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【発明の名称】 熱分解を抑制したメタクリル系樹脂組成物
【発明者】 【氏名】西村 公秀

【氏名】羽田野 恵介

【氏名】和田 一仁

【要約】 【課題】耐熱性、耐薬品性に優れたフィルムを作成するに好適な樹脂組成物を提供する。

【構成】メタクリル酸アルキルエステル93重量部以上を含む単量体と、特定の紫外線吸収剤0.01〜30重量%を共重合することにより得られるメタクリル酸エステル系重合体(A)、もしくは、該メタクリル酸エステル系重合体(A)が、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)を含有することを特徴とし、該メタクリル酸エステル系重合体(A)をフィルム化することにより、上記特性を有するフィルムを得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸エステル単量体とアクリル酸エステル単量体(以下、メタクリル酸エステル系単量体)が重量比で93/7〜100/0の範囲にあり、メタクリル酸エステル系単量体と一般式(1)で示す紫外線吸収剤の重量比が100/0.01〜100/30である単量体混合物を共重合することにより得られる事を特徴とするメタクリル酸エステル系重合体。
【化1】


(式中、XはHまたはハロゲン、R1はH、メチルまたは炭素数4〜6のt−アルキル基、R2は直鎖または枝分かれ鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基、R3はHまたはメチルである。)
【請求項2】
アクリル酸エステル系架橋弾性体(B)不在化において重合した際に得られるメタクリル酸エステル系重合体(E)を含有する請求項1記載のメタクリル酸エステル系重合体。
【請求項3】
当該グラフト重合の際にグラフトされないで単独重合体として存在するメタクリル酸エステル系重合体(D)を含有する請求項1又は請求項2記載のメタクリル酸エステル系重合体。
【請求項4】
アクリル酸エステル系架橋弾性体(B)存在下においてグラフト重合したアクリル酸エステル系グラフト重合体(C)を含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載のメタクリル酸エステル系重合体。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のメタクリル酸エステル系重合体を成形してなるフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルムを被積層体に積層して得られる積層品。
【請求項7】
請求項5に記載のフィルムを共押出しによって熱可塑性樹脂に積層することにより得られる共押出成形品。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物、ポリカーボネート系樹脂組成物、ABS系樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の共押出成形品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解が抑制されたメタクリル系樹脂およびそれを成形してなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸エステルモノマーのみから重合されるポリメタクリル酸エステル樹脂は、優れた透明性や硬度、耐熱性、耐薬品性を持ち、幅広い分野において使用されている。しかし、250〜300℃の加熱によって熱分解が起こりやすいという欠点を有している。これを改善するために、例えば、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステル単量体を共重合する等の手法がとられている。
【0003】
しかし、アクリル酸エステル単量体との共重合では、解重合抑制のためにメタクリル酸エステル単量体に対して10重量%以上のアクリル酸エステル単量体を用いる必要があった。(特許文献1、2)
【特許文献1】特開2004−137298
【特許文献2】特開2004−137299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の課題を解決し、メタクリル酸エステルが有する耐熱性や硬度、透明性、耐薬品性を損なうことなく、熱分解性を抑制したメタクリル酸エステル系重合体、及びこれを含むメタクリル酸エステル系樹脂組成物から形成しうるフィルムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
メタクリル酸エステル単量体とアクリル酸エステル単量体(以下、メタクリル酸エステル系単量体)が重量比で93/7〜100/0の範囲にあり、メタクリル酸エステル系単量体と一般式(1)で示す紫外線吸収剤の重量比が100/0.01〜100/30である単量体混合物を共重合することにより得られる事を特徴とするメタクリル酸エステル系重合体。
【0006】
【化2】


(式中、XはHまたはハロゲン、R1はH、メチルまたは炭素数4〜6のt−アルキル基、R2は直鎖または枝分かれ鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基、R3はHまたはメチルである。)(請求項1)に関する、
アクリル酸エステル系架橋弾性体(B)不在化において重合した際に得られるメタクリル酸エステル系重合体(E)を含有する請求項1記載のメタクリル酸エステル系重合体(請求項2)に関する、
当該グラフト重合の際にグラフトされないで単独重合体として存在するメタクリル酸エステル系重合体(D)を含有する請求項1又は請求項2記載のメタクリル酸エステル系重合体(請求項3)に関する、
アクリル酸エステル系架橋弾性体(B)存在下においてグラフト重合したアクリル酸エステル系グラフト重合体(C)を含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載のメタクリル酸エステル系重合体(請求項4)に関する、
請求項1〜4に記載のメタクリル酸エステル系重合体を成形してなるフィルム(請求項5)に関する、
請求項5に記載のフィルムを被積層体に積層して得られる積層品(請求項6)に関する、
請求項5に記載のフィルムを共押出しによって熱可塑性樹脂に積層することにより得られる共押出成形品(請求項7)に関する、
熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物、ポリカーボネート系樹脂組成物、ABS系樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の共押出成形品(請求項8)、に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のメタクリル系樹脂は加工時の解重合が抑制され、得られるフィルムは、耐薬品性、耐熱分解性、に優れる効果を得たものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)とは、アクリル酸エステル系架橋弾性体(B)不在化において重合した際に得られるメタクリル酸エステル系重合体(E)、又は/及び当該グラフト重合の際にグラフトされないで単独重合体として存在するメタクリル酸エステル系重合体(D)を少なくとも含有するが、必要に応じて、これにアクリル酸エステル系架橋弾性体(B)存在下においてグラフト重合したアクリル酸エステル系グラフト重合体(C)((C)を用いる場合には、(C)のグラフト部分のみが本発明の構成に含まれる)を含有してもよい。
【0009】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)は、メタクリル酸エステル単量体とアクリル酸エステル単量体(以下、メタクリル酸エステル系単量体)が重量比で93/7〜100/0の範囲にあり、メタクリル酸エステル系単量体と一般式(1)で示す紫外線吸収剤の重量比が100/0.01〜100/30である単量体混合物を共重合することにより得られる。メタクリル酸アルキルエステル単量体とアクリル酸エステル単量体の重量比は95/5〜100/0であればより好ましく、97/3〜100/0であれば更に好ましく、100/0であれば特に好ましい。メタクリル酸アルキルエステルを93重量%以上含むものであれば、透明性、硬度、耐熱性、耐薬品性が良好となり好ましい。
【0010】
メタクリル酸エステル系単量体と一般式(1)で示す紫外線吸収剤の重量比は、100/0.01〜100/25であればより好ましく、100/0.01〜100/20であれば更に好ましく、100/0.05〜100/20であれば特に好ましい。100/0.01〜100/30の範囲であれば、加工時の解重合が抑制され好ましい。
【0011】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するメタクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。
【0012】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するアクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。
【0013】
本発明における一般式(1)で示す紫外線吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類であり、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。コストおよび取り扱い性から、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0014】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)とは、メタクリル酸エステル系重合体(D)、又は/及びメタクリル酸エステル系重合体(E)を少なくとも含有するが、必要に応じて、アクリル酸エステル系グラフト重合体(C)((C)を用いる場合には、(C)のグラフト部分のみが本発明の構成に含まれる)を含有してもよい。
【0015】
アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル50〜0重量%を含む単量体混合物、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体からなる混合物を共重合させてなるものである。
【0016】
また、本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)においては、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルと共重合可能なエチレン系不飽和単量体を共重合してもかまわない。
【0017】
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)において用いられる多官能性単量体としては、アリルメタクリレ−ト、アリルアクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルフタレ−ト、ジアリルマレ−ト、ジビニルアジペ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラメタクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラアクリレ−ト、ジプロピレングリコ−ルジメタクリレ−トおよびジプロピレングリコ−ルジアクリレ−ト等があげられ、これらは2種以上が併用されてもよい。
【0018】
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)で用いられるアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルおよび、これらと共重合可能なエチレン系不飽和単量体の具体例は、前記メタクリル酸エステル系重合体(A)の説明において、列挙したものを同様に使用する事ができる。また、必要に応じて一般式(1)で示す紫外線吸収剤を共重合させても良い。
【0019】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法は特に限定されず、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法がいずれも適用可能であるが、重合挙動の制御のし易さ等の観点から乳化重合法が特に好ましい。
【0020】
特に、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)を含有するメタクリル酸エステル系重合体(A)をワンポットにて製造する方法としては、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在化において重合する方法が挙げられる。該方法によると、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)に一部グラフト重合することにより、グラフト修飾されたアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(C)、および未グラフトのメタクリル酸エステル系重合体(D)が得られる。アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)はグラフト修飾されることによりメタクリル酸エステル系重合体(D)中に均一に分散され、透明性の観点から好ましい。
【0021】
乳化重合法により製造する場合、単量体混合物の水相への追加方法としては、単量体混合物の一部もしくは全部を同時に水相へ追加する一括追加や、単量体混合物を一定もしくは不連続の割合で少量ずつ追加していく連続追加が挙げられる。連続追加の場合、重合後のスケール(乳化ミセル外で重合した樹脂)を減少させるために、あらかじめ単量体混合物に水および乳化剤を添加して撹拌し、乳化させたものを追加していくことも可能である。
【0022】
本発明における一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合方法も特に限定されないが、メタクリル酸エステル系重合体(A)の製造中に共重合することが好ましい。
【0023】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)の重合における開始剤としては、本発明の目的を達する事ができれば特に制限はないが、有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの開始剤を使用することができる。具体的には、例えば、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパ−オキサイド、スクシン酸パ−オキサイド、パ−オキシマレイン酸t−ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、さらにアゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤も使用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムの錯体などの還元剤と組み合わせた通常のレドックス型開始剤として使用してもよい。
【0024】
また、前記有機系過酸化物は、重合安定性、粒子径制御の点から、2価の鉄塩等の無機系還元剤および/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ソ−ダ、還元糖、アスコルビン酸等の有機系還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤として使用するのが好ましい。
【0025】
前記乳化重合に使用される界面活性剤も特に限定はなく、通常の乳化重合用の界面活性剤であれば使用することができる。具体的には、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノ−ル類、脂肪族アルコ−ル類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
【0026】
アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)に対するグラフト率は30〜200%であり、より好ましくは50〜200%、最も好ましくは80〜200%の範囲である。グラフト率の範囲が30〜200%であれば、透明性が良好となり好ましい。
【0027】
乳化重合により得られたメタクリル酸エステル系重合体(A)のラテックスは、通常の凝固、洗浄および乾燥の操作により、または、スプレ−乾燥、凍結乾燥などによる処理、さらには、ラテックス中にアセトンやTHFなどの水溶性有機溶剤を投入することにより、メタクリル酸エステル系重合体(A)が水相より分離、回収される。
【0028】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)には、必要に応じて、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンなどの炭化水素系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を配合することも可能である。ブレンドの方法は本発明の目的を達する事が出来るのであれば、特に限定されない。
【0029】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)には、着色のために無機系顔料または有機系染料を、熱や光に対する安定性を更に向上させるために抗酸化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを、あるいは、抗菌、脱臭剤、滑剤等を、単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0030】
本発明で得られるメタクリル酸エステル系重合体(A)は、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形などの各種プラスチック加工法によって様々な成形品に加工できる。
【0031】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)は、特にフィルムとして有用であり、例えば、通常の溶融押出法であるインフレーション法やTダイ押出法、あるいはカレンダー法、更には溶剤キャスト法等により良好に加工される。また、必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、二軸延伸などによるフィルムの改質も可能である。
【0032】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)から得られるフィルムの厚みは、10〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。フィルムの厚みが10〜300μmの範囲であれば、フィルムの加工性、及びフィルムの透明性が良好となり、好ましい。
【0033】
また、本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)より得られたフィルムは、必要に応じて、フィルム表面の光沢を低減させることができる。その方法は、本発明の目的を達する事が出来れば特に制約はないが、例えば、メタクリル酸エステル系重合体(A)に無機充填剤または架橋性高分子粒子を混練する方法等で実施することが可能である。また、得られるフィルムをエンボス加工により、フィルム表面の光沢を低減させることも可能である。
【0034】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)は、共押出しによって熱可塑性樹脂に積層することができる。共押出しする方法は、特に限定されないが、通常の共押出し成形、多層押出し成形が有用であり、例えば、通常の溶融共押出し法である異型押出し法やTダイ押出し法、あるいはインフレーション法やカレンダー法等により良好に加工される。また、得られる成形品がフィルムやシートの場合は、必要に応じて、両面をロールまたは金属ベルトに同じに接触させることにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同じに接触させることにより、表面性のより優れたフィルムやシートを得ることも可能である。また、目的に応じて、二軸延伸による多層シートの改質も可能である。
【0035】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)が共押出しできる熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、MBS系樹脂、MS系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の組成物があげられ、これらの組成物は2種以上が併用されてもよい。相溶性と工業的観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂の組成物が好ましい。
【0036】
本発明におけるポリ塩化ビニル系樹脂には、塩化ビニル単独重合体だけでなく、塩化ビニルおよび酢酸ビニル等の他の単量体との共重合体、後塩素化した塩素化塩化ビニル樹脂も含まれる。また、軟質塩化ビニル樹脂も含まれる。
【0037】
共押出しする際の本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)の厚みは、10μm〜5mmが好ましく、10μm〜3mmがより好ましい。厚みが10μm未満では成形が困難となる傾向があり、5mmを超えると、透明性が低下する傾向がある。
【0038】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)より得られるフィルムは、被積層体に積層して用いることができる。被積層体としては、本発明の目的を達する事が出来れば特に制約はないが、金属、陶器などの無機物品や、プラスチック、木材、皮革などの有機物品が挙げられる。フィルムの積層方法としては、積層成形や、被積層体に接着剤を塗布した後、フィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネ−トや、ドライラミネ−ト、エキストル−ジョンラミネ−ト、ホットメルトラミネ−トなどがあげられる。
【0039】
プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するインサート成形またはラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後に金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するインモールド成形などがあげられる。
【0040】
本発明のメタクリル系樹脂組成物から得られるフィルム積層品は、家具や自動車内装材,自動車外装材などの塗装代替用途、屋根、雨樋、外壁、柵、杭、窓枠、浴室設備、壁紙、床材などの建材用部材、日用雑貨品、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリなどのOA機器のハウジング、電気または電子装置の部品などに使用することができる。また、成形品としては、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、光学レンズ、光ファイバ、光ディスク、液晶用導光板、液晶用フィルム、滅菌処理の必要な医療用品、電子レンジ調理容器、家電製品のハウジング、玩具またはレクリエーション品目などに使用することができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
また、製造例、実施例および比較例中の「部」は重量部、「%」は重量%を表す。
略号はそれぞれ下記の物質を表す。
【0043】
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
tDM:ターシャリドデシルメルカプタン
AlMA:メタクリル酸アリル
RUVA:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2− H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、RUVA−93)。
【0044】
なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法はつぎのとおりである。
【0045】
(重合転化率の評価)
得られた重合ラテックスを、熱風乾燥機内にて120℃で1時間乾燥して固形成分量を求め、100×固形成分量/仕込み単量体(%)により重合転化率(%)を算出した。
【0046】
(アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径の評価)
得られたフィルムを、透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−1200EX)にて、加速電圧80kV、RuO4染色超薄切片法で撮影し、得られた写真からアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)画像を無作為に100個選択し、それらの粒子径の平均値を求めた。
(グラフト率の測定)
得られたアクリル系グラフト共重合体(A)1gをメチルエチルケトン40mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数3000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とを分離した。得られた不溶分を、アクリル酸エステル系グラフト重合体(C)として、次式により算出した。
グラフト率(%)={(メチルエチルケトン不溶分の重量−アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の重量)/アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の重量}×100
(熱分解性の評価)
TGA(RIGAKU製 TAS100)にて分析し、100℃を起点として、200℃、250℃、300℃における重量減少率を評価した。分析は、窒素フロー50ml/min、昇温速度10℃/minの条件にて測定した。
【0047】
(Tgの評価)
DSC(Seiko Instruments製、熱気回分析装置TMA−SS)にて分析し、窒素フロー50ml/min、昇温速度10℃/minの条件にて測定した。
【0048】
(透明性の評価)
得られたフィルムの透明性は、JIS K6714に準じて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%にてヘイズを測定した。
【0049】
(鉛筆硬度の評価)
得られたフィルムの鉛筆硬度を、JIS S−1005に準じて測定した。
【0050】
(耐折曲げ割れ性の評価)
得られたフィルムを25℃雰囲気下において1回180度折り曲げて、折り曲げ部の変化を目視で評価した。
○:割れが認められない
×:割れが認められる。
【0051】
(耐薬品性の評価)
温度23℃にて、得られたフィルムにコパトーン(エスエスエル ヘルスケア ジャパン(株))を薄く塗布し、23℃×1時間静置後、50℃×1時間静置し、濡れガーゼにてコパトーンを擦り取り、フィルム表面を目視観察し評価した。
○:跡なく擦り取れる。
△:跡がわずかに見られる。
×:跡がはっきり確認できる。
【0052】
(製造例1)メタクリル系樹脂組成物の製造
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.25部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.001部
硫酸第一鉄 0.00025部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、表1中(1)に示した単量体混合物(B)<すなわち、BA90重量%およびMMA10重量%からなる単量体混合物100部に対しAlMA2部およびCHP0.2部からなる単量体混合物30部、およびRUVA(一般式(1)中の、XがH、R1がH、R2がメチレン基、R3がメチル基)0.3部>を10部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)を得た。重合転化率は99.5%であった。
【0053】
【化3】


その後、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05部を仕込んだ後、内温を60℃にし、表1中(1)に示した単量体混合物(A)<すなわち、MMA100重量%からなる単量体混合物100部に対しtDM0.5部およびCHP0.5部からなる単量体混合物70部、およびRUVA(一般式(1)中の、XがH、R1がH、R2がメチレン基、R3がメチル基)0.7部>を10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、メタクリル系樹脂(C)を得た。重合転化率は98.5%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して樹脂粉末(1)を得た。
【0054】
【表1】


(製造例2〜7)
最初に仕込むジオクチルスルフォコハク酸ナトリウムおよび単量体組成を表1のように変更した以外は、製造例1と同様に重合を行い、凝固、水洗、乾燥して、樹脂粉末(2)〜(7)を得た。
(製造例8)
単量体混合物(B)および単量体混合物(B)重合後のジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05部を仕込まない以外は、製造例1と同様に重合を行い、凝固、水洗、乾燥して樹脂粉末(8)を得た。
【0055】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
得られた樹脂粉末を、表2に示すように配合し、混合機((株)カワタ製、スーパーフローター型式SFC−50)にて3分間ブレンドした後、40ミリφベント付き単軸押出機を用いてシリンダ温度を240℃に設定して溶融混練を行い、ペレット化した。得られたペレットを、Tダイ付き40ミリφ押出機(ナカムラ産機(株)製、NEX040397)を用いて、ダイス温度240℃にて成形し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0056】
得られたパウダーおよびフィルムを用いた種々の特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0057】
【表2】


メタクリル酸エステル系重合体(A)の単量体組成比および紫外線吸収剤の共重合条件が、本発明の範囲を外れると、樹脂の熱分解が抑制できず、または/および、耐薬品性に優れたフィルムを得ることができなかった。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−13660(P2008−13660A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186091(P2006−186091)