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【発明の名称】 ポリエステルイミドおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】長谷川 匡俊
【氏名】加藤 明宏
【課題】高いガラス転移温度、低い線熱膨張(係数)、低い吸水率、高い弾性率、十分な靭性、十分な密着性を併せ持つポリエステルイミドおよびその製造方法を提供する。

【構成】一般式(2)で表される反復単位を有するポリエステルイミド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体であって、

【化1】


ここで、Aは2価の芳香族基あるいは脂環族基を表すポリエステルイミド前駆体。
【請求項2】
固有粘度が0.1〜15.0dL/gの範囲である、請求項1に記載のポリエステルイミド前駆体。
【請求項3】
一般式(2)で表される反復単位を有するポリエステルイミドであって、

【化2】


ここで、Aは2価の芳香族基あるいは脂環族基を表すポリエステルイミド。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のポリエステルイミド前駆体を加熱あるいは脱水試薬を用いて環化反応(イミド化)させることを特徴とする、請求項3に記載のポリエステルイミドの製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のポリエステルイミド前駆体を経由することなしに、ポリエステルイミド前駆体の原料である、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中、高温下で重縮合反応することを特徴とする、請求項3に記載のポリエステルイミドの製造方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のポリエステルイミド前駆体のワニスを金属箔上に塗布、乾燥後、加熱あるいは脱水試薬を用いてイミド化させることを特徴とする、金属層と請求項3に記載のポリエステルイミド樹脂層の積層板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の積層板の金属層をエッチングすることを特徴とするフレキシブルプリント配線(FPC)基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は高いガラス転移温度、低い線熱膨張(係数)、低い吸水率、高い弾性率及び十分な靭性を併せ持つ、フレキシブルプリント配線(FPC)基板、テープオートメーションボンディング(TAB)用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板に利用でき、特にFPC基板として有用なポリエステルイミドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質などの特性を併せ持つことから、現在、FPC基板、TAB用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。ポリイミドはこれらの特性以外にも、製造方法の簡便さ、極めて高い膜純度、入手可能な種々のモノマーを用いた物性改良のしやすさといったことから、近年益々その重要性が高まっている。
【0003】
電子機器の軽薄短小化が進むにつれてポリイミドへの要求特性も年々厳しさを増し、ハンダ耐熱性だけに留まらず、熱サイクルや吸湿に対するポリイミドフィルムの寸法安定性、透明性、金属箔との接着性、成型加工性、スルーホール等の微細加工性等、複数の特性を同時に満足する多機能性ポリイミド材料が求められるようになってきている。
【0004】
近年、FPC基板としてのポリイミドの需要が飛躍的に増加している。FPC基板の原反(銅張積層板、FCCL)の構成は主に3つの様式に分類される。即ち、1)ポリイミドフィルムと銅箔とをエポキシ系接着剤等を用いて貼り付ける3層タイプ、2)銅箔にポリイミドワニスの塗付後乾燥または、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)ワニスを塗布後、乾燥・イミド化するか、あるいは蒸着・スパッタ等によりポリイミドフィルム上に銅層を形成する無接着剤2層タイプ、3)接着層として熱可塑性ポリイミドを用いる擬似2層タイプが知られている。ポリイミドフィルムに高度な寸法安定性が要求される用途では接着剤を使用しない2層FCCLが有利である。寸法安定性は、熱膨張及び吸湿の両方に対して求められている。
【0005】
FPC基板としてのポリイミドは実装工程における様々な熱サイクルに曝されて寸法変化が起こる。これをできるだけ抑えるためには、ポリイミドのガラス転移温度が工程温度よりも高いことに加えて、Tg以下での線熱膨張(係数)ができるだけ低いことが望ましい。後述するようにポリイミド層の線熱膨張(係数)の制御は2層FCCL製造工程中に発生する残留応力の低減の観点からも極めて重要である。
【0006】
多くのポリイミドは有機溶媒に不溶で、Tg以上でも溶融しないため、ポリイミドそのものを成型加工することは通常容易ではない。そのためポリイミドは一般に、無水ピロメリット酸(PMDA)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物と4,4’−オキシジアニリン(ODA)等の芳香族ジアミンとをジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性有機溶媒中で等モル反応させて、先ず高重合度のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を重合し、このワニスを銅箔上に塗付し、250〜400℃で加熱脱水閉環(イミド化)して製膜される。
【0007】
残留応力は、高温でのイミド化反応後にポリイミド/金属基板積層体を室温へ冷却する過程で発生し、FCCLのカーリング、剥離、膜の割れ等、深刻な問題がしばしば起こる。
【0008】
熱応力低減の方策として、絶縁膜であるポリイミド自身を低熱膨張化することが有効である。殆どのポリイミドでは線熱膨張(係数)が50〜200℃の範囲にて40〜100ppm/Kの範囲にあり、金属箔例えば銅の線熱膨張(係数)17ppm/Kよりもはるかに大きいため、銅の値に近い、およそ20ppm/K以下を示す低熱膨張性ポリイミドの研究開発が行われている。
【0009】
現在実用的な低熱膨張性ポリイミド材料としては3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンから形成されるポリイミドが最もよく知られている。このポリイミドフィルムは、膜厚や作製条件にもよるが、5〜10ppm/Kと非常に低い線熱膨張(係数)を示すことが知られている(例えば非特許文献1参照)が、低吸水性は示さない。
【0010】
ポリイミドの寸法安定性は、熱サイクルだけでなく吸湿に対しても要求される。従来のポリイミドでは2〜3wt%(以下、%)も吸湿する。絶縁層の吸湿は、高密度配線や多層配線においては、寸法変化に伴う回路の位置ずれ、特に、ポリイミド/導体界面でのコロージョン、イオンマイグレーション、絶縁破壊等、電気特性の低下という問題を生じさせる可能性があり、改善すべき課題であった。そのため絶縁膜としてのポリイミド層はできるだけ吸水率が低いことが求められている。
【0011】
低吸水率を実現するための分子設計として、例えばトリメリット酸無水物とヒドロキノンから誘導される式(3)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を使用してポリイミド骨格へのパラ芳香族エステル結合を導入することが有効であると報告されている(例えば、非特許文献2参照)。

【化1】


【0012】
しかしながら式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物をモノマー成分として使用すると、構造単位の剛直性および直線性が極めて高いため、これより得られるポリイミド膜が場合によっては結晶化することで脆弱化したり、金属箔との密着性が低下するといった問題点や、ポリイミド前駆体重合時に生成したポリイミド前駆体の溶解性が十分でないために場合によっては沈殿が生じ重合が均一に進行しないといった問題が指摘されている。式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物に適当な疎水性置換基を導入することで、膜物性を大きく低下することなく、上記問題点が解決され、同時に更なる低吸水率化および低誘電率化も期待される。
【0013】
重合反応性や製膜加工性を保持したまま低線熱膨張(係数)(30ppm/K以下)、低吸水率(1.5%以下)、十分な膜靭性、ハンダ耐熱性、且つ金属箔例えば銅箔との密着性を満足するポリイミドを得ることは分子設計上容易ではなく、このような要求特性を満足する実用的な材料は今のところ殆ど知られていないのが現状である。
【非特許文献1】Macromolecules,29,7897(1996)
【非特許文献2】高分子討論会予稿集,53,4115(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は高いガラス転移温度、低い線熱膨張(係数)、低い吸水率、高い弾性率、十分な靭性且つ金属箔との十分な密着性を併せ持つポリエステルイミドおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明のポリエステルイミドを用いた積層板及びプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の問題を鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、下記一般式(1)で表されるポリエステルイミド前駆体ワニスを銅箔等の導体基板上に塗付・乾燥してフィルムとし、これを熱的に又脱水試薬等を用いてイミド化して、形成した下記一般式(2)で表されるポリエステルイミドフィルムが、上記産業分野において極めて有益な材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち本発明は以下に示すものである。
1.一般式(1)で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体であって、

【化2】


ここで、Aは2価の芳香族基あるいは脂環族基を表すポリエステルイミド前駆体。

2.固有粘度が0.1〜15.0dL/gの範囲である、請求項1に記載のポリエステルイミド前駆体。

3.一般式(2)で表される反復単位を有するポリエステルイミドであって、

【化3】


ここで、Aは2価の芳香族基あるいは脂環族基を表すポリエステルイミド。

4.請求項1または請求項2に記載のポリエステルイミド前駆体を加熱あるいは脱水試薬を用いて環化反応(イミド化)させることを特徴とする、請求項3に記載のポリエステルイミドの製造方法。

5.請求項1または請求項2に記載のポリエステルイミド前駆体を経由することなしに、ポリエステルイミド前駆体の原料である、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中、高温下で重縮合反応することを特徴とする、請求項3に記載のポリエステルイミドの製造方法。

6.請求項1または請求項2に記載のポリエステルイミド前駆体のワニスを金属箔上に塗布、乾燥後、加熱あるいは脱水試薬を用いてイミド化させることを特徴とする、金属層と請求項3に記載のポリエステルイミド樹脂層の積層板の製造方法。

7.請求項6に記載の積層板の金属層をエッチングすることを特徴とするフレキシブルプリント配線(FPC)基板の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高いガラス転移温度(Tg)、低い線熱膨張(係数)、低い吸水率、高い弾性率、十分な靭性、且つ金属箔との十分な密着性を併せ持つポリエステルイミド及びその製造方法を提供することができる。本発明のポリエステルイミドは、フレキシブルプリント配線(FPC)基板、テープオートメーションボンディング(TAB)用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にFPC基板として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ポリイミドを低熱膨張化するための分子設計として、主鎖骨格をできるだけ直線状で剛直に(内部回転により多様なコンホメーションをとりにくく)する必要がある。しかし一方で、これによりポリマー鎖の絡み合いが減少し、フィルムが脆弱化する恐れがある。また、ポリイミド骨格へのエーテル結合等の屈曲性単位の過大な導入は膜靭性の向上には大きく寄与するが、低熱膨張特性の発現を妨げる
【0019】
本発明において着目したパラ芳香族エステル結合はエーテル結合に比べて内部回転障壁が高く、コンホメーション変化が比較的妨げられているため、剛直構造単位として振舞い、且つポリイミド主鎖にある程度の柔軟さも付与し、可撓性のフィルムを与えることが期待される。
【0020】
またエステル結合はアミド結合やイミド結合よりも単位体積当たりの分極率が低いため、ポリイミドへのエステル結合の導入は低吸水率化にも有利である。
【0021】
本発明のポリエステルイミド前駆体は下式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を用いて製造される。

【化4】


【0022】
ポリイミドの低吸水率化のためにしばしばフッ素化モノマーが使用されるが、該テトラカルボン酸二無水物はフッ素基を一切含有しないため、フッ素化モノマー使用時にしばしば見られるガラス転移温度や金属箔との密着性が低下する懸念がなく、更にポリイミドを低コストで製造できるといった利点もある。
【0023】
該テトラカルボン酸二無水物の特徴の一つは分子内に疎水基として振舞う芳香環と2つのエステル基を含有し、これらが全てパラ結合している点である。これにより、低吸水率と低線熱膨張(係数)を同時に実現することが可能になる。
【0024】
テトラカルボン酸二無水物モノマー中の酸無水物基の重合反応性は、得られるポリエステルイミドフィルムの靭性に大きな影響を及ぼす。酸無水物基の求電子性即ちジアミンとの重合反応性が十分高くないと、高重合体が得られず、結果としてポリマー鎖同士の絡み合いが低くなり、ポリエステルイミドフィルムが脆弱になる恐れがある。本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は高い反応性を有するためそのような懸念がない。
【0025】
該テトラカルボン酸二無水物のもう一つの特徴は置換基の効果である。置換基のない式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物上にメトキシ基を導入することで、疎水性を更に増加することができる。これにより、本発明のポリエステルイミドは置換基がないものに比べて更に吸水率が低下することが期待される。またメトキシ置換基は分極率が低く嵩高いため、ポリステルイミドの誘電率の低下も期待される。
【0026】
更に置換基のない式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用した場合、これより得られるポリエステルイミド前駆体ワニスを金属箔上に塗付・乾燥・熱イミド化を経てポリエステルイミドフィルムを金属箔上に直接形成した際に、十分な密着力が得られない恐れがある。これは式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が置換基を含有せず、金属箔表面と相互作用しにくいためである。一方、本発明の式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用して得られたポリエステルイミドフィルムでは、メトキシ基と金属箔表面との相互作用により、密着力の改善が期待される。
【0027】
置換基のない式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物へ適当な置換基を導入することで、上記の問題を解決することが可能となるが、メトキシ基よりも大きな(嵩高い)置換基の導入や、メトキシ基といえどもテトラカルボン酸二無水物分子中に2つ以上の置換基の導入は、樹脂とした際にポリマー鎖間のパッキングを乱しすぎてガラス転移温度の低下や線熱膨張係数の増大を招く懸念がある。
【0028】
原料の入手のしやすさおよびコスト上の観点から、メトキシ置換基はトリメリット酸残基の芳香環上よりは、中央のヒドロキノン残基上に導入することが好ましい。これらの観点から置換基を導入したエステル基含有テトラカルボン酸二無水物としては、本発明の式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物が最適である。
【0029】
極めて剛直な構造のジアミンを用いた場合、本発明に係るポリエステルイミドフィルムは銅等の金属箔より低い線熱膨張(係数)を示すことがある。この場合、適当量の4,4’−オキシジアニリン等の屈曲性モノマーを共重合成分として併用することで、ポリエステルイミドフィルムの線熱膨張(係数)を金属箔の値に完全に一致させることができる。屈曲性モノマーの併用によりポリエステルイミドフィルムの靭性も大幅に改善することができる。
【0030】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明するが、これらは本発明の実施形態の一例であり、これらの内容に限定されない。
【0031】
本発明は式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を原料とし、各種ジアミンと組み合わせて重合反応させることにより産業上極めて有用なポリエステルイミドを提供することができる。該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の反応性、剛直性、疎水性、置換基の適度な立体的嵩高さという構造上の特徴から、樹脂とした際に低線熱膨張(係数)、高弾性率、低吸水率、高ガラス転移温度、高膜靭性、密着性という従来の材料では得ることのできなかった物性を有する材料とすることができる。
【0032】
<ポリエステルイミド前駆体の製造方法>
本発明に係るポリエステルイミド前駆体を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。より具体的には、以下の方法により得られる。まずジアミンを重合溶媒に溶解し、これに該テトラカルボン酸二無水物粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、0〜100℃、好ましくは20〜60℃で0.5〜100時間好ましくは1〜24時間攪拌する。この際モノマー濃度は5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。ポリエステルイミド前駆体の重合度が増加しすぎて、重合溶液が攪拌しにくくなった場合は、適宜同一溶媒で希釈することもできる。
【0033】
ポリエステルイミドフィルムの靭性の観点からポリエステルイミド前駆体の重合度はできるだけ高いことが望ましい。上記モノマー濃度範囲で重合を行うことによりポリマーの重合度が十分高く、モノマー及びポリマーの溶解性も十分確保することができる。また、脂肪族ジアミンを使用した場合、重合初期にしばしば塩形成が起こり、重合が妨害されるが、塩形成を抑制しつつできるだけ重度を上げるためには、重合時のモノマー濃度に注意を払うべきである。
【0034】
また、ポリエステルイミドフィルムの靭性およびワニスのハンドリングの観点から、ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は好ましくは0.1〜15.0dL/gの範囲であり、0.5〜5.0dL/gの範囲であることがより好ましい。
【0035】
本発明に係るポリエステルイミドフィルムの要求特性およびポリエステルイミド前駆体の重合反応性を損なわない範囲で、式(1)で表されるポリエステルイミド前駆体重合の際に使用可能な芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−4’−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノ−2−メチルフェニル)テレフタレート、等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
【0036】
本発明に係るポリエステルイミドフィルムの要求特性およびポリエステルイミド前駆体の重合反応性を損なわない範囲で、式(1)で表されるポリエステルイミド前駆体重合の際に使用可能な脂肪族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
【0037】
ポリエステルイミドフィルムの低熱膨張特性発現という観点から、剛直で直線的な構造を有するジアミン即ち、p−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、p−ターフェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノ−2−メチルフェニル)テレフタレート、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン等をジアミン成分として使用することが好ましい。この際、上記ジアミンの含有量は全ジアミン使用量の5〜100モル%、好ましくは40〜90モル%である。
【0038】
本発明に係るポリエステルイミド前駆体の重合反応性、ポリエステルイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、本発明の式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として併用することができる。その際に使用可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、メチルハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。また、これらを2種類以上用いてもよい。
【0039】
本発明に係るポリエステルイミド前駆体の重合反応性、ポリエステルイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、本発明の式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外に脂肪族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として併用することができる。使用可能な脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’ ,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
【0040】
本発明の式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物と併用する上記テトラカルボン酸二無水物の含有量は全テトラカルボン酸二無水物使用量の0〜99モル%、好ましくは1〜90モル%の範囲である。
【0041】
重合反応の際使用される溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒が好ましいが、原料モノマーと生成するポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく、特にその構造には限定されない。具体的に例示するならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチルーγ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、0−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども添加して使用できる。
【0042】
本発明のポリエステルイミド前駆体はその重合溶液を、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥し、粉末として単離することもできる。
【0043】
<ポリエステルイミドの製造方法>
本発明のポリエステルイミドは、上記の方法で得られたポリエステルイミド前駆体を脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。この際ポリエステルイミドの使用可能な形態は、フィルム、金属箔/ポリエステルイミドフィルム積層体、粉末、成型体および溶液が挙げられる。
【0044】
まずポリエステルイミドフィルムを製造する方法について述べる。ポリエステルイミド前駆体の重合溶液(ワニス)をガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたポリエステルイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、200〜430℃、好ましくは250〜400℃で加熱することで本発明のポリエステルイミドフィルムを製造することができる。加熱温度はイミド化の閉環反応を十分に行なうという観点から200℃以上、生成したポリエステルイミドフィルムの熱安定性の観点から430℃以下が好ましい。またイミド化は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中で行っても、差し支えない。
【0045】
またイミド化反応は、熱処理に代えて、ポリエステルイミド前駆体フィルムをピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬することによって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめポリエステルイミド前駆体ワニス中に投入・攪拌し、それを上記基板上に流延・乾燥することで、部分的にイミド化したポリエステルイミド前駆体フィルムを作製することもでき、これを更に上記のように熱処理することでポリエステルイミドフィルムが得られる。
【0046】
ポリエステルイミド前駆体の重合溶液をそのままあるいは同一の溶媒で適度に希釈した後150〜200℃に加熱することで、ポリイミド自体が用いた溶媒に溶解する場合、本発明のポリエステルイミドの溶液(ワニス)を容易に製造することができる。この際、イミド化の副生成物である水等を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加しても差し支えない。また触媒としてγ―ピコリン等の塩基を添加することができる。得られたワニスを大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリエステルイミドを粉末として単離することもできる。またポリエステルイミド粉末を上記重合溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることができる。ポリエステルイミドが溶媒に不溶な場合は、結晶性のポリエステルイミド粉末を沈殿物として得ることができる。
【0047】
本発明のポリエステルイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中高温で反応させることにより、ポリエステルイミド前駆体を経由することなく製造することができる。ポリエステルイミド前駆体を経由することなくとは、ポリエステルイミド前駆体を単離することなく、一段階で重合することができることを意味する。この際、反応溶液は反応促進の観点から、130〜250℃、好ましくは150〜200℃の範囲に保持するとよい。またポリエステルイミドが重合に用いた溶媒に不溶な場合、ポリエステルイミドは沈殿として得られ、可溶な場合はポリエステルイミドのワニスとして得られる。重合溶媒は特に限定されないが、使用可能な溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が例として挙げられるが、より好ましくはm−クレゾール等のフェノール系溶媒やNMP等のアミド系溶媒が用いられる。これらの溶媒にイミド化反応の副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加することができる。またイミド化触媒としてγ―ピコリン等の塩基を添加することができる。得られたワニスを大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリエステルイミドを粉末として単離することができる。またポリエステルイミドが溶媒に可溶である場合はその粉末を上記溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることができる。
【0048】
上記ポリエステルイミドワニスを基板上に塗布し、40〜400℃、好ましくは100〜300℃で乾燥することによってもポリエステルイミドフィルムを形成することができる。
【0049】
上記のように得られたポリエステルイミド粉末を200〜450℃、好ましくは250〜430℃で加熱圧縮することでポリエステルイミドの成型体を作製することができる。
【0050】
ポリエステルイミド前駆体溶液中にN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドやトリフルオロ無水酢酸等の脱水試薬を添加・撹拌して0〜100℃、好ましくは0〜60℃で反応させることにより、ポリエステルイミドの異性体であるポリエステルイソイミドが生成する。イソイミド化反応は上記脱水試薬を含有する溶液中にポリエステルイミド前駆体フィルムを浸漬することでも可能である。ポリエステルイソイミドワニスを上記と同様な手順で製膜した後、250〜450℃、好ましくは270〜400℃で熱処理することにより、ポリエステルイミドへ容易に変換することができる。
【0051】
本発明のポリエステルイミド前駆体のワニスを金属箔例えば銅箔上に塗付、乾燥後、上記の条件によりイミド化することで、金属層とポリエステルイミド樹脂層の積層板を得ることができる。更に塩化第二鉄水溶液等のエッチング液を用いて金属層を所望する回路状にエッチングすることで、無接着剤型FPC基板の回路を製造することができる。
【0052】
FPC基板の金属箔としては、種々の金属箔を使用することができるが、好ましくは、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などを挙げることができる。これらの金属箔は、マット処理、メッキ処理、クロメート処理、アルミニウムアルコラート処理、アルミニウムキレート処理、シランカップリング剤処理などの表面処理を行ってもよい。金属箔の厚みは、特に限定されないが、好ましくは35μm以下、さらに好ましくは6〜18μmである。
【0053】
FPC基板は、以下の様にして製造することができる。まず、本発明のポリエステルイミド前駆体ワニスを金属箔上にブレードコーターや、リップコーター、グラビアコーター等を用い塗工を行い、その後乾燥させてポリエステルイミド前駆体層を形成する。塗工厚は、ポリエステルイミド前駆体ワニスの固形分濃度に影響される。ポリエステルイミド前駆体層を、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下にて、200〜400℃にて熱イミド化させることによりポリエステルイミド樹脂絶縁層を形成することができる。ポリエステルイミド樹脂絶縁層の厚みは、100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは3〜25μmである。
【0054】
本発明のポリエステルイミドおよびその前駆体中に、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤等の添加物を加えることができる。
【0055】
<用途>
本発明のポリエステルイミドは低線熱膨張(係数)、高弾性率、低吸水率、高ガラス転移温度、十分な膜靭性および金属箔との密着性を有するため、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜およびFPC基板、ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板等に利用でき、特にFPC基板として有用である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、透過法にてポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミドフィルム(5μm厚)の赤外線吸収スペクトルを測定した。
<固有粘度>
0.5重量%のポリエステルイミド前駆体溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークからポリエステルイミドフィルム(20μm厚)のガラス転移温度を求めた。
<線熱膨張(係数):CTE>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の線熱膨張(係数)を求めた。
<5%重量減少温度:Td5
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
<複屈折:Δn>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。この値が高いほど、ポリマー鎖の面内配向度が高いことを意味する。
<誘電率:εcal
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリエステルイミドフィルムの平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて次式:εcal=1.1×nav2により1MHzにおけるポリエステルイミドフィルムの誘電率(εcal)を算出した。
<吸水率>
50℃で24時間真空乾燥したポリエステルイミドフィルム(膜厚20〜30μm)を24℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。殆どの用途においてこの値が低いほど好ましい。
<弾性率、破断伸び>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、フィルムが破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほどフィルムの靭性が高いことを意味する。
【0057】
[合成例]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
ナスフラスコにトリメリット酸クロリド40mmolをいれ、無水テトラヒドロフランに溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した(溶質濃度:25重量%)。更に別のフラスコ中でメトキシヒドロキノン20mmolを無水テトラヒドロフランに溶解し、これにピリジン60mmolを加えてセプタムシールし溶液Bを調製した(溶質濃度:25重量%)。
氷浴中で冷却、攪拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジにて1時間かけて滴下し、その後室温で24時間攪拌した。白色沈殿物を濾別し、これを水洗してピリジン塩酸塩を溶解除去した。洗浄済みの白色沈殿を150℃で24時間真空乾燥し、粗生成物を得た。これを無水1,4−ジオキサンから再結晶し、150℃で24時間真空乾燥して収率86%で、式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を得た。
【0058】
[実施例1]
<ポリエステルイミド前駆体の重合、イミド化およびポリエステルイミドフィルム特性の評価>
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にp−フェニレンジアミン3mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド7.5mLに溶解した後、この溶液に式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物粉末3mmolを徐々に加えた。溶液粘度が急激に増加したため、同一の溶媒を徐々に加えて希釈し、最終的に合計24mLの溶媒を加えた。更に室温で24時間撹拌し透明黄色、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
このポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の固有粘度は3.07dL/gであった。
このポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して得たポリエステルイミド前駆体フィルムを基板上、減圧下250℃で1時間更に350℃続いて370℃で30分熱イミド化を行った後、残留応力を除去するために基板から剥がして380℃で1時間、熱処理を行い、膜厚20μmの淡黄色の透明なポリエステルイミドフィルムを得た。このポリエステルイミドフィルムは180°折曲げ試験によっても破断せず、可撓性を示した。また如何なる有機溶媒に対しても全く溶解性を示さなかった。このポリエステルイミドフィルムについて動的粘弾性測定を行った結果、397℃にガラス転移点(動的粘弾性曲線における損失ピークより決定)らしきピークが観測された。
また線熱膨張(係数)は4.5ppm/Kと極めて低い線熱膨張係数を示した。これは、非常に大きな複屈折値(Δn=0.147)から判断して、ポリエステルイミド鎖の高度な面内配向によるものと考えられる。平均屈折率より見積もった誘電率は3.17であり、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンからなる代表的な全芳香族低線熱膨張(係数)ポリイミドの誘電率(3.5)より低い値であった。この結果はポリイミド骨格中にエステル基を導入した効果である。また5%重量減少温度は窒素中で452℃、空気中で432℃であった。また、吸水率1.21%、引張弾性率(ヤング率)6.49GPa、破断強度0.13GPa、破断伸び3.3%であった。
このようにこのポリエステルイミドは極めて低い線熱膨張(係数)、低吸水率、優れた寸法安定性、高い熱安定性、比較的低い誘電率および膜靭性を示した。表1に物性値をまとめる。得られたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルを図1、図2にそれぞれ示す。
[実施例2]
ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンの代わりに4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエートを用いた以外は実施例1に記載した方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。比較的低い誘電率と共に低い線熱膨張(係数)が得られている。また、低吸水率、優れた寸法安定性、高い熱安定性、および十分な膜靭性を示した。得られたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルを図3、図4にそれぞれ示す。
[実施例3]
ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンの代わりに4−アミノ−2−メチルフェニル−4’−アミノベンゾエートを用いた以外は実施例1に記載した方法に従ってポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。実施例2に記載のポリエステルイミドと同様に、比較的低い誘電率と共に低い線熱膨張(係数)が得られている。また、低吸水率、優れた寸法安定性、高い熱安定性、および十分な膜靭性を示した。得られたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルを図5、図6にそれぞれ示す。
[比較例1]
式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の代わりに、置換基のない式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いて、実施例1に記載した方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜・イミド化を行った。吸水率および誘電率は実施例1のポリエステルイミドフィルムの値より高い値であった。これは疎水性基として働くメトキシ置換基がないためである。
[比較例2]
式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の代わりに、置換基のない式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いて、実施例2に記載した方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜・イミド化を行った。吸水率および誘電率は実施例2のポリエステルイミドフィルムの値より高い値であった。これは疎水性基として働くメトキシ置換基がないためである。


【表1】


【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のポリエステルイミドは、フレキシブルプリント配線回路(FPC)基板、テープオートメーションボンディング(TAB)用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にFPC用基板として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1に記載のポリエステルイミド前駆体フィルムの赤外線吸収スペクトルである。
【図2】実施例1に記載のポリエステルイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルである。
【図3】実施例2に記載のポリエステルイミド前駆体フィルムの赤外線吸収スペクトルである。
【図4】実施例2に記載のポリエステルイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルである。
【図5】実施例3に記載のポリエステルイミド前駆体フィルムの赤外線吸収スペクトルである。
【図6】実施例3に記載のポリエステルイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルである。

特許の図
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【出願日】 平成18年9月11日(2006.9.11)
【代理人】 【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二

【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司

【識別番号】100105991
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 玲子

【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
【公開番号】 特開2008−63517(P2008−63517A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−245341(P2006−245341)