項15】
前記二相(biphasic)の反応系は、オイル/アセトニトリル、オイル/DMF、オイル/酢酸、オイル/ピロリドン、オイル/NaOH水溶液、オイル/NaHCO3水溶液、オイル/Na2CO3水溶液、オイル/酢酸−水混合物、オイル/t−BuOH、およびオイル/MeOHの中から選ばれた非極性/極性反応系であり、
前記二相の反応系における酸化剤は、O2(10〜40%)−CO2/ヘテロポリ酸、O2(10〜40%)−CO2/Mo6+(青いオキシラン触媒溶液)、O2(10〜40%)−CO2/Mo6+−Mn+触媒溶液(M=Fe、Co、Ru、Cu、Zr、Hf、Ni、Zn)、ヒドロペルオキシド/ヘテロポリ酸、ヒドロタルサイト、およびヒドロタルサイト類似物質の中から選択される
ことを特徴とする請求項3に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項16】
前記酸化処理は1〜20atmの圧力条件および80〜190℃の温度条件の下で行われる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項17】
前記(b)脱硫および脱窒段階は、濾過分離法、分液法(fractionation)、選択吸着法(selective adsorption)、溶媒抽出法(solvent extraction)、触媒除去法(catalytic destruction)、選択的酸化法(selective oxidation)、および熱分解法(pyrolysis)よりなる群から選ばれた一つ以上の方法によって行われる
ことを特徴とする請求項2に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項18】
前記脱硫および脱窒はそれぞれ10ppm未満および5ppm未満で硫黄含有化合物および窒素含有化合物を除去するように行われ、
前記含酸素化合物は酸素を基準として0.5〜5重量%以上生成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素基質の選択酸化方法に係り、さらに具体的には、Mn+/第1溶媒またはM1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒で表現される均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、輸送燃料油、例えば揮発油または軽油などを含む炭化水素基質内でセタン価またはオクタン価の増進剤として作用する有用な含酸素化合物を多量または所望の量に調節して生産するうえ、脱窒と脱硫を同時に直接行うか或いは少なくとも除去が容易な硫黄または窒素含有前駆体に変換させることが可能な、炭化水素基質の選択酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油などの炭化水素基質には、例えばチオール、スルフィド、ジスルフィドのように、一般に不安定であり且つ熱処理方法または従来の水素処理工程によって容易に除去される単体硫黄および脂肪族有機硫黄などの硫黄化合物が存在する。
【0003】
このような硫黄化合物を除去するために通常用いられている従来の技術は、 水添脱硫工程(hydrodesulfurization、以下「HDS」という)であるが、このようなHDS工程の技術は、全世界の精油会社間の熾烈な競争または学文的研究によって著しく発展されており、石油精油会社にとっては、ヨーロッパ、米国および日本で施行する厳しい大気汚染防止法規に符合するように硫黄を除去するために最も重要な工程になっている。
【0004】
特に、EU国家によって主導されるように、既に幾つかのヨーロッパ国家では自動車燃料、特にガソリンにおいて硫黄をほぼゼロ水準(10ppm S)に低める技術を目標としている。この目標を達成するには非常に高度の脱硫技術が要求される。下記表1に示すように、韓国においても自動車燃料内の硫黄含有量を低める方向に法規の強化が加速化しつつある。
【0005】
【表1】


【0006】
ところが、石油に存在する硫黄成分の化合物には、除去の容易な化合物だけでなく、除去が非常に困難または不可能な化合物、例えば一連のチオフェン系化合物およびそれらの縮合チオフェン誘導体なども含まれる。
【0007】
具体的に、縮合チオフェン誘導体のうち、ベンゾチオフェンやジベンゾチオフェン、4−メチルジベンゾチオフェン、および特に4,6−ジメチルベンゾチオフェンといったより縮合した硫黄化合物などが、ガソリン、ディーゼル燃料(diesel fuel) 、HDS中間留分(middle distillates)、重留分(heavier fractions)、および石油原油(petroleum crudes)の残渣物(residual bottoms)に存在する。このようなジベンゾチオフェンまたはそのアルキル誘導体はいわゆる分離し難い(refractory)硫黄化合物と呼ばれている。これは、高温(650℃)でも熱的に安定し、通常のHDS精製工程によっても非常に除去され難いためである。
【0008】
このような理由により、硫黄含量をほぼゼロに低める目標は、現在最も発展した形態のHDS触媒技術によっても達成することが殆ど不可能である。これは、現在のHDS工程に含まれた根本的な化学原理では前述したように本質的に克服することが難しいという問題があるためである。
【0009】
かかる問題を解決するために、多くのHDS触媒が実験的に報告されてきたが、このような技術さえもあまり過酷なHDS工程を要求しているから、オレフィン、パラフィンおよび多環(multi−ring)化合物を含んだ芳香族化合物などの必須的な炭化水素成分が過度に水添され、高価の水素を夥しく多量消費するという別の問題点がある。
【0010】
値段の高い水素が多量消費されるという経済的な問題点の他にも、その結果として、気体生成物と過度に水添された生成物が多量生成され、HDS生成物の量は相当減少するが、これは、相当な量のオクタン価(ガソリン)またはセタン価の損失につながる結果を生む。よって、所望の物理的および化学的性質を充足させるためには(例えばガソリンの場合にオクタン価を回復し、改質ガソリンおよび将来の酸素処理されたディーゼルにそれぞれ要求される酸素含量を充足させるためには)、クラッキング反応および特殊な含酸素化合物との混合過程などの追加工程が別途に行わなければならないが、これは、もう実用的な自動車燃料にはなれないという別の深刻な問題点を誘発している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる従来のHDS技術の問題点を克服するために、本発明は、従来の酸化し難い(refractory)硫黄化合物を革新的に除去してほぼ硫黄のない超深度脱硫を達成し、これと同時に脱窒までも行う効果を示す選択酸化方法を提示している。ひいては、オクタン価またはセタン価の損失を誘発する従来のHDS技術とは異なり、本発明に係る選択酸化方法は、アリリックまたはベンジリック炭化水素基質を選択的に酸化させてオクタン価またはセタン価を却って増進させる相乗的効果を同時に示すということに大きい意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、前記均一触媒は、Mn+/第1溶媒、M1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒の中から選択され、前記Mn+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、VO23+、W6+、WO42-、Cr3+、Ti4+、Fe3+、Ni2+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Ce4+、およびCe3+の中から選択され、前記M1n+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、およびMoO4-2-の中から選択され、前記M2m+は、Co3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、V5+、VO3+、VO23+、Cr3+、Ti4+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Re4+、Ru4+、Sm4+、Pr3+、およびCe3+の中から選択され、前記第1溶媒、第2溶媒、および第3溶媒は、互いに同一または異なり、それぞれ水、アルコール類、CH3CN、DMF、N−ピロリドン、ギ酸、酢酸、オクタン酸(octanoic acid)、トリフルオロ酢酸、酢酸−水混合物、脂肪族または芳香族C6〜C16炭化水素、H供与性溶媒(H−donor solvent)、軽油、揮発油、LCO、およびこれらの混合物の中から選択された、ことを特徴とする炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、(a)均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、(b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、前記均一触媒は、Mn+/第1溶媒、M1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒の中から選択され、前記Mn+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、VO23+、W6+、WO42-、Cr3+、Ti4+、Fe3+、Ni2+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Ce4+、およびCe3+の中から選択され、前記M1n+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、およびMoO4-2-の中から選択され、前記M2m+は、Co3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、V5+、VO3+、VO23+、Cr3+、Ti4+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Re4+、Ru4+、Sm4+、Pr3+、およびCe3+の中から選択され、前記第1溶媒、第2溶媒、および第3溶媒は、水、アルコール類、CH3CN、DMF、N−ピロリドン、ギ酸、酢酸、オクタン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸−水混合物、脂肪族または芳香族C6〜C16炭化水素、H供与性溶媒、軽油、揮発油、およびLCOから選択された、ことを特徴とする炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、均一触媒および酸化剤の存在の下で二相(biphasic)の反応系で炭化水素基質を酸化処理することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行うと同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、前記均一触媒は、Mn+/第1溶媒、M1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒の中から選択され、前記Mn+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、VO23+、W6+、WO42-、Cr3+、Ti4+、Fe3+、Ni2+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Ce4+、およびCe3+の中から選択され、前記M1n+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、およびMoO4-2-の中から選択され、前記M2m+は、Co3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、V5+、VO3+、VO23+、Cr3+、Ti4+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Re4+、Ru4+、Sm4+、Pr3+、およびCe3+の中から選択され、前記溶媒は、水、アルコール類、CH3CN、DMF、N−ピロリドン、ギ酸、酢酸、オクタン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸−水混合物、脂肪族または芳香族C6〜C16炭化水素、H供与性溶媒、軽油、揮発油、およびLCOの中から選択された、ことを特徴とする炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明は、一つの反応器内で第1段階の液相選択酸化を行い、様々な炭化水素基質から硫黄および窒素含有化合物を除去し且つ有用な含酸素化合物を合成することができるという作用効果を示している。本発明の工程は、特に深度または超深度脱硫、脱窒を行い、兼ねて向後の輸送油に要請される酸素含有量とオクタン価およびセタン価の規制を同時に充足させる工程である。
【0016】
本発明が適用可能な炭素水素基質としては、石油から誘導されたFCC産品、輸送燃料(揮発油および軽油)、中間留分(middle distillates)、重質油、および残渣油を含む。そして、石炭、石炭から派生した全ての産品、黒鉛、シェール油(shale oil)、オイルサンド(tar sand)などの固体化石燃料の清浄にも適用することができる。
【0017】
本発明によれば、Mn+/第1溶媒またはM1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒で表現される非MC型均一触媒を用いて留分、ナフサにおいて揮発油、軽油、重質油、残渣油などの多様な石油製品に含まれている硫黄成分、特に酸化し難いチオフェン誘導体、ベンゾチオフェン(BT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、4,6−ジメチルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT)、N−化合物(アミン、ピロール系、ピリジン系)、ベンジル酸、およびアリリック炭化水素を選択酸化反応させることにより、それぞれ該当するスルホキシド/スルホン、N−オキサイド/インジゴ/オキシム、および軽油のセタン価、揮発油のオクタン価の増進剤である有用な酸化物(ケトン、アルコール、アルデヒド、エーテル)を一つの反応器内で第1段階の反応によって合成することができる。
【0018】
本発明は、このように選択酸化過程で産出されたスルホキシド/スルホンおよびN−オキサイド/インジゴ/オキシムなどに対して、二相(極性/非極性の溶媒)の酸化反応器内で極性溶媒相に分離/除去し、或いは第2段階で単純な熱分解(水素供与性溶媒あり、触媒なし)、従来の触媒および新塩基触媒を用いた接触脱硫/脱窒を行い、或いは従来の公知の簡単な分離方法(溶媒選択抽出、選択吸着剤、分留、酸化または非酸化二相分離法)を用いて脱硫と脱窒を行うことにより、硫黄または窒素成分が超深度(ultra−low)で存在するまたは全く存在しない(S−freeおよびN−free)留分を製造し、兼ねて有用な含酸素化合物(oxygenates)を合成して、向後の酸素含量に関する環境規制の強化に対応することが可能な石油留分清浄工程である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による炭化水素基質の選択酸化方法は、Mn+/第1溶媒またはM1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒で表現される均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を選択酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む。
【0020】
このような選択酸化段階によって揮発油のオクタン価または軽油のセタン価を増進させる作用をする含酸素化合物が多量または所望の量だけ調節されて生成されるうえ、除去が相対的に容易な硫黄または窒素含有前駆体への転換が起こるので、前記選択酸化工程の後に脱硫と脱窒のための後処理段階を順次行うことにより、超深度脱硫および脱窒を容易に達成することもできる。
【0021】
硫黄含有化合物が効果的に除去されるためには、酸化を妨害する立体影響を迂回するために脱アルキル化および/または異性化反応、すなわち4−および6−位置から他の位置へ移動させる反応が先行されなければならない。ところが、4,6−ジメチルジベンゾチアフェンのように従来のHDS技術において問題となる硫黄化合物は、構造的に硫黄原子を取り囲む4−および6−位置の2つのメチル基によって大きい立体影響を受けているから、脱硫が最も難しい化合物であるしかなく、従来のHDS技術の根本的な問題がこのような根本的な化学原理に起因するものと言える。要するに、従来のHDS技術によっては最も発展した形態のHDS触媒を使用しても硫黄含有量をほぼゼロに低めることが可能な実用的な工程を得ることができないという点から、従来のHDS技術は経済的にも技術的にも致命的な限界を持っているといえる。
【0022】
これに対し、HDS工程において4,6−ジメチルジベンゾチオフェンの構造による立体影響とは異なり、基質分子の4−および6−位置にある2つのメチル基の電子提供機能は、下記表2に示すように、硫黄原子に電子密度を増加させる。よって、硫黄原子は求電子攻撃、例えば酸化反応を受ける可能性が一層さらに多くなる。
【0023】
【表2】


【0024】
従って、酸化し難い硫黄化合物、DBTおよびそのアルキル誘導体は、選択的なスルホキシデーション工程に対して伝統的なHDS反応から観察されるのと正確に反対の反応性傾向を示す。すなわち、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンのように高温(460℃)でも安定し、従来のHDS技術によっては過酷条件ですら酸化が最も難しかった硫黄化合物は、酸化性脱硫(oxidative desulfurization、以下「ODS」という)工程では脱硫が最も容易な基質になり、これを下記に図式的に示した。
【0025】
【化1】


【0026】
これをさらに具体的に考察すると、ビチオフェン系硫黄化合物系の場合は、硫黄化合物の電子密度が前記に示すようにジフェニルスルフィド<チオフェノール<メチルフェニルスルフィドの順で増加し、その結果、選択的な酸化反応のような求電子攻撃は、オキシラン−溶解性Mo−触媒において硫黄原子の電子密度にみられるのと同一の傾向で行われる。遷移金属イオンを含む類似の均一触媒システムにおいて一連のチオフェン系誘導体、特に酸化し難いジベンゾチオフェン(DBT)、4−アルキルジベンゾチオフェン(4−MDBT)、および4,6−ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT)の選択的酸化にも下記の如く同一の化学原理が適用できる。
【0027】
また、酸素原子とは異なり、S原子は一般にその酸化状態を容易に拡張していろいろの酸化物を生成する。例えば、DBT誘導体は、下記反応式1に示すように、まず部分的に酸化してスルホキシドに転換された後、連続してスルホンに転換される。このような酸化程度によって沸点、分子極性、溶媒に対する溶解度などの物理、化学的性質が大きく異なるが、このような点を考慮し、簡単な物理的処理方法、濾過分離、分留、熱分解、溶媒選択抽出、吸着などの方法を用いて、酸化した生成物を容易に分離・除去することができる。一方、塩基などの触媒を用いて化学的分解を起して脱硫を行うことができる。これを下記に図式的に示す。
【0028】
【化2】


【0029】
このように転換された硫黄または窒素含有前駆体は、本発明で提示したいろいろの方法を順次行わせることにより、容易に脱硫または脱窒させることができる。よって、脱硫、脱窒、含酸素化合物の生成によるセタン価またはオクタン価の向上という目的または効果を一挙に達成することができるという点に本発明の意義がある。
【0030】
すなわち、本発明の選択酸化工程は、値段の高いH2を多量使用しなければならないという従来のHDS工程の問題点を解決するために、非水素(non−hydrogen)工程であって、酸化的脱硫(oxidative desulfurization、ODS)工程の性格を帯びているが、新環境規制によって揮発油に2.0〜2.7%の酸素含量が既に規定されており、軽油の酸素含量規制も非常に短時日内に施行される緊迫な現時点を勘案するとき、炭化水素の無差別酸化の概念を代替して、却って調節された酸化を選択的に達成しながら揮発油のオクタン価と軽油のセタン価を増進させることが可能な含酸素化合物を生成させると同時に、超深度脱硫および脱窒を共に併行することができるという点に、本発明の最も大きい意義があると言える。
【0031】
また、前述したように、脱硫と脱窒の段階は、選択酸化段階と順次行われてもよく、炭化水素基質の酸化処理と同時に行われてもよい。また、特定の炭化水素気質ではこのような同時処理方法が相対的に一層優れた作用効果を示すということも確認した。
【0032】
したがって、別観点によれば、本発明の炭化水素基質の選択酸化方法は、均一触媒および酸化剤の存在の下で二相(biphasic)の反応系で炭化水素基質を選択酸化処理することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行うと同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む。
【0033】
これをより具体的に説明すると、硫黄含有炭化水素、窒素含有炭化水素、アリリックまたはベンジリック炭化水素の代表的な模型化合物としてそれぞれDBT、インドール(indole)、テトラリン(tetralin)を選択して二相(非極性/極性)選択酸化反応を行うことにより、生成されるSまたはN含有前駆体および含酸素生成物が水溶液または食酢酸−水のような極性溶媒層に移動して比較的容易に分離または除去でき、このような工程の反応メカニズムを下記に図式的に示した。
【0034】
【化3】


【0035】
【化4】


【0036】
一方、もし炭化水素基質に一定量以上の窒素含有化合物が存在するとき、場合によっては選択酸化反応を妨害する要素としても作用する可能性がある。よって、本発明の好適な具現例によれば、本発明に係る選択酸化処理を行う前に、窒素含有前駆体を部分的に除去する前処理段階を行うこともある。このような前処理段階は、吸着剤を用いて行うことができる。また、吸着剤として別途に採用する代わりに、本発明に係る均一触媒の一部が前記窒素含有前駆体を吸着させる吸着剤として作用するようにし、残部が選択酸化に触媒として作用するようにすることもできる。
【0037】
本発明において使用できる均一触媒としては、前記Mn+/第1溶媒またはM1n+/第2溶媒/M2m+/第3溶媒で表現される均一触媒を使用することができる。
【0038】
ここで、前記Mn+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-、V5+、VO3+、VO23+、W6+、WO42-、Cr3+、Ti4+、Fe3+、Ni2+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Ce4+、およびCe3+の中から選択され、
前記M1n+は、Co3+、Mo6+、MoO22+、MoO4+、およびMoO4-2-の中から選択され、
前記M2m+は、Co3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、V5+、VO3+、VO23+、Cr3+、Ti4+、Zr4+、ZrO2+、Hf4+、Ta6+、Nb5+、Re4+、Ru4+、Sm4+、Pr3+、およびCe3+の中から選択できる。
【0039】
この中でも、Mn+およびM1n+は、Mo6+、MoO22+、MoO4+、MoO42-などのMo系列およびV5+、VO3+、VO23+などのV系列の中から選択されることが触媒の活性、転換率、収率、選択度などのいろんな面で好ましく、特に前記Mo系列が最も好ましい。
【0040】
前記第1溶媒、第2溶媒、および第3溶媒は、互いに同一であっても異なってもよく、それぞれ水、アルコール類、CH3CN、DMF、N−ピロリドン、ギ酸、酢酸、オクタン酸(octanoic acid)、トリフルオロ酢酸、酢酸−水混合物、脂肪族または芳香族C6〜C16炭化水素、H供与性溶媒、軽油、揮発油、LCO、およびこれらの混合物の中から選択でき、特に第2溶媒と第3溶媒としてTBAなどのアルコール類を使用することが触媒の活性、転換率、収率、選択度などのいろんな面で好ましい。
【0041】
ここで、第2溶媒/第3溶媒は、例えばTBA/ベンゼンのように相互混和性が低い溶媒対は好ましくなく、極性/非極性または非極性/非極性を帯びて相互混和性が高い溶媒対が好ましい。相互混和性の高い溶媒対は、たとえ本発明に列挙して説明してはいないが、本発明の属する技術分野における当業者であれば、本発明の開示内容および以下の実験結果に基づいて容易に選択して使用することができるという点は自明であろう。
【0042】
本発明において、「均一触媒+酸化剤」の選択酸化システムまたはここで使用される「酸化剤」は、炭化水素基質を過度にならないよう選択的に部分酸化させる作用を行う。本発明で使用可能な酸化剤の例には、O2/CO2の混合気体、H22、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、H22/HCOOH、H22/CF3COOH、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルペルオキソジカーボネート((C611226)、H22/へテロポリ酸(H3PMo1240、H3PW1240、H0.5Cs2.5Po1240、H22/Mo(CO)6、TBHP/へテロポリ酸(H3PMo1240、H3PW1240、H0.5Cs2.5PMo1240、TBHP/Mo(CO)6、TBHP/M(acac)2(但し、M=Mo、V)、H22/金属ナフテン酸塩(但し、M=Mo、V、Cr、Mn、Ti、Co、Fe、Ni、Ta、Re、Nb、Ri、Re、Rh、W)、TBHP/VOC24、TBHP/M12IVO(C242、TBHP/M12IVO(C243、TBHP/M12IV2(C242、H22/金属オクチル酸塩(但し、M=Mo、V、Co、Fe、Ni、Ti、Cr、Mn、W、Ce、Ru)、TBHP/金属オクチル酸塩(但し、M=Mo、V、Co、Fe、Ni、Ti、Cr、Mn、W、Ce、Ru)、またはこれらの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0043】
これらの中でも、O2/CO2の混合気体、TBHP、H22、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、H22/HCOOH、H22/CF3COOH、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルペルオキソジカーボネート((C611226)などが本発明における酸化剤として好ましい。
【0044】
特に、本発明で使用可能な酸化剤として、O2/CO2の混合気体を使用する場合には、前記混合気体に5〜100体積%のCO2が含有できるが、好ましくは7〜80体積%のCO2、さらに好ましくは10〜60体積%のCO2が含有されることが好ましい。
【0045】
また、O2/CO2の酸化剤には5〜30体積%のヘリウムまたはアルゴンが含有でき、酸化反応に参加しない不活性希釈気体として作用することができるという側面で有利であり得る。これに対し、窒素は、含有量が多い場合、酸化反応に直接参加して酸化反応を阻止するという問題点が発生するおそれもあるので、O2/CO2の体積を基準として20体積%未満、好ましくは10体積%未満、さらに好ましくは5体積%未満で含有されることが有利であり、究極的には0体積%とすることが有利である。
【0046】
2/CO2またはO2/CO2/Ar(N2)酸化気体を本発明に係る均一触媒と共に使用すると、液相酸化反応器自体内でペルオキシド、ヒドロペルオキシドおよびペルオキソカーボネートなどの酸化活性中間体をインシチュ(in-situ)にて作り出すが、このような選択酸化反応を行うことにより、従来で使用されていた既存の値段の高い酸化剤を代替することができる。次に、様々な基質の酸化反応性を示す。
【0047】
【化5】


【0048】
本発明は、硫黄または窒素を除去すると同時に、セタン価またはオクタン価を向上させることが可能な含酸素化合物も共に生成させることを目的としているので、このような目的に鑑みたとき、内部に含まれている硫黄または窒素を除去する必要性、および含酸素化合物を生成させる必要性がある炭化水素基質であれば、本発明に適用することができる。このような炭化水素基質の例には次の炭化水素基質が含まれるが、これに限定されない。
【0049】
【表3】


【0050】
このような炭化水素基質の中でも、(i)水添工程によって脱硫、脱窒処理をし、選択酸化によって含酸素化合物を含むように改質された揮発油と、(ii)水添工程を経た軽サイクル油、重サイクル油、重留分およびこれらの混合物、(iii)水添工程によって脱硫、脱窒処理をし、選択酸化によって含酸素化合物を含むように改質されたディーゼルなどが、本発明を適用することが可能な好ましい炭化水素基質の例である。
【0051】
本発明において、「ベンジリックまたはアリリック化合物」は、炭化水素基質において、セタン価またはオクタン価を向上させることが可能な含酸素物質を生成させ得る出発物質として作用可能な化合物であればいずれでも含む概念であり、その代表的な例には、テトラリン;アルキルテトラリン誘導体;部分的に水素化されたナフタレンおよびナフテン;例えばキシレン、クメン、イソプロピルベンゼン、メシチレン(mesitylene)、シュードクメン(pseudocumene)、デュレンなどのアルキルベンゼン誘導体、およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。
【0052】
本発明において、「含酸素化合物」は、炭化水素基質においてセタン価またはオクタン価を向上させる作用をする酸素含有化合物であればいずれでも含む概念であり、その代表的な例には、α−テトラオールおよび1−(2−ナフチル)エタノールなどのアルコール類;α−テトラオン、1,4−ナフトキノンおよびフルオレノンなどのケトン類;α−テトラレンアルデヒドなどのアルデヒド類;オレイン酸メチル、リノール酸プロピル、ステアリン酸ブチルおよび大豆メチルなどの有機酸エステル類;マレイン酸ジブチル、テレフタル酸、2,6−ジフタル酸およびステアリン酸などの芳香族または脂肪族有機酸類;グライム(glyme)、ジグライム(diglyme)、トリグライム(triglyme)、およびトリプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル類;およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。
【0053】
本発明において、「硫黄含有化合物」の例には、ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT、2,5−DMDBT)、4−アルキルジベンゾチオフェン(4−MDBT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、アルキルベンゾチオフェン、ベンゾチオフェン(BT)、ジアルキルチオフェン、チオフェン、ジフェニルスルフィド、チオフェノール、メチルフェニルスルフィド、アルキルジスルフィド、およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。また、本発明において、「硫黄含有前駆体」とは、このような硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物を意味する。
【0054】
本発明において、「窒素含有化合物」の例には、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール、カルバゾール、およびこれらのアルキル誘導体、芳香族および脂肪族アミン類、並びにこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。また、本発明において、「窒素含有前駆体」とは、このような窒素含有化合物のN−オキサイド、オキシム、ニトロン、ニトロソベンゼン、ニトロベンゼン、またはインジゴ形態の含酸素窒素化合物を意味する。
【0055】
本発明において、「二相(biphasic)反応系」は非極性/極性反応系を意味し、このような二相反応系の例にはオイル/アセトニトリル、オイル/DMF、オイル/酢酸、オイル/ピロリドン、オイル/NaOH水溶液、オイル/NaHCO3水溶液、オイル/Na2CO3水溶液、オイル/酢酸−水混合物、オイル/t−BuOH、およびオイル/MeOHが含まれるが、これに限定されない。
【0056】
本発明において、「オイル」は、狭義的にはTGOのように本発明の方法が適用できる炭化水素基質を意味し、広義的には実際商業的にも適用できる炭化水素基質以外にも実験的に擬似留分として使用できるベンゼンまたはn−オクタンなどの非極性溶媒も含む概念である。
【0057】
このような二相(biphasic)の反応系で使用可能な好ましい「酸化剤」または「均一触媒−酸化剤の酸化システム」としては、前述した酸化剤または酸化システムの中でもO2(10〜40%)−CO2/ヘテロポリ酸、O2(10〜40%)−CO2/Mo6+(青いオキシラン触媒溶液)、O2(10〜40%)−CO2/Mo6+−Mn+触媒溶液(M=Fe、Co、Ru、Cu、Zr、Hf、Ni、Zn)、ヒドロペルオキシド/ヘテロポリ酸、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質の中から選択された酸化剤または酸化システムを使用することが実用的な側面で好ましい。
【0058】
本発明において、前記選択酸化は、1〜30気圧で処理することが好ましく、さらに好ましくは5〜20気圧、最も好ましくは10〜15気圧で処理することが有利であり、前記圧力範囲の下限と上限から外れる場合にはそれぞれ不振な酸化反応をもたらす問題点、および過度な圧力により反応遂行と安定性に関する問題点が発生するおそれがある。
【0059】
また、前記選択酸化の温度条件は80〜210℃であることが好ましく、さらに好ましくは130〜190℃、最も好ましくは140〜180℃であることが有利であり、前記温度範囲の下限と上限から外れる場合にはそれぞれ所期の酸化反応が不振であり或いは過度に行われるという問題点が発生するおそれがある。
【0060】
本発明において、前記脱硫および脱窒の後処理段階は、濾過分離法、分液法(fractionation)、選択吸着法(selective adsorption)、溶媒抽出法(solvent extraction)、触媒除去法(catalytic destruction)、選択的酸化法(selective oxidation)、および熱分解法(pyrolysis)の中から選ばれた少なくとも一つの方法によって行われ得る。
【0061】
この中でも、濾過分離法は、選択酸化段階で生成されて極性溶媒層に沈殿した前記硫黄または窒素含有前駆体を濾過装置または遠心分離機で分離する。
【0062】
また、選択吸着法は、活性炭繊維(active carbon fiber)、炭素ナノ管(carbonnano tube)、炭素分子篩(carbon molecular sieve);M/活性炭繊維、M/炭素ナノ管、M/炭素分子篩(M=Pd、Zn、Cu、Ni、Fe、Mn、Ti、Mg、Sr、Ba、Na、K);メソ多孔性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト;金属処理で活性化されたメソ多孔性アルミナ、金属処理で活性化されたシリカゲル、金属処理で活性化されたゼオライト;M/Al23、SiO2、MCM−41(M=Y、La、Ni、Mo、Cr、W、V、Co、Cu)、ペロブスカイト(Perovskite)、Y3+添加によって安定させた金属酸化物;ZrO2、CeO2−ZrO2、およびPrO2−ZrO2;MgO−MgAl24、MgAl24・xMgO、およびMgAl24・yAl23、Cs/ZSM−5、Ba/MCM−41、Zn−Al二重層状ヒドロキシド(DLH)、ヒドロタルサイト(hydrotalcite)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg0.819Ga0.181(OH)2(CO3)の中から選ばれた一つ以上の吸着剤を用いて行われる。
【0063】
溶媒抽出法は、N,N’ジメチルホルムアミド(DMF)、CH3CN、DMF、DMSO、MeOH、t−BuOH、メチルエチルケトン(MEK)、CH3COOH、ジメチルピロリドン、ジオキサン、スルホラン(sulfolane)、アルカリ金属、および炭酸ソーダ(NaHCO3、Na2CO3)水溶液の中から選ばれた溶媒を用いて行われる。
【0064】
また、触媒除去法は、t−BuONA、NaOH、NaOH−KOH、CH3CO2Na、Li2CO3−NaCO3−K2CO3の共融混合物(eutectic mixture)、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al23、K/Al23、Li/MgO、Cs/SiO2、MgFe24、[Ni(COD)2Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl24(商業用DeSOx触媒)、MgO・MgAl24(固溶体)、およびZn−Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われる。
【0065】
前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H−doner)溶媒および/またはMgO・MgAl24、xAl23・yMgAl24(固溶体)、Cs/ZSM−5、Ba/MCM−41、Cs/SiO2、Zn−Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイト、およびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO−CaO、Na/Al23、K/Al23、AlGaPON、ZrGaPON、Mg1-xGax(OH)2CO3などの塩基触媒の存在下で行われる。
【0066】
この場合、前記MgO・MgAl24、前記xAl23・yMgAl24(固溶体)、前記Ce/V/MgO・MgAl24、前記Cs/ZSM−5、前記Na/Al23、前記K/Al23、前記Cs/SiO2、前記Ba/MCM−41、NaOH−KOH、NaOH、CVD Fe/Mo/DBH、FCC触媒、廃FCC触媒、廃RFCC廃触媒、ゼオライト(ZSM−5、MCM−41など)、商業用HDS触媒(始触媒または廃触媒)、商業用HDN触媒(始触媒または廃触媒)、およびこの他の各種廃固体酸触媒をリサイクルして使用することができる。
【0067】
本発明において、脱硫および脱窒は、それぞれ20ppm未満および10ppm未満で硫黄含有化合物および窒素含有化合物を除去するように行われることが実用的な面で好ましく、さらに好ましくは10ppm未満および5ppm未満、最も好ましくは5ppm未満および2.5ppm未満、究極的には0ppmにそれぞれ脱硫および脱窒させることが有利である。
【0068】
また、前記含酸素化合物は、改質揮発油の酸素含量規制値を充足させるために、酸素を基準として2.0〜5.0重量%で生成されることが好ましく、さらに好ましくは2.2〜3.0重量%、最も好ましくは2.2〜2.7重量%(酸素含量環境規制)で含酸素化合物を生成させるオクタン価またはセタン価の増進、PM低減、NOxおよびSOx低減の側面で有利である。軽油の場合は、未だ酸素含有量の規制値が設定されていないが、今後規定される数値に順応すればよい。
【0069】
一方、本発明の方法は、改質された揮発油または水添処理されたディーゼルの中から選択された輸送油にも適用することができるが、これにより従来の方法である水添処理工程によって脱硫、脱窒処理を施した揮発油またはディーゼルのオクタン価またはセタン価を大きく向上させることができるという利点がある。
【0070】
以下、本発明の内容を実施例によって具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明の内容を説明するためのもので、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【0071】
[実施例1]
(1)「単一成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の「単相」選択酸化システムの製造
水素処理(hydrotreated)LCN、HCN、LCO、HCOおよび精製オイル(clarified oil)に入っているS−、N−化合物およびテトラリンなどのベンジリック炭化水素などを選択的に一つの反応器内で酸化させ得る均一触媒溶液を次のように製造した。
【0072】
すなわち、M−ナフテン酸塩(naphthenate)、M−ステアリン酸塩、M(CO)6、MO2(acac)2(acac:アセチルアセトナート)、M−オクチル酸塩(M:Mo、V、Te、Re、Ta、Nb)などの炭化水素に溶解されたM−錯塩を使用し、あるいは各種金属粉末(Mo、V、Te、Re、Ta、およびNb)、MoO3およびモリブデン酸などの不溶性前駆体を、t−ブチルアルコール(TBA)に混入しているTBHPと反応させて均一触媒を作った。
【0073】
その中でも、特に高い酸化活性を持つMo(オキシラン)均一触媒は、まず1.48gのMo粉末(<200メッシュサイズ)をTBHP:TBA:エチレングリコールの混合溶媒(2:4:1重量比)に溶解させて1000mLの青い触媒溶液を製造した。少量のギ酸、t−ギ酸ブチル、t−酢酸ブチルなどをこの混合溶媒に添加して一層容易に触媒溶液を製造することができた。
【0074】
このような触媒の製造において経済性を一層向上させるために、この混合溶媒の代わりにプロピレンオキシド商業工程から排出される残宰廃液を直接用いて、商業用触媒溶液を製造することもできた。この均一廃触媒は、所期の選択酸化反応が終わった後、1%NaOHまたはNH4OH水溶液で処理し、そのときに発生した水相(aqueous phase)と有機相を分離して、分離された水溶液をCaOなどの塩基処理で沈殿させて回収することができた。
【0075】
(2)「単一成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の「単相」選択酸化システムの酸化活性確認
次のような組成で製造し、前記で製造した様々な金属の単一成分均一触媒を用いて80℃で2時間ベンゼン溶媒で液相酸化反応を行い、その活性を検証した。この実験結果を表4にまとめた(単一金属均一触媒の活性検証実験)。
【0076】
<混合物基質>
ジエチルスルフィド 1.3×10-2モル
ベンゾチオフェン 1.3×10-2モル
t−BuOOH(TBHP) 0.03モル
ベンゼン 52mL
Mo(オキシラン)触媒溶液 0.100g(100ppm Mo)
【0077】
【表4】


【0078】
(3)「単一成分均一触媒」+「TBHP以外の酸化剤」の「単相」選択酸化システムの製造および酸化活性の確認
前記で優れた効果を示すMo−触媒溶液およびV−触媒溶液は使用するが、TBHPの代わりにシュードクメン(pseudocumene)ヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、H22/HCOOH、H22/CH3COOH、CX3COOH(X=F、Cl)を使用することにより、「均一触媒」+「TBHP以外の酸化剤」の選択酸化システムを製造した。また、これに対する酸化活性を確認し、その結果TBHPを使用した場合に相当する酸化活性(転換率および酸化選択度)を観察することができた。
【0079】
それだけでなく、前記酸化剤は、その価格が高いため、既に合成されたヒドロペルオキシド、ペルオキシド、H22、または過酸(peracids)を使う代わりに、酸化反応器内で既に知られている工程を用いて直接製造すると、初期の選択酸化反応を低いコストで行うことができた。例えばH22の場合、H2とO2からPd(1%)t−Pt(0.1%)TS−1[P.Albert et al.,J.Mol.Catal.58,115(1990);R.Meiers et al.,Catal.Lett.,59,161(1999)]、Pd触媒を使うアントラキノン[kirch−Othmer Encyclopedia of Chem.Tech.,13、4th Ed.,1995、p.961]、Pt−Au触媒、並びにMFI構造を持つTS−1およびMEL構造を持つTS−2などのゼオライト触媒として水、H22+MeOH、アセトン、CH3CN溶媒を用いて酸化反応器内でインシチュ酸化(in situ oxidation)反応を誘起させてH22を作って酸化に使用することにより、工程経済性の向上を図って所期のH22−選択酸化を達成し、全体工程の経済性を向上させることができた[B.Notari et al., Advances in Catalysis、Vol41、p.253、1996、Academic Press;R.N. Cochran et al.,米国特許第5,039,508号(1991)]。
【0080】
ひいては、前記で優れた性能を示す単一成分Mo−およびV−触媒溶液を使用する一方、前記値段の高い酸化剤を使用する代わりにO2/CO2(O2とCO2を適当な配合で予め混合した気体)を酸化気体に投入することにより、選択酸化を行った。その結果、ペルオキソカーボネート(peroxocarbonate)という活性中間体がインシチュにて生成されることを確認し、また、これによりDBTスルホンが高い選択度および高い転換率で生成されることを確認した。この場合には、特にオートクレーブなどの反応器を用いて5〜15気圧の圧力下で選択酸化を行うことにより、前記TBHPを使用した場合と同等またはより優れた水準の高いDBTスルホン生成収率を実現することができた。
【0081】
[実施例2]
(1)「2成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の「単相」選択酸化システムの製造
Mo粉末をTBA、TBHPに溶解させて作った青いMo(オキシラン)触媒に第2の金属化合物、特に、表4に示すようにアリリックおよびベンジリック炭化水素の選択酸化を促進することが可能な金属および有機金属化合物を配合することにより、いろいろの「2成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の選択酸化システムを製造した。
【0082】
(2)「2成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の「単相」選択酸化システムの選択酸化活性の確認
前記で製造した「2成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の選択酸化システムを用いて80℃および常圧で2時間DBTの選択酸化反応を行い、DBTスルホンが生成されるか否かを確認し、その結果を表5にまとめて示した(DBT酸化のための2成分触媒系の検証実験)。
【0083】
【表5】


【0084】
表5の1番または2番の実験では、Co(acac)2またはMn(acac)3のベンゼン溶液をMo(オキシラン)(TBA/TBHPに溶解された溶液触媒)に配合することにより、CoまたはMnがMoと完全に分離された沈殿状態で存在して不活性化され、これによりDBTがまともに酸化しない結果を示した。
【0085】
これに対し、3〜7番の実験では、2種類の金属が独立にそれぞれ金属イオンの形で均一相に存在するため、DBT酸化反応に活性を発揮してDBTスルホンを生成する結果を示した。特に、7番の実験から観察できるように、前記2金属粉末をTBA/TBHP媒体に溶解させて作った2成分触媒系は、その活性が卓越であってDBTスルホンの製造に非常に優れた触媒系として確認された。
【0086】
(3)「2成分均一触媒」+「TBHP以外の酸化剤」の「単相」選択酸化システムの製造および選択酸化活性の確認
TBHPの代わりにO2/CO2(30/70)の酸化気体を使用することにより、2成分系の選択酸化システムを製造し、オートクレーブを用いて5〜15気圧の圧力下でDBTの選択酸化を行った。その結果、TBHPなどのヒドロペルオキシドを使わなくても、非常に優れた収率でDBTスルホンが合成されることを確認した。
【0087】
それだけでなく、テトラリンなどのベンジリック炭化水素の選択酸化も行ったところ、セタン価の増進剤として知られているテトラロンなどのケトン、アルコール、アルデヒドが高収率で合成されることを確認し、これにより優れたセタン増進の効果を確認することができた。
【0088】
[実施例3]
ジベンゾチオフェン(DBT)、4−メチルジベンゾチオフェン(4−MDBT)および4,6−ジメチルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT)のように除去し難い代表的なチオフェン化合物をそれぞれMo(オキシラン)触媒溶液(Mo金属粉末を溶解させて作った青い溶液触媒)によってTBHPに酸化させ、その時間の流れに従って酸化程度を追跡して図1に示した(■:4,6−DMDBT、◆:DBT、▲:BT)。
【0089】
図1は従来のHDS工程の除去順序傾向と求電子攻撃(electrophilic attack)による酸化の難易度傾向は互いに正反対の方向であることを示している。すなわち、HDS工程における立体障害により4,6−DMDBTなどの化合物は極めて酸化し難い傾向を示すが、選択酸化反応では正反対に4,6−DMDBTが最も容易に極めて短時間内に酸化してスルホンに完全に転換されることを示す。
【0090】
このような結果により、従来のHDS工程が持ついろいろの深刻な弱点、すなわち硫黄を完璧に除去し(S−free)、或いは深度または超深度脱硫が事実上不可能であるという弱点が、本発明の選択酸化方法によって克服できることを明確に示すといえる。
【0091】
[実施例4]
(1)「2成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の「二相」選択酸化システムの製造および「硫黄含有化合物」に対する選択酸化活性の確認
MOおよびW金属粉末(<200メッシュ)をTBHP:TBA:EGの混合溶媒(2:4:1)に溶解させて作った触媒溶液(2.5μmol Mo+2.5μmol W)を50mLのCH3CNに混合した。10mmolのDBTおよび10mmolの4,6−DMDBTをn−オクタンに混合した溶液に、前記で製造したCH3CN溶液を添加して二相混合物を製造した。
【0092】
こうして生成された二相反応系および酸化剤としてのTBHPを使用して60℃で激烈な攪拌を行いながら、オクタン相で前記2基質がCH3CN層に移動・消滅する分量をHPLCで追跡した。また、選択酸化反応を行わず、前記2基質がオクタン層からCH3CN層に移動する速度を測定した。
【0093】
その結果、選択酸化条件の下では、それぞれ99%と100%に該当する量のDBTO2(スルホン)および4,6−DMDBTO2(スルホン)が迅速にオクタン層からCH3CN層に移動することを確認した。一方、選択酸化がない場合には、65%のDBTおよび56%の4,6−DMDBTがCH2CN層に移動することを確認した。
【0094】
すなわち、前記の結果は、酸化し難い(refractory)チオフェンが二相溶媒系における選択酸化を介してほぼ定量的に分離除去することができるという点を示している一方、酸化反応を伴わせなくても相当な水準の除去が可能であることを示唆している。ところが、例えば選択酸化反応を行わなくても、前記作業を2〜3回繰り返し行うことにより、酸化し難い硫黄含有化合物を相当量分離・除去することはできるが、超深度または深度の脱硫が要請される場合には依然として選択酸化が必須的であり、この場合、二相選択酸化システムは非常に有用な手段であることを示している。
【0095】
また、適切な溶媒と二相システムの構成を変化させることにより、選択度、収率などの調節が可能であることを確認し、特定の炭化水素基質では二相選択酸化システムが脱硫、脱質、含酸素化合物の生成の面でむしろ単相に比べてさらに優れた結果を示すことができるという点も確認した。
【0096】
(2)「2成分均一触媒」+「TBHP酸化剤」の「二相」選択酸化システムの製造および「窒素含有化合物」および「アリリックまたはベンジリック炭化水素」に対する選択酸化活性の確認
前記で製造した二相選択酸化システムを用いて、硫黄成分以外に窒素成分およびアリリックまたはベンジリック炭化水素成分に対しても同一の条件で選択酸化を行い、その結果、優れた脱窒性能を示し、かつ各該当酸化生成物、すなわち当該含酸素化合物に選択酸化することを確認することができた。
【0097】
(3)「2成分均一触媒」+「TBHP以外の酸化剤」の「二相」選択酸化システムの製造および選択酸化活性の確認
TBHP酸化剤の代わりにH22またはO2(20〜40%)/CO2(balance)を用いて二相選択システムを製造し、これを用いて選択酸化反応を行った。特に、O2(20〜40%)/CO2(balance)の場合にはオートクレーブを用いて5〜15気圧の圧力で選択酸化を行った。
【0098】
その結果、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、およびアリリックまたはベンジリック化合物がそれぞれ優れた効率で選択酸化することを確認し、また、このような選択酸化した生成物が極性溶媒へ迅速に移動することにより、効果的に分離または除去することができることを確認した。
【0099】
[実施例5]
(1)「活性酸素酸化剤」のインシチュ製造
水素処理(hydrotreated)HDS燃料油(fuel oil)中で沸点205〜232℃の留分をカット(cut)した。この留分の成分は、パラピン43.8%、シクロパラピン36.3%、アルキルベンゼン10.1%およびテトラリン5.5%と分析された。この成分の中でも、アルキルベンゼンとテトラリンは多くの水素処理留分に入っている代表的なベンジリック炭化水素である。
【0100】
前記留分に対して、Co−触媒溶液を用いて反応器自体内で強い酸化剤を直接発生させ、インシチュ酸化剤として使用しようとした。このような選択酸化は、ガラス器具を用いて1000mmHgの酸素圧力および120℃の温度下で1時間行われた。その結果を次の表6にまとめた(ヒドロペルオキシドインシチュ製造実験)。
【0101】
【表6】


【0102】
(2)「活性酸素酸化剤」を用いた選択酸化活性の確認
相当な量の活性酸素の生成が確認された前記実験5の条件下で、Mo溶液(青いオキシラン)触媒および実験番号5で直接インシチュにて発生した活性酸素を用いてDBTに対する選択酸化を行った。選択酸化は60℃および常圧の液相で行われ、1時間以内の短時間内にDBTO(スルホキシド)とDBTO2(スルホン)が高収率(>95%)で転換されることを確認した。
【0103】
また、Mo−溶液触媒の他にV、Ti、W、Reの溶液触媒を用いても同一の実験を行ったが、この場合にもやはり高収率の転換率を確認した。
【0104】
このような結果より、一般に、有機ヒドロペルオキシドは相対的に強い酸化剤であるにも拘らず、遷移金属が存在しない反応系ではいくら過多量消費してもスルホキシド段階にまでのみ酸化させることができるが、Mo、V、Ti、W、Reなどの遷移金属イオン触媒が共存することにより、このスルホキシドが定量的にスルホンに酸化することを確認することができた。
【0105】
(3)「活性酸素酸化剤以外の酸化剤」を用いた選択酸化反応(アルカリの存在下で空気酸化反応)の活性確認
前述した遷移金属の触媒反応以外にも、NaOHが存在する場合、スルホキシドはスルホンに常温で順調に転換されることを確認した。NaOH以外に、様々な塩基の反応に対する活性は次のような傾向を見せることを確認した。t−BuONa>NaOH(NaOH−KOH)>Na2CO3、CH3CO2Na>>Li2CO3−Na2CO3−K2CO3(eutectic mixture)。
【0106】
一方、ジメチルスルホキシドがクメンヒドロペルオキシドによってEtOH溶媒および室温でスルホンに酸化することを確認した。一方、水が共存すると、この反応は阻止された。
【0107】
[実施例6]
(1)選択酸化処理
0.12%のS成分および45ppmのN成分が含まれたHCN(heavy cyclic naphtha)に対して、青いMo(オキシラン)触媒システムを用い、O2(26%)/CO2(74%)酸化ガスのシステムをそれぞれ用いて80℃で2時間液相酸化を行った。
【0108】
(2)濾過後処理
前記(1)で生成された酸化物をガラスフィルター(glass filter)とアスピレータ(aspirator)を用いて減圧の下で濾過した。濾液に残っているS成分およびN成分を分析した結果、S成分は25ppm未満と検出され、N成分は全く検出されないことを確認した。
【0109】
DBTの酸化物であるスルホンとN−化合物中の一つであるインドールの酸化物、すなわちインジゴなどは沈殿して酸化反応系に固体相で存在するため、濾過によって分離し易くて最も高い脱硫率を実現することができ、N成分も検出することができない程度にほぼ完全に除去されることを確認することができた。
【0110】
(3)HDS後処理
前記(1)で生成された酸化物に対して、従来の商業用HDS触媒であるNi(6%)−Mo(18%)/γ−Al23(M=Ti、Zr、B、P)上で水添処理した。処理後に得た生成物を分析した結果、S成分は20ppm未満と検出され、N成分は全く検出されないことを確認した。
【0111】
すなわち、留分基質をまず選択酸化し、留分に存在した主要S成分である、酸化し難い(refractory)縮合(condensed)チオフェンをスルホンに転換することにより、酸化反応を受けていない縮合チオフェンに比べて一層容易に除去して非常に高い脱硫率を実現ことができ、N成分も検出できない程度にほぼ完全に除去されることを確認することができた。
【0112】
(4)FCC廃触媒クラッキング後処理
前記(1)で生成された酸化物に対して、Ni、V、Feが積載されたFCC廃触媒を用いてヒドロクラッキング(hydro−cracking)および正常的なクラッキングを行った。処理後に得た生成物を分析した結果、S成分は10ppm未満と検出され、N成分は全く検出されないことを確認した。
【0113】
この結果より、FCCおよびRFCC(reside fluid catalytic cracking)で既に使用されて廃棄された触媒として、V、NiおよびFeなどが多量含まれた廃触媒を用いて、卓越した脱硫(<10ppm)性能を発揮すると同時に、N成分もやはり検出できない程度にほぼ完全に除去されることを確認することができた。
【0114】
[実施例7]
(1)「ペルオキソホスホタングステート酸化剤」および「オイル/CH3CN二相システムを用いた選択酸化反応
HDS処理を経て比較的低い硫黄(330ppm)を含む軽油に対してペルオキソホスホタングステート(30%H22/タングストリン酸)を用いた二相システム(オイル/CH3CN)で60℃の温度を維持しながら3時間選択酸化による深度脱硫を行った。その結果は次の表にまとめた。
【0115】
【表7】


【0116】
(2)ペルオキソホスホタングステート酸化剤およびオイル/CH3CN以外の二相システムを用いた選択酸化反応
前記と同一の反応条件を適用するが、但し、二相媒体として、前記で使用されたオイル/CH3CNの代わりにオイル/MeOH、オイル/DMF、オイル/酢酸、オイル/ピロリドン、オイル/p−ジオキサン、ベンゼン/MeOH、オイル/NaOH水溶液をそれぞれ用いて選択酸化反応を行った。その結果、オイル/CH3CNと同様に卓越した深度脱硫および脱窒の結果を確認することができた。
【0117】
(3)「ペルオキソホスホタングステート以外の酸化剤」およびオイル/CH3CN以外の二相システムを用いた選択酸化反応
前記と同一の反応条件を適用するが、但し、酸化剤として、前記で使用されたペルオキソホスホタングステートの代わりに、次に記載された酸化剤を用いて選択酸化反応を行った。
【0118】
その結果、有機ペルオキシドまたはヒドロペルオキシドを含ませた物質、例えばヘテロポリ酸、Mg−Al層状二重ヒドロキシド(Mg−Al layered double hydroxide;ヒドロタルサイト;Rh/Mg6Al2(OH)16・4H2O)、Zn−Al層状二重ヒドロキシド(Zn−Al layered double hydroxide;ヒドロタルサイト類似物質)を用いた場合に卓越した深度脱硫および脱窒の結果を確認することができ、特に陰イオンピラー(anion pillars)を含ませたヒドロタルサイト類似物質は非常に著しく良い結果を産出した。
【0119】
【表8】


【0120】
(4)「単一金属均一触媒」または「二重金属均一触媒」および「O2/CO2酸化剤」を用いた二相システムにおける選択酸化反応
単一金属溶液触媒および二重金属溶液触媒を、前記で提示したように金属粉末を適切な溶媒に溶解させて製造し、これを用いて空気およびO2(30%)/CO2(70%)の酸化気体下で常圧またはTi−オートクレーブ内で(15気圧)、前記に列挙した二重システム内で選択酸化反応を1〜4時間行い、その結果優れた程度で深度脱硫がなされることを確認した。
【0121】
[実施例8]
(1)「Mo(オキシラン)均一触媒」および「TBHP酸化剤」を用いたLCOの選択酸化
軽く水素処理されて0.07%のS成分および40ppmのN成分を含むLCO(light cycle oil)に対して、青いMo(オキシラン)溶液触媒およびTBHPを用いて1Lの3口フラスコでS化合物およびN化合物だけでなく、アリリックまたはベンジリック炭化水素も酸化させ得るように調節された条件(160℃、3時間、常圧、150rpm攪拌)下で選択酸化を行った。
【0122】
(2)選択酸化によるS−またはN−成分前駆体および含酸素化合物の生成確認
前記実験で得られた酸化生成物をIR分析した結果、ほぼ100%に近い割合でS成分がスルホンに転換され、N−成分も除去が容易な前駆体に転換されたうえ、相当量の「カルボニル」生成物が生成されたことを確認した。
【0123】
(3)熱分解による後処理
前記で得られた酸化物の一部分量(an aliquot portion、40mL)に対して、水素供与性(H−donor)溶媒と共に450℃で3時間熱分解ユニット(pyrolysis unit)を用いて熱分解を行った。その結果、表10に示すように、約92〜97%の脱硫率を達成し、N成分は全く検出することができなかった。これに対し、水素供与性でないナフタレンが共存する場合にはその脱硫率が83%であった。
【0124】
【表9】


【0125】
(4)塩基触媒存在の下における熱分解後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(40mL)に対して、ヒドロタルサイト、Na/Al23、Na/K/活性炭素、Cs/ZSM−5、Cs/SiO2、Ba/MCM−41などの塩基触媒5gを投入してから、450℃で1時間熱処理ユニット(pyrolysis unit)を用いて熱処理した。
【0126】
その結果、脱硫率(>98%)および脱窒率(〜100%)を達成し、これと同時に触媒として用いたMoを含んで略全ての金属が非常に高い水準(>95%)で除去される優れた効果を確認した。
【0127】
(5)吸着剤を用いた後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(40mL)を予め濾過した後、活性炭素繊維、シリカゲルおよび炭素分子篩(10mL/吸着剤)を用いて、硫黄または窒素含有前駆体を分離・除去した。吸着剤で1回または2回程度処理することによっても、最終濾液からSとN成分は全く検出することができない程度に除去されたことを確認した。
【0128】
前記従来の吸着剤の他にも、Pd/Al23、Pt/Al23、Pd/活性炭素、Pt/活性炭素、PdBaTiO3、Pt/BaTiO3、Pt/Mg2Al25、Pd/MgAl24、V/Ce/MgAl24、V/Ce/MAl24(M=Fe、Cr、Co、Ni、Cu、Cd、Hg、Zn、Zr)、V/Ce/MgAl24・xAl23、M/MgAl24(M=Fe、V、Cr、Ta、Nb、Ti、Mo、Zr、Mn)、M/ゼオライト、M/活性炭素、M/活性炭素繊維、M/炭素分子篩、M/炭素ナノチューブ(M=Fe、V、Cr、Ta、Nb、Ti、Mo、Zr、Mn)などの新しい吸着剤を用いて後処理を行った結果、優れた脱硫、脱窒効果を示すことを確認した。
【0129】
(6)極性溶媒の選択抽出による後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(40mL)を予め濾過して、もしかしてあり得る固体沈殿物を除去した後、その濾液に対してDMF(ジメチルホルムアミド)、CH3CN、有機酸などの極性溶媒を用いて選択抽出を行った。
【0130】
選択抽出の後に残存する硫黄、窒素成分を測定し、これを元々の基質内に存在していた含量と比較すれば、表10に示すように、優れた脱硫および脱窒がなされていることを確認することができる。
【0131】
【表10】


【0132】
(7)分別蒸留(fractionation)による後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(200mL)に対して、予め濾過した後に分別蒸留を行った。その結果、酸化反応を経ていない留分の最高沸点で蒸留して得られた留分で90%以上の脱硫とほぼ完全な脱窒を実現することができたことを確認した。
【0133】
(8)選択酸化生成物に対する成分分析
前記実験で液相酸化反応を行って得た水素処理LCOの酸化生成物に対して、その成分分析を行った。
【0134】
クロマトグラフィーを用いて極性に応じて脂肪族、芳香族、極性性物質の3種に分類してから、フーリエ変換IR分光法と高分解能ガスクロマトグラフィー−質量分光法(mass spectrometric technique)を用いて、前記で分類した物質に対する緻密な分析を行った。
【0135】
その結果、脂肪族化合物は主にパラフィンであって、別の変化なしで酸化せず、元の状態で存在しており、但し、モノシクロアルカンのみは完全に酸化していることを確認した。また、芳香族化合物は主にケトンと環状エステルとしてのラクトンから構成されており、極性物質部分はDBTスルホンと酸化したN−化合物、すなわちN−オキサイド、オキシム、インジゴ、芳香族アルコール、アンヒドリド、アルデヒド、カルボン酸、エステル、α−テトラロンなどのケトン類などであることを確認した。
【0136】
これは、本発明に係る選択酸化方法によって脱硫、脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体への転換が優れた収率で行われると同時に、セタン価またはオクタン価を増進させることが可能な含酸素化合物も多量生成されることを示す。
【0137】
[実施例9(石炭の選択酸化脱硫実験)]
(1)石炭清浄過程
米国産の有煙炭 (bituminous coal)を原料炭(feed coal)として選定し、択酸化脱硫実験を行った。まず、第1処理過程として、ホモライドハンマーミル(Homoloid hammer mill)を用いて試料を適切な大きさに粉砕し、この粉砕された試料を灰分調節剤(ash conditioning agent)を用いて灰分の表面を親水性に変化させた後、オイル凝集(oil agglomeration)方法によって脱灰分を行った。この段階で空気により発生する試料の所望しない自然酸化を防止するために、すべての実験過程を窒素の雰囲気下で実行した。
【0138】
(2)選択酸化反応
前記第1段階の脱灰分試料を蒸留水に混ぜてから300ccのオートクレーブ内で20重量%スラリーを作って激烈に(〜1500rpm)攪拌しながら加熱を行い続けた。反応温度(90℃)に到達するには約40分がかかった。
【0139】
この反応系が反応温度で安定していると、直ちにFe3+を含む濃いNa224溶液をポンプに投入して、主に[Fe(C2433-複合(complex)触媒を直ちに生成させ、反応媒体スラリーのpHを4.0〜5.5に調節した。勿論、一部のFe+3イオンは、石炭中に入っている黄鉄鋼(pyrite)と過多量の[C242-イオンとが反応して生成されることもある。
【0140】
少量の反応溶液試料は、末端に金属フィルターチップ(filter tip)が連結された排出チューブ(outlet tube)を介して一定の時間間隔をおいて抜き出して反応が行われる間に反応媒体のpHを追跡し続けた。
【0141】
【表11】


【0142】
別の米国産軟炭石炭試料として、有機硫黄が多く入っている試料を前記前処理で清浄した石炭を試料として用い、同一のFe3+/[C242-媒体で空気およびO2/CO2酸化ガス雰囲気の下で選択酸化方法によって酸化反応を行った後、塩基処理を施して脱硫し、その脱硫結果を表12にまとめた(Fe3+/[C242-(主に[Fe(C2433-])触媒の下に空気(O2/N2)およびO2/CO2酸化気体の雰囲気の下で選択酸化および塩基処理で脱硫した結果)。
【0143】
【表12】


【0144】
空気およびO2(20〜30%)/CO2(balance)を予め混合して作った酸化気体を投入させ、一定の圧力下で酸化を行わせた。このような酸化ガスの投入により若干の温度上昇を観察した。pHが調節されたバッファ媒体内で激しい攪拌によって酸化反応が完了できるように行い、黄鉄鋼(FeS2)が完全に消滅し且つ相当量の有機硫黄除去を実現できるように反応を維持した。この反応媒体のpH調節のために、反応が行われる途中で必要に応じてNa224溶液を補充した。
【0145】
所期の酸化反応が終了し次第、冷水をオートクレーブ冷却コイル(cooling coil)に流通させて急激に冷却させた。冷却が完了すると、直ちに過多量の酸化ガスを外部に放出させて抜き出し、冷却した反応混合物は回収した。このように酸化処理された石炭は黄緑色濾液から分離して温水で完全に洗浄し、濾液から[C242-イオンが検出されないときまで洗浄した。このように分離された石炭生産品は、120℃の高真空で乾燥させて分析を行った。
【0146】
(3)塩基処理脱硫黄
石炭マセラル(maceral)に入っている有機硫黄は、前述した条件の下で選択的にスルホキシド、スルホン、スルホネートに酸化した。この酸化した有機硫黄、特に除去し難い硫黄と微量残っている可能性のある 黄鉄鑛 (FeS2)はNa2CO3、NaOH−KOHなどの塩基水溶液を用いて高温で処理して除去した。
【0147】
このように酸化した石炭20gの試料を300ccのモネル(monel)オートクレーブに100mLの塩基水溶液として入れた。反応器は窒素気流を通過させて空気を除去し、激しく攪拌を行いながら125〜150℃で0.5〜1.0時間塩基脱硫処理を行った。水/石炭の重量比は3/1とし、Na2CO3/石炭の重量比は0.3とし、一般に塩基/石炭の重量比は有機硫黄に依存するが、およそ有機硫黄の1モル当たり約2モルの塩基がかかる。
【0148】
その結果を前記表12に示した。このような結果より、Fe3+/[C242-(主に[Fe(C2433-触媒酸化において、O2/CO2酸化ガスの場合が一般な空気酸化に比べて無機および特に有機硫黄の脱硫率を12%から89%に増進させる著しい作用効果を持つことを確認することができた。
【0149】
[実施例10(「二重金属粉末」および「O2/CO2酸化剤」を用いた選択酸化反応)]
n−デカン(99%、Aldrich)、n−ヘキサデカン(99%、Aldrich)、ベンゼン(99%、Aldrich)、t−ブチルベンゼン(99%、Aldrich)を模似オイルとして用い、DBT(ジベンゾチオフェン、98%、Aldrich)、4,6−DMDBT(4,6−ジメチルジベンゾチオフェン、97%、Aldrich)などをモデル化合物として用いて、下記の表に示すような組成の模似基質を製造した。
【0150】
【表13】


【0151】
前述したような模似基質およびFeMoO4粉末0.142gを用いて200mLのTi−オートクレーブで液相酸化反応を行った。O2/CO2(30%/70%)酸化ガスを流しながら10気圧、150℃、反応時間3時間、350rpmの条件にして酸化反応を行った。酸化反応後の最終物質は、GC−MS(Agilent 59731)とGC−FID(Agilent 6890N)、PFPD(OI model 5380)を用いて分析した。このような実験結果、他の成分は全く酸化せず、硫黄化合物であるDBTおよび4,6−DMDBTがそれぞれDBT−O2(52%)、4,6−DMDBT−O(45%)などで選択酸化することを確認した。
【0152】
このような実験結果より、FeMoO4粉末が反応媒体に均一に分散したとき、次の化学式によってFeとMoの二重金属均一触媒システムとほぼ同等の作用をすることを確認することができた。すなわち、単一金属成分および二重成分または多成分均一触媒系反応はそれぞれ該当する固体触媒を微細な粉末に粉砕し、適切な媒体に均一に分散させて固液相で酸化反応を行っても、純粋な均一溶液触媒を使用したときとほぼ同一の反応メカニズムで酸化を行うことができることを示唆するという点において、本発明の別の技術的意味があるといえる。
【0153】
参考まで、たとえ使用した触媒はFeMoO4固体触媒であるが、O2/CO2の酸化気体と接触すると、下記の反応式に従ってFe2(MoO43とFe23の混合酸化物成分に転換されるため、事実上、Fe2(MoO43が主な触媒成分であって、Fe3+とMo6+の2成分均一溶媒触媒系を模似した酸化効果を維持させることができる。
【0154】
【化6】


【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】それぞれMo(オキシラン)触媒溶液およびTBHPを用いて4,6−ジメチルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、ベンゾチオフェン(BT)それぞれに対して酸化処理を施して時間経過による酸化程度を示すグラフである(■:4,6−DMDBT、◆:DBT、▲:BT)。
【出願人】 【識別番号】506061439
【氏名又は名称】コキャット インコーポレイテッド
【出願日】 平成19年10月11日(2007.10.11)
【代理人】 【識別番号】100069981
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 精孝

【識別番号】100087860
【弁理士】
【氏名又は名称】長内 行雄


【公開番号】 特開2008−95107(P2008−95107A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2007−265224(P2007−265224)