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【発明の名称】 耐熱性に優れた生分解性延伸成形容器
【発明者】 【氏名】伊藤 卓郎

【氏名】森 拓己

【氏名】杉岡 宏明

【要約】 【課題】従来の耐熱性技術の欠点を改良し、優れた耐熱性を有するポリ乳酸樹脂から成る延伸成形容器及びその製法を提供する。

【構成】ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)をA:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物を用いて成る延伸成形容器であって、65℃×24時間の熱処理条件における熱収縮量が5.0%以下である延伸成形容器。該容器は、予備成形体を、一次ブロー成形、加熱収縮行程、二次ブロー成形、並びに熱固定の各行程からなる二段ブロー成形する製法により得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)をA:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物を用いて成る延伸成形容器であって、65℃×24時間の熱処理条件における熱収縮量が5.0%以下であることを特徴とする延伸成形容器。
【請求項2】
胴部、または胴部と底部とが熱固定されている請求項1に記載の延伸成形容器。
【請求項3】
前記樹脂組成物の示差走査熱量計による等温結晶化法における半結晶化時間が1.0乃至600秒の範囲にある請求項1または2に記載の延伸成形容器。
【請求項4】
容器口部が熱結晶化されている請求項1乃至3の何れかに記載の延伸成形容器。
【請求項5】
示差熱量計(DSC)測定での昇温曲線において、容器口部壁は、下記式:
R=結晶化ピーク高さ/PLLAの結晶融解ピーク高さ
で定義されるピーク比Rが0.3以下である請求項4に記載の延伸成形容器。
【請求項6】
ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を、A:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物から成り、口部が熱結晶化されている予備成形体を二軸延伸ブロー成形し、胴部、または胴部と底部とを熱固定することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の延伸成形容器の製法。
【請求項7】
ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を、A:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物から成り、口部が熱結晶化されている予備成形体を、一次ブロー成形工程、加熱収縮工程、二次ブロー成形工程、並びに熱固定工程から成る二段ブロー成形することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の延伸成形容器の製法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性延伸成形容器に関し、より詳細にはステレオコンプレックス結晶構造を形成し得るポリ乳酸樹脂組成物から成り、耐熱性に顕著に優れた延伸成形容器及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック廃棄物の理想的解決法として、自然環境で消滅する分解性プラスチックが注目されており、中でもバクテリヤや真菌類が体外に放出する酵素の作用で崩壊する生分解性プラスチックが従来より使用されており、この生分解性プラスチックの中でも、工業的に量産されて入手が容易であり、環境にも優しい脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸が包装容器の分野で使用されている。
ポリ乳酸(PLLA)は、トウモロコシなどの穀物でんぷんを原料とする樹脂であり、でんぷんの乳酸発酵物、L−乳酸をモノマーとする重合体であり、一般にそのダイマーであるラクタイドの開環重合法、及び直接重縮合法により製造される。この重合体は、自然界に存在する微生物により、水と炭酸ガスに分解され、完全リサイクルシステム型の樹脂としても着目されている。またそのガラス転移点(Tg)も約60℃とポリエチレンテレフタレートのTgに近いという利点を有している。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸の延伸成形体を、例えば飲料用容器等の用途に適用しようとする場合には、未だ解決しなければならないいくつかの問題点が存在する。すなわち、充填する内容物の保存性を向上させるためには、何らかの加熱殺菌乃至滅菌処理が必要となるが、公知のポリ乳酸製の延伸成形体は耐熱性に欠けており、アセプティック充填の際の薬剤殺菌の後施される熱水シャワー洗浄のような比較的低温の加熱でもかなりの熱変形を生じるという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、本発明者等によりポリ乳酸を主体とするヒドロキシアルカノエート樹脂を延伸成形後所定温度で熱固定し、成形体の配向結晶性を向上させて、耐熱性を向上させることが提案されている(特許文献1)。
また耐熱性が向上されたポリ乳酸として、L−乳酸単位のみから成るポリ−L−乳酸とD−乳酸単位のみから成るポリ−D−乳酸から成るステレオコンプレックスポリ乳酸も知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】WO2003/008178号公報
【特許文献2】特開2006−36808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、延伸後熱固定を行うことにより耐熱性を向上させる場合には、延伸配向された容器胴部の熱固定により耐熱性を向上することができるが、熱固定により口部の耐熱性を向上させることは困難であった。すなわち、ポリ乳酸の結晶化速度はポリエチレンテレフタレートに比べ一桁遅いため、従来のポリエチレンテレフタレートの容器のように口部を熱結晶化することができず、そのため、ポリ乳酸から成る容器の口部においては、ポリ乳酸のガラス転移温度(Tg=58℃)に依存し、通常55℃程度のまでの耐熱性しか得ることができなかった。
また上記ステレオコンプレックスポリ乳酸から成る樹脂を用いて延伸成形する場合には、旋光性の異なるポリ−D−乳酸とポリ−L−乳酸を溶融混合させることにより、光学活性異性体からなるステレオコンプレックス結晶構造を形成するが、ステレオコンプレックスを形成した結晶領域は耐熱性が向上するものの、ステレオコンプレックスを形成しない残余PLLAやPDLA樹脂成分は、もともと左旋光のヘリックス構造や右旋光のヘリックス構造を形成するため、延伸成形時に、延伸歪み成分を生成しやすいという性質を有している。このことから、PDLAやPLLA樹脂を単に溶融混合し延伸成形する場合、ステレオコンプレックスを形成し、耐熱性が向上した結晶領域と、ステレオコンプレックスを形成できず単独分子の延伸配向成分の存在により延伸歪が形成しやすい傾向を有している。その結果、PDLAとPLLAからなる溶融混合物の延伸成形の場合、十分な耐熱性や寸法安定性等の確保において、PDLAとPLLAが形成する延伸歪み成分の熱緩和も重要な要素となっている。
【0007】
従って本発明の目的は、従来の耐熱性技術の欠点を改良し、優れた耐熱性を有するポリ乳酸樹脂から成る延伸成形容器及びその製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とから樹脂組成物であって、ステレオコンプレックスを形成しうるポリ−D―乳酸組成量の組成比率が少ない、すなわちポリ−L−乳酸組成比率が高い樹脂組成物において、未延伸部分も例えばポリエチレンテレフタレートと同程度に結晶化速度が速くなるという新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)をA:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物を用いて成る延伸成形容器であって、65℃×24時間の熱処理条件における熱収縮量が5.0%以下であることを特徴とする延伸成形容器が提供される。
本発明の延伸成形容器においては、
(1)前記樹脂組成物の示差走査熱量計による等温結晶化法における半結晶化時間が1.0乃至600秒の範囲にあること、
(2)胴部、または胴部と底部とが熱固定されていること、
(3)容器口部が熱結晶化されていること、
(4)示差熱量計(DSC)測定での昇温曲線において、容器口部壁は、下記式:
R=結晶化ピーク高さ/PLLAの結晶融解ピーク高さ
で定義されるピーク比Rが0.3以下であること、
が好適である。
【0009】
本発明によればまた、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を、A:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物から成り、口部が熱結晶化されている予備成形体を二軸延伸ブロー成形し、胴部、または胴部と底部とを熱固定することを特徴とする、上記延伸成形容器の製法が提供される。
本発明によれば更にまた、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を、A:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物から成り、口部が熱結晶化されている予備成形体を、一次ブロー成形工程、加熱収縮工程、二次ブロー成形工程、並びに熱固定工程から成る二段ブロー成形することを特徴とする、上記延伸成形容器の製法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の延伸成形容器は、ポリ乳酸樹脂から形成されていながら優れた耐熱性を有しており、特に、後述する実施例の実験結果を示す図1から明らかなように、熱結晶化時間が著しく速く、ポリエチレンテレフタレートと同レベルにある。このため、従来のポリ−L−乳酸からなるポリ乳酸樹脂製延伸容器が、口部結晶化処理工程で結晶化に長時間を要するために口部結晶化を施すことが工業的に不可能であったのに対し、本発明では、例えばボトルの首部(ノズル部)等の口部の熱結晶化が可能となり、このような熱結晶化により、アセプティック充填時の熱水シャワーリンスを施すことができる。従って、本発明の延伸成形容器は、殺菌が必要な飲料用容器としても使用することができる。
また口部の熱結晶化や、少なくとも胴部での熱固定により、容器の全体が従来のポリ乳酸から成る容器よりも耐熱性が高く、ガスバリア性を向上させる目的で施される無機蒸着法などの耐熱性が要求される工程においても安定して無機蒸着膜を形成することが可能となり、耐熱性とガスバリア性を兼ね備えたポリ乳酸製容器を提供することができる。
更に本発明の延伸成形容器の製法によれば、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を含有して成る樹脂組成物を延伸成形する際に生じる延伸歪を有効に緩和することができ、優れた耐熱性及び寸法安定性を有する延伸成形容器を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の延伸成形容器は、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)をA:B=95:5乃至60:40、特に94:6乃至70:30の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物を用い、65℃×24時間の熱処理条件における熱収縮量が5.0%以下であることが重要な特徴である。
前述したように、ポリ−L−乳酸は一般に結晶化速度が遅いため、口部を熱結晶化したプリフォームを形成できず、その結果、ポリ乳酸容器の耐熱性を向上させることができなかったが、本発明においては、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを、ポリ−L−乳酸が過剰となる上記モル比で使用しても、形成される高次構造(ステレオコンプレックス)が結晶核造核剤として作用し、この結果、従来用いられていたポリ乳酸樹脂に比して結晶化速度が速くなるという特徴を有している。
このことは、ポリ−L−乳酸(d%=1.5%)、本発明で用いるポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を上記モル比で含有して成る樹脂組成物及びポリエチレンテレフタレートの等温結晶化法における半結晶化時間を示す図1からも明らかである。
【0012】
すなわち、従来容器の成形に用いられていたポリ−L−乳酸(d%=1.5%)は、ポリエチレンテレフタレートに比して半結晶化時間が長いのに対して、本発明で用いるポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を所定のモル比で含有して成る樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレートとほぼ同程度の半結晶化時間であることが理解される。
従って本発明の延伸成形容器においては、ポリエチレンテレフタレートの場合と同様に、プリフォーム口部をあらかじめ熱結晶化することができるため、従来問題となっていた容器口部の耐熱性を顕著に向上させることができ、容器口部をも含めて顕著に耐熱性が向上された延伸成形容器を提供することが可能となるのである。
一方、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを等量混合した場合は、再加熱時に結晶化が進み延伸成形がしづらい樹脂組成となる。
【0013】
ところで、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を上記のようなモル比で含有して成る樹脂組成物は、前述したとおり、旋光性の異なるポリ−D−乳酸とポリ−L−乳酸の混合物であることに由来して、非晶領域において延伸歪が生成しやすく、熱収縮を生じやすいという問題がある。
従って本発明においては、延伸成形過程での熱歪み緩和や、延伸成形後の熱固定、或いは二段ブロー成形法等を採用することにより、延伸成形により生じる延伸歪を緩和させることで、65℃×24時間の熱処理条件における熱収縮量が5.0%以下と、熱収縮が抑制された延伸成形容器を提供することが可能となるのである。
【0014】
(ポリ乳酸樹脂組成物)
本発明で用いる樹脂組成物は、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)をA:B=95:5乃至60:40、特に94:6乃至70:30の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物であり、上記範囲よりもポリ−L−乳酸(A)の含有量が少ない場合には生分解性に劣り、一方上記範囲よりもポリ−D−乳酸(B)の含有量が少ない場合には、プリフォームの口部を熱結晶化し得る程度にまで結晶化速度を向上することができず、耐熱性の向上を図ることができない。
本発明に用いる樹脂組成物は、上述したように、100%ポリ−L−乳酸或いは100%ポリ−D−乳酸に比して結晶化速度が向上されており、示差走査熱量計による等温結晶化法における半結晶化時間が1.0乃至600秒、特に20乃至180秒の範囲にあるものであることが、耐熱性の点から好ましい。
【0015】
乳酸単位は、下記式(1)
H O
| ‖
−(−O−C−C−)− ・・・(1)

CH
を基本構成単位とするものである。
ポリ−L−乳酸(A)は、L−乳酸単位と、D−乳酸単位及び/又はD−乳酸以外の共重合成分単位とから構成され、L−乳酸単位を90乃至99モル%の範囲で含有するものであり、ポリ−D−乳酸(B)は、D−乳酸単位と、L−乳酸単位及び/又はL−乳酸以外の共重合成分単位とから構成され、D−乳酸単位を80乃至99モル%の範囲で含有するものである。
D−乳酸単位及びL−乳酸単位以外の共重合成分単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位及びこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位を単独若しくは混合して使用される。成形性の点から、ポリ−L−乳酸は、重量平均分子量(Mw)にて10万乃至30万の範囲の重量平均分子を有することが好ましく、またポリ−D−乳酸は、重量平均分子量(Mw)にて5万乃至30万の範囲の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0016】
本発明に用いる樹脂組成物は、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を上記モル比でブレンドすることにより、ステレオコンプレックス結晶構造を形成することができる。ブレンドにより調製する場合には、170至250℃の温度範囲で加熱溶融混合することにより、上述したステレオコンプレックス構造を形成することができる。
また予めポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)を一定の割合でメルトブレンド又は共重合したマスターバッチを使用し、これをポリ−L−乳酸(A)に溶融混合することによってもステレオコンプレックス結晶構造を形成し得る樹脂組成物を調製することができる。
尚、かかる樹脂組成物は、260℃以上の熱履歴を加えることは避けるべきである。このような高温に加熱されると、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸の熱分解が生じ、収縮率の増大等の性能低下を生じてしまうからである。
【0017】
本発明に用いる樹脂組成物は、その用途に応じて、各種着色剤、無機系或いは有機系の補強剤、滑剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、増粘剤、減粘剤、安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、防錆剤等を、公知の処方にしたがって配合することができる。
また本発明に用いる樹脂組成物においては、ステレオコンプレックス結晶構造が結晶核剤として機能し結晶化速度が向上されているため、必ずしも必要ではないが、タルク、カオリン、クレー及びカオリナイト等の無機充填剤や水素・ハロゲン・ヒドロキシ等で構成された複素環化合物、または、鎖アミド・環状アミド・鎖状ヒドラジド・環状ヒドラジドから選択されるアミド化合物を配合することもできる。
無機充填剤の配合量は、一般に0.5乃至40重量%、特に1乃至28重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0018】
本発明に用いる樹脂組成物は、樹脂成分としてポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)のみから成る樹脂組成物であることが好ましいが、ステレオコンプレックス結晶構造を形成し得るポリ乳酸によって得られる優れた耐熱性を損なわない範囲で、他の脂肪族ポリエステル或いは他の樹脂を樹脂成分として含有する樹脂をブレンドすることもできる。この場合、他の脂肪族ポリエステル或いは他の樹脂の含有量が、樹脂組成物中20重量%以下の量であるのがよい。
【0019】
上記樹脂組成物中にブレンド可能な他の樹脂としては、例えば酸素に対してバリア性を示す水酸基含有熱可塑性樹脂、ナイロン樹脂、バリア性脂肪族ポリエステル樹脂、並びに2種以上のジカルボン酸から成るポリエステル樹脂、ハイニトリル樹脂や、水蒸気に対してバリア性を示すオレフィン系樹脂ならびに環状オレフィン系共重合体等の各種のバリア性樹脂を挙げることができる。
これらの内でも、生分解性の点では水酸基含有樹脂や脂肪族ポリエステルが好ましく、水酸基含有樹脂の場合熱成形が可能である限り、任意の樹脂を用いることができる。この樹脂は、その分子鎖中に、水酸基を有する反復単位と、樹脂に熱成形性を付与する単位とを有している。水酸基含有反復単位はビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単位であってよいが、生分解性の点ではビニルアルコール単位が好ましい。この水酸基含有樹脂中に含有される他の単位は、エチレン、プロピレン等のオレフィン単位、酢酸ビニル等のビニルエステル単位;アルキル(メタ)アクリレート単位等が挙げられる。またこれらの水酸基含有樹脂は、少なくともフィルムを形成するに足る分子量を有するべきである。
【0020】
(延伸成形容器の製法)
本発明の延伸成形容器は、上述した樹脂組成物から成り、口部、例えば螺子部やサポートリングを備えた首部が熱結晶化されたプリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって成形することができる。
プリフォームは、上述した樹脂組成物のみからなる単層構造を有していることが好適であるが、場合によっては、前述した樹脂からなる層との積層構造を有していてもよい。積層構造とする場合、必要に応じて層間に接着剤層を設ける。接着剤としては、酸変性オレフィン樹脂などが好適に使用できる。プリフォームへの成形手段は特に制限はなく、従来公知の射出成形或いは圧縮成形によって成形することができる。
成形されたプリフォームの口部の熱結晶化は、口部の外側から口部外壁温度が90℃乃至160℃になる赤外線を照射し、100乃至360秒間、特に120乃至300秒間という短時間での加熱により行うことができる。上記範囲よりも加熱温度が低い、或いは、加熱時間が短い場合には、口部を十分に熱結晶化することができず、一方上記範囲よりも加熱時間が長い或いは加熱時間が長い場合には、口部が変形するおそれがあるため好ましくない。加熱方式は、赤外線加熱、熱風加熱、高周波誘導加熱等従来公知の加熱方式を単独或いは適宜組み合わせることにより、効率よく短時間に口部のみを加熱することができる。
また口部の加熱に際して、樹脂が軟化変形して口部の寸法安定性が低下することを防止するために、口部内に治具を挿入し、内径サイジングを行うことが好ましい。
【0021】
成形されたプリフォームは、延伸ブロー成形に付される前に、80乃至120℃の延伸温度に加熱される。均一且つ高温に加熱されたプリフォームは、従来公知の二軸延伸ブロー成形法によって成形される。尚、プリフォームの成形とその延伸ブロー成形とは、コールドパリソン方式の他、プリフォームを完全に冷却しないで延伸ブロー成形を行うホットパリソン方式にも適用できる。
【0022】
このプリフォームをそれ自体公知の延伸ブロー成形機中に供給し、金型内にセットして、延伸棒の押し込みにより軸方向に引っ張り延伸すると共に、流体の吹込みにより周方向へ延伸成形する。金型温度は、一般に75乃至150℃の範囲にあることが好ましいが、後述するようにブロー成形金型中で熱固定を行う場合は、金型温度を80乃至120℃に設定することが望ましい。
最終の延伸成形容器における延伸倍率は、面積倍率で4乃至9倍が適当であり、この中でも軸方向延伸倍率を1.5乃至3.0倍とし、周方向延伸倍率を1.5乃至3.0倍とするのが好ましい。
【0023】
本発明の延伸成形容器は、ステレオコンプレックス結晶構造に由来する延伸歪を緩和するために、延伸成形後熱固定を行うことが好ましい。熱固定は、ブロー成形金型中で行うこともできるし、ブロー成形金型とは別個の熱固定用の金型中で行うこともできる。
【0024】
また、ステレオコンプレックス結晶構造に由来する延伸成形歪を緩和させる理由から、本発明の延伸成形容器の成形においては、特に二軸延伸ブロー成形として、二段ブロー成形法を採用することが好ましい。
二段ブロー成形法は、延伸温度に加熱されたプリフォームを一次ブロー金型内で一次ブロー成形して二次成形品を成形する一次ブロー成形工程、該二次成形品の少なくとも底部を加熱収縮させて三次成形品を得る加熱収縮工程、該三次成形品を二次ブロー金型内で二次ブロー成形する二次ブロー成形工程から成っている。
二段ブロー成形法においては、延伸ブロー成形を二段に分けて行うため、一次ブロー成形で加工量の大きい延伸を行って高度に延伸配向させることができると共に、加熱収縮工程により延伸歪を緩和させることが可能であり、更に加熱収縮させた三次成形品の二段目のブロー成形における加工率が抑制されていることから、残留歪の低減を図ることも可能である。しかも一段目及び二段目のブロー成形後に熱固定を行うことにより高い結晶化度を成形品に付与でき、耐熱性をより向上することが可能である。
【0025】
二段ブロー成形においても従来公知の条件により行うことができるが、好適には一次ブロー成形における面積延伸倍率が4.0乃至16.0倍、特に縦方向倍率が2.0乃至4.0倍、周方向倍率が2.0乃至4.0倍の範囲であることが好ましい。二次ブロー成形における加工率は、容器の最終形状と加熱収縮させた三次成形品との体積の差が、最終形状の体積の50%以内であることが望ましい。
また加熱収縮工程における熱処理条件は、一次ブロー成形の条件によっても相違するが、一般的に90乃至190℃の温度及び0.5乃至60秒間の処理時間の範囲から適宜定めることができる。
【0026】
また本発明の延伸成形容器は、上述した二軸延伸ブロー成形容器の他、従来公知の圧空成形或いはプラグアシスト成形等による容器であってもよい。
すなわち、フランジと成るべき部分を加熱することによって熱結晶化させたシート等の予備成形体を加熱した後、クランプで保持し、プラグで押圧することにより、軸方向に延伸し、加圧流体を吹き込むことにより周方向に延伸し、金型からの熱伝導によって熱固定を行う。フランジ部の加熱、延伸温度、熱固定温度、延伸倍率などの条件は上述した二軸延伸ブロー成形の条件に準ずることができる。
【0027】
(延伸成形容器)
上記製法により成形された本発明の延伸成形容器は、口部が熱結晶化されており、口部壁を示差熱量計(DSC)測定すると、その昇温曲線において、下記式:
R=結晶化ピーク高さ/PLLAの結晶融解ピーク高さ
で定義されるピーク比Rが0.3以下、特に0.25以下、最も好適には、実質上ゼロである。即ち、熱結晶化前のプリフォームの口部壁を、DSC測定すると、その昇温曲線には、113℃前後の領域に結晶化ピークが発現し、170℃前後にポリ−L−乳酸(PLLA)の結晶融解ピークが発現し、且つ213℃前後にステレオコンプレックスの結晶融解ピークが発現する。しかるに、本発明の容器では、口部壁について、DSC測定すると、その昇温曲線では、PLLAの結晶融解ピーク及びステレオコンプレックスの結晶融解ピークが、熱結晶化前のプリフォームの口部壁と同様に発現しているが、結晶化ピークは、既に結晶化されているため著しく減少し、ピーク比Rが上記のように小さな値(場合によってゼロとなる)。即ち、このピーク比Rが小さいほど、口部壁の結晶化が進行していることを意味する。本発明の容器では、このように口部が結晶化され、例えばボトルの65℃温水洗浄工程において、口部をチャック(締め付け力15〜50N程度)で固定しても口部が変形することがなく、胴部及び底部は延伸配向され且つ熱固定されているため、耐熱性が極めて高く、65℃×24時間の熱処理条件における熱収縮量が5.0%以下、特に1.0%以下と熱収縮が有効に抑制されている。
【0028】
従って本発明の延伸成形容器は、薬剤による殺菌の後に65℃以上の温度の熱水によりシャワー洗浄を行う、アセプティック充填のための殺菌に耐えることが可能であり、飲料用容器として使用することが可能となる。
本発明の延伸成形容器は、これに限定されないが、一般に二軸延伸ブロー成形による場合はボトル形状を有し、圧空成形等の熱成形による場合には、カップ、トレイ等の形状を有しており、カップやトレイなどでは、その周縁のフランジ部が熱結晶化されたものとなっている。
【実施例】
【0029】
本発明の優れた効果を次の実験例で説明する。なお、本発明は実験例の内容に限定されるものではない。
(樹脂)
重量平均分子量(Mw)がMw=200,000で、且つ、光学活性異性体(d)比率が1.5%のポリ−L−乳酸樹脂(Nature Work社製)と、重量平均分子量(Mw)がMw=250,000で、且つ、光学活性異性体(d)比率が99.0%のポリ−D−乳酸樹脂(PURACK社製)を使用し、表1に示す樹脂組成でドライブレンドして樹脂組成物とした。
【0030】
(ボトル成形)
・プリフォームの作成
表1に示す樹脂組成の樹脂組成物を用い、射出成形機にて190℃〜240℃の温度条件下、金型温度15℃に射出成形し、口径35mmΦのプリフォームを作成した。
・プリフォームの口部結晶化処理
上記プリフォームを口部のみを、選択的に赤外線を照射と熱風を吹きつけ、ノズル部外側壁温度を160℃までの温度で2.5分間加熱し、口部を熱軟化させるとともにテフロン製のノズル内径ジグを挿入することで内径サイジングを行った。
・一段延伸ブロー成形
上記口部が熱結晶化されたプリフォームを赤外線ヒーターにて90℃に再加熱後、金型温度85℃の金型を用いたブロー成形機により、面積延伸倍率4〜9倍に延伸し、金型で熱固定を行い、300mL容の平均肉厚300μmのボトルを作成した。
・二段延伸ブロー成形
前記プリフォームを第1の赤外線ヒーターにより90℃に加熱後、金型ブロー成形機を用い、面積延伸倍率4〜16倍に延伸した後、第2の赤外線ヒーターにより〜160℃(上限)の温度に加熱収縮をさせた後、第3の赤外線ヒーターにより90℃の温度範囲に加熱し、金型温度85℃の金型を用いたブロー成形機により300mL容のボトル形状に延伸ブロー成形した。
【0031】
(評価)
・等温結晶化速度
パーキンエルマー社製、示差走査熱量計(DSC)を用い、測定試料を200℃に加熱後、等温結晶化測定温度(70℃〜130℃範囲の一定温度を用いる)に冷却し、恒温に設定後、結晶化に伴う発熱量ピークを求めた。
・示差走査熱量測定
実験例2で作成した口結晶化処理前のボトル口部と口部結晶化処理後のボトル口部、乃び、実験例7で作成した口部結晶化処理前のボトル口部と口部結晶化処理後のボトル口部より切り出した試料(約10mg)を、パーキンエルマー社製、示差走査熱量計(DSC)にて、昇温速度10℃/min測定した。DSCチャートから、80℃以上150℃以下の温度域に生じる結晶発熱ピークトップとベースライン接線間のピーク高さ(ITc)を求め、150℃以上180℃以下の温度域に生じる結晶融解ピークトップとベースライン接線間のピーク高さ(ITm)を求め、下記式(1)から、結晶の生成量を評価した。
(式1):
R=ピーク強度比(ITc/ITm)
=結晶発熱ピーク高さ(ITc)/結晶融解ピーク高さ(ITm)
得られたピーク強度比(ITc/ITm)を図中に示した。
・熱収縮性
20℃の水道水を用い、満注入内容量を求めたボトルを、65℃の恒温槽に24時間正立放置した。保存後のボトルを再度満注入内容量の測定を行い、恒温槽に放置前後の満注入内容量の差から熱収縮率を求めた。
・ボトル耐熱性
倒立状態のボトル口部をグリッパーで挟んだ後、熱水シャワーノズルを口部から挿入し、65℃熱水をボトル内面に60秒間噴出させ、ボトルを熱水シャワー洗浄した。この場合、熱水シャワー後にノズルの変形やボトル変形が確認された場合、評点を×とし、ノズルやボトル形状に変形が生じていないものを○とした。
【0032】
(実験例1〜3)
表1に示す樹脂組成物から射出成形によりプリフォームを成形し、上述した方法によりプリフォーム口部を熱結晶化し、上述した一段延伸ブロー成形法によってボトルを成形した。結果を表1に示す。
尚、実験例2で成形されたボトルについては、口結晶化処理前のボトル口部と口部結晶化処理後のボトル口部について、前述した示差走査熱量測定を行い、それぞれの昇温曲線を図2に示し、且つ図2中に、それぞれのピーク強度比(ITc/ITm)を示した。
【0033】
(実験例3〜6)
表1に示す樹脂組成物から射出成形によりプリフォームを成形し、上述した方法によりプリフォーム口部を熱結晶化し、上述した二段延伸ブロー成形法によってボトルを成形した。結果を表1に示す。
【0034】
(実験例7〜8)
用いる樹脂組成物として表1に示す樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
尚、実験例7で成形されたボトルについては、口結晶化処理前のボトル口部と口部結晶化処理後のボトル口部について、前述した示差走査熱量測定を行い、それぞれの昇温曲線を図3に示し、且つ図3中に、それぞれのピーク強度比(ITc/ITm)を示した。
【0035】
(実験例9)
プリフォーム口部の熱結晶化行わない以外は実験例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0036】
(実験例10)
金型温度を50℃とした以外は、実験例2と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ポリ−L−乳酸(d%=1.5%)、ポリ−L−乳酸(A)及びポリ−D−乳酸(B)をA:B=95:5乃至60:40の範囲のモル比で含有して成る樹脂組成物及びポリエチレンテレフタレートの等温結晶化法における半結晶化時間を示す図1である。
【図2】実験例2で成形されたボトルについて、口結晶化処理前のボトル口部と口部結晶化処理後のボトル口部について示差走査熱量測定を行った時の昇温曲線を示す図である。
【図3】実験例7で成形されたボトルについて、口結晶化処理前のボトル口部と口部結晶化処理後のボトル口部について示差走査熱量測定を行った時の昇温曲線を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純

【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子


【公開番号】 特開2008−7736(P2008−7736A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−192305(P2006−192305)