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【発明の名称】 防汚性フィルム及びその製造方法
【発明者】 【氏名】青島 俊栄

【氏名】川村 浩一

【要約】 【課題】支持体に対する密着性に優れた撥水撥油処理面を備え、高い防汚性とその持続性を有する防汚性フィルム及びその製造方法を提供すること。

【構成】本発明の防汚性フィルムは、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、を備え、該有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施してなることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、を備え、該有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施してなることを特徴とする防汚性フィルム。
【請求項2】
前記グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有することを特徴とする請求項1に記載の防汚性フィルム。
【請求項3】
前記グラフトポリマー鎖が、その鎖中にアミド基を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防汚性フィルム。
【請求項4】
支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程と、
該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する工程と、
該有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施す工程と、
を有することを特徴とする防汚性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性フィルムとその製造方法に関し、より詳細には、油性汚れ等が付着しにくい防汚性表面を有する防汚性フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染物質が材料表面に付着することにより引き起こされる「汚れ」は、汚染の進行により、美観を損なうのみならず、材料表面が有する機能をも低下させる。これにより、「防汚」のためには、汚染物質の付着(相互作用)を低下させる必要があり、通常、材料表面の親水化又は撥油化により達成されているのが一般的である。
【0003】
従来、撥水性及び防汚性を有するフィルムとしては、その最表面にフッ素化合物層をウェットコーティング(湿式成膜)して、撥水性と防汚性とをもたせるものが使用されていた(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、有機物による表面コートでは、表面硬度及び耐久性が低く、それらの改良が必要であった。
こうした問題を解決するために、優れた撥水性と防汚性を有し、表面エネルギーが小さいシリカ層を用いることが検討されており、このシリカ層が上記の表面硬度及び耐久性の改良に有望視されている。
しかしながら、撥水性と防汚性があるシリカ層を支持体上にコーティングして、撥水性及び防汚性を有するフィルムを得る場合、シリカ層の表面エネルギーが小さいことによって、支持体との間の密着力が小さくなるという問題点がある。
【0004】
支持体と表面シリカ層との密着性を改善するため、支持体と表面シリカ層との間に、中間層として炭素含有量20原子%未満の密着シリカ層を設けることを提案している(例えば、特許文献2参照。)。この方法では、表面エネルギーの大きな密着シリカ層を、表面シリカ層と支持体との間に設けることにより、支持体と表面シリカ層との密着性を改良しているが、この密着性は充分とは言えず、更に、炭素含有量により、表面エネルギー、撥水性、防汚性が大きく変化するため、その調製が困難であるという問題点があった。
【特許文献1】特開2000−284102号公報
【特許文献2】特開2002−113805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような先行技術の問題点を考慮した本発明の目的は、支持体に対する密着性に優れた撥水撥油処理面を備え、高い防汚性とその持続性を有する防汚性フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、支持体上に直接結合したグラフトポリマー鎖と、金属アルコキシドの加水分解及び縮重合反応により形成された架橋構造と、を含む有機−無機複合層について鋭意研究を進めた結果、該有機−無機複合層を防汚性フィルムに適用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の防汚性フィルムは、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、を備え、該有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施してなることを特徴とする。
このようなグラフトポリマー鎖は、支持体表面に発生した開始種を起点とした重合反応により生成したものであることが好ましい。
また、グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基、及び/又は、アミド基を有することが好ましい。
更に、グラフトポリマー鎖が、極性基、好ましくはアミド基を有する構造単位と、シランカップリング基などのSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有する構造単位と、の共重合体であることが好ましい態様である。
【0008】
また、本発明の防汚性フィルムの製造方法は、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程と、該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する工程と、該有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施す工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
本発明における有機−無機複合層は、支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー鎖(有機成分)と、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中において、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造(無機成分)と、を含んで構成される。このような有機−無機複合層は、薄層であっても、耐摩耗性が増大し、高い耐久性を有する。
特に、グラフトポリマー鎖が極性基を有する場合、その極性基の機能により架橋構造との間に極性相互作用が形成され、強度、及び耐久性に優れた有機−無機複合層とすることができる。更に、グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有する場合には、該グラフトポリマー鎖と架橋構造との間に共有結合が形成され、有機−無機複合層の強度、及び耐久性が向上する。
更に、この有機−無機複合層中の架橋構造が、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドに起因する反応性基を有しており、この反応性基と撥水撥油処理に用いられる化合物との間に共有結合が形成されることで、支持体に対する密着性に優れた撥水撥油処理面を得ることができる。
その結果、高い防汚性とその持続性を有する防汚性フィルムを得ることができるものと推測される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持体に対する密着性に優れた撥水撥油処理面を備え、高い防汚性とその持続性を有する防汚性フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の防汚性フィルムは、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、を備え、該有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施してなることを特徴とする。
本発明の防汚性フィルムとしては、反応性、化合物の入手の容易性から、Siのアルコキシドを用いて架橋構造が形成されていることが好ましい。
前記したようなアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を、本発明では、以下、適宜、「ゾルゲル架橋構造」と称する。
【0012】
このような本発明の防汚性フィルムは、下記の本発明の防汚性フィルムの製造方法により製造される。
即ち、本発明の防汚性フィルムの製造方法は、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程〔以下、適宜、「グラフトポリマー層形成工程」と称する。〕と、該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する工程〔以下、適宜、「有機−無機複合層形成工程」と称する。〕と、(3)該有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施す工程〔以下、適宜、「撥水撥油処理工程」と称する。〕と、を有する方法が適用されることが好ましい。
以下、「グラフトポリマー層形成工程」、「有機−無機複合層形成工程」、及び「撥水撥油処理工程」について順に説明する。
【0013】
<グラフトポリマー層形成工程>
本工程では、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する。
支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させる方法としては、(1)支持体を基点として、重合可能な2重結合を有する化合物を表面グラフト重合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法や、(2)支持体と反応する官能基を有するポリマーと支持体表面とを化学結合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法がある。
この2つの方法について以下に説明する。
【0014】
(1)支持体を基点として、重合可能な2重結合を有する化合物を表面グラフト重合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法
この方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる方法である。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱などの方法で支持体表面上に活性種を与え、その活性種を基点として、支持体と接するように配置された重合可能な2重結合を有する化合物を重合させる方法である。この方法によれば、生成するグラフトポリマー鎖の末端が支持体表面に直接結合され、固定される。
【0015】
本発明を実施するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には、表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線等の放射線照射グラフト重合法が記載されている。光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びY.Ikada et al,Macromolecules vol.19、page 1804(1986)などに記載の方法を適用することができる。
具体的には、PETなどの高分子表面を、プラズマ、若しくは、電子線にて処理して表面に活性種であるラジカルを発生させ、その後、その活性種を有する支持体表面と重合可能な2重結合を有する化合物(例えば、モノマー)と、を反応させることによりグラフトポリマー鎖を生成させることができる。
光グラフト重合は、上記記載の文献のほかに、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)に記載されるように、フィルム支持体の表面に光重合性組成物を塗布して、ラジカル重合化合物を接触させて光を照射することによっても実施することができる。
【0016】
(1)の方法によってグラフトポリマー鎖を生成する際に有用な化合物は、重合可能な2重結合を有していることが必要である。また、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用の形成性を考慮すると、重合可能な2重結合を有し、且つ、極性基を有する化合物であることが好ましい。更に、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との間に共有結合を形成することを考慮すると、重合可能な2重結合を有し、且つ、特定元素アルコキシド基を有する化合物であることが好ましい。
この方法に適用される化合物としては、分子内に2重結合を有し、必要に応じて極性基及び/又は特定元素アルコキシド基を有していれば、ポリマーでも、オリゴマーでも、モノマーでも、これらいずれの化合物をも用いることができる。
本発明において有用な化合物の一つは、極性基を有するモノマーである。
【0017】
本発明で有用な極性基を有するモノマーとは、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマーや、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離し得る酸性基を有するモノマーが挙げられるが、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基、などの非イオン性の基を有する極性基を有するモノマーを用いることもできる。
【0018】
本発明において、特に有用な極性基を有するモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン酸塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0019】
本発明で有用な極性基を有するマクロマーは、”新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている合成法により得ることができる。また、山下雄他著”マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。
具体的には、アクリル酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルアセトアミドなど、上記の具体的に記載した極性基を有するモノマーを使用して、文献記載の方法に従い極性基を有するマクロマーを合成することができる。
【0020】
本発明で使用される極性基を有するマクロマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸基含有モノマーから誘導されるマクロマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロマーとして有用に使用することができる。
これらの中でも、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用が強く形成される点から、極性基としてアミド基を有するマクロマーを用いることが好ましい。
これらのマクロマーのうち有用な分子量は、400〜10万の範囲、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万の範囲である。
【0021】
また、本発明におけるグラフトポリマー鎖は、先に述べたように、その鎖中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基(以下、適宜、特定元素アルコキシド基と称する)を有することが好ましい。この特定元素アルコキシド基は、後述する架橋剤(金属アルコキシド)との加水分解及び縮重合反応を経て共有結合を形成しうる置換基である。このようにグラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有することで、後述の有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造とグラフトポリマー鎖との間に共有結合を形成することができる。
(1)の表面グラフト重合法を用いる場合には、特定元素アルコキシド基を有するモノマーやマクロマーを用いることが好ましい。この特定元素アルコキシド基として代表的なシランカップリング基を例に挙げて具体的に説明する。本発明に好適なシランカップリング基として、下記一般式(I)に示すような官能基を例示することができる。
【0022】
【化1】


【0023】
上記一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数8以下の炭化水素基を表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
及びRは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0024】
上記一般式(I)に示すような官能基を有するモノマーとしては、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリイソプロピルシラン、メタクリロキシプロピル(トリスメトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0025】
本発明において、(1)の方法を用いる場合には、極性基を有するモノマーやマクロマーと、シランカップリング基などの特定元素アルコキシド基を有するモノマーやマクロマーと、を用い、表面グラフト重合法にて共重合させて、グラフトポリマー鎖を生成することが好ましい。中でも、極性基としてアミド基を有するモノマーやマクロマーを用いることがより好ましい。
【0026】
(2)支持体と反応する官能基を有するポリマーと支持体表面とを化学結合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法
この方法においては、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と支持体表面の官能基とを化学反応させることでグラフトポリマー鎖を生成させることができる。支持体と反応する官能基としては、支持体表面の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。
主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーである。
また、この時に使用されるポリマーは、更に極性基を有することが好ましく、極性基を有するポリマーとしては、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドなどを挙げることができる。
これら以外にも、前述の(1)の方法で使用される極性基を有するモノマーの重合体、若しくは、極性基を有するモノマーを含む共重合体を使用することもできる。
なお、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用が強く形成される点から、極性基としてアミド基を有するポリマーを用いることが好ましい。
【0027】
一方、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーは、更にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基(特定元素アルコキシド基)を有することが好ましい。このポリマーを用いることで、生成されるグラフトポリマー鎖中に特定元素アルコキシド基を導入することができる。このようにグラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有することで、後述の有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造とグラフトポリマー鎖との間に共有結合を形成することができる。
本発明においては、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーが、極性基としてアミド基と特定元素アルコキシド基との両方を有することが特に好ましい。
【0028】
本発明において、ゾルゲル架橋構造との極性相互作用の形成性や、共有結合の形成性の点から、上記のような方法で生成したグラフトポリマー鎖中は、アミド基及び/又は特定元素アルコキシド基を有することが好ましい。
本発明におけるグラフトポリマー鎖中のアミド基の好ましい導入量は、10mol%〜90mol%の範囲であり、また、特定元素アルコキシド基の導入量としては、10mol%〜90mol%の範囲であること好ましい。
【0029】
本発明におけるグラフトポリマー鎖は、その鎖中に、上述のような極性基や特定元素アルコキシド基を有することが好ましいが、これらの基以外にも、架橋性基や重合性基などが導入され、それらの基を用いることで、グラフトポリマー鎖間で架橋構造を形成していてもよい。
【0030】
〔支持体〕
本発明における支持体としては、機械的強度や寸法安定性を有するものであればいずれも使用しうるが、防汚性フィルムが透過性を必要とする場合には、透明性を有するフィルムが好ましく使用される。
支持体として使用されるフィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ナイロン66フィルム、ナイロン6フィルム、メタキシリデンジアミン共重合ポリアミドフィルム等のポリアミドフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドイミドフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム;ポリフェニレンフィルム;ポリスルフォンフィルム;ポリフェニレンスルフィッドフィルム;等が挙げられる。これらの中でも、コストパフォーマンス、透明性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが好ましい。これらのフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいし、単独で使用しても、異なる性質のフィルムを積層して使用してもよい。
【0031】
また、支持体として用いられるフィルムには、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤や安定剤を含有させたり、塗布したりしてもよい。用い得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤などが挙げられる。また、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理、粗面化処理などの表面処理を施してもよい。
【0032】
支持体の厚さは、包装材料など使用目的の適性を考慮して、適宜、設定することができるため、特に制限を受けるものではないが、一般的な実用の観点から、3μm〜1mmの範囲であることが好ましく、可撓性や加工性の観点から、10〜300μmの範囲であることがより好ましい。
【0033】
このような支持体は、それ自体がエネルギー付与により活性種を発生しうるものであれば、そのまま使用してもよいが、グラフトポリマー鎖を形成する開始種の発生をより効率よく行う目的で、支持体表面に重合開始能を有する表面層を有していてもよい。
重合開始能を有する表面層としては、低分子や高分子の重合開始剤を含有する層であることが好ましい。中でも、安定性、耐久性の観点から、重合開始剤を架橋反応により固定化してなる重合開始層であることが好ましく、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層であることがより好ましい。
この側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層については、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0169〕に記載に詳細に記載されており、この重合開始層を本発明に適用することができる。
【0034】
<有機−無機複合層形成工程>
本工程では、前述のグラフトポリマー層形成工程で得られたグラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する。
つまり、本発明における有機−無機複合層は、グラフトポリマー鎖からなる有機成分と、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行うことにより形成された架橋構造(ゾルゲル架橋構造)からなる無機成分と、が混在する層である。
【0035】
まず、本工程では、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行うことにより形成された架橋構造を形成しうる化合物(以下、単に、「架橋剤」と称する場合がある。)を用いて、本発明におけるゾルゲル架橋構造を形成することが好ましい。
本発明における架橋剤としては、例えば、下記一般式(II)で表される化合物が用いられる。
下記一般式(II)で表される化合物は、グラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有する場合、その特定元素アルコキシド基と加水分解及び縮重合することで、グラフトポリマー鎖とゾルゲル架橋構造との間に共有結合を形成することができる。これにより、強固な有機−無機複合層を形成することができる。
【0036】
【化2】


【0037】
前記一般式(II)中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRがアルキル基を表す場合、その炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0038】
以下に、一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0039】
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0040】
このような架橋剤を用いてグラフトポリマー層中にゾルゲル架橋構造を形成するには、この架橋剤をエタノールなどの溶媒に溶解後、必要に応じて、触媒等を加えて塗布液組成物を調製し、これをグラフトポリマー層上に塗布し、加熱、乾燥する方法を用いることができる。この方法により、架橋剤が加水分解及び重縮合することにより、ゾルゲル架橋構造が形成される。
ここで、加熱温度と加熱時間は、塗布液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から、加熱温度は200℃以下であることが好ましく、加熱時間(架橋時間)は1時間以内が好ましい。
【0041】
塗布液組成物中の架橋剤の含有量は、形成するゾルゲル架橋構造の量に応じて、決定すればよいが、形成される有機−無機複合層の表面硬度及び支持体への密着性の観点から、一般的には、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0042】
また、グラフトポリマー鎖がその鎖中に特定元素アルコキシド基を有する場合、塗布液組成物中の架橋剤の含有量は、特定元素アルコキシド基に対して、架橋剤中の架橋性基が5mol%以上、更に10mol%以上となる量に調整されることが好ましい。
この際、架橋剤の含有量の上限は、特定元素アルコキシド基と十分架橋できる範囲内であれば特に制限はないが、大過剰に添加した場合、架橋に関与しない架橋剤により、形成された有機−無機複合層がべたつくなどの問題を生じる可能性がある。
【0043】
前記塗布液組成物を調製する際に用いる溶媒としては、架橋剤及びその他の成分を、均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0044】
また、前記塗布液組成物には、架橋剤の加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上、好ましい反応効率を得ようとする場合、触媒は必須である。
この触媒としては、酸、或いは塩基性化合物をそのまま用いるか、或いは水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いることができる。触媒を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよいが、濃度が高い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、塗布液組成物中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0045】
酸性触媒或いは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0046】
また、この塗布液組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を目的に応じて使用することができる。例えば、塗布液の均一性を向上させるため界面活性剤などを添加することができる。
【0047】
なお、本発明においては、以下の方法でグラフトポリマー層、及び有機−無機複合層を形成してもよい。
即ち、例えば、前記したような極性基と特定元素アルコキシド基とに加え、更に、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマー、架橋剤、及び触媒を含有する塗布液組成物を調製し、それをプラズマ若しくは電子線等にて処理して表面に活性種であるラジカルを発生させた支持体上に塗布し、加熱、乾燥させる方法が挙げられる。
この方法では、前記ポリマーが有する支持体と反応する官能基と、支持体とが反応することで、支持体に直接結合したグラフトポリマーが生成し、グラフトポリマー層が形成される。また、塗布液組成物を加熱、乾燥させる際に、架橋剤の加水分解及び縮重合反応が生じ、グラフトポリマー層中に架橋構造を形成することができる。
つまり、このような方法によれば、塗布液組成物を調製し、それを塗布、加熱、乾燥させるという一連の工程により、グラフトポリマー層と有機‐無機複合層とを一度に形成することができる。
【0048】
なお、この塗布液組成物を調製するにあたっては、別途親水性ポリマーを含んでいてもよい。親水性ポリマーは、先に挙げたグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な極性基を有するモノマーを重合することにより得ることができる。親水性ポリマーの含有量は固形分換算で、10質量%以上、50質量%未満とすることが好ましい。含有量が50質量%以上になると膜強度が低下する傾向があり、また、10質量%未満であると、皮膜特性が低下し、膜にクラックが入るなどの可能性が高くなり、いずれも好ましくない。
【0049】
以上述べたように、本発明における有機−無機複合層の形成は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年〕、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明における有機−無機複合層の形成に適用することができる。
【0050】
この有機−無機複合層の膜厚は、防汚性フィルムの用途等により選択できるが、一般的には0.1μm〜10μmの範囲が好ましく、0.5μm〜10μmの範囲が更に好ましい。この膜厚の範囲で、支持体に対する密着性と可撓性に優れた防汚性フィルムが得られ、且つ、カールの発生や、可撓性や耐屈曲性の低下も生じにくいので、好ましい。
【0051】
<撥水撥油処理工程>
本工程では、前述の有機−無機複合層形成工程により得られた有機−無機複合層表面に撥水撥油処理を施す。
本発明における撥水撥油処理に使用される化合物(撥水剤)や処理方法に特別の制限はないが、有機−無機複合層表面にフッ素やアルキル基が付与されることが好ましい。この撥水撥油処理には、例えば、シリル化剤、チタネートカップリング剤、アルキルアルミニウムなどの有機金属化合物が好ましく用いられる。
これらの化合物は、本発明における架橋構造との間に共有結合を形成することができることから、撥水撥油処理面は支持体との密着性に優れることとなる。
【0052】
シリル化剤は、本発明におけるゾルゲル架橋構造に対して親和性或いは反応性を有する加水分解性シリル基に、アルキル基、アリール基、フッ素を含有したフルオロアルキル基等を結合させた化合物であり、ケイ素に結合した加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、シラザン等が挙げられる。
具体的には、パーフルオロアルキルシラン化合物や、アルキルシラン化合物を用いることが好ましい。
【0053】
また、撥水撥油処理面の臨界傾斜角(即ち、水平に置いた防汚性フィルム表面に置かれた一定量の水滴が転がり始める板の傾き角度)を小さくして水滴が転落しやすくなるようにするため、ポリジメチルシロキサン化合物を撥水剤として使用してもよい。
撥水剤は必要に応じて加水分解してから撥水層のコーティングに供する。
【0054】
上記のような撥水剤による表面処理は、スプレー法、流し塗り法、スピンコート法、浸漬引き上げ法などによる塗布や、液相吸着法などによる表面吸着で行われる。
撥水剤で処理された支持体は乾燥後、300℃以下の温度、好ましくは100℃〜250℃で10分間〜1時間加熱処理する。
有機−無機複合層表面に撥水剤が単分子層を形成すれば撥水性能を示し、また、撥水剤の厚みが10nmを超えても効果はそれ以上高くならないので、熱処理後の撥水撥油処理層の好ましい厚みは1〜10nmである。
【0055】
以上のように、本発明の防汚性フィルムは、撥水撥油処理面と有機−無機複合層との密着性、及び、有機−無機複合層と支持体との密着性に優れ、その結果、撥水撥油処理面は支持体との密着性に優れたものとなる。
従って、本発明の防汚性フィルムは防汚性に優れ、その持続性に優れる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0057】
[実施例1]
<基材Aの作製>
膜厚188μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(A4100、東洋紡(株)社製)を用い、グロー処理装置として平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件で酸素グロー処理を行ってPET支持体を得た。
【0058】
−酸素グロー処理条件−
初期真空 :1.2×10−3Pa
酸素圧力 :0.9Pa
RFグロー :1.5kW
処理時間 :60sec
【0059】
<グラフトポリマー層の形成1>
次に、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、エタノール混合溶液(N,N−ジメチルアクリルアミド:メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン=1:1(モル比)、濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この混合溶液に、上記PET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体をエタノールで充分洗浄して、その構造内に特定元素アルコキシド基であるシランカップリング基及びアミド基を有するグラフトポリマー鎖が支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有するPET支持体を支持体Aとした。
【0060】
<有機−無機複合層の形成1>
得られた支持体Aに、エタノール、水、テトラエトキシシラン、及びリン酸を以下の量で含む塗布液組成物1を室温で24時間撹拌したものを塗布し、100℃、10分間加熱乾燥して有機−無機複合層を形成することにより、有機−無機ハイブリッドフィルムAを得た。
【0061】
−塗布液組成物1−
・テトラエトキシシラン〔架橋剤〕 0.9g
・エタノール 3.7g
・水 8.7g
・リン酸水溶液(0.85%水溶液) 1.3g
【0062】
<撥水撥油処理>
得られた有機−無機ハイブリッドフィルムAを、0.1質量%の1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシルトリクロロシラン・ヘキサン溶液に、10分間浸漬し、引き上げた後、加熱乾燥(100℃、30min)することにより防汚性フィルムAを得た。
形成された撥水撥油処理層と有機−無機複合層との総厚みは500nmであった。
【0063】
[実施例2]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、テトラメトキシチタネート1.0gに代えた以外は、実施例1と同様の方法で防汚性フィルムBを得た。
【0064】
[実施例3]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、テトラメトキシジルコネート1.6gに代えた以外は、実施例1と同様の方法で防汚性フィルムCを得た。
【0065】
[実施例4]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、トリメトキシアルミネート0.7gに代えた以外は、実施例1と同様の方法で防汚性フィルムDを得た。
【0066】
[実施例5]
実施例1において、<グラフトポリマー層の形成1>を下記<グラフトポリマー層の形成2>に変更して支持体Bを作製し、更に、<有機−無機複合層の形成1>において用いた支持体Aを支持体Bに変更して有機−無機ハイブリッドフィルムBを作製した以外は、実施例1と同様の方法で防汚性フィルムEを得た。
【0067】
<グラフトポリマー層の形成2>
アクリルアミド水溶液(濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この水溶液に実施例1で用いたPET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体を蒸留水で充分洗浄して、その構造内にアミド基を有するグラフトポリマー鎖が支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有するPET支持体を支持体Bとした。
【0068】
[実施例6]
<グラフトポリマー層の形成3>
メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン・エタノール溶液(濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この溶液に、実施例1で用いたPET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体を蒸留水で充分洗浄して、その構造内に特定元素アルコキシド基であるシランカップリング基を有するグラフトポリマー鎖が支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有するPET支持体を支持体Cとした。
【0069】
<有機−無機複合層の形成2>
得られた支持体Cに、2−プロパノール、水、テトラエトキシシラン、及びリン酸を以下の量で含む塗布液組成物2を室温で5時間撹拌したものを塗布し、100℃、10分間加熱乾燥して有機−無機複合層を形成することにより、有機−無機ハイブリッドフィルムCを得た。
【0070】
−塗布液組成物2−
・2−プロパノール 8g
・テトラエトキシシラン[架橋剤] 1.0g
・水 1.0g
・リン酸水溶液(0.85%水溶液) 1.0g
【0071】
<撥水撥油処理>
得られた有機−無機ハイブリッドフィルムCに、実施例1の<撥水撥油処理>と同様の処理を行い、防汚性フィルムFを得た。
形成された撥水撥油処理層と有機−無機複合層との総厚みは1.2μmであった。
【0072】
[比較例1]
2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート(アズマックス(株)社製)0.5gと、1−メトキシ‐2−プロパノール(和光純薬工業(株)社製)0.5gと、を混合して均一溶液とした。この溶液に実施例1にて用いたPET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体をエタノールで充分洗浄して、その構造内にフッ素原子を含むグラフトポリマー鎖(疎水性グラフトポリマー鎖)が支持体表面に直接結合してなる防汚性フィルムGを得た。
【0073】
[比較例2]
実施例1において用いた支持体(グラフトポリマー層を有すPET支持体)Aを、ポリエチレンテレフタレートに代えた以外は、実施例1と同様の方法で防汚性フィルムHを得た。
【0074】
〔防汚性フィルムの性能評価〕
実施例1〜6、比較例1、2の防汚性フィルムA〜Hについて、以下のようにして性能評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0075】
1.撥水性の評価
防汚性フィルムA〜Hの撥水撥油処理面(防汚性フィルムGではフッ素原子を含むグラフトポリマー鎖が直接結合してなる面)に対して、協和界面科学(株)製、CA−Zを用い、純水の滴下後、20秒後の角度を測定した。水滴接触角が150°以上であるものを○とした。結果を表1に示す。
【0076】
2.密着性の評価
JIS K5400に準拠し、防汚性フィルムA〜Hの撥水撥油処理面(防汚性フィルムGではフッ素原子を含むグラフトポリマー鎖が直接結合してなる面)に対して、ロータリーカッターにて1mm角の碁盤目100マスを付け、セロテープ(ニチバン(株)製、登録商標)を圧着させたのち、30000mm/minの速度で90度の剥離試験を3回実施した。評価は、剥離試験後に残存する升目の数を測定することにより行った。結果を表1に示す。
【0077】
3.防汚性の評価
3.1初期防汚性の評価
防汚性フィルムA〜Hの撥水撥油処理面(防汚性フィルムGではフッ素原子を含むグラフトポリマー鎖が直接結合してなる面)に対して、速乾性油性インキ(ゼブラ製、「マッキー」(登録商標))を用いて字を書いた。次に、その字を旭化成社製「ベムコットン」(登録商標)を用いてきれいに拭き取れるまでの回数を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
3.12繰返し防汚性の評価
旭化成社製「ベムコットン」(登録商標)を用いて、防汚性フィルムA〜Hの撥水撥油処理面(防汚性フィルムGではフッ素原子を含むグラフトポリマー鎖が直接結合してなる面)を500回強くこすった後、その表面に速乾性油性インキ(ゼブラ製、「マッキー」(登録商標))で字を書き、それが拭き取れるまでの回数を示した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】


【0080】
表1の結果より、有機−無機複合層を有する実施例の防汚性フィルムA〜Fは、撥水性、及び支持体と撥水撥油処理層との密着性が良好であることがわかる。また、実施例の防汚性フィルムA〜Fは、初期防汚性、及び繰返し防汚性に優れている。
これらのことから、本発明の防汚性フィルムは、防汚性及びその持続性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の防汚性フィルムは、CRT、LCD、PDP、FED等のディスプレイ、タッチパネル、ガラス、テーブル、化粧合板等、更にCD、DVD等の記録媒体における表面保護フィルム等に好適に適応しうる。
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−7729(P2008−7729A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182291(P2006−182291)