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【発明の名称】 表面疎水化金属酸化物粉末およびその製造方法
【発明者】 【氏名】東 紀史

【氏名】藤原 進治

【氏名】竹内 美明

【要約】 【課題】ポリマーに充填することにより、その機械的強度をより向上しうる表面疎水化金属酸化物粉末を提供する。

【構成】本発明の表面疎水化金属酸化物粉末は、表面疎水化処理剤の全吸着量(A)に
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粉末の表面に表面疎水化処理剤が吸着されてなり、該表面疎水化処理剤の全吸着量(A)に対する化学吸着量(Ac)の比(Ac/A)で示される化学吸着率が0.5〜0.9であることを特徴とする表面疎水化金属酸化物粉末。
【請求項2】
金属酸化物粉末がアルミニウム酸化物、チタン酸化物またはケイ素酸化物の粉末である請求項1に記載の表面疎水化金属酸化物粉末。
【請求項3】
表面疎水化処理剤が、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤である請求項1または請求項2に記載の表面疎水化金属酸化物粉末。
【請求項4】
表面疎水化処理剤の全吸着量が、金属酸化物粉末100質量部あたり0.05質量部〜5質量部である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面疎水化金属酸化物粉末。
【請求項5】
金属酸化物粉末および表面疎水化処理剤を、振動強度1G以上の条件下に50℃以下の温度を維持しながら乾式混合することを特徴とする請求項1に記載の表面疎水化金属酸化物粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の表面疎水化金属酸化物粉末がポリマー中に分散されてなるポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、表面疎水化金属酸化物粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物粉末は、機械的強度の向上などの目的でポリマーに充填される充填剤として広く用いられており、その表面に表面疎水化処理剤を吸着させた表面疎水化処理金属酸化物粉末も広く用いられている。
【0003】
かかる表面疎水化金属酸化物粉末の製造方法としては、金属酸化物粉末を表面疎水化処理剤と乾式混合する方法が一般的であり、表面疎水化処理剤は、比較的緩やかで脱離し易い物理吸着したものよりも、比較的強固で脱離し難い化学吸着したものが多いほど、機械的強度が向上するものと考えられていた。
【0004】
化学吸着したものがより多い表面疎水化金属酸化物粉末を製造しうる方法としては、例えば特許文献1〔特開昭59−81362号公報の実施例の欄〕に開示されるように、振動強度6Gの条件下に20分以上、乾式混合する方法が挙げられる。同文献には、攪拌時の温度に関する記載はないが、かかる振動強度および攪拌時間で金属酸化物粉末および表面疎水化処理剤を攪拌すると、攪拌開始から短時間で50℃を超える温度に上昇する。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−81362号公報の実施例の欄
【非特許文献1】「粉砕・分級と表面改質」第1版(有限会社エヌジーティー、2001年4月20日発行)第105頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、表面疎水化金属酸化物粉末としては、ポリマーの機械的強度を、より向上させうるものが求められている。
【0007】
そこで本発明者は、ポリマーに充填することにより、その機械的強度を、より向上させうる表面疎水化金属酸化物粉末を提供するべく鋭意検討した結果、振動強度1G以上の条件下に、50℃以下を維持しながら攪拌することにより、化学吸着率0.5〜0.9の表面疎水化金属酸化物粉末が得られ、これをポリマーに充填した組成物は、より高い機械的強度を示すことを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、金属酸化物粉末の表面に表面疎水化処理剤が吸着されてなり、該表面疎水化処理剤の全吸着量(A)に対する化学吸着量(Ac)の比(Ac/A)で示される化学吸着率が0.5〜0.9であることを特徴とする表面疎水化金属酸化物粉末を提供するものである。
【0009】
また本発明は、かかる表面疎水化金属酸化物粉末の製造方法として、金属酸化物粉末および表面疎水化処理剤を振動強度1G以上の条件下に50℃以下の温度を維持しながら乾式混合する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面疎水化金属酸化物粉末は充填剤として有用であり、これをポリマーに充填した組成物は、従来の表面疎水化金属酸化物粉末を充填したものと比べて機械的強度に優れている。また、本発明の製造方法によれば、本発明の表面疎水化金属酸化物粉末を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の表面疎水化金属酸化物粉末を構成する金属酸化物粉末としては、例えばアルミニ
ウム酸化物、チタン酸化物、ケイ素酸化物などの粉末が挙げられる。
【0012】
アルミニウム酸化物の結晶型は特に限定されるものではなく、例えばα型、γ型、θ型などが挙げられ、2以上の結晶型を含んでいてもよい。
【0013】
金属酸化物粉末の平均粒子径は、通常0.1μm〜10μmであり、BET比表面積は通常1m2/g〜20m2/gである。
【0014】
表面疎水化処理剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられ、好ましくはシランカップリング剤である。
【0015】
シランカップリング剤としては、例えばオクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエト
キシシラン、エチルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メ
ルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メタアクリ
ロキシプロピルメトキシシランなどが挙げられる。
【0016】
本発明の表面疎水化金属酸化物粉末は、金属酸化物粉末の表面に表面疎水化処理剤が吸着
されてなるものであり、表面疎水化処理剤の全吸着量(A)は、金属酸化物粉末100質量
部あたり0.05質量部〜5質量部、好ましくは0.1質量部〜3質量部である。
【0017】
本発明の表面疎水化金属酸化物粉末は、化学吸着率が0.5〜0.9、好ましくは0.6〜0.8である。化学吸着率が0.5未満であったり、0.9を超えると、ポリマー中に均一に分散させることが困難となる。
【0018】
本発明の表面疎水化金属酸化物粉末における化学吸着率は、表面疎水化処理剤の全吸着量(A)に対する化学吸着量(Ac)の比(Ac/A)で示される。本発明の表面疎水化金属酸化物粉末の表面に吸着した表面疎水化処理剤には、化学吸着したものと、物理吸着したものとがあるが、全吸着量(A)とは、これら化学吸着した表面疎水化処理剤と物理吸着した表面疎水化処理剤との合計である。全吸着量(A)は、例えば表面疎水化金属酸化物粉末を構成する元素のうち、表面疎水化処理剤を構成し、金属酸化物粉末を構成しない元素の含有量を発光分光法により求め、得られた含有量から算出することができる。
【0019】
化学吸着量(Ac)は、金属酸化物粉末の表面に化学吸着した表面疎水化処理剤の量であり、例えば表面疎水化金属酸化物粉末を溶媒で洗浄することにより、物理吸着した表面疎水化処理剤を除去したのちの、表面疎水化金属酸化物粉末に含まれる表面疎水化処理剤の含有量として求めることができる。洗浄に用いる溶媒としては、表面疎水化処理剤を溶解し得、金属酸化物粉末は溶解しないものが用いられ、通常はメタノール、エタノールなどのアルコール類が用いられる。表面疎水化処理剤の含有量は、上記と同様に発光分光法により求めることができる。
【0020】
かかる本発明の表面疎水化金属酸化物粉末は、金属酸化物粉末および表面疎水化処理剤を振動強度1G以上の条件下に、50℃以下の温度を維持しながら乾式混合する方法により製造することができる。
【0021】
振動強度1G以上で乾式混合するには、例えば振動ミルなどを用いればよく、具体的には、例えば金属酸化物粉末および表面疎水化処理剤を、ボール状の媒体と共に容器に入れた状態で、この容器を振動させればよい。媒体としては、例えばアルミニウム酸化物、チタン酸化物、ケイ素酸化物などのセラミックスからなり直径1mm〜30mm程度のセラミックスボールが使用される。容器を振動させることにより、容器の内部では媒体同士が衝突したり、媒体と容器とが衝突するが、その衝突の衝撃により、金属酸化物粉末および表面疎水化処理剤が攪拌される。
【0022】
振動強度(K)は、容器を振動させる際の振幅(α)および振動角速度(ω)から式(1

K = α・ω2/g(G)・・・(1)
〔式中、gは重力加速度(9.8m/秒2)を示す。〕
により、重力加速度に対する倍率で算出され〔非特許文献1:「粉砕・分級と表面改質」
第1版(有限会社エヌジーティー、2001年4月20日発行)第105頁〕、振動強度
を大きくするには、例えば容器を短い周期で振動させたり、大きな振幅で振動させればよ
い。
【0023】
振動強度が1G未満であると、表面疎水化処理剤の化学吸着率が低くなり、好ましくは5
G以上である。振動強度は通常10G以下である。
【0024】
温度を50℃以下に維持するには、例えば容器を外部から水冷する方法が挙げられる。温
度が50℃を超えると、化学吸着率(Ac)が高くなって化学吸着率(Ac/A)が0.9を超え易くなり、好ましくは45℃以下、通常は20℃以上である。
【0025】
攪拌時間は通常20分〜2時間である。20分未満では化学吸着率が低くなり、2時間を超えると、媒体、容器などに起因する異物が混入し易くなるほか、生産性の点で不利である。
【0026】
混合は、大気中で行われてもよいが、用いる表面疎水化処理剤の種類によっては、窒素ガ
ス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガスなどの不活性ガス中で乾式で混合して
もよい。
【0027】
本発明の表面疎水化金属酸化物粉末は、ポリマーに充填される充填剤として有用である。
樹脂としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴムなどの熱可塑性ポリマー、シリ
コーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性ポリマーなどが挙げられる。
本発明の表面疎水化金属酸化物粉末の充填量は、例えばポリマー100質量部あたり40
質量部〜100質量部である。
【0028】
ポリマーに、本発明の表面疎水化金属酸化物粉末を充填するには、例えばポリマーとして
熱可塑性ポリマーを用いる場合には、加熱溶融状態の熱可塑性ポリマーに本発明の表面疎
水化金属酸化物粉末を加え、溶融混練すればよい。またポリマーが加熱により硬化する熱
硬化性ポリマーである場合には、熱硬化する前の前駆体に、本発明の表面疎水化金属酸化
物粉末を加え、混合したのち加熱すればよい。
【0029】
かくして本発明の表面疎水化金属酸化物粉末をポリマーに充填することにより、ポリマー
中に本発明の表面疎水化金属酸化物粉末が分散されてなるポリマー組成物を得ることがで
きる。この組成物は、その製造時に加熱溶融状態の熱可塑性ポリマーと激しく溶融混練し
たり、熱硬化性ポリマーの前駆体と激しく攪拌しても、機械的強度などに優れている。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって
限定されるものではない。
【0031】
なお、実施例における評価方法は以下のとおりである。
(1)平均粒子径
粒度分布測定装置〔日機装社製「マイクロトラック」〕を用いてレーザー回折法により、
質量基準で累積百分率50%相当粒子径を平均粒子径として測定した。
(2)BET比表面積
BET比表面積測定装置〔島津製作所社製「2300−PC−1A」〕を用いて窒素吸着
法により測定した。
(3)化学吸着率
実施例および比較例で得た表面疎水化金属酸化物粉末に含まれる表面疎水化処理剤の含有量を求め、これを全吸着量(A)とした。また、表面疎水化金属酸化物粉末をメタノールで洗浄したのち、洗浄後の表面疎水化金属酸化物粉末に含まれる表面疎水化処理剤の含有量を求め、これを化学吸着量(Ac)とした。得られた表面疎水化金属酸化物粉末および洗浄後の表面疎水化金属酸化物粉末に含まれる表面疎水化処理剤の含有量は、それぞれ発光分光法により求めた。上記で求めた全吸着量(A)と化学吸着量(Ac)とから、化学吸着率(Ac/A)を算出した。
(4)デュロ強度
JIS K−7215「プラスチックのデュロメーター硬さ」に従って測定した。
【0032】
実施例1
〔表面疎水化アルミニウム酸化物粉末の製造〕
容器を備えた振動ミル〔中央加工機社製「MB」〕の該容器に、アルミニウム酸化物粉末
〔住友化学社製「AKP30」、純度99.99質量%以上のα型アルミニウム酸化物、
平均粒子径0.3μm、BET比表面積7m2/g〕100質量部およびシランカップリング剤〔GE東芝シリコーン社製「A−137」、オクチルトリエトキシシラン〕2.4
質量部を入れ、60分間振動させて混合し、表面疎水化アルミニウム酸化物粉末を得た。
振動強度は、8.16Gであった。なお、用いた振動ミルは、容器の内容積が、アルミニ
ウム酸化物粉末の見掛け容積に対して2.0倍であった。また、媒体としては直径16m
mアルミナボール〔αアルミナ製〕を用いた。混合中、容器は水冷により外部から冷却し
、その内温を28℃〜39℃に保った。
【0033】
得られた表面疎水化アルミニウム酸化物粉末のケイ素含有量を発光分光法により求め、シ
ランカップリング剤の全吸着量(A)を算出したところ、アルミニウム酸化物粉末100質
量部あたり0.21質量部であった。また、この表面疎水化アルミニウム酸化物粉末をメ
タノールで洗浄し、その後、発光分光法によりケイ素含有量を求めて、シランカップリング剤の化学吸着量(Ac)を求めたところ、アルミニウム酸化物粉末100質量部あたり0.13質量部であった。化学吸着率(Ac/A)は0.62である。
【0034】
〔ゴム組成物の製造〕
スチレン−ブタジエン共重合体ゴムに上記で得た表面疎水化アルミニウム酸化物粉末を加え、溶融混練して得られるゴム組成物のデュロ強度は、HDA32であった。
【0035】
比較例1
混合中、容器を外部から冷却することなく、そのままアルミニウム酸化物粉末〔AKP30〕およびシランカップリング剤〔A−137〕を混合する以外は実施例1と同様に操作すると、混合中の容器の内温は50℃を超え、得られる表面疎水化アルミニウム酸化物粉末の化学吸着率(Ac/A)は0.9を超える。
また、実施例1で得た表面疎水化アルミニウム酸化物粉末に代えて上記で得た表面疎水化アルミニウム酸化物粉末を用いる以外は実施例1と同様にして得られるゴム組成物は、実施例1で得たゴム組成物と比較して低いデュロ強度を示す。
【0036】
比較例2
実施例1で得た表面疎水化アルミニウム酸化物粉末を60℃を越える温度に保持することにより、化学吸着率(Ac/A)が0.9を超える表面疎水化アルミニウム酸化物粉末が得られる。実施例1で得た表面疎水化アルミニウム酸化物粉末に代えて、上記で得た表面疎水化アルミニウム酸化物粉末を用いる以外は実施例1と同様に操作して得られるゴム組成物のデュロ強度は、実施例1で得たゴム組成物と比較して低いデュロ強度を示す。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
【出願日】 平成19年6月29日(2007.6.29)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆

【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之


【公開番号】 特開2008−31458(P2008−31458A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−171884(P2007−171884)