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【発明の名称】 耐食金属フレーク顔料の製造方法
【発明者】 【氏名】北川 直明

【要約】 【課題】生産性に優れ、コストのニーズにも対応できる耐食金属フレーク顔料の製造方法を提供する。

【構成】乾式めっき法により、耐塩基性を有する基材の表面に、Al膜を成膜し、Al膜の上に、Ni、CrまたはTiからなる耐食金属膜を成膜し、Al膜および耐食金属膜を基材と共に塩基性溶液に浸漬し、超音波を照射することにより、Al膜を溶解させ、耐食金属膜を基材から剥離し、かつ、破砕する。Al膜と耐食金属膜を順次積層して、複数の耐食金属膜を同時に得ることが可能であり、この際、異なる耐食金属からなる混合フレークを得ることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式めっき法により、耐塩基性を有する基材の表面に、Al膜を成膜し、かつ、Al膜の上に、Ni、CrまたはTiからなる耐食金属膜を成膜し、Al膜および耐食金属膜を基材と共に塩基性溶液に浸漬し、超音波を照射することにより、Al膜を溶解させ、耐食金属膜を基材から剥離し、かつ、破砕することを特徴とする耐食金属フレーク顔料の製造方法。
【請求項2】
乾式めっき法により、耐塩基性を有する基材の表面に、Al膜を成膜し、かつ、Al膜の上に、Ni、CrまたはTiからなる耐食金属膜を成膜し、さらに、Al膜と耐食金属膜を順次成膜して積層し、得られた積層膜を基材と共に塩基性溶液に浸漬し、超音波を照射することにより、Al膜を溶解させ、耐食金属膜を基材から剥離し、かつ、破砕することを特徴とする耐食金属フレーク顔料の製造方法。
【請求項3】
前記積層膜をNi膜、Cr膜およびTi膜から選択される2種以上の膜からなるように成膜することを特徴とする請求項2に記載の耐食金属フレーク顔料の製造方法。
【請求項4】
前記Al膜の厚さを20nm〜100nmとすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の耐食金属フレーク顔料の製造方法。
【請求項5】
前記塩基性溶液として、NaOH溶液を用いることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の耐食金属フレーク顔料の製造方法。
【請求項6】
前記乾式めっき法として、スパッタリング法またはイオンプレーティング法を用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の耐食金属フレークの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品や家電部品などの基材を光輝化するためのメタリック塗装に用いられる耐食金属フレーク顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や家電部品などの基材を光輝化する手段として、湿式めっき、真空蒸着、メタリック塗装がある。このうち、メタリック塗装は、手法が簡便であり、広汎に用いられている。このようなメタリック塗装では、基材を光輝化するために、顔料としてAlフレークを塗料に混入させてメタリック塗料とし、該メタリック塗料を塗布した後、Alフレークを保護するために、その上にクリアコートを塗布する方法が一般的に採られている。
【0003】
メタリック塗装で使用されるAlフレーク顔料を得る方法としては、スタンプミル法、乾式ボールミル法または湿式ボールミル法などを用いて、機械的に金属Alを粉砕する方法が採られている。また、金属Alを真空中で蒸発させる真空蒸着を用いて、基材にAl薄膜を成膜し、該Al薄膜を物理的に基材から掻き落としたり、剥ぎ取ったりして回収し、または、基材に有機塗料を塗布し、該有機塗膜上にAl薄膜を成膜し、前記有機塗料を溶剤で溶出させて、該Al薄膜を基材から回収し、回収したAl薄膜を粉砕する方法も採られている。
【0004】
Alフレークを顔料として使用する利点は、価格が安く、表面反射率が可視光で80%以上と高いことにある。しかしながら、Alフレーク顔料を用いたメタリック塗装は、外観が白っぽく、電気Crめっきのような高級感に欠けるという外観上の欠点を有する。
【0005】
このようなAlフレークを用いたメタリック塗装における外観上の欠点を補うために、特開昭62−13565号公報に記載されているように、黒っぽいアンダーコートを下地として塗布する方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、Alフレークは活性であるため、大気に触れると、表面に酸化物皮膜を形成し、光輝感が失われるだけでなく、酸化物皮膜の成長に伴って、基材と塗膜との密着性(塗膜密着性)が低下する。また、水分を含む環境下では、酸化物皮膜ではなく、水酸化物皮膜がAlフレークの表面に形成される。Alフレークに形成された水酸化物皮膜は、乾燥および加熱により容易に酸化物皮膜となるが、乾燥および加熱により生成した酸化物皮膜には透水性がある。このため、Alフレークを用いる塗膜において、塗膜を通過してきた水分とAlが塗膜内で水和反応を起こし(Alが水分子と結合し)、塗膜の腐食および剥離に至る可能性がある。
【0007】
具体的には、膜厚が0.05μm〜1.0μmであるAl薄膜を、トップコートなしで40℃〜60℃の温水に浸すと、水和反応により、24時間〜100時間で溶解する。また、キャス(CASS)試験(JIS H 8502;50℃に設定された試験槽に、4%の塩水と0.027%の塩化第二銅二水和物の混合液を噴霧して、試験片の腐食性および耐食性を評価する)では、トップコートを塗布していても、トップコートを通じて試験液が浸透し、60時間以上でAl薄膜が溶解する。
【0008】
このような性質を持つAlフレークであるが、保護膜としてのトップコートを厚くした場合や、該トップコートに傷などが生じていない場合には、大きな問題は発生しない。
【0009】
しかし、たとえば、基材に凹凸がある場合に、凹凸の奥まった個所では、基材に形成された保護膜が薄くなる場合がある。このように保護膜が薄い箇所では、酸またはアルカリなどの薬品が保護膜を浸透し、Alフレークを溶解する。また、悪路地帯、海岸地域、凍結防止のために塩を散布する地域、高温多湿な地域などにおいて、Alフレークを用いてメタリック塗装をしたアルミホイールのトップコートに、たとえば、走行中に生じる飛び石により傷が入ったり、清掃中に傷が入ったりすると、Alフレークが外部環境に触れて、傷から塗膜の腐食が始まる。
【0010】
塗膜の腐食がいったん始まり、進行していくと、Alフレークは溶解消失し、アンダーコート層が露出する。アンダーコート層が露出するようになると、本来の光輝面が損なわれるだけでなく、アンダーコートとトップコートとの密着力がなくなり、膨れが発生し、さらに、膨れた箇所を基点として、基材の腐食へと進行する可能性がある。
【0011】
これらの問題に対して、Alフレークの耐食性および耐薬品性を向上させようとする処理方法が、種々、提案されている。しかしながら、Al自体の耐食性および耐薬品性が低いために、大きな効果が得られていないのが実状である。以下に、このような従来の処理方法について示す。
【0012】
(1)特開平11−090318号公報には、Alフレークを燐酸基含有樹脂の上に塗装する方法が記載されている。このように、Alフレークを用いた塗膜を改善するために、特殊な塗装を行っているが、この方法では、作業性が悪く、コスト高になり、広い範囲に塗布する場合には、適用することができないという問題がある。
【0013】
(2)特開平9−122575号公報には、Alフレークが有機溶剤によって変色することを防止するために、有機溶剤に浸漬した後の色変化が、汚染用グレースケールで色票4号以上の色差を有するAlフレークを用いることが記載されている。しかし、得られる塗膜は、Alフレークを含むために、耐薬品性が低いという問題がある。
【0014】
(3)特開平7−150374号公報には、Alフレークに耐食性を付与するために、イットリウムおよび希土類金属などの水溶性金属塩を含む腐食防止剤でAlフレークを処理することが記載されている。しかし、稀少な金属を使用し、複雑な工程を経て、Alフレークが処理されるため、Alフレークがコスト高になるという問題がある。
【0015】
(4)特開平7−133440号公報および特開平6−57171号公報には、Alフレークの表面に、Alに対してMo金属換算量で0.1質量%〜10質量%のモリブデン酸皮膜を成膜し、その上に、Alに対してP元素換算量で0.05質量%〜5質量%の燐酸エステルを吸着させることが記載されている。しかし、この処理は、複雑で時間がかかり、コストアップの原因にもなる。
【0016】
また、Alフレークを用いたメタリック塗装のその他の問題として、Alフレークは、明るさおよび色調が同じであるため、明るさおよび色調を調整したいという顔料の新しいニーズには、Alフレークだけでは応えることができないという問題がある。
【0017】
こうしたことから、Alフレークに代わる材料が検討されている。たとえば、メタリック塗装に高級感をもたせるために、Crフレークが使用される。しかしながら、Crフレークに用いられるCr薄膜を真空蒸着などの乾式めっき法で形成すると、成膜中に酸素、窒素、アルゴンなどのガスの影響を受けて、Crフレークを用いて得られる塗膜の色が、黒ずんでしまうという問題がある。また、耐クラック性が低いという問題もある。このように成膜が難しい膜を生産性良く作製することは困難であった。
【0018】
これらの金属フレークも、Alフレークと同様に、基材に成膜したNi薄膜、Cr薄膜またはTi薄膜を、基材から掻き落としたり、剥ぎ取ったりして回収するか、または、これらの金属薄膜を基材に有機塗料を介して成膜し、有機塗料を溶剤で溶出させて、回収したものを、粉砕することにより得ている。
【0019】
たとえば、特表平8−502301号公報には、基材に有機物の剥離膜を形成し、その上にAl、Cr、Cuなどを蒸発させて耐食合金膜を得て、その後、メチルエチルケトンやアセトン等に浸漬して、剥離膜を溶解して、フレーク膜を得る方法が記載されている。しかしながら、基材に樹脂を塗布する工程と乾燥工程が必要であり、剥離膜の材質や膜厚管理が難しく、さらに、フレーク膜を剥離するために有機溶剤を使うため、環境に悪影響を及ぼし、人体にも良くないという問題がある。
【0020】
また、これらの耐食合金膜を得るには、1回ごとに、成膜して、薄膜を回収するため、1回の成膜で得られる量が限られてしまう。生産性を上げるために、耐食合金膜を積層しようとすると、真空槽内で耐食合金膜を蒸着する工程の次に、樹脂を塗布して乾燥する工程を、繰り返し設けることが必要となり、コストが高くなる。
【0021】
一方、特開2003−344647号公報には、剥離層としてカーボンを蒸着し、得られた剥離層の上に、二酸化シリコンと五酸化タンタルの膜を積層し、得られた多層膜を水に浸漬させて膜を剥離する方法が記載されている。二酸化シリコンと五酸化タンタルからなる多層膜は化学的に安定している。また、多層膜を構成する二酸化シリコンと五酸化タンタルの膜は同じ酸化膜であるので相互の密着力も強く、水に浸漬した程度では剥離することがない。さらに、この多層膜は、カーボン層を介してさらに積層させることが容易である。
【0022】
しかしながら、得られた多層膜に、水中で超音波を照射することにより、多層膜を剥離し、粉砕しているが、この方法では、超音波により多層膜に振動を与え、多層膜を粉砕するという方式から、原理的に規定された定方向径(合金片に外接する長方形の縦−横辺長)を有するフレークを得ることが難しいという問題がある。また、カーボンが水で容易に剥離、溶解しないことに起因して、剥離に時間がかかり、得られるフレークが小さな粒状になってしまうおそれがある。さらに、多層膜に付着しているカーボンを除去するためには、500℃以上に加熱しなければならず、コストが高くなるという問題がある。
【0023】
また、基材から薄膜を掻き落としたり、剥ぎ取ったりする方法では、金属薄膜を積層させて得ることができないため、生産性で問題がある。
【特許文献1】特開昭62−13565号公報
【特許文献2】特開平11−090318号公報
【特許文献3】特開平9−122575号公報
【特許文献4】特許第3688307号公報
【特許文献5】特開平7−133440号公報
【特許文献6】特開平6−57171号公報
【特許文献7】特表平8−502301号公報
【特許文献8】特開2003−344647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、Alフレーク顔料を代替でき、電気Crめっきに近い外観を有する塗膜が得られ、かつ、明るさおよび色調を調整することが可能である耐食金属フレーク顔料を、生産性よく、コストのニーズにも対応できるように提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る耐食金属フレーク顔料の製造方法は、乾式めっき法により、耐塩基性を有する基材の表面に、Alの薄膜からなる剥離膜を成膜し、かつ、Al膜の上に、Ni、CrまたはTiからなる耐食金属膜を成膜し、Al膜および耐食金属膜を基材と共に塩基性溶液に浸漬し、超音波を照射することにより、Al膜を溶解させ、耐食金属膜を基材から剥離し、かつ、破砕することを特徴とする。
【0026】
なお、耐食金属膜を破砕するための超音波の照射は、耐食金属膜の基材からの剥離と同時に行ってもよく、あるいは、剥離を完了させてから行ってもよい。
【0027】
本発明に係る耐食金属フレーク顔料の製造方法の異なる態様は、乾式めっき法により、耐塩基性を有する基材の表面に、Alの薄膜からなる剥離膜を成膜し、かつ、Al膜の上に、Ni、CrまたはTiからなる耐食金属膜を成膜し、さらに、Al膜と耐食金属膜を順次成膜して積層し、得られた積層膜を基材と共に塩基性溶液に浸漬し、超音波を照射することにより、Al膜を溶解させ、耐食金属膜を基材から剥離し、かつ、破砕することを特徴とする。
【0028】
前記積層膜をNi膜、Cr膜およびTi膜から選択される2種以上の膜からなるように成膜することにより、得られる耐食金属フレーク顔料の明るさおよび色調を変化させることができる。
【0029】
なお、前記剥離膜の厚さを20nm〜100nmとすることが好ましい。
【0030】
また、前記塩基性溶液として、NaOH溶液を用いることが好ましい。
【0031】
さらに、前記乾式めっき法として、スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0032】
これらの方法により、厚さが20nm〜200nmであり、かつ、定方向径が5μm〜40μmである耐食金属フレーク顔料を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の耐食金属フレーク顔料の製造方法により、耐食金属膜を乾式めっき法で成膜し、耐食金属フレーク顔料を簡便に得ることができる。
【0034】
また、耐食金属膜の成膜条件を変更したり、異なる金属の耐食金属フレーク顔料の混合体とすることにより、電気Crめっきに近い外観を有する耐食金属フレーク顔料から、黒っぽい外観を有する耐食金属フレーク顔料まで、幅広く作製することができる。よって、明るさおよび色調を調整する必要のある新しいニーズにも対応でき、意匠性に優れ、かつ、優れた耐食性および耐薬品性を有する塗膜を得ることができる。
【0035】
さらに、複数の耐食金属膜の剥離と破砕とが一度に可能となり、高い生産性を持ち、コスト的に有利である。さらに、異なる耐食金属膜相互を積層させることはないため、異なる種類を含む耐食金属フレーク顔料においても、フレークの厚さと大きさを適切に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、耐塩基性を有する基材の表面に、Alからなる剥離膜を成膜し、かつ、Al膜の上に、Ni、CrまたはTiからなる耐食金属膜を成膜し、Al膜と耐食金属膜を基材と共に塩基性溶液に浸漬し、超音波を照射することにより、Al膜を溶解させ、耐食金属膜を基材から剥離し、かつ、破砕する点に特徴を有する。
【0037】
基材としては、塩基性溶液に溶解せず、表面に成膜したときに、平滑な薄膜が得られることが要求される。このような基材として、ガラス、PETまたはPPフイルムなどをあげることができる。
【0038】
基材の表面に成膜される剥離膜としてAl薄膜を用いる理由は、Alが容易に塩基性溶液に溶解することにある。また、Alを介して耐食金属膜を成膜することで、同じ真空槽内で成膜できるため、安定した耐食合金膜を得られる。
【0039】
耐食金属膜は、Ni、CrまたはTiからなる薄膜から選択される。これらの金属は高い耐食性を有する。さらに、何れか一種の耐食金属膜を選択した場合でも、成膜条件(真空度、Arガスの導入、酸素ガスの導入など)を調節することにより、電気Crめっきに近い外観を有する耐食金属フレーク顔料から、黒っぽい外観を有する耐食金属フレーク顔料まで、幅広く作製することができる。
【0040】
なお、本発明におけるNi、CrまたはTiからなる耐食金属膜には、乾式めっき法において蒸発しうるこれらの金属を主成分とする合金からなるものも含まれる。
【0041】
使用する塩基性溶液としては、汎用性および価格の面から、NaOH溶液が望ましい。剥離膜の溶解にNaOH溶液を用いる場合、濃度を5%〜6%とすることが望ましい。5%未満では、Alの溶解に時間がかかり、6%を超えると、溶解時間の大きな短縮にはつながらず、コストを上昇させることになる。
【0042】
剥離膜の上に耐食金属膜を形成した後、基材に形成された剥離膜と耐食金属膜を塩基性溶液に浸漬すると同時に超音波を照射して、耐食金属膜の剥離および破砕を一度に行ってもよく、または、塩基性溶液中で耐食金属膜を剥離した後、剥離した耐食金属膜に超音波を照射して破砕してもよい。
【0043】
なお、超音波の照射により、剥離速度も向上するため、これらの工程を同時に行うことが好ましい。
【0044】
また、本発明では、基材の表面に剥離層の第1層を成膜し、第1層の上に設けた耐食金属膜の第2層を成膜し、第2層の上に第1層と同じ剥離層の第3層を設け、第3層の上に第2層と同じ耐食金属膜の第4層を設ける。このような成膜を繰り返して、任意の数だけ積層させて、生産性を大きく向上させることが可能となる。さらに、それぞれの耐食金属膜を異なる組成とすることにより、同様に、明るさおよび色調の調整が可能となり、メタリック塗装における意匠性を多様化させることが可能となる。
【0045】
剥離膜の厚さは20nm〜100nmとすることが望ましい。20nmより薄くなると、ピンホールが多くなり、耐食金属膜を積層した場合に、剥離膜のピンホールを通じて、上下に隣接する耐食金属膜同士が接合するので、剥離することが困難となる。100nmを超える厚さとすると、剥離膜の成膜に必要以上に時間がかかることや、得られる剥離膜の表面に凹凸が生じ、その上に成膜する耐食金属膜の平滑性が損なわれることからも、好ましくない。
【0046】
本発明において、剥離膜と耐食金属膜の成膜には、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの各種の乾式めっき法が適用できるが、その中でもスパッタリング法が最も好ましい。
【0047】
スパッタリング法を用いて成膜する場合、真空中で、薄膜の原料となるスパッタリングターゲットにArイオンを衝突させて、エネルギーを与え、スパッタリングターゲットを構成する原子を飛び出させ、対象物(基材)に付着させる。このため、蒸着法と比較すると、蒸気圧による成分の狂いが生じないので、好ましい。また、スパッタリング法を用いることにより、原理的に、使用されるスパッタリングターゲットの組成とほぼ同じ組成の薄膜が得られる。
【0048】
スパッタリング法については、DCマグネトロン方式とRFマグネトロン方式とがあるが、いずれも用いることが可能である。スパッタリングターゲットは、溶解法や、焼結法により、作製することができる。
【0049】
また、耐食金属膜の成膜用および剥離膜の成膜用に2種類のスパッタリングターゲットを同一装置内に配置し、ターゲットを切り替えて用いて、耐食金属膜を剥離膜を介して積層して成膜させることも可能である。
【0050】
なお、蒸着法やイオンプレーティング法を採用する場合には、Alターゲットに対しては、熱伝導の良いカーボン坩堝を使うことが好ましく、他の金属ターゲットに対しては、水冷銅坩堝を使用することが好ましい。
【0051】
また、この場合に用いる成膜装置としては、坩堝が同一チャンバ内に3個以上、あるいはターゲットが3個以上設置できる装置が好ましい。
【0052】
本発明の方法により得られる耐食金属フレーク顔料は、厚さが20nm〜200nmであり、定方向径が5μm〜40μmである。耐食金属フレーク顔料の定方向径とは、Feret径であり、一片の耐食金属フレーク顔料に外接する長方形の縦と横の長さを意味する。なお、フレークの厚さは、成膜時の成膜時間と投入電力とにより制御される。また、フレークの大きさは、超音波で粉砕するときのパワーと時間で制御される。
【0053】
耐食金属フレーク顔料の厚さが20nm未満であると、得られる耐食金属フレーク顔料を用いてメタリック塗装をしても、下地が透けて見え、白っぽい外観になり、表面反射率が下がりすぎてしまう。一方、200nmを超える厚さでは、耐食金属フレーク顔料の応力が大きくなり、割れる可能性が高くなる一方、表面反射率に変化はないので、このように厚くしても、耐食金属フレーク顔料の作製時間を、いたずらに延ばす結果となり、コストの上昇を招く原因となる。
【0054】
また、定方向径が5μm未満では、反射面が狭くなり、光輝感が損なわれる。一方、定方向径が40μmを超えると、反射面が広くなり、表面反射率は上がるが、メタリック塗装により、耐食金属フレーク顔料同士の隙間が大きくなってしまい、下地が見える可能性が出てくる。さらに、耐食金属フレーク顔料が塗装ラインのフィルタで捕獲されて、目詰まりを起こす可能性もある。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0056】
(実施例1)
基材として、20cm角、厚さ1mmのガラス基板を用いた。ガラス基板は、洗浄して、ゴミ等は除去したが、表面に剥離材等は塗布しなかった。
【0057】
蒸着装置として、電子銃を備え、金属を蒸発させる坩堝ホルダを3個有するイオンプレーティング装置(株式会社神港製作所製、AAIH−W36200SBT)を用い、蒸発源となるAlとNiを用意し、Alはカーボン坩堝に入れ、Niは水冷銅坩堝に入れて、坩堝ホルダにそれぞれを配置した。
【0058】
前述の基材を、蒸着装置内に配置し、電子銃の成膜電流を200mAとし、Alを1分間蒸発させて、基材の上に厚さ50nmのAlからなる剥離膜を形成した。そのまま、真空状態を維持し、次に、坩堝ホルダを回転させ、電子銃の成膜電流を750mAとし、Niを1分間蒸発させて、厚さ50nmのNiからなる耐食金属膜を積層した。
【0059】
このような剥離膜の成膜と耐食金属膜の成膜を1回として、合計で6回、繰り返した。
【0060】
次に、基材ごと5%NaOH溶液に浸すことにより、Alが溶出し、耐食金属膜が剥離した。剥離した耐食金属膜を、5%NaOH溶液に浸漬したまま、超音波洗浄装置(BRANSONIC社、Model:B−3200J)を使用して、出力90W、周波数43kHzの超音波を2分間照射することにより、破砕を行った。沈殿させた後、上水を除去することにより沈殿物を取り出し、水で洗浄して酢酸エチルに分散させて、耐食金属フレーク顔料を得た。得られた耐食金属フレーク顔料の定方向径は、約30μmであった。
【0061】
さらに、得られた耐食金属フレーク顔料について、表面反射率を、分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、550nmの波長の光で測定した。得られた耐食金属フレーク顔料の表面反射率は、55%であった。
【0062】
得られた耐食金属フレーク顔料0.1gを、酢酸エチル18g+アクリル樹脂2gである溶液20gに調合し、超音波で均等となるように配合して、耐食光輝性塗膜用塗料を得た。
【0063】
Al合金鋳物AC4C(Al−Si−Mg系)製で、厚さ3mmの板材に、クロメート処理を行うことにより、Cr量で80g/m2〜150g/m2の化成皮膜を形成した。次に、表面を平滑にするため、アクリル粉体塗料を、厚さ100μm塗布し、150℃で、1時間乾燥した。さらに、アンダーコートとして、クリアのポリエステル・メラミン樹脂を、エアースプレーガンで30μm形成し、140℃で、30分乾燥を行うことにより、3個の塗装対象を得た。
【0064】
その後、前述の耐食光輝性塗膜用塗料を、それぞれの塗装対象の上にエアースプレーで、厚さ1μm〜2μm塗布し、さらに、アクリル・メラミン樹脂のトップコートを、エアースプレーガンで厚さ5μm、厚さ10μmおよび厚さ25μmとなるように、それぞれ塗布し、140℃で、30分乾燥を行った。
【0065】
以上のようにして得られた3種類の厚さの耐食光輝性塗膜の外観は、クラックや割れがなく、従来のメタリック塗膜に比べて高い光輝感と、Crめっきに近い色調とを持っていた。
【0066】
(実施例2)
Niに代えて、Crを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、耐食光輝性塗膜用塗料を得て、3種類の厚さの耐食光輝性塗膜を作製し、評価を行った。
【0067】
得られた耐食金属フレーク顔料の定方向径は、約28μmであった。また、得られた耐食金属フレーク顔料の表面反射率は、58%であった。
【0068】
得られた3種類の厚さの耐食光輝性塗膜の外観は、クラックや割れがなく、従来のメタリック塗膜に比べて高い光輝感と、Crめっきに近い色調とを持っていた。
【0069】
(実施例3)
基材として、20cm角、厚さ1mmのガラス基板を用いた。ガラス基板は、洗浄して、ゴミ等は除去したが、表面に剥離材等は塗布しなかった。
【0070】
蒸着装置として、電子銃を備え、金属を蒸発させる坩堝ホルダを3個有するイオンプレーティング装置(株式会社神港製作所製、AAIH−W36200SBT)を用い、蒸発源となるAlとCrとNiを用意し、Alはカーボン坩堝に入れ、Crは第1の水冷銅坩堝に入れ、Niは第2の水冷銅坩堝に入れて、坩堝ホルダにそれぞれを配置した。
【0071】
前述の基材を、蒸着装置内に配置し、電子銃の成膜電流を200mAとし、Alを1分、蒸発させて、基材の上に厚さ50nmのAlからなる剥離膜を形成した。そのまま、真空状態を維持し、次に、坩堝ホルダを回転させ、電子銃の成膜電流を750mAとし、Crを1分間蒸発させて、厚さ50nmのCrからなる耐食金属膜を積層した。
【0072】
さらに、電子銃の成膜電流を200mAとし、Alを1分間蒸発させて、厚さ50nmのAlからなる剥離膜を形成し、真空状態を維持し、次に、坩堝ホルダを回転させ、電子銃の成膜電流を750mAとし、Niを1分間蒸発させて、厚さ50nmのNiからなる耐食金属膜を積層した。
【0073】
このような剥離膜の成膜、Crの耐食金属膜の成膜、剥離膜の成膜およびNiの耐食金属膜の成膜を1回として、合計で3回、繰り返した。
【0074】
その後、実施例1と同様にして、耐食光輝性塗膜用塗料を得て、3種類の厚さの耐食光輝性塗膜を作製し、評価を行った。
【0075】
得られた耐食金属フレーク顔料の定方向径は、約35μmであった。また、得られた耐食金属フレークの表面反射率は、56%であった。
【0076】
得られた3種類の厚さの耐食光輝性塗膜の外観は、クラックや割れがなく、従来のメタリック塗膜に比べて高い光輝感と、深みがかったトーンの色調とを持っていた。
【0077】
(実施例4)
基材として、20cm角、厚さ1mmのガラス基板を用いた。ガラス基板は、洗浄して、ゴミ等は除去したが、表面に剥離材等は塗布しなかった。
【0078】
蒸着装置として、2インチLTSカソードタイプスパッタ装置(ULVAC社製、isputter)を用い、蒸発源となるAl焼結材とAl−Ti(50%)焼結材とをともに、直径50.8mm(2インチサイズ)の円形のスパッタリングターゲットに加工して、同一装置内にそれぞれを配置した。Arガスを導入して、まずAlをターゲットとして、成膜電流を3Aとし、1分間蒸発させて、厚さ50nmのAlからなる剥離膜を形成した。次に、Al−Ti(50%)をターゲットとして、そのままの雰囲気を維持し、成膜電流を3Aとし、3分間蒸発させて、厚さ50nmのAl−Ti(50%)からなる耐食金属膜を積層した。
【0079】
このような剥離膜の成膜と耐食金属膜の成膜を1回として、合計で6回、繰り返した。
【0080】
その後、実施例1と同様にして、耐食光輝性塗膜用塗料を得て、3種類の厚さの耐食光輝性塗膜を作製し、評価を行った。
【0081】
得られた耐食金属フレーク顔料の定方向径は、約25μmであった。また、得られた耐食金属フレーク顔料の表面反射率は、62%であった。
【0082】
得られた3種類の厚さの耐食光輝性塗膜の外観は、クラックや割れがなく、従来のメタリック塗膜に比べて高い光輝感と、落ち着いた深みのある色調とを持っていた。
【0083】
(比較例1)
Alを蒸発させる時間を、20秒として、Alからなる剥離膜の厚さを15nmとした以外は、実施例1と同様にして、剥離膜の成膜と耐食金属膜の成膜を1回として、合計で6回、繰り返した。
【0084】
次に、基材ごと5%NaOH溶液に浸し、超音波洗浄装置(BRANSONIC社、Model:B−3200J)を使用して、出力90W、周波数43kHzの超音波を、10分、照射したが、綺麗に剥離されなかった。
【0085】
(比較例2)
実施例1と同様にして、成膜を行い、基材ごと2%NaOH溶液に浸すことにより、Alが溶出し、耐食金属膜がそれぞれ剥離した。剥離した耐食金属膜を、2%NaOH溶液に浸漬したまま、超音波洗浄装置(BRANSONIC社、Model:B−3200J)を使用して、出力90W、周波数43kHzの超音波を、照射することにより、粉砕を行った。粉砕にかかる時間は、実施例1の2分に対して、3倍の6分を必要とした。
【出願人】 【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100108877
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨田 哲彰


【公開番号】 特開2008−31311(P2008−31311A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206739(P2006−206739)