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【発明の名称】 フッ素樹脂多孔体の製造方法
【発明者】 【氏名】射矢 健

【氏名】樋口 義明

【要約】 【課題】耐薬品性に優れ、かつ機械的強度の高い溶融成形性フッ素樹脂の多孔体を提供する。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融成形性フッ素樹脂の多孔体の製造方法において、当該溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、及び無機微粉末5〜30質量%からなる組成物を溶融成形してその成形体を得る第1工程、ついで当該成形体より前記溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末を抽出して、溶融成形性フッ素樹脂の多孔体を得る第2工程、及び当該多孔体を、当該溶融成形性フッ素樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度で熱処理する第3工程からなることを特徴とする溶融成形性フッ素樹脂多孔体の製造方法。
【請求項2】
前記溶融成形性フッ素樹脂が、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン及びエチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のフッ素樹脂である請求項1に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
【請求項3】
前記溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末に、更に耐熱性有機液状体を、当該溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末の合計100質量部に対して5〜45質量部混合する請求項1又は2に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
【請求項4】
前記溶融成形性フッ素樹脂多孔体が、チューブ、パイプ及び中空糸から選択される中空管、フィルム又はシートである請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融成形性フッ素樹脂多孔体の製造方法に関し、より詳しくは、優れた耐薬品性、濾過性能、及び機械的物性を備えた水処理用等として有用な溶融成形性フッ素樹脂多孔体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系樹脂からなる、多孔質フィルムや多孔質中空糸等の多孔質成形体は、所望の微細孔を有し、かつ安価、軽量であることから様々な分野で広く使用されている。例えば、半導体製造工程における洗浄用薬品や気体中の微粒子の分離、醸造品の無菌分離、血液製剤中のビールス除去、血液の透析、海水の脱塩等の精密な濾過膜や分離膜として、さらには電池のセパレータ等として好適に使用されている。
【0003】
なかでもフッ素樹脂は、特に耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性等の特性に優れることから、その多孔質成形体がフィルター材料等として、多くの検討がなされている。しかしながら、現在、多孔質成形体として実用化されているフッ素樹脂は、実質的にポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」ということがある。)、及びフッ化ビニリデン系樹脂だけである。
【0004】
PTFEは、乳化重合によリ得られるそのファインパウダーを、カレンダー成形して得た予備成型品とし、これを延伸することにより、比較的容易に繊維状化(フィブリル化)するので、微細孔を有する高多孔質のPTFEフィルムが得られる。当該高多孔質PTFEフィルムは、血液成分分析、血清、注射薬の除菌等臨床医学分野、LSIの洗浄水や洗浄薬品中の微粒子除去等の半導体産業分野、大気汚染検査等の公衆衛生分野等でフィルター膜として好適に使用されている。また、高多孔質のPTFEは、強い撥水・撥油性を有することから、その微細孔が水蒸気は通すが水滴は遮断する特性を有する通気性防水布として、産業分野のみならず、一般の防水衣料の分野でも広く使用されている。
【0005】
しかしながら、PTFEの多孔質成形体は、その材質に由来して比較的軟質であるため、耐クリープ性が充分でなく、巻回すると潰れが生じ、濾過性が低下するという問題がある。また、PTFEは、溶融粘度が極めて高く、一般のポリオレフィン系樹脂で用いられている押出成形、射出成形等の溶融成形が困難であるという問題もある。従って、当該成形体の形態は、フィルム状等に限定され、用途に応じた任意の形態、例えば中空糸等の形態とすることは、一般には困難とされている。
【0006】
また、上記いわゆる延伸法により製造されPTFE多孔質チューブは、PTFEが管軸方向に繊維状化しているため、管軸方向の強度はあるが、半径方向の強度が弱く、濾過材として使用した場合、濾過圧により裂け目ができる等の問題がある。
【0007】
一方、同様にして延伸法により製造されるフッ化ビニリデン系樹脂製の多孔質フィルムも水処理膜や電池セパレータとして使用されているが、一般のポリオレフィン系樹脂と比較して耐薬品性は優れるものの、一部の薬品に容易に侵されるという欠点があり、また、機械的強度が低い。
【0008】
これら延伸法による多孔体に対し、フッ素樹脂に溶媒可溶性樹脂(又は耐熱性有機液状体)や可溶性無機微粉末を混合し、溶融成形して得られた中空管やフィルム状の成形体を、溶媒等で処理して当該可溶性樹脂等を溶出せしめて多孔質化する方法(溶出法)が知られている。
【0009】
たとえば、特許文献1〜2には、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体に、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーや、フッ化ビニリデン共重合体、及びシリカ微粉末を配合し、溶融成形して得た膜や中空管等の成形体を、1,1,1−トリクロルエタンやアセトンで処理してクロロトリフルオロエチレンオリゴマー等を抽出し、さらにアルカリ水溶液で処理してシリカ微粉末を溶解抽出することにより多孔質化する、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体の多孔質成形体の製造方法が記載されている。しかしながら、これら溶出法により得られた多孔体は、機械的強度が必ずしも十分ではなく、特に多孔度を大きくすると機械的強度が大きく低下するという問題があった。
【0010】
【特許文献1】特公昭63−11370号公報(特許請求の範囲(請求項1〜請求項2)、実施例1〜実施例11)
【特許文献2】特許第3265678号公報(特許請求の範囲(請求項1〜請求項6)、実施例1〜実施例4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、優れた耐薬品性と優れた濾過性能を備え、かつ機械的強度の高い溶融成形性フッ素樹脂多孔質成形体(以下、「フッ素樹脂多孔体」と略称することがある。)の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、かかる観点から鋭意検討した結果、溶融成形性フッ素樹脂の成形体を溶出法によって多孔質化した後、これを特定の条件で熱処理することにより、本発明の目的が達成できることを見いだし本発明を完成した。すなわち、本発明に従えば、以下の溶融成形性のフッ素樹脂多孔体の製造方法が提供される。
【0013】
〔1〕
溶融成形性フッ素樹脂の多孔体の製造方法において、当該溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、及び無機微粉末5〜30質量%からなる組成物を溶融成形してその成形体を得る第1工程、ついで当該成形体より前記溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末を抽出して、溶融成形性フッ素樹脂の多孔体を得る第2工程、及び当該多孔体を、当該溶融成形性フッ素樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度で熱処理する第3工程からなることを特徴とする溶融成形性フッ素樹脂多孔体の製造方法。
【0014】
〔2〕
前記溶融成形性フッ素樹脂が、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン及びエチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のフッ素樹脂である〔1〕に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
【0015】
〔3〕
前記溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末に、更に耐熱性有機液状体を、当該溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末の合計100質量部に対して5〜45質量部混合する〔1〕又は〔2〕に記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
【0016】
〔4〕
前記溶融成形性フッ素樹脂多孔体がチューブ、パイプ及び中空糸から選択される中空管、フィルムまたはシートである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のフッ素樹脂多孔体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた耐薬品性と優れた濾過性能を備え、かつ機械的強度の高い溶融成形性フッ素樹脂の多孔質成形体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、基本的に、まず溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末からなる組成物を溶融成形した後多孔質化する。
【0019】
(溶融成形性フッ素樹脂)
本発明で使用する溶融成形性フッ素樹脂(以下、単に「フッ素樹脂」と称することがある。)としては、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「ETFE」と略記することがある。以下、同様)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体(PFA)(但し、パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18である。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)等のテトラフルオロエチレン系フッ素樹脂;ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体(ECTFE)等のクロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂等が挙げられる。これらのフッ素樹脂は単体で、またはその混合物として使用することができる。
【0020】
本発明で使用する溶融成形性のフッ素樹脂としては、上記のうち、ETFE及びFEPが好ましく、ETFEがより好ましい。
【0021】
(ETFE)
ETFEとしては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」と称する。)に基づく繰返し単位/エチレンに基づく繰返し単位のモル比が、好ましくは70/30〜30/70、より好ましくは65/35〜40/60、最も好ましくは60/40〜40/60である。
【0022】
ETFEにおいては、TFE及びエチレンの他に、その他の単量体に基づく繰返し単位を含んでいてもよい。その他の単量体としては、CF2=CFCl、CF2=CH2などのフルオロエチレン類(ただし、TFEを除く。);CF2=CFCF3、CF2=CHCF3などのフルオロプロピレン類;CF3CF2CF2CF2CH=CH2、CF3CF2CF2CF2CF=CH2などの炭素数が4〜12のフルオロアルキル基を有する(パーフルオロアルキル)エチレン類;Rf(OCFXCF2mOCF=CF2(式中Rfは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、Xは、フッ素原子又はトリフルオロメチル基、mは、0〜5の整数を表す。)などのパーフルオロビニルエーテル類;CH3OC(=O)CF2CF2CF2OCF=CF2やFSO2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2などの、容易にカルボン酸基やスルホン酸基に変換可能な基を有するパーフルオロビニルエーテル類;プロピレンなどのC3オレフィン、ブチレン、イソブチレンなどのC4オレフィン等のオレフィン(ただし、エチレンを除く。)類などが挙げられ、これら共単量体(コモノマー)は、単独で又は2種以上組み合わせて含むこともできる。
【0023】
これらの共単量体に基づく繰返し単位を含有する場合は、その含有割合は、通常ETFEの全繰返し単位に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは0.1〜15モル%、最も好ましくは0.2〜10モル%である。
【0024】
(FEP)
また、FEPとしては、TFEに基づく繰返し単位/ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰返し単位のモル比が、好ましくは98/2〜50/50、より好ましくは95/15〜60/40、最も好ましくは90/10〜75/25である。
【0025】
FEPは、TFE及びヘキサフルオロプロピレンの他に、その他の単量体に基づく繰返し単位を含んでいてもよい。その他の単量体としては、CF2=CFCl、CF2=CH2などのフルオロエチレン類(ただし、TFEを除く。);CF2=CHCF3などのフルオロプロピレン類(ただし、ヘキサフルオロプロピレンを除く。);CF3CF2CF2CF2CH=CH2、CF3CF2CF2CF2CF=CH2などの炭素数が4〜12のフルオロアルキル基を有する(パーフルオロアルキル)エチレン類;Rf(OCFXCF2mOCF=CF2(式中Rfは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、Xは、フッ素原子又はトリフルオロメチル基、mは、0〜5の整数を表す。)などのパーフルオロビニルエーテル類;CH3OC(=O)CF2CF2CF2OCF=CF2やFSO2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2などの容易にカルボン酸基やスルホン酸基に変換可能な基を有するパーフルオロビニルエーテル類;プロピレンなどのC3オレフィン、ブチレン、イソブチレンなどのC4オレフィン等のエチレンを除くオレフィン類などが挙げられる。これら共単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて含むこともできる。
【0026】
これらの共単量体に基づく繰返し単位を含有する場合は、その含有割合は、通常FEPの繰返し単位全体に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは0.1〜15モル%、最も好ましくは0.2〜10モル%である。
【0027】
(MI)
本発明における溶融成形性フッ素樹脂は、これを中空体やフィルム等の形態に溶融成形した後、多孔質化するものであるが、適度の溶融成形性を有するためには、そのメルトインデックス値(MI)は、0.5〜40のものが好ましく、さらに好ましくは1〜30である。MIは樹脂の溶融成形性の尺度であり、一般的に、MIが大きいとポリマー分子量は小さくなり、MIが小さいとポリマー分子量は大きくなる。
【0028】
本発明において、MIが上記した範囲より大きすぎると、得られたフッ素樹脂多孔体に対し、熱処理を行っても強度の向上効果が小さい。また、MIが上記範囲より小さすぎる場合、樹脂の成形性が悪くなるので、必然的に加工温度の上昇を伴うことになり、当該溶融成形性フッ素樹脂以外の成分の熱分解を生起しやすくなり好ましくない。
【0029】
(溶剤可溶性樹脂)
本発明において、上記溶融成形性フッ素樹脂に配合して用いられる溶剤可溶性樹脂とは、成形体を形成後にその溶剤で抽出処理することにより、当該成形体内に空孔を形成して多孔質化するものである。したがって、当該溶融成形性フッ素樹脂をマトリックスとして、フッ素樹脂内に細かく、かつ、良好に分散しうるとともに、当該フッ素樹脂と高温で混練、溶融成形されることから、耐熱性を有することが要求される。
【0030】
かかる溶剤可溶性樹脂としては、特に限定するものではないが、フッ素系の樹脂が好ましく、たとえばポリフッ化ビニリデン及びフッ化ビニリデン共重合体などが好ましいものとして挙げられる。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデン(VDF)と、TFE、ヘキサフルオロプロピレン及びエチレンからなる群から選ばれた1種以上との共重合体が挙げられる。より好ましくは、ポリフッ化ビニリデンである。なお、本発明の効果を大きく阻害しない範囲で、溶剤可溶性の樹脂として、上記特性を有するものであれば、公知の種々の樹脂を使用することも可能である。
【0031】
(無機微粉末)
本発明において、溶剤可溶性樹脂とともに、溶融成形性フッ素樹脂に配合して用いられる無機微粉末も、成形体の形成後にその溶剤で抽出処理されることにより、当該成形体内に空孔を形成して多孔質化するものであるが、当該溶剤可溶性樹脂のフッ素樹脂中における分散性を高めると共に、より均一な多孔構造の形成に寄与し、さらに無機微粉体それ自身の抽出による空孔形成を重畳することにより、多孔体全体としての空孔率の増加、及び機械的強度の維持に寄与する機能を有するものである。
【0032】
無機微粉体としては、上記機能を有するものであれば、それ自身公知のものがいずれも使用可能であり、特に限定するものではない。例えば、無水シリカ、タルク、クレー、カオリン、マイカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム等が好適なものとして挙げられる。これらのなかでは、特に無水シリカが好ましい。
【0033】
当該無機微粉体の粒径は、好適な微細孔を形成するために、30〜0.01μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜0.02μm、最も好ましくは10〜0.03μmである。
【0034】
(組成割合)
本発明においては、上記した溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末からなる組成物を基本的コンパウンドとして溶融成形するものであるが、その組成割合(混合割合)は、溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、無機微粉末5〜30質量%の範囲が好ましい。
【0035】
当該組成物中の溶融成形性フッ素樹脂の含有量は、より好ましくは25〜55質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。溶融成形性フッ素樹脂の含有量があまり少なく、20質量%未満では、後記する熱処理を行っても充分な強度の多孔体が得られにくく、60質量%を超えると、空孔率の低い多孔体となり、透水量が低くなる傾向となり好ましくない。組成物中の溶融成形性フッ素樹脂の割合が上記範囲にあると、機械的強度に優れ、かつ、透水性に優れる多孔体が得られるものであり好ましい。
【0036】
一方組成物中の溶剤可溶性樹脂の含有量は、より好ましくは25〜55質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。溶剤可溶性樹脂の量が少なく、20質量%未満では、得られる多孔体の空孔率が非常に低下し、一方、溶剤可溶性樹脂が60質量%を超えると、機械的強度の高い多孔体が得られにくく好ましくない。組成物中の溶剤可溶性樹脂の割合が上記範囲にあると、機械的強度に優れ、空孔率の高い多孔体が得られるため好ましい。
【0037】
さらに、組成物中の無機微粉末の含有量は、より好ましくは8〜28質量%であり、さらに好ましくは10〜25質量%である。無機微粉体が上記範囲より少ないと、溶融成形性フッ素樹脂中における溶剤可溶性樹脂の分散性を十分向上させることができず、一方無機微粉体が上記範囲より多いと、膜の成形時に好ましくない影響を与えるため好ましくない。組成物中の無機微粉末の割合が上記範囲にあると、溶融成形性フッ素樹脂中における溶剤可溶性樹脂の分散性に優れ、膜等の成形体の形成時に悪影響を及ぼすことがない。
【0038】
(耐熱性有機液状体)
本発明においては、溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末からなる組成物に、所望により、更に耐熱性有機液状体を混合することも好ましい。耐熱性有機液状体を混合することにより、当該組成物を溶融成形した成形体を、多孔質化して得られる多孔体の多孔構造の均一性をより向上させることができる。すなわち、これら耐熱性有機液状体は、通常溶剤可溶性樹脂の抽出時に共に抽出され、より均一な多孔質化に寄与すると推定される。
【0039】
当該耐熱性有機液状体としては、溶融成形時に液体であり、かつ、無機微粉体に対し不活性であるものが好ましい。たとえば、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーや、アジピン酸イソブチルエステル、トリメリット酸エステル、シリコンオイル等が好ましいものとして挙げられる。当該耐熱性有機液状体の混合量は、溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末の合計100質量部に対して、5〜45質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。
【0040】
(溶融成形工程(第1工程))
本発明においては、上記のごとくして得た、溶融成形性フッ素樹脂20〜60質量%、溶剤可溶性樹脂20〜60質量%、及び無機微粉末5〜30質量%からなる溶融成形性フッ素樹脂組成物(以下、単に「フッ素樹脂組成物」ともいう。)を溶融成形してその成形体を得る(第1工程)。
【0041】
当該フッ素樹脂組成物は、溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末を、所定の割合で、適当な粉体混合機、例えばV型混合機、二重円錐混合機、リボン型混合機、短軸ローター型混合機、タービン型混合機、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等に投入して予備的に混合した後、一軸又は二軸押出機を用いて、混練し、あらかじめペレット化することが好ましい。
【0042】
または、当該溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末の各成分を、直接、各々独立したフィーダーから、所定の割合で、当該一軸又は二軸押出機に投入し、混練して、ペレット化してもよい。
【0043】
また、当該フッ素樹脂組成物に、さらに耐熱性有機液状体を混合する場合には、無機微粉末と耐熱性有機液状体をあらかじめ混合した混合物を、一軸又は二軸押出機にフィーダー供給を行うか、または、当該押出機の途中から、耐熱性有機液状体を独立して供給することにより、同様にペレット化を実施することができる。もちろん、ヘンシェルミキサー等の混合機に、溶融成形性フッ素樹脂等主成分とともに耐熱性有機液状体を添加して混合し、さらに一軸又は二軸押出機を用いて混練、ペレット化してもよい。
【0044】
ついで、当該ペレットを、少なくとも当該フッ素樹脂の融点以上、好ましくは融点+20℃以上の温度で、かつ、分解温度未満の温度において適当なダイと組み合わされた押出成形機により、溶融押出成形して、少なくとも溶融成形性フッ素樹脂、溶剤可溶性樹脂、及び無機微粉末からなる当該フッ素樹脂組成物の成形体が得られる。すなわち、上記押出機に供給されたペレットは、当該押出機の単軸または二軸スクリュー部で、可塑化、混練、溶融され、当該フッ素樹脂組成物は、押出機に直結されたダイに供給され所望の形状の成形体に賦形化される。
【0045】
ダイとしては、成形体の形状に応じて適宜変更することが可能であり、成形体がチューブ、パイプ、中空糸等の中空管である場合は、当該中空管の内径、外径、管厚み等のサイズに応じた、ダイ径の円環状ダイ(中空ダイ又はパイプ用ダイ)を使用することが好ましい。かかる円環状ダイとしてはストレートダイ、クロスヘッドダイ、オフセットダイ等が使用される。円環状ダイより押し出された中空管は、通常水槽中に浸漬され冷却される。
【0046】
また、成形体がフィルムやシート等の平膜の場合は、その厚みに応じたTダイ(またはフラットダイ)を使用することが好ましい。押出機でペレットから可塑化、溶融された当該フッ素樹脂組成物は、Tダイに供給され、広幅化されて先端の隙間から押出され、引き取られるとともに、キャストロール等で冷却固化してフィルム、シート等が得られる。
【0047】
なお、成形体が、比較的厚いシートのような場合は、押出成形以外に、カレンダー成形やプレス成形によって形成することも可能である。
【0048】
また、細径の中空管を形成する場合は、電線やケーブルに対して行われている被覆工程を適用してもよい。すなわち、通常の押出成型機に銅等の芯線を供給し、当該芯線の表面に円環状ダイから溶融フッ素樹脂組成物を押出して被覆するものである。得られた被覆芯線より、この芯線を引き抜くことにより、細径のチューブ等の中空管が形成される。
【0049】
(抽出処理工程(第2工程))
以上第1工程において形成したフッ素樹脂組成物の成形体を、溶剤処理し、溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末を抽出して多孔質化し、当該フッ素樹脂の多孔質成形体(先に定義したように、単に「フッ素樹脂多孔体」ということもある。)を得る抽出工程(第2工程)、すなわち多孔質化工程が実施される。
【0050】
溶剤可溶性樹脂の抽出に用いられる溶剤としては、当該溶剤可溶性樹脂を溶解し、フッ素樹脂を実質的に溶解しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレ等ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0051】
当該抽出を実施するための装置としては、一般的に固体抽出(リーチング)を実施しうる装置であれば、特に限定するものではなく、機械的又はエアリフト等の撹拌手段を備えた槽型抽出器、浸漬型抽出器、貫流型抽出器、塔型抽出器、回転室型抽出器等が好適に使用される。抽出操作は、回分操作、半回分操作、連続操作のいずれで実施することもできる。なお、連続操作の場合は、常法にしたがい、向流多段抽出操作とすることが好ましい。
【0052】
抽出温度は、通常、室温〜当該溶剤の沸点未満の温度が採用される。また、抽出時間は、抽出溶剤の種類、成形体に対する抽出溶剤の使用量、成形体の形状、大きさ、成形体中の溶剤可溶性樹脂の含量、抽出操作の形態、抽出装置の種類等によって変わりうるが、通常0.1〜50時間、好ましくは1〜30時間、さらに好ましくは5〜20時間程度である。
【0053】
溶剤可溶性樹脂の抽出に引き続き、無機微粉体の抽出が行われる。無機微粉体の抽出に用いられる溶剤としては、当該無機微粉体を溶解し、溶融成形性フッ素樹脂を溶解しないものであれば特に限定されるものではない。無機微粉体が炭酸カルシウムや炭酸バリウム等酸に可溶な粉体である場合には、溶剤としては、塩酸や硫酸等が用いられ、無機微粉体が、無水シリカ等アルカリに可溶な場合には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液が用いられる。なお、無水シリカの場合は、フッ酸で抽出することも可能である。
【0054】
当該抽出を実施するための装置としては、基本的に、溶剤可溶性樹脂の抽出において用いられたものがそのまま使用され、抽出操作も同様に、回分操作、半回分操作、連続操作のいずれでも実施することができる。なお、連続操作の場合は、向流多段抽出操作としうることも同様である。
【0055】
抽出温度は、通常、室温〜当該水酸化ナトリウム水溶液等の沸点未満の温度が採用される。また、抽出時間は、上記と同様に抽出溶剤の種類や抽出温度等によって、変わりうるが、通常0.1〜30時間、好ましくは1.5〜10時間、さらに好ましくは1〜5時間程度である。なお、上記抽出工程において、その順序は特に限定するものでないが、溶剤可溶性樹脂の抽出後に無機微粉末の抽出を行うことが好ましい。
【0056】
抽出処理後の多孔質成形体は、水または適当な溶媒で洗浄後に、100℃未満程度の温度で予備乾燥しておくことが好ましい。
【0057】
(熱処理工程(第3工程))
本発明においては、第2工程の抽出処理により多孔質化された、フッ素樹脂多孔質成形体は、当該溶融成形性フッ素樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度で熱処理され、機械的強度を向上せしめられる。なお、本発明において、融点はJISK7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、DSC220C)を用いて、昇温速度10℃/分で測定される値である。
【0058】
当該熱処理に使用される加熱装置又は加熱手段(熱源)としては、当該フッ素樹脂多孔質成形体を収容し、これを上記温度に加熱、保持しうるものであれば、特に限定するものではなく、例えば熱風乾燥機、電気炉、真空乾燥器、連続乾燥炉、マイクロ波乾燥機、赤外線加熱器、高周波加熱装置等任意のものが採用される。具体的には、ガラス転移温度以上に設定した電気炉や、熱風式のギアオーブン等に、当該熱処理すべき多孔体を装入し、当該オーブン中で保管する一般的な方法により、何ら問題はなく好適に実施することができる。
【0059】
本発明においては、このように、フッ素樹脂多孔体を、ガラス転移温度以上で熱処理することにより、溶融成形時の応力歪みを緩和すると共に、再結晶化が行われるため、当該多孔体は機械的強度が大幅に向上すると推察される。ここで、当該熱処理をガラス転移温度(Tg)未満において行った場合には、応力歪みの緩和は行われるが、上記再結晶化にまでは至らないため、本発明の効果を奏することはできない。一方、融点(Tm)以上において熱処理した場合は、当該多孔体自体が溶融、変形し、当該多孔体としての形状を維持できないことになる。より好ましくは、(Tg+20℃)以上(Tm−20℃)の温度範囲である。
【0060】
特にフッ素樹脂多孔体がETFEの場合は、当該熱処理温度は、100〜250℃が好ましく、110〜240℃がより好ましい。
【0061】
多孔質成形体の熱処理時間は、熱処理温度、処理装置、当該多孔体の形状、多孔体を形成するフッ素樹脂の種類等によって変わりうるが、通常15分〜50時間、好ましくは30分〜30時間、さらに好ましくは30分〜25時間である。
【0062】
以上のごとくして、溶融成形性フッ素樹脂多孔体を、本発明で規定するガラス転移温度以上融点未満の温度で熱処理することによって、優れた耐薬品性、透水性を備えるとともに、機械的強度が大幅に向上したフッ素樹脂多孔体が得られる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。これらの例において、混合割合は質量比で示す。なお、メルトインデックス(MI)、ガラス転移温度(Tg)、多孔度(ε)及び引張強度(TS)は以下のようにして測定した。
【0064】
(a)〔メルトインデックス(MI)(g/10min)の測定〕
ASTM D3159−98に準拠し、タカラ工業社製メルトインデクサーを用いて、297℃で測定した。
(b)〔ガラス転移温度(Tg(℃))の測定〕
JIS K 7244−4 に準拠し、動的粘弾性測定装置(「レオログラフ・ソリッド」、東洋精機製作所製)を使用して、測定周波数:10Hzで測定した。
【0065】
(c)〔多孔度(ε(%))の測定〕
フッ素樹脂多孔体の多孔度(空孔率ともいう。)ε(%)は、次式(1)を使用して求めた。
ε=[(d−d')/d]×100 (1)
ここで、d=溶融成形性フッ素樹脂の真比重、d'=溶剤可溶性樹脂及び無機微粉末抽出後の多孔体の見かけ比重を表す。
【0066】
(d)〔引張強度(TS)(MPa)の測定〕
成形体が多孔質中空管である場合の引張強度は、当該多孔質中空管のサンプルをチャック間25mm、速度50mm/分で引張ったときの破断強さを、引張り前の見かけの断面積で除した値を引張強度とした。
また成形体が多孔質シートである場合の引張強度は、1mm厚の多孔質シートを、ASTM D638−00に準じ、ダンベル形状5、チャック間25.4mm、速度50mm/分で引張ったときの破断強さを、引張り前の見かけの断面積で除した値を引張強度とした。
【0067】
〔実施例1〕
(1)溶融成形性フッ素樹脂として、300℃におけるメルトインデックス値(MI)が3.8であるエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(以下「ETFE」ともいう。)(フルオンC−88AX、旭硝子社製、Tg=93℃、Tm=260℃)1200gと、溶剤可溶性樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーT−#1100、 クレハ社製) 1800g、無機微粉体として無水シリカ(AEROSIL OX50、日本アエロジル社製、1次粒子平均粒子径40nm)750gを、二軸押出機を用いて成形温度280℃で溶融混練してそのペレットを得た。なお、ETFE/ポリフッ化ビニリデン/無水シリカの質量比は、32/48/20であった。
【0068】
当該ペレットを30mm単軸押出機を用いて、樹脂温度280℃で溶融混練し、外径2.9mmφ、内径2.0mmφのダイを取り付けた電線被覆用押出装置にて、溶融押出しを行い、水槽で冷却を行った。その後、芯線を引き抜き、外径1.5mmφ、内径0.9mmφの成形体としての中空管(チューブ)を得た。
【0069】
(2)得られた中空管は、所定寸法に切断した後、65℃に加温したN,N−ジメチルホルムアミド(ポリフッ化ビニリデンの溶剤)に10時間浸漬して、当該ポリフッ化ビニリデンを抽出した。次いで、得られた中空管を、さらに80℃に加温した15質量%のKOH水溶液に2時間浸漬して無水シリカを抽出した。抽出処理された中空管を、水洗し、80℃において、24時間予備乾燥(予備熱処理)して、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質中空管を得た。
【0070】
(3)この多孔質中空管を、熱風式ギアオーブンを使用して230℃で24時間の熱処理を行い製品多孔質中空管が得られた。当該熱処理温度230℃は、ETFEのガラス転移温度Tg(90℃)以上で、融点Tm(260℃)より低い温度として選択されたものである。かくして得られた多孔質中空管の物性(多孔度及び引張強度)を測定した結果を表1に示す。
【0071】
〔比較例1〕
実施例1において、80℃、24時間の予備乾燥(予備熱処理)して得られた、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質中空管を、230℃における熱処理を実施しないで、その物性を測定した結果を表1に示した。
【0072】
【表1】


【0073】
〔実施例2〕
(1)溶融成形性樹脂として実施例1で使用したものと同一のエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(フルオンC−88AX、旭硝子社製)10.9g、溶剤可溶性樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーT−#1100、 クレハ社製)7.9g、無機微粉体として無水シリカ(AEROSIL OX50、日本エアロジル社製、1次粒子平均粒子径40nm)3.3g、及び耐熱性有機液状体としてクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(ダイフロイル#1、ダイキン社製)5.2gを、東洋精機製ラボプラスミルを使用して、加工温度300℃で10分間溶融混練して混合し、同300℃で5分間プレス加工を行い、成形体として1mm厚のシートを作成した。なお、ETFE/ポリフッ化ビニリデン/無水シリカ/クロロトリフルオロエチレンオリゴマーの質量比は、49.4/35.8/14.8/23.5であった。
【0074】
(2)当該シートを、ポリフッ化ビニリデンの溶剤であるN,N−ジメチルホルムアミドに、65℃で10時間浸漬して当該ポリフッ化ビニリデンを抽出した。次いで、得られたシートを、80℃、15質量%のKOH水溶液に2時間浸漬して無水シリカを抽出した。
【0075】
抽出処理された多孔質シートを水洗し、80℃において、24時間予備乾燥(予備熱処理)してエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質シートを得た。
(3)この多孔質シートを、熱風式ギアオーブンを使用して120℃で24時間の熱処理を行い製品多孔質シートが得られた。当該熱処理温度120℃は、ETFEのガラス転移温度Tg(90℃)以上で、融点Tm(260℃)より低い温度として選択されたものである。当該多孔質シートの物性(多孔度と引張強度)を測定した結果を表2に示した。
【0076】
〔比較例2〕
実施例2において、80℃、24時間の予備乾燥(予備熱処理)して得られた、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質シートを、120℃における熱処理を実施しないで、その物性を測定した結果を表2に示した。
【0077】
【表2】


【0078】
〔実施例3〕
(1)溶融成形性樹脂として実施例2で使用したものと同一のエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(フルオンC−88AX、旭硝子社製)12.6g、溶剤可溶性樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーT−#1100、 クレハ社製)14.7g、無機微粉体として無水シリカ(AEROSIL OX50、日本エアロジル社製、1次粒子平均粒子径40nm)4.2g、及び耐熱性有機液状体としてクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(ダイフロイル#1、ダイキン社製)10.5gを用いる以外は実施例2と同様に1mm厚のシートを作成した。なお、ETFE/ポリフッ化ビニリデン/無水シリカ/クロロトリフルオロエチレンオリゴマーの質量比は、40.0/46.7/13.3/33.3であった。
【0079】
(2)当該シートを、実施例2と同様にして、N,N−ジメチルホルムアミド及びKOH水溶液による抽出操作を行った。
抽出処理された多孔質シートを、水洗し、実施例2と同様にして、80℃において、24時間予備乾燥(予備熱処理)してエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質シートを得た。
【0080】
(3)この多孔質シートを、熱風式ギアオーブンを使用して、実施例2と同様にして、120℃で24時間の熱処理を行い製品多孔質シートが得られた。当該多孔質シートの物性(多孔度と引張強度)を測定した結果を表2に示した。
【0081】
〔比較例3〕
実施例3において、80℃、24時間の予備乾燥(予備熱処理)して得られた、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体の多孔質シートを、当該120℃における熱処理を実施しないで、その物性を測定した結果を表2に示した。
【0082】
実施例1〜3と対応する比較例1〜3(及びその結果を示す表1〜2)により明らかなように、ETFE等の溶融成形性フッ素樹脂の多孔体を、そのガラス転移温度Tg以上で、融点Tmより低い温度において熱処理することにより、多孔度(空孔率)に実質的な変化を伴うことなく、その機械的強度(引張強度)が非常に増大することが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の製造方法によって得られた、フッ素樹脂多孔体である多孔質中空管(チューブ)、フィルム、またはシートは、優れた耐薬品性と優れた濾過性能があるとともに、その機械的強度に優れる為、飲料水、浄水、下水処理やし尿処理、膜分離活性汚泥処理、排水処理、廃液処理といった水処理用途における、水処理用膜、分離用中空糸、水処理用中空糸等として好適に使用することが出来る。
【出願人】 【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
【出願日】 平成18年7月4日(2006.7.4)
【代理人】 【識別番号】100085947
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 信夫


【公開番号】 特開2008−13615(P2008−13615A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−184149(P2006−184149)