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【発明の名称】 石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置
【発明者】 【氏名】玉川 淳

【氏名】野村 誠

【氏名】渋谷 効

【氏名】前原 啓慈

【氏名】竹内 久雄

【要約】 【課題】蒸留塔への分解生成物の流入量の不安定性を改善し、分離性能向上、分解生成物処理量の増大等を達し得る石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置を提供する。

【解決手段】加熱炉4と、反応槽6を2基含む系列を2系列(a,b)以上と、蒸留塔3とを有する熱分解処理装置を稼動させる際に、各系列a,bとも石油系重質油を加熱炉4から第1の反応槽6a,6b、次いで第2の反応槽6’a,6’bに張り込むサイクルを繰り返し、各反応槽6ではスチームを吹き込み石油系重質油に直接接触させて熱分解反応させ、生成するガス状物質とスチームとを流出させて蒸留塔3へ導入して蒸留分離する構成であって、第1の反応槽6a,6bへの張り込み開始時が各系列a,b間で異なるように、前記サイクルに位相差を持たせて稼動する石油系重質油の熱分解処理方法である。また、当該熱分解処理方法を実現する熱分解処理装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系重質油を加熱する加熱炉と、該加熱炉で加熱された石油系重質油が導入される反応槽を第1および第2の2基含んで構成される系列を2系列以上と、各系列それぞれの前記反応槽から排出されるガス状物質を蒸留分離する1基の蒸留塔とを有する熱分解処理装置を稼動させる際に、各系列とも石油系重質油を前記加熱炉から導入して第1の反応槽に張り込み、第1の反応槽の張り込み終了後第2の反応槽に張り込むサイクルを繰り返し、前記各反応槽では石油系重質油の張り込みと共にスチームを前記各反応槽底部より吹き込みこれを石油系重質油に直接接触させて熱分解反応させ、生成するガス状物質とスチームとを前記各反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入して蒸留分離する石油系重質油の熱分解処理方法であって、
前記各系列において繰り返される前記サイクルに、第1の反応槽への張り込み開始時が前記各系列間で異なるように、位相差を持たせて前記熱分解処理装置を稼動することを特徴とする石油系重質油の熱分解処理方法。
【請求項2】
前記各反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入するガス状物質およびスチームの合計流量の増減幅が、15%以内であることを特徴とする請求項1に記載の石油系重質油の熱分解処理方法。
【請求項3】
前記熱分解処理装置が、前記加熱炉を前記系列の数と同数備え、各加熱炉が前記各系列毎に独立していることを特徴とする請求項1または2に記載の石油系重質油の熱分解処理方法。
【請求項4】
石油系重質油を加熱する加熱炉と、該加熱炉で加熱された石油系重質油が導入される反応槽を第1および第2の2基含んで構成される系列を2系列以上と、各系列それぞれの前記反応槽から排出されるガス状物質を蒸留分離する1基の蒸留塔と、を有し、各系列とも石油系重質油を前記加熱炉から導入して第1の反応槽に張り込み、第1の反応槽の張り込み終了後第2の反応槽に張り込むサイクルを繰り返し、前記各反応槽では石油系重質油の張り込みと共にスチームを前記各反応槽底部より吹き込みこれを石油系重質油に直接接触させて熱分解反応させ、生成するガス状物質とスチームとを前記各反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入して蒸留分離する石油系重質油の熱分解処理装置であって、
前記各系列において繰り返される前記サイクルに、第1の反応槽への張り込み開始時が前記各系列間で異なるように、位相差を持たせて稼動されることを特徴とする石油系重質油の熱分解処理装置。
【請求項5】
前記各反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入するガス状物質およびスチームの合計流量の増減幅が、15%以内であることを特徴とする請求項4に記載の石油系重質油の熱分解処理装置。
【請求項6】
前記加熱炉を前記系列の数と同数備え、各加熱炉が前記各系列毎に独立していることを特徴とする請求項4または5に記載の石油系重質油の熱分解処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、石油系重質油を連続的に熱分解処理する熱分解処理方法、およびそれに用いる熱分解処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硫黄含有量の多い石油アスファルトなどの付加価値が乏しい石油系重質油ないし残渣油は、そのまま燃料として用いた場合に環境への影響が大きい。そのため、このような石油系重質油(残渣油を含む。以下同様。)は、分解して各種の有用な工業用原料に変換することが行われており、その1つの手法として、熱分解処理が挙げられる。
【0003】
石油系重質油を熱分解処理する方法としては、加熱炉と反応槽とを備え、加熱炉を通して供給される石油系重質油を反応槽に導入して熱分解処理する方法が提案されている(特許文献1〜4参照)。この熱分解処理方法においては、石油系重質油を加熱炉にて加熱してから反応槽に導入している。反応槽に張り込まれたこの石油系重質油は、反応槽底部より吹き込まれる500〜700℃の過熱スチームと直接接触して熱分解され、脂肪族炭化水素を主成分とする分解生成物であるガス状物質と芳香族性ピッチが生成される。生成したガス状物質はスチームとともに反応槽の上部排出口より排出され、蒸留塔へ導入されて蒸留分離に供される。
【0004】
特許文献1〜4に記載の方法・装置に代表されるように、石油系重質油を連続的かつ効率的に熱分解処理するにあたり、加熱炉1基と反応槽2基とを備え、加熱炉を通して供給される石油系重質油を第1の反応槽に導入し、張り込み終了後第2の反応槽に導入するようにして順次張り込みを切り換えて石油系重質油を連続的に熱分解処理する方法が提案されている。
【0005】
これらの熱分解処理方法においては、反応槽に張り込まれた石油系重質油は反応槽底部より吹き込まれる過熱スチームと直接接触して熱分解し、脂肪族炭化水素を主成分とする分解生成物であるガス状物質と芳香族性ピッチとが生成される。この生成したガス状物質は、反応槽の上部排出口より排出され、蒸留塔へ導入されて蒸留分離に供されるが、基本的に反応槽での熱分解処理がバッチ操作なので、分解生成物の排出量は一定でなく特定の周期をもって増減を繰り返している。従って、蒸留塔への分解生成物の流入が大きく増減しその増減幅は、そのままでは25%以上にも達する場合があり不安定であるため、十分な蒸留分離性能を確保しづらかったり、分解生成物の処理量を少なくせざるを得なかったり等、分解生成物流入量の変動に基づく不具合が生じている。
【0006】
また、流入する分解生成物にはコーク前駆体となる同伴ピッチが存在し、このコーク前駆体を留出油へ持ち込ませないため、蒸留塔下部における洗浄セクションでの洗浄油量を分解生成物の流入量に合わせた量にすることが必要となる。このとき、分解生成物流入量の変動がある場合、その変動に合わせて洗浄油量を増減させるのは現実的ではなく、実際には分解生成物の最大流入量に合わせた洗浄油量が常に必要となり、経済的にも望ましくなかった。
さらに、蒸留塔で同時に行われている熱分解生成物の持つ蒸発潜熱と顕熱を回収する熱回収系でのスチーム発生量が変動して製油所内のボイラー運転にも影響を及ぼすことから、蒸留塔への分解生成物の流入量の均一化が望まれていた。
【0007】
また、重質油処理量を増加するためには、加熱炉、反応槽、蒸留塔の数はそのままで、容量を大きくすることで通常は対応されるが、反応槽の基数はそのままで容量アップした場合や、反応槽2基(さらには加熱炉1基)からなる系列を増設し、各系列の張り込みサイクルを同一位相(第1の反応槽への張り込み開始時が複数の系列で同じ時間)で行った場合には、蒸留塔への分解生成物の流入量の増減幅は、その絶対値がさらに拡大してしまう。
なお、本発明で使用する「サイクル」との語は、各系列に対し、石油系重質油を加熱炉を通して第1の反応槽に張り込みを開始してから、第2の反応槽への張り込みを終了し、再び第1の反応槽に張り込みを開始するまでのことを意味する。
【0008】
【特許文献1】特公平7−116450号公報
【特許文献2】特公昭54−15444号公報
【特許文献3】特公昭57−15795号公報
【特許文献4】特公昭63−38076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は上記従来技術の欠点を引き起こしている蒸留塔への分解生成物の流入量の不安定性を改善することで、蒸留塔の分離性能の向上、分解生成物処理量の増大および安定運転、さらには洗浄セクションでの洗浄油量の低減化等を達成し得る石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の本発明により達成される。
すなわち、本発明の石油系重質油の熱分解処理方法(以下、単に「本発明の熱分解処理方法」という場合がある。)は、石油系重質油を加熱する加熱炉と、該加熱炉で加熱された石油系重質油が導入される反応槽を第1および第2の2基含んで構成される系列を2系列以上と、各系列それぞれの前記反応槽から排出されるガス状物質を蒸留分離する1基の蒸留塔とを有する熱分解処理装置を稼動させる際に、各系列とも石油系重質油を前記加熱炉から導入して第1の反応槽に張り込み、第1の反応槽の張り込み終了後第2の反応槽に張り込むサイクルを繰り返し、前記各反応槽では石油系重質油の張り込みと共にスチームを反応槽底部より吹き込みこれを石油系重質油に直接接触させて熱分解反応させ、生成するガス状物質とスチームとを反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入して蒸留分離する石油系重質油の熱分解処理方法であって、
前記各系列において繰り返される前記サイクルに、第1の反応槽への張り込み開始時が前記各系列間で異なるように、位相差を持たせて前記熱分解処理装置を稼動することを特徴とする。
【0011】
本発明の熱分解処理方法によれば、各系列のサイクルにおいて、特定の周期をもって増減を繰り返している分解生成物(ガス状物質およびスチーム)の排出量が、各系列間に位相差を持たせることでその合計量として均され、各系列から流出合流して蒸留塔へ流入する熱分解生成物の合計排出量の増減幅を減縮することができる。
【0012】
このように熱分解生成物の合計排出量の均一化が図られるので、蒸留塔の分離性能の向上と分解生成物処理量の増大および安定運転、さらには蒸留塔の洗浄セクションの洗浄油量の低減化等を達成することができる。これら改善により、石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置全体の処理量の向上に繋がる。
【0013】
各系列間での位相差の程度としては、特定の周期をもって増減を繰り返している分解生成物の排出量において、ピークを迎えるタイミングが系列間で重ならない程度に時間をずらすことが好ましく、ある系列のピークと他の系列のボトムとが重なるように時間をずらすことがより好ましい。ただし、ある系列のピークと他の系列のボトムとが完全に重なるように時間をずらさなくても、本願発明の効果は十分に期待できるため、その観点からは系列数に上限は無い。
【0014】
各系列間での位相差の具体的な時間としては、反応槽への張込時間や原料油(石油系重質油)の張込量、装置の大きさ、系列数等にもよるため、一概に言えない。ただし、2系列の場合には片方の反応槽張込時間の半分の時間、すなわち前記サイクルの4分の1の時間、3系列の場合には前記サイクルの6分の1の時間、n系列の場合には前記サイクルの2n分の1の時間とすることが簡易的でありかつ効率的である。
本発明の熱分解処理方法によって、前記各反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入するガス状物質およびスチーム(分解生成物)の合計流量の増減幅を15%以内、望ましくは5%以内とすることができる。
【0015】
前記加熱炉としては、全ての前記反応槽それぞれに石油系重質油を導入するように、系列毎(複数系列を含む)に分担するのがよく、特に、前記系列の数に加えて1基余分に備え、各加熱炉が前記各系列毎に独立していることが、加熱炉がコーキングした際に運転継続しながら加熱炉をデコーキング運転できる観点より好ましい。
【0016】
一方、本発明の石油系重質油の熱分解処理装置(以下、単に「本発明の熱分解反応槽」あるいは「本発明の熱分解処理装置」という場合がある。)は、石油系重質油を加熱する加熱炉と、該加熱炉で加熱された石油系重質油が導入される反応槽を第1および第2の2基含んで構成される系列を2系列以上と、各系列それぞれの前記反応槽から排出されるガス状物質を蒸留分離する1基の蒸留塔と、を有し、各系列とも石油系重質油を前記加熱炉から導入して第1の反応槽に張り込み、第1の反応槽の張り込み終了後第2の反応槽に張り込むサイクルを繰り返し、前記各反応槽では石油系重質油の張り込みと共にスチームを前記各反応槽底部より吹き込みこれを石油系重質油に直接接触させて熱分解反応させ、生成するガス状物質とスチームとを前記各反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入して蒸留分離する石油系重質油の熱分解処理装置であって、
前記各系列において繰り返される前記サイクルに、第1の反応槽への張り込み開始時が前記各系列間で異なるように、位相差を持たせて稼動されることを特徴とする。
【0017】
本発明の熱分解処理装置においては、前記各反応槽上部の排出口から流出させて前記蒸留塔へ導入するガス状物質およびスチームの合計流量の増減幅が、15%以内、望ましくは5%以内とすることができる。
前記加熱炉としては、全ての前記反応槽それぞれに石油系重質油を導入するように、系列毎(複数系列を含む)に分担するのがよく、特に、前記系列の数に加えて1基余分に備え、各加熱炉が前記各系列毎に独立していることが、加熱炉がコーキングした際に運転継続しながら加熱炉をデコーキング運転できる観点より好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置によれば、系列数を2系列以上にし各系列間に位相差を持たせているので、蒸留塔への分解生成物の流入量の不安定性を改善することができ、蒸留塔の分離性能の向上、分解生成物処理量の増大および安定運転、さらには洗浄セクションでの洗浄油量の低減化等が達成される。そしてこれら改善により、石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置全体の処理量の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に則して詳細に説明する。
まず、本発明の石油系重質油の熱分解処理方法ないし熱分解処理装置について、本発明の例示的一態様である実施形態を挙げて、図面に則して詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、2基の反応槽からなる系列が2系列である例である。
【0020】
図1は、本実施形態の全体構成を説明するためのフローシートである。
原料タンク1より送られた原料油(石油系重質油)は、原料予熱炉2により350℃程度に予熱され蒸留塔3に入る。ここでリサイクル油として塔底に落ちてくる分解油のヘビーエンド留分と混合される。このリサイクル油の原料に対する比率は0.05〜0.25、好ましくは0.10〜0.20である。
【0021】
リサイクル油と混合された原料油は、導入弁14a,14bを介して各々の管状加熱炉(加熱炉)4a,4bに送られる。管状加熱炉4a,4bでは、原料油を480〜500℃、好ましくは490〜500℃の温度にまで加熱し分解する。管状加熱炉4a,4bにおける出口圧力は、それぞれ常圧〜0.4MPa程度であり、反応時間は通常0.5〜10分、好ましくは2〜5分程度である。
【0022】
管状加熱炉4aで加熱された物は系列aに、管状加熱炉4bで加熱された物は系列bに、それぞれ導入される。なお、a,b各系列はそれぞれ、第1の反応槽6a,6bと、第2の反応槽6’a,6’bとを含んで構成される。
以下、系列a,bについてまとめて説明するが、両系列はそれぞれ別個独立して稼動する。
【0023】
管状加熱炉4a,4bを通過した高温の熱分解処理生成物(石油系重質油)は、切替弁5a,5bを介して所定の反応槽(熱分解反応槽)6a,6’a,6b,6’bにフラッシュさせながら導入されるが、その導入に先立ち、蒸留塔3の塔底より切替弁7a,7bを介して、原料油を予め部分的に張り込むこと(予備張込)が好ましい。この張込量としては、反応槽6a,6’a,6b,6’bそれぞれの全張込量の5〜18容積%、好ましくは10〜15容積%である。また、その予備張込の原料油の温度としては、約340℃である。
【0024】
切替弁5a,5b,7a,7bはそれぞれ一定時間毎に作動し、予備張込の原料油および管状加熱炉4a,4bからの熱分解処理生成物を系列a,bそれぞれの2つの反応槽6a,6’aまたは6b,6’bに対しそれぞれ周期的に交互に張り込む。このような周期的な操作により、管状加熱炉4a,4bから連続的に供給される熱分解処理生成物の反応槽における熱分解処理が連続的に実施される。
【0025】
反応槽6a,6’a,6b,6’bは、胴部が円筒型で底部がすぼまった形状(端部に向かうにしたがって、その断面の径が漸次小さくなって行く形状)をした容器であり、原料導入口、熱媒体ガス導入口、分解ガス、分解油および熱媒体ガスの排出口、並びに残留物取出口が設けられている。また、必要に応じて、攪拌機を設置することができる。
熱媒体ガスとしての過熱スチームは、スチームスーパーヒーター8により400〜700℃に加熱された後、バルブ9a,9’a,9b,9’bを介して反応槽6a,6’a,6b,6’bに吹き込まれる。
【0026】
管状加熱炉4a,4bからの熱分解処理生成物を反応槽6a,6’a,6b,6’bに張り込む際、張り込む直前の反応槽6a,6’a,6b,6’b内の予備張込物の温度は約340℃である。この張り込みの開始と共に、反応槽内の温度は430〜440℃にまで上昇し、槽内に導入された熱分解処理生成物の分解反応および重縮合反応がさらに進行する。
【0027】
この1回の張込時間は、50〜120分程度に設定することが好ましく、60〜90分程度に設定することがより好ましい。この張込終了時には、槽内残留物(以下、単に「ピッチ」とも言う。)の軟化点は上昇する。この張込終了後も過熱スチームの吹込みを続けて、さらに反応を進行させる。この張込後の反応時間としては、張込時間の15%〜45%、好ましくは25%〜45%の割合の時間に規定することが好ましい。
【0028】
管状加熱炉4a,4bからの熱分解処理生成物は、相当の熱分解反応を受け、しかも温度が高いため、反応槽6a,6’a,6b,6’bに対する張込時間を長くすると、張込後の反応時間(保持時間)を殆ど用いる必要のないものであるが、このようにして得たピッチは均質性の悪いものになりやすい。そこで、均質のピッチを得るために、張込時間を50〜120分に制限し、そして張込終了後、張込時間の15〜45%程度の時間は過熱スチームの吹き込みを継続して熱分解処理を継続させる。
【0029】
反応槽6a,6’a,6b,6’bに供給する過熱スチームの温度は400〜700℃であり、比較的低温のスチームの使用で十分である。また、その供給量も少なくてすみ、管状加熱炉4a,4bと反応槽6a,6’a,6b,6’bに対する合計原料油供給量1kgに対する割合で、0.08〜0.15kgの割合で十分である。
【0030】
管状加熱炉4a,4bからの熱分解生成物の張り込み中およびその後の反応処理中において、熱分解生成物のうちのガス状物質およびスチームは、反応槽6a,6’a,6b,6’bの上部排出口から留出され、点線で示される蒸留塔送り配管15a,15bを介して蒸留塔3へ送られる。
【0031】
反応槽6a,6’a,6b,6’bにおける反応終了後、反応槽6a,6’a,6b,6’bの冷却(クエンチ)を開始し、反応槽6a,6’a,6b,6’bの温度を320〜380℃に降下させて反応を実質的に停止させた後、反応槽6a,6’a,6b,6’b内のピッチを直ちに液状ピッチ貯槽10a,10bに移す。この液状ピッチ貯槽10a,10bは、攪拌機を有し、反応槽6a,6’a,6b,6’bからのピッチを交互に受取り、均一に混合する機能も有する。また、その底部から過熱スチームを吹込み、槽内ピッチ温度を300〜370℃に保持して、液状に保持すると共に、ピッチ中から軽質留分をストリッピングさせ、これをライン11a,11bを介して蒸留塔3へ送る。液状ピッチ貯槽10a,10b内のピッチは、ピッチ固化設備12で冷却固化された後ピッチ貯蔵設備13に送られる。
【0032】
図2に、蒸留塔3の概略構成図を示す。配管15a,15bから送られたガス状物質およびスチームからなる熱分解処理生成物は、400〜450℃程度の温度で導入管15から蒸留塔3内に導入される。蒸留塔3下部において、当該熱分解処理生成物中のピッチ分が除去される。
【0033】
蒸留塔3内は、バルブキャップトレイ16が備えられた分留セクションと、バッフルトレイ22が備えられた熱回収セクションと、シーブトレイ17およびその下部に、先端に噴出ノズル19が取り付けられた洗浄油の輸送管18が配された洗浄セクションと、から構成される。輸送管18から送られた加熱油は、噴出ノズル19からシーブトレイ17の下面に向けて噴出される。当該洗浄油としては、特に制限は無いが、通常は200〜300℃で液状を保つ油、例えば軽油類や分解重質油が用いられる。
当該洗浄油の量としては、導入管15から導入される分解生成物の最大流量に対して、分解生成物1kmol当たり0.005〜0.05kmolの範囲が好ましく、0.01〜0.02kmolの範囲がより好ましい。
【0034】
このような構成の蒸留塔3によって、熱分解処理生成物からピッチ分が除去される。除去されたピッチ分は、蒸留塔3の底部排出管21から排出される。ピッチ分が除去された熱分解処理生成物は蒸留塔3を上昇し、蒸留塔3の中央部に備えられた分解重質油導入管24、抜き出し管23、熱交換器25、およびバッフルトレイ22からなる熱回収部ゾーンと、バブルキャップトレイ16のオイル分留ゾーンを経て、上部排出管20から留出される。この処理により、熱分解処理生成物は分解ガス、分解軽質油、分解重質油に分離され、後処理工程に送られる。
【0035】
以上が、本実施形態の全体構成であり、図1に示されるように、2基の反応槽からなるa,b2つの系列のほか、管状加熱炉(加熱炉)4a,4bや液状ピッチ貯槽10a,10b、その他各種付属部材がそれぞれの系列に付随して備えられる。
【0036】
今ここで、系列aのみを稼動させた従来の熱分解処理方法ないし熱分解処理装置の状態で、反応槽6a,6’aから蒸留塔送り配管15aを介して蒸留塔3へ送られる分解生成物(ガス状物質およびスチーム)の合計流量を経時で測定した。結果を図3にグラフにて示す。図3のグラフにおいて、横軸は、第1の反応槽6aへの張り込み開始時からの経過時間であり、縦軸は分解生成物の時間当たりの合計流量である(図4および図5においても同様。)。
なお、図3のグラフの測定結果が得られた際の稼動条件は、下記表1に示す通りである。
【0037】
【表1】


【0038】
図3のグラフに示される通り、分解生成物の時間当たり合計流量は、ピーク(およそ1800kmol/hr)を示す時間とボトム(およそ1400kmol/hr)を示す時間とが周期的に(一定のサイクルで)繰り返されていることがわかる。分解生成物の時間当たり合計流量の平均値は1600kmolであり、それに対してピークでは+13.5%、ボトムでは−13.7%も隔たっており、その増減幅は27.2%にも達し、分解生成物の時間当たり合計流量が大きく変動しながら一定のサイクルで繰り返していることがわかる。
【0039】
このように、1系列のみでは蒸留塔3への分解生成物の流入が大きく増減し不安定であるため、十分な蒸留分離性能を確保しづらかったり、分解生成物の処理量を少なくせざるを得なかったり等の不具合の原因となる。
本実施形態においてはa,bの2つの系列を併設し、かつ、それぞれの系列における反応槽への張り込みサイクルの位相をずらしつつ、装置を稼動させている。
【0040】
図3のグラフに示される条件と同一条件で、導入弁14a,14bより系列a,b双方を稼動させた本発明の熱分解処理方法ないし熱分解処理装置の状態で、反応槽6a,6’a,6b,6’bから蒸留塔送り配管15a,15bを介して蒸留塔3へ送られる分解生成物(ガス状物質およびスチーム)の合計流量を経時で測定した。結果を図4にグラフにて示す。なお、系列bの第1の反応槽6bへの張り込み開始時は、系列aの第1の反応槽6aへの張り込み開始時に対して45分遅れる(位相差が45分)ように切替弁5a,5bを制御した。
【0041】
図4のグラフに示される通り、分解生成物の時間当たり合計流量の平均値は3200kmolであり、それに対する隔たりがピークでは+5.1%、ボトムでは−8.4%であり、その増減幅は13.5%に圧縮されている。
系列a,bの各サイクルにおいて、特定の周期をもって増減を繰り返している分解生成物の排出量が、a,b両系列間に位相差を持たせることでその合計量として均され、a,b両系列から流出合流して蒸留塔3へ流入する熱分解生成物の合計排出量の増減幅を減縮することができる。
【0042】
また、石油系重質油の処理量を2系列運転の処理量に合わせた場合の蒸留塔3へ連続的に導入される分解生成物の最大流量は、1系列運転がおよそ3600kmol/hr(図3から1800kmol/hr×2)であるのに対し、2系列運転では3350kmol/hr(図4)とおよそ7%低下するため、分解生成物の最大流量に対して必要とされる蒸留塔3下部の洗浄セクションの洗浄油量を低減することができる。
【0043】
このように熱分解生成物の合計排出量の均一化が図られるので、蒸留塔3の分離性能の向上と分解生成物処理量の増大および安定運転、さらには蒸留塔3の洗浄セクションの洗浄油量の低減化等を達成することができる。これら改善により、石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置全体の処理量の向上に繋がる。
【0044】
以上、好ましい実施形態を挙げて、本発明の石油系重質油の熱分解処理方法および熱分解処理装置について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、当業者は公知技術を転用して様々な置換や改変を施すことができる。例えば、上記実施形態においては、2基の反応槽からなる系列がa,bの2系列である例を挙げて説明したが、3系列以上であっても構わない。
勿論、如何なる置換や改変を施した場合であっても、本発明の構成を具備する限り、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0045】
図1に示す前記実施形態の熱分解処理装置において、管状加熱炉4a,4b、系列a,bおよび液状ピッチ貯槽10a,10bをそのままでもう1組増設した3系列の熱分解処理装置について、図3および図4に示すグラフと同様の検証試験を行った。ここで、増設した管状加熱炉、系列および液状ピッチ貯槽については、前記実施形態における管状加熱炉4a,4b、系列a,bおよび液状ピッチ貯槽10a,10bと同一の条件とし、各系列間の位相差(第1の反応槽への張り込み開始時の系列間での時間差)が30分となる(位相差が30分)ように制御した。結果を図5にグラフにて示す。
【0046】
図5のグラフに示される通り、分解生成物の時間当たり合計流量の平均値は4770kmolであり、それに対する隔たりがピークでは+2.1%、ボトムでは−1.5%であり、その増減幅は3.6%にまで大幅に圧縮されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の石油系重質油の熱分解処理方法ないし熱分解処理装置の全体構成を説明するためのフローシートである。
【図2】図2に示された蒸留槽の概略構成図である。
【図3】従来の熱分解処理方法ないし熱分解処理装置における分解生成物の合計流量を経時で測定した結果を示すグラフであり、横軸が張り込み開始時からの経過時間、縦軸が分解生成物の時間当たりの合計流量である。
【図4】本発明の例示的一態様であって、系列数が2系列の場合の熱分解処理方法ないし熱分解処理装置における分解生成物の合計流量を経時で測定した結果を示すグラフであり、横軸が張り込み開始時からの経過時間、縦軸が分解生成物の時間当たりの合計流量である。
【図5】本発明の例示的一態様であって、系列数が3系列の場合の熱分解処理方法ないし熱分解処理装置における分解生成物の合計流量を経時で測定した結果を示すグラフであり、横軸が張り込み開始時からの経過時間、縦軸が分解生成物の時間当たりの合計流量である。
【符号の説明】
【0048】
1:原料タンク、 2:原料予熱炉、 3:蒸留塔、 4a,4b:管状加熱炉(加熱炉)、 5a,5b,7a,7b,14:切替弁、 6a,6’a,6b,6’b:反応槽、 8:スチームスーパーヒーター、 9a,9b:バルブ、 10a,10b:液状ピッチ貯槽、 11a,11b:ライン、 12:ピッチ固化設備、 13:後ピッチ貯蔵設備、 14a,14b:導入弁、15:導入管、 15a,15b:配管、 16:バルブキャップトレイ、 17:シーブトレイ、 18:輸送管、 19:噴出ノズル、 20:上部排出管、 21:底部排出管、 22:バッフルトレイ、 23:抜き出し管、 24:分解重質油導入管、 25:熱交換器
【出願人】 【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
【識別番号】391030480
【氏名又は名称】富士石油株式会社
【出願日】 平成18年9月28日(2006.9.28)
【代理人】 【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫

【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣

【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司


【公開番号】 特開2008−81628(P2008−81628A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−264138(P2006−264138)