トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 ポリビニルアセタール樹脂
【発明者】 【氏名】竹原 寛明

【要約】 【課題】本発明は、膜厚変動による塗工ムラや塗工時の膜切れなどを生じることがなく優れた塗工性を有する塗工溶液を得ることができるポリビニルアセタール樹脂を提供する。

【構成】本発明のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応によって合成されたポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が300〜3000で且つゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分散度(Mw/Mn)が5.0〜10.0であると共に、上記ポリビニルアセタール樹脂をメチルエチルケトンに溶解させて得られ且つB型粘度計による溶液粘度が3700mPasである樹脂溶液における剪断応力220Pa時の複素弾性率G’が0.2〜0.9Paであることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応によって合成されたポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が300〜3000で且つゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分散度(Mw/Mn)が5.0〜10.0であると共に、上記ポリビニルアセタール樹脂をメチルエチルケトンに溶解させて得られ且つB型粘度計による溶液粘度が3700mPasである樹脂溶液における剪断応力220Pa時の複素弾性率G’が0.2〜0.9Paであることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工性に優れた塗工溶液を得ることができるポリビニルアセタール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルブチラール樹脂は、各種溶剤への溶解性が良好であること、また、金属や無機粉末の分散性に優れるといった点から、塗工プロセスを必要とする各分野において、好適に用いられている。
【0003】
しかしながら、一般のポリビニルアセタール樹脂は塗工するために特定の粘度に調整した時に、生産性を上げるために塗工速度を上げようとすると、膜厚の変動による塗工ムラが発生したり、或いは、支持体と、塗布される塗工溶液との間に気泡が巻き込まれ、塗工溶液の膜切れなどの不具合が発生して塗工生産性が低下するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特公昭43−4924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、膜厚変動による塗工ムラや塗工時の膜切れなどを生じることがなく優れた塗工性を有する塗工溶液を得ることができるポリビニルアセタール樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応によって合成されたポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が300〜3000で且つゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分散度(Mw/Mn)が5.0〜10.0であると共に、上記ポリビニルアセタール樹脂をメチルエチルケトンに溶解させて得られ且つB型粘度計による溶液粘度が3700mPasである樹脂溶液における剪断応力220Pa時の複素弾性率G’が0.2〜0.9Paであることを特徴とする。
【0007】
本発明のポリビニルアセタール樹脂の重合度は、小さいと、ポリビニルアセタール樹脂を用いた塗工溶液から得られた膜強度が低下する一方、大きいと、ポリビニルアセタール樹脂を用いた塗工溶液から得られた膜厚が薄くなり過ぎるので、300〜3000に限定され、400〜2000が好ましい。
【0008】
又、本発明のポリビニルアセタール樹脂におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分散度(Mw/Mn)は、小さいと、ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られた塗工溶液の塗工時に膜切れを生じる一方、大きいと、ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られた塗工溶液の塗工時に塗工ムラが生じるので、5.0〜10.0に限定され、5.0〜8.0が好ましい。なお、ポリビニルアセタール樹脂におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分散度(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランで展開したゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定したものをいう。なお、Mwは重量平均分子量を、Mnは数平均分子量をいう。
【0009】
そして、本発明のポリビニルアセタール樹脂をメチルエチルケトンに溶解させて得られる樹脂溶液において、B型粘度計による溶液粘度が3700mPasとなるように調整した時の剪断応力220Paでの複素弾性率G’は、0.2〜0.9Paに限定される。
【0010】
これは、上記樹脂溶液の複素弾性率G’が低いと、ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られた塗工溶液の塗工時に膜切れを生じる一方、高いと、ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られた塗工溶液の塗工時に塗工ムラが生じるからである。
【0011】
ここで、上記樹脂溶液の複素弾性率G’は下記の要領で測定されたものをいう。先ず、ポリビニルアセタール樹脂をメチルエチルケトンに溶解させて樹脂溶液を作製する。この際に、樹脂溶液におけるB型粘度計による溶液粘度が3700mPasとなるように調整する。
【0012】
そして、レオメーターを用いて周波数1Hz、剪断応力0.1〜1000Paの条件下にて樹脂溶液の粘弾性測定を行ない、剪断応力が220Paの時の複素弾性率G’を得ることができる。なお、レオメーターとしては、例えば、BOHLIN INSTRUMENTS社から商品名「Gemini150」にて市販されているものを用いることができる。
【0013】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応によって合成されたものであり、具体的には、一般的に、水、アルコール、水とアルコールとの混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)中などで、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを酸触媒の存在下にて反応させることにより合成される。
【0014】
なお、ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたものであり、ポリ酢酸ビニルのケン化とアセタール化とを同時に行ない、ポリ酢酸ビニルから一挙にポリビニルセタール樹脂を得ても、或いは、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコールを一旦、取り出し、このポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてもよい。
【0015】
上記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピルアルデヒドなどアセタール化できるアルデヒドであればどのようなアルデヒドを用いてもよいが、n−ブチルアルデヒド、アセトアルデヒドが好ましい。なお、アルデヒドは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記酸触媒としては、特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸などが挙げられる。又、上記合成反応を停止するために、通常、アルカリ中和を行うが、その際に使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
【0017】
そして、本発明のポリビニルアセタール樹脂を得るためには、二種以上の異なる重合度を有するポリビニルアルコールを混合した後、これらのポリビニルアルコールとアルデヒドとをアセタール化反応させることが好ましい。
【0018】
このように、二種以上の異なる重合度のポリビニルアルコールとアルデヒドとを反応させたり、多官能性アルデヒドや多官能性イソシアネートなどの架橋性モノマーをアルデヒド全量に対して0.001〜0.02mol%含有させたり、或いは、自己架橋性を有するアセトアセチル基を含有するポリビニルアルコールとアルデヒドとをアセタール化反応させることによって、部分的な分子間架橋構造を導入して本発明のポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。
【0019】
上記多官能性アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒドなどが挙げられ、多官能性イソシアネートとしては、例えば、2,4−ジイソシアン酸トルエン、1,6−ジイソシアネートヘキサン、イソフォルニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
又、ポリビニルアセタール樹脂の組成成分として、アセタール基を一つの側鎖として数えた場合、及び、アセタール基をアセタール化された二つの水酸基として数えた場合の何れにおいても、残存アセチル基の割合が0〜25モル%であることが好ましく、残存水酸基の割合が17〜35モル%であることが各種溶剤への溶解性、塗工適正の観点から好ましい。
【0021】
又、本発明のポリビニルアセタール樹脂中に残存するアルデヒド量及びアルデヒド二量体化合物の総量は、多いと、固有の臭いを発するため、環境衛生上の観点から、ポリビニルアセタール樹脂の全重量に対して300ppm以下であることが好ましい。
【0022】
このようにして得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて塗工溶液とするには、用途に適した溶剤にポリビニルアセタール樹脂を溶解させることで得ることができる。また、用途に応じて他の材料と共に配合することもできる。
【0023】
そして、ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られた塗工溶液を塗布する支持体としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリビニルアセタール、セルロースエステル、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、ポリエチレンナフタレートなどの合成樹脂フィルム、ガラス、紙、アルミニウム板などの金属板などが挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、上述の如き構成を有するので、膜厚変動による塗工ムラや塗工時の膜切れなどを生じることがなく優れた塗工性を有する塗工溶液を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施例1)
重合度300、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール10重量部と、重合度500、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール75重量部と、重合度800、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール15重量部とを蒸留水700重量部に加温溶解させて樹脂溶液を作製し、この樹脂溶液を20℃に保持しつつ、樹脂溶液に35重量%の塩酸29重量部を添加し、更に、ブチルアルデヒド14重量部を添加した。
【0026】
次に、樹脂溶液を12℃まで冷却し、この樹脂溶液中にブチルアルデヒド64重量部を添加した。樹脂溶液中にポリビニルブチラール樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、樹脂溶液中に塩酸108重量部を加えて30℃に昇温して10時間に亘って保持した。
【0027】
反応終了後、樹脂溶液中のポリビニルブチラール樹脂を蒸留水で洗浄し、水洗後のポリビニルブチラール樹脂分散溶液に水酸化ナトリウムを添加してポリビニルブチラール樹脂分散溶液のpHを7に調整した。しかる後、ポリビニルブチラール樹脂分散溶液を60℃で10時間に亘って保持した後に冷却した。このときのポリビニルブチラール樹脂分散溶液のpHは6.5であった。
【0028】
続いて、固形分に対し100倍量の蒸留水によりポリビニルブチラール樹脂分散溶液を水洗し、ポリビニルブチラール樹脂分散溶液を50℃にて5時間に亘って保持した後、更に、10倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後に乾燥させてポリビニルブチラール樹脂Aを得た。
【0029】
得られたポリビニルブチラール樹脂Aは、その重合度が525、その残存水酸基量が22モル%、残存アセチル基量が1.5モル%、GPCによる分子量分散度(Mw/Mn)が5.4であった。又、ポリビニルブチラール樹脂AをメチルエチルケトンにB型粘度計による溶液粘度が3700mPasとなるように溶解させて樹脂溶液を作製した。
【0030】
次に、レオメーター(BOHLIN INSTRUMENTS社製 商品名「Gemini150」)を用いて、周波数1Hz、剪断応力0.1〜1000Paの条件下にて樹脂溶液の粘弾性測定を行ったところ、剪断応力220Pa時の複素弾性率G’は0.8Paであった。
【0031】
(実施例2)
ポリビニルアルコールとして、重合度300、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール10重量部と、重合度500、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール90重量部とを用いたこと、ブチルアルデヒド64重量部と共にグルタルアルデヒド0.005重量部を添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂Bを得た。
【0032】
得られたポリビニルブチラール樹脂Bは、その重合度が480、残存水酸基量が22モル%、残存アセチル基量が1.5モル%、GPCによる分子量分散度(Mw/Mn)が5.6であった。又、ポリビニルブチラール樹脂BをメチルエチルケトンにB型粘度計による溶液粘度が3700mPasとなるように溶解させて樹脂溶液を作製し、実施例1と同様にして樹脂溶液の粘弾性測定を行ったところ、剪断応力220Pa時の複素弾性率G’は0.6Paであった。
【0033】
(比較例1)
ポリビニルアルコールとして、重合度500、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール100重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂Cを得た。
【0034】
得られたポリビニルブチラール樹脂Cは、その重合度が500、残存水酸基量が22モル%、残存アセチル基量が1.5モル%、GPCによる分子量分散度(Mw/Mn)が5.4であった。又、ポリビニルブチラール樹脂CをメチルエチルケトンにB型粘度計による溶液粘度が3700mPasとなるように溶解させて樹脂溶液を作製し、実施例1と同様にして樹脂溶液の粘弾性測定を行ったところ、剪断応力220Pa時の複素弾性率G’は0.1Paであった。
【0035】
上記の如くして得られたポリビニルブチラール樹脂を用いて下記の要領で塗工溶液を作製した。
【0036】
(塗工溶液の作製)
ポリビニルブチラール樹脂30重量部及びジエチルケトン70重量部をボールミルに供給して24時間に亘って攪拌混合して塗工溶液を得た。
【0037】
(塗工フィルムの作製)
ポリエステル基材上に塗工溶液を乾燥後の厚みが10μmとなるように自動バーコーターを用いて塗布して乾燥させた。実施例1,2で得られた塗工フィルムには塗工ムラがなかった。一方、比較例1で得られた塗工フィルムには塗工ムラが一部確認された。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也


【公開番号】 特開2008−13676(P2008−13676A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187055(P2006−187055)