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【発明の名称】 シートモールディングコンパウンド
【発明者】 【氏名】筒井 利尚

【氏名】田川 清美

【氏名】井上 孝啓

【要約】 【課題】成形品の生産性を低下させずに、模様材を使用しない場合であってもSMC成形品の表面に柄付けすることが可能な新しいSMCを提供する。

【構成】不飽和ポリエステル樹脂と補強繊維、並びに架橋性剤と硬化剤を含有するシートモールディングコンパウンド(SMC)において、結束剤により結束された補強繊維を含有させて柄付けされているものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂と補強繊維、並びに架橋性剤と硬化剤を含有するシートモールディングコンパウンドにおいて、結束剤により結束された補強繊維を含有させて柄付けされていることを特徴とするシートモールディングコンパウンド。
【請求項2】
補強繊維は繊維径8〜20μmの範囲のガラスロービングであることを特徴とする請求項1に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項3】
補強繊維の結束本数が50〜500本の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項4】
結束剤は、酢酸ブチル系樹脂およびウレタン系樹脂のうちの1種以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項5】
補強繊維100重量部に対して結束剤1重量部以上が添加されていることを特徴とする請求項4に記載のシートモールディングコンパウンド。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、建材などに使用される成形品製造のためのシートモールディングコンパウンド(SMCという)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SMCは、熱硬化性樹脂、有機過酸化物(硬化剤)、充填剤、低収縮剤、内部離型剤、補強繊維(強化材)、架橋剤としてスチレンモノマー及び増粘するための増粘剤などを配合したものであって、所定の温度に設定した金型内に入れて加圧し、浴槽、パネル、浄化槽、キッチンのカウンタートップ等の所望の形状の成形品(製品)を製造する際に用いられている。このSMCにおいては、補強繊維(強化材)は、一般的にはガラスロービングを1インチにカットして用いている。
【0003】
また、SMCを用いた成形品の表面に模様を付ける場合は、成形後に塗装するか成形時に化粧シートなどを付ける方法、あるいはSMCそのものに模様材を含有させておく方法等が知られている。模様材としては、有機物と無機物があり、有機物としてはポリエステル樹脂やその他ABS樹脂、エポキシ、メラミン、フエノールなどの樹脂の粉砕物、これらを散布した不織布などがあり、無機物としては雲母、ガラス、石英、大理石などの砕石などがある。しかしながら、塗装の場合には塗膜密着性、その劣化の問題があり、化粧シートの場合には、シート材料が必要になり、これらいずれの場合も生産工程が増えてしまうという問題があった。
【0004】
一方、模様材をSMCに含有させる方法では、成形時に柄が形成されるという点で生産性は良好であるものの、模様材そのものが高価であり、模様材の含有によってSMC成形品の強度等の特性が低下するという懸念もあった。そこで、このような問題点を解消するために、成形品の表面に対応するSMCのみに模様材である不飽和ポリエステル樹脂の粉砕品や無機物を40%まで含有させておくことが提案されてもいる(特許文献1)。
【0005】
しかし、この提案されている方法においても、模様材含有のSMCを用意しなければならず、高価な模様材の使用が欠かせないという生産性の問題があり、成形品の強度等の特性の低下への懸念も残されていた。
【特許文献1】特開2003−10511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、成形品の生産性を低下させずに、模様材を使用しない場合であってもSMC成形品の表面に柄付けすることが可能な新しいSMCを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のSMCは、以下の特徴を有している。
【0008】
第1:不飽和ポリエステル樹脂と補強繊維、並びに架橋性剤と硬化剤を含有するSMCにおいて、結束剤により結束された補強繊維を含有させて柄付けされているSMC。
【0009】
第2:補強繊維は繊維径8〜20μmの範囲のガラスロービングであるSMC。
【0010】
第3:補強繊維の結束本数が50〜500本の範囲内であるSMC。
【0011】
第4:結束剤は、酢酸ブチル系樹脂およびウレタン系樹脂のうちの1種以上であるSMC。
【0012】
第5:補強繊維100重量部に対して結束剤1重量部以上が添加されているSMC。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、SMCの補強繊維の解繊性を落とし、結束された補強繊維の存在によってSMC表面に柄が付与され、このSMCを用いた成形の後には、従来のような表面塗装や化粧シートによる処理を必要とすることなく柄が表現されることになる。成形品の生産性を低下させずに、模様材を使用しない場合であってもSMC成形品の表面に柄付けすることが可能となる。
【0014】
第2の発明では、上記の柄模様が、補強繊維として通常に用いられているガラスロービングを使用し、その束により簡便に表現されることになる。
【0015】
第3の発明では、柄模様の出願がより確実に実現されることになる。
【0016】
さらに第3及び及び第4の発明によれば、補強繊維の結束がより的確に安定して実現され、かつSMC全体の特性に大きな支障を及ぼすこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のSMCにおける不飽和ポリエステル樹脂については、多塩基酸と多価アルコールとを原料とする生成物であって、多塩基酸の不飽和酸としては無水マレイン酸、フマル酸などを、多価アルコールであるグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリメチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチルプロパンモノアリルエーテル、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールジオキシプロピルエーテルなどをそれぞれ利用することができる。また、不飽和ポリエステル樹脂の原料として、無水フタル酸、イソフタル酸等の飽和酸も用いることができ、その他にポリエステル樹脂骨格への組み込みとしてジシクロペンタジエンも原料として添加することができる。架橋性剤としては、スチレンモノマーやジビルベンゼン、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ヒドロキシアクリル酸エチル等の各種の架橋性モノマーを使用することができる。
【0018】
以上のような不飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量は2000〜6000の範囲内であることが好ましい。2000未満の場合には粘性が乏しく作業性に問題が生じ、6000を超える場合には粘性が高すぎて成形性に不都合が生じることになる。
【0019】
不飽和ポリエステル樹脂と架橋剤との配合割合は、両者の合計量を100とした場合、不飽和ポリエステル樹脂が20〜85重量部の範囲内となるようにするのが好ましい。20重量部未満、あるいは85重量部を超える場合には、成形性、成形品の特性等において不具合が生じやすくなる。
【0020】
上記の材料の他に、硬化剤、低収縮剤、硬化遅延剤、増粘剤、充填材、着色剤、硬化促進剤、製造上の粘度の調整のために増粘剤やトナーの分散工場のために分散調整剤などを用いることができる。硬化剤としては、ケトンパーオキシド類、パーオキシカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類のうちの1種または2種以上を用いることができる。これらの硬化剤は、不飽和ポリエステル樹脂と架橋性剤との合計量において0.1〜10重量%の範囲内で配合することが好ましい。低収縮剤としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を、たとえば、不飽和ポリエステル樹脂と架橋性剤との合計量に対して10〜50重量%の範囲内で使用することができる。増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を、たとえば、上記全体量に対して0.5〜5重量%の範囲内で用いる。充填材は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、マイカ、ガラスビーズなどを、たとえば、不飽和ポリエステルと架橋性剤並びに低収縮剤との混合物100重量部に対して、100〜200重量部の範囲内で使用することができる。着色剤として、無機系顔料、有機系顔料などを使用することができる。硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、ジオチルアニリン、ジエチルアニリン、アセチルアセトン等を利用することができる。
【0021】
また補強繊維としては合成繊維及び天然繊維が用いられる。これらガラス繊維、合成繊維及び天然繊維のSMC中の含有率は1〜50質量%が好適である。1質量%未満では、その補強効果が十分でなく、得られたSMC成形品の強度が不足するためである。また、40質量を超えると、不飽和ポリエステル樹脂組成物への含浸性が低下し、成形品に繊維目、ふくれ、クラック、ピンホール等の欠陥が発生し、製品外観を損ねるとともに強度も低下してしまうためである。
【0022】
ガラス繊維、合成繊維及び天然繊維基材を構成するガラス繊維、合成繊維及び天然繊維の長さは、3〜150mmが好適でる。繊維長が3mm未満では補強効果が不十分で成形品の強度が不足し、150mmを超えると成形時の樹脂の流動性が悪く、成形品外観が損なわれ、又、リブやボスへの充填性も悪く、成形品の用途、形状が制限されるためである。また、ガラス繊維、合成繊維及び天然繊維基材を構成するガラス繊維、合成繊維及び天然繊維の繊維径は、5μm〜150μmが好適である。150μmを超えると樹脂の含痩性が悪く、成形品の強度が不足するとともに外観が損なわれ、成形品への用途、形状が制限されるためである。特に、安価な天然繊維は繊維径が一定ではなく、同一条件で撚糸した場合でも基材径が1mmを超える場合があるので、繊維径が一定なガラス繊維、合成繊維を混合或いは混紡することにより、基材の品質管理上限値である基材径1mmを超えないようにすることが好ましい。上記の補強繊維としては、本発明では繊維径が5〜50μmの範囲のガラス繊維が好適なものとして考慮される。合成繊維としては、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維が好ましいものとして例示される。
【0023】
そして本発明のSMCでは、以上のような補強繊維について、SMC表面に模様柄が形成されるように、少くともその一部が、結束剤により結束されたものとして配合される。この場合の補強繊維の結束本数は、50〜500本の範囲内とすることが好ましい。一般的に、50本未満の場合には柄形成が難しくなる。また、500本以上を超える場合には、成形性が悪くなる傾向にあり、成形品の強度等の特性に影響を及ぼしかねない。また、このような結束された補強繊維は、SMCに含有させる補強繊維のうちの少くとも40重量部とすること、特に60〜100%の範囲内とすることが好ましい。40%未満においては柄は目立たないものとなる。
【0024】
そして本発明においては、上記の結束された補強繊維としては、繊維径が8〜20μmの範囲のガラスロービングであって、100〜400本の範囲で結束されたものがより好適なものとして考慮される。繊維径、結束数がこの範囲にあるガラスロービングの場合、より確実に、かつ顕著に、柄の形成が実現されることになる。
【0025】
結束剤については、ポリエステル、ポリウレタン、アクリレート、メタクリレート等の樹脂を用いることができる。より好ましくは、酢酸ブチル樹脂、あるいはこれを基本とする共重合、あるいは変性樹脂を含めた酢酸ブチル系樹脂、ウレタン樹脂、あるいはこれを基本とする共重合樹脂、変性樹脂等のウレタン系樹脂のうちの1種または2種以上、そして混合物を用いることが考慮される。
【0026】
これらの結束剤は、補強繊維100重量部に対して1重量部以上添加されることが好ましい。1重量部未満においては、解繊を止めることが難しくなる。また添加量の上限は、結束する繊維本数に応じて定めることができる。一般的には10重量部までを目安とすることができる。
【0027】
本発明のSMCは、以上のような各構成成分を所要量で混合し、通常の方法によって所定の大きさ、厚みのSMCとすることができる。
【0028】
たとえば、SMCは、通常のSMC製造装置を用いて製造することができる。上記のような不飽和ポリエステル樹脂の組成物を、上下に配置されたキャリアフィルムに均一な厚さとなるように塗布し、巻きだし装置から巻き出された所定の大きさの繊維補強材を上記した上下に配置されたキャリアフィルムの不飽和ポリエステル樹脂組成物に挟み込み、次いで、全体を含浸ロールの間に通して、圧力を加えて繊維補強材を不飽和ポリエステル樹脂組成物に含痩させた後、ロール状に巻き取るかつづら折りに畳む。この後、必要に応じて熟成等を行う。増粘剤を配合した場合には室温〜60℃の温度に加熱して熟成することが好ましい。離型フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。
【0029】
そして、本発明のSMCは建材等の成形材料として用いることができる。この場合の成形方法は金型内に配置して加熱加圧成形して硬化させるプレス成形法などを例示することができる。成形条件としては、例えば、成形圧3〜10MPa、金型温度125〜150℃、成形時間3〜7分とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
以下、本発明を実施例によって説明する。もちろん以下の例に限定されることはない。
【実施例】
【0031】
表1に示したとおりの配合(重量部)により各成分を混合し、上記方法によりSMCを製造した。なお、40℃の温度にて熟成を行った。また、樹脂成分としての不飽和ポリエステルとしては、昭和高分子製M407、M543、M540等が、低収縮剤のポリスチレン樹脂としては昭和高分子製M5590−2、M5585等が用いられる。その他成分についても適宜とすることができる。
【0032】
補強繊維としてはガラスロービングを用いた。その際の繊維径や結束に係わる条件を表2に示した。比較例では結束を行っていない。
【0033】
得られたSMCについて表面の柄付けを目視により評価した。その結果も表2に示した。評価ランクは以下のとおりである。
【0034】
A:極めて良好
B:良好
C:不可
【0035】
【表1】


【0036】
【表2】


表2の結果のように、繊維径13〜17μmで、200〜300本の結束本数のものを結束させて配合することにより極めて良好な柄付けが実現されることが確認された。
【0037】
なお、結束剤としてエポキシ樹脂を用いた場合には柄形成に一部にムラが生じやすいことも確認された。
【0038】
また、実施例のSMCを用いて建材パネルを成形したところ、いずれも表面の柄の出現が確認された。
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫


【公開番号】 特開2008−7571(P2008−7571A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177308(P2006−177308)