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【発明の名称】 ゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法および製造装置
【発明者】 【氏名】西村 秀生

【氏名】大貫 一雄

【氏名】真鍋 忠司

【要約】 【課題】従来の方法では困難であった簡易な方法でゴム系廃棄物から製造される重油相当の熱分解油の動粘度を低減させる方法および装置を提供する。さらにはゴム系廃棄物から製造される熱分解油の動粘度をA重油レベルまで低減させることが可能な方法および装置を提供する。

【構成】ゴム系廃棄物1を熱分解して熱分解ガス4を生成し、前記生成した熱分解ガス4を冷却媒体10と接触させて熱分解ガス4中に含まれる油状成分を凝縮して熱分解油16を生成し、前記生成した熱分解油16の一部を前記冷却媒体10として使用すると共に、前記生成した熱分解油16を、加熱、不活性ガス19との接触、又は減圧の少なくともいずれかの方法で処理して、前記熱分解油16中の揮発性ジエン化合物を低減した後に回収する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム系廃棄物を熱分解して熱分解ガスを生成し、前記生成した熱分解ガスを冷却媒体と接触させて熱分解ガス中に含まれる油状成分を凝縮して熱分解油を生成し、前記生成した熱分解油の一部を前記冷却媒体として使用すると共に、前記生成した熱分解油を、加熱、不活性ガスとの接触、又は減圧の少なくともいずれかの方法で処理して、前記熱分解油中の揮発性ジエン化合物を低減した後に回収することを特徴とするゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法。
【請求項2】
前記熱分解油の凝縮による生成から回収までの平均滞留時間を50時間以下とすることを特徴とする請求項1記載のゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法。
【請求項3】
前記生成した熱分解油を、加熱、不活性ガスとの接触、又は減圧の少なくともいずれかの方法で処理して、前記回収する熱分解油の動粘度を2×10-52/sec以下に調整することを特徴とする請求項1又は2記載のゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法。
【請求項4】
ゴム系廃棄物を熱分解処理して熱分解ガスを生成させる熱分解炉と、前記生成した熱分解ガスを冷却媒体と接触させて熱分解ガス中に含まれる油状成分を凝縮して熱分解油を生成する熱分解油生成装置と、前記生成した熱分解油を冷却する熱分解油冷却装置と、前記生成した熱分解油中の揮発性成分を揮発除去させるための、加熱、不活性ガス吹込み、又は減圧の少なくともいずれかを行う揮発成分除去装置と、前記熱分解油生成装置から前記熱分解油冷却装置を通して前記熱分解油生成装置へ前記生成した熱分解油の一部を循環する循環配管と、前記生成した熱分解油を前記熱分解生成装置から回収する回収配管とを備えることを特徴とするゴム系廃棄物からの熱分解油の製造装置。
【請求項5】
ゴム系廃棄物を熱分解処理して熱分解ガスを生成させる熱分解炉と、前記生成した熱分解ガスを冷却媒体と接触させて熱分解ガス中に含まれる油状成分を凝縮して熱分解油を生成する熱分解油生成装置と、前記生成した熱分解油を冷却する熱分解油冷却装置と、前記熱分解油生成装置から前記熱分解油冷却装置を通して前記熱分解油生成装置へ前記生成した熱分解油の一部を循環する循環配管と、前記熱分解油生成装置にて生成した熱分解油を一時貯留し、且つ、貯留量を調整可能な油貯留タンクとを有し、前記油貯留タンクには、前記生成した熱分解油中の揮発性成分を揮発除去させるための、加熱、不活性ガス吹込み、又は減圧の少なくともいずれかを行う揮発成分除去手段を備えると共に、前記一時貯留した熱分解油を回収する回収配管を備えることを特徴とするゴム系廃棄物からの熱分解油の製造装置。
【請求項6】
前記熱分解油生成装置が揮発成分除去装置を兼ねることを特徴とする請求項4または請求項5記載のゴム系廃棄物からの熱分解油の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム系廃棄物を資源として有効利用するための廃棄物熱分解油の製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤ等のゴム系廃棄物や廃プラスチックなどに代表される高分子廃棄物の処理方法は、従来単純焼却や埋立てが中心であったが、近年循環型社会促進が大きな社会的課題となっていることを背景として、高分子廃棄物の資源としての有効利用が求められている。そこで高分子廃棄物の有効利用を目的とした廃棄物処理方法の一つとして、例えば非特許文献1、2、3に記載されているように、高分子廃棄物を熱分解炉で400〜700℃程度に加熱して熱分解ガスを生成した後、熱分解ガスを後段で冷却して熱分解ガス中に含まれる熱分解油を分離回収して燃料油等に利用し、熱分解油分離後の熱分解ガスは燃料ガスや化学原料ガスとして利用する廃棄物熱分解油化法が提案されている。
【0003】
しかしながら、廃棄物熱分解油化法の抱える課題として、例えば非特許文献4、5等に記載されているように、高分子廃棄物を熱分解すると分子量が広範囲に分布した油が生成するために、回収した油は低分子量のガソリン成分から高分子量の重油成分までが混合した性状となり、安全性の問題および工業的価値の問題からそのままでは燃料油として使用することが難しいことが挙げられる。
【0004】
このうち安全性の問題については、例えば廃プラスチックを対象とした熱分解油化では、特許文献1に記載されているように、廃プラスチックを熱分解して生成したガス状熱分解物を冷却・凝縮して得られるガソリン成分20〜50%を含む引火点0℃以下の廃プラ熱分解油を不活性ガスでストリッピングしてガソリン成分を追い出し、廃プラ熱分解油の輸送・保管時の安全性を高める装置などが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法の抱える課題として、特許文献1の方法で回収される廃プラ熱分解油は、まだ灯油成分、軽油成分、重油成分が混合した状態の油であるために、利用先が大きく限定され、工業的価値の高い廃棄物熱分解油の製造方法ではない点が挙げられる。
【0006】
そこで、高分子廃棄物から工業的価値の高い熱分解油を製造する方法、特にゴム系廃棄物を原料として工業的用途が広い重油相当の熱分解油を製造する方法として、例えば特許文献2に記載されているように、ゴム系廃棄物の熱分解炉の後段に複数個の分留段を有する蒸留塔を設け、熱分解油を特定の沸点留分に分留して重油相当の熱分解油を回収する方法が開示され知られている。
【0007】
しかしながら、特許文献2の方法の抱える課題として、蒸留塔設置は、設備が大掛かりとなってしまうために、ゴム系廃棄物を経済的に再資源化することが困難である点が挙げられる。
【0008】
そこで、簡易な方法によってゴム系廃棄物から特定の沸点留分の廃棄物熱分解油、特に重油相当の熱分解油を製造する方法として、例えば特許文献3の図5に記載されているように、ゴム系廃棄物の熱分解炉の後段に直接冷却式の熱分解油生成装置を設け、熱分解ガスを前記熱分解油生成装置内で冷却油と向流で直接熱交換させて熱分解油を凝縮するとともに、凝縮した熱分解油を熱分解ガスの冷却油として使用する熱分解油回収方法が提案されている。この場合、冷却油を温度コントロールすることにより特定の沸点範囲に制御された熱分解油が得られると考えられ、簡易な方法で重油相当の熱分解油を製造することが可能である。
【非特許文献1】「日本ゴム協会誌」第59巻、第10号、P565−P567(1986)、565頁、図1
【非特許文献2】「リサイクル技術研究発表会講演論文集」6th、P89−P92(1998)、92頁、図4
【非特許文献3】「セメント製造技術シンポジウム報告集」No.57、P90−P97 (2000)、91頁、Fig.1
【非特許文献4】三菱重工技報Vol.35、No.6(1988)、416頁、表3
【非特許文献5】日立造船技報第57巻2号(平成6年7月)、53頁、図5
【特許文献1】特開平10−245569号公報
【特許文献2】特開昭53−57180号公報
【特許文献3】特開平8−110024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らは、ゴム系廃棄物を熱分解処理して重油相当の熱分解油を製造する場合、特許文献3のような熱分解油回収方法では熱分解油生成装置内で油の動粘度が上昇して回収油の価値が低下してしまう問題点があることを見出した。すなわち、下記の表1にゴム系廃棄物を熱分解処理して得られた熱分解ガスを特許文献2の蒸留塔方式および特許文献3の冷却油に生成油を用いた直接熱交換方式で冷却して、重油相当の熱分解油を回収した時の熱分解油の動粘度(測定温度50℃、測定方法JIS−K2283)を示すが、特許文献3の熱分解油回収方法で製造した油は、蒸留塔方式の油に比べて高粘度となり、重油の中でも価値の高いA重油レベルの低動粘度油を製造することが困難であることがわかった。
【0010】
【表1】


【0011】
従って、本発明は、従来の方法では困難であった簡易な方法でゴム系廃棄物から製造される重油相当の熱分解油の動粘度を低減させる方法および装置を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、ゴム系廃棄物から製造される熱分解油の動粘度をA重油(JIS−K2205)レベルまで低減させることが可能な方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、簡易な方法を用いてゴム系廃棄物熱分解ガスから低動粘度の重油相当の熱分解油を回収する方法について鋭意検討した結果、特許文献3のような直接熱交換方式の熱分解油回収装置を用いて回収した熱分解油が高動粘度を示す原因は熱分解ガス冷却媒体として熱分解油生成装置内に一時貯留される熱分解油が100〜150℃程度の低い温度条件下でも重合反応を引き起こして分子量が増加するためであることを見出し、さらに熱分解油生成装置で凝縮した熱分解油中に含まれている揮発性成分、特に揮発性のジエン化合物を低減することによって熱分解油の重合反応を抑制することが可能となることを見出し、熱分解油中の揮発性ジエン化合物を低減して熱分解油の動粘度の上昇を抑制する本方法を発明した。
【0014】
本発明は、係る課題を解決するために提案されたもので、その要旨とするところは、以下の(1)〜(6)に示す通りである。
【0015】
(1)第1の発明は、ゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法において、ゴム系廃棄物を熱分解して熱分解ガスを生成し、前記生成した熱分解ガスを冷却媒体と接触させて熱分解ガス中に含まれる油状成分を凝縮して熱分解油を生成し、前記生成した熱分解油の一部を前記冷却媒体として使用すると共に、前記生成した熱分解油を、加熱、不活性ガスとの接触、又は減圧の少なくともいずれかの方法で処理して、前記熱分解油中の揮発性ジエン化合物を低減した後に回収することを特徴とする。
【0016】
(2)第2の発明は、(1)のゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法において、前記熱分解油の凝縮による生成から回収までの平均滞留時間を50時間以下とすることを特徴とする。
【0017】
(3)第3の発明は、(1)または(2)記載のゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法において、前記生成した熱分解油を、加熱、不活性ガスとの接触、又は減圧の少なくともいずれかの方法で処理して、前記回収する熱分解油の動粘度を2×10-52/sec以下に調整することを特徴とする。
【0018】
(4)第4の発明は、ゴム系廃棄物からの熱分解油の製造装置において、ゴム系廃棄物を熱分解処理して熱分解ガスを生成させる熱分解炉と、前記生成した熱分解ガスを冷却媒体と接触させて熱分解ガス中に含まれる油状成分を凝縮して熱分解油を生成する熱分解油生成装置と、前記生成した熱分解油を冷却する熱分解油冷却装置と、前記生成した熱分解油中の揮発性成分を揮発除去させるための、加熱、不活性ガス吹込み、又は減圧の少なくともいずれかを行う揮発成分除去装置と、前記熱分解油生成装置から前記熱分解油冷却装置を通して前記熱分解油生成装置へ前記生成した熱分解油の一部を循環する循環配管と、前記生成した熱分解油を前記熱分解生成装置から回収する回収配管とを備えることを特徴とする。
【0019】
(5)第5の発明は、ゴム系廃棄物からの熱分解油の製造装置において、ゴム系廃棄物を熱分解処理して熱分解ガスを生成させる熱分解炉と、前記生成した熱分解ガスを冷却媒体と接触させて熱分解ガス中に含まれる油状成分を凝縮して熱分解油を生成する熱分解油生成装置と、前記生成した熱分解油を冷却する熱分解油冷却装置と、前記熱分解油生成装置から前記熱分解油冷却装置を通して前記熱分解油生成装置へ前記生成した熱分解油の一部を循環する循環配管と、前記熱分解油生成装置にて生成した熱分解油を一時貯留し、且つ、貯留量を調整可能な油貯留タンクとを有し、前記油貯留タンクには、前記生成した熱分解油中の揮発性成分を揮発除去させるための、加熱、不活性ガス吹込み、又は減圧の少なくともいずれかを行う揮発成分除去手段を備えると共に、前記一時貯留した熱分解油を回収する回収配管を備えることを特徴とする。
【0020】
(6)第6の発明は、(4)または(5)記載のゴム系廃棄物からの熱分解油の製造装置において、前記熱分解油生成装置が揮発成分除去装置を兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、従来の方法では困難であった簡易な方法を用いてゴム系廃棄物から製造される重油相当の熱分解油の動粘度を低減できる。さらには、熱分解油の動粘度をA重油レベルまで低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る本発明のゴム系廃棄物からの熱分解油の製造方法および装置を実施するための設備構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
ゴム系廃棄物1を例えばスクリューフィーダー等の廃棄物供給装置2を用いて熱分解炉3内に定量供給し、熱分解炉3内でゴム系廃棄物を熱分解して可燃性ガスと油分から構成される熱分解ガス4並びに熱分解残渣5を生成する。熱分解炉3の方式としては特に限定するところはなく、外熱ロータリーキルン式熱分解炉や流動層式熱分解炉などの一般的な熱分解方法が適用可能である。
【0024】
熱分解ガス4は熱分解炉3の後段に設けた熱分解油生成装置6に導入され、熱分解ガス冷却媒体10と向流で直接熱交換して熱分解ガス中に含まれている油状成分を凝縮させて熱分解油7を生成し、生成した熱分解油7を熱分解油生成装置6内に一時貯留する。熱分解油凝縮後熱分解ガス11は次工程以降で軽油成分回収、ガス精製等を行って可燃性ガスを回収する。
【0025】
熱分解ガス4と熱分解ガス冷却媒体10とを向流で直接熱交換させる方法としては、充填塔方式、濡れ壁方式、スプレー方式、スクラバー方式など蒸気凝縮やガス吸収等で用いられている一般的な方法が適用可能である。熱分解油生成装置6内に一時貯留した熱分解油7は、重合による動粘度上昇を抑制するために、加熱、不活性ガスとの接触、又は減圧の少なくともいずれかの手段により揮発性のジエン化合物を除去する。
【0026】
本発明における揮発性のジエン化合物とは、加熱、不活性ガスとの接触、又は減圧の少なくともいずれかの手段により、熱分解油から揮発するジエン化合物のことである。
【0027】
揮発性のジエン化合物除去後の熱分解油は、ダスト濃度に応じて例えば遠心分離機等のダスト除去装置13を用いて熱分解油中に含まれるカーボン等のダスト成分を除去し製品油14として回収すると共に、一部は例えば間接熱交換器等の冷却装置9を用いて冷却後熱分解ガス冷却媒体8として使用する。
【0028】
本発明者らは、ゴム系廃棄物がその構成成分としてイソプレン重合物、ブタジエン重合物、ブタジエン−スチレン重合物等のジエン系高分子を含むために、このゴム系廃棄物を熱分解するとジエン化合物を含んだ熱分解ガスが生成し、熱分解ガスを熱分解油生成装置で凝縮して熱分解油を生成する際に熱分解油中にジエン化合物が混入すること、また、このジエン化合物はDiels-Alder(ディールスアルダー)付加反応をはじめとした低温重合活性を有するためにジエン化合物が混入した熱分解油は100〜150℃程度の低温の熱分解油生成装置内でも重合反応が進行して分子量の増加が生じることを見出し、熱分解油中の揮発性のジエン化合物を低減することにより重合反応を抑制して低動粘度の油を製造することが可能であることを見出したものである。
【0029】
図3に前述の方法に基づく熱分解油生成装置を用いてゴム系廃棄物の熱分解ガスを凝縮して熱分解油を生成した後、生成した熱分解油をジエン化合物低減処理した場合の動粘度を測定し、ジエン化合物低減処理しない場合の動粘度との動粘度比〔すなわち、動粘度比={(ジエン化合物低減処理あり熱分解油の50℃動粘度)/(ジエン化合物低減処理なし熱分解油の50℃動粘度)}〕を比較した例を示すが、ジエン化合物低減処理を実施した熱分解油は低減処理しない熱分解油に比べて動粘度を半分以下程度まで低減することが可能である。尚、動粘度の絶対値は、時間と共に増加する傾向があり、特に揮発性ジエン化合物低減処理しない場合において、より顕著である。
【0030】
揮発性のジエン化合物が低減されたかどうかは、低減処理前と低減処理後の熱分解油について、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)によるジエン化合物のピーク強度を比較、又は、ジエン価(ヨウ素価とも呼ばれJIS−K0070で規定)を比較することで、低減処理後のジエン化合物の量が相対的に減少しているかどうかを見ることによって、確認することができる。
【0031】
上述した熱分解油中のジエン化合物の低減手段に関する具体例としては、例えば、図1に示すように熱分解油生成装置内に一旦貯留した熱分解油に、不活性ガス12を吹き込んでジエン化合物の気相分圧を下げ揮発除去する方法のほか、熱分解油生成装置の後段に設けた吸引ブロアー等を用いて熱分解油生成装置内を減圧雰囲気にしてジエン化合物を揮発除去する方法や、熱分解油生成装置内で生成した熱分解油を間接熱交換器等を用いて加熱する方法など一般的な揮発性物質の分離除去方法が適用可能である。
【0032】
また、その際の、不活性ガスの投入流量や、減圧時の装置内設定圧力、加熱温度等の操業条件は、熱分解油の動粘度の上昇抑制程度を見ながら、適宜設定すれば良い。
【0033】
[第2の実施形態]
さらに図2に示すように熱分解油生成装置15で生成した熱分解油を、不活性ガス吹込装置を備えた油貯留タンク18に供給して油貯留タンク内で不活性ガスと接触させることによりジエン除去性能の更なる向上を図ることが可能となる。尚、不活性ガスとの接触に替えて、加熱又は減圧することや、不活性ガスとの接触、加熱、減圧のいずれかを組み合わせて、揮発性ジエン化合物を除去しても構わない。
【0034】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るゴム系廃棄物熱分解方法の熱分解油動粘度調整方法および装置を実施するための別の装置構成例を示すブロック図である。前述の第1の実施形態と大きく異なる点は、不活性ガス吹込装置を備えた油貯留タンク18を備える点である。熱分解ガス4を熱分解油生成装置15で凝縮させて得た熱分解油16をダスト濃度に応じてダスト除去装置17でカーボン等のダストを除去した後に不活性ガス吹込み装置を備えた油貯留タンク18に供給する。この際、熱分解油16の一部は冷却装置9で冷却して前記熱分解油生成装置15に循環配管を通して循環させる。熱分解油を油貯留タンク18内で不活性ガスと接触して熱分解油中のジエン化合物を気相側に移行させ、排ガス20と共に除去する。ジエン化合物除去後の熱分解油は製品油21として回収するが、熱分解ガスに同伴して熱分解油生成装置15内に持ち込まれるダスト量が多い場合は必要に応じて製品油の一部を熱分解油戻し配管22を介して熱分解油生成装置15に戻して熱分解油生成装置内へのダスト蓄積を防止する。
【0035】
第2の実施形態によるジエン化合物除去方法は、熱分解ガス共存のない雰囲気下に不活性ガスを吹き込んでジエン化合物の揮発除去を行うため、熱分解炉操業変動等に伴う熱分解ガス量や熱分解ガス組成の変動がなく、気相側のジエン分圧を一定に維持することが可能となってより安定したジエン化合物除去を行うことができる。
【0036】
尚、第2の実施形態においては、ジエン化合物の除去方法として、油貯留タンク18での除去に加えて、熱分解油生成装置15にても、第1の実施形態に記載の方法と同様の方法で除去しても構わない。この場合、油貯留タンク18と熱分解油生成装置15の両方でジエン化合物を除去することで、より確実な除去が可能となる。
【0037】
上記の第1の実施形態及び第2の実施形態共に、適用可能な不活性ガス種としては窒素、炭酸ガス、水蒸気などの一般的な不活性ガスが挙げられる。不活性ガス以外の可燃性ガスや熱分解油と反応性のあるガス種などは安全上(火災・爆発等の危険性)や製品油品質上の観点から好ましくない。
【0038】
対象とする、熱分解油から除去する揮発性のジエン化合物としては、例えばシクロオクタジエン、ジメチルシクロヘキサジエン、ジメチルシクロペンタジエンのような沸点250℃程度以下のジエン化合物とすることが好ましい。これは、沸点250℃を超える、より沸点の高いジエン化合物まで除去対象に含めると、ジエン化合物に同伴して揮発する熱分解油中の低分子量油成分の割合が増加して熱分解油の平均分子量がアップするため、ジエン化合物除去による動粘度上昇抑制の効果が飽和し、更には動粘度がかえって上昇する場合があるためである。
【0039】
ジエン化合物除去に必要な不活性ガス吹き込み量は、熱分解油の温度や質によっても異なるが、例えば熱分解油温度130〜140℃の場合、熱分解油回収量(m3−Oil)に対して不活性ガスを50〜100Nm3/m3−Oil程度吹き込んで熱分解油と接触させれば沸点250℃程度以下のジエン化合物を除去することができる。
【0040】
また、上述の手段で揮発性のジエン化合物を除去することに加えて、更に、前記熱分解油生成装置6、15での凝縮から製品油14、21として回収されるまでの熱分解油の平均滞留時間を50時間以下になるように設定することによって熱分解油の動粘度上昇を更に抑制することができる。
【0041】
本発明者らは、不活性ガスと接触させてジエン化合物を除去した後の熱分解油の反応特性について調査した結果、図4に示すように熱分解油生成装置および油貯留タンクでの熱分解油の平均滞留時間を50時間以下に調整すれば熱分解油中に残存する高沸点のジエン化合物等の重合に起因する動粘度上昇についても回避可能であることを見出した。
【0042】
例えば熱分解炉での廃棄物処理速度を落とした操業に切り替えて熱分解油発生量が減少した場合、熱分解油製造装置および油貯留タンク内での熱分解油の平均滞留時間が50時間以下を超えないように調整することによって製品油を低動粘度に維持することが可能となる。
【0043】
熱分解油の平均滞留時間の調整方法としては、代表的には下記の方法を例示することができる。
すなわち、例えば廃棄物単位処理量あたりの熱分解油発生原単位を予め調査しておき、廃棄物の処理速度を変更した場合には熱分解油生成装置や油貯留タンク内での熱分解油体積の設定値を変更して、図1の構成例では次式
{(熱分解油生成装置内での熱分解油体積の設定値)/(廃棄物処理速度×熱分解油発生原単位)}≦50時間
を満足するような熱分解油体積に調整し、図2の構成例では次式
{(熱分解油生成装置および油貯留タンク内での熱分解油体積の設定値)/(廃棄物処理速度×熱分解油発生原単位)}≦50時間
を満足するような熱分解油体積に調整する方法を挙げることができる。
【0044】
また、例えば熱分解油生成装置や油貯留タンク内での熱分解油体積を液面レベル計等を用いて一定レベルに維持すると共に、熱分解油生成装置や油貯留タンク内からの熱分解油の抜出し速度を測定し、図1の構成例では次式
{(熱分解油生成装置内での熱分解油体積)/(熱分解油の抜出し速度)}≦50時間
を満足するように熱分解油の抜出し速度を調整し、図2の構成例では次式
{(熱分解油生成装置および油貯留タンク内での熱分解油体積)/(熱分解油の抜出し速度)}≦50時間
を満足するように熱分解油の抜出し速度を調整する方法を挙げることができる。
【0045】
さらに、上記の方法以外にも、連続槽型反応器等での滞留時間調整手段として考えられる種々の方法の適用が可能である。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
以下に、図1に示した第1の実施形態の構成例を用いて、ゴム系廃棄物である廃タイヤを処理規模200t/日で処理し、重油相当の熱分解油を製造した例を示す。
【0047】
熱分解炉としてはLNG焚き熱風発生炉を備えた外熱式ロータリーキルンを用い、熱分解油生成装置としては熱分解ガスを冷却媒体と向流で直接熱交換させて油状成分を熱分解油として凝縮させるとともに生成した熱分解油を熱分解ガスの冷却媒体として使用する直接熱交換方式を用い、熱分解油からのジエン化合物除去方法としては熱分解油生成装置に一時貯留した熱分解油中に不活性ガスとして窒素ガスを吹き込みジエン化合物を揮発除去させる方法を用い、また、熱分解油からのダスト除去装置としては遠心分離機を用いた。
【0048】
廃棄物を熱分解炉に装入して熱分解ガスと熱分解残渣を生成し、熱分解ガスを熱分解油生成装置に導入して熱分解ガス冷却媒体と接触させて熱分解油を約1m3/hr回収し、回収した熱分解油中に窒素ガスを80Nm3/hr吹き込んで熱分解油と接触させ、窒素ガス接触後の熱分解油を遠心分離機で処理してカーボンダストを中心とするダスト分をスラッジとして分離除去し、ダスト分離除去後の熱分解油を製品油として回収した。熱分解油生成装置内での熱分解油体積は約30m3に設定して熱分解油の平均滞留時間を30時間程度とした。
【0049】
回収した製品油は、動粘度(測定温度50℃)1.8×10-5〜2.5×10-52/sec(18〜25cSt)、引火点60〜90℃となり、ゴム系廃棄物からほぼA重油並みの低粘度を有する重油相当の油を製造することができた。製品油の分子量を測定したところ重量平均分子量250〜300であった。
【0050】
また、熱分解油生成装置に一時貯留した熱分解油中に窒素ガスを吹き込んでジエン化合物を揮発除去する操業を試験的に行わずに回収した製品油をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で成分分析したところ、シクロオクタジエンやジメチルシクロペンタジエン等の炭素数5〜10程度を有する複数種類のジエン化合物のピークが検出されたが、実施例1の操業を行って回収した製品油中には炭素数5〜10程度のジエン化合物のピークが消失ないしは半分以下まで減少しており、窒素ガス吹き込みによるジエン化合物の低減を確認した。
【0051】
(実施例2)
以下に、図2に示した第2の実施形態の構成例を用いて、実施例1と同様に廃タイヤを処理規模200t/日で処理して重油相当の熱分解油を製造した例を示す。
【0052】
熱分解炉としては実施例1と同様にLNG焚き熱風発生炉を備えた外熱式ロータリーキルンを用い、熱分解油生成装置としては熱分解ガスを冷却媒体と向流で直接熱交換させて油状成分を熱分解油として凝縮させるともに生成した熱分解油を熱分解ガスの冷却媒体として使用する直接熱交換方式を用い、熱分解油からのジエン化合物除去方法としては凝縮回した熱分解油をダスト除去した後に窒素ガス吹込み装置を備えた油貯留タンクに供給して油貯留タンク内で熱分解油と不活性ガスを接触させてジエン化合物を揮発除去させる方法を用い、また、熱分解油からのダスト除去装置としては遠心分離機を用いた。
【0053】
廃棄物を熱分解炉に装入して熱分解ガスと熱分解残渣を生成し、熱分解ガスを熱分解油生成装置に導入して熱分解ガス冷却媒体と接触させて熱分解油を約1m3/hr生成し、生成した熱分解油を遠心分離機でダスト分をスラッジとして分離除去した後油貯留タンクに供給し、油貯留タンク中の窒素ガスを70Nm3/hr吹き込んで熱分解油と接触させ、窒素ガス接触後の熱分解油を製品油として回収した。熱分解油生成装置および油貯留タンク内での熱分解油体積は約30m3に設定して熱分解油の平均滞留時間を30時間程度とした。
【0054】
この実施例2においては、熱分解ガス共存のない雰囲気下に不活性ガスを吹き込んでジエン化合物の揮発除去を行うことにより実施例1に比べジエン除去性能の安定性が向上したため、回収した製品油は、動粘度(測定温度50℃)1.7×10-5〜2.0×10-52/sec(17〜20cSt)、引火点70〜80℃と実施1よりもさらに性状の安定した低粘度な重油相当の油を製造することができた。
【0055】
(比較例1)
比較例1として、熱分解油生成装置に一時貯留した熱分解油中への不活性ガス吹き込みや減圧によるジエン化合物除去を行わず、その他の条件は実施例1と同一条件とし、実施例1と同じ性状の廃タイヤを同一処理量200t/日で処理した。
【0056】
遠心分離機でダスト除去後の製品油は、動粘度(測定温度50℃)5.0×10-5〜1.5×10-42/sec(50〜150cSt)、引火点60〜90℃となり、実施例1に比べて高粘度で工業価値の低い油となった。また、回収した製品油の分子量を測定したところ重量平均分子量300〜400となり、上記の実施例1及び実施例2に比べ、熱分解油の重合が進行して分子量が増加していることがわかった。
【0057】
(実施例3)
実施例3として、実施例2と同一の設備を用いて廃タイヤ処理速度を100t/日と実施例2の半分に落とした操業条件下で重油相当の熱分解油を製造した例を示す。
【0058】
廃棄物を熱分解炉に装入して熱分解ガスと熱分解残渣を生成し、熱分解ガスを熱分解油生成装置に導入して熱分解ガス冷却媒体と接触させて熱分解油を約0.5m3/hr生成し、生成した熱分解油を遠心分離機でダスト分をスラッジとして分離除去した後油貯留タンクに供給し、油貯留タンク中の窒素ガスを35Nm3/hr吹き込んで熱分解油と接触させ、窒素ガス接触後の熱分解油を製品油として回収した。
【0059】
また、実施例2に比べ油貯留タンクの液面レベルの設定値を下げて、熱分解油生成装置および油貯留タンク内の熱分解油体積を20〜25m3に調整し、油貯留タンクおよび熱分解油生成装置内での熱分解油の平均滞留時間を50時間以下となるよう調整した。
【0060】
回収した製品油は、動粘度(測定温度50℃)1.9×10-5〜2.0×10-52/sec(19〜20cSt)、引火点70〜80℃となり、実施例2とほぼ同等の性状の油を得ることができた。
【0061】
(実施例4)
実施例4として、実施例3と同様に廃タイヤの処理速度を100t/日と実施例2の半分に落とした条件で重油相当の熱分解油を生成し、油貯留タンクおよび熱分解油生成装置内での熱分解油体積を実施例2並みの30m3とした他は実施例3と同一の条件で操業した例を示す。
【0062】
回収した製品油は、動粘度(測定温度50℃)2.5×10-5〜3.5×10-52/sec(25〜35cSt)、引火点70〜80℃となり、実施例3に比べ動粘度が上昇した油が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の第1の発明に係る装置の設備例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の第1の発明に係る装置の別の設備例を示すブロック図である。
【0064】
【図3】図3は、本発明の第1の発明に係るジエン化合物低減処理した熱分解油の動粘度(測定温度50℃)およびジエン化合物低減処理しない熱分解油の動粘度の動粘度比(=ジエン化合物低減処理あり熱分解油の動粘度/ジエン化合物低減処理なし熱分解油の動粘度)と熱分解油生成装置内および油貯留タンク内での熱分解油の平均滞留時間の相関図である。
【0065】
【図4】図4は、本発明の第2の発明に係る熱分解油生成装置内および油貯留タンク内での熱分解油の平均滞留時間と熱分解油の動粘度(測定温度50℃)の相関図である。
【符号の説明】
【0066】
1…ゴム系廃棄物、2…廃棄物供給装置、3…熱分解炉、4…熱分解ガス、5…熱分解残渣、6…熱分解油生成装置、7…熱分解油、8…熱分解ガス冷却媒体、9…冷却装置、10…冷却後の熱分解冷却媒体、11…熱分解油凝縮後熱分解ガス、12…不活性ガス、13…ダスト除去装置、14…製品油、15…熱分解油生成装置、16…熱分解油、17…ダスト除去装置、18…油貯留タンク、19…不活性ガス、20…排ガス、21…製品油、22…熱分解油戻し配管。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫

【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣

【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司

【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也


【公開番号】 特開2008−24754(P2008−24754A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195880(P2006−195880)