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【発明の名称】 超臨界アルコールのリサイクル方法
【発明者】 【氏名】後藤 敏晴

【氏名】芦原 新吾

【氏名】安部 淳一

【氏名】山崎 孝則

【要約】 【課題】シロキサン結合を持つポリマーをリサイクルするために高温高圧状態にして用いられたアルコールを、廃溶剤として回収した後に、再び同様の目的で再利用する超臨界アルコールのリサイクル方法を提供する。

【構成】高温高圧のアルコールや超臨界あるいは亜臨界のアルコールを用いてシロキサン結合を持つポリマーのシロキサン結合を分解する処理を行い、その後に回収された使用済みの該アルコールを主成分とする有機溶剤を再び超臨界流体としてシロキサン結合を持つがモノマーのシロキサン結合分解反応に利用する際に、シラノール縮合触媒を加えるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧のアルコールや超臨界あるいは亜臨界のアルコールを用いてシロキサン結合を持つポリマーのシロキサン結合を分解する処理を行い、その後に回収された使用済みの該アルコールを主成分とする有機溶剤を再び超臨界流体としてシロキサン結合を持つポリマーのシロキサン結合分解反応に利用する際に、シラノール縮合触媒を加えることを特徴とする超臨界アルコールのリサイクル方法。
【請求項2】
前記シラノール縮合触媒が、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のカルボン酸塩などの塩類、有機塩基、ジブチルスズジラウレート、ラウリン酸亜鉛あるいはアルキルジアミンあるいはこれらの組み合わせである請求項1項記載の超臨界アルコールのリサイクル方法。
【請求項3】
前記高温高圧のアルコール、超臨界あるいは亜臨界のアルコールとして、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノールあるいはこれらの組み合わせを使用する請求項1または2項記載の超臨界アルコールのリサイクル方法。
【請求項4】
前記シロキサン結合を持つモノマーが、シラン架橋したポリオレフィン系の材料である請求項1〜3のいずれかに記載の超臨界アルコールのリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界アルコールのリサイクル方法に関し、特にシロキサン結合による架橋ポリマーなどをリサイクルする際に用いるアルコールを再利用するための超臨界アルコールのリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シロキサン結合を分子中に有するポリマーは、電線ケーブルの被覆材料、給湯用のパイプ材料、あるいは暖房システムの蓄熱材料、その他の絶縁材料やパッキン等、広い分野において活用されている。この種のポリマーとしては、シリコーンゴムやシリコーンレジンのようにシロキサン結合によって本質的性能が特徴づけられたポリマー以外に、シラン水架橋を施されることによって分子中にシロキサン結合を導入されたポリエチレン等も挙げることができる。
【0003】
これらのポリマーは、分子間が架橋されて3次元的に網状化されているため、熱によって軟化溶融することがなく、従って、製品の製造中に発生した屑、あるいは製品としで使用された後の廃材は、リサイクルされることはなく、そのほとんどが地中への埋め立て、あるいは焼却等によって処分されているのが現状である。
【0004】
環境保全の観点からすると、地中への埋め立てや焼却処分は明らかに好ましくなく、また、省資源の観点からしても、これらの処分方法は好ましいものとはいえない。
【0005】
従来、シロキサン結合により架橋されたポリマーの廃材を活用する方法としては、たとえば、架橋ポリマー廃材を微粉化し、これを燃料として利用する方法、あるいは微粉化した架橋ポリマ−廃材を高温で熱分解して油状化し、同様に燃料として活用する方法(特許文献1)等が検討されている。
【0006】
また、燃料以外への活用方法としては、微粉化した架橋ポリマー廃材を非架橋のレジンに混入することによって溶融可能なブレンド材とし、これを成型することによって所定の成型品として活用する方法が提案されており、さらには、架橋ポリマー廃材を超臨界あるいは亜臨界水によって熱分解する方法も提案されている(特許文献2、特許文献3)。また、高温高圧のアルコールを接触させて架橋を選択的に分解する方法(特許文献4〜6)が提案されており、この方法によれば、架橋ポリエチレンを熱可塑性のポリエチレンに戻すことができるのでマテリアルリサイクルが可能である。
【0007】
【特許文献1】特開平10−160149号公報
【特許文献2】特開平6−279762号公報
【特許文献3】特開平10−24274号公報
【特許文献4】特開2002−187976号公報
【特許文献5】特開2000−297053号公報
【特許文献6】特開2005−2203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、以上に述べた従来の高温高圧のアルコールに接触させてシロキサン結合を持つポリマーをリサイクルするために用いられたアルコールは、廃溶剤として回収された後に、再び同様の目的で再利用することが難しかった。
【0009】
そのため回収されたアルコールを主成分とする有機溶剤は廃棄されていた。
【0010】
そこで、環境負荷低減のため、あるいはコスト低減のために、回収したアルコールを再利用する技術が求められているものの、いまだに提案されていない。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決し、シロキサン結合を持つポリマーをリサイクルするために高温高圧状態にして用いられたアルコールを、廃溶剤として回収した後に、再び同様の目的で再利用することができる超臨界アルコールのリサイクル方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するため、高温高圧のアルコールや超臨界あるいは亜臨界のアルコールを用いてシロキサン結合を持つポリマーのシロキサン結合を分解する処理を行い、その後に回収された使用済みの該アルコールを主成分とする有機溶剤を再び超臨界流体としてシロキサン結合を持つがモノマーのシロキサン結合分解反応に利用する際に、シラノール縮合触媒を加えることを特徴とする超臨界アルコールのリサイクル方法を提供するものである。
【0013】
また前記シラノール縮合触媒が、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のカルボン酸塩、有機塩基、ジブチルスズジラウレート、ラウリン酸亜鉛あるいはアルキルジアミンあるいはこれらの組み合わせであってもよい。
【0014】
さらに、高温高圧のアルコール、超臨界あるいは亜臨界のアルコールとして、メチルアルコール、エチルアルコール、n‐プロピルアルコール、iso‐プロピルアルコール、n−ブタノールあるいはこれらの組み合わせを使用することがより好ましい。
【0015】
また、対象とするシロキサン結合を持つポリマーがシラン架橋したポリオレフィン系の材料である場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明による超臨界アルコールのリサイクル方法によれば、分子中にシロキサン結合による架橋構造を有するポリマーのリサイクルを高温のアルコールの接触による熱処理を施した後に回収したアルコールを再利用してシラン架橋ポリエチレンの架橋点であるシロキサン結合を優先的に分解することができ、従って超臨界アルコールとして利用するアルコールがリサイクル可能となり、資源をより有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
【0018】
本発明における高温高圧のアルコールは、高温に加熱されたアルコールが有するシロキサン結合への優先的切断作用により成立する。
【0019】
この作用を最適化するためには、架橋ポリマーに接触させるアルコールの温度が重要であり、多くの場合、その温度は、リサイクルされたポリマーの分子量低下とそれによる機械的強度および伸び特性の低下を防ぐため、リサイクル対象ポリマーのシロキサン結合を除く共有結合が、熱分解しない温度であって、かつ、当該アルコールの沸点以上に設定される。また、アルコール分子をシロキサン結合と反応させるために、アルコールをポリマーに溶解させる必要があり、この点において特に圧力が重要となる。多くの場合、その圧力は1MPa以上である。
【0020】
本発明では、このシロキサン結合の分解反応に用いた後に回収された廃溶剤は、アルコールが主成分であるものの反応性が劣ることが分かった。
【0021】
この原因としては、シロキサン結合の分解反応によって生じた水などの影響が考えられると共に、ポリマーに加えられている添加剤などが抽出されて、本来のアルコールのシロキサン結合の分解反応を阻害していることを見出した。
【0022】
この問題の解決方法として、アルコールを精製して再利用する方法は、精製のための設備導入などが必要となるので高コストとなるため実用化が難しい。
【0023】
そこで本発明では、この問題を解決するためにシラノール縮合触媒を、回収したアルコールに加えることにより、架橋の分解反応を促進することができ、使用前のアルコールと同様に、回収したアルコールでシロキサン結合を分解できることを見出した。
【0024】
回収アルコールによるシロキサン結合の切断反応は、バージンのアルコールを用いる場合と同様に、リサイクル対象ポリマーの炭素原子間の共有結合の熱分解温度より低温で生じるので、リサイクル反応であるシロキサン結合の切断反応を選択的かつ効率的に実現し、分子量低下が低下せずに物性が維持された、より原材に近いポリマーのリサイクルを可能にする。
【0025】
本発明のリサイクル方法において、前記触媒として、シラノール縮合触媒として知られているアルカリ金属やアルカリ土類金属のカルボン酸塩などの塩や有機塩基を用いる。より具体的には、塩基性の物質であるエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ジブチルアミン、ピリジン、あるいは一般的にシラノール縮合触媒として用いられる物質、例えばオクチル酸またはアジピン酸の金属塩で、その金属は、マグネシウム、カルシウムなどのII族、コバルト、バリウム、鉄などVIII族の元素、もしくは亜鉛、スズ、鉛、チタン,あるいは脂肪酸アマイド、あるいはこれらの混合物などがあげられる。
【0026】
塩としては、例えばオクチル酸カルシウム、アジピン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ヒドロキシステアリン酸亜鉛、エチレンビスオレイン酸カルシウム、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート等の有機スズ化合物、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛をあげることができ、脂肪酸アマイドとしては、ラウリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイドなどが挙げられる。
【0027】
また、亜臨界アルコールとは、臨界点の近傍であって、臨界点より低い温度および圧力にあり、かつ、超臨界アルコールに準ずる性質を有するアルコールを言う。これらの超臨界および亜臨界のアルコールは、有機物を選択的に分解する性質に長けており、特に、シロキサン結合を優先的に切断する性質において、最適なアルコールとして推奨することができる。
【0028】
本発明に使用されるアルコールとしては、メチルアルコールおよびエチルアルコールの外に、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコールが好適な例として挙げられ、これらより選択される1種、あるいは2種以上の混合物が多くの場合に使用されるが、特にメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノールは分解能力が高い。
【0029】
分子中にシロキサン結合による架橋構造を有するポリマーの例としては、シラン水架橋を施されることによって架橋点にシロキサン結合を形成されたポリマーを挙げることができ、特にポリオレフィン系の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレンゴム、あるいはエチレン−オクテンゴム等より選択されるポリマーの各シラン水架橋物が挙げられる。
【0030】
ここに言うシラン水架橋とは、例えば、ビニルアルコキシシラン等のシラン化合物をパーオキサイドを用いてポリマーにグラフトし、アルコキシ基の加水分解により生成したシラノール基の縮合反応によってポリマーの分子間を架橋させることをいう。この種の架橋を施されたポリマーの中には、アルコキシシランを有したビニル化合物をエチレンに共重合させたポリマーの架橋物も含まれ、このポリマーの場合にも、アルコキシ基の加水分解によって生成したシラノール基の縮合反応によって同様に分子間が架橋される。
【0031】
本発明におけるリサイクル対象の架橋ポリマ−として、エラストマー状のシリコーンゴム、あるいは樹脂状のシリコーンレジンを適用できることは言うまでもなく、これらをリサイクル対象に選択するときも、上記架橋ポリマー類の場合と同じく、シロキサン結合の優先的な切断に基づく効率的ポリマーリサイクルが行われることになる。
【0032】
なお、本発明の実施に際しては、リサイクルすべき架橋ポリマー廃材をペレット状あるいはパウダー状等の粒状に加工し、これによりアルコールとの接触面積を増やすことによって、リサイクル効率を高めることは可能である。
【0033】
また、架橋ポリマーは耐熱性などを持たせるために熱可塑性ポリマーを架橋したものなので、その廃棄物には、熱や酸化による劣化を防ぐために酸化防止剤が加えられている。
【実施例】
【0034】
次に、本発明による超臨界アルコールのリサイクル方法の実施形態を説明する。
【0035】
表1は、本発明の実施例1〜12、表2は、実施例1〜12に対比させるための比較例1〜4を示し、これらの実施結果をまとめたものである。
【0036】
実施内容は以下に記す。
【0037】
【表1】


【0038】
【表2】


【0039】
電線被覆材として用いられた架橋ポリエチレンを平均粒径0.5〜5mmのペレット状に加工し、その各5gを200ml容量のオートクレーブの中に充填し、これに、表1の各例ごとに示される60mlのアルコールを加えた後、反応容器内を不活性ガスのアルゴンで置換した後に加熱し、必要に応じてポンプでアルコールを加えながら内部の圧力を調整し、オートクレーブ内を320℃、10MPaとして30分間反応させた。その後、反応容器を冷却して容器内の使用済みのアルコールを回収した。これを繰り返して使用済みのアルコールを必要量作製した。
【0040】
さらに、その回収アルコールを用いて再度、実施例と比較例に示される架橋ポリマーを平均粒径0.5〜5mmのペレット状に加工し、その各5gを200ml容量のオートクレーブの中に充填し、これに、表1の各例ごとに示される60mlのアルコールを加えた後、同じく表1の各例ごとに示されるシラノール触媒を15mg加え(ただし表2の比較例1〜5は添加なし)、反応容器内を不活性ガスのアルゴンで置換した後に加熱し、必要に応じてポンプでアルコールを加えながら内部の圧力を調整し、オートクレーブ内を320℃、10MPaとして30分間反応させた。その後、反応容器を冷却して容器内のリサイクルポリマ−を回収した。
【0041】
回収したリサイクルポリマーの分子量分布は、o−ジクロロベンゼンを溶媒として高温GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定し、リサイクルポリマーの数平均分子量の低下度合が、架橋する以前の元のポリマーの20%以内にとどまるものを○(OK)、20%を超えるものを×(NG)として評価した。また、ゲル分率は、JIS3005に準拠してリサイクルポリマーを110℃のキシレンに24時間浸漬後、不溶成分を真空乾燥し、乾燥後の重量/初期重量(キシレンに溶解させる前の重量)×100(%)が20%以下になるものを○、それ以上になるものを×とした。
【0042】
表1によれば、シラノール触媒を使用した実施例1〜12において、リサイクルポリマーが高水準の分子量を保持しているとともに、ゲル分率20%以下である結果を示している。
【0043】
これは、高温のアルコールが、リサイクル対象の架橋ポリマーのシロキサン結合を優先的に切断する一方で、シロキサン結合以外の共有結合には影響しないことを示しているものであり、シラノール触媒を加えることによって回収アルコールを使用前のアルコールと同様に利用できることが分かった。従ってこれらの方法によれば、シロキサン結合を持つポリマーなどをリサイクルする際に用いるアルコールをリサイクルすることが可能になる。
【0044】
一方、これに対して表2に示す比較例1〜5の場合には、シロキサン結合の切断は行われず、目標とするゲル分率20%以下にならなかった。これは、廃シラン架橋ポリエチレンに含まれる添加剤等が超臨界アルコールに抽出されてアルコールに混入することによって反応を阻害したり、シロキサン結合の分解時に生成する水の影響によるものと考えられる。
【出願人】 【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄


【公開番号】 特開2008−1830(P2008−1830A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173912(P2006−173912)