トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 水素化重合ロジンエステルの製造方法
【発明者】 【氏名】上垣内 学

【氏名】梶田 和成

【要約】 【課題】

【解決手段】硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を、脱硫処理して得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の重合ロジン(A1)を水素化後、アルコール類(B)と反応させることを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法;硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を水素化後、脱硫処理をして得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の重合ロジン(A2)とアルコール類(B)を反応させることを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を、脱硫処理して得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の重合ロジン(A1)を水素化後、アルコール類(B)と反応させることを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法。
【請求項2】
硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を水素化後、脱硫処理をして得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジン(A2)とアルコール類(B)を反応させることを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法。
【請求項3】
硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を水素化し、水素化重合ロジン(A3)とした後、アルコール類(B)と反応させて得られた重合ロジンエステルを脱硫処理することを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法。
【請求項4】
脱硫処理が、脱硫触媒の存在下、100〜300℃で処理することである請求項1〜3のいずれかに記載の硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法。
【請求項5】
硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)が、精製したロジンを、硫酸系触媒を用いて重合させて得られる重合ロジンである請求項1〜4のいずれかに記載の硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化重合ロジンエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合ロジンはロジン類を重合させて得られる樹脂であり、ロジン等と比較して、高い軟化点を有するため、そのままあるいは水素化して安定化させて、はんだフラックスや粘着付与樹脂として広く使用されている。
【0003】
従来、重合ロジンの製造方法としては、様々な方法が検討されている。具体的には、例えば、触媒としてペンダントスルホン酸基を有する高分子を触媒として用いる方法(特許文献1参照)や、脂肪族スルホン酸を触媒として用いる方法(特許文献2参照)などが提案されているが、通常、硫酸等の酸性触媒を用いるため、これらの方法で得られる樹脂にはこれらの触媒または触媒の分解物に基因すると考えられる硫黄分が残存していた(例えば、特許文献2の表1参照)。このようにして得られた重合ロジンは、加熱下で保存すると著しく着色したり、長期間(約2月以上)保存した後に水素化等の処理をしても淡色化を十分に行なうことができないといった問題があった。
【0004】
ところで、本願人は、無色重合ロジンエステルの製造方法について提案をしているが、当該製造方法は従来の硫黄分を含有する重合ロジンエステル類を水素化または不均化等することにより無色ロジンエステルを製造する方法であり、色調を良好にする効果があり、また、加熱安定性も改良されていた(特許文献3参照)。しかし、近年、鉛フリーはんだ用フラックス原料や粘着付与樹脂として、より加熱安定性が良好な水素化重合ロジンエステルが求められるようになってきている。
【0005】
【特許文献1】米国特許公報4414146号
【特許文献2】特開2006−45396号公報
【特許文献3】特開2002−201434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、色調が良好であり、かつ加熱下で保存しても安定性が良好(加熱安定性が良好)である水素化重合ロジンエステルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は長期間保存した後に水素化した際に淡色化を十分に行なうことができない原因を追求した結果、重合ロジンの製造時に用いられる触媒の残存に基因する硫黄分が本現象の原因であり、重合ロジンに含まれる硫黄分を減少させることにより前記問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を、脱硫処理して得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の重合ロジン(A1)を水素化後、アルコール類(B)と反応させることを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法;硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を水素化後、脱硫処理をして得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の重合ロジン(A2)とアルコール類(B)を反応させることを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法;硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)を水素化し、水素化重合ロジン(A3)とした後、アルコール類(B)と反応させて得られた重合ロジンエステルを脱硫処理することを特徴とする硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、色調が良好であり、かつ加熱下で保存しても安定性が良好(加熱安定性が良好)な水素化重合ロジンエステルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジンエステルの製造方法は、(1)硫酸系触媒を用いて得られた重合ロジン(A)(以下、(A)成分という)を、脱硫処理して得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の重合ロジン(A1)(以下、(A1)成分という)を水素化後、アルコール類(B)(以下、(B)成分という)と反応させること(以下、(1)法という)、(2)(A)成分を水素化後、脱硫処理をして得られた硫黄分の含有量が100ppm以下の水素化重合ロジン(A2)(以下、(A2)成分という)と(B)成分を反応させること(以下、(2)法という)、または(3)(A)成分を水素化し、水素化重合ロジン(A3)(以下、(A3)成分という)とした後、(B)成分と反応させて得られた重合ロジンエステルを脱硫処理すること(以下、(3)法という)を特徴とする。
【0011】
得られる水素化重合ロジンエステルの硫黄分の含有量が100ppmを超えるような場合には、加熱安定性が悪くなる。なお、硫酸系触媒とは重合ロジンの製造に用いられる後述する硫酸やスルホン化した化合物等の触媒を意味する。
【0012】
本発明で用いる(A)成分は、ロジンを、硫酸系触媒を用い、公知の方法で重合させることにより得られる。ロジンとしては、ウッドロジン、トール油ロジン、ガムロジン等を用いることができる。これらは未精製のまま使用してもよいが、色調が良好な水素化重合ロジンエステル(色調(ガードナー色数)が1以下、ハーゼン色数(APHA法:日本油化学協会 基準油脂分析試験法2.2.1.4−1996による。以下、色調(ハーゼン色数)は本方法により測定した値である。)が300ハーゼン以下の水素化重合ロジンエステル)を得るためには、ロジンを精製して用いることが好ましい。なお、本発明において色調(ガードナー色数)とは、対象となる樹脂10gを試験管にとり、窒素気流下、加熱溶融させたものをキシダ化学(株)製ガードナーカラースタンダードと比色することにより決定した値である。以下色調(ガードナー色数)は本方法により測定した値である。また、精製とは、出発原料である未精製ロジンに含まれていた過酸化物から生起したと考えられる高分子量物、およびロジンにもともと含まれている不ケン化物を除去することを意味する。精製方法としては、具体的には、例えば、蒸留、再結晶、抽出等の操作を行なえばよく、工業的には蒸留による精製が好ましい。蒸留による場合は、通常は温度200〜300℃程度、圧力130〜1300Pa程度の範囲から蒸留時間を考慮して適宜選択される。再結晶の場合は、例えば未精製ロジンを良溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去して濃厚な溶液となし、この溶液に貧溶媒を添加することにより行なうことができる。良溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、低級アルコール、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等の酢酸エステル類等が挙げられ、貧溶媒としてはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられる。更に前記精製は未精製ロジンを、アルカリ水を用いてアルカリ水溶液となし、生じた不溶性の不ケン化物を有機溶媒により抽出した後、水層を中和して、精製ロジンを得ることもできる。
【0013】
本発明に用いられる(A)成分は、前記ロジンを、重合触媒として硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、スチレン−ジビニルベンゼン等の共重合体スルホン化物等の硫酸系触媒を用いて得られる重合ロジンである。なお、重合触媒としてはこれら硫酸系触媒の他に、ぎ酸、フッ化水素、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、四塩化チタン等の触媒を併用することもできる。通常、重合反応は重合触媒の存在下、トルエン、キシレン、ハロゲン化炭化水素等の有機溶剤中で、40〜160℃程度で、1〜10時間程度反応させることにより行なうことができる。重合触媒としては、ロジンの脱炭酸等の副反応が少なく、しかも反応活性が良好なことより、塩化亜鉛が好適であり、通常、硫酸と共に使用される。反応終了後、触媒を除去するには、通常、水洗、ろ過等の各種公知の方法を採用することができる。また、未反応ロジンおよび分解物は減圧蒸留により除去することができる。
【0014】
このようにして得られる(A)成分は、一般的に、未反応物としてのロジン(単量体)、これが二量化したダイマー成分、更にはダイマー成分より大きい分子量を持つ成分などから構成された混合物であり、色調(ガードナー色数)は4〜7程度である。重合ロジン中の重合物の含有率は、重合反応時の反応温度、反応時間、触媒種、および重合反応物から未反応精製ロジンを除去する条件等により異なるため、所望の重合ロジン含有率となるよう反応条件等を適宜に選択できる。本発明で用いる精製重合ロジン中の重合物含有率は、格別の限定はされず、最終的に得られる無色重合ロジンの用途に応じて決定すればよい。通常は10〜85重量%程度、好ましくは20〜80重量%である。なお、このようにして得られた(A)成分は、通常、重金属分は含有せず(蛍光X線で検出限界以下)、100ppm以下の塩素量、200ppm程度以上の硫黄分を含むものである。当該硫黄分は、重合反応時に、ロジン等と反応し、ロジン等と結合していると考えられ、通常の洗浄、蒸留等では除去することができないと考えられる。
【0015】
当該ロジン等と反応した硫黄分除去するする方法(脱硫処理)としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、脱硫触媒の存在下、通常0.1〜5MPa、好ましくは0.1〜3MPaの水素雰囲気下で(A)成分または(A)成分と(B)成分を反応させて得られた重合ロジンエステルを加熱する方法が挙げられる。圧力を当該範囲に維持することで、(A)成分中に存在する不飽和結合の水素化を抑制することができるため、得られる脱硫重合ロジンまたは重合ロジンエステルに各種変性等を行なうことができる。脱硫触媒としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、ルテニウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等、各種公知のものが挙げられる。脱硫触媒の使用量は、特に限定されないが、通常、(A)成分または(A)成分および(B)成分を反応させて得られる重合ロジンエステル100重量部に対し、0.01〜5.0重量部、好ましくは0.01〜2.0重量部である。当該範囲にすることにより、効率的に硫黄分を除去し、ロジン由来の炭素−炭素二重結合の水素化を抑制することができる。また、加熱は、通常、100〜300℃程度、好ましくは150〜270℃とする。温度を当該範囲にすることにより、効率的に硫黄分を除去し、ロジン由来の炭素−炭素二重結合の水素化を抑制することができる。
【0016】
本発明に用いられる(A1)成分は、前記(A)成分に脱硫処理を施すことにより得られる。当該脱硫処理により得られた(A1)成分は、硫黄分が、100ppm以下であり、原料として未精製ロジンを用いた場合には、色調が7〜10(ガードナー色数)程度で、軟化点(環球法)が100〜150℃程度である。なお、原料として、精製ロジンを用いた場合には、色調が4〜7(ガードナー色数)程度で、軟化点(環球法)が100〜150℃程度、酸価は30mgKOH/g以下、好ましくは20mgKOH/g以下である。硫黄分が100ppmを超える場合には、長期間保存後に水素化、エステル化しても淡色化が十分に行なえない場合があるため好ましくない。
【0017】
本発明に用いられる(A2)成分は、(A)成分を水素化後、前述の脱硫処理をすることにより得られる。水素化は、特に限定されず、公知の方法により行なうことができる。具体的には、例えば、水素化触媒の存在下、水素雰囲気下で、通常1〜25MPa、好ましくは5〜20MPaの水素加圧下で、(A)成分を加熱することにより行なう。水素化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、ルテニウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等、各種公知のものを使用することができる。これらのなかでは、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたは白金系触媒が水素化効率(水素化率が良い、水素化時間が短い)の点で好ましい。該触媒の使用量は、(A)成分100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜2.0重量部である。また、水素化温度は100〜300℃、好ましくは150〜290℃である。
【0018】
このようにして得られた(A2)成分は、硫黄分が、100ppm以下であり、原料として未精製ロジンを用いた場合には、色調が7〜10(ガードナー色数)程度で、軟化点(環球法)が100〜150℃程度、酸価は30mgKOH/g以下、好ましくは20mgKOH/g以下である。なお、原料として、精製ロジンを用いた場合には、色調が4〜7(ガードナー色数)程度で、軟化点(環球法)が100〜150℃程度である。硫黄分が100ppmを超える場合には、長期間保存後に水素化、エステル化しても淡色化が十分に行なえない場合があるため好ましくない。
【0019】
本発明に用いられる(A3)成分は、(A)成分を水素化することにより得られる。水素化は(A2)成分の製造の際の水素化と同様の条件で行なうことができる。
【0020】
本発明に用いられる(B)成分としては、水酸基を有する化合物であれば特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デシルアルコール、ラウリルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール、ジペンタエリスリトール等の5価以上のアルコール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明の(1)法による水素化重合ロジンエステルの製造方法は、前述の方法により得られた(A1)成分を水素化後、(B)成分と反応させるものである。
(A1)成分の水素化は、(A2)成分の製造の際に用いられる水素化と同様にして行なうことができる。
【0022】
(A1)成分の水素化物と(B)成分の反応は特に限定されず、公知のロジンエステルの製造方法を採用することができる。
【0023】
(A1)成分の水素化物と(B)成分の使用量は、目的とする重合ロジンエステルに応じて適宜選択できるが、通常、(B)の水酸基/(A1)成分中のカルボキシル基のモル比を0.5〜1.5程度とすることが好ましい。エステル化反応は、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、通常、200〜300℃程度(好ましくは、240〜280℃)で、2〜20時間程度(好ましくは、3〜16時間)、生成する水を除きながら反応させればよい。なお、当該反応には必要に応じて、エステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、酢酸等の酸触媒、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物等を使用することができる。なお、酸触媒として、硫黄分を含有する触媒を使用することは、得られる重合ロジンエステルの加熱安定性等に悪影響を及ぼすおそれがあるため好ましくない。
【0024】
本発明の(2)法による水素化重合ロジンの製造方法は、前記(A2)成分を、(B)成分と反応させるものである。(A2)成分と(B)成分の反応は、(A1)成分の水素化物と(B)成分の反応において、(A1)成分の水素化物を(A2)成分に置換した他は同様にして行なうことができる。
【0025】
本発明の(3)法による水素化重合ロジンの製造方法は、前記(A3)成分を、(B)成分と反応させた後に、脱硫処理をするものである。(A3)成分と(B)成分の反応は、(A1)成分の水素化物と(B)成分の反応において、(A1)成分の水素化物を(A3)成分に置換した他は同様にして行なうことができる。また、脱硫処理は前述の方法を採用することができる。
【0026】
このようにして得られた水素化重合ロジンエステルは、硫黄分の含有量が100ppm以下である。特に重合ロジンの製造の際、精製ロジンを用いた場合には、色調(ガードナー色数)が1以下、ハーゼン色数で30〜300程度、好ましくは30〜200であり、軟化点は100〜190℃程度である。また、酸価は30mgKOH/g以下程度、好ましくは20mgKOH/g以下である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、各例中、%は重量基準である。なお、軟化点(環球法)はJIS K5902に、酸価は、JIS K5902に従い、また、色調のガードナー色数は、対象となる樹脂10gを試験管にとり、窒素気流下、加熱溶融させたものをキシダ化学(株)製ガードナーカラースタンダードと比色することにより決定した値である。以下色調(ガードナー色数)は本方法により測定した値であり、ハーゼン色数はAPHA法(日本油化学協会 基準油脂分析試験法2.2.1.4−1996による)により決定した値である。また、イオウ量は蛍光X線分析(ZSK100e、理学電気工業(株)製)で測定した値である。
【0028】
実施例1
(1)精製
酸価170.0mgKOH/g、軟化点78℃、色調ガードナー6の未精製ロジン(中国産ガムロジン)を窒素シール下に400Paの減圧下で蒸留し、表1に示す主留を精製ロジンとした。当該精製ロジンは、酸価178.4mgKOH/g、軟化点(環球法)88℃、色調(ガードナー色数)3であった。
【0029】
【表1】


【0030】
(2)重合反応
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、(1)で得られた精製ロジン900g、キシレン900g、塩化亜鉛40gおよび硫酸6.0gを仕込み、窒素気流下100℃で6時間、重合反応を行なった。反応生成物のキシレン溶液1845.9gを濃塩酸7gおよび温水500gを加えて洗浄した後、更に各500gの温水にて2回洗浄した。洗浄後のキシレン溶液は液温200℃未満、減圧度1300Paの条件下でキシレンを留去した後、更に液温200〜275℃、減圧度400Paの条件下で精製ロジンの分解物及び未反応精製ロジン計70gを留去して、酸価135.3mgKOH/g、軟化点146℃、色調(ガードナー色数)5の精製重合ロジン471gを得た。GPC測定により、当該精製重合ロジン中の重合物含有率は71.3%、単量体(精製ロジン)は27.2%、分解物は1.6%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該精製重合ロジン中の硫黄量は200ppmであることが認められた。
【0031】
(3)脱硫反応
ついでオートクレーブ反応装置に、(2)で得た精製重合ロジン150g、脱硫触媒(N−113、日揮化学(株)製)3.0g、およびシクロヘキサン150gを仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を水素にて3MPaに加圧後、攪拌下に240℃まで昇温して、同温度で1時間脱硫反応を行い、酸価137.0mgKOH/g、軟化点145℃、色調(ガードナー色数)5の脱硫精製重合ロジンを得た。GPC測定により当該脱硫精製重合ロジン中の重合物含有率は71.0%、単量体(精製ロジン)は27.5%、分解物は1.5%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該脱硫精製重合ロジン中の硫黄量は95ppmであることが認められた。
【0032】
(4)水素化反応
ついでオートクレーブ反応装置に、(3)で得た脱硫精製重合ロジン150g、水素化触媒として5%パラジウムカーボン(含水率50%)1.5g、およびシクロヘキサン150gを仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を水素にて5MPaに加圧後、攪拌下に240℃まで昇温、昇温後水素圧を9MPaに昇圧して同温度にて3時間水素化反応を行い、酸価145.2mgKOH/g、軟化点140℃、色調(ハーゼン色数)50の水素化重合ロジンを得た。GPC測定により、当該水素化重合ロジン中の重合物含有率は70.3%、単量体(精製ロジン)は27.7%、分解物は2.0%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジン中の硫黄量は62ppmであることが認められた。
【0033】
(5)エステル化反応
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、(4)で得られた水素化重合ロジン1,200g、ペンタエリスリトール135.2gおよびグリセリン6.7gを仕込み、窒素気流下250℃で2時間および280℃で10時間エステル化反応を行い、酸価18.1mgKOH/g、軟化点160.5℃、色調(ハーゼン色数)125の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は46ppmであることが認められた。
【0034】
実施例2
実施例1(5)において、使用する重合ロジンを実施例1(4)で得られた水素化重合ロジンを製造後、2ヶ月間室温で保管したものに変更した以外は、同様にエステル化反応を行い、酸価17.0mgKOH/g、軟化点161℃、色調(ハーゼン色数)175の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は48ppmであることが認められた。
【0035】
実施例3
実施例1(4)において、使用する脱硫精製重合ロジンを、実施例1(3)で得られた脱硫精製重合ロジンを製造後、2ヶ月間室温で保管したものに変更した以外は、実施例1(4)と同様に水素化を行い、酸価144.4mgKOH/g、軟化点138℃、色調(ハーゼン色数)80の無色重合ロジンを得た。GPC測定(面積比)により、当該水素化重合ロジン中の重合物含有率は71.4%、単量体(精製ロジン)は26.4%、分解物は2.2%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジン中の硫黄量は66ppmであることが認められた。
ついで実施例1(5)と同様にエステル化反応を行い、酸価19.2mgKOH/g、軟化点160℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は57ppmであることが認められた。
【0036】
実施例4
実施例3において、使用する水素化重合ロジンを実施例3で用いる水素化重合ロジンを2ヶ月間室温で保存したものに変更した以外は、同様にエステル化反応を行い、酸価18.4mgKOH/g、軟化点160.5℃、色調(ハーゼン色数)200の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は62ppmであることが認められた。
【0037】
実施例5
実施例1(4)において、使用する重合ロジンを実施例1(2)で得られる精製重合ロジンに変更した以外は、同様に水素化を行い、酸価145.1mgKOH/g、軟化点140℃、色調(ハーゼン色数)50の水素化重合ロジンを得た。当該水素化重合ロジン中の重合物含有率は70.9%、単量体(精製ロジン)は26.9%、分解物は2.2%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジン中の硫黄量は157ppmであることが認められた。このものを、実施例1(3)と同様に脱硫を行い、酸価145mgKOH/g、軟化点140℃、色調(ハーゼン色数)50の水素化重合ロジンを得た。当該水素化重合ロジン中の重合物含有率は70.8%、単量体(精製ロジン)は27.0%、分解物は2.2%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジン中の硫黄量は63ppmであることが認められた。
ついで得られた水素化重合ロジンを製造後、2ヶ月間室温で保管した後、実施例1(5)と同様にエステル化反応を行い、酸価18.0mgKOH/g、軟化点160.5℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は50ppmであることが認められた。
【0038】
実施例6
実施例1(5)において、使用する重合ロジンを実施例5で得られる未脱硫水素化重合ロジンに変更した以外は、同様にエステル化反応を行い、酸価18.2mgKOH/g、軟化点160.5℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は145ppmであることが認められた。
ついで実施例1(3)と同様に脱硫を行い、酸価18.2mgKOH/g、軟化点160.5℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は58ppmであることが認められた。
【0039】
実施例7
実施例1(5)において、使用するアルコール(ペンタエリスリトールとグリセリンの混合物)をグリセリン120.0gに変更した以外は、同様にエステル化を行い、酸価12.4mgKOH/g、軟化点148℃、色調(ハーゼン色数)125の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は43ppmであることが認められた。
【0040】
実施例8
実施例1(4)で得られた水素化重合ロジンを製造後2ヶ月間室温で保管したものに変更した以外は、実施例7と同様にエステル化反応を行い、酸価13.5mgKOH/g、軟化点147.5℃、色調(ハーゼン色数)175の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は48ppmであることが認められた。
【0041】
実施例9
実施例7において、使用する重合ロジンを実施例3で使用した水素化重合ロジンに変更した以外は同様にエステル化を行い、酸価14.0mgKOH/g、軟化点147.5℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は56ppmであることが認められた。
【0042】
実施例10
実施例7において、使用する重合ロジンを実施例3で使用した水素化重合ロジンを2ヶ月室温で保存したものに変更した以外は同様にエステル化を行い、酸価12.6mgKOH/g、軟化点148℃、色調(ハーゼン色数)200の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は57ppmであることが認められた。
【0043】
実施例11
実施例7において、使用する重合ロジンを、実施例1において(3)脱硫と(4)水素化の工程の順序を入れ替えて調製した脱硫水素化重合ロジンを製造後、2ヶ月間室温で保管したものに変更した以外は、同様にエステル化を行い、酸価13.1mgKOH/g、軟化点148.0℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は53ppmであることが認められた。
【0044】
実施例12
実施例7において、使用する重合ロジンを、実施例1において(3)脱硫をせずに(4)水素化して調製した未脱硫水素化重合ロジンに変更した以外は、同様にエステル化を行い、酸価13.0mgKOH/g、軟化点148.0℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は130ppmであることが認められた。
ついで実施例1(3)と同様に脱硫を行い、酸価13.0mgKOH/g、軟化点148.0℃、色調(ハーゼン色数)150の水素化重合ロジンを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジン中の硫黄量は52ppmであることが認められた。
【0045】
比較例1
実施例1(4)において使用する重合ロジンを実施例1(1)の精製と実施例1(3)の脱硫処理を行わない未精製未脱硫重合ロジンを用いた以外は同様に水素化し、酸価138.3mgKOH/g、軟化点140℃、色調(ガードナー色数)4の水素化重合ロジンを得た。当該水素化重合ロジン中の重合物含有率は70.7%、単量体(精製ロジン)は26.8%、分解物は2.5%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジン中の硫黄量は170ppmであることが認められた。
ついで実施例1(5)と同様にエステル化反応を行い、酸価19.2mgKOH/g、軟化点160℃、色調(ガードナー色数)6の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は146ppmであることが認められた。
【0046】
比較例2
実施例1(4)において使用する重合ロジンを、実施例1(2)で得られた未脱硫重合ロジンを製造後2ヶ月間室温で保管したものに変更した以外は同様に水素化を行い、酸価142.3mgKOH/g、軟化点140℃、色調(ガードナー色数)3の水素化重合ロジンを得た。当該水素化重合ロジン中の重合物含有率は71.8%、単量体(精製ロジン)は25.9%、分解物は2.3%であることが認められ、蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジン中の硫黄量は160ppmであることが認められた。
ついで実施例1(5)と同様にエステル化反応を行い、酸価18.5mgKOH/g、軟化点160.5℃、色調(ガードナー色数)4の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は132ppmであることが認められた。
【0047】
比較例3
実施例7において、使用する重合ロジンを比較例2で使用した水素化重合ロジンに変更した以外は同様にして、酸価13.2mgKOH/g、軟化点147.5℃、色調(ガードナー色数)4の水素化重合ロジンエステルを得た。蛍光X線測定により、当該水素化重合ロジンエステル中の硫黄量は127ppmであることが認められた。
【0048】
(性能評価)各実施例および比較例にて得た各種の水素化重合ロジンエステルを以下の方法にて性能評価した。なお、比較例4〜6においては下記の粘着付与樹脂を使用した。比較例4:ペンセルD−160(荒川化学工業(株)製)、比較例5:パインクリスタルKE−311(荒川化学工業(株)製)、比較例6:パインクリスタルKE−100(荒川化学工業(株)製)結果は表2〜4に示す。
【0049】
(加熱安定性)内径1.5cm、高さ15cmの試験管にサンプル10gを入れ、蓋をしないまま200℃の循風乾燥機に静置して経時による色調(ガードナー色数)の変化を観察した。
【0050】
【表2】


【0051】
(粘接着性能)
上記実施例および比較例により調製したロジン系樹脂を粘着付与剤として用い、後添加方により(ベースアクリル系重合体組成物と粘着付与樹脂を混合する方法により得られる粘接着剤、以下、後添加法と言う場合には当該方法によるものである。)アクリルエマルジョン系における粘接着性能の評価を行った。以下に、その詳細について説明し、結果を表3に示す。
なお、参考例として、粘着付与剤を添加せずにアクリルエマルジョンのみの粘接着性能の評価も行った。
【0052】
(樹脂エマルジョンの調整方法)
実施例および比較例で得た樹脂100部をトルエン60部に80℃にて約1時間溶解した後、乳化剤(DKSディスコートN−14、第一工業製薬(株)製)を固形分換算で3部及び水160部を添加し、80℃にて1時間200rpmで攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(APVガウリン社製)により400MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物200部を仕込み、50℃、13kPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い樹脂エマルジョン(固形分50%)123部を得た。
【0053】
(性能評価用の試料フィルムの作成)
市販のアクリルエマルジョン(ウルトラゾールW−105、ガンツ化成(株)製)と調製した樹脂エマルジョンを固形分90/10重量部となるように配合、よく混合し、ついで厚み38μmPETフィルムに、厚み100μm用のアプリケーターにて直接塗工し、105℃循風乾燥機中で5分間乾燥させて試料フィルムを作成した。試料フィルムの厚みは30μmであった。
アクリル系重合体組成物の粘・接着特性の評価は、以下の方法により実施した。
【0054】
(相溶性)
粘着フィルムに500nmの光を照射し、その透過率(%T)を測定した。透過率はU−3210形自記分光光度計、(株)日立製作所製を使用し、測定した。
【0055】
(保持力)
PSTC−7(クリープ法)に準拠し、試料フィルム(25mm×25mm)をステンレス板に貼り付け、60℃で1kgの荷重を試料フィルムに加え、試料フィルムが落下するまでの時間(h)を測定した。
【0056】
(接着力)
試料フィルム(長さ150mm×巾25mm)をポリプロピレン板(PE)およびステンレス板(SUS)にそれぞれ貼り付け、PSTC−1に準拠し、剥離速度300mm/minで180°のテープ長さ方向に剥離を行い、そのときのテープ巾25mmあたりの接着力(g/25mm)を測定した。
【0057】
(タック性)
ボールタック試験は、JIS Z 0237に記載されたJ.DOW法により、角度30°の傾斜した距離10cmの助走路で、試料フィルムの粘着面上を転がし、試料フィルム長さ10cm以内で停止した最大のボールナンバー数を求めることにより行った。
プローブタック試験は、ASTM D−2979に準拠し、NSプローブタックテスター使用し、プローブAA#40研磨、荷重100g/cm、ドエルタイム1秒で行った。
【0058】
【表3】



【出願人】 【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
【出願日】 平成19年3月23日(2007.3.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−231373(P2008−231373A)
【公開日】 平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願番号】 特願2007−77091(P2007−77091)