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【発明の名称】 ファーネスカーボンブラックおよびそれを用いたゴム組成物
【発明者】 【氏名】前田 光明

【氏名】豊澤 真一

【氏名】武市 秀雄

【氏名】加藤 信子

【氏名】西脇 勝也

【要約】 【課題】経済性を悪化させることなく、熱伝導性および電気伝導性に優れた特性を付与しうる充填剤、および、これを用いたゴム組成物を提供する。

【構成】平均一次粒子径が10〜70nmであってかつ、アグリゲートの円換算平均径(De)が50〜500nmであるファーネスカーボンブラックである。また、充填剤として、このファーネスカーボンブラックを、ゴム成分100重量部に対し0.1〜100重量部含有するゴム組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が10〜70nmであってかつ、アグリゲートの円換算平均径(De)が50〜500nmであることを特徴とするファーネスカーボンブラック。
【請求項2】
アグリゲートの平均アスペクト比が2〜5である請求項1記載のファーネスカーボンブラック。
【請求項3】
BET法による窒素吸着比表面積が30〜200m2/gである請求項1または2記載のファーネスカーボンブラック。
【請求項4】
水銀圧入法により測定されたカーボンブラック空隙容積が200〜500cm3/100gである請求項1〜3のうちいずれか一項記載のファーネスカーボンブラック。
【請求項5】
充填剤として、請求項1〜4のうちいずれか一項記載のファーネスカーボンブラックを、ゴム成分100重量部に対し0.1〜100重量部含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項6】
前記ファーネスカーボンブラック以外の充填剤として、他のカーボンブラックおよび/またはシリカを、ゴム成分100重量部に対し5〜100重量部含有する請求項5記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ファーネスカーボンブラックおよびそれを用いたゴム組成物(以下、単に「組成物」とも称する)に関し、詳しくは、経済性を悪化させることなく、熱伝導性および電気伝導性に優れた特性を付与し得るファーネスカーボンブラックおよびそれを用いたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子部品、タイヤ、ベルト等の各種製品には、その特性に応じて、種々の天然ゴムや各種合成ゴムを基材としたゴム組成物が使用されている。かかる製品の性能や機能は、基材としてのゴム材料と同様に、種々配合されている充填剤等の副資材や加硫条件などによっても大きく影響を受ける。
【0003】
例えば、タイヤ用ゴム組成物の補強効果を得るために、充填剤として種々グレードのHAF,ISAF,SAF等のカーボンブラックを配合して耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウエット・ドライトラクション性等のバランスを満足する加硫ゴム組成物を得ることが広く行われている。
【0004】
また、ゴム組成物に、炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ等の繊維状カーボン、ナノカーボンを補強剤の一部として、または全部として配合して熱伝導性、電気伝導性に富む加硫ゴム組成物を得ることも知られている。例えば、特許文献1では、比較的少量の添加によっても高い効果を発現し、かつ、力学物性などの他の性能に悪影響を及ぼさない気相成長炭素繊維を充填剤として使用することにより、バランスのとれた諸物性を有する加硫ゴム組成物が報告されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】WO03/050181号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来知られている充填剤においては、高い熱伝導性および電気伝導性の効果を得るためには充填剤の配合量を増大するしかなく、また、比較的少量の添加によっても高い効果を発現し得る充填剤は経済性の面で実用化には問題があり、例えば、特許文献1記載の気相成長炭素繊維は、1万円/kg以上と高価であった。
【0006】
そこで本発明の目的は、経済性を悪化させることなく、熱伝導性および電気伝導性に優れた特性を付与し得る充填剤を提供することにあり、また、これを用いることで優れた熱伝導性および電気伝導性を備えるゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ファーネス法カーボンブラック反応炉を用いて合成される超長連鎖カーボンを充填剤としてゴム組成物に配合することにより上記目的を達成し得ることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のファーネスカーボンブラックは、平均一次粒子径が10〜70nmであってかつ、アグリゲートの円換算平均径(De)が50〜500nmであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明のファーネスカーボンブラックにおいては、アグリゲートの平均アスペクト比が2〜5であることが好ましく、BET法による窒素吸着比表面積(以下、「N2SA」という。)は、好適には30〜200m2/gであり、さらに、水銀圧入法により測定されたカーボンブラック空隙容積は、好適には、200〜500cm3/100gである。
【0010】
また、本発明のゴム組成物は、充填剤として、上記本発明のファーネスカーボンブラックを、ゴム成分100重量部に対し0.1〜100重量部含有することを特徴とするものである。本発明のゴム組成物においては、前記ファーネスカーボンブラック以外の充填剤として、他のカーボンブラックおよび/またはシリカを、ゴム成分100重量部に対し5〜100重量部含有することが好ましい。
【0011】
なお、カーボンブラックのアグリゲートは、カーボンブラックの生成過程においてカーボンブラックの一次粒子が融着結合して3次元的に連繋した複雑な形態を有する粒子凝集体であり、アグリゲートの円換算平均径(De)は1000個のアグリゲートについて求めた2次元投影像の投影面積を円に換算して測定される算術平均径である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経済性を悪化させることなく、熱伝導性および電気伝導性に優れた特性を付与し得るファーネスカーボンブラックおよびこれを用いたゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
本発明の加硫ゴム組成物は、ゴム材料を基材とし、充填剤として本発明のファーネスカーボンブラックを含有する。充填剤として、かかる特定構造を有するファーネスカーボンブラックを用いたことにより、経済性を悪化させることなく、導電性に優れ、そのゴム組成物も従来のカーボン配合ゴム組成物では得られない熱伝導性、導電性を示す。
【0014】
本発明のファーネスカーボンブラックは、特開2005−272729号公報の図1および2で示されたファーネス法カーボンブラックの反応炉を用い、当該公報において定義されたプロセスパラメータ、ファーネスカーボンブラックが生成反応において受けた熱履歴の大きさの指標であるα(原料炭化水素が導入されてから急冷媒体導入までに受ける熱履歴)とβ(急冷媒体導入から反応停止帯域通過までに受ける熱履歴)を適切に制御することにより生産されたストラクチャー(連鎖)が際立って発達した粒子状カーボンであり、HAFカーボンブラックの2〜5倍のアグリゲート連鎖長を有する。即ち、かかるファーネスカーボンブラックは、平均一次粒子径10〜70nm、好ましくは10〜40nmである。この平均一次粒子径が10nm未満であるとゴム中での分散が困難となり、組成物の物性バランスを欠くとともに、物理的特性の低下を招く。また一方、70nmを超えるとゴムへの補強性が不足し、100%モジュラスや破壊強度の低下を招く。また、アグリゲートの円換算平均径(De)は50〜500nm、好ましくは70〜400nmであると、より良好な熱伝導特性が得られる。この値が50nm未満であると熱伝導性の低下を招き、一方、500nmを超えると混練り作業性および物性バランスの低下を引き起こす。
【0015】
さらに、かかるファーネスカーボンブラックのアグリゲートの平均アスペクト比は、所期の効果を得る上で、好ましくは2〜5である。同様に、N2SAは、好ましくは30〜200m2/gであり、さらに、水銀圧入法により測定されたカーボンブラック空隙容積は、好ましくは200〜500cm3/100gである。
【0016】
本発明のファーネスカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100重量部に対し、0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部である。この配合量が0.1重量部未満であると本発明の所望の効果が十分に得られず、一方、100重量部を超えて配合しても、所期の性能のさらなる向上効果は発現しにくい一方、混合や成型等における作業性が低下するため、いずれにおいても好ましくない。
【0017】
本発明のゴム組成物においては、充填剤として、本発明の前記ファーネスカーボンブラックのみを用いてもよいが、目的とする性能により、他のカーボンブラックおよび/またはシリカをゴム成分100重量部に対し5〜100重量部含有させることができる。この他のカーボンブラックとしては、HAF級のものなど公知のものを使用することができる。具体的には例えば、本発明のファーネスカーボンブラック30重量%に対し、従来のHAF級カーボンブラック70重量%を用いた充填剤とすることも可能である。
【0018】
本発明において使用し得るゴム材料としては、天然ゴム、汎用合成ゴム、例えば、乳化重合スチレン−ブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、高シス−1,4ポリブタジエンゴム、低シス−1,4ポリブタジエンゴム、高シス−1,4ポリイソプレンゴム等、ジエン系特殊ゴム、例えば、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム等、オレフィン系特殊ゴム、例えば、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等、その他特殊ゴム、例えば、ヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム等を挙げることができる。コストと性能とのバランスから、好ましくは、天然ゴムまたは汎用合成ゴムである。
【0019】
本発明に係るゴム材料は加硫して使用するものであり、架橋方法としては、イオウ、過酸化物、金属酸化物等を添加して加熱により架橋させる方法や、光重合開始剤を添加して光照射により架橋させる方法、電子線や放射線を照射して架橋させる方法等が挙げられる。
【0020】
本発明の加硫ゴム組成物は、他の物性を大きく変化することなく、また、成型加工性も損なうことなく、熱伝導性、電気伝導性などの特性の大幅な向上が可能となるために、電気電子部品、タイヤ、ベルト、その他各種製品に幅広く使用することが可能である。尚、本発明の加硫ゴム組成物には、ゴム業界で一般に使用されている添加剤、例えば、加硫剤、加硫促進剤、補強剤、老化防止剤、軟化剤等、通常のゴム用添加剤を適宜使用することが可能である。
【0021】
尚、ゴム組成物の混合、成型などの手法としては、通常の加硫ゴムの混合、成型に使用される公知の手法を用いることができ、特に制限はない。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
(カーボンブラックの製造)
特開2005−272729号公報(出願人:旭カーボン株式会社)において開示されたものと同様の構造の反応炉を用い、下記表1に示す製造条件に従って、カーボンブラックB,Cを製造した。より具体的には、反応後期において反応温度を通常よりも低温となし、かつ、この温度で反応停止までの時間を大きくとることにより、目的とするファーネスカーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックB,Cのコロイダル特性を、市販のカーボンブラックA(旭♯70(HAF級グレード;旭カーボン(株)製)のコロイダル特性とともに、下記の表2中に示す。
【0023】
【表1】


【0024】
【表2】


【0025】
本発明に記載のカーボンブラックの物理化学特性は、次の方法により測定される。
【0026】
(1)N2SA(窒素吸着比表面積)
JIS K6217−2:2001に記載の方法で測定され、単位重量当りの比表面積(m2/g)で表示される。
(2)水銀圧入法によるカーボンブラック空隙容積
使用装置:ポアサイザー9320(島津製作所(株)製)
測定条件:カーボンブラック試料に対し、1〜30,000psiの圧力で水銀を圧入しながら圧力に対する水銀圧入量を測定する。この容積のうち、14〜30,000psiに対応する細孔容積の総和を空隙容積とする。
(3)平均粒子径、円換算平均径および平均アスペクト比
「ASTM D3849−カーボンブラックの標準試験法−電子顕微鏡法による形態的特徴付け」に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、この画像をもとに次の各特性i)〜iii)を算出する。
使用装置:透過型電子顕微鏡(JEM−100CX、日本電子(株)製)
加圧電圧:80kV
撮影倍率:10,000倍
画像解析ソフト:ルーゼックスFS((株)ニレコ製)
i)平均一次粒子径:
撮影アグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、平均値を求めて平均一次粒子径とする。
ii)アグリゲート円換算平均径:
個々のアグリゲートの撮影面積(ASTM D3849でのパラメータ表示でA、nm2)を測定し、この面積と等価円の直径をアグリゲート円換算径として求める。1,000個のアグリゲートについて測定し、平均してアグリゲート円換算平均径とする(ASTM D3849でのパラメータ表示でD、nm)。
iii)アスペクト比:
個々のアグリゲート投影画像において、周上の2点間で最大の長さ(ML)と、このLとの平行線で挟まれた画像の最短距離(BD)を求め、ML/BDの比をアスペクト比とする。
【0027】
(ゴム組成物の調製)
上記表2に示したファーネスカーボンブラックA〜Cを用いて、下記の表3に示す配合割合でゴム組成物を調製して、以下に示す混練り条件およびシート作製条件に従って特性評価用の加硫ゴム組成物のシートを作製した。なお、下記の表3中の配合量は全て重量部を表す。
【0028】
【表3】


【0029】
混練り条件
ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて、NRを70℃にて50rpmで3分間素練りした後、上記表3中に示す、加硫促進剤および硫黄を除く各添加剤を投入して、70℃にて30rpmで更に混合した(ノンプロ配合)。得られた混合物を取り出して、冷却、秤量した後、残りの加硫促進剤および硫黄を投入し、プラベンダーを用いて、50℃にて30rpmで再度混合した(プロ配合)。
【0030】
シート作製条件
混練りした混合物を、高温プレスを用いて150℃×15分にて加硫して、1mm厚の加硫ゴムシートを作製した。
【0031】
物性評価
JIS K6300−2に準拠して、レオメーターを用いて150℃における各ゴム組成物の加硫特性を試験した。具体的には、トルクの最大値(F−max)及び最小値(F−min)、並びに{(Fmax−Fmin)×0.9+Fmin}のトルクに達するまでの時間(T0.9)を求めた。
また、得られた各加硫ゴム組成物のシートについて、破断強度(Tb)、破断伸び(Eb)および100%伸張時のモジュラス(100Mod)は、JIS K6251−1993に準拠して23℃で測定した。さらに、熱伝導率については、京都電子(株)製 迅速熱伝導率計QTM−500を用いて測定した。この結果を下記の表4に示す。
【0032】
【表4】


【0033】
上記表4の結果から、実施例1〜4のゴム組成物は比較例のゴム組成物に比し、引張物性に若干の低下は見られるものの、同等の加硫特性にて熱伝導性能が大幅に向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のゴム組成物は、電気電子部品、タイヤ、ベルト、その他各種製品に幅広く使用することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【識別番号】000116747
【氏名又は名称】旭カーボン株式会社
【出願日】 平成18年8月30日(2006.8.30)
【代理人】 【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎

【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子


【公開番号】 特開2008−56781(P2008−56781A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−234396(P2006−234396)