トップ :: C 化学 冶金 :: C09 染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用

【発明の名称】 表面処理された無機フィラーの製造方法
【発明者】 【氏名】山川 潤一郎

【氏名】鹿志村 睦美

【要約】 【課題】硬化物の強度が高く色調変化がほとんど無い歯科修復剤用複合材料を製造するのに好適な、シランカップリング剤により表面処理された無機フィラーの製造方法を開発すること。

【構成】有機溶媒に無機粉体が分散されてなり、シランカップリング剤およびアミンを含有してなる無機粉体分散液から有機溶媒の粗方を減圧留去し、次いで、風速0.01〜3.0m/sec、温度20〜100℃を好適な乾燥条件とする送風乾燥を行った後、加熱下で減圧乾燥を行って、シランカップリング剤により表面処理された無機フィラーを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒に無機粉体が分散されてなり、シランカップリング剤およびアミンを含有してなる無機粉体分散液から有機溶媒の粗方を減圧留去し、次いで、送風乾燥を行った後、加熱下で減圧乾燥を行うことを特徴とする、表面処理された無機フィラーの製造方法。
【請求項2】
送風乾燥が、風速0.01〜3.0m/sec、温度20〜100℃の条件下で行われることを特徴とする請求項1に記載の表面処理された無機フィラーの製造方法。
【請求項3】
無機粉体分散液から有機溶媒の粗方を減圧留去した後、5時間以内に送風乾燥を行う請求項1または請求項2に記載の表面処理された無機フィラーの製造方法。
【請求項4】
下記一般式[I]で示されるシランカップリング剤を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理された無機フィラーの製造方法。
CH=C(R)−COO−(CH)−Si−RR(3−m) [I]
{式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜6のアルコキシ基、イソシアナート基、又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、mは2または3であり、nは5〜20の整数である。}
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された無機フィラーの製造方法、詳しくは、硬化物の強度が高く色調変化がほとんど無い歯科修復剤用複合材料を製造するのに好適な、シランカップリング剤により表面処理された無機フィラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの強度や耐久性などの性質を改善するために、フィラーを添加して複合材料とすることが一般に知られており、このような高分子系複合材料は、導電材、記録材、摺動材、封止材、制振材、歯科・医科材料、断熱材等、様々な分野で応用されている。特に近年の歯科治療においては、コンポジットレジンやレジンセメントに代表されるような歯科修復材用の高分子系複合材料が多用されている。上記基材であるレジンマトリックスに配合されるフィラーとしては無機フィラーが使用されることが多いが、この無機フィラーはレジンマトリックスとのぬれ性を改善するため、更にはレジンマトリックスと強固に結合させるために、シランカップリング剤などの表面処理剤によって表面処理を行って使用することが一般的である。
【0003】
シランカップリング剤を用いた無機フィラーの表面処理方法には、流動させた無機フィラーにシランカップリング剤を噴霧する方法、アルコール、トルエンなどの有機溶媒中に無機フィラーを加え、さらにシランカップリング剤と水を加えた後加熱し、水と有機溶媒をエバポレーターで蒸発乾燥させる方法、加水分解助剤を用いてシランカップリング剤を加水分解してから無機粒子の分散液と混合し噴霧乾燥する方法(特許文献1)、無機粉体をアミンで処理した後にシランカップリング剤と反応させる方法(特許文献2)、等が報告されている。なかでもアミンを用いた表面処理方法は、材料の耐水性に優れる点で歯科材料用無機フィラーの表面処理方法として適している。
【0004】
【特許文献1】特開平10-36705号公報
【特許文献2】特開昭63-159214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように、アミン処理を伴う表面処理方法による無機フィラーを用いて、製造した複合材料を製品として供した際に、硬化した後、硬化物が徐々に変色するという問題が起こった。この問題は、上記複合材料からなる製品が、コンポジットレジン等の歯科用材料である場合、これらの製品は審美性が特に求められる製品であり僅かの着色でも、その商品価値が大きく損なわれるため、大きな問題であった。
【0006】
この着色の原因については明らかではないが、表面処理工程において使用したアミンが無機フィラー表面に残留しており、この無機フィラーとレジンマトリックスを混合した際にアミンが溶出し、レジンマトリックス中の成分とが何らかの相互作用や誘導体を形成することによって変色が起こるものと予想される。
【0007】
この問題は、乾燥時間を長く、乾燥温度を高くしてアミンの揮発を加速させることによって解決できると考えられたが、現実にはこれらの方法では問題の解決には至らず、アミンが揮発しにくい状態で無機フィラー表面上に残存していることが予想された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、特定の乾燥工程を経ることによって、アミンを使用しても変色をほとんど起こさない無機フィラーを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、有機溶媒に無機粉体が分散されてなり、シランカップリング剤およびアミンを含有してなる無機粉体分散液から有機溶媒の粗方を減圧留去し、次いで、送風乾燥を行った後、加熱下で減圧乾燥を行うことを特徴とする、表面処理された無機フィラーの製造方法である。
【0010】
また、本発明は、送風乾燥の風速が0.01〜5.0m/sec、温度が20〜100℃の条件下で行われることがより好ましい。また、無機粉体分散液から有機溶媒の粗方を減圧留去した後、5時間以内に送風乾燥を行うのがより好ましい。さらに、下記一般式で示されるシランカップリング剤を用いた表面処理において効果的な方法である。
【0011】
CH=C(R)−COO−(CH)−Si−RR(3−m) [I]
{式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜6のアルコキシ基、イソシアナート基、又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、mは2または3であり、nは5〜20の整数である。}
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によって製造した無機フィラーを用いた複合材料は、高い機械的強度を有しつつ色調安定性に優れた硬化物を提供する。したがって、コンポジットレジンやレジンセメントに代表されるような歯科修復材用の複合材料に配合させる無機フィラーとして用いた場合には、審美性に優れる同製品が製造できるため、特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の製造方法に使用する無機粉体は特に限定されず、従来の歯科用修復材組成物等に使用されている非晶質シリカ、シリカジルコニア、シリカチタニア、アルミノシリケートガラス、バリウムガラス、石英、アルミナ等の無機酸化物、その他無機化合物の粉末を使用することができる。無機粉体の材質としては、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物が特に好適に用いられる。無機粉体は、耐水性向上の観点から表面酸点を有する無機粉体であることが好ましい。表面酸点は、酸強度(pKa)が−3.0〜3.3の範囲にある無機粉体であることが好ましく、シリカ複合酸化物が好適である。上記無機粉体の形状及び粒径もまた、特に制限されない。
【0014】
これら無機粉体の製造方法は特に限定されないが、例えば、加水分解可能な有機ケイ素化合物を含んだ溶液、あるいは更に周期律表第I、II、III、及び第IV族の金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む加水分解可能な有機化合物を含んだ混合溶液を、これら原料は溶解するが反応生成物は実質的に溶解しないアルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、所謂ゾルゲル法が好適に採用される。
【0015】
本発明の製造方法に使用する有機溶媒は、公知のものが特に制限なく使用可能であり、炭化水素類(ヘキサン、ナフテン類、直鎖又は分岐パラフィン類などの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1-4アルコール類など)、エステル類(酢酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどの脂肪族ケトン類など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(エチレングリコールエチルエーテルなど)、カルビトール類(エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなど)、ハロゲン化炭化水素類(テトラクロロエチレン、トリクロロエタンなどの塩素系溶媒など、またはこれらの混合溶媒等が例示できる。均一な表面処理を行うために、シランカップリング剤を溶解することが可能な有機溶媒であることが好ましく、この観点から、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレンを用いるのが特に好ましい。
【0016】
無機粉体と有機溶媒との混合割合はスラリーとなる範囲であれば良い。一般に無機粉体100重量部に対して有機溶媒は100〜1000重量部、好適には150〜400重量部の範囲で使用される。
【0017】
本発明で用いるシランカップリング剤としては公知のものが制限なく使用される。好適なシランカップリング剤を例示すれば、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられ、特に重合性官能基を有するγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が適している。
【0018】
本発明の製造方法においては、特に、下記一般式[I]で示されるシランカップリング剤を用いた表面処理において好適である。
CH=C(R)−COO−(CH)−Si−RR(3−m) [I]
{式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜6のアルコキシ基、イソシアナート基、又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、mは2または3であり、nは5〜20の整数である。}
一般式[I]に示されるシランカップリング剤を用いて表面処理を行った場合、レジンマトリックス中に無機フィラーを高密度に充填することが容易となる。このようなシランカップリング材はその構造上、一般的に難水溶性であるため、特に本特許にて示すような有機溶媒を用いた表面処理方法への適用に好適である。好適なシランカップリング剤を例示すれば、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
これらシランカップリング剤は、単独で用いてもよいが、2種以上を混合して使用してもよい。また、上記シランカップリング剤は、本発明の効果が損なわれない範囲で、シランカップリング剤以外の公知の表面処理剤と併用して使用することもできる。
【0020】
これらシランカップリング剤の有機溶媒への含有量は、無機粒子に所望の表面性状を付与するのに必要な量あれば良い。一般にシランカップリング剤は、無機粒子100重量部に対して0.1〜30重量部、好適には0.5〜10質量部の範囲で使用され、無機粉体の比表面積やシランカップリング剤の最小被覆面積、予備実験の結果等から勘案して適宜決定すればよい。
【0021】
本発明で用いるアミンとしては、公知のものが特に制限なく使用可能であるが、シランカップリングの反応性やアミンの除去性の観点から、第一級もしくは第二級のアミン化合物、更に脂肪族アミンであることが好適である。これらの具体例としては、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミンなどが挙げられる。
【0022】
これらのアミンの使用量は、シランカップリング剤の0.1〜5倍モル、好ましくは0.5〜2.0倍モルの範囲で使用することが好適である。
【0023】
本発明の製造方法においては、まず、シランカップリング剤およびアミンを含む、有機溶媒に無機粉体が分散された無機粉体分散液を調製する。これら各原料の配合順序は特に制限されるものではなく、無機粉体を有機溶媒中に分散させた後に、その分散液にシランカップリング材とアミンを添加する方法、シランカップリング剤とアミンを溶解させた有機溶媒中に無機粉体を添加して分散させる方法など、いずれの方法を採用してもよいが、アミンとシランカップリング剤の目的外の反応を防止するために、アミンの添加された無機粉体の有機溶媒分散液に対して、シランカップリング剤を添加するのが好ましい。また、アミンの添加は無機粉体の有機溶媒中への分散性を改善する効果もあるため、無機粉体を有機溶媒中に分散させる前にアミンを添加することが好ましい。
【0024】
この分散液は、表面処理を均一に行うため、無機粉体の分散性が良好であることが好ましく、無機粉体が極力一次粒子まで解砕された状態であることが好ましい。分散液を作製する方法は特に限定されないが、好適な方法として、ボールミル、ホモジナイザー、超高圧衝撃型乳化分散装置等によって混合分散する方法が挙げられる。
【0025】
上記の方法で得られた無機粉体分散液において、シランカップリング剤の無機粉体への反応はこの状態では高度には進行していないのが普通である。アミンは無機粉体表面の反応点に吸着しており、溶媒の減圧留去及び送風乾燥程度では完全に揮発しないと考えられる。通常、添加されるアミンは揮発やロスの影響を考えてやや過剰に添加されるが、このように過剰に添加する等により、上記無機粉体表面の反応点に吸着していないアミンが残存することによって変色が促進されると推定される。送風乾燥は過剰のアミンを揮発させるために行うものであり、この後の加熱乾燥工程において、このアミンを利用してシランカップリング剤と無機粉体表面の反応点との縮合反応を促進させているものと考えられる。
【0026】
本発明の製造方法における減圧留去工程は、有機溶媒を粗方除去することを目的として行う。有機溶媒の減圧留去の方法としては特に制限は無いが、一般的にはエバポレーターが好適に使用される。減圧留去による溶媒除去の程度に制限は無いが、目視で液分が見えなくなり固化した時点で次工程に進んで差し支えない。減圧留去に使用する容器は一般的に丸型やナス型のフラスコを使用するが、次工程に移る際には作業効率や乾燥効率の観点から、バット等の別容器に回収することが好適である。
【0027】
この減圧留去では、有機溶媒を完全に除去することは困難であり、その粗方が除去されて湿体が得られる。通常、有機溶媒の残存重量が30%以下、好ましくは1〜10%まで除去される。
【0028】
本発明の製造方法における送風乾燥とは、吐出圧力が1kg/cm以下の送風機(ブロワ)を用いて行う乾燥工程を指す。この送風乾燥工程を組み込むことで、表面処理に用いたアミンの過剰分を適度に揮発させ、無機フィラーへの残留を抑制することができると考えられる。この工程が無く、減圧留去の後、直接減圧乾燥を行った場合、空気の交換効率および伝熱効率が悪いため余剰アミンの揮発が十分行われず、無機フィラーを用いた歯科用複合材料の硬化物の変色を招くことになる。
【0029】
送風機構としては一般的にファンが用いられる。また、送風方式としては、循環型、排出型に関わらず使用できるが、空気の交換効率の観点から、排出型のほうが好ましい。
【0030】
溶媒を減圧留去した後に、送風乾燥を行うまでに要する時間は短いほどよく、アミンの過剰分の揮発効果を高めるためには、上記溶媒を減圧留去した後5時間以内、好ましくは3時間以内に行うのが好ましい。この理由は明確ではないが、アミンが無機粉体に濃縮された状態で残留したまま長時間放置することによって、アミンと無機粉体との結合がより強固になり容易に揮発しなくなるためと考えられる。
【0031】
送風乾燥の風速は0.01〜3.0m/secの条件下、より好ましくは0.5〜1.5m/secの条件下で行われることが好ましい。また、送風乾燥の温度は、20〜100℃の条件下、より好ましくは50〜80℃で行われることが好ましい。乾燥時間にも特に制限は無いが、48時間未満、更には24時間未満で行われることが好適である。
【0032】
本発明の製造方法では、上記送風乾燥の後、さらに減圧乾燥することにより、シランカップリング反応によって生成する水やアルコール等の縮合物、残存する有機溶媒、アミンをほぼ完全に除去する。ここで、減圧乾燥とは、無機粉体周囲の空気の分圧を下げることによって溶媒などの揮発を促進して行う乾燥を指す。一般的には、真空ポンプを接続した加熱機構付きの真空乾燥機が用いられる。この工程は、シランカップリング反応によって生成する水やアルコール等の縮合物を除去することと、残存する有機溶媒、アミンを除去し無機フィラーを完全に乾燥することを目的として行う。真空度は20mmHg以下が好ましく、0.01〜10mmHgが更に好ましく、0.03〜1mmHgが特に好ましい。
【0033】
また、該減圧乾燥工程は、加熱しながら行う。加熱によって、シランカップリング反応を進行させ、フィラーとシランカップリング剤との縮合反応による共有結合の生成を促進することができるほか、無機粉体の乾燥の加速させることができる。加熱温度は、50〜150℃の範囲、より好適には70〜110℃の範囲で行うことが好ましい。乾燥時間にも特に制限は無いが、48時間未満、更には24時間未満で行われることが好適である。
【0034】
本発明により製造される表面処理された無機フィラーは、適当なレジンマトリックス中に分散させることで高分子系複合材料として使用することができる。無機フィラーが表面処理されることによって、レジンマトリックスとのなじみ性を改善したり、レジンマトリックスと結合する官能基が導入したりすることができ、複合材料の強度や耐久性等の諸物性が向上する。
【0035】
本発明の好適な使用態様としては、封止材、記録材、摺動材、制振材、断熱材等が挙げられるが、特にコンポジットレジン、レジンセメント等の歯科材料に好適に使用できる。歯科用コンポジットレジンを例に挙げれば、本発明の製造方法による表面処理された無機フィラーと、レジンマトリックスとして光重合開始剤を含有する(メタ)アクリレート系モノマーとを十分に混練し、さらに減圧下脱泡して得られた複合材料を製品として供する。このような歯科用コンポジットレジンは、修復すべき歯の窩洞を適切な前処理材や接着材で処理した後に直接充填し、歯牙の形に形成した後に専用の光照射器にて強力な光を照射して重合硬化させて使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた表面処理剤、重合性単量体、及び重合開始剤は以下の通りである。
表面処理剤:
MPS:γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン
MUDS:11-メタクリロイロキシウンデシルトリメトキシシラン
重合性単量体:
GMA: 2,2-ビス(4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポ キシフェニル)プロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
重合開始剤
CQ:カンファーキノン
DMBE:ジメチル安息香酸エチルエステル
試験方法は以下のとおりである。
(1)硬化性組成物の調整:
60重量部のGMAと40重量部のTEGDMAに、0.5重量%のCQと0.5重量%のDMBEを加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製して、これをマトリックスとした。
実施例に従って作製した無機フィラー400重量部を、メノウ乳鉢に入れ、そこに上記重合性単量体組成物100重量部を徐々に加え、暗所にて十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡した。
(2)硬化体の変色度:
上記硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの孔を有する型にいれ、両面はポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、色差計(東京電色製、TC−1800MKII)を用いて、背景色白でL*、a*、b*値の測定を行った。その後、50℃のインキュベーターに7日間保存し、回収後再び背景色白でL*、a*、b*値の測定を行い、下記式(II)に基づいて硬化体の変色度を求めた。
ΔE*=√{(L*−L*+(a*−a*+(b*−b*} (II)
実施例1
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、およびイソプロピルアミン12.7gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMPS15.9を添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて塩化メチレンを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、1時間後に送風乾燥機に仕込み、風速1.0m/sec、熱風温度が50℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.3mmHg、加熱温度80℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF−1を得た。
【0037】
この無機フィラーF−1を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=0.3であった。
【0038】
実施例2
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、およびn-プロピルアミン12.7gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMUDS22.0gを添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて塩化メチレンを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、1時間後に送風乾燥機に仕込み、風速1.0m/sec、熱風温度が50℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.3mmHg、加熱温度80℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF−2を得た。この無機フィラーF−2を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=0.9であった。
【0039】
実施例3
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、メタノール1kg、およびn-ブチルアミン15.0gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMUDS22.0gを添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて常温でメタノールを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、3時間後に送風乾燥機に仕込み、風速0.8m/sec、熱風温度が80℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.05mmHg、加熱温度100℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF−3を得た。
【0040】
この無機フィラーF−3を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=0.8であった。
【0041】
実施例4
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、およびn-プロピルアミン12.7gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMUDS22.0gを添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて塩化メチレンを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、7時間後に送風乾燥機に仕込み、風速1.0m/sec、熱風温度が50℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.3mmHg、加熱温度80℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF−4を得た。
【0042】
この無機フィラーF−4を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=2.6であった。
【0043】
比較例1
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、およびn-プロピルアミン12.7gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMUDS22.0gを添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて塩化メチレンを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、減圧乾燥機にて0.3mmHg、加熱温度80℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF−5を得た。
【0044】
この無機フィラーF−5を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=7.9であった。
【出願人】 【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−31309(P2008−31309A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206607(P2006−206607)