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【発明の名称】 生分解性樹脂複合体およびその製造方法
【発明者】 【氏名】金澤 進一

【要約】 【課題】生分解性樹脂のガラス転移温度または軟化温度以上において形状と強度を維持することができ、かつ、生分解性樹脂のガラス転移温度以下において硬く脆くなることはなく、用途に応じて柔軟性や伸びも備えた生分解性樹脂複合体およびその製造方法を提供する。また、生分解性樹脂に他のポリマーの特性を組み込んだ生分解性樹脂複合体を提供する。

【構成】生分解性樹脂に架橋性モノマーが配合された混練物より成形体を成形し、前記成形体の前記生分解性樹脂を架橋して生分解性樹脂架橋物とし、前記生分解樹脂架橋物を加熱した可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材に浸漬して、該生分解性樹脂架橋物内に含浸材を含浸させ、前記生分解性樹脂架橋物が膨潤した状態で冷却し、前記生分解性樹脂を前記含浸材と複合化している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂に架橋性モノマーが配合された混練物より成形体を成形し、
前記成形体の前記生分解性樹脂を架橋して生分解性樹脂架橋物とし、
前記生分解樹脂架橋物を加熱した可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材に浸漬して、該生分解性樹脂架橋物内に含浸材を含浸させ、
前記生分解性樹脂架橋物が膨潤した状態で冷却し、
前記生分解性樹脂を前記含浸材と複合化することを特徴とする生分解性樹脂複合体の製造方法。
【請求項2】
前記生分解性樹脂が、多糖類系、脂肪族ポリエステル系、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上の生分解性樹脂である請求項1に記載の生分解性樹脂複合体の製造方法。
【請求項3】
前記生分解性樹脂の架橋を電離性放射線の照射により行っている請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により製造された生分解性樹脂複合体。
【請求項5】
多糖類系、脂肪族ポリエステル系、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上の生分解性樹脂の架橋物に、可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材を含浸して複合化させていることを特徴とする生分解性樹脂複合体。
【請求項6】
前記多糖類系の生分解性樹脂は、セルロース、デンプン、キチン、キトサン、アルギン酸などの天然多糖類およびそれらをアセチル化、あるいはエステル化等した誘導体、
前記脂肪族ポリエステル系の生分解性樹脂は、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート、あるいはポリエチレンサクシネートアジペート、
前記脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーの生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である請求項4または請求項5に記載の生分解性樹脂複合体。
【請求項7】
前記可塑剤として、下記の(a)〜(c)の少なくとも1種類を含有している請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂複合体。
(a)脂肪族ポリエステル誘導体またはロジン誘導体を含む可塑剤
(b)ジカルボン酸誘導体を含む可塑剤
(c)グリセリン誘導体を含む可塑剤
【請求項8】
前記重合性モノマーとして、下記の(d)〜(h)の少なくとも1種類を含有している請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂複合体。
(d)アクリル系モノマーあるいは/及びアクリル基を有する低分子量ポリマー
(e)メタクリル系モノマーあるいは/及びメタクリル基を有する低分子量ポリマー
(f)スチレン系モノマー
(g)アリル系モノマーあるいは/及びアリル基を有する低分子量ポリマー
(h)ビニル系モノマーあるいは/及びビニル基を有する低分子量ポリマー
【請求項9】
前記生分解性樹脂複合体中の含浸材の含有率が5質量%以上70質量%以下である請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の生分解性樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有する生分解性樹脂複合体およびその製造方法に関し、詳しくは、フィルム、容器または筐体などの構造体や部品などのプラスチック製品が利用される分野において利用されるものであり、特に、用途に応じて所要の硬さとしているものである。
【背景技術】
【0002】
現在、多くのフィルムや容器に利用されている石油合成高分子材料は、加熱廃棄処理に伴う熱および排気ガスによる地球温暖化、さらに燃焼ガスおよび燃焼後の残留物中の毒性物質による食物や健康への悪影響、廃棄埋設処理地の確保など、その廃棄処理過程についてだけでも様々な社会問題が懸念されている。
このような石油合成高分子材料の廃棄処理の問題点を解決する材料として、デンプンや脂肪族ポリエステルに代表される生分解性高分子材料が注目されてきている。生分解性高分子材料は、石油合成高分子材料に比べて、燃焼に伴う熱量が少なく、かつ自然環境での分解・再合成のサイクルが保たれる等、生態系を含む地球環境に悪影響を与えない。生分解性高分子材料のなかでも、脂肪族ポリエステル系樹脂は強度や加工性の点で石油合成高分子材料に匹敵する特性を有し、近年特に注目を浴びている素材である。脂肪族ポリエステル系樹脂のなかでも、特にポリ乳酸は植物から供給されるデンプンから作られ、近年の大量生産によるコストダウンで他の生分解性高分子材料に比べて非常に安価になりつつある点から、現在その応用について多くの検討がなされている。
【0003】
しかし、デンプン、セルロースおよびそれらの誘導体、ポリ乳酸のような生分解性樹脂は非常に硬く、実質的に伸びが殆どなく、変形や衝撃に対する吸収性に乏しいという欠点を有する。他方、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性樹脂は、柔軟ではあるが破壊強度が弱いという欠点を有する。このように、生分解性樹脂は柔軟性と強度を兼ね備えておらず、そのままでは使用しにくいものが多い。
【0004】
そこで、これら生分解性樹脂を改良するために、従来からプラスチック樹脂で行われてきた技術である樹脂同士の混合や可塑剤などの改質剤を複合化する試みが盛んに行われている。例えば、ガラス転移温度の60℃以下における硬さや脆さを改善し耐衝撃性を汎用のプラスチック並みに向上させるため、生分解性樹脂(ポリ乳酸)に特定の可塑剤を混練することが下記の非特許文献1に記載されている。
また、ガラス転移温度以上になると柔軟になりすぎて強度が低下してしまうという問題を解決するために、電離性放射線や化学開始剤を利用してポリ乳酸を架橋させることが特許第3759067号公報(特許文献1)に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3759067号公報
【非特許文献1】荒川化学工業(株)発行、「荒川NEWS」、2004年7月発行、No.326号 第2頁〜第7頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これら技術を各々単独で用いても、生分解性樹脂のガラス転移温度以下における柔軟性・伸びの保持とガラス転移温度以上における形状・強度の維持(すなわち耐熱性)の両方を同時に解決することはできない。即ち、非特許文献1のように、単に生分解性樹脂に可塑剤を混合するだけでは、ガラス転移温度を下げて生分解性樹脂分子間の結合力を弱めるだけであり、変形しやすくして割れにくくはなるが、変形や衝撃に対する復元力は付与できず、そのうえ、ガラス状のものが粘土のようになり、強度も保持できない。また、ガラス転移温度以上における形状や強度の維持性を改善させるため、特許文献1のように生分解性樹脂を架橋することは有効であるが、このようにして得られる橋かけ生分解性材料は硬くて脆く、柔軟性や伸びを有するようなものではない。
【0007】
また、これらの技術はそれぞれ単独では実施可能なものであるが、両立させようとすると、複合化させた材料による架橋阻害が起こるため架橋できない等の問題が起こる。例えば、これらの技術を単に組み合わせて、生分解性樹脂に可塑剤を混練した組成物を電離性放射線の照射などにより架橋させても、架橋は完全には進行しない。このように架橋を妨げる原因としては、可塑剤が電離性放射線によるラジカルを消失させること以外に、可塑剤を先に混練すると可塑剤が生分解性樹脂の分子間に進入して生分解性樹脂分子同士の結合を阻止することなどが考えられる。生分解性樹脂が架橋するためには生分解性樹脂の分子同士が相互に接触して結合する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、生分解性樹脂のガラス転移温度または軟化温度以上において形状と強度を維持することができ、かつ、生分解性樹脂のガラス転移温度以下において硬く脆くなることはなく、用途に応じて柔軟性や伸びも備えた生分解性樹脂複合体およびその製造方法を提供することを課題としている。
【0009】
また、生分解性樹脂と他のポリマーを、コポリマーに準ずるレベルの極めて均一な混合状態の複合体とする生分解性樹脂複合体およびその製造方法を提供し、生分解性樹脂に他のポリマーの特性を組み込むことで、用途に応じた柔軟性や硬度を備えた多様な生分解性樹脂複合体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、
生分解性樹脂に架橋性モノマーが配合された混練物より成形体を成形し、
前記成形体の前記生分解性樹脂を架橋して生分解性樹脂架橋物とし、
前記生分解樹脂架橋物を加熱した可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材に浸漬して、該生分解性樹脂架橋物内に含浸材を含浸させ、
前記生分解性樹脂架橋物が膨潤した状態で冷却し、
前記生分解性樹脂を前記含浸材と複合化することを特徴とする生分解性樹脂複合体の製造方法を提供している。
【0011】
本発明の生分解性樹脂複合体の製造方法では、前記のように、まず、生分解性樹脂に架橋性モノマーが配合された混練物より生分解性樹脂成形体を成形し、該生分解性樹脂成形物を架橋して耐熱性を付与する。次いで、この耐熱性が付与された生分解性樹脂架橋物を、加熱した液状の可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材に浸漬する。
加熱した含浸材を用いると、生分解性樹脂の分子が運動して、分子間を広げることができるので、生分解性樹脂架橋物の分子間に含浸材を容易に浸入させることができる。さらに、含浸材は加熱されると粘度が下がり、含浸材の分子運動性を上げることができるため、架橋されたネットワーク間に含浸材が侵入しやすくなる。
【0012】
他方、常温で液体である可塑剤や重合性モノマーは、加熱により気化あるいは蒸散しやすいものが多いため、このような可塑剤あるいは重合性モノマーは気化温度よりも低い温度とする必要がある。例えば、架橋性モノマーなどの一部の含浸材は80〜150℃付近に沸点を有し、これ以上の温度とすると気化しやすくなるため、含浸材の温度を上げることが困難となる。そのため、気化しやすい含浸材を用いる場合では、その温度の上限を80℃とするのが好ましい。気化しにくい含浸材でも上限は120〜140℃とするのが好ましい。さらに、含浸材は化学的に安定な状態で、かつ液体状であることが必要であるため、含浸材の温度の上限は前記生分解性樹脂の融点以下または分解温度以下としている。
【0013】
本発明者の検討によれば、多くの生分解性樹脂の軟化温度やガラス転移温度は60℃付近であり、この温度付近で柔軟になるので、含浸材の温度の下限は60℃とするのが好ましい。含浸材の温度を60℃以上とすれば非常に効率よく複合化が可能となる。さらに分子量が大きな生分解性樹脂架橋物の場合には含浸材の温度を80℃以上、さらには100℃以上とするのが好ましい。
このように、含浸材の最適温度は生分解性樹脂の種類、含浸材の種類、生分解性樹脂と含浸材の組み合わせにより異なるが、例えば、ガラス転移温度が一般的に60℃以下である脂肪族ポリエステル類は、含浸材の温度をガラス転移温度以上とするのが適している。ガラス転移温度や軟化温度が一般に高い多糖類でも80〜100℃に加熱すれば含浸材により膨潤させることが可能である。
【0014】
また、前記非特許文献1では可塑剤を混合した後に生分解性樹脂の架橋を行っているが、本発明では、可塑剤または重合性モノマーを含む含浸材に浸漬する前に、生分解性樹脂の架橋を行なうため、本発明により得られた生分解性樹脂複合体は生分解性樹脂分子間の架橋がほぼ完全な形で維持されている。その結果、可塑剤あるいは重合性モノマーを混合した後に生分解性樹脂を架橋する場合に発生する強度の低下が生じるようなことはなく、形状保持性を高めることができる。
【0015】
また、本発明では、生分解性樹脂架橋物を前記含浸材に含浸させ、含浸させる可塑剤または重合性モノマーによって生分解性樹脂架橋物の硬さを調整し、例えば、比較的硬い多糖類系の生分解性樹脂では可塑剤を含浸させることにより硬さを低下させて柔軟性を付与したり、また、比較的柔軟性を有するポリブチレンアジペートテレフタレートでは重合性モノマーを含浸させて所要の硬さとしている。このように、生分解性樹脂の硬さを調整できる含浸材に含浸させて、含浸材を含んで膨潤した生分解性樹脂架橋物を冷却し、その状態で形状を固定しているため、用途に応じた硬さに調整した生分解性樹脂複合体を得ることができる。
【0016】
前記含浸材として可塑剤を用いた場合、含浸材が生分解性樹脂の分子間の相互作用を阻止し、得られた生分解性樹脂複合体はガラス転移温度や軟化温度以下の温度でも非常に優れた柔軟性と伸びを有し、優れた耐衝撃性を示すようになる。
これは、一般的に、熱収縮材が架橋構造により形状記憶性を持つことと同じ効果が起こっていると考えられる。即ち、熱収縮材は伸張された状態で形状を固定して製造され、使用時に加熱されることにより初めて柔軟になり形状復帰能力を発揮することができるが、本発明の生分解性樹脂複合体の場合は、可塑剤からなる含浸材を含有させることによって、常温に戻すと可塑剤により柔軟性を有する形状復帰が起きると認められる。
【0017】
また、含浸材として重合性モノマーを用い、生分解性樹脂架橋物の架橋ネットワークの中で重合性モノマーを固定する目的で、生分解性樹脂架橋物に重合性モノマーをグラフト重合、あるいは重合性モノマーを生分解性樹脂に複合化して内部でポリマー化し、生分解性樹脂と該ポリマーをポリマーアロイとすることが可能である。ポリマーアロイ化することによって、生分解性樹脂と重合性モノマーが重合して生成するポリマーの両者の特性を合わせた硬さ等の性質のものを作製することができる。
【0018】
さらに、本発明の生分解性樹脂複合体の製造方法は、生分解性樹脂中に含浸材が非常に均一で微細に分散した状態を形成できる点でも優れている。生分解性樹脂と含浸材を複合化させる場合、従来の方法では両者を物理的に練り合わせて加熱混合して分散させていたため、相容化剤を使用せずにポリマーアロイ化、ナノコンポジット化といった微細分散を達成することはできなかった。それに対し、本発明の生分解性樹脂複合体の製造方法では、生分解性樹脂架橋物を形成する際に微細な架橋ネットワーク構造を形成しておけば、相容化剤等の薬剤を使用しなくても、含浸材の微分散状態を容易に形成することができる。このような生分解性樹脂架橋物の微細なネットワーク構造は、架橋性モノマーの量や放射線の照射量などの条件をコントロールして形成すればよい。このように、本発明の製造方法では、生分解性樹脂と含浸材を単に混合や配合によって複合化した場合に付き物である材料の混合ムラや、混合しきれなかった大きな塊やダマなどが残存する心配もない。
【0019】
前記工程を図1(a)〜(g)を用いてより詳細に説明する。
まず、図1(a)は生分解性樹脂成形物を架橋して得られる生分解性樹脂架橋物1を示す。生分解性樹脂架橋物1を微視的に見ると、図1(e)に示したように生分解性樹脂の分子は架橋11により相互に拘束されている。この状態では、ガラス転移温度以上の温度になっても変形しにくいという長所を有するが、ガラス転移温度以下の温度では生分解性樹脂の分子同士の相互作用(図1(e)中の矢印)が働くため、硬くて脆く、耐久性に欠けるという欠点を有する。
【0020】
本発明では、図1(b)に示したように、生分解性樹脂架橋物1を加熱した可塑剤または重合性モノマーからなる液体状の含浸材2に浸漬する。含浸材を加熱することで含浸材の浸透性が高まり、液体状の含浸材2が生分解性樹脂架橋物1内に含浸される。
ついで、生分解性樹脂架橋物1を含浸材2で膨潤された状態のまま冷却すると、図1(c)に示したように本発明の生分解性樹脂複合体3が得られる。
【0021】
含浸材を可塑剤とした場合、生分解性樹脂複合体3は、図1(f)に示したように生分解性樹脂の架橋11のネットワーク中に含浸材(可塑剤)2が含浸されている。含浸材2が生分解性樹脂の分子間の相互作用を阻止するため、常温においてもガラス転移温度あるいは軟化温度以上のときの柔軟な状態が維持される。そのうえ、本発明の生分解性樹脂複合体3においては生分解性樹脂分子間の架橋11がほぼ完全な形で形成されている。その結果、ガラス転移温度あるいは軟化温度以上の温度になっても生分解性樹脂分子同士の拘束が解かれることはなく、形状を保つことができる。
【0022】
生分解性樹脂複合体3では含浸材は生分解性樹脂の分子間に含浸されているだけで、固定化はされていない状態である。本発明では重合性モノマーを含む含浸材を用い、含浸材の含浸後、図1(d)に示すように、含浸材2を含浸させたのち含浸材2を重合させて生分解性樹脂複合体4を形成し、生分解性樹脂に含浸材を固定化することもできる。含浸材2は重合41で互いに結合した重合ネットワークを形成する。
【0023】
本発明の生分解性樹脂複合体の製造方法においては、前述したように、まず生分解性樹脂成形物をほぼ完全に架橋して生分解性樹脂架橋物を作製することが重要である。
架橋されていない生分解性樹脂成形物4を用いて、本発明の方法で可塑剤からなる含浸材に浸漬した場合に起こる現象を図2および図3に示す。
図2(b)に示すように、架橋されていない生分解性樹脂成形物4を含浸材2に浸漬すると、生分解性樹脂分子同士を拘束する架橋が存在しないため、含浸材2の浸入により図2(c)に示すように生分解性樹脂が溶解して、形状の変形または崩壊が起こる。
また、図3(b)に示すように、架橋されていない生分解性樹脂成形物4をガラス転移温度以上の状態に置くと非結晶部分が徐々に結晶化し(図3(b)中の符号5)、含浸材が浸入する前に硬く固まり、図3(c)に示すような結晶化した生分解性樹脂成形体6となる場合もある。
本発明においては、含浸材2を含浸させるのは生分解性樹脂架橋物1であり、架橋11により生分解性樹脂分子が拘束されて一体化しているので、非結晶部分が徐々に結晶化し始めて再結晶するということが見られない。
【0024】
図2および図3に示した現象が起こらないようにするため、本発明の生分解性樹脂複合体においては生分解性樹脂成分が実質的に100%架橋されていることが好ましい。そのために、可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材に浸漬する前の生分解性樹脂架橋物は、ゲル分率が95質量%以上、好ましくは98質量%以上、より好ましくは実質的に100質量%で、完全に架橋させていることが好ましい。
なお、ゲル分率が実質的に100質量%を越えた範囲でも、架橋点の量、すなわち架橋密度が重要で、架橋密度を上げていくことで含浸材の含有量を制御することが可能である。これは、架橋ネットワーク構造が緻密になることで構造変化・体積変化しにくくなることを利用しており、生分解性樹脂架橋物を形成する際の架橋性モノマーの量、架橋させる電離性放射線の量などを増減させることで架橋密度を増減させて、含浸材の含浸量を制御することが可能である。
【0025】
本発明で用いる生分解性樹脂としては、架橋構造を導入できる生分解性樹脂であればよいが、特に多糖類系、脂肪族ポリエステル系、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上の生分解性樹脂であることが好ましい。
具体的には、例えば、セルロース、デンプン、キチン、キトサン、アルギン酸などの天然多糖類およびそれらをアセチル化、エステル化等した誘導体を含む多糖類系の生分解性樹脂、
ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート、あるいはポリエチレンサクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系の生分解性樹脂、
あるいは、これらにテレフレタル酸など芳香族を導入したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などに代表される脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーの生分解性樹脂、
等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
前記架橋性モノマーとしては、電離性放射線の照射などにより架橋できるモノマーであれば特に制限を受けないが、例えばアクリル系もしくはメタクリル系の架橋性モノマーまたはアリル系架橋性モノマーが挙げられる。
前記アクリル系もしくはメタクリル系の架橋性モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0027】
前記アリル系架橋性モノマーとしては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアクリルクロレンテート、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ビチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルジメチツアンモニウムクロリド、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセバセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメチルアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0028】
本発明で用いる架橋性モノマーとしては、比較的低濃度で高い架橋度を得ることができることからアリル系架橋性モノマーを用いることが好ましい。なかでもトリアリルイソシアヌレートは生分解性樹脂に対する架橋効果が高いために特に好ましい。また、トリアリルイソシアヌレートと加熱によって相互に構造変換しうるトリアリルシアヌレートを用いても、実質的に効果は同じである。
【0029】
前記架橋性モノマーは、生分解性樹脂の種類にもよるが、生分解性樹脂100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下の割合で配合されていることが好ましい。さらに好ましい架橋性モノマーの配合量は3質量部以上8質量部以下である。これは、架橋性モノマーの配合量が3質量部未満であると、架橋性モノマーによる生分解性樹脂の架橋効果が十分に発揮されず、ガラス転移温度あるいは軟化温度以上の高温時において複合体の強度が低下し、最悪の場合形状を維持できなくなる可能性があるからである。一方、架橋性モノマーの配合量を8質量部以下としているのは、架橋性モノマーの配合量が8質量部を超えると、生分解性樹脂に架橋性ポリマー全量を均一に混合するのが困難になり、実質的に架橋効果に顕著な差が出なくなるという理由からである。
架橋性モノマーの配合量は、ガラス転移温度あるいは軟化温度以上の高温時における形状維持効果を確実にするために5質量部以上であることがより好ましく、生分解性樹脂の含有量を多くして生分解性を高めるために10質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明で用いる生分解性樹脂成形物を構成する混練物には、前記生分解性樹脂および架橋性モノマー以外に、本発明の目的に反しない限り、他の成分を配合しても良い。
例えば、前記生分解性樹脂以外の生分解性樹脂を配合しても良い。前記生分解性樹脂以外の生分解性樹脂としては、ポリビニルアルコール等の合成生分解性樹脂を挙げることができる。
また、生分解性を有する合成高分子および/または天然高分子の粉末等を、溶解特性を損なわない範囲で混合してもよい。生分解性を有する合成高分子としては、例えば、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸もしくはポリロイシン等のポリペプチド等が挙げられる。天然高分子としては、例えば澱粉として、トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉もしくはコメ澱粉などの生澱粉、または酢酸エステル化澱粉、メチルエーテル化澱粉もしくはアミロース等の加工澱粉が挙げられる。
【0031】
さらに、前記混練物には、生分解性樹脂以外の樹脂成分、硬化性オリゴマー、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤もしくは粘性付与剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉末、タルク、マイカもしくはシリカ等の無機・有機充填材、染料もしくは顔料などの着色剤等を配合することもできる。
【0032】
前述した生分解性樹脂、架橋性モノマーおよび所望により他の成分を含む混練物を所望の形状に成形する。成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いて良い。例えば、押出成形機、圧縮成形機、真空成形機、ブロー成形機、Tダイ型成形機、射出成形機、インフレーション成形機等の公知成形機が用いられる。
【0033】
次に、得られた生分解性樹脂成形物を架橋して生分解性樹脂架橋物を形成する。架橋構造を形成させる方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、前記した電離性放射線を照射する方法、化学開始剤を使用する方法が挙げられる。本発明においては電離性放射線を照射する方法を用いることが好ましい。
電離性放射線としてはγ線、エックス線、β線またはα線などが使用できるが、工業的生産にはコバルト−60によるγ線照射や、電子線加速器による電子線照射が好ましい。
電離性放射線の照射は空気を除いた不活性雰囲気下や真空下で行うのが好ましい。電離性放射線の照射によって生成した活性種は空気中の酸素と結合して失活すると架橋効果が低下するためである。
【0034】
電離性放射線の照射量は50kGy以上200kGy以下であることが好ましい。
架橋性モノマー量によっては電離性放射線の照射量が1kGy以上10kGy以下であっても生分解性樹脂の架橋は認められるが、ほぼ100%の生分解性樹脂分子を架橋するには電離性放射線の照射量が50kGy以上であることが好ましい。さらに、後の工程で液体状の含浸材に浸漬したときに形状の変化を抑えて均一に膨潤させるためには、電離性放射線の照射量が80kGy以上であることが好ましい。
一方、電離性放射線の照射量が200kGy以下であるのは、生分解性樹脂が樹脂単独では放射線で崩壊する性質を有するため、電離性放射線の照射量が200kGyを超えると架橋とは逆に分解を進行させることになるからである。電離性放射線の照射量の上限値は150kGyであることが好ましく、100kGyであることがより好ましい。
【0035】
前記電離性放射線を照射して架橋する方法に代えて、生分解性樹脂に架橋性モノマーと化学開始剤を混合したのち所望の形状に成形し、化学開始剤が熱分解する温度まであげることによって、生分解性樹脂架橋物を調製してもよい。
架橋性モノマーとしては、前記態様と同じ物質を用いることができる。
化学開始剤としては、熱分解により過酸化ラジカルを生成する過酸化ジクミル、過酸化プロピオニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジアシル、過酸化ペラルゴニル、過酸化ミリストイル、過安息香酸−t−ブチルもしくは2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの過酸化物触媒をはじめとするモノマーの重合を開始する触媒であればいずれでもよい。
架橋させるための温度条件は化学開始剤の種類により適宜選択することができる。架橋は、放射線照射の場合と同様、空気を除いた不活性雰囲気下や真空下で行うのが好ましい。
【0036】
前述した方法により得られた生分解性樹脂架橋物を、前記したような温度に加熱した液体状の可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材に浸漬する。
前記可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材としては、常温で液体状のもの、または常温では固体であっても加熱して融解し液体となるものであれば、特に限定なく使用することができる。
本発明においては含浸材を生分解性樹脂に含浸させる前に生分解性樹脂を放射線などで架橋するため、含浸材の選択の際には放射線などの架橋手段に対する耐性や架橋阻害について考慮する必要がない。含浸材は生分解性樹脂との相性のみで任意に選択可能であり、また含浸材に無関係に生分解性樹脂の架橋状態を制御することができる。
【0037】
前記含浸材として用いる可塑剤は、生分解性樹脂内に含浸させる必要から生分解性樹脂との親和性が高いものが好ましい。ゆえに、含浸材としては、弱くとも極性を有し、且つ分子量が大きくないものが好ましく、生分解性樹脂またはその誘導体が最も適している。
具体的には、前記可塑剤は以下の(a)〜(c)の少なくとも1種を含有するものが好適に用いられる。
(a)脂肪酸ポリエステル誘導体またはロジン誘導体を含む可塑剤
(b)ジカルボン酸誘導体を含む可塑剤
(c)グリセリン誘導体を含む可塑剤
なかでも、本発明の生分解性樹脂複合体の生分解性をより高く保つために生分解性を有することが好ましく、具体的には生分解性樹脂をはじめとする脂肪酸ポリエステルの低分子量物もしくはその誘導体、ジカルボン酸およびグリセリン誘導体、ラクトン類などの生分解性の認められている可塑剤が好適である。
【0038】
前記脂肪族ポリエステル誘導体としては、主成分として脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸もしくはその誘導体との重縮合体および共重縮合体、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸もしくはその誘導体およびヒドロキシカルボン酸との共重縮合体等が挙げられ、より具体的には、例えばα−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸など)、ヒドロキシトリカルボン酸類(例えば、クエン酸など)などの一種以上から合成された重合体、共重合体あるいはこれらの混合物などが挙げられる。なかでも、脂肪酸ポリエステルとしては生分解性樹脂を用いることが好ましい。
前記脂肪族ポリエステルの分子量は、生分解性樹脂複合体を構成する生分解性樹脂の分子量よりも小さいことが好ましい。具体的には1×10以下、より好ましくは1×10以下、更に好ましくは1×10〜1×10である。
前記脂肪族ポリエステルの誘導体としては、脂肪族ポリエステルを化学修飾した公知の化合物を用いることができる。なかでも、生分解性樹脂誘導体を含む可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−4001(商品名)」を用いることが好ましい。
【0039】
前記ロジン誘導体としては、ガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジン等の原料ロジン類、該原料ロジンを不均化または水素化処理した安定化ロジンや重合ロジン、その他ロジンエステル類、強化ロジンエステル類、ロジンフェノール類、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
なかでも、本発明においては、ロジン誘導体を含む可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−2001(商品名)」を用いることが特に好ましい。
【0040】
前記ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸のエステル体、ジカルボン酸の金属塩またはジカルボン酸の無水物等が挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、炭素数2〜50、特に炭素数2〜20の直鎖または分岐状の飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、及び数平均分子量2000以下、特に1000以下のポリエーテルジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸もしくはデカンジカルボン酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、及びフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0041】
前記ジカルボン酸誘導体としてはジカルボン酸のエステル体が好ましい。ジカルボン酸のエステル体としては、例えばビス(メチルジグリコール)アジペート、ビス(エチルジグリコール)アジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、メチルジグリコールエチルジグリコールアジペート、エチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ジベンジルアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルエチルジグリコールアジペート、
ベンジルブチルジグリコールアジペート、ビス(メチルジグリコール)サクシネート、ビス(エチルジグリコール)サクシネート、ビス(ブチルジグリコール)サクシネート、メチルジグリコールエチルジグリコールサクシネート、メチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、エチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、ジベンジルサクシネート、ベンジルメチルジグリコールサクシネート、ベンジルエチルジグリコールサクシネート、ベンジルブチルジグリコールサクシネート、エチルメチルジグリコールアジペート、エチルブチルジグリコールアジペート、ブチルメチルジグリコールアジペート、ブチルブチルジグリコールアジペート、エチルメチルジグリコールサクシネート、エチルエチルジグリコールサクシネート、エチルブチルジグリコールサクシネート、ブチルメチルジグリコールサクシネート、ブチルエチルジグリコールサクシネート、ブチルブチルジグリコールサクシネート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチレングリコレート等が挙げられる。
【0042】
前記ジカルボン酸誘導体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸またはフタル酸などのジカルボン酸の、アセチル化体に代表されるエステル化体が好ましい。なかでも本発明においてはアジピン酸エステルである大八化学工業(株)製「DAIFFATY−101(商品名)」を用いることが特に好ましい。
【0043】
前記グリセリン誘導体としては、グリセリンをエステル化した誘導体が挙げられる。より具体的には、グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステルまたはグリセリン脂肪酸トリエステルが挙げられる。
前記エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数2〜22の飽和または不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸(ブタン酸)、イソ酪酸、吉草酸(ペンタン酸)、イソ吉草酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、イソカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルシン酸、12−ヒドロキシオレイン酸などが挙げられる。グリセリン脂肪酸ジエステルまたはグリセリン脂肪酸トリエステルを構成する2種または3種の脂肪酸は同一であっても異なっていても良い。
【0044】
なかでも本発明においてはトリアセチルグリセリド(通称トリアセチン)、アセチル化モノグリセライドである理研ビタミン(株)製「リケマールPL(シリーズ)」などのアセチル化されたグリセリンがグリセリン誘導体として好適である。
【0045】
その他、前記可塑剤として、薬剤、農薬、薬品や食品などの有用物質を用いてもよい。このような有用物質を含浸材として用い、本発明の生分解性樹脂複合体における生分解性樹脂の架橋ネットワークに有用物質を担持させることにより、生分解性樹脂が生分解されるにつれて有用物質が除放されるという徐放システムを構築することができる。
【0046】
さらに、含浸材として前記重合性モノマーを用いる場合、下記の(d)〜(h)の少なくとも1種類を含有することが好ましい。
(d)アクリル系モノマーあるいは/及びアクリル基を有する低分子量ポリマー
(e)メタクリル系モノマーあるいは/及びメタクリル基を有する低分子量ポリマー
(f)スチレン系モノマー
(g)アリル系モノマーあるいは/及びアリル基を有する低分子量ポリマー
(h)ビニル系モノマーあるいは/及びビニル基を有する低分子量ポリマー
【0047】
前記アクリル系もしくはメタクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸グリシジル(グリシジルメタクリレート)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ―ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
前記アクリル基を有する低分子ポリマーもしくはメタクリル基を有する低分子量ポリマーとしては、前記アクリル系もしくはメタクリル系モノマーの1種類あるいは2種類以上を重合させて得られる分子量が100〜1000程度の低分子量ポリマーが挙げられる。
【0048】
前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、p−メチルトルエンなどの主としてそのパラ位に官能基を備えたもの、スチレンスルフォン酸塩、クロロスチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。
【0049】
前記アリル系モノマーとしては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアクリルクロレンテート、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ビチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルジメチツアンモニウムクロリド、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセバセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメチルアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
前記アリル基を有する低分子量ポリマーとしては、前記アリル系モノマーの1種類あるいは2種類以上を重合させて得られる分子量が100〜1000程度の低分子量ポリマーが挙げられる。
【0050】
前記ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、ビバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
前記ビニル基を有する低分子量ポリマーとしては、前記ビニル系モノマーの1種類あるいは2種類以上を重合させて得られる分子量が100〜1000程度の低分子量ポリマーが挙げられる。
【0051】
生分解性樹脂架橋物を浸漬する際の含浸材の温度は、前記したように含浸材が気化する温度以下で液体状態を保つことができる温度であれば、含浸材の種類等に応じて適宜選択することができる。
含浸材を生分解性樹脂架橋物の架橋構造の中に速く拡散させるためには高温とするのが好ましいが、一般的には65〜120℃、さらに80〜120℃の範囲が好適である。
また、浸漬時間も特に限定されないが、一般に拡散現象は厚みの二乗に比例するため、厚みに応じ、5分〜20時間の範囲とするのが好ましい。1mm以内の厚みの物は、浸漬時間を5〜120分、さらに30〜90分と短くすることもできる。一方、厚みが数mm以上の場合は10〜20時間と長くするのが好ましい。
【0052】
生分解性樹脂架橋内物内に含浸材が含浸され、生分解性樹脂架橋物が膨潤した状態で生分解性樹脂の室温付近まで冷却することにより、生分解性樹脂と含浸材が複合化された本発明の生分解性樹脂複合体が得られる。
このように製造された本発明の生分解性樹脂複合体は、生分解性樹脂の架橋ネットワーク中に含浸材が含浸されている。
【0053】
このようにして得られた本発明の生分解性樹脂複合体は、該生分解性樹脂複合体中の含浸材の含有率が5質量%以上70質量%以下であることが好ましい。生分解性樹脂複合体のガラス転移温度以下での柔軟性を確保するために、含浸材として可塑剤を用いる場合、該含浸材の含有率の下限は5質量%が好ましいとしている。より柔軟性向上効果を発揮させるためには含浸材の含有率を10質量%以上とするのが好ましく、特に20質量%以上とするのが好ましい。
含浸材の含有率の上限を70質量%としているのは、含浸材の含有率が70質量%を超えると含浸材の析出、いわゆるブリードが起こるおそれがあるためである。含浸材の含有率は65質量%以下とするのがさらに好ましい。
含浸材の含有率は実施例に記載の方法で測定している。
【0054】
また、含浸材として前記重合性モノマーを含む場合で、該含浸材を重合させる場合には、最初の生分解性樹脂の架橋と同様、電離性放射線を用いて重合を行うことが好ましい。その場合、使用する電離性放射線は、最初の生分解性樹脂の架橋と同じであり、γ線、エックス線、β線或いはα線などが使用できる。工業的生産にはコバルト−60によるγ線照射や電子線加速器による電子線が好ましい。照射量は含浸させた重合性モノマーの量にも多少依存するが、最初の架橋ほどの量は必要なく、数kGyから数10kGyでも効果がある。
【0055】
本発明は、前記した製造方法により製造された生分解性樹脂複合体を提供している。
また、多糖類系、脂肪族ポリエステル系、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上の生分解性樹脂の架橋物に、可塑剤あるいは重合性モノマーを含む含浸材を含浸することにより複合化させて得られる生分解性樹脂複合体を提供している。前記生分解性樹脂複合体は配合する可塑剤あるいは重合性モノマーにより前記生分解性樹脂の架橋物を所要の硬さとされていることを特徴とするものであり、該特徴を備えた生分解性樹脂複合体であれば、前記製造方法により製造されたものに限定されない。
【0056】
さらに、本発明により得られる生分解性樹脂複合体は、前述した可塑剤および架橋性モノマーの他、メタノールやDMSO(ジメチルスルオキシド)等の極性溶媒を使用して架橋ネットワーク構造の中に含有させることにより、ゲル濾過や液体クロマトグラフィなどの分子篩いに応用することができる。これは、前記極性溶媒により本発明の生分解性樹脂複合体がゲル状構造を呈することができるためであり、前述した方法で架橋構造を制御することで分離分析技術の分野へ幅広く利用することが可能である。
【発明の効果】
【0057】
本発明の製造方法により製造された生分解性樹脂複合体は、生分解性樹脂の架橋ネットワークにより生分解性樹脂のガラス転移温度または軟化温度を超える高温時においても確実に形状と強度を維持することができる。さらに、生分解性樹脂のガラス転移温度以下においても、生分解性樹脂の架橋ネットワーク中に含浸材が含浸され、生分解性樹脂分子間の相互作用を阻害していることにより、硬さや脆さを有することはなく、優れた柔軟性と伸びを有する。このように、本発明の生分解性樹脂複合体の製造方法によれば、広い温度範囲において複数の材料物性の改善を同時に達成した生分解性樹脂複合体を得ることができる。
このため、本発明の生分解性樹脂複合体は、現在、石油合成高分子材料が利用されている一般的な用途、特にゴム吸盤など軟質塩化ビニルが利用されている用途への応用することができる。また、柔軟性と形状記憶性の両方が必要となる形状記憶製品として利用することも可能である。
【0058】
また、重合性モノマーを含む含浸材を用い、該含浸材を重合させることにより、含浸材を生分解性樹脂にポリマーアロイ化することができる。これにより生分解性樹脂と、含浸材が重合した後のポリマーの両者の特性を合わせた性質の生分解性樹脂複合体を作製することができ、軟化温度が低い生分解性樹脂を改質し、軟化温度以上でも硬い性質とするなど、目的に応じて生分解性樹脂に機能を付与することができる。
【0059】
さらに、本発明の生分解性樹脂複合体は生分解性を有していることから、自然界において生態系に及ぼす影響が極めて少なく、従来のプラスチックが有していた廃棄処理に関わる諸問題を解決できる。しかも、本発明の生分解性樹脂複合体は今までにない柔軟性を有する点から、これまで生分解性樹脂を利用できなかった分野への応用が期待できる。また、生体への影響がない点から、生体内外に利用される注射器やカテーテルなどの医療用器具への適用が可能な材料である。
【0060】
また、生分解性樹脂の生分解性および生体適合性あるいは生体内分解性を考えれば、本発明の生分解性樹脂複合体をその坦特性を利用した有用物質の徐放システム等に応用することができる。すなわち、薬剤や薬品などの有用物質を可塑剤として生分解性樹脂に含浸して複合化させれば、生分解性樹脂が分解するにつれて含浸されていた有用物質が除々に放出されることとなる。このように本発明の生分解性樹脂複合体は広範囲の技術分野に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に本発明の第一実施形態について説明する。
本発明の生分解性樹脂複合体の製造方法においては、最初に生分解性樹脂架橋物を下記の手順で製造する。
まず、生分解性樹脂を加熱により軟化させるか、あるいは生分解性樹脂が溶解しうる溶媒中に生分解性樹脂を溶解または分散させる。生分解性樹脂としては、架橋構造を導入できる生分解性樹脂を用いている。本実施形態では、多糖類系生分解性樹脂である酢酸セルロース(CDA)、脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂であるポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーであるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)等を用いている。
ついで、架橋性モノマーを添加する。架橋性モノマーとしてはトリアリルイソシアヌレートを用いている。架橋性モノマーの添加量は、生分解性樹脂100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下としている。
添加後、架橋性モノマーが均一になるように撹拌混合する。
ついで、先に溶媒を場合には、溶媒を乾燥除去しても良い。
このようにして、生分解性樹脂成形物を構成する混練物を調整する。混練温度、混練時間は生分解性樹脂および架橋性モノマーの種類によって適宜選択すればよい。
【0062】
前記組成物を再び加熱などにより軟化させて、シート、フィルム、繊維、トレイ、容器または袋などの所望の形状に成形し、成形体を形成している。この成形は、組成物を調整したあと、例えば溶解した状態のまま続けて行っても良いし、一旦冷却または乾燥除去した後に行っても良い。
【0063】
ついで、得られた生分解性樹脂の成形物に電離性放射線を照射し、生分解性樹脂を架橋させ、生分解性樹脂架橋物を得ている。
電離性放射線は、電子線加速器による電子線照射により行なっている。
放射線照射量は80kGy以上200kGy以下の範囲から架橋性モノマーの配合量等に応じて適宜選択すればよく、特に電離性放射線照射後に得られる生分解性樹脂架橋物のゲル分率が80質量%以上となるようにしている。
【0064】
その後、得られた生分解性樹脂架橋物を可塑剤を含む含浸材に浸漬する。
可塑剤としては、本実施形態では脂肪族ポリエステル誘導体またはロジン誘導体を含む可塑剤、ジカルボン酸誘導体を含む可塑剤、グリセリン誘導体を含む可塑剤を使用している。
含浸材に浸漬させる際の含浸材の温度は65〜120℃で、含浸材が液体状態を保てる温度としている。また、含浸材に浸漬させる時間は生分解性樹脂架橋物の厚みに応じて適宜選択している。本実施形態では、厚みが0.1mm以上の場合で10〜20時間としている。
【0065】
生分解性樹脂架橋物内に含浸材が含浸され生分解性樹脂架橋物が膨潤した状態で室温付近まで冷却している。冷却は放冷により除々に冷却しても良いし、水冷などにより急冷してもよい。
このようにして得られた本実施形態の生分解性樹脂複合体は、含浸材を5質量%〜70質量%含有している。
【0066】
次に本発明の第二実施形態について説明する。
第二実施形態では、第一実施形態と同様の方法で生分解性樹脂架橋物を形成した後、第一実施形態で用いた含浸材の代わりに重合性モノマーを含浸材として用い、生分解性樹脂と含浸材(重合性モノマー)を複合化したのち含浸材を架橋している。本実施形態の含浸材としては重合できるモノマーあるいは/及び低分子ポリマーを使用することができる。具体的には、アクリル系モノマーあるいは/及びアクリル基を有する低分子量ポリマー、メタクリル系モノマーあるいは/及びメタクリル基を有する低分子量ポリマー、スチレン系モノマー、アリル系モノマーあるいは/及びアリル基を有する低分子量ポリマー、ビニル系モノマーあるいは/及びビニル基を有する低分子量ポリマーを用いている。
【0067】
生分解性樹脂架橋物の含浸材への浸漬は第一実施形態と同様の方法および条件で行ない、生分解性樹脂と含浸材の複合体を形成している。その後、生分解性樹脂と含浸材の複合体に電離性放射線を照射して、含浸材を架橋して生分解性樹脂複合体を得ている。
電離性放射線は、電子線加速器による電子線照射によって行い、放射線照射量は1kGy以上100kGy以下の範囲から重合性モノマーの種類や配合量等に応じて適宜選択している。
【0068】
第二実施形態の方法で製造された生分解性樹脂複合体は、重合性モノマーを含む含浸材を含浸させた後に重合性モノマーを架橋することにより、重合性モノマーが生分解性樹脂にポリマーアロイ化されている。該生分解性樹脂複合体は生分解性樹脂と含浸材が重合して生成したポリマーの両者の特性を合わせた性質を有する。たとえば、架橋ポリカプロラクトンにメタクリル酸モノマーを含浸してポリメタクリル酸とした場合、軟化温度が低く60℃で形状維持性が損なわれるポリカプロラクトンが、ガラス転移温度166℃まで硬い性質のポリメタクリル酸によって補強され、60℃以上でも硬い性質を示すようになる。
【0069】
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみ限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
生分解性樹脂として、ペレット状のダイセル化学工業(株)製ポリカプロラクトン「プラクセルH7(商品名)」を使用した。架橋性モノマーとしてアリル系架橋性モノマーの1種である日本化成工業(株)製トリアリルイソシアヌレート「TAIC(登録商標、商品名)」を用意し、押出機(池貝鉄工(株)製PCM30型)を用いてシリンダ温度160℃で生分解性樹脂を溶融押出する際に押出機のペレット供給部に架橋性モノマーをペリスタポンプにて定速滴下することで生分解性樹脂に架橋性モノマーを添加した。その際、架橋性モノマーの配合量が生分解性樹脂100質量部に対して2質量部になるように添加量を調整した。棒状に押し出したものを水冷ののちにペレタイザーにてペレット化し、生分解性樹脂と架橋性モノマーのペレット状混練物を得た。
【0071】
この混練物を160℃でシート状に熱プレスしたのち水冷で急冷し、500μm厚のシートを製作した。
このシートに対し、空気を除いた不活性雰囲気で電子加速器(加速電圧10MeV、電流量12mA)により電子線を90kGy照射し、生分解性樹脂架橋物を得た。
【0072】
得られた生分解性樹脂架橋物を105℃の恒温漕内で含浸材に12時間浸漬して膨張させた。含浸材としては、グリセリン誘導体を主成分とする可塑剤である理研ビタミン(株)製グリセリン系可塑剤「PL−710(商品名)」を用いた。その後、浸漬したまま含浸材を常温に戻して、余剰なモノマーを拭き取ることにより本発明の生分解性樹脂複合体を得た。
【0073】
(実施例2〜4)
生分解性樹脂を、昭和高分子(株)製ポリブチレンサクシネート「ビオノーレ#1020(商品名)」としたこと以外は実施例1と同様にして実施例2とし、生分解性樹脂をBASF社製ポリブチレンアジペートテレフタレート「エコフレックス(商品名)」としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3とした。
同様に、生分解性樹脂をダイセル化学工業(株)製酢酸セルロース「L−30(商品名)」として、シリンダ温度およびシートの成型温度を190℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4とした。
【0074】
(実施例5〜8)
含浸材として重合性モノマーであるメタクリル酸を用い、含浸材への浸漬条件を80℃、12時間としたこと、及び含浸材から引き上げて表面の含浸材を除去したのち、空気を除いた不活性雰囲気で電子加速器(加速電圧10MeV、電流量12mA)により電子線を90kGy照射したこと以外は各々実施例1〜4と同様の操作を行い、各々実施例5〜8とした。
【0075】
(比較例1〜16)
架橋性モノマーであるトリアリルイソシアヌレートを配合しなかったこと以外は実施例1〜8と同様にして、各々比較例1〜8とした。
また、電子線照射を行わなかったこと以外は実施例1〜8と同様にして、各々比較例9〜16とした。
【0076】
実施例および比較例において、含浸材含浸前の生分解性樹脂架橋物のゲル分率を下記方法で評価し、含浸材含浸後の生分解性樹脂複合体の含浸材含有率または含浸材固定率を下記方法で評価した。
(1)ゲル分率の評価
各生分解性樹脂架橋物の乾燥質量を正確に計ったのち、200メッシュのステンレス金網に包み、クロロホルム液の中で48時間煮沸したのちに、クロロホルム溶解したゾル分を除いて残ったゲル分を得た。50℃で24時間乾燥して、ゲル中のクロロホルムを除去し、ゲル分の乾燥質量を測定した。得られた値をもとに下記式に基づきゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥質量/生分解性樹脂架橋物の乾燥質量)×100
【0077】
(2)含浸材含有率の評価
実施例1〜4について、含浸材に浸漬する前の常温における生分解性樹脂架橋物の質量を予め測定しておき、含浸材に浸漬したのち常温に戻した後の生分解性樹脂複合体の質量を測定した。得られた値をもとに下記式に基づき含浸材含有率を算出した。
含浸材含有率(%)={(A−B)/A}×100
A;生分解性樹脂複合体の質量
B;含浸材への含浸前の生分解性樹脂架橋物の質量
【0078】
(3)含浸材固定率評価
含浸材の含浸後、含浸材の架橋を行なった実施例5〜8については、80℃恒温槽内で24時間放置したのち常温に戻した後、サンプルの質量を測定し、(2)で測定した値Bを利用して、下記式に基づき含浸材固定率を算出した。
含浸材固定率(%)={(C−B)/C}×100
B;含浸材への含浸前の生分解性樹脂架橋物の質量
C;80℃24時間後の生分解性樹脂複合体の質量
【0079】
前記評価の結果を、製造条件の相違点とともに、表1にまとめた。表中、ポリカプロラクトンをPCL、ポリブチレンサクシネートをPBS、ポリブチレンアジペートテレフタレートをPBAT、酢酸セルロースをCDAと表記した。
【0080】
【表1】


【0081】
実施例1〜8ではいずれも含浸材が含有された生分解性樹脂複合体が得られた。実施例1〜4では、元の生分解性樹脂よりも柔軟で、かつ弾力のあるシートが得られた。実施例5〜8では、逆に元の生分解性樹脂よりも剛性が高く、腰のあるシートが得られた。このように生分解性樹脂の硬さを含浸材により調整することができた。
【0082】
実施例1〜8に対して、生分解性樹脂が架橋していない比較例1〜16は、含浸材の含浸が認められず、一部が溶解したり、脆くなって割れてしまい、含浸できず複合化できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の生分解性樹脂複合体の製造工程を説明するための模式図であり、(a)は生分解性樹脂架橋物の模式図、(b)は生分解性樹脂架橋物を含浸材に浸漬したときの状態を示す模式図、(c)は生分解性樹脂複合体の模式図、(d)は生分解性樹脂複合体内の含浸材を架橋させた生分解性樹脂複合体の模式図、(e)は(a)の生分解性樹脂架橋物を微視的に見たときの模式図、(f)は(c)の生分解性樹脂複合体を微視的に見たときの模式図、(g)は(d)の含浸材を架橋させた生分解性樹脂複合体を微視的に見たときの模式図である。
【図2】架橋されていない生分解性樹脂成形物に含浸材を複合化させた場合に起こる現象を説明するための模式図であり、(a)は架橋されていない生分解性樹脂成形物の模式図、(b)は(a)の生分解性樹脂成形物を含浸材に浸漬したときの状態を示す模式図、(c)は含浸材の浸入により形状の崩壊が起こることを示す模式図である。
【図3】架橋されていない生分解性樹脂成形物に含浸材を複合化させた場合に起こる別の現象を説明するための模式図であり、(a)は架橋されていない生分解性樹脂成形物の模式図、(b)は(a)の生分解性樹脂成形物を含浸材に浸漬したときの状態を示す模式図、(c)は生分解性樹脂成形物が再結晶化したことを示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1 生分解性樹脂架橋物
11 生分解性樹脂の架橋
2 含浸材
3 生分解性樹脂複合体
4 含浸材を重合させた生分解性樹脂複合体
41 含浸材の重合
5 生分解性樹脂成形物
6 結晶化した生分解性樹脂成形物
【出願人】 【識別番号】599109906
【氏名又は名称】住友電工ファインポリマー株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美


【公開番号】 特開2008−1837(P2008−1837A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174229(P2006−174229)