トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 有機無機複合体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】木村 信夫

【氏名】芝田 大幹

【氏名】長谷川 一希

【要約】 【課題】表面に所望の硬度を有すると共に基体との密着性に優れた光触媒層を備えた有機無機複合体、及びその製造方法を提供すること。

【構成】式(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有するポリシロキサン系複合体表面に、光触媒層を備えたことを特徴とする有機無機複合体。
【請求項2】
金属キレート化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合体。
【請求項3】
金属有機酸塩化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機無機複合体。
【請求項4】
2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項5】
金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属キレート化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項6】
金属有機酸塩化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属有機酸塩化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項7】
金属キレート化合物が、β−ケトカルボニル化合物、β−ケトエステル化合物、又はα−ヒドロキシエステル化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項8】
加水分解性基が、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアシルオキシ基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項9】
金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項10】
式(I)のRが、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜10のエポキシアルキル基であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項11】
ポリシロキサン系複合層の表面に光触媒層を備えた薄膜であることを特徴とする請求項1〜10に記載の有機無機複合体。
【請求項12】
ポリシロキサン系複合層の層表面から深さ方向10nmにおける層表面部の炭素含有量が、ポリシロキサン系複合層の層裏面から深さ方向10nmにおける層裏面部の炭素含有量の80%以下の薄膜であることを特徴とする請求項11に記載の有機無機複合体。
【請求項13】
ポリシロキサン系複合層の層表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする請求項11又は12に記載の有機無機複合体。
【請求項14】
炭素含有量が漸次増加している深さが、層厚の5〜80%であることを特徴とする請求項13に記載の有機無機複合体。
【請求項15】
炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする請求項13又は14に記載の有機無機複合体。
【請求項16】
ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上の薄膜であることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項17】
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、層表面から深さ方向10nmにおける層表面部の炭素含有量が、層裏面から深さ方向10nmにおける層裏面部の炭素含有量の80%以下であるポリシロキサン系層上に、光触媒層を備えたことを特徴とするポリシロキサン系薄膜。
【請求項18】
ポリシロキサン系層の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする請求項17に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項19】
炭素含有量が漸次増加している深さが、層厚の5〜80%であることを特徴とする請求項18に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項20】
炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする請求項18又は19に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項21】
ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上であることを特徴とする請求項17〜20のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項22】
ポリシロキサン系層が、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有することを特徴とする請求項17〜21のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項23】
金属キレート化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする請求項22に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項24】
金属有機酸塩化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする請求項22又は23に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項25】
2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項26】
金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属キレート化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする請求項22〜25のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項27】
金属有機酸塩化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属有機酸塩化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする請求項22〜26のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項28】
金属キレート化合物が、β−ケトカルボニル化合物、β−ケトエステル化合物、又はα−ヒドロキシエステル化合物であることを特徴とする請求項22〜27のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項29】
加水分解性基が、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアシルオキシ基であることを特徴とする請求項22〜28のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項30】
金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項22〜29のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項31】
式(I)のRが、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜10のエポキシアルキル基であることを特徴とする請求項17〜30のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項32】
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物とを含有するポリシロキサン系複合体形成用組成物を乾燥し、ポリシロキサン系複合体を形成するポリシロキサン系複合体形成工程と、
前記ポリシロキサン系複合体表面に、光触媒を含有する光触媒層形成用組成物を塗布し乾燥して光触媒層を形成する光触媒層形成工程と、
前記ポリシロキサン系複合体に対して、350nm以下の波長の光を照射するUV光照射工程とを有することを特徴とする有機無機複合体の製造方法。
【請求項33】
UV光照射工程が、ポリシロキサン系複合体形成工程後、光触媒層形成工程の前に行われることを特徴とする請求項32に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項34】
UV光照射工程が、ポリシロキサン系複合体形成工程及び光触媒層形成工程の後に行われることを特徴とする請求項32に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項35】
UV光照射工程において、照射する光が、150〜350nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする請求項32〜34のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項36】
UV光照射工程において、照射する光が、250〜310nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする請求項35に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項37】
有機ケイ素化合物の縮合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする請求項32〜36のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項38】
光感応性化合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする請求項32〜37のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項39】
光感応性化合物の金属原子が、式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物におけるケイ素原子に対して、0.01〜0.5モル当量含有されていることを特徴とする請求項32〜38のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機複合体及びその製造方法に関し、詳しくは、表面に光触媒層を備えた有機無機複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販品のシラン系コート剤の原料としては、主として3官能のシランが用いられており、かかる3官能シランにより、適度な硬さと柔軟性を持つポリシロキサンが形成される。しかしながら、3官能シランの膜では、まだハードコート性が不足しており、それを補うために、3官能シランに、4官能シランやコロイダルシリカを混合することにより補っているが、膜を硬くすれば、ヒビ割れやすくなり、密着性が悪くなるという問題がある。例えば、シラン系のコート剤としては、エポキシ基を有する3官能アルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
シラン系のコート剤としては、例えば、エポキシ基を有する3官能アルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物(特許文献1参照。)がある。また、光触媒を含有したシラン系コート剤も提案されており、光酸発生剤、架橋剤、硬化触媒等を使用して、膜を硬化している(例えば、特許文献2,3参照。)。さらに、材料中の金属系化合物の含有率が、材料の表面から深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有するシラン系の有機−無機複合傾斜材料も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−195417号公報
【特許文献2】特開2002−363494号公報
【特許文献3】特開2000−169755号公報
【特許文献4】特開2000−336281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、光触媒層を備えた新規な有機無機複合体、特に、表面に所望の硬度を有すると共に基体との密着性に優れた光触媒層を備えた有機無機複合体、かかる有機無機複合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、新規な有機無機複合体の開発に取り組み、まず、特定の有機ケイ素化合物及び光感応性化合物を含む組成物を熱硬化させることにより、表面が内部より高い硬度を有すると共に、基体との密着性に優れた有機無機複合体を製造することができることを見い出し、さらには、光照射することにより、表面が非常に高い硬度を有すると共に、内部及び裏面側が適当な硬度を有しつつ、かつ基体との密着性に優れた有機無機複合体を製造することができることを見い出した(特願2006−013933号)。本発明者らは、さらに研究を進めた結果、上記効果を維持しつつ光触媒機能を有効に発揮する非常に有用性の高い有機無機複合体を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有するポリシロキサン系複合体表面に、光触媒層を備えたことを特徴とする有機無機複合体や、〔2〕金属キレート化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする上記〔1〕に記載の有機無機複合体や、〔3〕金属有機酸塩化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の有機無機複合体や、〔4〕2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の有機無機複合体や、〔5〕金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属キレート化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の有機無機複合体に関する。
【0008】
また、本発明は、〔6〕金属有機酸塩化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属有機酸塩化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の有機無機複合体や、〔7〕金属キレート化合物が、β−ケトカルボニル化合物、β−ケトエステル化合物、又はα−ヒドロキシエステル化合物であることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の有機無機複合体や、〔8〕加水分解性基が、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアシルオキシ基であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の有機無機複合体や、〔9〕金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の有機無機複合体や、〔10〕式(I)のRが、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜10のエポキシアルキル基であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の有機無機複合体や、〔11〕ポリシロキサン系複合層の表面に光触媒層を備えた薄膜であることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕に記載の有機無機複合体や、〔12〕ポリシロキサン系複合層の層表面から深さ方向10nmにおける層表面部の炭素含有量が、ポリシロキサン系複合層の層裏面から深さ方向10nmにおける層裏面部の炭素含有量の80%以下の薄膜であることを特徴とする上記〔11〕に記載の有機無機複合体に関する。
【0009】
さらに、本発明は、〔13〕ポリシロキサン系複合層の層表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする上記〔11〕又は〔12〕に記載の有機無機複合体や、〔14〕炭素含有量が漸次増加している深さが、層厚の5〜80%であることを特徴とする上記〔13〕に記載の有機無機複合体や、〔15〕炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする上記〔13〕又は〔14〕に記載の有機無機複合体や、〔16〕ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上の薄膜であることを特徴とする上記〔11〕〜〔15〕のいずれかに記載の有機無機複合体や、〔17〕式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、層表面から深さ方向10nmにおける層表面部の炭素含有量が、層裏面から深さ方向10nmにおける層裏面部の炭素含有量の80%以下であるポリシロキサン系層上に、光触媒層を備えたことを特徴とするポリシロキサン系薄膜や、〔18〕ポリシロキサン系層の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする上記〔17〕に記載のポリシロキサン系薄膜や、〔19〕炭素含有量が漸次増加している深さが、層厚の5〜80%であることを特徴とする上記〔18〕に記載のポリシロキサン系薄膜に関する。
【0010】
また、本発明は、〔20〕炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする上記〔18〕又は〔19〕に記載のポリシロキサン系薄膜や、〔21〕ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上であることを特徴とする上記〔17〕〜〔20〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔22〕ポリシロキサン系層が、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有することを特徴とする上記〔17〕〜〔21〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔23〕金属キレート化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする上記〔22〕に記載のポリシロキサン系薄膜や、〔24〕金属有機酸塩化合物が、水酸基若しくは加水分解性基を有することを特徴とする上記〔22〕又は〔23〕に記載のポリシロキサン系薄膜や、〔25〕2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする上記〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔26〕金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属キレート化合物 1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする上記〔22〕〜〔25〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜に関する。
【0011】
また、本発明は、〔27〕金属有機酸塩化合物の加水分解物及び/又は縮合物が、金属有機酸塩化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解した生成物であることを特徴とする上記〔22〕〜〔26〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔28〕金属キレート化合物が、β−ケトカルボニル化合物、β−ケトエステル化合物、又はα−ヒドロキシエステル化合物であることを特徴とする上記〔22〕〜〔27〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔29〕加水分解性基が、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアシルオキシ基であることを特徴とする上記〔22〕〜〔28〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔30〕金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記〔22〕〜〔29〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔31〕式(I)のRが、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜10のエポキシアルキル基であることを特徴とする上記〔17〕〜〔30〕のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、〔32〕式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物とを含有するポリシロキサン系複合体形成用組成物を乾燥し、ポリシロキサン系複合体を形成するポリシロキサン系複合体形成工程と、前記ポリシロキサン系複合体表面に、光触媒を含有する光触媒層形成用組成物を塗布し乾燥して光触媒層を形成する光触媒層形成工程と、前記ポリシロキサン系複合体に対して、350nm以下の波長の光を照射するUV光照射工程とを有することを特徴とする有機無機複合体の製造方法や、〔33〕UV照射工程が、ポリシロキサン系複合体形成工程後、光触媒層形成工程の前に行われることを特徴とする上記〔32〕に記載の有機無機複合体の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、〔34〕UV照射工程が、ポリシロキサン系複合体形成工程及び光触媒層形成工程の後に行われることを特徴とする上記〔32〕に記載の有機無機複合体の製造方法や、〔35〕UV照射工程において、照射する光が、150〜350nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする上記〔32〕〜〔34〕のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法や、〔36〕UV照射工程において、照射する光が、250〜310nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする上記〔35〕に記載の有機無機複合体の製造方法や、〔37〕有機ケイ素化合物の縮合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする上記〔32〕〜〔36〕のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法や、〔38〕光感応性化合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする上記〔32〕〜〔37〕のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法や、〔39〕光感応性化合物の金属原子が、式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物におけるケイ素原子に対して、0.01〜0.5モル当量含有されていることを特徴とする上記〔32〕〜〔38〕のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の有機無機複合体としては、式(I)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有するポリシロキサン系複合体表面に、光触媒層を備えた有機無機複合体であれば特に制限されるものではなく、本発明においては、ポリシロキサン系複合体表面に中間層を介して光触媒層を設けることもできるが、ポリシロキサン系複合体表面に直接光触媒層を設けることが好ましく、これにより、有機物からなるバインダーが存在しないので、製造後、直ちに光触媒が光触媒活性を有効に発揮することが可能となる。また、ポリシロキサン系複合体と光触媒粒子との密着性も高く、光触媒粒子をポリシロキサン系複合体表面に確実に保持することができる。
【0014】
まず、ポリシロキサン系複合体について説明する。ポリシロキサン系複合体は、例えば、有機ケイ素化合物の縮合物に、光感応性化合物及び/又はその誘導体が非結合状態で分散されてなるものや、有機ケイ素化合物の縮合物に、光感応性化合物及び/又はその誘導体が結合してなるもの(例えば、Si−O−M結合を有するもの(Mは光感応性化合物中の金属原子を表す。))や、その混合状態からなるものが挙げられ、後述するポリシロキサン系複合体形成用組成物を用いて製造することができる。
【0015】
式(I)中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表す。かかる有機基としては、炭化水素基、ポリマーからなる基等を挙げることができ、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数1〜10のエポキシアルキル基がより好ましい。また、置換基としてメタクリロキシ基を有する炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。さらに、炭化水素基は、置換基としてフッ素等のハロゲンを有していてもよい。また、かかる有機基は、ケイ素原子を含んでいてもよく、ポリシロキサン、ポリビニルシラン、ポリアクリルシラン等のポリマーを含む基であってもよい。また、nは、1又は2を表し、n=1のものが特に好ましい。nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。式(I)の(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。加水分解性基とは、例えば、無触媒、過剰の水の共存下、25℃〜100℃で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基や、シロキサン縮合物を形成することができる基を意味し、具体的には、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基等を挙げることができ、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のアシルオキシ基が好ましい。
【0017】
具体的に、有機ケイ素化合物としては、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ジメチルジアミノシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジロキシトリメトキシシラン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、オキサシクロヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリ(メタ)アクリロキシシラン、メチル[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、メチル−トリグリシジロキシシラン、メチルトリス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、これらの式(I)で表される有機ケイ素化合物の中で、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルメトキシシラン等の炭素数6以上のアルキル基(R)を有する有機ケイ素化合物や、ジメチルジメトキシシラン等の2つのアルキル基(R)を有する有機ケイ素化合物は、UV照射によるR成分の分解が比較的起こりにくいので、これらを一部又は全部用いることにより、膜の撥水性を向上させることが可能となる。
【0018】
また、ポリマー系の有機ケイ素化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどから選ばれるビニル系化合物を共重合したビニル系ポリマーを式(I)のR成分とするものを挙げることができる。
【0019】
本発明のポリシロキサン系複合体における光感応性化合物とは、350nm以下の波長の光に感応する化合物であり、そのメカニズムの如何によらず、表面側から照射される350nm以下の波長の光の作用によって、表面側の炭素成分を除去することができる化合物であり、好ましくは、表面から深さ方向10nmにおける表面部の炭素含有量が、炭素量が減少していない部分(膜の場合、例えば、膜裏面から深さ方向10nmにおける裏面部)の炭素含有量の80%以下、より好ましくは2〜60%、さらに好ましくは2〜40%とすることができる化合物であり、特に好ましくは、炭素成分を、その除去量が表面側から漸次減少するように所定深さまで除去することが可能な化合物、すなわち、表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加する膜を形成することができる化合物をいう。具体的に、例えば、350nm以下の波長の光を吸収して励起する化合物を挙げることができる。また、350nm以下の波長の光とは、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光源を用いてなる光、好ましくは、350nm以下のいずれかの波長の光を主成分とする光源を用いてなる光、すなわち、最も成分量の多い波長が350nm以下の光源を用いてなる光を意味する。なお、本発明のポリシロキサン系複合体における主成分となる有機ケイ素化合物の縮合物は、後述する本発明のポリシロキサン系複合体形成用組成物における有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物がさらに縮合したものを意味する。
【0020】
本発明のポリシロキサン系複合体における光感応性化合物としては、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、加水分解物及び/又は縮合物であることが好ましく、特に、金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が好ましい。これから誘導される化合物としては、例えば、金属キレート化合物の縮合物等がさらに縮合されたもの等を挙げることができる。かかる光感応性化合物及び/又はその誘導体は、上述のように、有機ケイ素化合物と化学結合していてもよく、非結合状態で分散していてもよく、その混合状態のものであってもよい。
【0021】
金属キレート化合物としては、水酸基若しくは加水分解性基を有する金属キレート化合物であることが好ましく、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属キレート化合物であることがより好ましい。なお、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有するとは、加水分解性基及び水酸基の合計が2以上であることを意味する。また、前記金属キレート化合物としては、β−ケトカルボニル化合物、β−ケトエステル化合物、及びα−ヒドロキシエステル化合物が好ましく、具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル等のβ−ケトエステル類;アセチルアセトン、へキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチル−へキサン−2,4−ジオン等のβ−ジケトン類;グリコール酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸;等が配位した化合物が挙げられる。
【0022】
金属有機酸塩化合物としては、金属イオンと有機酸から得られる塩からなる化合物であり、有機酸としては、酢酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸等のカルボン酸類;スルフォン酸、スルフィン酸、チオフェノール等の含硫黄有機酸;フェノール化合物;エノール化合物;オキシム化合物;イミド化合物;芳香族スルフォンアミド;等の酸性を呈する有機化合物が挙げられる。
【0023】
また、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物は、上記金属キレート化合物及び金属有機酸塩化合物を除くものであり、例えば、金属の水酸化物や、金属アルコラート等を挙げることができる。
【0024】
金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が好ましい。なお、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有するとは、加水分解性基及び水酸基の合計が2以上であることを意味する。
【0025】
かかる金属化合物の加水分解物及び/又は縮合物としては、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いて加水分解したものであることが好ましく、0.5〜2モルの水を用いて加水分解したものであることがより好ましい。
【0026】
また、金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物としては、金属キレート化合物 1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解したものであることがさらに好ましく、5〜20モルの水を用いて加水分解したものであることがより好ましい。
【0027】
また、金属有機酸塩化合物の加水分解物及び/又は縮合物としては、金属有機酸塩化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解したものであることがさらに好ましく、5〜20モルの水を用いて加水分解したものであることがより好ましい。
【0028】
また、これら金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における金属としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛等が挙げられ、これらの中でもチタン、ジルコニウム、アルミニウムが好ましく、特にチタンが好ましい。これらは2種以上用いることもできる。
【0029】
上記ポリシロキサン系複合体は、具体的に、例えば、鋳型に鋳込んで成形された成形体や、基体上に塗布して形成された薄膜(ポリシロキサン系複合層)を挙げることができる。ポリシロキサン系複合層を形成する場合、基体上に塗布した後、熱硬化(乾燥)させたものであれば特に制限されるものではないが、熱硬化後、350nm以下の波長の光を照射したものが好ましく、これにより、より高硬度の薄膜(ポリシロキサン系複合層)を得ることができ、また、かかるポリシロキサン系複合層と光触媒層との密着性が向上する。なお、この光照射は、光触媒層の形成前及び/又は後に行うことができる。
【0030】
本発明のポリシロキサン系複合体が層(ポリシロキサン系複合層)の場合、かかるポリシロキサン系複合層は、層表面部の炭素含有量が、層裏面部の炭素含有量に比して少ない構成であることが好ましく、層表面から深さ方向10nmにおける層表面部(深さ10nmの位置)の炭素含有量が、層裏面から深さ方向10nmにおける層裏面部の炭素含有量の80%以下であることがより好ましく、2〜60%であることがさらに好ましい。ここで、層表面部の炭素含有量が、層裏面部の炭素含有量に比して少ないとは、層表面から層中心部までの総炭素量が、層裏面から層中心部までの総炭素量より少ないことを意味する。
【0031】
また、ポリシロキサン系複合層は、層の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることが好ましく、このような炭素含有量が漸次増加している深さとしては、層厚の5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、具体的に、例えば、層厚が1〜2.5μm程度の場合、炭素含有量が漸次増加している深さは、50〜2000nm程度である。
【0032】
続いて、光触媒層について説明する。光触媒層における光触媒は、上記光感応性化合物とは異なり、350nmを超える光の波長にも感応するものであり、例えば、金属酸化物を挙げることができ、具体的には、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化鉄(Fe)等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化チタンが好ましく、アナターゼ型及びルチル型のいずれを用いることもよいが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。具体的には、ビストレイターNDC−137C(日本曹達株式会社製)、酸化チタン微粒子ST、STSシリーズ(石原産業株式会社製)等を挙げることができる。
【0033】
また、本発明のポリシロキサン系薄膜としては、式(I)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、層表面から深さ方向10nmにおける層表面部の炭素含有量が、層裏面から深さ方向10nmにおける層裏面部の炭素含有量の80%以下であるポリシロキサン系層上に、光触媒層を備えたものであれば特に制限されるものではなく、ポリシロキサン系層は、層裏面から深さ方向10nmにおける層裏面部の炭素含有量の2〜60%であることが好ましく、また、350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物を含有することが好ましい。本発明においては、ポリシロキサン系層上に中間層を介して光触媒層を設けることもできるが、ポリシロキサン系層上に直接光触媒層を設けることが好ましく、これにより、有機物からなるバインダーが存在しないので、製造後、直ちに光触媒が光触媒活性を有効に発揮することが可能となる。また、ポリシロキサン系層と光触媒粒子との密着性も高く、光触媒粒子をポリシロキサン系層上に確実に保持することができる。また、ポリシロキサン系層は、層の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることが好ましく、このような炭素含有量が漸次増加している深さとしては、層厚の5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、具体的に、例えば、層厚が1〜2.5μm程度の場合、炭素含有量が漸次増加している深さは、50〜2000nm程度である。なお、本発明のポリシロキサン系薄膜のポリシロキサン系層の詳細については、上述のポリシロキサン系複合体層と同様であり、また、光触媒層についても同様である。
【0034】
本発明の薄膜としての有機無機複合体や、本発明のポリシロキサン系薄膜は、熱硬化後の薄膜のガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、1H〜4H程度であり、基板との密着性及び硬度の点から、2H〜4Hであることが好ましい。また、光照射後の薄膜のガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度としては、5H以上であることが好ましく、7H以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の薄膜は、例えば、ハードコート膜、ガスバリアー膜、帯電防止膜、UVカット膜、反射防止膜等として用いることができ、表面硬度が高いことから、ハードコート膜として非常に有用である。ハードコート膜の適用例としては、例えば、自動車のガラス、ヘッドライト、外装部品、内装部品、電装部品、サンルーフ;携帯電話のフロントケース、リアケース、バッテリーケース;眼鏡レンズ;光ディスク;建材化粧シート、フィルム;テレビ前面パネル;CRTカバー;ビデオリフレクター;等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明の有機無機複合体の製造方法としては、式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物とを含有するポリシロキサン系複合体形成用組成物を乾燥し、ポリシロキサン系複合体を形成するポリシロキサン系複合体形成工程と、前記ポリシロキサン系複合体表面に、光触媒を含有する光触媒層形成用組成物を塗布し乾燥して光触媒層を形成する光触媒層形成工程と、前記ポリシロキサン系複合体に対して、350nm以下の波長の光を照射するUV光照射工程とを有する方法であれば特に制限されるものではなく、UV照射工程は、ポリシロキサン系複合体形成工程後、光触媒層形成工程の前に行われてもよく、また、ポリシロキサン系複合体形成工程及び光触媒層形成工程の後に行われてもよい。ポリシロキサン系複合体形成工程は、成形体を成形する場合には、ポリシロキサン系複合体形成用組成物を鋳型に鋳込んで乾燥する工程であり、また、薄膜を形成する場合には、ポリシロキサン系複合体形成用組成物を塗布し乾燥する工程である。本発明の製造方法により製造された有機無機複合体は、硬度が非常に高く、光触媒層の密着性も非常に高い。
【0037】
ポリシロキサン系複合体形成用組成物としては、式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物とを含有する組成物であれば特に制限されるものではなく、さらに、水及び溶媒を含有することが好ましい。
【0038】
本発明のポリシロキサン系複合体形成用組成物における式(I)で表される有機ケイ素化合物は、上述したものと同様であり、縮合物であることが好ましく、その平均粒径が、10nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましい。また、本発明のポリシロキサン系複合体形成用組成物における光感応性化合物は、上述したものと同様であり、加水分解物及び/又は縮合物であることが好ましく、特に、金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が好ましく、その平均粒径としては、10nm以下であることが好ましく、7nm以下であることがより好ましい。これにより、有機無機複合体(薄膜)の透明性を向上させることができる。これらの平均粒子径は、例えば、Malvern Instruments Ltd製 HPPSを用いて測定することができる。
【0039】
用いる溶媒としては、特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
本発明のポリシロキサン系複合体形成用組成物中の固形分量(有機ケイ素成分、光感応性化合物成分)としては、1〜75重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましい。また、光感応性化合物の含有量としては、その種類にもよるが、一般的に、有機ケイ素化合物中のSiに対して、光感応性化合物中の金属原子が0.01〜0.5モル当量、好ましくは0.05〜0.2モル当量であることが好ましい。
【0041】
また、本発明のポリシロキサン系複合体形成用組成物には、得られる塗膜の硬度向上を目的として4官能シランやコロイド状シリカを添加することもできる。4官能シランとしては、例えば、テトラアミノシラン、テトラクロロシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラベンジロキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラ(メタ)アクリロキシシラン、テトラキス[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、テトラキス(2−ビニロキシエトキシ)シラン、テトラグリシジロキシシラン、テトラキス(2−ビニロキシブトキシ)シラン、テトラキス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シランを挙げることができる。また、コロイド状シリカとしては、水分散コロイド状シリカ、メタノールもしくはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒分散コロイド状シリカを挙げることができる。
【0042】
その他、ポリシロキサン系複合体形成用組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、別途、充填材を添加・分散させることも可能である。この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーンブラック、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
【0043】
なお、本発明のポリシロキサン系複合体形成用組成物には、その他、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0044】
本発明のポリシロキサン系複合体形成用組成物の調製方法としては、例えば、必要に応じて水及び溶媒を加え、有機ケイ素化合物及び光感応性化合物を混合する方法が挙げられ、具体的に、光感応性化合物を溶媒に混合し、所定量の水を加え、続いて、有機ケイ素化合物を添加して混合する方法や、有機ケイ素化合物及び光感応性化合物を混合した後に、水を加えて(部分)加水分解する方法や、有機ケイ素化合物及び光感応性化合物を別々に(部分)加水分解したものを混合する方法を挙げることができる。水や溶媒を加える必要は必ずしもないが、水を加えて(部分)加水分解物としておくことが好ましい。所定量の水の量としては、光感応性化合物の種類にもよるが、例えば、光感応性化合物が2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物の場合、金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いることが好ましく、0.5〜2モルの水を用いることがより好ましい。また、光感応性化合物が1以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属キレート化合物の場合、金属キレート化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いることが好ましく、5〜20モルの水を用いることがより好ましい。
【0045】
また、光触媒層形成用組成物としては、光触媒を含有する組成物であれば特に制限されるものではなく、さらに、水及び溶媒を含有することが好ましい。用いる溶媒としては、上記ポリシロキサン系複合体形成用組成物におけるものと同様である。また、光触媒層形成用組成物の固形分量(光触媒成分)としては、0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましい。
【0046】
本発明の薄膜が形成可能な基体としては、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック等が挙げられる。従来、薄膜のプラスチック基体への形成は困難であり、ガラス等の無機基体に限定されていたが、本発明の薄膜は、形成の難しいプラスチック基体であっても、容易に皮膜形成でき、プラスチック製光学部品に対しても適している。かかるプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリエーテルスルフォンが挙げられる。
【0047】
ポリシロキサン系複合体形成用組成物及び光触媒層形成用組成物の塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法等を挙げることができる。また、形成する膜厚としては、特に制限されるものではなく、例えば、0.05〜200μm程度である。
【0048】
ポリシロキサン系複合体形成用組成物及び光触媒層形成用組成物の熱硬化処理(乾燥処理)としては、例えば、40〜200℃で、1〜120分程度行うことが好ましく、60〜120℃で、10〜60分程度行うことがより好ましい。
【0049】
また、ポリシロキサン系複合体に対して行う350nm以下の波長の光の照射は、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ等の公知の装置を用いて行うことができ、照射する光としては、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光であればよく、150〜350nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることが好ましく、250〜310nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることがより好ましい。かかる範囲の波長に感応し、350nm、好ましくは310nmを超える光に感応しないものであれば、太陽光によりほとんど影響を受けることはない。また、照射する光の照射光量としては、例えば、1〜100J/cm程度であり、膜硬化効率(照射エネルギーと膜硬化程度の関係)を考慮すると、3〜20J/cm程度であることが好ましく、3〜10J/cm程度であることがより好ましい。なお、350nm以下の波長の光の照射とは、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光源を用いる照射、好ましくは、350nm以下のいずれかの波長の光を主成分とする光源を用いる照射、すなわち、最も成分量の多い波長が350nm以下の光源を用いる照射をいう。なお、光触媒層は、太陽光等によってその機能を発揮するので、光触媒層に対しては、350nm以下の波長の光の照射を行わなくてもよい。
【0050】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
<TiOナノ粒子液(光感応性化合物)の作製>
ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン(日本曹達株式会社製、T−50 酸化チタン換算固形分量16.5重量%)89.7gを工業用エタノール172.9gに溶解後、イオン交換水33.3g(10倍モル/TiOのモル)を攪拌しながらゆっくり滴下し加水分解した。1日後に溶液を濾過し、酸化チタン換算固形分量5.0wt%の黄色透明なTiO2ナノ粒子液(A−1)を得た。平均粒子径は4.1nmで単分散性であった。
【0052】
<ポリシロキサン系層コート液(有機ケイ素化合物+光感応性化合物)の作製>
5.0wt%のTiOナノ粒子溶液(A−1)300g、及びビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−1003)250.4gを室温で30分間攪拌して得られた溶液と、5.0wt%のTiOナノ粒子溶液(A−1)300g、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−403)399.26gを室温で30分攪拌して得られた溶液とを、所定比率で混合した溶液を調製した(B−1溶液)。ビニルトリメトキシシラン:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=7:3(モル比)に、元素比(Ti:Si)は(1:9)に、固形分量(RSiO1.5(Rは、ビニル基又は3−グリシドキシプロピル基)+TiO)は32.5wt%とした。
【0053】
<光触媒層コート液>
光触媒層コート液としては、ビストレイターNDC−137C(日本曹達株式会社製、SiOと光触媒TiO含有品、固形分量8重量%)をエタノールで固形分量1wt%になるように希釈して使用した(C−1溶液)。
【0054】
〔実施例1〕
UV/オゾン洗浄したポリカーボネート(PC)基板にコーティング液(B−1)を、バーコーター(Rod No.12)で塗布し、温風循環乾燥器中で120℃で30分間乾燥した(D−1膜)。続いて、コンベアタイプ高圧水銀灯(アイグラフィックス製、160W/cm、ランプ高10cm、照射時間5秒)を用いてUV光を照射し、シラン系ハードコート膜(E−1膜)を得た。図1に、E−1膜についてのESCAによる膜成分を表す図を示す。膜厚は、3〜4μmで、ESCAでの深さ方向の炭素の元素分析では、膜表面(正確には、表面から10nm深さ)の炭素含有量は、膜裏面(正確には、裏面から10nm深さ)の炭素含有量を100%とした時の約60%であり、炭素含有量が少ない表面層の厚さは約300nmであった。
【0055】
このE−1膜上に、コーティング液(C−1)を、バーコーター(Rod No.5)で塗布し、温風循環乾燥器中で120℃で30分間乾燥し、光触媒層+ポリシロキサン系ハードコート層の2層膜(F−1膜)を得た。光触媒層の膜厚は、0.08μmであった。このF−1膜について、JIS K 5600−5−4鉛筆法に準じて鉛筆硬度試験を行ったところ、鉛筆硬度は、Fであった。なお、同様の膜をガラス基板(ソーダライムガラス基板)上に形成した場合の鉛筆硬度は、8Hであった。
【0056】
〔実施例2〕
実施例1と同様にD−1膜を作製した。この膜上にUV照射前に、コーティング液(C−1)を、バーコーター(Rod No.5)で塗布し、温風循環乾燥器中で120℃で30分間乾燥した。その後、実施例1と同様に、コンベアタイプ高圧水銀灯(アイグラフィックス製、160W/cm、ランプ高10cm、照射時間5秒)を用いてUV光を照射し、光触媒層+ポリシロキサン系ハードコート層の2層膜(F−2膜)を得た。
【0057】
〔実施例3〕
実施例2で作製した乾燥膜を、アイスーパー超耐候性試験機(アイグラフィックス社製SUV)のUV光(紫外線強度90mW/cm)を8時間照射し、光触媒層+ポリシロキサン系ハードコート層の2層膜(F−3膜)を得た。
【0058】
<膜評価方法>
1.碁盤目テープ剥離試験
JIS K5600に準拠し、塗膜に1mm間隔の切り込みを縦横11本ずつ入れて100個の碁盤目を作成した。各試料にセロテープ(登録商標)を貼り付け、指の腹で複数回擦り付けて密着させた後テープを引き剥がし、塗膜が剥離せずに残存した格子の目数で評価した。
【0059】
2.テーバー式磨耗試験
テーバー式磨耗試験機(東洋テスター工業株式会社製、TABER’S Abration Tester)に磨耗輪(CS−10F)を装着し、荷重500gの条件下で500回転試験を行った後のヘイズ率を測定した。
【0060】
3.スチールウール試験
ラビングテスター(太平理科工業製 RUBBING TESTER)にスチールウール#0000を装着し、荷重500gの条件で30往復させた後のヘイズ率を測定した。
【0061】
4.接触角の測定
自動接触角計(協和界面科学株式会社製、Drop Master700及び滑落法キット DM−SA)を用いて、膜製造直後のイオン交換水の接触角を測定した。また、スチールウール試験後の膜に365nmのUV光をブラックライト(FL15BLB、東芝製、強度1mW/cm)を5時間照射し、その後に、イオン交換水の接触角を測定した。なお、測定値は、5測定点の平均値をとした。
【0062】
以上の結果を表1に示す。
【0063】
【表1】


【0064】
表1に示すように、表面の炭素量が裏面より少ないシラン系ハードコート膜(ポリシロキサン系層)上に形成した光触媒層は密着性が良好であり、しかも、製造直後から水の接触角10°以下の超親水性を示した。また、耐摩耗性も良好であり、さらに、スチールウール試験後でもBLBを照射すれば超親水性は回復した。また、光触媒層をコートする前にUVを照射しても、光触媒層をコート後にUV光照射をしても、同様に優れた膜を得ることができることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1に係る有機無機複合体のポリシロキサン系層(E−1膜)のESCAによる膜成分を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀

【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次

【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作

【識別番号】100123168
【弁理士】
【氏名又は名称】大▲高▼ とし子

【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也

【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真


【公開番号】 特開2008−7610(P2008−7610A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−178824(P2006−178824)