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【発明の名称】 重質油熱分解装置の蒸留塔内における洗浄処理油の取り扱い方法及び取り扱い装置
【発明者】 【氏名】加 藤 弘

【氏名】岡 田 伸 一

【要約】 【課題】重質油熱分解装置における蒸留塔内の洗浄処理油の取り扱い方法を提供する。

【構成】重質油熱分解装置における蒸留塔3の洗浄精製区域21で熱分解生成油を洗浄油で洗浄した後の洗浄処理油の取り扱い方法であって、前記洗浄処理油を前記洗浄精製区域21に設けられたコレクター36に収集し、前記収集した洗浄処理油を前記コレクター36下部に備えられた配管31を通じて、前記蒸留塔内の底部に直接排出することを含んでなるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質油熱分解装置における蒸留塔内の洗浄精製区域において洗浄油により熱分解生成物を洗浄した後の洗浄処理油の取り扱い方法であって、
前記洗浄処理油を前記洗浄精製区域に設けられたコレクターに収集し、
前記収集した洗浄処理油を前記コレクター下部に備えられた配管を通じて、前記蒸留塔内の底部に直接排出することを含んでなる、取り扱い方法。
【請求項2】
前記配管の下端が、前記蒸留塔の底部に存在する原料油の液面以下に存在してなる、請求項1に記載の取り扱い方法。
【請求項3】
前記洗浄精製区域と、前記蒸留塔の底部に存在する原料油の液面との間にシールドプレートが設けられてなり、かつ、前記配管が前記シールドプレートを貫通して配置されてなることにより、前記洗浄処理油の再巻き上げを防止することをさらに含んでなる、請求項1又は2に記載の取り扱い方法。
【請求項4】
重質油熱分解装置における蒸留塔内の洗浄精製区域において洗浄油により熱分解生成物を洗浄した後の洗浄処理油の取り扱い装置であって、
前記洗浄処理油を収集するコレクターと、
前記コレクターの下部から前記蒸留塔内の底部に前記洗浄処理油を直接排出する配管とを備えてなる、取り扱い装置。
【請求項5】
前記配管の下端が、前記蒸留塔の底部に存在する原料油の液面以下に存在してなる、請求項4に記載の取り扱い装置。
【請求項6】
前記洗浄精製区域と、前記蒸留塔の底部に存在する原料油の液面との間に設けられたシールドプレートをさらに備えてなる、請求項4又は5に記載の取り扱い装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、重質油熱分解装置における蒸留塔内における洗浄処理油の取り扱い方法及び取り扱い装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油精製において熱分解反応法を用いた様々な重質油の軽質化プロセス(装置)が提案されている。例えば固体の石油コークスを併産するディレードコーカー、フルードコーカー、減圧残油の粘度低下を目的としたビスブレーカー、鉄鋼向けコークス製造用のバインダーピッチを併産するユリカプロセス、フルードコーカーにコークスガス化装置を伴ったフレキシコーカー等の(重質油)熱分解装置が開発されている。
【0003】
従来、重質油熱分解装置においては、熱分解により生じた分解ガス及び分解油ベーパーに付随してアスファルテン等で形成される重質の炭素質成分(「コーク前駆体」と呼ばれる)が発生する。このコーク前駆体は精製される軽質油に混入されると、次の分解油水素化精製工程等に悪影響を及ぼす。その為、重質油熱分解装置においては、熱分解により生成された分解油にコーク前駆体を持ち込まないように、蒸留塔内部の精製区域に洗浄精製区域が設けられることが一般的になされている。洗浄精製区域には、各種トレイ、規則又は不規則な形状を有する充填物等、様々なものが採用され配置されている。例えば、特公昭53―29322号(特許文献1)では、重質油の蒸留装置の段床とガス導入口の間に、ピッチを溶解し易い油を噴出して、重質油分解装置内のコーキングを防止する方法が提案されている。また、特公昭53−42322号(特許文献2)では、複数のバルブキャップとシーブトレイを採用し、バルブキャップの最下部とシーブトレイの最上部との間隔を、シーブトレイ相互の間隔を2倍以上とし、下部のガス導入口とシーブトレイ最下部との間に過熱した洗浄油を上方向に噴出させるデミスター装置により、熱分解ガス中の同伴ピッチを除去する方法が提案されている。
【0004】
上記先行技術の洗浄方法の概要を、図1を用いて説明する。図1は、従来の重質油熱分解装置の蒸留塔3’の概略断面図を示す。原油を蒸留処理した減圧残油が原料油予熱炉で加熱されて、配管28から蒸留塔3’の塔底部に原料油として供給される。また、反応塔から得られた熱分解生成物(分解油、分解ガス及びコーク前駆体等)が配管24から蒸留塔3’の塔底部に供給される。蒸留塔3’において、24から供給された熱分解生成物の蒸気成分及びコーク前駆体は、中央部の洗浄精製区域21に到達する。洗浄精製区域21において、洗浄油供給部から配管27を介して洗浄油が供給され、分解生成物は、洗浄精製区域21の一又は複数に重ねられたトレイにおいて精製がなされ、かつ、洗浄油と接触して洗浄が行われる。この結果、洗浄精製区域21の下部に設けられたコレクター26には、コーク前駆体、及び、重質留分を含む洗浄処理油が収集される。収集された洗浄処理油は、強制ポンプを備えた配管29により蒸留塔3の外部に強制的に排出され、必要に応じ熱分解原料油として供給される。
【0005】
反応塔がバッチ式又はセミバッチ式で稼働される重質油熱分解装置(例えば、ユリカ装置)は、蒸留塔への熱分解生成物の流入量は一定ではなく特定の周期をもって増減を繰り返す。一方、蒸留塔に供給される洗浄油は洗浄精製区域全体を十分に濡らすだけの量が必要であり、常に、一定量以上の洗浄油が供給されている。このため、洗浄後の処理油の排出量を定量値で制御しようとする場合、トレイの液量が増減して負荷が変動し、その結果、蒸留操作が困難になることがある。このような技術的課題を解決するための一般的な手法として、トレイの液面制御及び洗浄区域の差圧を制御することが挙げられるが、このような制御には多くの設備と資材を要し、蒸留塔の構造が複雑化し、コストが嵩むこととなる。また、洗浄後の処理油を強制的に排出させるポンプを設置した場合、洗浄処理油に含まれるコーク前駆体が配管等の内壁に付着し、コーク層を形成し、いわゆるコーキングが生じ、重質油熱分解装置の運転に悪影響を及ぼす。このため、配管系の各部位に形成されたコーク層による閉塞を有効に防止する特殊仕様の熱油ポンプが必要不可欠となる。しかしながら、特殊仕様の熱油ポンプは、その製造および設置、またはその制御、保守等に相当程度の困難性とそれに伴う経費が必要となり、経済効率及び安全確保の点から好ましくない。
【0006】
従って、現在、蒸留塔における洗浄精製区域において、洗浄後の処理油の取り扱い、及び、洗浄後の処理油の再利用を可能とした、重質油熱分解装置における蒸留塔内の洗浄処理油の取り扱い方法及び処理装置の開発が急務とされている。
【0007】
【特許文献1】特公昭53―29322号
【特許文献2】特公昭53−42322号
【発明の開示】
【0008】
本発明者等は、本発明時において、重質油熱分解装置の蒸留塔内の洗浄処理油を、蒸留塔の精製区域底部に蒸留塔内配管を備えることにより、特殊仕様の熱油ポンプによる洗浄処理油の強制排出手段、並びにトレイ及びコレクタートレイに存在する洗浄処理油量の測定(制御)設備等が不要となり、重質油熱分解装置における蒸留塔の運転を簡易、確実に実行することができ、洗浄処理油の排出に伴う配管系のコーキング問題が生じず、かつ、洗浄処理油の再利用が可能なるとの知見を得た。よって、本発明は、蒸留塔内における洗浄精製区域内での洗浄処理油の排出を容易にし、洗浄処理油の再利用を兼ね備え、かつ、保守点検の回数を著しく低下させて、重質油熱分解装置の運転期間を長期化することを可能とした洗浄処理油の取り扱い方法及び取り扱い装置を提供するものである。
【0009】
従って、本発明は、重質油熱分解装置における蒸留塔内の洗浄精製区域において洗浄油により熱分解生成物を洗浄した後の洗浄処理油の取り扱い方法であって、
前記洗浄処理油を前記洗浄精製区域に設けられたコレクターに収集し、
前記収集した洗浄処理油を前記コレクター下部に備えられた配管を通じて、前記蒸留塔内の底部に直接排出することを含んでなるものである。
【0010】
本発明の別の態様は、重質油熱分解装置における蒸留塔内の洗浄精製区域において洗浄油により熱分解生成物を洗浄した後の洗浄処理油の取り扱い装置であって、
前記洗浄処理油を収集するコレクターと、
前記コレクターの下部から前記蒸留塔内の底部に前記洗浄処理油を直接排出する配管とを備えてなるものである。
【0011】
本発明による取り扱い方法(装置)によれば、蒸留塔内で使用された洗浄処理油を排出する為の特殊仕様の熱油ポンプ、及びそれに付随するバルブ、配管などの設備が不要となることから経済的である。また、熱油ポンプの保守管理が不要となり、保守点検に起因する漏洩油の着火等、安全上の懸念を解消できることは大きな利点となる。また、トレイ及びコレクター上の油量を制御するための計測機器等が不要となり、重質油分解装置の運転が容易、確実となり、コスト削減に繋がるとの利点を有する。また、コーク前駆体と重質分解油を含んでなる洗浄処理油を、蒸留塔の底部に原料油として供給し再利用することにより、経済的効率が高まるとの利点を有する。以上のことから、本発明による洗浄処理油の取り扱い方法及び取り扱い装置を採用することにより、安全で、経済的に、かつ、継続的な重質油熱分解装置の運転が達成されるとの利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定義
(重質油)熱分解装置
本発明において、「(重質油)熱分解装置」とは、ディレードコーカー、フルードコーカー、ビスブレーカー、ユリカプロセス、フレキシコーカー等の熱分解方法を実現することができるものをいう。ここで、これらのプロセスを、以下に概説する。ディレードコーカーは、減圧残油などの重質油を加熱下で穏やかに分解すると共に、コークスドラムにてコークス化を図るものである。フルードコーカーは減圧残油を流動コークス上で熱分解し、得られたガスから分解留分とコークスを得るものである。ビスブレーカーは、減圧残油を加熱炉チューブ内でコーキングを生じさせないように液相熱分解を行い、精製油の粘度及び流動点を低下させるものであり、ピッチ、コークス等の処理が殆ど必要ないものである。フレキシコーカーは、フルードコーカーにコークスガス化装置を伴ったものであり、コークスはガシファイアーにおいて、ガス化されるものである。ユリカプロセス(装置)は、下記に説明する。
【0013】
ユリカプロセス(装置)
ユリカプロセス(装置)について、図3を用いて概説する。原油を蒸留処理した減圧残油が原料油予熱炉1で加熱されて、配管28を介して蒸留塔3の塔底部に供給される。熱分解反応の原料油(減圧残油)は、蒸留塔3の塔底から取り出され、分解炉5に導入される。分解炉5で所定温度まで加熱された後に、原料油として反応塔7a又は7b(2組で一つの反応塔を構成する)に供給される。原料油は、スイッチバルブ8等により反応塔7a又は7bに交互(セミバッチ方式)に供給される。つまり、反応塔7a又は7bの一方に原料油が供給されている間に、他方の反応塔7a又は7bにおいては、スチーム熱分解反応、冷却、ブローダウン等の各工程が行われる。一方の反応塔においては、スチーム熱分解反応が行われる際、スチーム加熱炉9から過熱スチームが反応塔に供給される。過熱スチームは、反応塔7a又は7bにおいて、分解熱の供給、分解油又は分解ガスのストリッピング及び反応塔内の攪拌を目的として供給される。分解油又は分解ガスは、反応塔7a又は7bの塔頂部分からスチームとともに、配管24を介意して蒸留塔3に供給される。
【0014】
蒸留塔3において精製されて、分解ガス17、分解軽質油18、分解重質油19等として取り出され、次工程において処理され、又はその一部はそのまま石油精製品とされる。本発明にあっては、分解重質油19の一部は、洗浄精製区域に、洗浄油として供給されてよい。蒸留塔3で精製された後の残油は蒸留塔3の塔底から減圧残油とともに取り出される。反応塔7a又は7bの反応液相には、ピッチが生成され、ピッチの重縮合度合いを軟化点(温度℃)により調整し、特定の軟化点に達した場合に、反応塔7a又は7bに、水を直接供給して冷却し、熱分解反応を終了させる。液状ピッチは、反応塔7a又は7bの下部に備えられたピッチ受槽11にブローダウンされて、ピッチフレーカー13により冷却搬送され、固体ピッチ製品20とされる。
【0015】
洗浄処理油の取り扱い方法/取り扱い装置
本発明による洗浄処理油の取り扱い方法(装置)の内容を図2により説明する。図2は図3に示す蒸留塔3の拡大断面図を示したものである。蒸留塔3は、加熱区域(蒸留塔底部)と、洗浄精製区域21と、この洗浄精製区域21に上部にさらなる精製区域を備えてなるものである。原油を蒸留処理した減圧残油が原料油予熱炉1で加熱されて、配管28から蒸留塔3の塔底部に原料油として供給される。また、反応塔7から得られた熱分解生成物(コーク前駆体を含む分解油及び分解ガス)が配管24から蒸留塔3の塔底部に供給される。蒸留塔3において、配管24から供給された熱分解生成物の蒸気成分及びコーク前駆体は、中央部の洗浄精製区域21に到達する。洗浄精製区域21において、洗浄油供給部から配管37を介して洗浄油が供給され、熱分解生成物は、洗浄精製区域21のトレイにおいて精製がなされ、かつ、洗浄油と接触して洗浄が行われる。この結果、洗浄精製区域21の下部には、洗浄油で洗浄された、コーク前駆体、及び重質留分を含む洗浄処理油が最終的にコレクター36に収集される。収集された洗浄処理油は、配管31を介して、蒸留塔3の底部に直接(重力下)排出される。本発明では、配管31の下端が、蒸留塔3の底部に存在する原料油の液面以下に存在することが好ましい。また、本発明の好ましい態様によれば、洗浄精製区域21と、蒸留塔3の底部に存在する原料油の液面との間に一又は二以上のシールドプレート32が設けられてなるものが好ましい。一又は二以上のシールドプレート32が備えられてなることにより、配管31を介して蒸留塔3の底部に排出された洗浄処理油の再巻き上げを防止することが可能となる。
【0016】
1)洗浄処理油排出配管
コレクター36に収集された洗浄処理油は、配管31を介して、蒸留塔3底部に直接排出される。配管31は、蒸留塔の内部又は外側に配置されてよいが、好ましくは内部に直管で配置されることが好ましい。配管31を通り蒸留塔3底部に排出される洗浄処理油は、自重による自然落下により行われることが、装置の安定作動、保守点検が不要との観点から好ましい。従って、本発明の好ましい態様によれば、配管31は、ポンプ等の強制排出手段は必要としない。また、配管31は、その下端が、蒸留塔3の底部に存在する原料油の液面以下に存在するように配置されていることが好ましい。配管31は、一又は二以上設置されてよいが、好ましくは1本で必要な洗浄処理油排出能力を備えることが望ましい。
【0017】
2)コレクター
洗浄精製区域21の最下段のトレイにはコレクターが設置されている。本発明においては、洗浄精製区域21の最下段トレイに備えられているコレクター36に、洗浄処理油が収集される。トレイは、蒸留塔3の内部に複数設置されてなるものであり、このトレイにより蒸留塔に供給された熱分解生成物の精製分離が行われる。蒸留塔3に供給された高温の熱分解生成物は、洗浄精製区域21のトレイにおいて洗浄油と接触し洗浄精製され、かつ、熱分解生成物中に存在するコーク前駆体が洗浄処理される。使用後の洗浄処理油は、コレクター36に導かれる。
【0018】
3)シールドプレート
本発明の好ましい態様によれば、蒸留塔3内部にシールドプレート32を備えてなるものが好ましい。特に、洗浄精製区域21と、蒸留塔3の底部に存在する原料油の液面との間にシールドプレート32が設けられてなるものが好ましい。シールドプレート32が備えられてなることにより、配管31を介して蒸留塔3の底部に排出される洗浄処理油の再巻き上げを防止することが可能となる。本発明の好ましい態様によれば、シールドプレート32が設けられた場合、配管31は、シールドプレート32を貫通して配置されてよい。
【0019】
4)その他
洗浄油供給器
洗浄油供給器は、蒸留塔の外部に設置された洗浄油ポンプ等を介して洗浄精製区域21に洗浄油を供給する。一般に、洗浄精製区域21は蒸留塔のフラッシュゾーン上部に位置する。本発明にあっては、重質油、重軽質油等のそれ自体を、又は、他の蒸留塔から精製された重質油、重軽質油等を、洗浄精製区域21に洗浄油として供給するものであってもよい。本発明の好ましい態様によれば、洗浄精製区域21の上部に設置されるさらなる精製区域から精製抽出された重質油、重軽質油等を洗浄精製区域21に配管37を介して供給するものが生産効率の観点から好ましい。洗浄油供給器から供給される洗浄油は、洗浄精製区域21の上部から供給される。
【0020】
原料油供給器
原料供給器は、常圧蒸留、減圧蒸留、接触分解等の蒸留塔から得られる重質油を原料油として、蒸留塔3に配管28を通じて供給するものである。本発明によれば、原料油供給器は、蒸留塔3に原料油を供給し排出する量を制御する手段により構成されてよい。原料油供給器は、原料油の供給排出量を制御する手段を備えてなることにより、蒸留塔3内に存在する原料油の油量を調整すること、即ち、蒸留塔3内の油の液面を所望の高さに調整することを可能とする。より具体的には、原料油の供給量を制御することにより、配管24から供給される反応塔7からの熱分解生成物と、蒸留塔3の塔底部に配管31を介して排出される洗浄処理油の各油量の変動に応じて塔底油の液面を安定して調整することができ、重質油熱分解反応装置を安定して運転することに寄与する。
【0021】
原料油を供給排出する手段は、調整弁、バルブ、圧力調整器等(これらはそれぞれに又は総合的に自動制御されてよい)を備えてなるものが好ましい。蒸留塔3内の油の油面は、蒸留塔3に設置された油面計測器で測定することができる。原料予熱炉1または分解炉5の供給量を一定にするため、配管28より供給される減圧残油の一部を原料タンクへ戻すことにより制御を行う。
【0022】
好ましい態様
本発明による洗浄処理油の取り扱い方法は、重質油熱分解装置、特に、高温水蒸気による熱分解機能を利用した重質油熱分解装置に使用することができる。本発明にあっては、重質油熱分解装置の反応塔が1個のもの、好ましくは複数備えたものに使用することができる。本発明の好ましい態様によれば、図3に示す通り、反応塔7a及び7bを備え、さらに必要に応じてピッチ受槽11を備えた高温水蒸気による熱分解反応を利用した重質油熱分解装置(ユリカ装置)に使用することが最も好ましい。本発明にあっては、反応塔7a及び7bがセミバッチ方式により運転されてなるユリカ装置において好ましくは使用される。
【0023】
反応塔7a及び7bのセミバッチ稼働を説明する。反応塔7a又は7bのセミバッチ稼働サイクルを、例えば、3時間とした場合、反応塔7a又は7bは1.5時間毎に原料油の供給を受けることとなる。そして、反応塔7a又は7bの一方が原料油の供給を受けている1.5時間の工程の間に、他方の反応塔7a又は7bは、原料油受け入れ後の後半部分の一定時間の熱分解反応工程の後、反応を停止するための冷却工程、生成した石油ピッチを抜き出すためのブローダウン工程を経て、必要に応じて反応時間分布調整のための低温原料油(減圧残渣油)を供給する初期供給工程へ進むが、これらの工程に要する全体の時間調整を目的として、次の原料油供給工程の前に、スタンバイ工程が設定される。この繰り返しにより、反応塔7a及び7bのセミバッチ稼働が実行される。
【実施例】
【0024】
本発明による効果を下記の実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例1(定常稼働試験)
図3の略図で示す、本発明による洗浄処理油の取り扱い方法(装置)を備えた蒸留塔を有する、原料減圧残油処理能力3,800キロリットル/日のユリカ熱分反応装置を用いて、稼働率90%程度で定常運転されていた蒸留塔内部の圧力を測定した。測定結果は、下記表1に示す通りであった。表1中、横軸はセミバッチ反応の1サイクル3時間(180分)の時間経過を示し、縦軸は左側に蒸留塔洗浄精製区域の差圧[kPa]を示し、右側に蒸留塔の塔底圧力[kPa]を示す。表1中の蒸留塔の塔底圧力(表1中の上部プロット)は、セミバッチ反応塔の運転モード(反応−冷却−払い出し−準備)の影響を受けて、一定間隔の圧力変動を呈した。しかしながら、洗浄精製区域の差圧(表1中の下部プロット)は、わずかな変化を示すのみでほぼ安定した値を維持している。これは本発明による洗浄処理油の取り扱い方法(装置)が実行されることにより、洗浄精製区域トレイ上の気液負荷が安定して推移していることを示し、洗浄精製区域に流入してくる熱分解生成物の寡多に関わらず、洗浄精製区域トレイ上の液量を自動的に調整する本発明の機構が有効に機能していることを示している。
【表1】


【0025】
実施例2(可変稼働試験)
実施例1と同様のユリカ熱分解反応装置を用いて、原料油処理量を大幅に変動させた時の9時間部分の蒸留塔内部の圧力を測定し記録した。測定結果は、下記表2に示す通りであった。表2中、横軸はセミバッチ反応の1サイクル3時間(180分)の3回分(540分)の時間経過を示し、縦軸は左側に蒸留塔洗浄精製区域の差圧[kPa]を示し、右側に蒸留塔の塔底圧力[kPa]を示す。表2中、特に、約100分〜290分の間に掛けて、ユリカ熱分解反応装置の原料油処理量を通常の97%稼働率から50%稼動率へ急激に低下させ、その後徐々に元に戻した時の蒸留塔の塔底圧力及び洗浄精製区域の差圧の推移を示している。表2から理解される通り、約100分〜290分の間に掛けて、稼働率を変動させた場合、蒸留塔の塔底圧力(表2中の上部プロット)は、稼働率低下による熱分解反応生成物の減少を受けて大きく変化した。しかしながら、洗浄精製区域の差圧(表2中の下部プロット)は、ほぼ一定に保たれ、本発明の機構が有効に機能しており、稼働率変動稼働に対する追従性能の優位性が極めて優れていることを示している。
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、従来の蒸留塔の断面図を示すものである。
【図2】図2は、本発明が使用される蒸留塔の断面図を示すものである
【図3】図3は、ユリカ装置の概略図を示すものである。
【出願人】 【識別番号】391030480
【氏名又は名称】富士石油株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100075812
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢次

【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝

【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男

【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝

【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史


【公開番号】 特開2008−7721(P2008−7721A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182199(P2006−182199)