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【発明の名称】 絶縁化超微粉末および高誘電率樹脂複合材料
【発明者】 【氏名】山田 敏明

【氏名】松本 隆宏

【氏名】鶴谷 浩隆

【氏名】柳沢 賢一

【要約】 【課題】導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けてなる絶縁化超微粉末の粒子間架橋を防ぎ、該絶縁化超微粉末を用いる樹脂複合材料の誘電特性を安定化させる。

【解決手段】導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けてなる絶縁化超微粉末に表面処理を施し疎水化した絶縁化超微粉末であって、導電性超微粉末が、粒子直径1nm以上500nm以下の球状、断面直径1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さ1nm以上500nm以下の板状の炭素材料からなり、絶縁皮膜が絶縁性金属酸化物またはその水和物からなり、絶縁皮膜の厚さが、0.3nm以上で、かつ導電性超微粉末が球状の場合にはその粒子直径以下、繊維状の場合にはその断面直径以下、板状の場合にはその厚さ以下であることを特徴とする絶縁化超微粉末。該絶縁化超微粉末と樹脂とを体積比5/95〜50/50の範囲で配合して得られる高誘電率樹脂複合材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けてなる絶縁化超微粉末に表面処理を施し疎水化した絶縁化超微粉末であって、導電性超微粉末が、粒子直径1nm以上500nm以下の球状、断面直径1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さ1nm以上500nm以下の板状の炭素材料からなり、絶縁皮膜が絶縁性金属酸化物またはその水和物からなり、絶縁皮膜の厚さが、0.3nm以上で、かつ導電性超微粉末が球状の場合にはその粒子直径以下、繊維状の場合にはその断面直径以下、板状の場合にはその厚さ以下であることを特徴とする絶縁化超微粉末。
【請求項2】
前記表面処理が、アルコキシシラン、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、ポリシロキサン、変性ポリシロキサン、末端変性ポリシロキサンおよびフルオロアルキルシランからなる群より選ばれる1種または2種以上の有機ケイ素化合物を用いて施される請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項3】
前記表面処理が、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコネート系カップリング剤からなる群より選ばれる1種または2種以上のカップリング剤を用いて施される請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項4】
前記絶縁性金属酸化物が、分子分極が5cm以上である請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項5】
前記絶縁性金属酸化物が、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウムまたはこれらの固溶体である請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項6】
前記絶縁性金属酸化物が、組成式MTi1−xZr(Mは2価の金属元素、xは0以上1未満)で表される絶縁性複合金属酸化物である請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項7】
前記絶縁性金属酸化物が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛またはこれらのうち少なくとも一種を組成に含む絶縁性固溶体である請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項8】
前記炭素材料が、カーボンナノファイバー、天然黒鉛、ファーネスカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブまたは人造黒鉛である請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項9】
前記炭素材料の表面が酸化処理を施されたものである請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項10】
つぎの工程(a)〜(c)を含む請求項1記載の絶縁化超微粉末の製造方法。
(a)導電性超微粉末を分散し、かつ少なくとも一種類の金属アルコキシドの溶解した有機溶媒中において、該金属アルコキシドをゾルゲル反応により導電性超微粉末の表面に金属酸化物またはその水和物ゲルを析出させる工程、
(b)析出後の反応液を加熱し液相中で金属酸化物またはその水和物ゲルを脱水する工程、
(c)表面処理により疎水化する工程。
【請求項11】
請求項1記載の絶縁化超微粉末と樹脂とを、体積比(絶縁化超微粉末/樹脂)5/95〜50/50の範囲で配合して得られる高誘電率樹脂複合材料。
【請求項12】
比重が2以下である請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料。
【請求項13】
さらに充填剤を含有する請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料。
【請求項14】
比誘電率が20以上である請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料。
【請求項15】
請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される電子部品。
【請求項16】
請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される高誘電率フィルム。
【請求項17】
請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される高誘電率シート。
【請求項18】
請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成されるアンテナ。
【請求項19】
請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される電波吸収体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁化超微粉末およびこれを用いた高誘電率樹脂複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(集積回路)のデータエラーの原因の一つとして、高周波雑音の影響がある。これを抑制するために、配線基板に容量の大きなキャパシタを設けて、高周波雑音を取り除く方法が知られている。このような容量の大きなキャパシタは、配線基板に高誘電率層を形成することで実現される。また、内蔵アンテナのサイズや電波吸収体の厚さが誘電率の平方根にほぼ反比例するため、高誘電率材料はこれら部材の小型化、薄型化に有用である。特に加工性や成形性に優れた樹脂材料にこのような特性を付与することが求められている。
【0003】
無線データ通信にはアンテナが必須である。特に電源を内蔵しない非接触ICカード/タグは、リーダ・ライタが発信する電磁波エネルギーを内蔵ICチップの駆動電源に変換するため、アンテナの性能向上かつ小型化が求められている。アンテナ配線基板のこのような高性能化の方法は、無線通信に用いる周波数帯に依存するが、30MHz以下の周波数帯を利用する場合にはコイルの役割をするループ状のパターンとコンデンサーの電極に相当する電極を配線基板上に設け、通信周波数に適合した同調回路を形成する方法がよく知られている。この時に用いられる容量の大きなコンデンサーは、配線基板に高誘電率樹脂複合材料を用いることで実現される。
【0004】
しかしながら、基板を構成する樹脂の誘電率が通常5以下と小さいため、同調用コンデンサーを形成するために必要な電極面積が大きくなってしまう。このため、所定の電極面積を確保するために、複数の電極パターンを基板に形成後に折り畳み、更にスルーホール配線で接続する方法(特許文献1参照)や、アンテナコイルを大きくして、同調用コンデンサーに必要な面積を減らす方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
これらの技術のうち、前者はアンテナ基板の構造が複雑化するのみならず、アンテナコイルの中央部に形成されたコンデンサー用の電極で発生する電磁誘導のためアンテナコイル内の磁束が著しく減少し、これに伴い感度も低下してしまう。また後者は、アンテナ基板そのものが大きくなってしまう。このため、実際には磁気ピックアップコイルを用いたものが商業的に多く用いられている。
【0006】
通信周波数帯が300MHz以上の場合には、アンテナのサイズが誘電率の平方根にほぼ反比例する効果(波長短縮効果)を利用する方法が知られている。
【0007】
また、近年、電子機器の高密度化が進み、さらに携帯電話などの無線データ通信機器の普及により不要電波の吸収に対する要求が高くなっている。これまでフェライトや軟磁性合金の粉末を高充填した樹脂複合材料が用いられてきたが(特許文献3参照)、使用電波がマイクロ波領域に高周波化するにつれ、透磁率が低下し、吸収特性を発現するのに必要な厚さが増加してしまうという問題が生じている。また比重が大きい粉末を高充填することになるため、樹脂複合材料の比重が大きくなり、特に携帯通信機器の軽量化に適さないという問題もある。
【0008】
一方、代表的な導電性フィラーである、黒鉛やカーボンブラックなどの炭素材料系粒子や、いわゆる導電性酸化チタンすなわちアンチモンドープ酸化スズで被覆した酸化チタンを絶縁媒体中に分散させる方法も提案されている(特許文献4参照)。これらの方法は、以下の式で表される発信源から十分離れた場合の無反射条件から考えると、使用する電波の波長に対する、電波吸収体の厚さを1/20以下にするために、すなわち誘電率を大きくするために導電性フィラーの充填量を増やすと、無反射条件からかけ離れてしまうという問題がある。特に誘電率を20以上にしようとすると、乖離が著しくなり、電波吸収シートを厚くするか、薄くした場合、1cm以下の短波長、30GHz以上の電波のみにしか利用できないなどの制約があった。
【0009】
【数1】


(但し、ε:複素比誘電率、d:電波吸収体の厚さ、λ:電波の波長、i:虚数単位)
【0010】
高誘電率樹脂複合材料の従来の技術としては、チタン酸バリウムなどに代表される強誘電体を高誘電率フィラーとして65vol%以上、つまり80wt%以上充填した樹脂複合材料が提案されている(特許文献5参照)。一方、導電性粉末に、熱硬化樹脂で絶縁皮膜する高誘電率組成物が提案されているが(特許文献6参照)、安定な性能が得られないため、商業的に製造されていない。また、近年、金属粉に金属酸化物を皮膜する方法(特許文献7参照)が提案されているが、従来の高誘電率フィラーと同様に高充填が必要であることに加え、金属粉が金属酸化物よりも一般にさらに高比重であるため、高誘電率樹脂複合材料が比重3以上とさらに重くなる。
【0011】
また、単層カーボンナノチューブに高分子を巻きつけて絶縁化したものを樹脂材料の高誘電率化に利用する方法(特許文献8参照)も提案されているが、この方法は、絶縁皮膜にあたる、巻きつけ高分子を、可逆的にはがすことが可能であるため、安定的な性能が得られないといった問題を含んでいた。
【0012】
実際には先に述べたフィラーを大量添加する方法が用いられているのが現状である。このため、高誘電率化と引き換えに樹脂材料本来の特長である加工性、成形性、軽量性が損なわれることになる。
【0013】
このような問題を解決すべく、本発明者らは先に、特定の導電性超微粉末を特定の金属酸化物で被覆した絶縁化超微粉末およびこれを用いる高誘電率樹脂複合材料を開示した(特許文献9参照)。
【特許文献1】特開2002−358497号公報
【特許文献2】特開2002−183689号公報
【特許文献3】特開2003−327831号公報
【特許文献4】特開2002−57485号公報
【特許文献5】特開2001−237507号公報
【特許文献6】特開昭54−115800号公報
【特許文献7】特開2002−334612号公報
【特許文献8】特表2004−506530号公報
【特許文献9】国際公開パンフレットWO2006/013947
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記絶縁化超微粉末の絶縁皮膜を形成する金属酸化物は、導電性超微粉末の分散した有機溶媒中で金属アルコキシドをゾルゲル反応により金属水酸化物として析出させたのち脱水縮合することによって得られる。この際、液相中で脱水処理を行なっても皮膜表面上に水酸基がなお残っている。この表面水酸基はろ過後の乾燥において絶縁化超微粉末ケーキを凝固させる。これは、乾燥時において、絶縁皮膜表面の水酸基同士が脱水縮合し、絶縁化超粉末の粒子間で架橋してしまうためである。
粒子間架橋した絶縁化超微粉末は、強い応力がかかる条件下で樹脂材料と複合化すると、例えば、二軸押出機などを用いる量産的な条件下で溶融混練すると、絶縁皮膜の破壊が起こりやすかった。この結果、コアである導電性粒子が露出し樹脂複合材料の誘電特性を不安定化させる、極端な場合には樹脂複合材料の導通が起こり誘電体として機能しなくなる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、絶縁化超微粉末に表面処理を施し疎水化することによって、絶縁化超微粉末間の架橋によるケーキ凝固が効果的に抑制できること、その結果、樹脂との溶融混合において強い応力がかかる場合でも、絶縁皮膜の破壊によるコア導電性粒子の露出が起こらず安定した誘電特性が得られることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明はつぎのとおりである。
(1)導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けてなる絶縁化超微粉末に表面処理を施し疎水化した絶縁化超微粉末であって、導電性超微粉末が、粒子直径1nm以上500nm以下の球状、断面直径1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さ1nm以上500nm以下の板状の炭素材料からなり、絶縁皮膜が絶縁性金属酸化物またはその水和物からなり、絶縁皮膜の厚さが、0.3nm以上で、かつ導電性超微粉末が球状の場合にはその粒子直径以下、繊維状の場合にはその断面直径以下、板状の場合にはその厚さ以下であることを特徴とする絶縁化超微粉末。
(2)前記表面処理が、アルコキシシラン、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、ポリシロキサン、変性ポリシロキサン、末端変性ポリシロキサンおよびフルオロアルキルシランからなる群より選ばれる1種または2種以上の有機ケイ素化合物を用いて施される(1)記載の絶縁化超微粉末。
(3)前記表面処理が、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコネート系カップリング剤からなる群より選ばれる1種または2種以上のカップリング剤を用いて施される(1)記載の絶縁化超微粉末。
(4)前記絶縁性金属酸化物が、分子分極が5cm以上である(1)記載の絶縁化超微粉末。
(5)前記絶縁性金属酸化物が、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウムまたはこれらの固溶体である(1)記載の絶縁化超微粉末。
(6)前記絶縁性金属酸化物が、組成式MTi1−xZr(Mは2価の金属元素、xは0以上1未満)で表される絶縁性複合金属酸化物である(1)記載の絶縁化超微粉末。
(7)前記絶縁性金属酸化物が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛またはこれらのうち少なくとも一種を組成に含む絶縁性固溶体である(1)記載の絶縁化超微粉末。
(8)前記炭素材料が、カーボンナノファイバー、天然黒鉛、ファーネスカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブまたは人造黒鉛である(1)記載の絶縁化超微粉末。
(9)前記炭素材料の表面が酸化処理を施されたものである(1)記載の絶縁化超微粉末。
(10)つぎの工程(a)〜(c)を含む(1)記載の絶縁化超微粉末の製造方法。
(a)導電性超微粉末を分散し、かつ少なくとも一種類の金属アルコキシドの溶解した有機溶媒中において、該金属アルコキシドをゾルゲル反応により導電性超微粉末の表面に金属酸化物またはその水和物ゲルを析出させる工程、
(b)析出後の反応液を加熱し液相中で金属酸化物またはその水和物ゲルを脱水する工程、
(c)表面処理により疎水化する工程。
(11)(1)記載の絶縁化超微粉末と樹脂とを、体積比(絶縁化超微粉末/樹脂)5/95〜50/50の範囲で配合して得られる高誘電率樹脂複合材料。
(12)比重が2以下である(11)記載の高誘電率樹脂複合材料。
(13)さらに充填剤を含有する(11)記載の高誘電率樹脂複合材料。
(14)比誘電率が20以上である請求項11記載の高誘電率樹脂複合材料。
(15)(11)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される電子部品。
(16)(11)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される高誘電率フィルム。
(17)(11)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される高誘電率シート。
(18)(11)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成されるアンテナ。
(19)(11)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される電波吸収体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、絶縁化超微粉末に表面処理を施し疎水化することによって、絶縁化超微粉末間の架橋によるケーキの凝固を効果的に抑制できる。その結果、樹脂との溶融混練において強い応力がかかる場合でも、絶縁皮膜の破壊によるコア導電性粒子の露出が起こらず安定した誘電特性が確保できる。
本発明の樹脂複合材料は、樹脂材料本来の優れた成形性や加工性および軽量性を維持したまま、高誘電率、電波吸収能を発現する。
本発明の高誘電率樹脂複合材料は、ICパッケージ、モジュール基板、電子部品に一体化した高誘電率層を形成するのに有用である。特に、多層型配線基板の内層キャパシタ層を形成するのに有用である。
また、高誘電率による波長短縮効果を利用することで、無線LANや非接触ICカード/タグなどの内蔵アンテナの小型化、感度改善や、高周波電子機器内部の電波干渉を防止する電波吸収体の薄型化にも有用である。さらに、マイクロ波領域における不要電波吸収にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で用いる導電性超微粉末は、単独で樹脂材料に添加した場合、樹脂複合材料の体積抵抗を低下させる、すなわち、導電性を付与する効果を有するものである。本発明においては、このような導電性超微粉末を構成する材質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ファーネスカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの導電性炭素材料が用いられる。導電性炭素材料に対し、代表的な導電体である金属は、一部の貴金属を除いて、超微粉末は酸化され易く、導電性が低下しやすいのみでなく、粉塵爆発の可能性もある。また、金属原子が超微粉末から絶縁体媒質中に拡散し、複合材料の絶縁性を低下させる。導電性炭素材料はこうした問題がなく、さらに、炭素材料が比重2.2と小さく、他の導電性物質や従来の高誘電率フィラーにはない特長を有し、高誘電率複合材料の軽量化という効果もある。
【0018】
炭素材料からなる導電性超微粉末には必要に応じて、つぎに述べる絶縁性金属酸化物の皮膜を施すために、予め表面に酸化処理を施しておくことが望ましい。酸化処理としては、酸素含有雰囲気下での酸化処理、硝酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素などの水溶液による酸化処理、三塩化ルテニウムと次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化触媒等を用いた酸化処理が挙げられる。
【0019】
本発明で用いる導電性超微粉末としては、粒子直径が1nm以上500nm以下、望ましくは5nm以上300nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下の球状の炭素材料が挙げられる。このような球状の炭素材料、例えば、カーボンブラックは、炭化水素原料を気相で熱分解することによって得られる。また、黒鉛化カーボンブラックは、He、CO、またはこれら混合ガスの雰囲気系により内圧2〜19Torrに保持された減圧容器内において、炭素材料をアーク放電によって気化させ、気化した炭素蒸気を冷却凝固することによって得られる。具体的には、東海カーボン(株)製のシーストSや導電性カーボンブラック#5500、#4500、#4400、#4300や黒鉛化カーボンブラック#3855、#3845、#3800、あるいは、三菱化学(株)製の#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、MA7、MA8、MA11、あるいは、ライオン(株)製のケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC600JDなどが例示できる。なお、ここで球状とは必ずしも厳密な球状である必要はなく、等方的な形状であればよい。例えば角が発生した多面体状であってもよい。
【0020】
また、本発明で用いる導電性超微粉末としては、断面直径が1nm以上500nm以下、望ましくは5nm以上300nm以下、より望ましくは10nm以上200nm以下の繊維状の炭素材料が挙げられる。その長さは断面直径の3倍以上300倍以下であることが好ましい。このような繊維状の炭素材料、例えばカーボンナノファイバーや、カーボンナノチューブは触媒となるコバルトや鉄の有機金属化合物と炭化水素原料を気相で混合し、加熱することによって得られる。また、カーボンナノファイバーはフェノール系樹脂を溶融紡糸し、非活性雰囲気下で加熱することによって得られるものもある。具体的には、昭和電工(株)製のVGCFおよびVGNFや、(株)GSIクレオス製のカルベール、群栄化学工業(株)製のカーボンナノファイバーなどが例示できる。なお、ここで繊維状とは一方向に伸びた形状を意味し、例えば角材状、丸棒状や長球状であってもよい。
【0021】
さらに、本発明で用いる導電性超微粉末としては、厚さが1nm以上500nm以下、望ましくは5nm以上300nm以下、より望ましくは10nm以上200nm以下の板状の炭素材料が挙げられる。その長さおよび幅は、厚さの3倍以上300倍以下であることが好ましい。このような板状の炭素材料は、例えば天然黒鉛や人造黒鉛を精製・粉砕・分級することによって得られる。例えば、(株)エスイーシー製のSNEシリーズ、SNOシリーズ等や日本黒鉛製、鱗状黒鉛粉末、薄片化黒鉛粉末等が挙げられる。また、これらをさらに粉砕し、精密分級してもよい。なお、ここで板状とは、一方向が縮んだ形状を意味し、例えば扁平球状や鱗片状であってもよい。
【0022】
該粒子直径、断面直径または厚さが上記範囲より小さいと量子サイズ効果により導電性が低下する。また、製造が難しく工業的に用いることができないばかりでなく、凝集などにより取り扱いも難しい。一方、該粒子直径、断面直径または厚さが上記範囲より大きいと、連続層の形成が50vol%以下、すなわち樹脂特性を悪化させない添加率の範囲では連続層が形成されなくなってしまう。また、導電性超微粉末の形状が繊維状もしくは板状の場合、アスペクト比は3〜300が望ましい。本発明で用いる導電性超微粉末は、この中でも繊維状の方が球状や板状よりも望ましい。これは繊維状のほうが、比誘電率が20以上である樹脂複合材料として連続層を形成するために必要な添加量が例えば30vol%以下と少なくてすむためである。
【0023】
つぎに、本発明に用いる絶縁皮膜は、樹脂複合材料の全体的な絶縁性の確保を目的の一つとしている。また、導電性超微粉末の表面上に被覆することで、絶縁化超微粉末自体の誘電率は、絶縁皮膜構成材質の誘電率を倍加したものになる。このため、絶縁皮膜の厚さは、被覆する導電性超微粉末が球状の場合にはその粒子直径以下、繊維状の場合にはその断面直径以下、板状の場合にはその厚さ以下である。更に望ましくは、絶縁皮膜の厚さは0.3nm以上で、かつ被覆する導電性超微粉末の粒子直径、断面直径、または厚さとの比率が、0.01以上0.9以下である。最も望ましくは、絶縁皮膜の厚さは0.3nm以上で、かつ被覆する導電性超微粉末の粒子直径、断面直径、または厚さとの比率が、0.01以上0.5以下である。上記範囲よりも薄いと絶縁効果が低減し、導通を防げず誘電体として機能しない場合がある。一方、これより厚い場合には、芯である導電性超微粉末の誘電率倍加効果が低減し、樹脂複合材料の比誘電率が低下する場合がある。
【0024】
本発明における絶縁皮膜の材質は、絶縁性金属酸化物またはその水和物である。例としては二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、二酸化ジルコニウムなどの絶縁性酸化物が挙げられる。またはこれらの水和物として、四水酸化シリコン、三水酸化アルミニウム、四水酸化ジルコニウムが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。望ましくは比誘電率20以上の五酸化二タンタル等の絶縁性金属酸化物、アナタース型、およびブルカイト型の二酸化チタン、チタン酸ジルコニウムが挙げられる。また、これらの固溶体も用いることができる。これらのうち、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、またはこれらの水和物が好ましい。
【0025】
さらに望ましくは比誘電率100以上の金属酸化物が挙げられる。この例としては、ルチル型の二酸化チタン(TiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi0.5Zr0.5)、チタン酸ジルコン酸鉛(PbTi0.5Zr0.)などの組成式MTi1−xZr(Mは2価の金属元素、xは0以上1未満)で表される絶縁性金属酸化物、またはこれらの水和物、さらにはこれらのうち少なくとも一種類を組成に含む絶縁性固溶体が挙げられる。これらの誘電率が大きい材料を用いると、厚く絶縁被膜しても複合材料の誘電率が低下しないため好ましい。
【0026】
また、絶縁皮膜の材質としては、分子分極が5cm以上の絶縁性金属酸化物またはその水和物が望ましい。常誘電体の多くの金属酸化物の分子分極は、つぎのClausius−Mossottiの式にあるとおり金属酸化物の誘電率、比重、式量から計算される。
【0027】
【数2】


(但し、α:分子分極、ε:比誘電率、M:式量、ρ:比重)
【0028】
なお、本発明では、式量は1金属原子あたりに換算したものを意味する。例えば、三酸化二アルミニウムの場合、AlO1.5として、五酸化二タンタルの場合にはTaO2.として計算した式量から分子分極を計算する。二酸化シリコンや二酸化チタンなどでは、通常の式量となる。
【0029】
特に分子分極が大きい材質を用いた場合、同じ皮膜の厚さにおいて、樹脂複合材料における誘電率が大きくなる。例としては分子分極が9cm以上の二酸化シリコン、三酸化二アルミニウムなどの絶縁性金属酸化物が挙げられる。その水和物として四水酸化シリコン、三水酸化アルミニウムが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。望ましくは分子分極15cm以上のいわゆるジルコンすなわち二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、またはその水和物として四水酸化ジルコニウムと四水酸化シリコンとの固溶体が挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。さらに望ましくは分子分極が17cm以上の二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタルまたはその水和物として四水酸化チタン、四水酸化ジルコニウム、五水酸化タンタルが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。
【0030】
絶縁皮膜の形成は、公知の方法を利用することができる。例えば導電性超微粉末が分散した水溶液中で金属塩とアルカリを反応させ、導電性超微粉末を核として金属水酸化物を析出させ、濾別・乾燥することにより脱水縮合させ、導電性超微粉末表面に絶縁性金属酸化物が付着した状態を形成できる。この場合、予め金属塩水溶液に導電性超微粉末を分散させてアルカリを滴下しても、導電性超微粒子の水分散液に金属塩水溶液とアルカリ水溶液を同時もしくは逐次滴下してもよい。またはアルコールなどの有機溶媒に導電性超微粉末を分散し、金属アルコキシドを添加してゾルゲル反応により導電性超微粉末を核とした金属水酸化物の析出、さらに有機溶媒中で脱水縮合反応により導電性超微粉末表面に絶縁性金属酸化物が付着した状態を形成できる。この中でも望ましいのは、ゾルゲル反応による絶縁皮膜形成である。金属塩とアルカリの反応を用いた場合、副生成物である塩の除去に大量の水が必要となるばかりでなく、塩による凝析がおこり、絶縁化超微粉末が固まってしまうため望ましくない。
【0031】
ゾルゲル反応により絶縁皮膜形成を行なった後は、絶縁皮膜の強度を確保するために、脱水処理を施す。脱水方法としては、反応液から絶縁化超微粉末を濾別したのちに乾燥により脱水できる。または反応液を加熱しつつ、加熱温度より沸点が高い溶媒を添加して溶媒を置換する方法もある。この方法は、ゾルゲル反応時の有機溶媒の蒸発に伴って、液相中で絶縁皮膜の脱水処理を行なうものである。絶縁化超微粉末の製造法としては、液相中で絶縁皮膜の脱水縮合を行なうことが必要である。液相中での脱水処理を行なわずにろ過・乾燥した場合、ろ過時に形成される絶縁化超微粉末のケーキが固まってしまうため望ましくない。
【0032】
絶縁化超微粉末は、脱水処理を行なっても、表面に水酸基が残っている。この表面水酸基は、ろ過・乾燥に伴う脱水縮合により、絶縁化超微粉末を絶縁金属酸化物の皮膜で架橋してしまう。つまり絶縁化超微粉末を固めてしまう。このため、絶縁化超微粉末に強い応力がかかる樹脂材料との複合化の場合、例えば二軸押出機などを用いる量産的な条件下での熱可塑性樹脂との溶融混練において絶縁皮膜の破壊が起こりやすくなり誘電特性を不安定化させる。これを防ぐため、有機ケイ素化合物やカップリング剤などで表面処理を施し、疎水化する。なお、脱水処理を行なわずに表面処理を行なうと、反応液中に存在する水分のため、表面処理に用いる有機ケイ素化合物やカップリング剤などが絶縁化超微粉末の表面水酸基に結合できず、望ましくない。
【0033】
本発明において表面処理に用いる有機ケイ素化合物は、アルコキシシラン、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、ポリシロキサン、変性ポリシロキサン、末端変性ポリシロキサンおよびフルオロアルキルシランからなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物である。このなかでも、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサンが望ましい。
【0034】
アルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β( アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
導電性超微粉末上に生成した絶縁性金属酸化物または金属水酸化物皮膜粒子への付着強度を考慮すると、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、または前記アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物がより好ましい。
【0036】
また、ポリシロキサンとしては、メチルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンおよび末端がカルボン酸で変性された末端カルボン酸変性ポリシロキサンを挙げることができる。
【0037】
フルオロアルキルシランとしては、具体的には、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランまたはヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
また、本発明において表面処理に用いるカップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコネート系カップリング剤からなる群より選ばれる1種または2種以上のカップリング剤を用いることができる。
【0039】
上記カップリング剤のうち、シラン系カップリング剤については、先に挙げた有機ケイ素化合物の一部、すなわちアルコキシシランが含まれるが、アルコキシシラン以外のシラン系カップリング剤としては、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシシラン、ジフェニルジクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−アミノプロピルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、N−β( アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0040】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス( ジオクチルパイロホスフェート) チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル) チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス( ジオクチルパイロホスフェート) エチレンチタネート等が挙げられる。
【0041】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0042】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0043】
表面処理剤の使用量は、脱水の程度により異なるが、絶縁化超微粉末100重量部に対して0.01〜 30重量部が好ましい。この範囲内であれば、0.絶縁化超微粉末を十分に樹脂中に分散させることができ、また、絶縁化超微粉末と樹脂との密着性も確保できる。より好ましくは0.1〜 25重量部 、特に好ましくは1〜15重量部である。
【0044】
表面処理を経てろ過・乾燥した後にさらに焼成処理を行なってもよい。通常、焼成処理は200℃〜1500℃の温度範囲で、30分間〜24時間保持することにより行なう。但し、導電性超微粉末が炭素材料である場合、焼成雰囲気を非酸化性とする必要がある。すなわち、窒素置換やアルゴン置換を施し、酸素を遮断する必要がある。
【0045】
本発明で用いる絶縁化超微粉末は、粒子直径が1nm以上500nm以下の球状、断面直径が1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さが1nm以上500nm以下の板状の導電性炭素材料が金属酸化物またはその水和物により絶縁化された超微粉末である。本発明の絶縁化超微粉末は、樹脂に50vol%以下の量を配合することにより比誘電率が20以上である高誘電率樹脂複合材料が得られる。比誘電率20以上の高誘電率樹脂複合材料を実現するには、従来の高誘電率フィラーを使用した場合は該フィラーを50vol%程度以上配合する必要があるが、本発明の絶縁化超微粉末を使用した場合は該絶縁化超微粉末を50vol%以下、例えば、5〜50vol%配合すればよい。したがって、本発明の絶縁化超微粉末を配合した樹脂複合材料は、樹脂材料本来の特長である成型加工性や軽量性が損なわれることなく、高い誘電率を発現する。
【0046】
本発明において上記絶縁化超微粉末を添加する樹脂成分としては、PVC樹脂、フェノキシ樹脂、フッ化炭素系樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、あるいはこれらの混合系樹脂を挙げることができる。特に望ましくは、絶縁性に優れ、銅などの金属層との密着性に優れたポリイミド樹脂である。
【0047】
また、絶縁化超微粉末と配合する際の樹脂成分は、重合体の形態としてのみならず重合性化合物の形態として、すなわち、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂のモノマーやオリゴマーなどの重合性化合物として配合しておいて、後で重合させてもよい。特に望ましくはエポキシ樹脂を含む樹脂組成物である。これは配線基板などに用いる場合、銅等の金属層と密着強度が大きいためである。
【0048】
本発明の高誘電率樹脂複合材料は、高誘電率以外の目的で、必要に応じて充填剤をさらに添加して用いることができる。充填剤としては、弾性率改善のためのガラス繊維、成形収縮率を低下させるための炭酸カルシウム、表面平滑性や耐摩耗性の改善に用いられるタルク、寸法安定性を改善するために用いられるマイカが挙げられる。また、難燃性を付与する充填剤すなわち難燃剤としてハロゲン系またはリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0049】
また、電波吸収材として用いる場合には、電波吸収特性の調整に従来技術で用いられているフェライト粉末や鉄を主成分とした磁性金属体粉末、あるいはカーボン系や酸化スズ系の導電性粉末や難燃剤としての効果も有する導電性粉末である膨張黒鉛粉末などを充填剤として、さらに添加することができる。
【0050】
本発明において、絶縁化超微粉末の樹脂組成物に対する添加量としては5〜50vol%、望ましくは5〜30vol%である。これより少ないと、樹脂組成物中で連続層が形成されず充分な比誘電率が得られない。一方、これより多いと、樹脂組成物本来の加工性などが損なわれてしまう。
【0051】
本発明の高誘電率樹脂複合材料は、絶縁化超微粉末の原料に炭素材料を用いるので、その比重を2以下に軽量化できる。
【0052】
本発明の高誘電率樹脂複合材料をアンテナ基板に用いる場合には、該高誘電率樹脂複合材料は比誘電率が20以上であることが望ましい。そして、このような高誘電率樹脂複合材料を1μm以上3mm以下である層として、より具体的には、1μm〜100μmの厚さに成形したフィルムまたは100μm〜3mmの厚さに成形したシートの少なくとも一方の表面に配線パターンを設けることで、アンテナ基板を形成することができる。また、必要に応じて、高誘電率樹脂複合材料のフィルムまたはシートにスルーホールを設けることも可能である。
【0053】
本発明の高誘電率樹脂複合材料を非接触ICカード/タグに用いる場合には、アンテナ基板の配線パターンにICを直接配線してもよいし、ICを内蔵したカード/タグとアンテナ基板を接触させ、ブースターアンテナとして利用してもよい。また、高誘電率樹脂複合材料のフィルムまたはシートをアンテナ基板や非接触ICカードとして用いる場合、必要に応じて保護フィルムなどを貼り付けてもよい。
【0054】
本発明の絶縁化超微粉末を、樹脂に5vol%以上50vol%以下の量配合することにより比誘電率が20以上である電波吸収材が得られる。比誘電率20以上の電波吸収材を実現するには、従来の高誘電率フィラーを使用した場合は、該フィラーを50vol%程度以上配合する必要があるが、本発明の絶縁化超微粉末を使用した場合は該絶縁化超微粉末を50vol%以下、例えば、5〜50vol%配合すればよい。したがって、本発明の絶縁化超微粉末を配合した樹脂複合材料は、樹脂材料本来の特長である成型加工性や軽量性が損なわれることなく、高い誘電率を発揮し、マイクロ波領域で電波吸収能を発揮する。
【0055】
このような本発明の高誘電率樹脂複合材料を用いた電波吸収材は、高い誘電率を有するため、シート化した場合に、吸収する電波の波長に対する厚さを1/20以下とすることができる。また、本発明の高誘電率樹脂複合材料を用いた電波吸収材は、筐体内部に用いることができ、電子機器として優れた性能を示す。さらに、絶縁化超微粉末の原料に炭素材料を用いるため、電波吸収材の比重を2以下に下げることができ、一層の軽量化を図ることができる。
【実施例】
【0056】
つぎに、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0057】
なお、比誘電率の測定については、樹脂複合材料を30mmφ、厚さ3mmのディスクに成形し、インピーダンスアナライザー(アジレント社製、4294A)を用いて室温で1MHzにて測定した。また、比重の測定については、該ディスクの重量を測定し、さらに水をはったメスシリンダーに入れ体積を測定することにより求めた。
【0058】
実施例1
イソプロパノール40L中にカーボンブラック(球状体粒子直径50〜100nm、平均粒径70nm、東海カーボン(株)製シーストS)2kgとテトラプロピルオキシチタネート2.1kg(三菱ガス化学(株)製TPT)を添加し、室温にて1時間攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水2kgを2時間かけて滴下し、さらに2時間撹拌した。17kPaの真空度で含水イソプロパノールを蒸留しつつ、45LのN,N−ジメチルアセトアミドを滴下し溶媒置換した。さらにフェニルトリメトキシランを0.31kg添加して、100℃にて4時間加熱し疎水化した後、ろ過し12時間自然乾燥し、窒素雰囲気下350℃で30分間焼成した。この結果、2.8kgの表面処理を施した絶縁化超微粉末を得た。
得られた絶縁化超微粉末1.5kgとポリフェニレンスルフィド3.5kgを、二軸押出機にて300℃で溶融混練しペレット化し樹脂複合材料5kgを得た。これは疎水化した絶縁化超微粉末を20vol%添加したことになる。この樹脂複合材料のペレットを熱プレスした後、比誘電率を測定したところ50.3であった。また、樹脂複合材料の比重は1.4であった。
なお、二酸化チタンのアナターゼ型結晶の場合、比誘電率31、比重4.1であるため、分子分極は19cmである。ルチル型結晶やブルッカイト型結晶も分子分極は18〜19cmである。
【0059】
実施例2
実施例1のフェニルトリメトキシランの代わりにイソプロピルトリステアロイルチタネートを用いたほかは、実施例1と同様にした。樹脂複合材料の比誘電率は49.7、比重は1.4であった。
【0060】
実施例3
実施例1のフェニルトリメトキシランの代わりにジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネートを用いたほかは、実施例1と同様にした。樹脂複合材料の比誘電率は48.6、比重は1.4であった。
【0061】
比較例1
フェニルトリメトキシシランによる表面処理を施さないこと以外は実施例1と同様にした。得られた樹脂複合材料は導通してしまい比誘電率を測定できなかった。
【0062】
実施例4
イソプロパノール30L中に気相成長法によって得られたカーボンナノファイバー(断面直径150nm、長さ5〜6μmの繊維状)300gとテトラプロピルオキシチタネート640gを添加し、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水660gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌を継続した後、実施例1と同様に含水プロパノールを蒸留しつつ、ジメチルアセトアミド35Lを添加し溶媒置換した。さらにフェニルトリメトキシラン460g加えて加熱を継続し絶縁化超微粉末の表面を疎水化した。この後、ろ過し、12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜70nm厚、平均50nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末480gとポリフェニレンスルフィド1.9kgとを単軸押出機を用いて300℃にて溶融混練した。これは絶縁化超微粉末(フィラー)を10vol%添加したことになる。得られた樹脂複合材料を用いて実施例1と同様に比誘電率を測定したところ48.2であった。樹脂複合材料の比重は1.4であった。
【0063】
実施例5
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、カーボンナノファイバー300gを60wt%硝酸水溶液中で100℃加熱し、酸化処理を施した以外は、実施例4と同様にした。実施例1と同様に比誘電率を測定したところ45.4であった。樹脂複合材料の比重は1.4であった。
【0064】
実施例6
実施例1のカーボンブラックの代わりに天然黒鉛(厚さ100〜200nm、平均厚さ150nm、1〜3μm角、平均2μm角の板状)を用いたほかは実施例1と同様にした。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜70nm厚、平均50nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
実施例1と同様にして、ポリフェニレンスルフィドと溶融混練し樹脂複合材料のペレットを得て、熱プレスにより成形した板の比誘電率を測定したところ、53.2であった。比重は1.4であった。
【0065】
実施例7
実施例1で用いたカーボンブラックの替わりに粒子直径10〜30nm、平均直径25nmの球状のカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にゾルゲル法により皮膜形成後、液相脱水を行ない、さらにフェニルトリメトキシシランを用いて表面処理を施し疎水化した。
実施例1と同様にポリフェニレンスルフィドとの樹脂複合材料の板を成形し比誘電率を測定したところ71.6であった。比重は1.4であった。
【0066】
実施例8
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、テトラプロピルオキシチタネートの代わりに、テトラブチルオキシジルコネートを用いた以外は実施例1と同様にした。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜70nm厚、平均50nm厚の二酸化ジルコニウム水和物の皮膜が形成されていた。なお、二酸化ジルコニウムの結晶状態の比誘電率は18であり比重は5.5である。したがって分子分極は19cmとなる。実施例1と同様にポリフェニレンスルフィド複合材料の比誘電率を測定したところ53.4であった。また硬化物の比重は1.4であった。
【0067】
実施例9
テトラプロポキシチタネートの代わりに、テトラエトキシシリケートを用いた以外は実施例6と同様にして、疎水化した絶縁化超微粉末を合成した。
走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜50nm厚、平均40nm厚の二酸化シリコン水和物の皮膜が形成されていた。なお、二酸化シリコンは、結晶状態において、比誘電率3.8、比重2.1である。したがっては分子分極は13cmである。
実施例6と同様にポリフェニレンスルフィドと溶融混練し、樹脂複合材料の比誘電率を測定した結果、49.7であった。なお、比重は1.4であった。
【0068】
実施例10
テトラプロポキシチタネートの添加量を128gとしたほかは、実施例4と同様にした。 走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、2〜4nm厚、平均3nm厚の二酸化チタン水和物の皮膜が形成されていた。
実施例4と同様にポリフェニレンスルフィドとの樹脂複合材料の比誘電率を測定したところ129であった。
【0069】
実施例11
実施例1で得られた絶縁化超微粉末1gとビスフェノールA型エポキシモノマー9g、イミダゾール系硬化触媒0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで1分間粉砕混合し、テフロン(登録商標)シャーレに入れ乾燥後、120℃で1時間硬化することにより硬化物のシートを得た。これは絶縁化超微粉末を5vol%添加したことになる。比誘電率は57.8であった。また、硬化物の比重は1.3であった。
【0070】
実施例12
溶融紡糸法により合成したカーボンナノファイバー(断面直径:300〜500nm、平均断面直径:400nm、長さ:50μm、繊維状)を用い、テトラプロポキシチタネートの代わりにテトラブチルオキシジルコネートを用いた以外は、実施例4と同様にした。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、90〜130nm厚、平均110nm厚の二酸化ジルコニウム水和物の皮膜が形成されていた。実施例11と同様にエポキシ複合材料の硬化物の板を作製し、実施例1と同様に比誘電率を測定したところ43.4であった。比重は1.5であった。
【0071】
実施例13
実施例6におけるテトラプロピルオキシジルコネートの添加量を64gとした以外は、全て同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、2〜7nm厚、平均5nm厚の二酸化ジルコニウム水和物の皮膜が形成されていた。この疎水化した絶縁化超微粉末を実施例11と同様にエポキシ樹脂と混合し得られた硬化物の比誘電率は178、比重は1.3であった。
【0072】
実施例14
実施例2におけるテトラプロピルオキシチタネートの添加量を1.2kgとした以外は、全て実施例2同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、70〜130nm厚、平均100nm厚の二酸化チタン水和物の皮膜が形成されていた。得られた樹脂複合材料の比誘電率は45.3、比重は1.3であった。
【0073】
実施例15
イソプロパノール80mL中に、金属ストロンチウムを0.5gとテトラプロピルオキシチタネート1.6gを加え、1時間沸点還流し、無色透明ゾル液を得た。ここに、天然黒鉛((株)エスイーシー製SNO−2、厚さ100〜200nm、平均厚さ150nm、1〜3μm角、平均2μm角の板状)を10g加え、14時間室温で撹拌した。これに、蒸留水2.5gとイソプロパノール20gの混合液を30分掛けて滴下し、さらに2時間撹拌した。この後、17kPaの真空度で含水イソプロパノールを蒸留しつつ、90mLのN,N−ジメチルアセトアミドを滴下し溶媒置換した。吸引濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。さらにフェニルトリメトキシランを0.62g添加して、100℃にて4時間加熱し疎水化した後、ろ過し12時間自然乾燥した後、窒素雰囲気下350℃で30分間焼成した。なお、得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、20〜70nm厚、平均50nm厚のチタン酸ストロンチウム水和物の皮膜が形成されていた。
得られた疎水化した絶縁化超微粉末3.5gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)6.5g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.13g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末(フィラー)を20vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。比誘電率は63.7、比重は1.4であった。
【0074】
比較例2
実施例11における絶縁化超微粉末を7gとビスフェノールA型エポキシモノマーを3g混合した以外は、実施例10と同様にした。これは60vol%添加したことになる。この場合、非常に脆い硬化物しか得られなかった。比誘電率の測定が出来なかった。
【0075】
比較例3
実施例1においてテトラプロピルオキシチタネートの添加量を66gとした以外は、実施例11と同様にした。尚、得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜400nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。得られた硬化物の比誘電率は16.3、比重は1.3であった。
【0076】
比較例4
実施例12においてカーボンナノファイバーの代わりに、ボールミルで粉砕した炭素繊維(断面直径:800nm〜1.2μm、平均断面直径:1μm、長さ:50μm、繊維状)を用いたほかは、実施例11と同様にした。なお、得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜500nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。得られた硬化物の比誘電率は9.2であった。
【出願人】 【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
【出願日】 平成18年10月12日(2006.10.12)
【代理人】 【識別番号】100117891
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 隆


【公開番号】 特開2008−94962(P2008−94962A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−278517(P2006−278517)