トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 環状オレフィン系付加共重合体およびその製造方法ならびに用途
【発明者】 【氏名】阪上 俊規

【氏名】今村 孝

【要約】 【課題】

【構成】本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体は、炭素数4のアルキル基を置換基として有する環状オレフィン系化合物から導かれる構造単位(1)と、炭素数5〜12のアルキル基を置換基として有する環状オレフィン系化合物から導かれる構造単位(2)とを有し、必要に応じてその他の環状オレフィン系化合物から導かれる構造単位(3)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位(1)、および、下記式(2)で表される構造単位(2)を含有することを特徴とする環状オレフィン系付加共重合体;
【化1】


(式(1)中、A1,A2,A3,A4のうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
【化2】


(式(2)中、B1,B2,B3,B4のうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)。
【請求項2】
構造単位(1)と構造単位(2)のモル比(構造単位(1)/構造単位(2))が、10/90〜90/10であり、構造単位(1)と構造単位(2)との合計が、全構造単位中に80〜100mol%の量であることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系付加共重合体。
【請求項3】
下記式(3)で表される構造単位(3)を、全構造単位中20モル%以内の量で含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載の環状オレフィン系付加共重合体;
【化3】


(式(3)中、C1、C2、C3およびC4は、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基;水素原子;メチル基;およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数であ
る。)。
【請求項4】
ガラス転移温度が100〜250℃であり、数平均分子量が20,000〜200,000の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環状オレフィン系付加共重合体。
【請求項5】
下記式(1m)で表される単量体(1m)と、下記式(2m)で表される単量体(2m)と、必要に応じて下記式(3m)で表される単量体(3m)を含有し、
単量体(1m)と単量体(2m)とのモル比(単量体(1m)/単量体(2m))が10/90〜90/10をみたし、かつ、
単量体(1m)と単量体(2m)との合計が全単量体中の80モル%以上である単量体組成物を、
下記(a)、(b)および(d)を用いて得られる触媒、あるいは、下記(c)および(d)を用いて得られる触媒の存在下に付加共重合することを特徴とする環状オレフィン系付加共重合体の製造方法;
【化4】


(式(1m)中、A1,A2,A3,A4のうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
【化5】


(式(2m)中、B1,B2,B3,B4のうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)
【化6】


(式(3m)中、C1、C2、C3およびC4は、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基;水素原子;メチル基;およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数で
ある。)、
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
(b)下記式(b)で表されるホスフィン化合物、
P(R12(R2) …(b)
[式(b)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表す。]
(c)下記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R12(R2)]n2 …(c)
[式(c)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ばれ
る置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンあるい
はβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。]
(d)イオン性のホウ素化合物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系付加共重合体を、溶融押出成形してなることを特徴とする光学フィルム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系付加共重合体とその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、炭素数4のアルキル基を置換基として有する環状オレフィン系モノマーから導かれる構造単位と、炭素数5〜12のアルキル基を置換基として有する環状オレフィン系モノマーとから導かれる構造単位とを有し、優れた透明性、耐熱性、溶融成形加工性、低吸水性、低誘電率等の特性を示し、光学フィルムなどの光学用途に有用な環状オレフィン系付加共重合体と、該付加共重合体を高い生産性で製造する方法、該付加共重合体から得られる光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ、バックライト、導光板、光学フィルムなどの光学材料には、優れた透明性が要求される事はもちろんであるが、その他にも耐熱性、低吸水性、低誘電率及び柔軟性や強じん性などの要求が高まってきている。
【0003】
光学材料用途に用いられる透明樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂などが知られているが、これらの樹脂では耐熱性、吸水性、透明性等の特性が充分ではなかった。
【0004】
一方、透明性と耐熱性とに優れた樹脂として、環状オレフィン系化合物の開環重合体の水素添加物、あるいは付加重合体が数多く提案されている。これらは主鎖が脂環族炭化水素によって構成されているため、芳香族系樹脂と比較して短波長領域での吸収が小さくことからも有用である。
環状オレフィン系開環重合体およびその水素添加物は、レンズや光ディスクなどを製造するための光学材料として有用なものとして多数提案されており(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)、これらに開示された環状オレフィン系開環(共)重合体およびその水素添加物は、耐熱性に優れ低吸水(湿)性であって透明性などの光学特性にも優れ、さらに射出成形などの成形性にも優れている。また、分子内に極性基を導入した環状オレフィン系単量体の開環重合体およびその水素添加物も提案されており(例えば特許文献7および特許文献8)、耐熱性や光学特性、成形性、他素材との親和性に優れ、接着などの後加工性にも優れたものであることが開示されている。しかしながら環状オレフィン系開環重合体は重合反応後の主鎖に二重結合が存在するため、耐熱劣化性を向上するには水素添加工程が必要であり、工業的生産性や経済性に問題を残している。
【0005】
一方、環状オレフィン化合物を付加重合することで、耐熱性と透明性に優れた樹脂が得られることが知られている。また重合反応後の主鎖に二重結合が存在しないため耐熱劣化性に優れ、水素添加不要であることから工業的生産性や経済性にも優れている。
環状オレフィン化合物の付加重合体の例としては、環状オレフィン系化合物とα−オレフィンとの付加共重合体が数多く報告されている(例えば、特許文献9、特許文献10)。しかし、それらの共重合体においてはエチレンなどのα−オレフィンに由来する構造単位の連鎖が結晶化する場合があり、透明性が低下するなど光学材料の用途に用いるには必ずしも十分ではない。また、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合反応性の差が大きいため共重合体の組成に分布が生じ、透明性が低下する場合がある。
【0006】
一方、環状オレフィン系化合物に由来する構造単位のみから形成される環状オレフィン系付加重合体は、チタニウム触媒、ジルコニウム触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒、パラジウム触媒などを用いて製造でき、非常に優れた耐熱性と透明性を示す樹脂として知ら
れている。ここで、用いる触媒の選択により生成する重合体の立体規則性(アタクティック/erythro−ジシンジオタクティック/erythro−ジアイソタクティックなど)や付加重合の様式(2,3位での付加および2,7位での付加)、分子量の制御性などが異なることがこれまでに知られている。たとえばジルコニウム系メタロセン触媒を用いて重合されたノルボルネン重合体は不融で、一般的な溶媒に対し不溶であることが報告されている(非特許文献1)。また、ニッケル系触媒を用いて重合されたノルボルネンの付加重合体はシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒に対して良好な溶解性を示す(特許文献11)が、機械強度に劣り脆いことが報告されている(特許文献12)。
【0007】
それに対し、パラジウム化合物を含む特定の触媒を用いることで、高い重合活性を示すとともに優れた透明性、耐熱性、機械的強度を有する環状オレフィン系付加重合体を製造できることが報告されている(特許文献12、特許文献13、特許文献14)。また、特許文献15には加水分解性シリル基含有環状オレフィンを有し、パラジウム化合物を含む触媒を用いて得られる環状オレフィン共重合体が優れた耐熱性と寸法安定性を示すことが開示されている。しかしながらこれらに記載の付加重合体は非常に高い耐熱性を示す反面、熱溶融成形が不可能であり、成形方法は溶液流延法(キャスト法)に限定される。キャスト法は多量の溶媒を用いる上、その溶媒の除去および回収工程が必要であるため設備が大型化し、生産性が低く高コストであるなどの工業的な問題がある。
【0008】
環状オレフィン系付加重合体を溶融成形可能とすべく、ガラス転移温度を低下させる手法として、アルキル置換基を有する環状オレフィン化合物を単量体として用いることが提案されている。例えば、特許文献16には5−ヘキシル−2−ノルボルネンを用いた付加型共重合体が記載されている。また、特許文献11および非特許文献2には長鎖アルキル基を有するノルボルネンを単量体として用い、その鎖長や割合によって付加共重合体のガラス転移温度をコントロールできることが記載されている。しかしこれらの先行技術には、得られる成形体の機械強度に対する重合触媒の影響は記載されていない。また、これらにおいて用いられている重合触媒は、その活性において満足のいくものではなく、反応後に残留する未反応単量体や触媒を除去する工程を必要とする。
【0009】
さらには、長鎖アルキル基を有する環状オレフィンはノルボルネンと比較して重合反応性が低いため、両者の共重合の際に共重合体の組成に分布が生じるが、前記特許文献16、特許文献11、非特許文献2においては単量体の反応性の差や組成分布については言及していない。高い転化率においてその分布は顕著となり、得られる成形体の透明性や強度が損なわれることがあるため、高転化率と高透明性の両立が課題となる。すなわち、経済性および生産性に優れ、良好な耐熱性と溶融成形加工性を示し、高い転化率における高透明性を獲得した環状オレフィン共重合体の製造方法が望まれるにもかかわらず、現在までに報告されていない。
【特許文献1】特開昭63−21878号公報
【特許文献2】特開平1−138257号公報
【特許文献3】特開平1−168725号公報
【特許文献4】特開平2−102221号公報
【特許文献5】特開平2−133413号公報
【特許文献6】特開平4−170425号公報
【特許文献7】特開昭50−111200号公報
【特許文献8】特開平1−132626号公報
【特許文献9】特開昭61−292601号公報
【特許文献10】米国特許第2,883,372号明細書
【特許文献11】特表平9−508649号公報
【特許文献12】特開2006−52347号公報
【特許文献13】特開2005−162990号公報
【特許文献14】特開2005−213435号公報
【特許文献15】特開2005−48060号公報
【特許文献16】特開平8−198919号公報
【非特許文献1】Makromol. Chem. Macromol. Symp., Vol.47, 831 (1991)
【非特許文献2】Proc. Am. Chem. Soc. Div. Polym. Mater.: Sci. Eng. Vol. 75, 56 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、溶融成形加工性と優れた透明性、耐熱性、溶融成形加工性、低吸水性、低誘電率等の特性を示し、光学フィルムなどの光学用途に有用な、新規な環状オレフィン系付加共重合体と、該付加共重合体を高い生産性で製造する方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、下記式(1)で表される構造単位(1)、および、下記式(2)で表される構造単位(2)を含有することを特徴としている。
【0012】
【化1】


【0013】
(式(1)中、A1,A2,A3,A4のうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
【0014】
【化2】


【0015】
(式(2)中、B1,B2,B3,B4のうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)。
【0016】
このような本発明の環状オレフィン系付加共重合体では、構造単位(1)と構造単位(2)のモル比(構造単位(1)/構造単位(2))が、10/90〜90/10であり、構造単位(1)と構造単位(2)との合計が、全構造単位中に80〜100mol%の量であることが好ましい。
【0017】
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、さらに、下記式(3)で表される構造単位(3)を、全構造単位中20モル%以内の量で含有してなることが好ましい。
【0018】
【化3】


【0019】
(式(3)中、C1、C2、C3およびC4は、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基;水素原子;メチル基;およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数であ
る。)
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、ガラス転移温度が100〜250℃であり、数平均分子量が20,000〜200,000の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法は、下記式(1m)で表される単量体(1m)と、下記式(2m)で表される単量体(2m)と、必要に応じて下記式(3m)で表される単量体(3m)を含有し、
単量体(1m)と単量体(2m)とのモル比(単量体(1m)/単量体(2m))が10/90〜90/10をみたし、かつ、
単量体(1m)と単量体(2m)との合計が全単量体中の80モル%以上である単量体組成物を、
下記(a)、(b)および(d)を用いて得られる触媒、あるいは、下記(c)および(d)を用いて得られる触媒の存在下に付加共重合することを特徴としている。
【0021】
【化4】


【0022】
(式(1m)中、A1,A2,A3,A4のうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
【0023】
【化5】


【0024】
(式(2m)中、B1,B2,B3,B4のうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)
【0025】
【化6】


【0026】
(式(3m)中、C1、C2、C3およびC4は、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基
、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基;水素原子;メチル基;およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数で
ある。)、
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
(b)下記式(b)で表されるホスフィン化合物、
P(R12(R2) …(b)
[式(b)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表す。]
(c)下記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R12(R2)]n2 …(c)
[式(c)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ばれ
る置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンあるい
はβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。]
(d)イオン性のホウ素化合物。
【0027】
本発明の光学フィルムは、前記本発明の環状オレフィン系付加共重合体を、溶融押出成形してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、溶融成形加工性、透明性、耐熱性に優れ、吸水性および誘電率が低く、金属含有量が少なく、光学フィルムなど光学部品用途に好適に使用できる新規な環状オレフィン系付加共重合体を提供することができる。また、本発明によれば、このような新規な環状オレフィン系付加共重合体を、少ない触媒使用量で、高収率で製造できる環状オレフィン系付加共重合体の製造方法を提供することができる。さらに本発明によれば、新規な環状オレフィン系付加共重合体から得られ、透明性、耐熱性に優れ、吸水性および誘電率が低く、金属含有量が少なく、柔軟性および強靭性にも優れた光学フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明について具体的に説明する。
環状オレフィン系付加共重合体の製造方法
本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体は、炭素数4のアルキル基を置換基として有する下記式(1)で表される構造単位(1)と、炭素数5〜12のアルキル基を置換基として有する下記式(2)で表される構造単位(2)とを有し、必要に応じて下記式(3)で表される構造単位(3)を有する。
【0030】
【化7】


【0031】
(式(1)中、A1,A2,A3,A4のうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であ
り、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
【0032】
【化8】


【0033】
(式(2)中、B1,B2,B3,B4のうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)
【0034】
【化9】


【0035】
(式(3)中、C1、C2、C3およびC4は、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基;水素原子;メチル基;およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数であ
る。)
ここで、通常、構造単位(1)は、下記式(1m)で表される単量体(1m)に由来し、構造単位(2)は、下記式(2m)で表される単量体(2m)に由来し、必要に応じて含まれる構造単位(3)は、下記式(3m)で表される構造単位(3m)に由来する。
【0036】
【化10】


【0037】
(式(1m)中、A1,A2,A3,A4およびpは、式(1)において定義のとおりである。)
【0038】
【化11】


【0039】
(式(2m)中、B1,B2,B3,B4およびqは、式(2)において定義のとおりである。)
【0040】
【化12】


【0041】
(式(3m)中、C1、C2、C3、C4およびrは、式(3)において定義のとおりである
。)
<単量体組成物>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、上記単量体(1m)と、単量体(2m)と、必要に応じて単量体(3m)とを含む単量体組成物を、付加共重合して得ることができる。
【0042】
構造単位(1)および単量体(1m)における好ましいアルキル置換基は1−ブチル基であり、構造単位(2)および単量体(2m)における好ましいアルキル置換基としては、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、1−ウンデシル基、1−ドデシル基、2−デシル基、8−メチル−1−ノニル基などの直鎖あるいは分岐アルキル基を有するものが挙げられ、中でも1−デシル基、1−ドデシル基が好ましい。
【0043】
単量体(1m)としては、具体的には、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、8−ブチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等
が挙げられる。これらの単量体(1m)としては、式(1m)中のpが0である、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンがより好ましい。
【0044】
単量体(2m)としては、具体的には、5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ノニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ウンデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、8−ペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヘキシル−テトラシクロ[4.4
.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヘプチル−テトラシクロ[4.4.0.
2,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−オクチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ノニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
ドデカ−3−エン、8−デシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−
3−エン、8−ウンデシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−
エン、8−ドデシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンな
どの直鎖アルキル基を有するものや、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)デセン、8−メチル−1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)ノナンなどの分岐アルキル基を有するものが挙げられる。これらの単量体(2m)としては、式(2m)中のqが0である、炭素数5〜12の5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンがより好ましい。中でも5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンは原料を工業的に入手しやすいため好ましい。単量体(2m)として、該アルキル基の炭素数が5以上のものを用いることにより、優れた溶融成形加工性を有し、高すぎない温度での成形加工が可能となるため、成形加工時の温度が高温であることに起因する成形体の劣化や着色を防止することができる。一方、該アルキル基の炭素数が12を超えると5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの沸点が高くなりすぎるため、工業生産時の精製が困難となる。
【0045】
単量体(3m)は、式(3m)中のC1〜C4のうち少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基であるものであってもよく、また、C1〜C4がいずれも水素原子、メチル基およびハロゲン原子殻選ばれる原子もしくは基であるものであってもよい。単量体(3m)が官能基を有する単量体である場合には、単量体(3m)を含む単量体組成物を付加共重合体が、架橋基を導入しやすくなり、また、付加共重合体から得られる成形体へ接着性を付与できる。このため、単量体(3m)としては、架橋機導入や成形体への接着性付与等の目的で、式(3m)中の
1〜C4のうち少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基であるものを用いることも好ましい。
【0046】
官能基を有する単量体(3m)の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸t−ブチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸t−ブチル、酢酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)、酢酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−メチル−2−イル)、酢酸(テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−イル)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2、3−無水カルボン酸、5−[(3−エチル−3−オキタセニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−[(3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸(3−エチル−3−オキセタニル)メチル、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等が挙げられる。
【0047】
これらの単量体(3m)としては、式(3m)中のrが0であるものがより好ましい。
本発明で用いる単量体組成物は、上記単量体(1m)および単量体(2m)を必須成分としており、必要に応じて単量体(3m)を含んでもよい。単量体(2m)の割合の増加に従い、該共重合体を用いて得られるフィルムやシートなどの成形体の柔軟性が増し、ガラス転移温度が低下する傾向がある。また、単量体(3m)の割合が増加するに従い、該共重合体を用いて得られるフィルムやシートなどの成形体の弾性率が向上する反面、柔軟性(伸び)が低下する傾向にある。また、官能基を有する単量体(3m)の割合が高いと、重合活性が低下し生産性が悪化する場合がある。
【0048】
このため、単量体組成物中において、単量体(1m)と単量体(2m)とのモル比(単量体(1m)/単量体(2m))は、通常10/90〜90/10、好ましくは20/80〜90/20、より好ましくは40/60〜90/10であるのが望ましい。単量体(1m)と単量体(2m)の合計に対する単量体(1m)の割合が10mol%を下回ると、得られる付加共重合体のガラス転移温度が低くなりすぎ、耐熱性が不十分となる場合がある。また、単量体(1m)と単量体(2m)の合計に対する単量体(1m)の割合が90mol%を超えると、ガラス転移温度が高くなりすぎ、成形加工性が悪化するなどの問題が生じる場合がある。
【0049】
また、本発明で用いる単量体組成物では、単量体(1m)と単量体(2m)の合計が、全単量体中の80〜100mol%であることが好ましい。単量体組成物中に、単量体(1m)および単量体(2m)以外の単量体が20mol%以上含まれる場合には、得られる共重合体の成形加工性が悪化したり、共重合体から得られる成形体の強度が低下したりする場合がある。このため、本発明で用いる単量体組成物が単量体(3m)を含む場合、単量体(3m)の量は、単量体組成物中に20モル%以下の割合で含まれるのが望ましい。
【0050】
本発明で用いる単量体組成物は、特に限定されるものではないが、単量体(1m)、単量体(2m)および必要に応じて単量体(3m)から構成され、それ以外の単量体を含まないことが好ましい。単量体(1m)、単量体(2m)および単量体(3m)は、それぞれ、1種単独で用いられてもよく、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
<重合触媒>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法においては、上述した単量体組成物を、下記(a)、(b)および(d)を用いて得られる触媒、あるいは、下記(c)および(d)を用いて得られる触媒の存在下に付加共重合する。
【0051】
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
(b)下記式(b)で表されるホスフィン化合物、
P(R12(R2) …(b)
[式(b)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表す。]
(c)下記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R12(R2)]n2 …(c)
[式(c)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ばれ
る置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンあるい
はβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。]
(d)イオン性のホウ素化合物。
【0052】
本発明では、上記触媒成分を用いて得られるパラジウム系触媒を用いることにより、機械的強度に優れた成形体を得ることができる。さらには非常に高い重合活性を示すため、極端に少ないパラジウム化合物を用いるのみにて95%を超える高い転化率で付加共重合体を製造することができるとともに、得られる付加共重合体中に残留する単量体や金属成分を充分に低く抑制できる。
【0053】
以下、上記各触媒成分について説明する。
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物とは、例えば2価パラジウムのカルボン酸塩、スルホン酸塩、β−ジケトネート化合物であり、具体的には、
1)酢酸パラジウム、クロロ酢酸パラジウム、フルオロ酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸パラジウム、酪酸パラジウム、3−メチル酪酸パラジウム、ペンタン酸パラジウム、ヘキサン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、オクタン酸パラジウム、ドデカン酸パラジウム、2−メチルプロペン酸パラジウム、オクタデカ−9−エン酸パラジウム、シクロヘキサンカルボン酸パラジウム、安息香酸パラジウム、2−メチル安息香酸パラジウム、4−メチル安息香酸パラジウム、ナフタレンカルボン酸パラジウムなどの炭素数1〜15の有機モノカルボン酸塩;
2)メタンスルホン酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、p−トルエンスルホン酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム、ナフタレンスルホン酸パラジウム、ドデシルベンゼンスルホン酸パラジウムなどの炭素数1〜20の有機スルホン酸塩;
3)パラジウムの2,4−ペンタジオン(アセチルアセトネート)、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンなどの炭素数5〜15のβ−ジケトネート化合物、
が好ましく挙げられる。これらの中でも酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、パラジウムビス(アセチルアセトネート)が好ましく、酢酸パラジウムが最も好ましい。
(b)前記式(b)で表されるホスフィン化合物の具体例としては、トリシクロペンチルホスフィン、ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロペンチル(s−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(t−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン
、ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリイソプロピルホスフィンなどが挙げられる。これらの中でもトリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンが好ましく用いられる。
【0054】
(c)前記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体は、触媒成分(a)に挙げたパラジウム化合物と比較して良好な炭化水素溶媒への溶解性を示すため、溶液重合プロセスにおいて有利である。また、活性種の生成効率が高く、誘導期間がほとんどみられないことなどにおいても有利であり好ましい。
【0055】
式(c)で表されるパラジウムのホスフィン錯体としては、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
〔ビス(トリシクロペンチルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(t−ブチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
〔ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(t−ブチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、などを挙げることができるがこれらに限定されない。中でも
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
が好ましく、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)が最も好ましい。これらのホスフィン錯体(c)の合成には、公知の方法を適宜もちいてよく、精製あるいは単離して用いてもよいし、合成後に単離することなく用いてもよい。たとえば適切なパラジウム化合物と触媒成分(b)で例示のホスフィン化合物とを、芳香族炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒中で、0〜70℃の温度範囲で反応させることにより合成してもよい。
(d)イオン性のホウ素化合物としては、たとえば、下記式(d)で表される化合物が用いられる。
【0056】
〔R3+〔M(R44- …(d)
[式(c)中、R3はカルベニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカ
チオンまたはアニリニウムカチオンから選ばれた炭素数4〜25の有機カチオンを示し、Mはホウ素原子あるいはアルミニウム原子を示し、R4はフッ素原子置換またはフッ化ア
ルキル置換のフェニル基を示す。]
具体例としては、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、
トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
などを挙げることができる。これらの中でもカチオンがカルベニウムカチオンであり、アニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンまたはテトラキス(パーフルオロアルキルフェニル)ボレートアニオンであるイオン性ホウ素化合物が好ましく
、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレートが最も好ましい。
【0057】
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、あるいは(c)2価パラジウムのホスフィン錯体は、単量体1モル当たり、パラジウム原子として0.0005〜0.02ミリモル、好ましくは0.001〜0.01ミリモル、さらに好ましくは0.001〜0.005ミリモルの範囲で用いるのみにて高い転化率を獲得できるため、高い経済性および生産性を示す。また、付加共重合体中に残留する金属成分を低く抑えられるため、着色が少なく透明性に優れた成形体を得ることが可能であり、脱灰工程の省略をできることもある。また、(b)ホスフィン化合物に関しては、触媒成分(a)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲で使用することが、高重合活性のために最適である。また、上記触媒成分(c)イオン性のホウ素化合物に関しては、触媒成分(a)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは0.7〜5.0モル、さらに好ましくは1.0〜2.0モルの範囲で用いられる。上記(a)〜(d)の各触媒成分に関し、本発明においては添加順序等の調整法や使用法に特に制限はなく、本発明で重合反応に供される単量体と溶媒との混合物へ同時に、または逐次的に添加してもよい。
【0058】
<付加共重合反応>
本発明において、付加共重合反応は、バッチ式で行ってもよく、また、例えば適切な単量体の供給口を装備した管型連続反応器を使用して行ってもよい。付加共重合反応は、必要なら窒素またはアルゴン雰囲気下にて行なわれるが、空気中であってもよい。反応温度は0〜150℃、より好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜80℃の範囲にて行なわれる。用いられる溶媒は特に限定されないが、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロべンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒を1種単独で、または2種以上を組み合わせることができる。これらのうちでも脂環式炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒が好ましい。これらの溶媒は、全単量体100重量部に対し、通常、0〜2,000重量部の範囲で用いられる。
【0059】
本発明に係る付加共重合体の製造方法においては、分子量調節剤の存在下に付加共重合を行うことで、得られる共重合体の分子量を任意に制御することができ、その結果、溶融成形における流動特性などを制御できる。分子量調節剤としては、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシランなどのα−オレフィン化合物または置換α−オレフィン化合物、シクロペンテンなどの単環モノオレフィン化合物、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物などが用いられる。これらの分子量調節剤のうちでも、α−オレフィン化合物または単環モノオレフィン化合物を用いることが好ましく、中でもエチレンが最も好ましい。分子量調節剤の使用量は、環状オレフィン系付加共重合体の目標とする分子量、触媒成分の選択、重合温度条件の選択などによって変わるため一概には言えないが、全単量体に対しモル比で0.001〜0.5倍の量を用いることが好ましい。また、これらの分子量調節剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明の環状オレフィン系付加共重合の製造方法で用いるパラジウム系重合触媒は、非常に高活性であるため少量の触媒を用いるのみで転化率を96%以上、好ましくは99%以上とすることができる。その結果、残留する単量体や金属成分の除去工程を必ずしも必要としない。必要に応じて単量体や金属成分の除去を行う場合は公知の方法を適宜用いて
よく、例えば、重合反応溶液を乳酸、グリコール酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸などのオキシカルボン酸やトリエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸塩などの水溶液、メタノール溶液およびエタノール溶液から選ばれた溶液を用いて抽出・分離処理するか、珪藻土、シリカ、アルミナ、活性炭、セライトなどの吸着剤を用いて吸着およびフィルターでのろ過分離の処理にて金属成分を除去できる。あるいは、重合反応溶液を、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトンを用いて凝固することもできる。本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体に含まれる金属成分は、Pd原子として好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下にすることができる。
【0061】
重合反応溶液からさらに脱溶工程を経て環状オレフィン系付加共重合体が得られる。その際に必要に応じて添加剤を配合してもよい。脱溶方法は特には限定されないが、例えば溶液を減圧下にて加熱濃縮したり、スチームを導入するなどしてよく、押出機などを用いて乾燥およびペレット化してもよい。重合反応溶液をそのままキャストすることでフィルムに成形してもよい。
【0062】
環状オレフィン系付加共重合体
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、上述の製造方法によって好適に得られ、炭素数4のアルキル基を置換基として有する前記式(1)で表される構造単位(1)と、炭素数5〜12のアルキル基を置換基として有する前記式(2)で表される構造単位(2)とを有し、必要に応じて前記式(3)で表される構造単位(3)を有する。本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、構造単位(1)、構造単位(2)および必要に応じて有する構造単位(3)のみから構成されるのが好ましい。
【0063】
上述のように、通常、構造単位(1)は、前記式(1m)で表される単量体(1m)に由来し、構造単位(2)は、前記式(2m)で表される単量体(2m)に由来し、必要に応じて含まれる構造単位(3)は、前記式(3m)で表される構造単位(3m)に由来する。
【0064】
構造単位(1)が有するアルキル置換基としては1−ブチル基が好ましい。また、構造単位(2)が有するアルキル置換基としては1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、1−ウンデシル基、1−ドデシル基、2−デシル基、8−メチル−1−ノニル基などの直鎖あるいは分岐アルキル基を有するものが挙げられ、中でも1−デシル基、1−ドデシル基が好ましい。
【0065】
構造単位(3)は、構造単位(1)および構造単位(2)以外の環状オレフィン系構造単位であり、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基を有していてもよく、またを有していなくてもよいが、これらの特定の官能基を有する場合には、付加共重合体が架橋性を有したり、また、付加共重合体から得られるフィルムなどの成形体が密着性や接着性に優れるものとなるため、本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、そのような特性を要する用途に用いる場合には、前記特定の官能基を1つ以上有する構造単位(3)を含むことが好ましい。
【0066】
また、官能基を有していない構造単位(3)を有することにより、付加共重合体の弾性率を向上させる事ができ有用である。特に本発明の付加共重合体を溶融成形するためには、官能基を有していない構造単位(3)を有する事が好ましい。構造単位(3)は、付加共重合体中において、全構造単位中20モル%以下の量で含有されることが好ましい。
【0067】
本発明において、構造単位(1)、(2)および(3)は、それぞれ1種単独であって
もよく、2種以上組み合わされていてもよい。
【0068】
構造単位(1)と構造単位(2)との合計に対する構造単位(1)の割合は10〜90モル%、好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは40〜90モル%である。また、全構造単位(構造単位(1)、構造単位(2)および構造単位(3)の合計)に対する構造単位(3)の割合は0〜20モル%、好ましくは10〜20モル%である。すなわち、本発明の環状オレフィン系付加共重合体では、構造単位(1)と構造単位(2)のモル比(構造単位(1)/構造単位(2))が、通常10/90〜90/10、好ましくは20/80〜90/20、より好ましくは40/60〜90/10であるのが望ましい。また、構造単位(1)と構造単位(2)との合計が、全構造単位中に80〜100mol%の量であることが好ましい。
【0069】
構造単位(1)と構造単位(2)の合計に対する構造単位(2)の割合が、90モル%を超えるとガラス転移温度が低下し耐熱性が劣るため好ましくなく、10モル%を未満では得られるフィルムやシートなどの柔軟性が不足したり、成形加工性が劣るため好ましくない。一方、全構造単位中における構造単位(3)の割合が20モル%を超えるとフィルムやシートなどの柔軟性が不足し脆くなるため好ましくない。
【0070】
このような本発明の環状オレフィン系付加共重合体では、構造単位(2)の割合の増加に従い、該共重合体を用いて得られるフィルムやシートなどの成形体の柔軟性が増し、ガラス転移温度が低下する傾向がある。また、構造単位(3)の割合が増加するに従い、該共重合体を用いて得られるフィルムやシートなどの成形体の機械的特性および靭性が向上する傾向がある。
【0071】
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、動的粘弾性で測定される貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E”)から導かれるTanδ=E”/E’の温度分散ピーク温度から求められ、100〜250℃、好ましくは130〜240℃である。このガラス転移温度が100℃未満の場合は耐熱性が要求される用途に適さなくなり、一方、250℃を超えると溶融成形が困難となる。
【0072】
本発明の環状オレフィン系系付加共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が20,000〜200,000、好ましくは30,000〜100,000である。数平均分子量が20,000未満では、成形したフィルムまたはシートの機械的強度が低下し、割れ易いものとなる場合がある。一方、その数平均分子量が200,000を超えると溶融粘度が高くなりすぎるため成形が困難になり、あるいは成形体の平坦性が損なわれることが多い。環状オレフィン系付加共重合体の分子量は、適切な分子量調節剤の存在下で重合を行うことによって調節することができる。
【0073】
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、透明性に優れ、膜厚100μmのフィルムで測定される分光光線透過率が波長400nmでの透過率が通常85%以上、好ましくは88%以上であり、ヘイズ値は通常2.0%以下、好ましくは1.0%以下である。
【0074】
<添加剤>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。例えば、酸化安定性を向上させ着色や劣化を防ぐため、フェノール系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびイオウ系酸化防止剤から選ばれた酸化防止剤を配合できる。該酸化防止剤には、該共重合体100重量部当たり0.001〜5重量部の割合で配合することができる。酸化防止剤の具体例としては、
1)2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−
ブチル−3−メチル−フェニル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキ
サン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアレート、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤またはヒドロキノン系酸化防止剤、
2)ビス (2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホス
ファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、3
,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのリン系2次酸化防止剤
3)ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのイオウ系2次酸化防止剤などを挙げることができる。
【0075】
また本発明の環状オレフィン系付加共重合体には難燃剤を配合することもできる。難燃剤としては公知のものを使用することができ、例えばハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、金属水酸化物などを挙げることができる。これらの中でも少量の配合で効果を示し、吸水性、低誘電性、透明性の悪化を最小限にできるリン酸エステル系難燃剤が好ましく、1,3−ビス(フェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス[ジ(アルキルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジメチルフェニル)ホスホリル]ベンゼ
ン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジエチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3
−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6’−ジブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−t−ブチルフェニル)ホスフホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン1,3−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジメチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジエチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−t−ブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、4,4’−ビス[ジ(2”,6”−ジメチルフェニル)ホスホリルフェニル]ジメチルメタンなどの縮合型リン酸エステル系難燃剤がさらに好ましい。配合量は難燃剤の選択や要求される難燃性の程度によって決まるが、環状オレフィン共重合体100重量部に対し0.5〜40重量部が好ましく、2〜30重量部がさらに好ましく、4〜20重量部が最も好ましい。0.5重量部より少ない場合には効果が不充分であり、一方、40重量部を超えて使用すると透明性が損なわれたり、誘電率などの電気特性が悪化したり、吸水率が増大したり、耐熱性が悪化する場合がある。
【0076】
本発明の環状オレフィン系付加共重合体には、さらに必要に応じて公知の滑剤、紫外線吸収剤等、レベリング剤、染料などを配合することもできる。
【0077】
<成形体>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は熱溶融成形に適したガラス転移温度を示し、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などの方法で成形することができる。また、適当な溶媒に溶解し、キャストすることでフィルム、シートなどの形状に成形することもできる
。特には熱溶融成形が溶媒を必要とせず、経済性、生産性に有利であるため好ましい。
【0078】
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、透明性などの光学特性、耐薬品性、耐熱性、耐水性、耐湿性などに優れ、かつ、溶融成形に好適なガラス転移温度を有するため、特に、溶融成形による光学フィルムの製造に好適に用いることができる。得られた光学フィルムは、透明性などの光学特性、耐薬品性、耐熱性、耐水性、耐湿性などにバランスよく優れる。
【0079】
また、本発明の環状オレフィン系付加共重合体の成形体には、必要に応じてITO、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性膜、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムなどのバリアー膜、その他公知のハードコート層、反射防止層、防汚層、赤外線フィルター層、紫外線フィルター層、粘着剤層などを形成してもよい。これらの形成の手段としては塗布、貼合による方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など挙げられる。
【0080】
<用途>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は優れた透明性および耐熱性、低い吸水性と誘電率を有し、光学材料、電気・電子部品、医療用器材などに好適に用いることができる。
【0081】
光学材料としては、液晶表示素子、有機EL素子、プラズマディスプレイおよび電子ペーパー、ディスプレイ用カラーフィルター基板、ナノインプリント基板、ITOや導電性樹脂層を積層した透明導電フィルムおよび透明導電膜、タッチパネル、導光板、保護フィルム、偏向フィルム、位相差フィルム、近赤外線カットフィルム、光拡散フィルム、反射防止フィルム、高反射フィルム、半透過半反射フィルム、NDフィルター、ダイクロイックフィルター、電磁波シールドフィルム、ビームスプリッター、光通信用フィルター、カメラレンズ、ピックアップレンズ、F−θレンズなどの光学レンズおよびプリズム類、MD、CD、DVDなどの光学記録基板などに用いることができる。医療用器材としては薬品用パッケージ材料、滅菌容器、シリンジ、パイプ、チューブ、アンプルなどに用いられる。電子・電気部品としては容器、トレイ、キャリアテープ、セパレーションフィルム、絶縁フィルム、プリント基板用材料などに用いられる。
【0082】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、環状オレフィン系付加共重合体の分子量、ガラス転移温度、フィルムの透明性、強度などの各種性状は、下記の方法で求めた。
【0083】
(1)分子量
昭和電工製Shodex GPC−101ゲル・パーミエションクロマトフィー(GPC)装置を用い、THFを溶媒として測定し、標準ポリスチレン換算値を用いて分子量とした。
【0084】
(2)ガラス転移温度
ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製粘弾性測定装置を用い、測定周波数 1Hz、昇温速度 5℃/分、引張モードで貯蔵弾性率(E')および損失弾性率(E")から導かれるTanδ(=E"/E')の温度分散より求めた。
【0085】
(3)共重合体組成
重合反応溶液の一部を採取し、過剰のイソプロパノールで重合体を凝固した上澄みをガスクロマトグラム(島津製作所製GC−14B)装置、キャピラリーカラム(膜厚1μm、内径0.25mm、長さ60m)にて分析し、残留する単量体を定量することで、組成
を算出した。
【0086】
(4)分光光線透過率およびヘイズ
膜厚100μmのフィルムについて、可視・紫外分光光度計(日立製 U−2010 Spectro Photo Meter)により、波長400nmでの光線透過率を測定した。
ヘイズについてはHaze−Gard plus (BYK−Gardner製)を用いJIS K7105に準じて測定した。
【0087】
(5)破断強度、伸び及び破断エネルギー
JIS K7113に準じて試験片を引っ張り速度3mm/minで測定した。
【0088】
(6)吸水率
23℃の水中にフィルムを24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化より吸水率を求めた。
【0089】
[実施例1]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン600g、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン60g(0.40mol.)、5−デシルビシクロ[2.2.
1]ヘプタ−2−エンを140g(0.60mol.)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.
010MPaとなるまで導入した。容器内を30℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を3.99×10-3mmol 及び
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を3.99×10-3mmol加えて重合を開始した。重合を計12時間行った結果、未
反応の単量体の定量から転化率は99%、共重合体中の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は59モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し198gの共重合体Aを得た。共重合体AのMnは87,000、Mwは287,000であった。
【0090】
この共重合体A 100重量部に、ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.5重量部を混合し、続いて真空プレス
機により240℃で100μm厚のフィルムAを得た。フィルムAのガラス転移温度は162℃であり、表1に示したように、耐熱性、透明性、低吸水性に優れ、伸び特にフィルムの強さの指標である破断エネルギーが非常に大きく、溶融成形性に優れた共重合体であった。
【0091】
[実施例2]
前記実施例1において、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを114g(0.76mol.)、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを86g(0.37mol.)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を4.51×10-3mmol、及びトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフ
ルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を4.51×10-3mmolとしたことの他は
、実施例1と同様に重合を行った。
【0092】
未反応の単量体の定量から転化率は99%、共重合体中の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は32モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し198gの共重合体Bを得た。共重合体BのMnは46,000、Mwは276,000であった。
【0093】
この共重合体B 100重量部に、ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−
t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.5重量部を混合し、続いて真空プレス
機により250℃で100μm厚のフィルムBを得た。フィルムBのガラス転移温度は205℃であり、表1に示したように、耐熱性、透明性、低吸水性に優れ、伸び特にフィルムの強さの指標である破断エネルギーが非常に大きく、溶融成形性に優れた共重合体であった。
【0094】
[実施例3]
前記実施例1において、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを144g(0.96mol.)、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを56g(0.24mol.)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を4.79×10-3mmol 及びトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフ
ルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を4.79×10-3mmolとしたことの他は
実施例1と同様に重合を行った。
【0095】
未反応の単量体の定量から転化率は99%、共重合体中の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は19モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し198gの共重合体Cを得た。共重合体CのMnは46,000、Mwは225,000であった。
【0096】
この共重合体C 100重量部に、ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.5重量部を混合し、続いて真空プレス
機により270℃で100μm厚のフィルムCを得た。フィルムCのガラス転移温度は235℃であり、表1に示したように、耐熱性、透明性、低吸水性に優れ、伸び特にフィルムの強さの指標である破断エネルギーが非常に大きく、溶融成形性に優れた共重合体であった。
【0097】
[実施例4]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン600g、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン 92g(0.61mol.)と5−デシルビシクロ[2.2
.1]ヘプタ−2−エンを84g(0.36mol.)、更に、75重量%のトルエン溶液と
したビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを25.8g(0.21mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.013MPaとなるまで導入した。容器内を40℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を4.9
2×10-3mmol 及びトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を4.92×10-3mmol加えて重合を開始した。重合を
計10時間行った結果、未反応の単量体の定量から転化率は99%、共重合体中の5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は52モル%、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は30モル%、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は18モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し193gの共重合体Dを得た。共重合体DのMnは57,000、Mwは264,000であった。
【0098】
この共重合体D 100重量部に、ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.5重量部を混合し、続いて真空プレス
機により240℃で100μm厚のフィルムAを得た。フィルムDのガラス転移温度は192℃であり、表1に示したように、耐熱性、透明性、低吸水性に優れ、伸び特にフィルムの強さの指標である破断エネルギーが非常に大きく、溶融成形性に優れた共重合体であった。
【0099】
[比較例1]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン600g、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン 99g(0.66mol.)と75重量%のトルエン溶液と
したビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを143.7g(1.07mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.015MPaとなるまで導入した。容器内を50℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を3.
85×10-3mmol 及びトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を3.85×10-3mmol加えて重合を開始した。重合
を計10時間行った結果、未反応の単量体の定量から転化率は99%、共重合体中の5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は38モル%、と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し198gの共重合体Eを得た。共重合体EのMnは46,000、Mwは204,000であった。
【0100】
この共重合体E 100重量部に、ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.5重量部を混合した後、トルエンを加
え固形分濃度20wt%の溶液とし、PETフィルム上にキャスト、100℃で1時間、150℃で1時間乾燥した後、180℃で2時間乾燥して100μm厚のフィルムEを得た。フィルムEのガラス転移温度は272℃であり、表1に示したように、耐熱性、透明性、低吸水性に優れるものの、破断強度は大きいものの伸びが小さく、特にフィルムの強さ(じん性)の指標である破断エネルギーが小さいため脆いフィルムである事と、更に、溶融成形性困難な共重合体であった。
【0101】
[比較例2]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン600g、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを91g(0.39mol.)と75重量%のトルエン溶液と
したビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを145.3g(1.16mol)仕込み、仕込み、撹拌しながらエチレンを0.020MPaとなるまで導入した。容器内を50℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を3.44×10-3mmol 及びトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフル
オロフェニル)ボレートのトルエン溶液を3.44×10-3mmol加えて重合を開始し
た。重合を計10時間行った結果、未反応の単量体の定量から転化率は99%、共重合体中の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は25モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し198gの共重合体Fを得た。共重合体FのMnは62,000、Mwは239,000であった。
【0102】
この共重合体F 100重量部に、ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.5重量部混合し、続いて真空プレス機
により260℃で100μm厚のフィルムFを得た。フィルムFのガラス転移温度は189℃であり、表1に示したように、耐熱性、透明性、低吸水性、溶融成形性に優れる反面、伸びと破断エネルギーが小さく脆いフィルムであり、フィルムの靭性に劣る共重合体であった。
【0103】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体は光学材料、電気・電子部品、医療用器材などに好適に使用することができる。
【0105】
光学材料としては、液晶表示素子、有機EL素子、プラズマディスプレイおよび電子ペーパー、ディスプレイ用カラーフィルター基板、ナノインプリント基板、ITOや導電性樹脂層を積層した透明導電フィルムおよび透明導電膜、タッチパネル、導光板、保護フィルム、偏向フィルム、位相差フィルム、近赤外線カットフィルム、光拡散フィルム、反射防止フィルム、高反射フィルム、半透過半反射フィルム、NDフィルター、ダイクロイックフィルター、電磁波シールドフィルム、ビームスプリッター、光通信用フィルター、カメラレンズ、ピックアップレンズ、F−θレンズなどの光学レンズおよびプリズム類、MD、CD、DVDなどの光学記録基板などに用いることができる。医療用器材としては薬品用パッケージ材料、滅菌容器、シリンジ、パイプ、チューブ、アンプルなどに用いられる。電子・電気部品としては容器、トレイ、キャリアテープ、セパレーションフィルム、OA機器の絶縁材料、フレキシブルプリント基板の絶縁層材料などに用いることができる。
【出願人】 【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100081994
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊一郎

【識別番号】100103218
【弁理士】
【氏名又は名称】牧村 浩次

【識別番号】100107043
【弁理士】
【氏名又は名称】高畑 ちより

【識別番号】100110917
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 亨


【公開番号】 特開2008−13709(P2008−13709A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188051(P2006−188051)