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【発明の名称】 帯電防止フィルム及びその製造方法
【発明者】 【氏名】青島 俊栄

【氏名】川村 浩一

【要約】 【課題】透明性が高く、帯電防止層と有機基板との密着性が高く、帯電防止性(表面防汚性)及びその耐久性に優れた帯電防止性フィルム及びその製造方法を提供する。

【構成】支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を有するグラフトポリマー層中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有してなる無機成分と、導電性コロイドとを含有する有機−無機複合体からなる帯電防止層を備え、該帯電防止層表面を撥水撥油処理してなる帯電防止フィルムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を有するグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造及び導電性コロイドを含有する有機−無機複合膜からなる帯電防止層と、を備え、該帯電防止層表面に撥水撥油処理を施してなる帯電防止フィルム。
【請求項2】
ヘイズが2%以下であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止フィルム。
【請求項3】
支持体表面に、直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成するグラフトポリマー層形成工程と、該グラフトポリマー層に導電性コロイドを添加し、その後、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合反応を行って架橋構造を形成して帯電防止能を有する有機−無機複合膜を形成する帯電防止層形成工程と、該帯電防止層表面に撥水撥油処理を施す撥水撥油処理工程と、を有することを特徴とする帯電防止フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止能とその持続性に優れた有機−無機複合層を用いた帯電防止フィルム及びその製造方法、特に、表面防汚性を有する帯電防止フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板の表示パネルに用いられる透明基材の表面に帯電防止機能および反射防止機能を付与する目的で、このような機能をもつ透明被膜が種々開発されている。
陰極線管などから放出される電磁波が人体に及ぼす影響が、最近問題にされており、従来の帯電防止能ののみならず、電磁波および電磁波の放出に伴って形成される電磁場を遮蔽する機能をも有する被膜が望まれている。
【0003】
電磁波などを遮蔽する方法の一つとして、陰極線管などの表示パネルの表面に電磁波遮断用の導電性被膜を形成する方法がある。しかし、電磁波遮断用の導電性被膜では、従来の帯電防止用導電性被膜よりも低い表面抵抗値、具体的には、10〜10Ω/□程度の低い表面抵抗を有する被膜が求められている。
表面抵抗の低い導電性被膜を、従来公知の導電性酸化物、例えば、Sbドープ酸化錫、Snドープ酸化インジウムなどを含有する塗布液を用いて形成する場合、帯電防止性のみを求められる被膜の場合よりも膜厚を厚くする必要があり、透明性や反射防止能が低下するという問題が生じ、従来汎用のSbドープ酸化錫、Snドープ酸化インジウムの如き導電性酸化物を用いると、電子は遮断に十分な低い表面抵抗と、反射防止能を満足する導電性被膜を得ることが困難であった。
【0004】
低表面抵抗の導電性被膜を形成する他の方法として、Agなどの金属微粒子をコロイド状として極性溶媒中に分散した分散物を含む導電性被膜形成用塗布液を用いて、基材の表面に金属微粒子含有被膜を形成する方法がある。この方法で用いられる塗布液では、コロイド状金属微粒子の分散性を向上させる目的で、微粒子表面をポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどの高分子化合物で表面処理さしており、これを用いて形成された導電性被膜は、被膜中で金属微粒子同士が安定剤を介して接触するため、粒界抵抗が大きくなり、目的とする低表面抵抗が達成できない懸念がある。このため、高温で焼成して安定剤を分解除去する工程を実施する方法もあるが、安定剤として用いられる高分子化合物の分解除去に必要な高温条件下では、金属微粒子同士の所望されない融着、凝集などが生じ、得られた導電性被膜の透明性やヘイズ値が低下するという問題があった。また、このような被膜を陰極線管に使用する場合、高温焼成により陰極線管自体が劣化するという問題もあり、使用態様が極めてかぎられるものであった。
【0005】
さらにこのような金属微粒子を含む透明導電性被膜では、経時により、金属が酸化して変質する、イオン化により粒子成長する、また、用いる金属材料によっては、腐食が発生するなどの現象が起こり、塗膜の導電性、光透過率が経時変動して、表示装置が信頼性を欠くという問題があった。
また、無機材料である金属微粒子やSbドープ酸化錫などを用いた透明導電性被膜と、基材、特に有機材料性の基材との密着性やその耐久性に問題があり、金属材料を含む透明導電性被膜と基材との強度向上も大きな課題である。
【0006】
透明性と低表面抵抗の達成を目的とし、アルコキシシランの加水分解重縮合物をバインダーとし、シリカ粒子や金属微粒子を含む透明導電性微粒子塗布液を用いて導電性被膜を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1、参照。)。この方法によれば、低表面抵抗な透明導電性被膜を与えることが開示されているが、上記塗布液を用いて有機基材上に帯電防止層を形成した際には、有機−無機界面での密着性が低く、帯電防止層の密着性、耐久性における改良が望まれていた。
【特許文献1】特開平2004−55298公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような先行技術の問題点を考慮した本発明の目的は、透明性が高く、帯電防止層と有機基板との密着性が高く、帯電防止性(表面防汚性)及びその耐久性に優れた帯電防止性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、基材表面に直接結合したグラフトポリマー鎖が基板との密着性に優れ、様々な用途展開が期待できる強固な機能性薄膜を与える可能性に着目し、鋭意検討の結果、該グラフトポリマーと無機化合物との有機−無機複合材料が緻密な網目構造を持ち、且つ、基板との密着性に優れることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の請求項1に係る帯電防止フィルムは、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を有するグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造及び導電性コロイドを含有する有機−無機複合膜からなる帯電防止層と、を備え、該帯電防止層表面に撥水撥油処理を施してなることを特徴とする。
本発明の帯電防止フィルムは、そのヘイズが2%以下であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の帯電防止フィルムの製造方法は、支持体表面に、直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成するグラフトポリマー層形成工程と、該グラフトポリマー層に導電性コロイドを添加し、その後、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合反応を行って架橋構造を形成して帯電防止能を有する有機−無機複合膜を形成する帯電防止層形成工程と、該帯電防止層表面に撥水撥油処理を施す撥水撥油処理工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
このようなグラフトポリマー鎖は、支持体表面に発生した開始種を起点とした重合反応により形成されたものであることが好ましい。ここで、支持体表面とは、支持体を構成する基材表面、或いは、該基材表面に活性種を効率よく生成させるために設けられた重合開始層表面のいずれであってもよい。
また、グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基、及び/又は、アミド基を有することが好ましい。
更に、グラフトポリマー鎖が、極性基、好ましくはアミド基を有する構造単位と、シランカップリング基などのSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基、を有する構造単位との共重合体であることが好ましい態様である。
この帯電防止層は、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有する有機−無機ハイブリッド材料(有機−無機複合膜)からなる層であり、該帯電防止層を形成するグラフトポリマー鎖は、親水性の官能基を有する構造単位とシランカップリング基を有する構造単位との共重合体であることが好ましい態様である。
さらに得られた帯電防止層表面を撥水撥油処理することにより、防汚性及びその持続性も優れた防汚性帯電防止フィルムを与える。
【0011】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
本発明においては、支持体表面に直接結合した親水性グラフトポリマー鎖(有機成分)と、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中において、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造(無機成分)を有する有機−無機複合層(有機−無機ハイブリッド材料)が形成される。特に、グラフトポリマー鎖中に極性基が存在する場合、該極性基の機能により、該アルコキシド化合物の加水分解、縮重合により得られる架橋構造との間に極性相互作用が形成され、架橋構造、極性相互作用の機能により、より高強度な高密度架橋構造となる。このような高密度架橋構造を有する層に、導電性コロイドを共存させることによって、該導電性コロイドはその架橋構造内に安定に保持されることになる。従って、薄層であっても耐摩耗性が増大し、高い耐久性を有する有機−無機複合膜が形成されるとともに、その膜中に帯電防止能を有する導電性コロイドが強固、且つ、安定に保持されるため、形成された帯電防止層は、被膜の透明性を損なわない薄層であっても、高い帯電防止能とその耐久性が実現されるものと推定される。また、両者の密着性は、支持体表面と帯電防止層とが支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー鎖の機能により、有機−無機複合薄膜(有機−無機ハイブリッド材料)となることに起因しており、バインダーなどの中間層を設けなくても高い密着性が維持される。さらに、本発明においては、該有機−無機複合層表面を撥水撥油処理してなるため、この帯電防止層は表面が超撥水性となり、汚れ防止機能をも同時に発現することになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性が高く、基板と帯電防止層との密着性及びその持続性、更に表面の防汚性及びその持続性も良好で、その表面は撥水性であって表面エネルギーは小さく、汚れが付着しても容易にふき取れるものであって、高い防汚性を有し、基材の表面に高い帯電防止能と防汚性能を与えることができる帯電防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の帯電防止性フィルムは、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を有するグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造及び導電性コロイドを含有する有機−無機複合膜からなる帯電防止層と、を備え、該帯電防止層表面に撥水撥油処理を施してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の帯電防止フィルムにおいて、帯電防止層を構成する有機−無機ハイブリッド材料は、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を有するグラフトポリマー層中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を含有することを特徴としており、この架橋構造内に後述する導電性材料である導電性コロイドが保持されてなる。
アルコキシド化合物のなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましい。
前記したような金属アルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では以下、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。
【0015】
このような帯電防止フィルムの製造方法には特に制限はないが、(1)支持体表面に、直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成するグラフトポリマー層形成工程と、(2)該グラフトポリマー層に導電性コロイドを添加し、その後、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合反応を行って架橋構造を形成して帯電防止能を有する有機−無機複合膜を形成する帯電防止層形成工程と、(3)該帯電防止層表面に撥水撥油処理を施す撥水撥油処理工程と、を有することが好ましい。
(1)グラフトポリマー層形成工程においては、(1−1)支持体を構成する基材表面に輻射線を照射することにより、活性種を発生させ、その輻射線照射の前又は後に重合可能な官能基を有する化合物を接触させて、該化合物を前記重合開始層表面にグラフト重合により結合させてグラフトポリマー鎖を生成する方法をとってもよく、また、(1−2)支持体基材表面に重合開始剤を含む重合開始層、好ましくは、重合開始剤を架橋反応により固定化してなる重合開始層を設け、該重合開始層(この態様では、該表面が支持体表面となる)に、輻射線を照射することにより、活性種を発生させ、その輻射線照射の前又は後に重合可能な官能基を有する化合物を接触させて、該化合物を前記重合開始層表面にグラフト重合により結合させてグラフトポリマー鎖を生成する方法をとってもよい。
【0016】
<グラフトポリマー鎖が存在する支持体>
本発明に係る架橋構造を有する帯電防止層を形成するための支持体は、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて親水性基などの極性基を有するグラフトポリマーを作成し、それを以下に詳述するゾルゲル架橋構造の形成工程を利用して、架橋することで作製することができる。具体的にはグラフト重合体の合成は”グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、および”新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されている。
【0017】
本発明におけるグラフトポリマー層とは、支持体表面に直接結合してなる、極性基を有するグラフトポリマー鎖により構成される層のことを指す。このような構成を形成するには、支持体基材表面、或いは、基材表面に設けられた重合開始層などの表面に発生した開始種を起点とし、このような開始種と反応可能な化合物を結合させることにより支持体上にグラフトポリマー鎖を形成すればよい。このような構造とすることで、形成された親水性グラフトポリマー鎖は、直接支持体或いはその表面層に結合する。ここで、開始種を発生しうる支持体としては、支持体の構造内に活性種を発生しうるものを用いてもよく、また、基材表面にグラフトポリマーが結合しやすい重合開始層などの表面層を設けたものを支持体とし、該支持体表面に直接結合する親水性グラフトポリマー鎖を形成してもよい。
【0018】
<グラフトポリマー鎖が存在する支持体>
本発明の支持体表面に形成されたグラフトポリマー層とは、好ましくは、極性基を有するグラフトポリマー鎖により形成された層のことを指す。これは、グラフトポリマー鎖が直接支持体表面に結合しているものでもよく、また、支持体表面にグラフトポリマーが結合しやすい(活性種を発生しやすい)重合開始層を設けてその層の上にポリマー鎖がグラフトされているものでもよい。
【0019】
更に、本発明における親水性表面には、親水性グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合したポリマー、若しくは、親水性グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合し、かつ、架橋しうる官能基が導入されたポリマーを用いて、塗布或いは塗布架橋により支持体表面上に配置されたものや、ポリマー末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと架橋剤とを含む組成物を用いて、塗布或いは塗布架橋により支持体表面上に配置されたものも包含される。
【0020】
本発明における支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー鎖の特徴は、ポリマーの片末端が支持体表面若しくは支持体表面層に結合し、極性基を有するグラフト部分が実質的に架橋されていない構造を有することにある。この構造により極性相互作用を形成しうるポリマー部分の運動性が制限されたり、強固な架橋構造内に埋没されることがなく、高い運動性を保持できる特徴を有する。このため、通常の架橋構造を有する極性基を有するポリマーに比較して、例えば、導電性コロイドなどに対してより高い親和性が発現されるものと考えられる。
このようなグラフトポリマー鎖の分子量は、Mw500〜500万の範囲であり、好ましい分子量はMw1000〜100万の範囲であり、更に好ましくはMw2000〜50万の範囲である。
このような、後述する有機−無機複合膜を形成する、帯電防止層形成工程を実施する前のグラフトポリマー層表面の、水に対する接触角は90°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましい。なお、本発明における水の接触角は、協和界面化学(株)製、CA−Zを用い、純水の滴下後、20秒後の角度を測定する方法により得られた値を用いている。
【0021】
本発明においては、グラフトポリマー鎖が直接支持体表面若しくは支持体表面上に設けた重合開始層の上に結合しているものを「表面グラフト」と称する。また、本発明では支持体を構成する基材自体、基材表面に重合開始層を設けたもの、のいずれも「支持体」と称する。
【0022】
〔表面グラフトの作製方法〕
支持体表面にグラフトポリマーからなる親水性基を有する表面を作製する方法としては、(1)支持体表面とグラフトポリマーとを化学結合にて付着させる方法と、(2)支持体表面を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマーとする2つの方法がある。
【0023】
(1)支持体表面にグラフトポリマーを化学結合に付着させる方法
まず、支持体表面にグラフトポリマーを化学結合にて付着させる方法について説明する。
この方法においては、ポリマーの末端若しくは側鎖に基材と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と、基材表面の官能基とを化学反応させることでグラフトさせる、即ち、グラフトポリマーと基材とを化学反応により結合させる、ことができる。基材と反応する官能基としては、基材表面の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。ポリマーの末端若しくは側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基を末端に有するポリマー、アミノ基を末端に有するポリマー、カルボキシル基を末端に有するポリマー、エポキシ基を末端に有するポリマー、イソシアネート基を末端に有するポリマーである。
また、この時に使用される極性基を有するポリマーには特に限定はないが、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドなどを挙げることができる。その他、以下の表面グラフト重合で使用される親水性モノマーの重合体、若しくは親水性モノマーを含む共重合体を有利に使用することができる。
【0024】
(2)基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマーを形成させる方法
支持体(支持体基材若しくは基材表面に重合開始層を有する支持体)を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマーを形成させる方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱などの方法で支持体表面に活性種を与え、基材と接するように配置された重合可能な2重結合を有する化合物を重合によって基材と結合させる方法を指す。この方法によれば、生成するグラフトポリマーの末端が基材表面に固定される。
【0025】
本発明を実施するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には、表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線等の放射線照射グラフト重合法が記載されている。光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びY.Ikada et al,Macromolecules vol.19、page 1804(1986)などに記載の方法を適用することができる。
具体的には、PETなどの高分子表面を、プラズマ、若しくは、電子線にて処理して表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面と親水性官能基を有するモノマーとを反応させることによりグラフトポリマー表面層、即ち、親水性基を有する表面層(親水性表面)を得ることができる。
光グラフト重合は、上記記載の文献のほかに、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)に記載されるように、フィルム支持体の表面に光重合性組成物を塗布して得られた基材に、水性ラジカル重合化合物を接触させて光を照射することによっても実施することができる。
【0026】
グラフトポリマー鎖を形成するのに有用な化合物は、重合可能な2重結合を有しており、かつ、極性基を分子内に有することが必要である。これらの化合物としては、分子内に2重結合を有していれば、ポリマーでも、オリゴマーでも、モノマーでも、これらいずれの化合物をも用いることができる。特に有用な化合物はモノマーである。
本発明で有用な、極性基を有するモノマーとは、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマー、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離し得る酸性基を有するモノマーが挙げられるが、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基、などの非イオン性の基を有するモノマーを用いることもできる。
【0027】
本発明において、特に有用なモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン酸塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0028】
マクロマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の”新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また、山下雄他著”マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。
具体的には、アクリル酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルアセトアミドなど、上記に具体的に記載した親水性モノマー使用して文献記載の方法に従い極性基を有するマクロマーを合成することができる。
【0029】
本発明でグラフトポリマー鎖の形成に使用されるマクロマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸基含有モノマーから誘導されるマクロマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロマーとして有用に使用することができる。
これらのマクロマーのうち有用な分子量は、400〜10万の範囲、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万の範囲である。分子量が400以下では効果を発揮できず、また10万以上では主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が悪くなる。
【0030】
これらのマクロマーを合成後、上記のマクロマーと反応性官能基を有する他のモノマーと共重合させてもよい。また、他の方法としては、マクロマーと光架橋性基、若しくは重合性基を有するグラフトポリマーを合成し、それを支持体上に塗布して光照射により反応させて架橋させ作製する方法が挙げられる。
【0031】
また、本発明におけるグラフトポリマー鎖は、先に述べたように、シランカップリング基に代表される「Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基(以下、適宜、特定元素アルコキシド基と称する)」などの「金属アルコキシドと加水分解反応を経て共有結合を形成することができる置換基」を有することが好ましい。以下、この態様についてシランカップリング基を例にあげて説明する。このようなグラフトポリマーは、特定元素アルコキシド基を有する構造単位と前記極性基を有するモノマー、マクロマーとを共重合させて得ることができる。特定元素アルコキシド基を有する構造単位としては、側鎖或いは末端に特定元素アルコキシド基を有するモノマー、マクロマー等が挙げられる。
このような特定元素アルコキシド基の導入について、代表的な特定元素アルコキシド基を例に挙げて具体的に説明する。ここで導入可能なシランカップリング基としては、下記一般式(I)に示すような官能基を例示することができる。
【0032】
【化1】


【0033】
上記一般式(I)において、R、及び、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表し、mは0〜2の整数を表す。
、及び、Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
、及びRは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0034】
上記一般式(I)に示すような官能基を有するモノマーとしては、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリイソプロピルシラン、メタクリロキシプロピル(トリスメトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0035】
本発明に係るグラフトポリマーには、前記した2つの構造単位、即ち、極性基を有するマクロマーとシランカップリング基などの特定元素のアルコキシド基を有する構造単位の他、さらに他の極性基を有するモノマーを共重合させることができる。また、極性相互作用を形成しうるアミド基を有する構造単位を共重合させることも好ましい態様である。ここで共重合可能なモノマーとしては、先にマクロマーの形成に有用なものとして例示したモノマーを同様に、挙げることができる。
【0036】
これらのマクロマーを合成後、本発明に係る表面グラフトを作成する一つの方法としては、上記の極性基を有するマクロマーと特定元素アルコキシド基、さらに、好ましくはアミド基を有する他の構造単位とを共重合させる方法が挙げられる。
【0037】
ここで得られる極性基を有するマクロマーと特定元素アルコキシド基を有する構造単位との共重合体であるグラフトポリマーは、運動性に優れたグラフトポリマー鎖と、ゾルゲル架橋層と相互作用する反応サイトである特定元素アルコキシド基を分子内に複数有するため、本発明に係る帯電防止層の形成に有用である。
本発明に用いるグラフトポリマー鎖に導入する特定元素アルコキシド基の好ましい導入量は、10〜100重量%の範囲であり、また、アミド基を有する場合の好ましい導入量として10〜100重量%の範囲であることが挙げられる。
【0038】
前記のような、極性基とシランカップリング基とを有するグラフト鎖とゾルゲル架橋構造とを備えるグラフトポリマー層は、例えば、前記したような極性基を有するマクロマーと特定元素アルコキシド基を有する構造単位との共重合体であるグラフトポリマー、好ましくは、さらに、下記一般式(II)で表される加水分解性化合物を含有する塗布液組成物を調製し、それを塗布、乾燥して製膜することにより容易に形成し得る。
【0039】
【化2】


【0040】
一般式(II)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
前記一般式(II)で表される加水分解性化合物(以下、適宜、単に、加水分解性化合物と称する)はグラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有する場合、その特定元素アルコキシド基と加水分解及び縮重合することで、グラフトポリマー鎖とゾルゲル架橋構造との間に共有結合を形成することができる。これにより、強固な有機−無機複合層を形成することができる。
前記一般式(II)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRがアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0041】
以下に、一般式(II)で表される加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0042】
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0043】
〔架橋膜形成用塗布液の調製〕
前記親水性塗布液組成物を調製するにあたっては、別途極性基を有するポリマーを含んでいてもよい。このようなポリマーは、先に挙げたグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な極性基を有する親水性モノマーを重合することにより得ることができる。該ポリマーの含有量は固形分換算で、10重量%以上、50重量%未満とすることが好ましい。含有量が50重量%以上になると膜強度が低下する傾向があり、また、10重量%未満であると、皮膜特性が低下し、膜にクラックが入るなどの可能性が高くなり、いずれも好ましくない。
【0044】
また、好ましい態様である架橋膜形成用塗布液組成物の調製に加水分解性化合物を添加する場合、加水分解性化合物の添加量は、グラフトポリマー中の特定元素アルコキシド基に対して、加水分解性化合物中の重合性基が5mol%以上、さらに10mol%以上となる量であることが好ましい。架橋剤添加量の上限は極性基を有するポリマーと十分架橋できる範囲内であれば特に制限はないが、大過剰に添加した場合、架橋に関与しない架橋剤により、作製した帯電防止層表面がべたつくなどの問題を生じる可能性がある。
このような観点から、一般的には、塗布液組成物中の添加量は5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0045】
加水分解性化合物(架橋剤)、好ましくは、さらに極性基を有するポリマーを溶媒に溶解させた液が本発明に係る架橋膜形成用塗布液となり、シランカップリング基などのSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基或いはアミド基を導入してなる親水性グラフトポリマー上に塗布した後、加熱、乾燥することによって、これらの成分が加水分解し、重縮合することによりその構造内に相互作用家性可能な極性基を有し、且つ、高い膜強度を有する有機−無機複合層が形成される。有機−無機複合体の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、触媒の併用は特に好ましい。
【0046】
(触媒)
触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよいが、濃度が高い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0047】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0048】
架橋膜形成用塗布液の調製は、加水分解性化合物及び極性基を有するポリマーをエタノールなどの溶媒に溶解後、上記触媒を加え、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0049】
前記加水分解性化合物及び、好ましくは極性基を有するポリマーを含有する架橋膜形成用塗布液組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0050】
本発明に係る架橋膜形成用塗布液組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を目的に応じて使用することができる。例えば、塗布液の均一性を向上させるため界面活性剤などを添加することができる。
【0051】
なお、本発明においては、以下の方法でグラフトポリマー層、及び有機−無機複合層を形成してもよい。
即ち、例えば、前記したような極性基を有するマクロマーと特定元素アルコキシド基を有する構造単位との共重合体であるグラフトポリマー、架橋剤、及び触媒を含有する塗布液組成物を調製し、それをプラズマ若しくは電子線等にて処理して表面に活性種であるラジカルを発生させた支持体上に塗布し、加熱、乾燥させる方法が挙げられる。
この方法では、マクロマー中の重合可能な2重結合が支持体上のラジカルと反応することで、支持体に直接結合したグラフトポリマーが生成し、グラフトポリマー層が形成される。また、塗布液組成物を加熱、乾燥させる際に、架橋剤の加水分解及び縮重合反応が生じ、グラフトポリマー層中に架橋構造を形成することができる。
つまり、このような方法によれば、塗布液組成物を調整し、それを塗布、加熱、乾燥させるという一連の工程により、グラフトポリマー層と有機‐無機複合層とを一度に形成することができる。
【0052】
以上述べたように、本発明に係る有機−無機複合層の形成はゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年〕、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明に係る表面親水性層(有機−無機複合体)の形成に適用することができる。
【0053】
本発明の帯電防止フィルムは、前記架橋膜形成用塗布液組成物を、前記グラフトポリマー層を形成してなる適切な基材上に塗布し、加熱、乾燥して架橋構造を有する有機−無機複合層を形成することで得ることができる。この方法により、架橋剤が加水分解及び重縮合することにより、ゾルゲル架橋構造が形成される。
有機−無機複合層形成のための加熱温度と加熱時間は、塗布液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は200℃以下であることが好ましく、加熱時間(架橋時間)は1時間以内が好ましい。
【0054】
このようにして、支持体表面に有機−無機複合体を有する帯電防止層を設けることができる。帯電防止層の膜厚は目的により選択できるが、一般的には0.1μm〜10μmの範囲が好ましく、0.5μm〜10μmの範囲が更に好ましい。この膜厚の範囲において、好ましい帯電防止性能とその耐久性が得られ、且つ、フィルムにおけるカールの発生、可撓性や耐屈曲性の低下が生じにくい。
【0055】
〔基材〕
支持体を構成する基材としては、機械的強度や寸法安定性を有するものであればいずれも使用しうるが、帯電防止フィルムが視認性を必要とする場合には、透明性を有するフィルムが好ましく使用される。
基材として使用されるフィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ナイロン66フィルム、ナイロン6フィルム、メタキシリデンジアミン共重合ポリアミドフィルム等のポリアミドフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドイミドフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム;ポリフェニレンフィルム;ポリスルフォンフィルム;ポリフェニレンスルフィッドフィルム;等が挙げられる。これらの中でも、コストパフォーマンス、透明性、ガスバリヤー性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが好ましい。これらのフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいし、単独で使用しても、異なる性質のフィルムを積層して使用してもよい。
【0056】
また、基材として用いられるフィルムには、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤や安定剤を含有させたり、塗布したりしてもよい。用い得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤などが挙げられる。また、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理、粗面化処理などの表面処理を施してもよい。
【0057】
基材の厚さは、包装材料など使用目的の適性を考慮して、適宜、設定することができるため、特に制限を受けるものではないが、一般的な実用の観点から、3μm〜1mmの範囲であることが好ましく、可撓性や無機薄膜を形成するための加工性の観点から、10〜300μmの範囲であることがより好ましい。
【0058】
このような支持体基材は、それ自体がエネルギー付与により活性種を発生しうるものであれば、基材をそのまま支持体として使用してもよいが、グラフトポリマー鎖を形成する開始種の発生をより効率よく行う目的で、基材表面に重合開始剤を含有する表面層(以下、適宜、重合開始層と称する)を設けて支持体とすることが好ましく、なかでも、安定性、耐久性の観点から、重合開始剤を架橋反応により固定化してなる重合開始層を設けて支持体とすることが好ましい。なお、本発明では、前述の如く、活性種を発生しうる支持体基材自体の表面、及び、重合開始層を形成してなる基材表面の双方を「支持体表面」と称する。
(重合開始層)
このような重合開始層は、その構造中に重合開始剤を含有するものであれば特に制限はないが、重合開始剤の安定化という観点からは、以下に詳述する、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化して得られるものが好ましい。
重合開始層の形成については、本願出願人が先に提出した特願2004−98620明細書段落番号〔0009〕乃至〔0052〕に詳細に記載され、これらの技術を本発明にも適用することができる。
【0059】
これらの詳細を以下に記載する。
この重合開始層の形成に用いられる重合開始基を有するポリマー(以下、適宜、特定重合開始ポリマー)について、説明する。
この特定重合開始ポリマーは、ポリマーの構造中に、重合開始基を有することを必須とし、重合開始基を有するモノマーを重合させて得られることが好ましい。
【0060】
〔重合開始基を有するモノマー〕
特定重合開始ポリマーを構成する重合開始基を有するモノマーとしては、以下の重合開始能を有する構造がペンダントされた、ラジカル、アニオン、又はカチオン重合可能な重合性基を有するモノマーからなることが好ましい。すなわち、このモノマーは、分子内に、重合可能な重合性基と、重合開始基と、が共に存在する構造を有する。
重合開始能を有する構造としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(k)ピリジウム類化合物等が挙げられる。重合開始能の観点からは(a)、(c)、(j)が好ましい。上記(a)〜(k)はこれらのいかなる化合物も使用することができる。
【0061】
これらのモノマーを、重合させることで本発明における特定重合開始ポリマーを合成することができる。また、合成には、いかなる重合方法をも用いることができるが、重合反応の簡便さの観点からは、ラジカル重合反応を利用することが好ましい。この際、ラジカル重合反応を引き起こすためのラジカル発生剤としては、熱でラジカルを発生させる化合物が好ましい。
【0062】
本発明における特定重合開始ポリマーの重量平均分子量は、1万〜1000万であることが好ましく、1万〜500万であることがより好ましく、10万〜100万であることが更に好ましい。本発明における特定重合開始ポリマーの重量平均分子量が1万より小さいと、重合開始層がモノマー溶液に溶解しやすくなる場合がある。
なお、この重量平均分子量の好ましい範囲は、本発明における特定重合開始ポリマーが、後述する、架橋性基を有するモノマーや他の第3の共重合成分(モノマー)との共重合体である場合のも同様である。
【0063】
また、本発明における特定重合開始ポリマーは、上述の重合開始基に加え、更に、架橋性基を有するポリマーであることが好ましい。このように、特定重合開始ポリマーが架橋性基を有することで、該特定重合開始ポリマーは、重合開始基がポリマー鎖に結合しており、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化され、より強固で、開始剤成分の溶出が効果的に抑制された特定重合開始層を形成することができる。
【0064】
本発明においては、このような重合開始層の表面に、前記したグラフトポリマーを生成させるものであるが、上述のような特定重合開始層を設けることにより、グラフトポリマーを形成する素材である重合性化合物を含有する溶液を接触、又は、塗布する際に、重合開始層中にしみ込むことを防止することができる。また、特定重合開始層の形成に際しては、架橋性基を有する特定重合開始ポリマーを用いることで、通常のラジカルによる架橋反応のみならず、極性基間の縮合反応や付加反応を使用することも可能であるため、より強固な架橋構造を得ることができる。その結果、重合開始層中の開始剤成分が溶出することをより効率良く防止することができ、重合開始層中への重合性化合物のしみ込みを防止することができる。
【0065】
架橋性基を有する特定重合開始ポリマーは、上述した、重合開始基を有するモノマーと、架橋性基を有するモノマーと、を共重合することで得ることができる。
〔架橋性基を有するモノマー〕
本発明における特定重合開始ポリマーを構成する架橋性基を有するモノマーとしては、例えば、山下信二編「架橋剤ハンドブック」に掲載されているような従来公知の架橋性基(架橋反応に用いられる構造を有する官能基)がペンダントされた、ラジカル、アニオン、又はカチオン重合可能な重合性基からなるモノマーであることが好ましい。すなわち、このモノマーは、分子内に、重合可能な重合性基と、架橋性基と、が共に存在する構造を有する。
【0066】
これら従来公知の架橋性基の中でも、カルボン酸基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、イソシアネート基(−NCO)が重合性基にペンダントされていることが好ましい。
また、このような架橋性基は、1種のみが重合性基にペンダントされていてもよいし、2種以上がペンダントされていてもよい。
【0067】
これらの架橋性基をペンダントする重合性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基などラジカル、アニオン、カチオン重合できる重合性基があげられる。中でも、特に好ましいのは合成のしやすさよりアクリル基、メタクリル基が好ましい。
【0068】
本発明における特定重合開始ポリマーにおいて、重合開始基を有する共重合成分(A)と、架橋性基を有する共重合成分(B)と、の共重合モル比としては、(A)が1〜40モル%、かつ、(B)が20〜70モル%であることが好ましい。グラフト重合反応や架橋反応後の重合開始層の膜性の観点からは、(A)が5〜30モル%、かつ、(B)30〜60モル%であることがより好ましい。
本発明における特定重合開始ポリマーには、皮膜形成性、親/疎水性、溶媒溶解性、重合開始性などを調整するために、これら以外の共重合成分(モノマー)を用いてもよい。
【0069】
〔特定重合開始ポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層〕
重合開始層形成工程において、特定重合開始ポリマーを架橋反応により固定化する方法としては、特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法、及び架橋剤を併用する方法があり、架橋剤を用いることが好ましい。特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法としては、例えば、架橋性基が−NCOである場合、熱をかけることにより自己縮合反応が進行する性質を利用したものである。この自己縮合反応が進行することにより、架橋構造を形成することができる。
【0070】
〔重合開始層の成膜〕
本工程においては、上述の特定重合開始ポリマーを適当な溶剤に溶解し、塗布液を調製し、その塗布液を基材上に塗布などにより配置し、溶剤を除去し、架橋反応が進行することにより成膜する。
また、重合開始層を成膜する際に、重合開始基を有するモノマーのみから合成された特定重合開始ポリマーを用いる場合には、架橋反応が進行する必要はなく、上記と同様に、塗布液を調製した後、その塗布液を基材上に塗布などにより配置し、溶剤を除去(乾燥)すればよい。
【0071】
(溶媒)
重合開始層を塗布する際に用いる溶媒は、上述の特定重合開始ポリマーが溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
重合開始層の塗布量は、充分な重合開始能の発現と、優れた膜性との両立という観点からは、乾燥後の重量で、0.1〜20g/mが好ましく、更に、0.1〜15g/mが好ましい。
【0072】
(導電性コロイド)
本発明において使用可能な導電性コロイドとしては、例えば、ZnO、TiO、SnO、Al、InO、SiO、MgO、BaO及びMoOの金属酸化物を挙げることができる。さらにこれらの複合酸化物も挙げることができる。
金属酸化物としてはZnO、TiO及びSnOが好ましい。また、複合酸化物としては、SnOに対してSb、Inに対してSn、ZnOに対してAlあるいはIn、TiOに対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を0.01〜30モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%、含むものが好ましい。
さらに、異なる導電性金属酸化物同士がコア−シェル構造を形成してなるコアシェルタイプの導電性金属酸化物を使用しても良い。コア粒子及びシェル層を構成する成分は、前記金属酸化物と同じであり、好ましい例も同じである。また前記複合酸化物がコアシェル構造であってもよい。
導電性金属酸化物の体積固有低効率は、10Ω・cm以下、特に10Ω・cm以下が好ましい。また金属酸化物の結晶内に酸素欠陥を有するもの、あるいは金属酸化物に対して所謂ドナーとなる異種元素を少量含むものは、導電性が高くなるので好ましい。
上記導電性金属酸化物の粒径は0.5μm以下であることが好ましく、さらに0.2μm以下であることが好ましい。
【0073】
(帯電防止層形成方法)
帯電防止層の形成は、導電性金属酸化物などの導電性コロイドを、先に詳述したゾルゲル液に添加して塗布液あるいは懸濁液(必要に応じて水又は有機溶剤等を加えて)を調製し、それを透明フィルムなどの適切な基材上に塗布、加熱乾燥することにより実施することができる。また、アルコキシド基を有するポリマーを用いてグラフトポリマー層を形成した後、その表面に導電性コロイドを含有する塗布液を塗布する方法をとることもできる。
塗布は、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコード法、グラフビアコート法、あるいはホッパーを使用するエクストルージョン法等の公知の塗布方法で行うことができる。
上記導電性金属酸化物を帯電防止剤として用いる場合、帯電防止層の透過率を大きくするためには、金属酸化物とバインダーの屈折率の差が大きくなることを防ぐため、両者の屈折率を同程度にすることが望ましい。この調節は金属酸化物の粒子径を調節することにより行うことができる。導電性金属酸化物の粒子の直径は、0.5μm以下であることが好ましく、特に0.2μm以下の金属酸化物を使用することにより、光散乱効率を10%以下にすることができる。
【0074】
上記帯電防止層の体積抵抗率は、10Ω・cm〜1010Ω・cmが一般的であり、好ましくは10〜10Ω・cm、さらに好ましくは10〜10Ω・cmの範囲であり、このような抵抗は、層中の導電性金属酸化物の体積含有率を調整することにより得ることができる。
一般に、帯電防止層の形成に際しては、前記ゾルゲル液を含む帯電防止層形成用塗布液の全固形分に対し、導電性コロイドの添加量は、5〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%の範囲にあることがより好ましい。
帯電防止層の層厚は、0.01〜10μmの範囲が好ましく、0.05〜2.0μmの範囲が好ましく、0.05〜2.0μmの範囲が特に好ましい。
【0075】
(撥水撥油処理)
このようにして得られた有機−無機複合被膜からなる帯電防止層表面に撥水性を付与するため、表面処理を施す撥水撥油処理工程を実施することができる。表面処理を施すときに使用される化合物(撥水剤)や処理方法に特別の制限はないが、表面にフッ素やアルキル基が付与されることが好ましい。例えばシリル化剤、チタネートカップリング剤、アルキルアルミニウムなどの有機金属化合物が挙げられる。
シリル化剤は無機材料に対して親和性あるいは反応性を有する加水分解性シリル基にアルキル基、アリール基、フッ素を含有したフルオロアルキル基等を結合させた化合物であり、ケイ素に結合した加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基、シラザン等が挙げられる。
さらに撥水膜の臨界傾斜角(すなわち水平に置いた撥水膜被覆基板表面に置かれた一定量の水滴が転がり始める板の傾き角度)を小さくして水滴が転落しやすくなるようにするため、ポリジメチルシロキサン化合物を撥水剤として使用しても良い。撥水剤は必要に応じて加水分解してから撥水層のコーティングに供する。
【0076】
上記撥水剤による表面処理は、スプレー法、流し塗り法、スピンコート法、浸漬引き上げ法などによる塗布及び、液相吸着法などによる表面吸着である。撥水剤で処理された基材は乾燥後、300℃以下の温度、好ましくは100℃〜250℃で10分間〜1時間加熱処理する。有機無機複合層表面に撥水剤が単分子層を形成すれば撥水性能を示し、また撥水剤の厚みが10nmを超えても効果はそれ以上高くならないので、熱処理後の撥水層の好ましい厚みは1〜10nmである。
【0077】
本発明の帯電防止フィルムは、支持体表面に導入されたグラフトポリマー鎖と、そのグラフトポリマー鎖間に形成される高密度の架橋構造に起因して、支持体表面との密着性が良好で、耐溶剤性に優れ、ブロッキングし難いとの効果を奏する。
また、本発明の帯電防止フィルムは、比較的簡易な工程で作製することが可能であり、特にブロッキング製は高湿下においても優れていることから、通常の帯電防止性プラスチックフィルムとして好適であるだけでなく、特に写真製版の集版工程における貼り込み用シートとして使用するのに最適である。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例1)
〔支持体の作製〕
基材として、膜厚188μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(A4100、東洋紡(株)社製)を用い、グロー処理として平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件で酸素グロー処理を行って基材Aを得た。
(酸素グロー処理条件)
初期真空 :1.2×10−3Pa
酸素圧力 :0.9Pa
RFグロー :1.5kW
処理時間 :60sec
【0079】
(グラフトポリマーの導入)
次に、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、エタノール混合溶液(濃度:50wt%)を窒素バブリングした。この混合溶液に上記基材Aを70℃で7時間浸漬した。浸漬した膜をエタノールで充分洗浄して、アルコキシシリル基を分子内に有する親水性グラフトポリマー鎖が基材Aに結合してなる支持体Bを作成した。
【0080】
〔帯電防止層の形成〕
得られた支持体Bに、シリカオリゴマー(アルコキシシランの加水分解物)をバインダーとする導電性コロイド含有液(エルコムP−35、触媒化成工業(株)社製)を、乾燥塗膜の膜厚が1μmになるようにバーコーター塗布で塗布し、120℃で10分加熱することにより、被膜中に架橋構造が形成され、導電性コロイドを含む有機−無機複合膜からなる帯電防止層が形成された有機−無機ハイブリッドフィルム1を得た。
(撥水撥油処理)
得られた有機−無機ハイブリッドフィルム1を0.1wt%1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシルトリクロロシランヘキサン溶液に浸漬し、引き上げた後、加熱乾燥(100℃、10min)することにより表面を撥水撥油処理された帯電防止層を備えた、防汚性表面を有する帯電防止フィルム1を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは600nmであった。
【0081】
(実施例2)
前記実施例1において帯電防止層(有機−無機複合膜)の形成に使用した塗布液に換え、下記塗布液組成物1に換えた以外は実施例1と同様の方法で防汚性表面を有する帯電防止フィルム2を得た。
[有機無機複合体(帯電防止層)の形成]
得られた支持体Bに2−プロパノール、水、テトラエトキシシラン、リン酸を以下の量で含む塗布液組成物1を室温で5時間撹拌した後、実施例1で用いたシリカオリゴマーをバインダーとする導電性コロイド含有液(エルコムP−35、触媒化成工業(株)社製)を2.0g添加したものを塗布し、100℃、10分間加熱乾燥させて有機−無機複合体からなる帯電防止層を形成し、その後、実施例1と同様に撥水撥油処理して帯電防止フィルム2を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは520nmであった。
(塗布組成物1)
・2−プロパノール 8g
・テトラエトキシチタネート [架橋成分] 1.0g
・水 1.0g
・リン酸水溶液(0.85%水溶液) 1.0g
【0082】
(実施例3)
前記実施例2において帯電防止層(有機−無機複合膜)の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシチタネート1.0gをテトラメトキシジルコネート1.0gに換えた以外は実施例1と同様の方法で防汚性帯電防止フィルム3を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは550nmであった。
(実施例4)
前記実施例5において帯電防止層(有機−無機複合膜)の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシチタネート1.0gをトリメトキシアルミネート1.0gに換えた以外は実施例1と同様の方法で防汚性帯電防止フィルム4を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは880nmであった。
【0083】
(実施例5)
アクリルアミド水溶液(濃度:50wt%)を窒素バブリングした。この溶液に実施例1に記載の基材Aを70℃で7時間浸漬した。浸漬した膜を水で充分洗浄して親水性グラフトポリマー鎖を有する支持体Cを作成した。
前記実施例1において、用いた支持体Bを支持体Cに換えた以外は実施例1と同様の方法で帯電防止フィルム5を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは650nmであった。
【0084】
(実施例6)
(グラフトポリマーの導入2)
メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン・エタノール溶液(濃度:50wt%)を窒素バブリングした。この混合溶液に上記基材Aを70℃で7時間浸漬した。浸漬した膜を蒸留水で充分洗浄して親水性グラフトポリマー鎖を有する支持体Dを作製した。
前記実施例1において、用いた支持体Bを支持体Dに換えた以外は実施例1と同様の方法で防汚性帯電防止フィルム6を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは730nmであった。
【0085】
(比較例1)
スチレン・メチルエチルケトン溶液(濃度:10wt%)を窒素バブリングした。この溶液に実施例1に記載の基材Aを70℃で7時間浸漬した。浸漬した膜をメチルエチルケトンにて充分洗浄してスチレンが表面にグラフトされた表面グラフトフィルムを支持体Eとして得た。
前記実施例1において、用いた支持体Bを支持体Eに換えた以外は実施例1と同様の方法で防汚性帯電防止フィルム7を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは850nmであった。
【0086】
(比較例2)
前記実施例1において、用いた支持体Bを、グラフトポリマー層を有しないポリエチレンテレフタレートに換えた以外は実施例1と同様の方法で防汚性帯電防止フィルム8を得た。
撥水撥油処理された帯電防止層の厚みは740nmであった。
【0087】
〔性能評価〕
得られた帯電防止フィルムを以下の方法により性能評価を行った。結果を表1に示す。
(撥水性評価)
協和界面科学(株)製、CA−Zを用い、純水の滴下後、20秒後の角度を測定した。水滴接触角が150°以上であるものを○とした。
(密着性試験)
JISK5400に準拠し、ロータリーカッターにて1mm角の碁盤目100マスを付け、セロテープ(ニチバン製、登録商標)を圧着させたのち、30000mm/minの速度で90度の剥離試験を3回実施した。
【0088】
(初期防汚性)
防汚性表面材料のフッ素含有重合体被膜表面に速乾性油性インキ(ゼブラ製、「マッキー」(登録商標))を用いて字を書いた。次にその字を旭化成社製「ベムコットン」(登録商標)を用いてきれいに拭き取れるまでの回数を測定した。
(繰り返し防汚性)
旭化成社製「ベムコットン」(登録商標)を用いて防汚性ハードコートフィルムの表面を500回強くこすった後、フィルム表面に速乾性油性インキ(ゼブラ製、「マッキー」(登録商標))で字を書きそれが拭き取れるまでの回数を示した。
【0089】
(帯電防止性)
表面抵抗率を25℃、10%RHの雰囲気中で絶縁抵抗測定器(VH−30型;川口電気(株)製)を用いて測定した。表面抵抗率が1010Ω以下を○とした。
(ヘイズ)
得られた帯電防止性プラスチックフィルムを、積分球式ヘイズメーター(SEP−H−S型;日本精密工学(株)製)を用いて測定した。2%以下のものを○とした。
【0090】
【表1】


【0091】
表1に明らかなように、本発明の帯電防止フィルムは、透明性、帯電防止性、表面防汚性及びその持続性に優れ、基材と帯電防止層との密着性も強固であることがわかる。一方、被膜内に架橋構造を有しないスチレングラフトポリマー層を介して帯電防止層を形成した比較例1、グラフトポリマー層を介さずに帯電防止層を形成した比較例2の帯電防止フィルムでは、支持体と帯電防止層との密着性に劣り、擦り等により剥離し、表面撥水撥油性、帯電防止性の耐久性に劣ることがわかる。
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−7727(P2008−7727A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182287(P2006−182287)