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【発明の名称】 炭素微小球の製造装置
【発明者】 【氏名】土屋 正勝

【要約】 【課題】粒径分布が狭く、均一性の高い炭素微小球を簡易な手段で生産性良く、能率的に製造することのできる炭素微小球の製造装置を提供すること。

【構成】原料炭化水素ガスとキャリアガスとの混合ガスを外熱式熱分解炉に導入して原料炭化水素ガスを炭素微小球に熱分解する製造装置において、外熱式熱分解炉の前段に(1)混合ガス導入口が2個以上設けられ、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料炭化水素ガスとキャリアガスとの混合ガスを外熱式熱分解炉に導入して原料炭化水素ガスを炭素微小球に熱分解する製造装置において、外熱式熱分解炉の前段に、
(1)混合ガス導入口が2個以上設けられ、
(2)外熱式加熱炉の内径dより大きい内径Dを有し、
(3)縮流部を介して外熱式熱分解炉と連結され、
(4)原料炭化水素ガスが熱分解する温度より低い温度に制御され、
た混合ガスの整流装置を設けることを特徴とする炭素微小球の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池の負極材、電子ペーパーやブラックマトリックスなどに用いられるインク用黒色顔料、あるいは触媒担体などに利用される、粒子径範囲が数十〜数百nmで粒子の凝集構造が小さく、また凝集粒子の分布幅が狭く、均一な粒径分布を有する炭素微小球の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素微小球としてはカーボンブラックがあり、カーボンブラックはタイヤ用をはじめゴムの補強材として大量に消費されており、その他に着色剤、顔料、塗料などの用途に広く使用されている。カーボンブラックの種類としては、一般的に製法から分類され、原料炭化水素の不完全燃焼法と熱分解法とに大別され、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどがある。
【0003】
オイルファーネスブラックは炭化水素原料油を用い、特殊な反応炉に液状あるいはガス状の燃料と過剰の空気を導入して完全燃焼させ、形成した高温の燃焼ガス中に炭化水素原料油を噴霧して一部の原料油を燃焼させるとともに、残りの大部分の炭化水素原料油をカーボンブラックと水素とに熱分解するものである。
【0004】
このオイルファーネスブラックは、その生成過程から微球状の基本粒子が不規則に鎖状に枝分かれした複雑な凝集構造を呈しており、通常、数個から数十個の基本粒子が融着結合した三次元構造体からなり、この三次元構造体をストラクチャーと称し、DBP吸収量でその大きさを評価している。
【0005】
この凝集構造を解き、ストラクチャーを構成する個々の基本粒子に分離することは、基本粒子が強固に融着結合している関係で極めて困難であり、オイルファーネスブラックを利用して微細で単一球の粒子形状の炭素球を得ることは不可能である。
【0006】
また、炭化水素原料を熱分解して得られるサーマルブラックは耐火れんがをチェッカー状に積んだ蓄熱室式の分解炉を用い、天然ガスを原料として炭素と水素に熱分解するもので、大粒子径でストラクチャーの発達が小さい、すなわち、カーボンブラック粒子の凝集構造が小さい点に特徴がある。
【0007】
一方、インキ、塗料などの顔料として有用されているチャンネルブラックは、微粒であるがストラクチャーが高く、多数の粒子が結合した大きな凝集構造体を特徴とし、単一な炭素微小球とは著しく異なるものである。
【0008】
このような粒子性状に特徴を有するカーボンブラック、例えば、サーマルブラックをオイルファーネス法の製造技術を応用して製造することができれば極めて有用である。そこで、本出願人はサーマルブラック相当の粒子性状を有するカーボンブラックの製造技術として、吸熱反応で熱分解するガス状の炭化水素を原料として、該原料ガスを5〜50vol%の供給濃度で還元雰囲気に保持された外熱式反応炉に送入し、ガス流がレイノルズ数2300以下の層流状態で1400℃以上の温度で熱分解する製造方法(特許文献1)を開発した。
【0009】
しかし、この製造技術により得られるカーボンブラックは原料ガスの線速度が速いために生成粒子が衝突合体し、比表面積が低い性状となるものの、凝集粒子が発達し易く、またこの方法は熱分解温度が高いうえに、低温では生成収率が低下する難点もある。その改良技術として常温で液体または固体の炭化水素原料を加熱気化して、気化した炭化水素原料ガスをキャリアガスとともに0.01〜2.0vol%のガス濃度で無酸素雰囲気に保持された外熱式熱分解炉に導入し、1000〜1400℃の温度に加熱して熱分解させる製造方法(特許文献2)を提案した。しかし、この方法はガス濃度が低いので生産性が低く、また粒子凝集体の粒度分布がブロード化する難点がある。
【0010】
そこで、本出願人はこれらの難点を改善するために炭化水素ガスを水素ガスとともに熱分解炉の予熱帯域に導入し、引き続く加熱帯域において炭化水素ガス濃度を0.01〜40vol%、レイノルズ数1〜20、温度1100〜1300℃の条件で熱分解した後、得られた炭素球を、更に無酸素雰囲気中で600〜2000℃の温度で熱処理する炭素微小球の製造方法、および、この製造方法により製造される電子顕微鏡による算術平均粒子径dnが20〜150nm、そのばらつき度合いを示すs/dnが0.1〜0.3(sはdnの標準偏差)、粒子凝集体の大きさを示すストークスモード径Dstとdnとの比
Dst/dnが1.2以下の粒子性状を備える炭素微小球(特許文献3)を開発、提案した。
【特許文献1】特開平07−034001号公報
【特許文献2】特開平10−168337号公報
【特許文献3】特開2004−211012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3は水素ガスをキャリアガスとして用いて原料炭化水素ガスとともに熱分解炉に供給して、水素ガスにより炭化水素ガスの熱分解反応を抑制することにより炭化水素ガスを比較的低温で緩やかに熱分解させて、炭素微小球の生成過程における反応中間生成物相互の衝突機会を抑制することにより、粒度分布がシャープで粒子の凝集構造が小さい、炭素微小球を製造するものである。
【0012】
しかし、この場合、製造能率を上げるために原料炭化水素ガスの導入量を増やしていくと、製造される炭素微小球の粒径分布が拡大し、粒径の均一性が損なわれる問題が生じた。これは熱分解炉内における原料炭化水素ガスの不均一性が増大することによるものである。
【0013】
すなわち、原料炭化水素ガスの導入量の増大に伴い、熱分解炉の断面における原料炭化水素ガスの流速の分布およびガス濃度の不均一性が大きくなり、熱分解炉内の滞留時間差が大きくなるので、熱分解反応が均一に行われなくなるのが主因と想定される。
【0014】
この原因を排除するためには、例えば、熱分解炉の入り口に網状板や多孔板を設けて、原料炭化水素ガスを分散導入することによりガス流速やガス濃度の均一化を図る方法も考えられるが、炭化水素ガスが熱分解して炭素物を生成する過程においては中間物質としてタール状の物質が生成し易いので、網目や多孔部にこれらの物質が付着し、目詰まりや閉塞を起こす問題があるため、適切ではない。更に、圧力損失やメンテナンス上の問題も生じる。
【0015】
そこで、本発明は、これらの問題点の解消を図り、粒径分布が狭く、均一性の高い炭素微小球を簡易な手段で生産性良く、能率的に製造することのできる炭素微小球の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明により提供される炭素微小球の製造装置は、原料炭化水素ガスとキャリアガスとの混合ガスを外熱式熱分解炉に導入して原料炭化水素ガスを炭素微小球に熱分解する製造装置において、外熱式熱分解炉の前段に、
(1)混合ガス導入口が2個以上設けられ、
(2)外熱式熱分解炉の内径dより大きい内径Dを有し、
(3)縮流部を介して外熱式熱分解炉と連結され、
(4)原料炭化水素ガスが熱分解する温度より低い温度に制御され、
た混合ガスの整流装置を設けることを構成上の特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の炭素微小球の製造装置によれば、原料炭化水素ガスを炭素微小球に熱分解する外熱式熱分解炉の前段に設けた整流装置により、導入される炭化水素ガスが分散され、かつガス流速が低速化するので、熱分解炉で熱分解される分解過程におけるガス流速およびガス濃度を平均化させることができる。
【0018】
その結果、炭化水素ガスの炉内滞留時間差は縮小し、熱分解条件も均等化するので均一な粒径分布をもった炭素微小球の製造が可能となる。また、原料炭化水素ガスの導入量を増加させることもできるので生産性の向上を図ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の炭素微小球の製造装置の外熱式熱分解炉の前段に設けた整流装置と熱分解炉の入り口側の一部の側断面を示した概略図であり、図1において、1は整流装置、2は縮流部、3は外熱式熱分解炉であり、外熱式熱分解炉3は原料炭化水素ガスとキャリアガスとの混合ガスが導入されるその上流側の一部を示したものである。
【0020】
また、L1 は整流装置1の長さ、L2 は縮流部2の長さ、L3 は外熱式熱分解炉3の長さであり、整流装置1の内径をD、外熱式熱分解炉3の内径をdで示した。また、4は整流装置1への原料炭化水素ガスとキャリアガスとの混合ガスの導入口である。
【0021】
本発明の炭素微小球の製造装置は、図1に示したように従来の外熱式熱分解炉3の前段に整流装置1を設け、該整流装置1が、
(1)混合ガス導入口4を2個以上設け、
(2)外熱式加熱炉3の内径dより大きい内径Dを有し、
(3)縮流部2を介して外熱式熱分解炉3と連結され、
(4)原料炭化水素ガスが熱分解する温度より低い温度に制御され、
た構成からなることを特徴とする。
【0022】
原料炭化水素ガスとキャリアガスとの混合ガス導入口4は整流装置1の前面に2個以上設けることが必要であり、その位置は炉軸に対し対象の位置に設けられる。図2は図1に示した整流装置1のA〜A断面を示したもので、2個の混合ガス導入口4を炉軸に対して対象位置に設けた場合であり、また、図3は3個の混合ガス導入口4を炉軸に対して対象位置に設けた場合である。
【0023】
このように混合ガスの導入口4を2個以上設けることにより、整流装置1の断面における混合ガスの流量は均等化されるので混合ガスの流速や濃度が均一化する。その結果、原料炭化水素ガスが熱分解される過程が均等になるので、炭素微小球の凝集体の粒径や粒径分布の均一化が図られることになる。
【0024】
なお、原料となる炭化水素ガスとしてはメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの単環式芳香族炭化水素、ナフタレン、アントラセンなどの多環式芳香族炭化水素などをガス状にして使用される。
【0025】
また、キャリアガスには原料炭化水素ガスの熱分解時に反応せず、安定な、例えば、窒素、あるいは、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの不活性ガス、および、水素ガスなどが用いられる。
【0026】
図1に示すように、整流装置1の内径Dは外熱式熱分解炉3の内径dより大きいことが必要である。すなわち、内径Dを内径dより大きくすることにより、整流装置1内における混合ガスの流速、濃度などをより均一化することができる。
【0027】
この整流装置1は、図1のように緩やかに縮径する縮流部2を介して外熱式熱分解炉3と連結される。縮流部2により原料炭化水素ガスとキャリアガスとの混合ガスは、緩やかにガス流速およびガス濃度を上げながら外熱式熱分解炉3に導入されるので、断面方向における流速および濃度の不均一化が防止され、混合ガスの流速分布や濃度分布が平準化された状態で外熱式熱分解炉3に導入される。
【0028】
また、整流装置1は原料炭化水素ガスが熱分解する温度より低い温度に設定、制御することが必要である。整流装置1内で原料炭化水素ガスの熱分解反応が始まると製造した炭素微小球の粒径が不均一化するためである。
【0029】
このようにして、外熱式熱分解炉3に導入される原料炭化水素ガスとキャリアガスの混合ガスのガス流速およびガス濃度などが均一化されるので、熱分解される炉内滞留時間の不均一化が抑制され、製造される炭素微小球の粒径分布の均一化が図られる。更に、外熱式熱分解炉3に導入する混合ガス量をある程度増やしても、混合ガスのガス流速およびガス濃度の不均一化は防止され、炉内滞留時間の均等化も維持されるので、粒径分布の均一性の高い炭素微小球を生産性高く、能率的に製造することが可能となる。
【実施例】
【0030】
実施例
整流装置1の内径Dが250mm、長さL1 が300mm、外熱式熱分解炉3の内径dが150mm、長さL3 が1500mm、縮流部2の長さL2 が150mmの図1に示した炭素微小球の製造装置を用いて、原料炭化水素ガスとキャリアガスの混合ガスの導入口4を2個使用し、図2に示したように炉軸に対象の位置から整流装置1に導入した。
【0031】
なお、原料炭化水素ガスにプロパンを、キャリアガスに窒素ガスを用い、その混合ガスの流量を15.4Nl/分、混合ガス中のプロパンの濃度を39vol%として、400℃の温度に制御した整流装置1に導入し、縮流部2を介して、電気抵抗加熱により1000℃の温度に制御した外熱式熱分解炉3に導入して熱分解した。次いで、図示しない外熱式熱分解炉3の下流に設置した分離捕集装置により炭素微小球を分離捕集して、炭素微小球を製造した。
【0032】
比較例
実施例において、整流装置1および縮流部2を設けずに、原料炭化水素ガスとキャリアガスの混合ガスを、外熱式熱分解炉3(内径dが150mm、長さL3 が1500mm)の炉軸方向の中心から1個の混合ガス導入口により、直接供給した。なお、その他は実施例と同じ製造条件で炭素微小球を製造した。
【0033】
この炭素微小球の凝集体の大きさ、および、その分布径の拡がりの幅を、下記の方法で測定し、評価した。
【0034】
乾燥した炭素微小球を少量の界面活性剤を含む20vol%エタノール水溶液と混合して炭素分濃度0.1kg/mの分散液を作成し、これを超音波で十分に分散させて試料とする。ディスクセントリフュージ装置(英国Joyes Lobel社製)を100 s−1の回転数に設定し、スピン液(2wt%グリセリン水溶液、25℃)を0.015dm加えた後、0.001dmのバッファー液(20vol%エタノール水溶液、25℃)を注入する。次いで、温度25℃の炭素分散液0.0005dmを注射器で加えた後、遠心沈降を開始し、同時に記録計を作動させて図1に示す分布曲線(横軸;炭素分散液を注射器で加えてからの経過時間、縦軸;炭素試料の遠心沈降に伴い変化した特定点での吸光度)を作成する。この分布曲線より各時間Tを読み取り、次式(数1)に代入して各時間に対応するストークス相当径を算出する。
【0035】
【数1】


【0036】
数1において、ηはスピン液の粘度(0.935×10-3Pa・s)、Nはディスク回転スピード(100s−1)、rは炭素分散液注入点の半径(0.0456m)、rは吸光度測定点までの半径(0.0482m)、ρCBは炭素の密度(kg/m)、ρはスピン液の密度(1.00178kg/m)である。
【0037】
このようにして得られたストークス相当径と吸光度の分布曲線(図2)における最大頻度のストークス相当径をストークスモード径Dst(nm)、最大頻度に対し50%の頻度が得られる大小2点のストークス相当径の差(半値幅)をΔDst(nm)とする。
【0038】
このようにして測定した炭素微小球の平均的粒子凝集体の大きさを示すストークスモード径Dst(nm)と、粒子凝集体の分布幅を示すΔDst(nm)との比、ΔDst/Dstの値で、炭素微小球の凝集体の分布径の拡がりの幅を評価した。すなわち、この値が小さい程、粒径分布が狭く、均一性に優れていることを示す。
【0039】
得られた結果は、
実施例;Dst 220nm、 ΔDst/Dst 0.77
比較例;Dst 220nm、 ΔDst/Dst 0.91
であった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の炭素微小球の製造装置を示した概略図である。
【図2】混合ガス導入口4を2個設けた場合の例示。
【図3】混合ガス導入口4を3個設けた場合の例示。
【図4】Dst測定時における炭素微小球の分散液を加えてからの経過時間と炭素微小球の遠心沈降による吸光度の変化を示した分布曲線である。
【図5】Dst測定時に得られたストークス相当径と吸光度の関係を示す分布曲線である。
【符号の説明】
【0041】
1 整流装置
2 縮流部
3 外熱式熱分解炉
4 混合ガス導入口
D 整流装置の内径
L1 整流装置の長さ
L2 縮流部の長さ
d 外熱式熱分解炉の内径
L3 外熱式熱分解炉の長さ
【出願人】 【識別番号】000219576
【氏名又は名称】東海カーボン株式会社
【出願日】 平成18年8月29日(2006.8.29)
【代理人】 【識別番号】100071663
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 保夫

【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次


【公開番号】 特開2008−56714(P2008−56714A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−231536(P2006−231536)