Warning: copy(htaccessbak): failed to open stream: No such file or directory in /home/jtokkyo/public_html/header.php on line 10
タンパク質からなる粒子状成形体の製造方法及び、該方法により得られたタンパク質からなる粒子状成形体 - 特開2008−1764 | j-tokkyo
トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 タンパク質からなる粒子状成形体の製造方法及び、該方法により得られたタンパク質からなる粒子状成形体
【発明者】 【氏名】土橋 敏明

【氏名】窪田 健二

【氏名】古澤 和也

【氏名】長澤 尚胤

【氏名】八木 敏明

【氏名】玉田 正男

【要約】 【課題】紫外線よりもより強度な放射線を用いることによって、タンパク質に安定的に橋かけ構造を導入し、タンパク質からなるナノ及びサブミクロンサイズオーダーの生分解性粒子状成形体を製造する。

【構成】タンパク質からなる粒子状成形体の製造方法は、粉末状のタンパク質を含む原料と水又は緩衝液とを0.00025〜0.1重量%になるように混合することにより原料混合液を調製し、調製した原料混合液に電離性放射線を100Gy以上200kGy未満の照射線量で照射する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含む原料と水又は緩衝液とを混合することにより原料混合液を調製し、前記調製した原料混合液に電離性放射線を照射することを特徴とするタンパク質からなる粒子状成形体の製造方法。
【請求項2】
タンパク質を含む原料が粉末状であって、
原料混合液の調製は混合液濃度が0.00025〜0.1重量%になるように前記原料に水又は緩衝液を加えて混合することにより調製され、
電離性放射線の照射線量が100Gy以上200kGy未満である請求項1記載のタンパク質からなる粒子状成形体の製造方法。
【請求項3】
原料混合液に照射する電離性放射線が、放射性同位体であるコバルト60、セシウム137、イリジウム192又はストロンチウム90からのガンマ線、加速器からの電子線である請求項1又は2記載のタンパク質からなる粒子状成形体の製造方法。
【請求項4】
原料に含まれるタンパク質が、アルブミン、リゾチーム、ヘモグロビン、ミオシン、フィブリノゲン、フィブリン、カゼイン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた1種又は2種以上である請求項1又は2記載のタンパク質からなる粒子状成形体の製造方法。
【請求項5】
アルブミンが、ブタアルブミン、ウシアルブミン又はヒトアルブミンからなる群より選ばれた哺乳類アルブミン、或いは卵白アルブミンである請求項4記載のタンパク質からなる粒子状成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載の方法により得られるタンパク質からなる粒子状成形体。
【請求項7】
成形体の平均粒径が1〜500nmである請求項6記載のタンパク質からなる粒子状成形体。
【請求項8】
ゾル化温度以上の高温でも形態が変化しない請求項6又は7記載のタンパク質からなる粒子状成形体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の照射によってタンパク質からなる粒子状成形体を製造する方法及び、該方法により得られたゾル化温度以上の高温でも形態が変化しないナノ及びサブミクロンサイズオーダーのタンパク質からなる粒子状成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルブミンは、動植物の細胞や体液中に含まれる一群の可溶性タンパク質の総称であり、血清、乳汁、卵の白身などに含まれている。例えば、ブタアルブミン、牛アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、乳清アルブミン、卵白アルブミン等がある。このうちHSAは血漿タンパク質の約60%を占め、血液中ではヘモグロビンに次いで2番目に多い単純タンパク質で、古くから数多くの研究が行われてきたが、1989年にCarterらがX線結晶構造解析に成功して以来、様々な分野で再び大きな注目を集めてきた。特に医療用材料分野では、HSAの非特異的分子結合能を巧みに利用して、独自に分子設計並びに合成したポルフィリン鉄錯体(FeP)をHSAの疎水ドメインへ包接させたアルブミン−ヘム複合体が合成されており、人工赤血球への応用として期待されている。また、生体親和性が高いことから、アルブミンを生体高分子として使用した生体高分子−アルデヒド系化合物の医療用接着剤への応用が提案されている。
【0003】
上記アルブミンは水溶性のタンパク質であり、これらの水溶性のタンパク質を用いた成形物は、一定の形態を安定に保持することが困難であるため、更なる製品化を展開するには、例えば、成型物の構造を橋かけ構造とする等によって、一定の耐水性や物理的強度を導入する必要がある。現在、成型物の構造を橋かけ構造とするには、グルタルアルデヒドやホルムアルデヒドといった架橋剤を用いて橋かけ処理している。しかしながら、このような架橋剤を用いた場合、未反応の架橋剤が残留した残留架橋剤による細胞毒性が懸念されている(例えば、非特許文献1や非特許文献2参照。)。架橋剤を用いた場合には、水などを用いた洗浄処理によって残留架橋剤を除去する必要があるが、残留する架橋剤を完全に除去することは困難であった。更に、タンパク質とは結合しているものの、完全には反応せず、未反応基を有する架橋剤の不活性化処理をする必要もあった。
【0004】
このように架橋剤を用いて橋かけ処理する方法は安全性に問題があるため、その対処法としてタンパク質に紫外線を照射して橋かけ処理することによる不溶化技術が開示されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照。)。具体的には、特許文献1では、ゼラチンとコラーゲンとを必須基材構成成分として含有し、紫外線が照射されて架橋されていることを特徴とする医用基材が、特許文献2では、ゼラチンを成形した後、さらに紫外線を照射して架橋された癒着防止材がそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特開平11−47258号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2000−37450号公報(請求項1)
【非特許文献1】J. Appl. Toxicol.21, 131(2001)
【非特許文献2】Toxicology 175, 175(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に示されるような紫外線照射を用いる場合、紫外線は透過能が低いため、厚みがあるタンパク質サンプルの橋かけ処理には適していないという不具合があった。また、組織培養は、体温に近い温度で行うが、紫外線照射により橋かけ処理したゼラチンを組織培養担体として用いた場合、ゼラチンのゾル化温度は体温37℃より低いため、溶液となってしまい、培養が困難であった。したがって、細胞培養担体の吸水性や強度の改善、耐熱性の向上が応用に不可欠であった。細胞培養担体として要求される生体適合性と細胞接着性を兼ね備えた分子としてはフィブロネクチンが最も好適とされるが、フィブロネクチン或いはフィブロネクチンでコーティングした培養担体にも同様な改質が必要とされる。
【0006】
本発明の目的は、紫外線よりもより強度な放射線を用いることによって、タンパク質に安定的に橋かけ構造を導入し、タンパク質からなるナノ及びサブミクロンサイズオーダーの生分解性粒子状成形体を製造する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、組織培養及びドラックデリバリーシステム等の医用材料の用途において、生体親和性、吸水性及び耐熱性を有するタンパク質からなるナノ及びサブミクロンサイズオーダーの粒子状成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記諸問題について鋭意研究を重ねた結果、水溶性タンパク質を含む原料と水又は緩衝液とを良く混合することにより希薄な原料混合液を調製し、調製した希薄原料混合液に電離性放射線を照射することによって、ゾル化温度以上の高温でも形態が変化しないナノ及びサブミクロンサイズオーダーのタンパク質からなる粒子状成形体が得られることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタンパク質からなる粒子状成形体の製造方法では、タンパク質を含む原料と水又は緩衝液とを混合することにより原料混合液を調製し、調製した原料混合液に電離性放射線を照射することにより、紫外線よりもより強度な放射線を用いることによって、タンパク質に安定的に橋かけ構造を導入した、タンパク質からなるナノ及びサブミクロンサイズオーダーの生分解性粒子状成形体を製造することができる。上記製造方法により得られたタンパク質からなる粒子状成形体は、ゾル化温度以上の高温でも形態が変化せず、生体親和性、吸水性及び耐熱性を有するので、組織培養及びドラックデリバリーシステム等の医用材料の用途に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のタンパク質からなる粒子状成形体の製造方法は、タンパク質を含む原料と水又は緩衝液とを混合することにより原料混合液を調製し、この調製した原料混合液に電離性放射線を照射することを特徴とする。緩衝液としては、リン酸緩衝液、TE(tris−HCl−EDTA)緩衝液、HEPES緩衝液等が挙げられる。緩衝液を使用することで溶液中でのタンパク質の構造安定化の効果が得られる。タンパク質を含む原料は粉末状であることが好適である。原料中に含まれるタンパク質は水溶性タンパク質が使用される。原料混合液の調製は、混合液濃度が0.00025〜0.1重量%になるように原料に水又は緩衝液を加えて混合することにより調製されることが好ましい。このうち特に好ましい濃度は0.00025〜0.001重量%である。原料混合液の濃度を上記濃度範囲としたのは、下限値未満では十分な量の粒子状成形体を製造することができず、上限値を越えると形成される粒子状成形体の平均粒径を制御し難いためである。
【0010】
原料中に含まれるタンパク質としては、豚、牛又は人間等の哺乳類の血清中、鶏の卵白中、牛乳、母乳等の哺乳類の乳汁中に含まれるアルブミン、鳥卵白、哺乳類、魚類、昆虫類などに含まれるリゾチーム、赤血球中などに含まれるヘモグロビン、動物の筋肉収縮、細胞の運動、細胞内物質運搬に関わるミオシン、フィブリノゲン、血液の凝固に関わるフィブリン、乳汁の主成分であるカゼイン、細胞接着に関与する細胞表面タンパク質であるフィブロネクチン、皮膚の真皮・靱帯・腱・血管壁など伸縮性の必要な器官に広く分布するエラスチンや動物の皮膚、爪、毛髪を構成成分であるケラチン及び基底膜を構成する細胞接着性糖タンパク質であるラミニンなどが挙げられる。アルブミンとしては、ブタアルブミン、ウシアルブミン又はヒトアルブミンからなる群より選ばれた哺乳類アルブミン、或いは卵白アルブミンが挙げられる。またこれらのタンパク質を更に精製し、例えば、日本薬局方又は精製アルブミン等の規格を満たすようにしたものでも使用できる。更に、これらのタンパク質の側鎖を化学修飾したような誘導体も使用することができる。化学修飾にはカルボキシメチル化、カルボキシエチル化、メチル化、ヒドロキシエチル化、アセチル化、トシル化等がある。
【0011】
このようにして調製した原料混合液に電離性放射線を照射する。紫外線よりも高エネルギの電離性放射線は、タンパク質に安定的に橋かけ構造を導入でき、架橋剤や紫外線を使用しないため、安全な粒子状成形体を製造することができる。原料混合液に照射する電離性放射線の種類としては、重イオン線、アルファ線、ベータ線即ち電子線、エックス線、ガンマ線等を利用する。このうち、医療滅菌や工業的によく用いられている放射性同位体であるコバルト60、セシウム137、イリジウム192又はストロンチウム90からのガンマ線、加速器からの電子線が好ましい。電離性放射線の照射線量は、タンパク質が橋かけ構造をとることで、吸収性及び耐熱性が付与され、かつ使用中に破断しない程度の強度が導入される程度の照射線量とする必要がある。具体的には、100Gy以上200kGy未満が好適であり、0.5〜50kGyが特に望ましい。
【0012】
上記製造方法により得られた本発明のタンパク質からなる粒子状成形体は、製造時に紫外線に比べてエネルギが高い放射線を用いているため、タンパク質に安定的に橋かけ構造が導入され、紫外線照射に比べて高い耐水性や物理的強度を有する。また製造時に架橋剤を用いていないため、未反応残留物等による毒性を有さず、安全性が高い。また本発明の粒子状成形体の平均粒径としては、1〜500nmの範囲内が好適である。このうち、より好ましい平均粒径は1〜100nmの範囲内である。本発明の粒子状成形体は、ゾル化温度以上の高温でも形態が変化しないため、例えば、ゼラチンの粒子状成形体を組織培養担体として用いた場合は、培養時でも溶液とはならないため、ゼラチンを用いた担体の吸水性や強度の改善、耐熱性の向上が見込まれる。
【0013】
また、本発明のタンパク質からなる粒子状成形体は、生体適合性を有するので、再生医学の現場で使用するような細胞培養担体、目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)に薬物を効果的かつ集中的に送り込むドラックデリバリーシステム用マトリックス基材、熱傷、創傷、褥瘡、擦過傷又は皮膚潰瘍などの皮膚欠損材、肩、肘、膝又は足首などの関節潤滑材等の医用基材として用いることができる。
【0014】
更に本発明のタンパク質からなる粒子状成形体は、天然由来の生分解性材料であるので、農薬、肥料、土壌改良剤を制御しながら所定位置に送り込む農業用デリバリーシステム用マトリックス基材など、環境に優しい材料や製品として応用することができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0016】
<実施例1>
先ず、タンパク質を含む原料として、牛血清由来アルブミン(ICN Biomedicals社製;フラクションV、pH7.0)を用意し、この牛血清由来アルブミンと蒸留水とを濃度が1.0×10-3重量%になるように混合し、40℃でよく溶解することにより、濃度が1.0×10-3重量%の原料混合液を調製した。次いで、この原料混合液をポアサイズ0.8mmのフィルターで濾過して未溶解物を除去したものを、複数の光散乱用石英管に注意深く注入した。次に、原料混合液を注入した光散乱用石英管に対して、10kGy及び20kGyの照射線量のガンマ線を照射した。
【0017】
続いて、未照射(0kGy)、10kGy及び20kGyの照射線量でガンマ線を照射した各サンプルについて、40℃で静的並びに動的光散乱測定を行い、粒子サイズと見かけの分子量を算出した。動的光散乱では、角度30°において動的光散乱測定し、CONTIN法によって解析を行った。静的光散乱測定結果を図1(a)及び図1(b)に、動的光散乱結果を図2にそれぞれ示す。
【0018】
図1(a)及び図1(b)に明らかなように、1.0×10-3重量%のような希薄な原料混合液にガンマ線を照射すると、光散乱強度(Kc/Rθ)は、γ線照射によって急激に増大している。このことからアルブミン粒子がγ線照射によって橋かけし、分子量の増加が起こったことが分かる。
【0019】
更に図2からわかるように、ガンマ線未照射(0kGy)のサンプルには2つのピークがある。Rhが小さい方のピークはアルブミン1つの大きさを表している。逆にRhが大きい方のピークはいくつかのアルブミンが集まった凝集体の大きさを表している。縦軸はその大きさを持つ粒子からの光散乱強度を表している。凝集体由来のピークの高さが単体のアルブミンのピークよりも小さいことから、凝集体の数はわずかでしかないことがいえる。一方でガンマ線を10kGy照射したサンプルにも2つのピークが見られるがRhが小さいピークの強度はわずかでしかない。このことから一つのアルブミン粒子がγ線照射によって凝集し、大きな粒子を形成したことが言える。更にガンマ線を20kGy照射したサンプルでは、サイズ分布はより広範で単一なものとなっていた。
【0020】
次に、図2の結果より求めたピークからの分子量(Mapp)と流体力学的半径(Rh)を算出した。算出結果を表1に示す。
【0021】
【表1】


【0022】
表1より明らかなように、光散乱で得られる分子量は重量平均分子量であり、分布の大きい側の影響を強く受けると考えられる。しかしながら、そのことを踏まえても得られた分子量の増加は、アルブミンが橋かけしてナノゲル粒子を形成されたことを強く裏付けている。照射して作製したアルブミンナノ粒子の分子量は、元のアルブミンの分子量よりも大きく、また、流体力学的半径は、元のアルブミンとほとんど変わらない。これらの結果からアルブミン希薄水溶液に対する放射線照射によって密度の非常に高いナノサイズ粒子が形成されることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のタンパク質からなる粒子状成形体は、生体適合性を有するので、再生医学の現場で使用するような細胞培養担体、目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)に薬物を効果的かつ集中的に送り込むドラックデリバリーシステム用マトリックス基材、熱傷、創傷、褥瘡、擦過傷又は皮膚潰瘍などの皮膚欠損材、肩、肘、膝又は足首などの関節潤滑材等の医用基材として用いることができる。更に本発明のタンパク質からなる粒子状成形体は、天然由来の生分解性材料であるので、農薬、肥料、土壌改良剤を制御しながら所定位置に送り込む農業用デリバリーシステム用マトリックス基材など、環境に優しい材料や製品として応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】BSA希薄水溶液の静的光散乱測定結果を示す図。
【図2】BSA希薄水溶液の角度30°における動的光散乱測定のCONTIN法による解析結果を示す図。
【出願人】 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義


【公開番号】 特開2008−1764(P2008−1764A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171016(P2006−171016)