トップ :: C 化学 冶金 :: C10 石油,ガスまたはコ−クス工業;一酸化炭素を含有する工業ガス;燃料;潤滑剤;でい炭

【発明の名称】 超低硫黄軽油基材の製造方法及び超低硫黄軽油組成物
【発明者】 【氏名】荒木 泰博

【氏名】岩田 好喜

【氏名】石田 勝昭

【要約】 【課題】水素化脱硫と収着脱硫を組み合わせて、効率的に硫黄分5〜20質量ppmの超低硫黄軽油基材の製造方法を提供し、さらに、該超低硫黄軽油基材を用いた超低硫黄軽油組成物を提供する。

【構成】軽油留分を水素化脱硫して硫黄分10〜50質量ppmの水素化脱硫軽油留分を得る水素化脱硫工程、該水素化脱硫軽油留分の25〜85容量部収着脱硫して硫黄分5質量ppm未満の収着脱硫軽油留分を得る収着脱硫工程、及び、該収着脱硫軽油留分と前記水素化脱硫軽油留分の75〜15容量部を混合して硫黄分5〜20質量ppmの超低硫黄軽油基材を得る混合工程を含む超低硫黄軽油基材の製造方法、及び該超低硫黄軽油基材を含有する超低硫黄軽油組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽油留分を、水素の存在下に、周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素を含む水素化脱硫触媒と接触させた後、水素を分離して硫黄分10〜50質量ppmの水素化脱硫軽油留分を得る水素化脱硫工程、
水素化脱硫軽油留分の25〜85容量部を、水素の存在下に、硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤と接触させて脱硫処理し、硫黄分5質量ppm未満の収着脱硫軽油留分を得る収着脱硫工程、及び、
収着脱硫軽油留分と水素化脱硫軽油留分の75〜15容量部を混合して硫黄分5〜20質量ppmの超低硫黄軽油基材を得る混合工程
を含むことを特徴とする超低硫黄軽油基材の製造方法。
【請求項2】
硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤が、亜鉛と他の金属を含み、他の金属が、銅、ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属である請求項1に記載の超低硫黄軽油基材の製造方法。
【請求項3】
超低硫黄軽油基材の芳香族分が10〜25容量%である請求項1又は2に記載の超低硫黄軽油基材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された製造方法によって得られた超低硫黄軽油基材を主成分として含有することを特徴とする超低硫黄軽油組成物。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄分を低減した超低硫黄軽油基材の製造方法、及び該超低硫黄軽油基材を用いた超低硫黄軽油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気環境改善のために、軽油の品質規制値が世界的に厳しくなる傾向にある。特に、軽油中の硫黄分はディーゼル車の排気ガス対策として期待されている酸化触媒、窒素酸化物(NOx)還元触媒、連続再生式ディーゼル排気微粒子除去フィルター等の後処理装置の耐久性に影響を及ぼす懸念があり、軽油の低硫黄化が要請されている。したがって、軽油中の硫黄分は低減すればするほど、排気ガス中の硫酸塩の生成を抑え、窒素酸化物還元触媒の劣化を抑制し、また後処理触媒上での粒子状物質の生成を低減して窒素酸化物及び粒子状物質の排出抑制が期待できる。
【0003】
このような状況下で、軽油中の硫黄分を大幅に除去する超深度脱硫技術の開発が進められている。軽油中の硫黄分の低減化技術としては、通常、水素化脱硫の運転条件をより脱硫が進みやすい条件にすること、例えば、反応温度を上げることや液空間速度(LHSV)を下げること等が考えられる。しかし、反応温度を上げると、触媒上に炭素質が析出して触媒の活性が急速に低下し、またLHSVを下げると、脱硫能は向上するものの、精製処理能力が低下するため設備の規模を拡張する必要が生じる。さらに、運転条件を過酷にすると芳香族の水素化反応が過度に進行し、多量の水素消費を伴い、製造コストが高くなるため好ましくない。
【0004】
また、硫黄分が5〜10質量ppmの水素化精製油を水素化触媒の存在下で深度水素化処理して、硫黄分を5質量ppm以下の深度水素化精製軽油を得、この深度水素化精製軽油と未精製油及び/又は水素化精製油を原料とし、水素化精製触媒の存在下に硫黄分5質量ppm以下、全芳香族分が3〜12容量%或いは10容量%以下の軽油組成物を製造する方法が、開示されている(特許文献1及び2)。しかし、この方法は深度水素化処理において、2〜10MPaという高圧水素存在下で反応を行うことや、0.1〜2hr−1という低いLHSVが必要であるため大きな反応器を要することや、芳香族分をほとんど水素化してしまうため水素消費量がかなり大きいことから、経済的な製造といった観点からは問題がある。また、全芳香族分が12容量%以下まで低減されているために密度が低下し、発熱量が低減するため燃費の悪化や出力低下が起こり、さらには、燃料噴射系で使用しているシールゴム部材等への影響により、燃料の漏れ(リーク)等も懸念される。
【0005】
これに対して、本出願人は、先に吸着脱硫によって芳香族分をほとんど減らすことなく軽油中の硫黄分を10質量ppm以下に低減する方法を提案した(特許文献3)。しかし、この吸着脱硫では硫黄を取り込む能力が低く、長期間にわたって運転を行う場合には頻繁に再生処理を行う必要があり経済的ではない。
縮合環のヘテロ化合物を含む石油又は化学ストリームから選択されるストリームを、水素化脱硫触媒を含む反応域と硫化水素吸収剤物質を含む反応域によって芳香族飽和に好ましい条件で脱硫する方法が開示されている(特許文献4)。しかしこの方法では芳香族飽和に伴う水素消費が著しく、製造コストが高くなり好ましくない。
【特許文献1】特開2004−269683号公報
【特許文献2】特開2004−269685号公報
【特許文献3】国際公開第03/097771号公報
【特許文献4】特表2003−508580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、硫黄分5〜20質量ppmの超低硫黄軽油基材を製造する際の上記問題を解決するもので、水素化脱硫と収着脱硫を組み合わせて、低い水素消費量、低い処理温度など省資源と省エネルギーを図った超低硫黄軽油基材の製造方法を提供し、さらに、該超低硫黄軽油基材を用いた超低硫黄軽油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、軽油留分を水素化脱硫、収着脱硫などの脱硫技術で処理して硫黄含有量が極めて低い超低硫黄軽油基材を効率的に製造するため、さまざまな組み合わせを検討した。その結果、水素化脱硫と収着脱硫を特定の条件で組み合わせて処理すると、超低硫黄軽油基材を効率的に、製造できることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、次のとおりの超低硫黄軽油基材の製造方法、又は超低硫黄軽油組成物である。
(1)軽油留分を、水素の存在下に、周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素を含む水素化脱硫触媒と接触させた後、水素を分離して硫黄分10〜50質量ppmの水素化脱硫軽油留分を得る水素化脱硫工程、水素化脱硫軽油留分の25〜85容量部を、水素の存在下に、硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤と接触させて脱硫処理し、硫黄分5質量ppm未満の収着脱硫軽油留分を得る収着脱硫工程、及び、収着脱硫軽油留分と水素化脱硫軽油留分の75〜15容量部を混合して硫黄分5〜20質量ppmの超低硫黄軽油基材を得る混合工程を含む超低硫黄軽油基材の製造方法。
【0009】
(2)硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤が、亜鉛と他の金属を含み、他の金属が、銅、ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属である上記(1)に記載の超低硫黄軽油基材の製造方法。
(3)超低硫黄軽油基材の芳香族分が10〜25容量%である上記(1)又は(2)に記載の超低硫黄軽油基材の製造方法。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載された製造方法によって得られた超低硫黄軽油基材を主成分として含有する超低硫黄軽油組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法は、水素化脱硫、収着脱硫を組み合わせて硫黄含有量の高い軽油留分を処理して、硫黄分5〜20質量ppmといった超低硫黄軽油基材を製造する方法である。本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法によれば、水素化脱硫も、収着脱硫もともに比較的マイルドな条件で運転することができるから、エネルギー、水素の消費が少なくて済み、精製コストを低く押さえることができる等の格別の効果を奏する。
【0012】
さらに、この超低硫黄軽油基材は、硫黄含有量が少ない上に、芳香族分を著しく減少させることなく、適当な含有量で残している。したがって、これを用いて製造された超低硫黄軽油組成物は、硫黄分が少ないことから、ディーゼル自動車に用いたとき、排気ガス中の硫黄酸化物の排出量を低減でき、また窒素酸化物還元触媒の劣化を抑制し、後処理触媒上での粒子状物質の生成を低減して窒素酸化物及び粒子状物質の排出抑制ができる等の環境負荷を低減でき、また、芳香族分を適度に含有させていることから、発熱量が高く、自動車等の燃費や運転出力に優れ、燃料噴射系で使用しているシールゴム部材等への影響がなく、燃料の漏れを生じないという格別の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔軽油留分〕
本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法における原料となる軽油留分は、通常、硫黄分が0.5質量%以上のもので、好ましくは、硫黄分が0.5〜5質量%、特には1〜2質量%であり、窒素分が50質量ppm以上、特には80〜500質量ppmであり、密度(15℃)が0.80〜0.90g/cmであり、50容量%留出温度が250〜320℃、特には260〜310℃であり、70容量%留出温度が280〜340℃、特には290〜330℃であり、90容量%留出温度が310〜370℃、特には320〜360℃であり、95容量%留出温度が320〜390℃、特には330〜380℃である。
【0014】
この軽油留分としては、直留軽油留分を用いることが好ましく、直留軽油留分単独でもよいが、熱分解油や接触分解油を直留軽油留分に混合した混合軽油留分でもよい。さらには、軽油相当の留分であれば他のプロセス油も、原料となる軽油留分に混合することができる。直留軽油留分は、原油を常圧蒸留して得られ、おおよそ10容量%留出温度が200〜290℃、50容量%留出温度が260〜320℃、90容量%留出温度が300〜370℃である。
【0015】
熱分解油とは、重質油留分に熱を加えて、ラジカル反応を主体にした分解反応により得られる軽質留分油で、例えば、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法あるいはフルードコーキング法等により得られる留分をいう。これらの留分は得られる全留分を熱分解油として用いてもよいが、留出温度が150〜520℃の範囲内にある留分を用いることが好適である。
【0016】
接触分解油とは、中間留分や重質留分、特には減圧軽油留分や常圧蒸留残油等をゼオライト系触媒等と接触分解する際に得られる留分、特に高オクタン価ガソリン製造を目的とした流動接触分解装置において副生する分解軽油留分である。この留分は、一般に、沸点が相対的に低い軽質接触分解油と沸点が相対的に高い重質接触分解油とが別々に採取されている。本発明においては、これらの留分のいずれをも用いることができるが、前者の軽質接触分解油、いわゆるライトサイクルオイル(LCO)を用いることが好ましい。このLCOは、一般に、10容量%留出温度が200〜250℃、50容量%留出温度が250〜290℃、90容量%留出温度が300〜355℃の範囲内にある。また、重質接触分解油、いわゆるヘビーサイクルオイル(HCO)は、10容量%留出温度が280〜340℃、50容量%留出温度が390〜420℃、90容量%留出温度が450℃以上にある。
【0017】
〔水素化脱硫触媒による水素化脱硫工程〕
石油精製において、原油を蒸留して得られる軽油留分には硫黄分が通常5,000〜20,000質量ppm含まれる。これを何も処理せずに硫黄収着機能をもった多孔質脱硫剤による脱硫処理を行うと、多孔質脱硫剤の寿命が著しく短くなり好ましくない。このため、硫黄分が5質量ppm未満の収着脱硫軽油基材を製造する場合は、多孔質脱硫剤による脱硫処理の前に、硫黄分が10〜50質量ppm、好ましくは10〜30質量ppmになるように水素化脱硫処理する。
【0018】
この水素化脱硫処理に用いる水素化脱硫触媒としては、周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素を含む触媒が用いられる。周期律表第6族の元素としてはモリブデン、タングステン、第9族の元素としてはコバルト、第10族の元素としてはニッケルが特に好ましい。これら周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素は、無機多孔質酸化物担体に担持して用いられることが好ましい。無機多孔質酸化物担体としては、周期律表第2、第4、第13、及び第14族の元素の酸化物を用いることができる。このうちでも、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、カルシア等が好適であり、これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用すると良い。特には、アルミナ(γ、δ、η、χ等の各結晶構造を有するもの)、シリカ−アルミナ、シリカ、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア、アルミナ−シリカ−マグネシアが好ましい。なお、ここで周期律表はIUPAC、1990年勧告による。
【0019】
上記無機多孔質酸化物担体は、共沈法や混練法等により無機含水酸化物を製造し、これを成形した後、乾燥・焼成を行う方法により、簡便に調製できる。
金属成分等の担持は、通常用いられるスプレー含浸法や浸漬法等で行うことが好適であり、無機多孔質酸化物担体の吸水率に相当する溶液を含浸させるポアフィリング法が特に好ましい。金属の担持状態を制御するために、有機化合物又は有機塩類等を金属担持液に共存させるとよい。金属成分等を含む溶液を含浸したのち50〜180℃、好ましくは80〜150℃の温度範囲で、10分〜24時間乾燥し、さらに金属成分等をより多く担持するために、乾燥と担持とを繰り返して行ってもよい。所望の金属成分等を担持した後、乾燥して得られる乾燥物を焼成処理することによって水素化処理触媒前駆体が製造される。この焼成処理は、好ましくは400〜600℃、特には450〜580℃の温度範囲で行われ、焼成温度までの昇温時間は10〜240分、焼成温度での保持時間は1〜240分が好適である。
【0020】
上記水素化脱硫触媒前駆体は、硫化処理することによって、水素化脱硫触媒としての活性点を発現する。通常、硫化処理は、水素化処理触媒前駆体を水素化処理に用いる反応装置内に充填した後に行われる。この硫化処理は、硫化剤を水素化処理触媒前駆体に通じながら徐々に昇温して行うが、最終的な硫化処理温度は450℃以下、好ましくは100〜400℃である。常圧あるいはそれ以上の水素分圧の水素雰囲気下、硫化剤として硫黄化合物を含む石油蒸留物、それに硫黄含有化合物を添加したもの、あるいは硫化水素を用いて行う。石油蒸留物に硫黄含有化合物を添加して用いる場合の硫黄含有化合物は、硫化処理条件下で分解して硫化水素に転化し得るものであれば特に限定はないが、好ましくは、チオール類、二硫化炭素、チオフェン類、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド及び種々のポリスルフィド類である。水素化処理触媒前駆体を反応装置に充填した後、硫化処理を開始する前に、水素化処理触媒前駆体に付着した水分を除去するための乾燥処理を行ってもよい。この乾燥処理は、水素又は不活性ガスの雰囲気下で、常圧あるいはそれ以上の圧力でガスを流通させ、常温〜220℃、好ましくは200℃以下で行う。
【0021】
水素化脱硫触媒による水素化脱硫処理における反応装置は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等、反応形式に特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化処理触媒に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。水素化脱硫処理の好ましい反応条件は、反応温度が200〜450℃、特には250〜400℃、水素圧力が2〜10MPa、特には3〜8MPa、水素/油供給比が100〜1000NL/L、特には100〜500NL/L、LHSVが0.1〜5hr−1、特には0.5〜2hr−1である。
【0022】
水素化脱硫触媒による水素化脱硫処理によって生成した水素化脱硫軽油留分には、脱硫によって生成した硫化水素が溶存しており、その後に続く多孔質脱硫剤による脱硫処理において多孔質脱硫剤の硫黄収着容量を損なうことがないよう、好ましくは硫化水素を多孔質脱硫剤による脱硫処理の前に極力取り除く。硫化水素除去方法については特に限定しないが、硫化水素を含まないガスやスチーム注入によるストリッピング、精留、吸着剤による除去等を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。収着脱硫工程にかける水素化脱硫軽油留分中の硫化水素含有量は硫黄分として5質量ppm以下が好ましく、特には1質量ppm以下、さらには0.5質量ppm以下である。
【0023】
〔水素化脱硫軽油留分〕
軽油留分は水素化脱硫工程で、水素の存在下に周期律表第6族の元素と第9族及び/又は第10族の元素を含む水素化脱硫触媒と接触して硫黄分を除去して10〜50質量ppmの水素化脱硫軽油留分に変換され、この水素化脱硫軽油留分は、その25〜85容量部を収着脱硫工程で処理され収着脱硫軽油留分に変換され、収着脱硫工程に送らなかった残部である75〜15容量部の水素化脱硫軽油留分と混合して超低硫黄軽油基材が製造される。
水素化脱硫軽油留分は、硫黄分が10〜50質量ppmであればよく、その他の物性を特に限定するものでないが、収着脱硫工程において多環芳香族が有機硫黄化合物の脱硫を著しく阻害することがあるので、多環芳香族分は4容量%以下が好ましく、3容量%以下がより好ましく、2容量%以下が特に好ましい。この多環芳香族分はJPI−5S−49−97に規定された方法により測定されるものであり、2環芳香族炭化水素と3環芳香族炭化水素の合計含有量である。
【0024】
水素化脱硫工程で得られた水素化脱硫軽油留分の一部を、収着脱硫工程に供してさらに脱硫する。水素化脱硫処理では、有機硫黄化合物のうちアルキルジベンゾチオフェン類が最も残留しやすい硫黄化合物であるが、収着脱硫処理の方が水素化脱硫処理よりマイルドな条件でアルキルジベンゾチオフェン類を脱硫することができる。このため、水素化脱硫軽油留分の全硫黄分に占めるアルキルジベンゾチオフェン類硫黄化合物の割合は、多く残すこと、例えば硫黄分として70質量%以上、さらには80質量%以上、特には90質量%以上残すことが好ましい。なお、ここでいうアルキルジベンゾチオフェン類硫黄化合物とは、2−メチルジベンゾチオフェン、2−エチルジベンゾチオフェン、2,3−ジメチルジベンゾチオフェン、2,3,4−トリメチルジベンゾチオフェン等のベンゾチオフェン骨格にアルキル基が付いている硫黄化合物のことである。
【0025】
さらに、アルキルジベンゾチオフェン類の中でも、ジベンゾチオフェン骨格の4位と6位にアルキル基を持つアルキルジベンゾチオフェン類は、軽油留分の水素化脱硫触媒による水素化脱硫処理において特に残留しやすい硫黄化合物であるため、水素化脱硫軽油留分の全硫黄分に占めるジベンゾチオフェン骨格の4位と6位にアルキル基を持つアルキルジベンゾチオフェン類硫黄化合物の割合は、硫黄分として50質量%以上、さらには70質量%以上、特には90質量%以上であるのが好ましい。ジベンゾチオフェン骨格の4位と6位にアルキル基を持つアルキルジベンゾチオフェン類硫黄化合物としては、4,6−ジメチルジベンゾチオフェン、4,6−ジエチルジベンゾチオフェン、4,6,7−トリメチルジベンゾチオフェン等が挙げられる。
【0026】
〔硫黄収着機能をもった脱硫剤による収着脱硫工程〕
本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法においては、水素化脱硫軽油留分を水素の共存下で硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤と接触させる方法を用いる。
本発明に用いる上記硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤とは、有機硫黄化合物(特にアルキルジベンゾチオフェン類)中の硫黄原子を脱硫剤に固定化するとともに、有機硫黄化合物中の硫黄原子以外の炭化水素残基については、有機硫黄化合物中の炭素−硫黄結合を開裂させることによって脱硫剤から脱離させる機能をもった多孔質脱硫剤をいう。この炭化水素残基が脱離する際には、硫黄との結合が開裂した炭素に、系内に存在する水素が付加する。したがって、有機硫黄化合物から硫黄原子が除かれた炭化水素化合物が生成物として得られることになる。ただし、硫黄原子が除かれた炭化水素化合物が、さらに水素化、異性化、分解等の反応を受けた生成物を与えることがあっても構わない。一方、硫黄は脱硫剤に固定化されるため、水素化精製とは異なり、生成物として硫化水素などの硫黄化合物を発生しない。
【0027】
また、収着脱硫工程において、反応条件によっては多環芳香族が水素化される。つまり、収着脱硫を行いながら多環芳香族も減じて、多環芳香族による脱硫阻害を回避することができる。本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法において、得られる収着脱硫軽油留分の多環芳香族分は3容量%以下とし、好ましくは2容量%以下、より好ましくは1容量%以下、特に好ましくは0.5容量%以下であり、少ないほど好ましい。ただし、収着脱硫工程において、多環芳香族が水素化される条件では1環芳香族も水素化される可能性があるが、1環芳香族が過剰に水素化されてしまうのは、最終的な製品(超低硫黄軽油組成物)として、特にディーゼル自動車などの燃料として使用されるとき、水素消費抑制や燃料噴射系で使用しているシールゴム部材等への影響の抑制という観点から好ましくない。したがって、本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法において、得られる収着脱硫軽油留分の1環芳香族分は、好ましくは3容量%以上であり、さらに好ましくは5容量%以上であり、特には10〜20容量%である。収着脱硫工程における1環芳香族の減少量は50%以下に抑えるのが好ましく、さらには30%以下、特には10%以下である。
【0028】
この多孔質脱硫剤は、有機硫黄化合物に対する収着機能を有するものであれば特に限定はないが、銅、ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属と亜鉛とを含むことが好ましい。多孔質脱硫剤に含まれる金属が亜鉛等のみでは硫化水素しか除去できず、銅やニッケル等の他の金属でも1種だけでは有機硫黄化合物を十分に脱硫することはできない。通常、これらの金属は酸化物または硫化物の形態で脱硫剤に含まれる。脱硫剤への硫黄取込容量を大きくするためには第1の金属として亜鉛、第2の金属として銅、ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれる金属が好ましい。特には、第1の金属が亜鉛、第2の金属がニッケルであることが好ましい。さらに、脱硫性能を向上させるためや工業的に使用するため成形をするために他の成分を添加することも好ましく行うことができる。好ましい脱硫剤は、ニッケル、亜鉛などの金属成分を金属成分の合計で50〜85質量%、特には60〜80質量%含有することが好ましい。また、成形、焼成された脱硫剤にさらに金属成分を含浸、担持して、焼成してもよい。脱硫剤は、水素雰囲気下で還元処理して用いるのが好ましい。脱硫剤の比表面積は、好ましくは30〜200m/g、特には50〜150m/g、さらには50〜100m/gである。
【0029】
第1の金属に対する第2の金属含有量の比率(質量)は50質量%以下、好ましくは35質量%以下、特には2〜20質量%である。第1の金属の含有量に対する第2の金属の含有量の比(質量)が50質量%を超えると多孔質脱硫剤の寿命が著しく短くなり好ましくない。脱硫剤総質量に対する第1の金属の含有量は好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは60〜80質量%である。脱硫剤総質量に対する第2の金属の含有量は好ましくは33質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは1〜10質量%である。第1の金属の含有量が30質量%未満であったり、第2の金属の含有量が33質量%を超えたりすると、多孔質脱硫剤の寿命が短くなり好ましくない。さらに、本発明に用いる脱硫剤は、ナトリウムなどのアルカリ金属含有量が脱硫剤総質量に対して1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらには0.2質量%以下である。アルカリ金属が脱硫剤総質量に対して1.0質量%を超えて含まれると脱硫性能が低下するため好ましくない。
【0030】
亜鉛とニッケルを含む多孔質脱硫剤の場合、有機硫黄化合物はニッケル上で分解され、硫黄原子はまずニッケルに取り込まれる。ニッケルに取り込まれた硫黄原子は水素の存在下で亜鉛に移動する。この硫黄原子は亜鉛酸化物中の酸素原子と置き換わるため、最初ほとんど酸化物の状態であった亜鉛は反応時間が経つにつれて硫化物になっていく。亜鉛原子は必ずしもすべて脱硫剤の表面に露出しているわけではないが、亜鉛酸化物中の酸素はほとんど硫黄に置き換わることが出来るため、亜鉛が完全に硫化物となるまで硫黄を取り込むことができる。すなわち、有機硫黄化合物が脱硫剤の表面のみに吸着する吸着脱硫の場合と比較して、収着脱硫は硫黄の取込能力が非常に高く、長寿命である。
【0031】
上記の多孔質脱硫剤を用いる収着脱硫処理は、固定床流通式反応装置に充填された硫黄収着機能をもった多孔質脱硫剤に水素と原料油(水素化脱硫軽油留分)とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。脱硫処理にあたっては、軽油中に含まれる多環芳香族が2容量%以下となるようにするのがよい。具体的な脱硫処理条件としては、反応温度は100〜500℃が好ましく、さらには200〜400℃、特には250〜350℃である。反応温度が100℃未満だと、脱硫がほとんど進行しない。反応温度が500℃を超えると、多孔質脱硫剤中の金属成分がシンタリングして、脱硫活性が大きく低下してしまう。脱硫処理する水素圧力は好ましくは0.5〜10MPa、さらには1〜5MPa、特には1〜3MPaがよい。水素圧力が0.5MPa未満だと、脱水素反応によって多環芳香族が増加する場合があり、脱硫が進行しにくくなってしまう。また、水素圧力が10MPaを超えると、多環芳香族だけではなく1環芳香族もかなり水素化され、水素消費量が非常に大きくなってしまう。固定床流通式で多孔質脱硫剤と軽油留分を接触させて脱硫処理を行う場合、液空間速度(LHSV)は好ましくは1〜50hr−1の範囲、さらには2〜40hr−1の範囲、特には3〜10hr−1の範囲から選ぶことが好ましい。LHSVが1hr−1未満だと、脱硫の反応器が大きくなりすぎてしまう。LHSVが50hr−1を超えると、脱硫するのに十分な時間が得られない。水素/油供給比は、好ましくは10〜1,000NL/Lの範囲、さらには50〜600NL/Lの範囲、特には100〜500NL/Lの範囲から選ぶことが好ましい。水素/油供給比が10NL/L未満だと、軽油中の多環芳香族がほとんど減少せず、脱硫が進行しにくくなってしまう。水素/油供給比が1,000NL/Lを超えると、水素を供給するコンプレッサーの容量が大きくなりすぎてしまう。収着脱硫は、水素化脱硫よりもマイルドな反応条件で通常行われる。水素化脱硫処理における水素圧力に対する収着脱硫工程における水素圧力の比は0.1〜1が好ましくは、さらには0.2〜0.8、特には0.3〜0.7である。水素化脱硫処理におけるLHSVに対する収着脱硫工程におけるLHSVの比は2〜50が好ましく、さらには3〜20、特には4〜10である。
【0032】
水素の純度は50容量%以上、さらには80容量%以上、特には95容量%以上が好ましい。水素純度が50容量%未満であると、水素を供給する水素コンプレッサーが大きくなって好ましくない。多孔質脱硫剤による脱硫処理の際、共存させる水素中の不純物として、硫化水素や硫化カルボニル等の硫黄化合物は、収着脱硫剤の収着容量を低下させるので極力含まない方がよい。好ましくは、脱硫処理時の水素中の硫黄化合物の濃度は1容量%以下、さらには0.1容量%以下、特には0.01容量%以下である。
【0033】
前述の通り、本発明における硫黄収着機能を持った脱硫剤による収着脱硫処理では、水素化脱硫触媒による水素化脱硫処理とは異なり、生成物として硫化水素などの硫黄化合物を発生しない。したがって、反応後の水素中は硫化水素が含まれないので、硫化水素を除去せずにそのまま再び収着脱硫処理するため水素として使用することもできるし、収着脱硫処理の前工程の水素化脱硫触媒による水素化脱硫処理における水素としても使用することができる。
【0034】
なお、本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法の収着脱硫工程において、水素化脱硫工程からの水素化脱硫軽油留分の全量を処理するのではなく、水素化脱硫工程からの水素化脱硫軽油留分の25〜85容量部、好ましくは45〜85容量部、さらに好ましくは40〜70容量部を処理する。得られた収着脱硫軽油留分は、水素化脱硫工程で得られた残りの75〜15容量部、好ましくは55〜15容量部、さらに好ましくは60〜30容量部と、次の混合工程で混合する。
水素化脱硫工程からの水素化脱硫軽油留分を、85容量部を超えて収着脱硫工程で処理して同じ硫黄含有量の超低硫黄軽油基材を得ようとすると、処理量(通油量)を多くしなければならず、LHSVが大きくなり、しかも脱硫によって多孔質脱硫剤に取り込まれる硫黄の量が多くなるため、多孔質脱硫剤の寿命が急激に短くなり好ましくない。また、脱硫の負荷が収着脱硫工程に大きくなり、水素化脱硫工程に小さいため、水素化脱硫はマイルドな運転でよくなるが、このため超低硫黄軽油組成物中の芳香族含有量を削減することができず、好適な範囲10〜25容量%を確保できなくなることがあり、好ましくない。一方、25容量部未満では、水素化脱硫工程で脱硫の負荷を大きくしなければならず、反応温度の上昇、水素消費量の増大を伴い、運転コストが高くなる。さらに、シビアーな水素化が芳香族化合物にも波及して芳香族含有量を必要以上に減少させる恐れがあり、好ましくない。
【0035】
〔収着脱硫軽油留分〕
本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法において、収着脱硫工程で得られる収着脱硫軽油留分の硫黄分は5質量ppm未満であり、好ましくは2質量ppm未満、より好ましくは1質量ppm以下であり、少ないほど好ましい。このため収着脱硫工程に供する水素化脱硫軽油留分は、硫黄分が10〜50質量ppm、好ましくは10〜30質量ppmである。
【0036】
〔混合工程と超低硫黄軽油基材〕
本発明の超低硫黄軽油基材の製造方法において、水素化脱硫工程で得られた水素化脱硫軽油留分のうち25〜85容量部、好ましくは45〜85容量部、さらに好ましくは40〜70容量部は収着脱硫工程で処理され、残りの75〜15容量部、好ましくは55〜15容量部、さらに好ましくは60〜30容量部は前記の収着脱硫工程で得られた収着脱硫軽油留分と混合工程で混合される。その結果、超低硫黄軽油基材が得られる。混合は、水素化脱硫工程及び収着脱硫工程からそれぞれ流出した水素化脱硫軽油留分と収着脱硫軽油留分とを混合して均一な組成物(超低硫黄軽油基材)を得るだけの工程であり、従来、石油精製やその他の産業で多用されている公知の適宜な混合方法を用いて行うことができる。
【0037】
本発明において、超低硫黄軽油基材としては硫黄分を5〜20質量ppm、好ましくは5〜10質量ppmにコントロールする。しかし、超低硫黄軽油基材の硫黄分は、水素化脱硫軽油留分と収着脱硫軽油留分のそれぞれに含まれている硫黄分によって決まり、混合工程では、硫黄分を根本的に調整することはできない。したがって、所望の硫黄分を有する超低硫黄軽油基材が得られるように、水素化脱硫軽油留分及び収着脱硫軽油留分のそれぞれに含まれている硫黄分をそれぞれ水素化脱硫工程及び収着脱硫工程の運転条件や、水素化脱硫軽油留分を収着脱硫工程で処理する配分比率などの制御可能なパラメータを前もって調整しておくことが好ましい。
【0038】
〔超低硫黄軽油組成物〕
超低硫黄軽油基材は、それだけで、あるいは、その他の軽油基材と混合して超低硫黄軽油組成物を調製することができる。
本発明の超低硫黄軽油組成物は、硫黄分が5〜20質量ppmであり、5〜10質量ppmが特に好ましい。この硫黄分はASTM D 5453(紫外蛍光法)に規定された方法により測定されるものである。
芳香族分は10〜25容量%が好ましく、10〜20容量%がさらに好ましく、13〜18容量%が特に好ましい。芳香族分が10容量%未満であると発熱量が低下し、燃費が低下するので好ましくない。芳香族分が25容量%以上であるとエンジンから排出される粒子状物質の量が増え好ましくない。芳香族分のうち、多環芳香族分については、2容量%以下が好ましく、より好ましくは1.5容量%以下、特には1容量%以下がよい。多環芳香族が2容量%を超えると、エンジンから排出される粒子状物質の量が増え好ましくない。この芳香族分はJPI−5S−49−97に規定された方法により測定されるものである。
【0039】
90容量%留出温度は360℃以下が好ましく、さらに好ましくは350℃以下である。90容量%留出温度が360℃を超えるとエンジンから排出される粒子状物質の量が増え好ましくない。この90容量%留出温度はJIS K 2254に規定された方法により測定されるものである。
【0040】
15℃における密度は0.80〜0.87g/cmが好ましく、0.82〜0.86g/cmがさらに好ましく、0.83〜0.85g/cmが特に好ましい。15℃における密度が0.80g/cm未満であると発熱量が低下し燃費及び加速性の悪化を招くので好ましくない。15℃における密度が0.87g/cmを超えると、排出ガスの粒子状物質濃度が増加し好ましくない。この15℃における密度はJIS K 2249に規定された方法により測定されるものである。
【0041】
真発熱量は34.5MJ/L以上が好ましく、さらには35MJ/L以上である。真発熱量が34.5MJ/L未満であると出力低下を招くので好ましくない。この真発熱量はJIS K 2279に規定された方法により測定されるものである。
【0042】
30℃における動粘度は1.5〜5.0mm/sが好ましく、さらには2.5〜5.0mm/sが好ましい。30℃における動粘度が1.5mm/s未満であると、ディーゼル車の燃料噴射量が少なくなり出力低下を引き起こすおそれがあることや、エンジンに搭載された燃料噴射ポンプの各部における潤滑性が損なわれ、好ましくない。30℃における動粘度が5.0mm/sを超えると、燃料噴射システム内部の抵抗が増加して噴射系が不安定化し、排出ガス中のNOx、粒子状物質濃度が高くなり好ましくない。この30℃における動粘度JIS K 2283に規定された方法により測定されるものである。
【0043】
本発明の超低硫黄軽油組成物は、上記の超低硫黄軽油基材を主成分として有するものである。具体的には、超低硫黄軽油基材を50容量%以上、特には80容量%以上含むことが好ましい。なお、超低硫黄軽油基材をそのまま超低硫黄軽油組成物とすることもできる。また、超低硫黄軽油組成物の硫黄分が5〜20質量ppm、特には5〜10質量ppm、芳香族分が10〜20容量%、密度(15℃)が0.80〜0.87g/cm、真発熱量が34.5MJ/L以上を満たすよう、その他の基材を混合してもよい。その他の基材としては、直留灯油、熱分解灯油、接触分解灯油など、さらにそれらを水素化脱硫触媒による水素化脱硫処理等によって硫黄分を20質量ppm以下にした超低硫黄灯油、減圧軽油を水素化分解して得られる水素化分解灯油及び水素化分解軽油、天然ガスやアスファルト分等を化学合成させて得られる合成灯油及び合成軽油などが挙げられる。
【0044】
〔軽油添加剤〕
軽油への添加剤としては、低温流動性向上剤、耐摩耗性向上剤、セタン価向上剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤を添加してもよい。低温流動性向上剤としては、エチレン共重合体などを用いることができるが、特には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの飽和脂肪酸のビニルエステルが好ましく用いられる。耐摩耗性向上剤としては、例えば長鎖脂肪酸(炭素数12〜24)又はその脂肪酸エステルが好ましく用いられる。10〜500ppm、好ましくは50〜100ppmの添加量で十分に耐摩耗性が向上する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
〔軽油留分〕
本実施例では原料油として、すなわち水素化脱硫工程で用いる軽油留分としては、中東系の原油を常圧蒸留して得られた直留軽油を用いた。その性状を表1に示す。
【0047】
【表1】


【0048】
なお、表1の直留軽油の物性測定で、密度はJIS K 2249、蒸留性状はJIS K 2254、窒素分はJIS K 2609、硫黄分はASTM D 5453(紫外蛍光法に準拠して測定した。芳香族含有量は、後述の表2の軽油留分及び軽油基材も含め、JPI-5S-49-97に基づいて測定した。
【0049】
〔評価試験〕
直留軽油を水素化脱硫工程で水素化脱硫し、水素化脱硫軽油留分を得、水素化脱硫軽油留分の一部を収着脱硫工程で処理して収着脱硫軽油留分を得る。次いで、収着脱硫工程に送らない水素化脱硫軽油留分の残部と収着脱硫軽油留分とを混合して超低硫黄軽油基材を得る。このとき収着脱硫工程に送って処理する水素化脱硫軽油留分の量(収着脱硫工程への分配率)を変えて評価することとし、得られる超低硫黄軽油基材の全硫黄分は、9〜10質量ppmのほぼ一定になるように、水素化脱硫工程の反応温度を調節する。なお、収着脱硫工程は、反応温度、水素圧力、水素/油比は皆同じ条件とし、LHSVのみ収着脱硫工程への分配率に比例して変わる。
試験結果を水素化脱硫工程及び収着脱硫工程の運転条件とともに表2に示す。なお、収着脱硫工程への分配率100%は、水素化脱硫工程から流出する水素化脱硫軽油留分は全量そのまま収着脱硫工程で処理するケースであり、分配率0%は、水素化脱硫のみで、収着脱硫工程での処理がないケースである。
【0050】
水素化脱硫工程及び収着脱硫工程について、評価試験を行う触媒、装置の詳細は次のとおりである。
〔水素化脱硫〕
アルミナにモリブデン15重量%及びコバルト3重量%を担持した水素化脱硫触媒(触媒A)を内径25mm長さ103cmの反応器に充填する。水素化脱硫を行う前にジメチルジスルフィド1重量%を含む軽油を300℃、5MPaの水素共存下で通油し、いわゆる予備硫化を行う。水素を流しながら昇温し、水素圧力7.0MPa、液空間速度(LHSV)0.9hr-1、水素/油供給比(H/Oil)300NL/Lの条件下で、反応温度を288〜318℃の間で変えて反応させ、直留軽油を水素化脱硫して水素化脱硫軽油留分を得る。
【0051】
〔収着脱硫〕
収着脱硫剤として、共沈法により調製したニッケル亜鉛複合酸化物を用いる。共沈法による調製は、以下のように行う。炭酸ナトリウム106gを水に溶かした溶液を60℃に加温し、これに硝酸亜鉛六水和物214gを水に溶かした溶液に硝酸ニッケル六水和物23gを加えたものを滴下し、得られた沈殿物をろ過した後、水で洗浄する。その後、120℃で16時間乾燥後、350℃で3時間焼成して、ニッケル含有量が6.9質量%、亜鉛含有量が71.0質量%、ナトリウム含有量が0.01質量%、比表面積が56m/gの脱硫剤Zが得られる。脱硫剤Zを内径10mm長さ60cmの反応器に充填し、まず、水素ガスを温度300℃、圧力1.0MPaにて6hr流通させ、還元処理を行う。
次いで水素化脱硫軽油留分を水素とともに通油し、反応温度300℃、水素圧力1.0MPa、水素/油供給比が200NL/Lの条件下で、LHSVを、収着脱硫工程への分配率に合わせて2.0〜10.0hr−1で供給して反応し、収着脱硫軽油留分を得る。
なお、相対寿命は次のようにして求めた値である。収着剤寿命を、収着剤に含まれる亜鉛全部と反応してZnSとなる当量の硫黄量に対して脱硫された硫黄の量が90%に到達するまでの通油時間と定義し、相対寿命を、各ケースの通油時間(収着剤寿命)を収着脱硫工程への分配率が50%の時の通油時間を100とした相対値で示す。
【0052】
【表2】


【0053】
収着脱硫工程で処理する割合が増えるほど、水素化脱硫工程及び収着脱硫工程全体での水素消費量を低減し、水素化精製装置の反応温度を低下させることができる。ただし、収着脱硫工程で処理する割合が増え、収着脱硫工程における脱硫剤の寿命が著しく低下してしまう。また、芳香族分が水素化されずに残る割合が多くなり、適切な芳香族含有量の範囲を超えている。逆に、収着脱硫工程で処理する割合が少なくなると、水素化脱硫工程の反応温度、水素消費量が増加し、運転コストの増大が認められ、また芳香族が水素化されて適正な芳香族含有量を確保できない懸念がある。結論として、特に30〜80%を収着工程で処理することで、格別な効果が得られることが分かる。

【出願人】 【識別番号】304003860
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエナジー
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100133905
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良夫

【識別番号】100113837
【弁理士】
【氏名又は名称】吉見 京子

【識別番号】100127421
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 さなえ

【識別番号】100090941
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清也


【公開番号】 特開2008−7580(P2008−7580A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177419(P2006−177419)