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【発明の名称】 微粒子二酸化チタン組成物およびその製造方法
【発明者】 【氏名】出井 俊治

【要約】 【課題】微粒子二酸化チタンの有する透明性および紫外線吸収性を損なうことなく、かつ微粒子二酸化チタン組成物としての優れた耐候性、耐光変色性を保持しつつ、水分散性を向上させ、水分散性が優れ、かつ優れた耐候性、耐光変色性を保持する微粒子二酸化チタン組成物を提供する。

【構成】平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して0.1〜40%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させて微粒子二酸化チタン組成物を構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して0.1〜10%のジルコニウムの含水酸化物およびAlに換算して0.1〜40%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させたことを特徴とする微粒子二酸化チタン組成物。
【請求項2】
ケイ素の含水酸化物の被覆量が、微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1〜8%である請求項1記載の微粒子二酸化チタン組成物。
【請求項3】
ジルコニウムの含水酸化物の沈着量が、微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して0.5〜5%であり、アルミニウムの含水酸化物の沈着量が、微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して1〜10%である請求項1または2記載の微粒子二酸化チタン組成物。
【請求項4】
下記の工程I−IIIを経由して製造することを特徴とする微粒子二酸化チタン組成物の製造方法。
I 下記の(a)または(b)の工程を経て、中核となる平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆する工程:
(a)上記平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの懸濁液に、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%の水溶性ケイ素化合物と、中和剤とをpH6〜8に保って同時に添加する
(b)上記平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの懸濁液に、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%の水溶性ケイ素化合物を添加した後、中和剤を0.5〜3時間のうちに滴下し、最終的にpH6〜8にする
II 上記工程Iを経て得られた中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆してなる微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液に、上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して0.1〜10%の水溶性ジルコニウム化合物を酸性条件下で添加し、次いで塩基性の中和剤を添加して中和することにより、ジルコニウムの含水酸化物を上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に沈着させる工程
III 上記工程IIを経た微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液に、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して0.1〜40%の水溶性アルミニウム化合物と酸性の中和剤とをpH6〜8に保って同時に添加することにより、アルミニウムの含水酸化物を上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に沈着させる工程
【請求項5】
下記の工程IV〜VIを経由して製造することを特徴とする微粒子二酸化チタン組成物の製造方法。
IV 下記の(a)または(b)の工程を経て、中核となる平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆する工程:
(a)上記平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの懸濁液に、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%の水溶性ケイ素化合物と中和剤とをpH6〜8に保って同時に添加する
(b)上記平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの懸濁液に、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%の水溶性ケイ素化合物を添加した後、中和剤を0.5〜3時間のうちに滴下し、最終的にpH6〜8にする
V 上記工程IVを経て得られた中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆してなる微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液に、上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して0.1〜40%の水溶性アルミニウム化合物と酸性の中和剤とをpH6〜8に保って同時に添加することにより、アルミニウムの含水酸化物を上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に沈着させる工程
VI 上記工程Vを経た微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液に、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して0.1〜10%の水溶性ジルコニウム化合物を酸性条件下で添加し、次いでこの懸濁液に塩基性の中和剤を添加して中和することにより、ジルコニウムの含水酸化物を上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物に沈着させる工程
【請求項6】
下記の工程VII〜VIIIを経由して製造することを特徴とする微粒子二酸化チタン組成物の製造方法。
VII 下記の(a)または(b)の工程を経て、中核となる平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆する工程:
(a)上記平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの懸濁液に、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%の水溶性ケイ素化合物と、中和剤とをpH6〜8に保って同時に添加する
(b)上記平均粒子径が5〜70nmの懸濁液に、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%の水溶性ケイ素化合物を添加した後、中和剤を0.5〜3時間のうちに滴下し、最終的にpH6〜8にする
VIII 上記工程VIIを経て得られた中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆してなる微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液に、上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して0.1〜10%の水溶性ジルコニウム化合物と、上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して0.1〜40%の水溶性アルミニウム化合物と、中和剤とをpH6〜8に保って添加することにより、ジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に沈着させる工程
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性が優れ、かつ優れた耐候性、耐光変色性を保持する微粒子二酸化チタン組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最大粒子径が100nm(0.1μm)未満の微粒子二酸化チタンは、透明性や紫外線吸収性を有するなど、平均粒子径が100nm以上の二酸化チタン(いわゆる顔料級二酸化チタン)と異なる特性を有しており、その特性を生かして、塗料、化粧料、樹脂用組成物など、幅広い分野に使用されている。
【0003】
しかしながら、微粒子二酸化チタンは、顔料級二酸化チタンに比べて粒子径が小さく、光化学的には活性が高いので、顔料級二酸化チタンに比べて耐候性、耐光変色性が劣るという問題がある。
【0004】
そのため、微粒子二酸化チタンに種々の金属化合物(一般的には酸化物または含水酸化物)を被覆することにより、特性改善が試みられてきた。
【0005】
例えば、微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素およびアルミニウムの酸化物で被覆して、微粒子二酸化チタンの透明性や紫外線吸収性を向上させることが提案されている(特許文献1〜2)。
【0006】
また、微粒子二酸化チタンの耐候性や耐光変色性を向上させる目的で、粒子表面を複数の金属酸化物で被覆した微粒子二酸化チタン組成物が提案され、塗料などの分野で幅広く利用されている(特許文献3〜4)。
【0007】
ところで、近年は、多くの分野で環境への配慮から、溶媒や分散媒として有機溶剤を使用しない製品を製造しようとする動きが盛んになってきており、塗料の分野などにおいても、水系の組成物が多用されるようになってきた。
【0008】
しかしながら、微粒子二酸化チタンの粒子表面を金属酸化物で被覆した従来の微粒子二酸化チタン組成物は、有機溶剤系の塗料の調製などに使用することを前提として改良が行われてきたため、耐候性や耐光変色性などを向上させた微粒子二酸化チタン組成物も、有機溶剤系の塗料の調製に適するようにしつつ、特性向上が図られていた。
【0009】
そのため、それら従来の微粒子二酸化チタン組成物を、有機溶剤を使用しない水系塗料に配合すると、凝集しやすいという問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開昭55−10428号公報
【特許文献2】特開昭55−154317号公報
【特許文献3】特公平7−751号公報
【特許文献4】特許第2878415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、微粒子二酸化チタンの特徴である優れた透明性および紫外線吸収性を損なうことなく、かつ微粒子二酸化チタン組成物としての優れた耐候性、耐光変色性を保持しつつ、水分散性を向上させ、水分散性が優れ、かつ優れた耐候性、耐光変色性を保持する微粒子二酸化チタン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1〜20%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して0.1〜10%のジルコニウムの含水酸化物およびAlに換算して0.1〜40%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させることによって、微粒子二酸化チタンの有する優れた透明性および紫外線吸収性を損なうことなく、微粒子二酸化チタン組成物としての優れた耐候性、耐光変色性を保持しつつ、水分散性を向上させて、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の微粒子二酸化チタン組成物は、水分散性が優れ、かつ優れた耐候性、耐光変色性を保持し、しかも微粒子二酸化チタンの特徴である透明性および紫外線吸収性を有している。
【0014】
本発明の微粒子二酸化チタン組成物が、上記のように優れた水分散性を有するにいたったのは、微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆したことと、そのケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させたこととによるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の微粒子二酸化チタン組成物において、中核となるのは、平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンであり、この微粒子二酸化チタンとしては、ルチル型のもの、アナターゼ型のもののいずれも用いることができるが、塗料などへの適応性を考えると、熱や溶剤に対する安定性が高いルチル型の方が好ましい。
【0016】
本発明において、中核となる微粒子二酸化チタンの平均粒子径を5〜70nmに特定しているのは、平均粒子径が5nmより小さい微粒子二酸化チタンは、凝集力が強くて均一に分散させることが困難な上に、量産化が困難で工業的に利用できる程度には入手しがたく、また、平均粒子径が70nmより大きい微粒子二酸化チタンでは、それを用いて得られる微粒子二酸化チタン組成物の透明性や紫外線吸収性が低下するおそれがあるからであり、この微粒子二酸化チタンとしては、平均粒子径が20〜50nmのものが特に好ましい。このように、本発明において、微粒子二酸化チタンの平均粒子径を特定しているのは、入手の容易さや透明性、紫外線吸収性などの観点からであって、水分散性に関しては、微粒子二酸化チタンの粒子径はほとんど影響を及ぼさず、上記平均粒子径の範囲内でほぼ同様の水分散性の向上を達成できる。なお、本発明において、微粒子二酸化チタンの平均粒子径は、微粒子二酸化チタンを透明型電子顕微鏡で撮影し(撮影個数は1,000個以上)、撮影された個々の粒子の定方向径(粒子の面積を2分する水平線の長さ)をプロットし、それらを平均することによって求めたものである。
【0017】
上記平均粒子径が5〜70nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆するには、例えば、次の方法によって行われる。
【0018】
まず、上記微粒子二酸化チタンの粉末を水中に懸濁し、スラリー状の懸濁液にする。この際、ヘキサメタリン酸ナトリウム、塩酸などの分散助剤を加えてもよい。そして、この懸濁液は、サンドミルのような分散機を通し、微粒子二酸化チタン粉末を凝集状態から解きほぐし、分散状態にしておくことが好ましい。
【0019】
次いで、上記微粒子二酸化チタンの懸濁液に対し、水溶性ケイ素化合物などの水溶液と、中和剤をpH6〜8に保ちながら同時に添加する。
【0020】
上記水溶性ケイ素化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸塩、四塩化ケイ素などのハロゲン化ケイ素などが好適に用いられる。中和剤としては、上記水溶性ケイ素化合物の特性に応じ、アルカリまたは酸が用いられる。
【0021】
また、上記のような水溶性ケイ素化合物と中和剤の同時添加に代えて、水溶性ケイ素化合物を先に添加し、次いで中和剤としてのアルカリまたは酸を0.5〜3時間の範囲内で徐々に加えていくことによって中和し、最終的にpHを6〜8に調整するようにしてもよい。添加する水溶性ケイ素化合物の量としては、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して0.1〜20%、好ましくは1〜8%、より好ましくは1〜5%となるように化合物量を計算して添加量を決定する。
【0022】
本発明において、微粒子二酸化チタンの粒子表面を被覆するケイ素の含水酸化物の量を、微粒子二酸化チタンの質量に対しSiO換算で0.1〜20%(つまり、中核となる微粒子二酸化チタン100質量部に対してケイ素の含水酸化物がSiOに換算して0.1〜20質量部)にしているのは、ケイ素の含水酸化物の被覆量が上記条件下で0.1%より少ない場合は、目的とする水分散性の向上が得られず、ケイ素の含水酸化物の被覆量が20%より多い場合は、水分散性がかえって低下し、また、透明性、耐水性なども低下するという理由によるものであり、このケイ素の微粒子二酸化チタンの被覆量としては、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しSiO換算で1〜8%が好ましく、1〜5%がより好ましい。
【0023】
また、微粒子二酸化チタンの粒子表面の被覆にあたって、pH6〜8に調整するのは、pHが6より低い場合は、生成するケイ素の含水酸化物の粒子が大きくなって、緻密な表面被覆ができにくいためであり、pHが8より高い場合は、ケイ素の含水酸化物が生成しにくく、目的とする被覆量が得られないという理由によるものである。また、水溶性ケイ素化合物を先に添加し、後から中和剤を添加する場合、その中和剤の添加時期を水溶性ケイ素化合物の添加後0.5〜3時間としているのは、0.5時間より短かい場合は緻密な表面被覆が得られにくく、また、3時間より長い場合は生産性が著しく低下するという理由によるものである。
【0024】
つぎに、上記のように、微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆することによって得られた微粒子二酸化チタン組成物(本発明において、この微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆してなる微粒子二酸化チタン組成物を「第1段階の微粒子二酸化チタン組成物」という場合がある)のケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させる。
【0025】
本発明において、上記のように、ジルコニウムの含水酸化物を沈着させるとか、アルミニウムの含水酸化物を沈着させるという表現にし、ジルコニウムの含水酸化物で被覆するとか、アルミニウムの含水酸化物で被覆するという表現にしていないのは、ジルコニウムの含水酸化物やアルミニウムの含水酸化物は、たとえ、その量を多くしても、被膜状になりがたく、粒状ないし塊状でケイ素の含水酸化物上に付着するからである。
【0026】
従って、これらのジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物のケイ素の含水酸化物上への沈着は、必ずしも、それらを同時に沈着させる必要はなく、例えば、ジルコニウムの含水酸化物を先に沈着させ、次いでアルミニウムの含水酸化物を沈着させてもよいし、また、その逆に、アルミニウムの含水酸化物を先に沈着させ、次いでジルコニウムの含水酸化物を沈着させてもよい。
【0027】
そして、ジルコニウムの含水酸化物を先にケイ素の含水酸化物上に沈着させ、次いでアルミニウムの含水酸化物を沈着させた場合、前述したように、ジルコニウムの含水酸化物はケイ素の含水酸化物上に粒状ないし塊状で沈着するので、アルミニウムの含水酸化物の大部分はケイ素の含水酸化物上のジルコニウムの含水酸化物が沈着していない部分に直接沈着する。ただし、アルミニウムの含水酸化物の一部が先に沈着したジルコニウムの含水酸化物上に沈着してもよい。
【0028】
また、アルミニウムの含水酸化物を先にケイ素の含水酸化物上に沈着させ、次いでジルコニウムの含水酸化物を沈着させた場合も、アルミニウムの含水酸化物はケイ素の含水酸化物上に粒状ないし塊状に沈着するので、ジルコニウムの含水酸化物の大部分はケイ素の含水酸化物上のアルミニウムの含水酸化物が沈着していない部分に直接沈着する。そして、この場合においても、ジルコニウムの含水酸化物の一部が先に沈着したアルミニウムの含水酸化物上に沈着してもよい。
【0029】
微粒子二酸化チタンの粒子表面を被覆するケイ素の含水酸化物上へのジルコニウムの含水酸化物の沈着およびアルミニウムの含水酸化物の沈着は、両者を同時に行う場合以外にも、上記のように、両者をわけて(つまり、別々に)行うことができる。そして、これらジルコニウムの含水酸化物の沈着およびアルミニウムの含水酸化物の沈着は、後に詳述するように、水溶性ジルコニウム化合物と中和剤および水溶性アルミニウム化合物と中和剤を用いて行なわれるが、両者をそれぞれにわけて行う場合には、ジルコニウム化合物とアルミニウム化合物の極性が異なっていても実施することができるので、両者を同時に沈着させるよりも、両者を別けて沈着させる方がジルコニウム化合物やアルミニウム化合物の選択範囲が広くなり、実務上好ましい。つまり、両者をわけて行う場合は、例えば、水溶性ジルコニウム化合物として酸性のものを用い、水溶性アルミニウム化合物として塩基性のものを用いて行うことができるが(また、その逆に、水溶性ジルコニウム化合物として塩基性のものを用い、水溶性アルミニウム化合物として酸性のものを用いて行うことができるが)、両者を同時に沈着させる場合には、水溶性ジルコニウム化合物と水溶性アルミニウム化合物は同じ極性のものを用いなければならないという制約がある。
【0030】
そこで、上記第1段階の微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物のケイ素の含水酸化物上に沈着させるにあたって、両者をわけて行う場合から先に説明すると、例えば、次に示すように行われる。第1段階の微粒子二酸化チタン組成物(すなわち、微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆してなる微粒子二酸化チタン組成物)の懸濁液に、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOとして0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは2〜4%の水溶性ジルコニウム化合物を酸性条件下で添加し、次いで、この塩基性の中和剤を添加して、中和することにより、上記第1段階の微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物を沈着させる。
【0031】
上記水溶性ジルコニウム化合物としては、例えば、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウムなどの種々の水溶性ジルコニウム化合物を単独でまたは2種以上用い得るが、前記のように、この水溶性ジルコニウム化合物を酸性条件下で添加するのは、ジルコニウム化合物が酸性条件下でしか溶解できないという理由によるものである。また、先に水溶性ジルコニウム化合物のみを添加し、次いで、中和剤を添加するのは、この順序で添加することで比較的容易に高効率でジルコニウムの含水酸化物を沈着させることができるという理由によるものである。そして、中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、テメラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの塩基性物質が用いられる。
【0032】
上記のようなジルコニウムの含水酸化物を沈着させるにあたっての水溶性ジルコニウム化合物と中和剤との反応は、特に限定されることはないが、30〜60℃程度の温度で実施することが好ましく、また、その際の時間としては、10〜30分程度が好ましい。
【0033】
本発明において、このジルコニウムの含水酸化物の沈着量を中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対し、ZrOに換算して0.1〜10%(つまり、中核となる微粒子二酸化チタン100質量部に対してZrOに換算して0.1〜10質量部)にしているのは、ジルコニウムの含水酸化物の沈着量が上記条件下で0.1%より少ない場合は目的とする水分散性の向上が得られず、また、10%より多い場合は水分散性がかえって低下し、透明性も低下するからである。そして、このジルコニウムの含水酸化物の沈着量としては0.5〜5%(つまり、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して0.5〜5%)が好ましく、2〜4%がより好ましい。
【0034】
次に、上記ジルコニウムの含水酸化物を沈着させた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液に、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対し、Alとして0.1〜40%、好ましくは1〜10%、より好ましくは2〜4%の水溶性アルミニウム化合物と中和剤とをpH6〜8に保って同時に添加することにより、アルミニウムの含水酸化物を上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に沈着させる。
【0035】
上記のようにして微粒子二酸化チタンの粒子表面を被覆するケイ素の含水酸化物上に、ジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させて得られた微粒子二酸化チタン組成物は、反応終了時、水に懸濁した状態で存在するため、それを濾過し、水洗した後、乾燥して水分を除去し、得られた乾燥物を流体エネルギーミルなどの粉砕機で粉砕して粉末化し、使用に適する状態にする。
【0036】
上記水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどの種々の水溶性アルミニウム化合物を単独でまたは2種以上用いることができる。
【0037】
また、中和剤としては、使用する水溶性アルミニウム化合物の極性に応じて適したものを用いればよく、例えば、水溶性アルミニウム化合物が塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのように水中で酸性を示すものに対しては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどの塩基性物質が用いられ、水溶性アルミニウム化合物がアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどのように水中で塩基性を示すものに対しては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸などの酸性物質が用いられる。
【0038】
上記のように、アルミニウムの含水酸化物を沈着させるにあたって水溶性アルミニウム化合物と中和剤とを同時に添加するのは、一定の濃度でゲル析出を行うことで、アルミニウムの含水酸化物の均一な沈着が可能になるという理由によるものであり、また、その際、pHを6〜8に保つのは、ケイ素の含水酸化物やジルコニウムの含水酸化物を溶解させることなく、アルミニウムの含水酸化物を沈着させることができるという理由によるものである。
【0039】
また、上記のようなアルミニウムの含水酸化物を沈着させるにあたっての水溶性アルミニウム化合物と中和剤との反応は、特に限定されることはないが、30〜60℃程度の温度で実施することが好ましく、その際の時間としては10〜30分程度が好ましい。
【0040】
本発明において、上記アルミニウムの含水酸化物の沈着量を中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して0.1〜40%(つまり、中核となる微粒子二酸化チタン100質量部に対してアルミニウムの含水酸化物がAlに換算して0.1〜40質量部)にしているのは、アルミニウムの含水酸化物の沈着量が上記条件下で0.1%より少ない場合は、目的とする水分散性の向上が得られないからであり、40%より多い場合は、水分散性がかえって低下し、透明性も低下するという理由によるものであり、このアルミニウムの含水酸化物の沈着量としては1〜10%(つまり、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して1〜10%)が好ましく、2〜4%がより好ましい。
【0041】
微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆してなる微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に、ジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を同時に沈着させるには、上記微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液に、水溶性ジルコニウム化合物および水溶性アルミニウム化合物と、中和剤とをpH6〜8に保って添加すればよい。
【0042】
ただし、上記のように、ジルコニウムの含水酸化物とアルミニウムの含水酸化物を同時に沈着させるには、添加する水溶性ジルコニウム化合物と水溶性アルミニウム化合物との間で反応を避けるため、水溶性ジルコニウム化合物も水溶性アルミニウム化合物も同じ極性を持つものを使用する必要がある。具体的には、水溶性ジルコニウム化合物のほとんどが酸性のものであるため、水溶性アルミニウム化合物も酸性のものを使用する必要がある。例えば、水溶性ジルコニウム化合物として硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムなどを用い、水溶性アルミニウム化合物としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどを用いればよい。そして、中和剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの塩基性物質を用いればよい。
【0043】
また、水溶性ケイ素化合物、水溶性ジルコニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物などは、いずれも、そのまま添加してよいが、あらかじめ水溶液にしておく方が好ましい。その際の濃度としては、特に限定されるものではないが、いずれも、質量基準で、水溶性ケイ素化合物は5〜15%、水溶性ジルコニウム化合物は5〜20%、水溶性アルミニウム化合物は10〜25%程度が好ましい。また、中和剤も、質量基準で10〜60%程度の水溶液にしておくことが好ましい。
【実施例】
【0044】
つぎに、実施例をあげて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下において水溶液や分散液などの濃度を示す%はいずれも質量基準による%(つまり、質量%)である。
【0045】
実施例1
平均粒子径が30nm(0.030μm)の微粒子二酸化チタン(テイカ社製微粒子二酸化チタン、MT−500H)6kgに、水30リットルを投入し、攪拌して懸濁液とし、攪拌を続けながら、その懸濁液中に、SiOに換算してケイ酸ナトリウムを10%含有するケイ酸ナトリウム水溶液0.9kgおよび濃度が24%の水酸化ナトリウム水溶液を懸濁液のpHが7.0になるように同時に添加することにより、上記微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対してSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆した微粒子二酸化チタン組成物を懸濁液の状態で得た。
【0046】
上記工程を経由することによって得られた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液を、40℃に加熱した後、上記懸濁液のpHが2になるように50%硫酸を添加し、ついで硫酸ジルコニウムをZrOに換算して15%含有する硫酸ジルコニウム水溶液1.2kgを添加し、20%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和することにより、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して3%のジルコニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0047】
つぎに、上記のようにケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物を沈着させることによって得られた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液を40℃に保った状態で、アルミン酸ナトリウムをAlに換算して20%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液0.9kgと50%硫酸とを懸濁液のpHが7.0になるよう同時に添加することにより、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0048】
上記のようにして、ケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させて懸濁液の状態で得られた微粒子二酸化チタン組成物を炉過、洗浄した後、120℃で24時間乾燥した。
【0049】
得られた乾燥物を流体エネルギーミルで粉砕することによって本発明の微粒子二酸化チタン組成物4kgを得た。この微粒子二酸化チタンは、平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対してZrOに換算して3%のジルコニウムの含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させたものである。
【0050】
実施例2
実施例1と同様の平均粒子径30nmの微粒子二酸化チタン6kgに、水30リットルを投入し、攪拌して懸濁液とし、攪拌を続けながら、その懸濁液の中に、中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対し、SiOに換算してケイ酸ナトリウムを10%含有するケイ酸ナトリウム水溶液0.9kgを添加した後、30分後に、濃度24%の水酸化ナトリウム水溶液を懸濁液のpHが7.0になるように添加することにより、上記微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンに対してSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆した微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0051】
以後、実施例1と同様に、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させ、次いで、実施例1と同様に炉過、水洗、乾燥して、目的とする微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0052】
この実施例2の微粒子二酸化チタン組成物は、実施例1の微粒子二酸化チタン組成物と同様に、中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して3%のジルコニウムの含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させたものである。
【0053】
実施例3
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を実施例1と同様にケイ素の含水酸化物で被覆して微粒子二酸化チタン組成物を懸濁液の状態で得た。
【0054】
上記微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液を40℃に保ったまま、アルミン酸ナトリウムをAlに換算して20%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液0.9kgと50%硫酸とを懸濁液のpHが7.0になるように同時に添加して、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0055】
つぎに、上記ケイ素の含水酸化物上にアルミニウムの含水酸化物を沈着させた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液の温度を40℃に保ったまま、上記懸濁液のpHが2になるように50%硫酸を添加し、ついで硫酸ジルコニウムをZrOに換算して15%含有する硫酸ジルコニウム水溶液1.2kgを投入し、20%水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和することにより、ジルコニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0056】
以後、実施例1と同様に、炉過、水洗、乾燥して、平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して3%の含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させた微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0057】
実施例4
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタン6kgに、水30リットルを投入し、攪拌して懸濁液とし、攪拌を続けながら、その懸濁液中に、SiOに換算してケイ酸ナトリウムを10%含有するケイ酸ナトリウム水溶液0.6kgおよび濃度が24%の水酸化ナトリウム水溶液を懸濁液のpHが7.0になるように同時に添加することにより、上記微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対してSiOに換算して1.0%のケイ素の含水酸化物で被覆した微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0058】
以後、実施例1と同様に、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させ、次いで、実施例1と同様に炉過、水洗、乾燥して、目的とする微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0059】
この実施例4の微粒子二酸化チタン組成物は、中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.0%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して3%のジルコニウムの含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させたものである。
【0060】
実施例5
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタン6kgに、水30リットルを投入し、攪拌して懸濁液とし、攪拌を続けながら、その懸濁液中に、SiOに換算してケイ酸ナトリウムを10%含有するケイ酸ナトリウム水溶液3.0kgおよび濃度が24%の水酸化ナトリウム水溶液を懸濁液のpHが7.0になるように同時に添加することにより、上記微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対してSiOに換算して5.0%のケイ素の含水酸化物で被覆した微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0061】
以後、実施例1と同様に、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させ、次いで、実施例1と同様に炉過、水洗、乾燥して、目的とする微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0062】
この実施例5の微粒子二酸化チタン組成物は、中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して5.0%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して3%のジルコニウムの含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させたものである。
【0063】
実施例6
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を実施例1と同様にケイ素の含水酸化物で被覆して微粒子二酸化チタン組成物を懸濁液の状態で得た。
【0064】
上記工程を経由することによって得られた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液を、40℃に加熱した後、上記懸濁液のpHが2になるように50%硫酸を添加し、ついで硫酸ジルコニウムをZrOに換算して15%含有する硫酸ジルコニウム水溶液0.8kgを添加し、20%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和することにより、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して2%のジルコニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0065】
つぎに、上記のようにケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物を沈着させることによって得られた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液を40℃に保った状態で、アルミン酸ナトリウムをAlに換算して20%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液0.9kgと50%硫酸とを懸濁液のpHが7.0になるよう同時に添加することにより、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0066】
以後、実施例1と同様に、炉過、水洗、乾燥して、平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して2%の含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させた微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0067】
実施例7
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を実施例1と同様にケイ素の含水酸化物で被覆して微粒子二酸化チタン組成物を懸濁液の状態で得た。
【0068】
上記工程を経由することによって得られた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液を、40℃に加熱した後、上記懸濁液のpHが2になるように50%硫酸を添加し、ついで硫酸ジルコニウムをZrOに換算して15%含有する硫酸ジルコニウム水溶液1.6kgを添加し、20%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和することにより、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して4%のジルコニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0069】
つぎに、上記のようにケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物を沈着させることによって得られた微粒子二酸化チタン組成物の懸濁液を40℃に保った状態で、アルミン酸ナトリウムをAlに換算して20%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液0.9kgと50%硫酸とを懸濁液のpHが7.0になるよう同時に添加することにより、上記微粒子二酸化チタン組成物のケイ素の含水酸化物上に中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させた。
【0070】
以後、実施例1と同様に、炉過、水洗、乾燥して、平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に上記中核となる微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して4%の含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物を沈着させた微粒子二酸化チタン組成物を得た。
【0071】
比較例1
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆することなく、その微粒子二酸化チタンの粒子表面に実施例1と同様にジルコニウムの含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物を沈着させて微粒子二酸化チタン組成物とした。
【0072】
つまり、この比較例1の微粒子二酸化チタン組成物では、中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面にケイ素の含水酸化物の被覆層がなく、上記微粒子二酸化チタンの粒子表面に直接、上記微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して3%のジルコニウムの含水酸化物およびAlに換算して3%のアルミニウムの含水酸化物が沈着している。
【0073】
比較例2
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を実施例1と同様にケイ素の含水酸化物で被覆した後、ジルコニウムの含水酸化物を沈着させなかった以外は、実施例1と同様にアルミニウムの含水酸化物を沈着させて、微粒子二酸化チタン組成物とした。
【0074】
つまり、この比較例2の微粒子二酸化チタン組成物では、中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆しているものの、そのケイ素の含水酸化物上にジルコニウムの含水酸化物を沈着させることなく、微粒子二酸化チタンの質量に対しAlに換算してアルミニウムの含水酸化物を沈着させている。
【0075】
比較例3
実施例1と同様の平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの粒子表面を実施例1と同様にケイ素の含水酸化物で被覆した後、そのケイ素の含水酸化物上に実施例1と同様にジルコニウムの含水酸化物を沈着させて、微粒子二酸化チタン組成物とした。
【0076】
つまり、この比較例の微粒子二酸化チタン組成物では、中核となる微粒子二酸化チタンの粒子表面を上記微粒子二酸化チタンの質量に対しSiOに換算して1.5%のケイ素の含水酸化物で被覆し、そのケイ素の含水酸化物上に微粒子二酸化チタンの質量に対しZrOに換算して3%のジルコニウムの含水酸化物を沈着させているものの、アルミニウムの含水酸化物は沈着させていない。
【0077】
つぎに、上記実施例1〜7で得られた微粒子二酸化チタン組成物および比較例1〜3で得られた微粒子二酸化チタン組成物の水分散性、光透過性、耐候性および耐光変色性を調べた。その結果をそれらの試験方法と共に以下に示す。
【0078】
(1)水分散性
次段落に詳細を示す水性アクリル樹脂30.8g(ただし、固形分としては、18.48g)にジメチルアミノエタノール0.85gを添加して中和し、脱イオン水36.15gを投入し、かきまぜて、あらかじめ水性アクリル樹脂溶液を調製し、この水性アクリル樹脂溶液に、上記実施例1〜7および比較例1〜3で得られた微粒子二酸化チタン組成物をそれぞれ別々に20gずつ投入し、0.8mmジルコンビーズとともにペイントコンディショナーで2時間分散した。そのときの分散液の組成(ただし、ジルコンビーズを除く)は、次段落に示すとおりである。上記分散後のミルベース(分散液)を水で1000倍に希釈した後、厚さ1cmの石英セルに入れ、液の透明性を直読ヘーズコンピューター(スガ試験機社製HDM−2DP型)でHaze(%)として測定し、それを各微粒子二酸化チタンの組成物における水分散性の指標とした。その結果を後記の光透過率の測定結果と共に表1に示す。なお、次段落に示す水性アクリル樹脂の説明中のNVは不揮発成分であり、上記ヘーズコンピューターによる測定は、JIS K 7105に記載の方法に基づいて行われ、そのHaze(%)は拡散光透過率(Td)/全光線透過率(Tt)×100で求められたものである。
【0079】
微粒子二酸化チタン組成物 20 g
水性アクリル樹脂 30.8 g
(三井化成社製アルマテックスWA911 NV60%)
ジメチルアミノエタノール 0.85g
脱イオン水 36.15g
【0080】
(2)光透過性
光透過率の測定にあたっての塗料調製条件、塗膜作製条件、光透過率の測定条件および測定結果を以下に示す。
【0081】
(2)−1 塗料調製条件
下記の配合割合で各材料を内容積225mlの瓶中に仕込み、ペイントシェーカーで2時間分散して、塗料を調製した。なお、この塗料の調製にあたって用いるジルコンビーズの後の括弧内の数値はジルコンビーズの直径を示している。
【0082】
微粒子二酸化チタン組成物 20.0g
水性アクリル樹脂 18.5g
(三井化成社製アルマテックスWA911 NV60%)
中和剤 0.4g
(シグマアルドリッチ社製 ジメチルアミノエタノール)
純水 36.6g
ジルコンビーズ(0.8mm) 250.0g
【0083】
(2)−2 塗膜作製条件
上記塗料をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム〔東レ社製ルミラー(商品名)〕にバーコータ#22で乾燥後の塗膜厚みが15μmになるように塗布した後、10分間室温でセッティングし、その後、140℃で30分間焼き付けして、塗膜を硬化させた。
【0084】
(2)−3 光透過率の測定条件
上記塗膜を分光光度計(日立計測器社製UV−3300)を用い、350〜750nmの波長における光透過率を測定し、400〜700nmの波長の光透過面積を求め、その光透過面積で光透過性の良否の判定を行った。その結果を水分散性の測定結果と共に表1に示す。
【0085】
【表1】


【0086】
上記表1中の水分散性を示す「Haze(%)」は数値の小さい方が水分散性が優れていることを示すが、表1に示すように、実施例1〜7は、比較例1〜3に比べて、水分散性を示す「Haze(%)」値が小さく、水分散性が優れていた。また、上記表1中の光透過面積は数値が大きいほど光透過性が優れていることを示すが、表1に示すように、実施例1〜7は、比較例1〜3に比べて、光透過面積が大きく、光透過性が優れていた。特に、比較例3は、後述の屋外暴露時の耐候性試験では実施例のものより良好な耐候性を示す場合があるが、この水分散性や光透過性を示す試験での成績は悪く、水分散性や光透過性が実施例のものに比べて大幅に劣っていた。
【0087】
(3)耐候性および耐光変色性試験
耐候性および耐光変色性を調べるにあたっての塗料調製条件、塗膜作製条件、塗膜の暴露条件、塗膜の光沢測定条件、塗膜の色差測定条件、耐候性および耐光変色性試験の結果を以下に示す。なお、この耐候性および耐光変色性試験では、本発明の微粒子二酸化チタン組成物が顔料級二酸化チタンに対してどの程度の耐候性および耐光変色性を有するかを明らかにするために、対照例1として平均粒子径0.27μmの顔料級二酸化チタン〔テイカ社製JR−701(商品名)〕の耐候性および耐光変色性について試験した結果についても併せて示す。
【0088】
(3)−1 塗料調製条件
(a)下記配合割合で各材料を内容積225mlの瓶中に仕込み、ペイントシェーカーで2時間分散して、ミルベースを調製した。なお、このミルベースや後記の塗料の調製に用いる樹脂はいずれも水性樹脂である。
【0089】
微粒子二酸化チタン組成物 8.0g
アクリル樹脂 16.0g
(大日本インキ化学工業社製 47−712 NV50%)
混合溶剤 24.0g
(トルエン/キシレン/酢酸エチル/ブチセロソルブ=5/2/2/1
各溶剤共 シグマアルドリッチ社製)
ジルコンビーズ(0.8mm) 250.0g
【0090】
(b)上記(a)で得られたミルベースに、さらに下記の割合で樹脂、溶剤、添加剤を加え、混合して塗料を調製した。
【0091】
アクリル樹脂 9.6g
(大日本インキ化学工業社製 47−712 NV50%)
メラミン樹脂 5.3g
(大日本インキ化学工業社製 L−117 NV60%)
混合溶剤 5.1g
(トルエン/キシレン/酢酸エチル/ブチセロソルブ=5/2/2/1
各溶剤共 シグマアルドリッチ社製)
1%シリコン 0.3g
(KP322 信越シリコーン社製トルエンにて1%に希釈)
【0092】
(3)−2 塗膜作製条件
上記(3)−1で調製した水性塗料に純水を加え、フォードカップNo.4で20秒に調整し、それを処理鋼板上に乾燥時の塗膜の厚みが40μmになるようにスプレー塗装し、30分間室温でセッティングした後、140℃で30分間焼き付けして、塗膜を硬化させた。
【0093】
(3)−3 暴露条件
上記のように処理鋼板上に塗膜を形成した試験板を下記の条件で促進暴露および屋外暴露した。
【0094】
(a)促進暴露条件
イ.試験機
サンシャイン・スーパーロングライフ・ウエザオメータWEL−SUN−HCH型(スガ試験機社製、商品名)
【0095】
ロ.運転条件
試験槽温度 40℃
ブラックパネル温度 63±3℃
降雨時間 18分
周期 120分
1サイクル 60時間
シャワー水 イオン交換水
【0096】
(b)屋外暴露条件
暴露地 岡山市
暴露条件 南面30度
パネル洗浄 1カ月毎
【0097】
(3)−4 光沢測定条件
グロスメーター〔スガ試験機社製UGV−4D(商品名)〕により、暴露前後の塗膜の20°−20°の鏡面反射光沢値(促進暴露時)および60°−60°鏡面反射光沢値(屋外暴露時)を測定し、下記の式により光沢保持率を求めた。
【0098】


【0099】
この光沢保持率が大きいほど、耐候性が優れていることを示す。
【0100】
(3)−5 色差測定条件
色差計〔スガ試験機社製SM−5(商品名)〕により、暴露前後の塗膜のL、a、b値を測定して、△Eを算出し、耐光変色性の評価をする。 なお、△E値は下記の式によって算出されるものであり、式中のL、a、b値は暴露前の測定値で、L、a、b値は暴露後の測定値である。この△E値が小さいほど、耐光変色性が良好であることを示す。
【0101】


【0102】
(3)−6 耐候性および耐光変色性試験結果
促進暴露時の耐候性および耐光変色性の試験結果を表2に示し、屋外暴露時の耐候性試験結果を表3に示す。
【0103】
【表2】


【0104】
【表3】


【0105】
比較例1〜3も、微粒子二酸化チタンの粒子表面にジルコニウムの含水酸化物やアルミニウムの含水酸化物を沈着させたり、微粒子二酸化チタンの粒子表面をケイ素の含水酸化物で被覆した後、そのケイ素の含水酸化物上に、アルミニウムの含水酸化物またはジルコニウムの含水酸化物のいずれか一方を沈着させていることから、本来、微粒子二酸化チタン組成物としての優れた耐候性、耐光変色性を有するものであるが、表2に示すように、促進暴露時の耐候性試験では、実施例1〜7は、比較例1〜3より、光沢保持率が高く、対照例1の顔料級二酸化チタンに比べても、高い光沢保持率を有していた。つまり、実施例1〜7の微粒子二酸化チタン組成物は、比較例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物や対照例1の顔料級二酸化チタンよりも、促進暴露時の耐候性が優れていた。なお、比較例2は、耐光変色性こそ実施例のものに比べてそれほど劣っていないものの、600時間暴露後の光沢保持率が低く、耐候性が実施例のものに比べて大きく劣っていた。
【0106】
また、耐光変色性試験においても、実施例1〜7は、比較例1〜3や対照例1より、△E値が小さく、実施例1〜7の微粒子二酸化チタン組成物は、比較例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物や対照例1の顔料級二酸化チタンよりも、耐光変色性が優れていた。
【0107】
さらに、表3に示すように、屋外暴露時の耐候性試験においても、実施例1〜4と、実施例6〜7は、暴露期間が長くなると、比較例1〜3より光沢保持率が高く、これら比較例1〜3に比べても、耐候性が優れていた。ただ、実施例5は、比較例2に比べると光沢保持率が高いものの、比較例1や比較例3とでは、同等ないし若干低い光沢保持率しか持ち得なかったが、これら比較例1や比較例3も、元々、耐候性が優れていることを考えあわせると、優れた耐候性を保持していると言える。
【0108】
つぎに、上記実施例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物の分光曲線を、その中核となる平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンの分光曲線と対比しつつ示し、実施例1〜3の紫外線吸収性や透明性について言及する。
【0109】
比較例4
上記平均粒子径が30nmの微粒子二酸化チタンを比較例4とし、その分光曲線を実施例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物の分光曲線と共に図1に示す。なお、実施例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物の透過率はほとんど差がなく、それぞれの分光曲線を図示しても、重なってしまうので、図1では、実施例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物の分光曲線を同一の曲線で示し、それに実施例1〜3と付記している。
【0110】
図1に示すように、実施例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物は、比較例4の微粒子二酸化チタンと同様に、400nmより小さい波長領域(つまり、紫外部)では、きわめて小さい透過率しか示さず、微粒子二酸化チタン固有の優れた紫外線吸収性を有していた。ただし、可視部(波長が約400nm以上の部分)では、実施例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物は、比較例4の微粒子二酸化チタンより、透過率が大きく、透明性が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実施例1〜3の微粒子二酸化チタン組成物と比較例4の微粒子二酸化チタンの分光曲線を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
【出願日】 平成18年9月12日(2006.9.12)
【代理人】 【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄

【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹


【公開番号】 特開2008−69193(P2008−69193A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−246576(P2006−246576)