トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 有機−無機ハイブリッド材料、その製造方法、及び超親水性材料
【発明者】 【氏名】青島 俊栄

【氏名】川村 浩一

【要約】 【課題】支持体に対する密着性に優れた凹凸表面を備える有機−無機ハイブリッド材料、及びその製造方法、更に、前記有機−無機ハイブリッド材料を用い、超親水性とその持続性を有する超親水性材料を提供する。

【構成】支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなり、且つ、凹凸表面を有する有機−無機複合層とを備える。この有機−無機ハイブリッド材料を用いて超親水性材料を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなり、且つ、凹凸表面を有する有機−無機複合層と、を備えたことを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項2】
前記凹凸表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項3】
前記凹凸表面の比表面積率が1.2以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項4】
前記凹凸表面における凸部の高さが0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項5】
前記グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項6】
前記グラフトポリマー鎖が、その鎖中にアミド基を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項7】
支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程と、
該グラフトポリマー層中に、体積平均粒径が1μm以上の無機微粒子を付与し、更に、当該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い、凹凸表面を有する有機−無機複合層を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッド材料を用いたことを特徴とする超親水性材料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機ハイブリッド材料、その製造方法、及び該有機−無機ハイブリッド材料を用いた超親水性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機高分子材料は軽量、柔軟で、絶縁性、成型加工性などが優れるため、幅広い応用がある一方、耐食性、耐熱性が低いなどの欠点がある。これに対し、無機材料は優れた耐食性、耐熱性を持っており、これらを混合することでお互いの長所を併せ持ったような、従来にない材料を作製する試みが盛んに行われている。
また、異種の高分子化合物を混合したり、相溶化剤により相溶化させポリマーアロイ化させることにより、新しい機能を発現させる研究も盛んに行われている。
【0003】
一方、プラスチック基材上に、様々な無機材料、例えば、導電性材料、ハードコート材料、光記録材料、光触媒活性材料などからなる層を設け、機能性フィルムを作製することが広く行われている。プラスチック基板上に、このような無機材料を設ける場合、一般に基板との密着性が不十分なため、例えば、プラスチック基板上に接着層を設け、その上に無機材料層を設けることが一般的である。しかしながら、この方法では、プラスチック基材と接着層、又は接着層と無機材料との密着性は必ずしも十分ではなく、経時により密着性の低下がみられるなどの問題点があった。したがって、プラスチック基板上に無機材料を密着性良く形成させる技術の開発が強く望まれていた。
【0004】
他方、ガラス、セラミックス、金属、有機高分子材料などの表面に撥水性及び親水性を付与することが近年盛んに検討されている。固体表面の濡れ性は表面の化学的性質と表面形状に影響を受けるが、例えば、水接触角が10°以下であるような超親水性表面や150°以上である超撥水性表面は化学的性質のみでは達成できず、表面に凹凸構造を持たせることで、基板表面の親水性又は撥水性を向上させる必要があることが知られている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。
【0005】
この凹凸構造を持たせるために、例えば、エッチング法が用いられるが、この場合、基材自体が劣化するという問題点があった。
また、金属酸化物薄膜を形成することにより、表面に凹凸構造を有する親水性・防曇防汚性薄膜形成方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、ガラス基板表面の処理では好適であるものの、有機基板表面に金属酸化物薄膜を形成した場合では、有機・無機界面での密着性が低く、この密着性を改良する新たな技術の開発が必要であった。
【特許文献1】特開2004−2104号公報
【非特許文献1】R.N.Wenzel, J. Phys. Colloid Chem. 1949, 53, 1466.
【非特許文献2】A.B.D.Cassie, Discuss.Farady Soc. 1948, 3, 11.
【非特許文献3】R.E.Johnson Jr and R.H.Dettre. Adv.Chem.Ser. 1963, 43, 112.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような先行技術の問題点を考慮した本発明の目的は、支持体に対する密着性に優れた凹凸表面を備える有機−無機ハイブリッド材料及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記有機−無機ハイブリッド材料を用い、超親水性とその持続性を有する超親水性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、支持体上に直接結合したグラフトポリマー鎖と、金属アルコキシドの加水分解及び縮重合反応により形成された架橋構造と、を含む有機−無機複合層について鋭意研究を進めた結果、該有機−無機複合層の表面を凹凸形状にすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなり、且つ、凹凸表面を有する有機−無機複合層と、を備えたことを特徴とする。
本発明において、凹凸表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μm以上である、及び/又は、比表面積率が1.2以上であることが好ましい。
また、凹凸表面における凸部の高さが0.1〜5μmであることが好ましい態様である。
更に、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を用いて、本発明の超親水性材料を得ることができる。
【0009】
このようなグラフトポリマー鎖は、支持体表面に発生した開始種を起点とした重合反応により生成したものであることが好ましい。
また、グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基、及び/又は、アミド基を有することが好ましい。
更に、グラフトポリマー鎖が、極性基、好ましくはアミド基を有する構造単位と、シランカップリング基などのSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有する構造単位と、の共重合体であることが好ましい態様である。
加えて、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を超親水性材料に適用する場合、グラフトポリマー鎖中には、極性基の1種である親水性基を有することが好ましい態様である。
【0010】
また、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法は、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程と、該グラフトポリマー層中に、体積平均粒径が1μm以上の無機微粒子を付与し、更に、当該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い、凹凸表面を有する有機−無機複合層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
本発明における凹凸表面を有する有機−無機複合層は、支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー鎖(有機成分)と、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中において、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造(無機成分)と、を含んで構成される。このような有機−無機複合層は、薄層であっても、耐摩耗性が増大し、高い耐久性を有することから、その表面である凹凸表面は支持体との密着性に優れるものとなる。
特に、グラフトポリマー鎖が極性基を有する場合、その極性基の機能により架橋構造との間に極性相互作用が形成され、強度、及び耐久性に優れた有機−無機複合層とすることができる。更に、グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有する場合には、該グラフトポリマー鎖と架橋構造との間に共有結合が形成され、有機−無機複合層の強度、及び耐久性が向上する。
また、この有機−無機複合層が親水性を示す場合、その表面が凹凸形状を有することで、その親水性が更に向上し、超親水性を示すようになるものと思われる。その結果、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を用いることで、超親水性とその持続性を有する超親水性材料を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支持体に対する密着性に優れた凹凸表面を備える有機−無機ハイブリッド材料及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明によれば、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を用い、超親水性とその持続性を有する超親水性材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなり、且つ、凹凸表面を有する有機−無機複合層と、を備えたことを特徴とする。
つまり、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、支持体と、凹凸表面を有する有機−無機複合層と、を備えた材料ものである。
なお、本発明において、「凹凸表面を有する有機−無機複合層」とは、最大高低差が0.1μm以上の表面を有する有機−無機複合層であることを意味する。
本発明の有機−無機ハイブリッド材料としては、反応性、化合物の入手の容易性から、Siのアルコキシドを用いて架橋構造が形成されていることが好ましい。
前記したようなアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を、本発明では、以下、適宜、「ゾルゲル架橋構造」と称する。
【0014】
本発明の有機−無機ハイブリッド材料において、凹凸表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.033μm以上であり、更に好ましくは0.035μm以上である。また、凹凸表面の耐久性の点から、算術平均粗さ(Ra)の上限値は1.0μmであることが好ましい。
ここで、算術平均粗さ(Ra)の測定は、JIS B 0601−1994に記載された方法に準じて実施される。
【0015】
また、本発明の有機−無機ハイブリッド材料において、凹凸表面の比表面積率が1.2以上であることが好ましく、より好ましくは1.25以上であり、更に好ましくは1.3以上である。また、凹凸表面の耐久性の点から、比表面積率の上限値は2であることが好ましい。
ここで、比表面積率の測定は、簡易AFM(nanopics、セイコーインスツルメンツ(株)製)により行われる。
【0016】
更に、本発明の有機−無機ハイブリッド材料において、凹凸表面における凸部の高さが0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜4.5μmであり、更に好ましくはより好ましくは0.1〜4.0μmである。
ここで、本発明における有機−無機複合層表面の凸部の高さとは、測定面内における最大高低差であるものを意味する。
なお、凸部の高さの測定は、簡易AFM(nanopics、セイコーインスツルメンツ(株)製)により行われる。
【0017】
本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、例えば、超親水性材料、反射防止膜、帯電防止膜等に適用することができる。中でも、材料表面が高い濡れ性を有する点から、超親水性材料に適用することが好ましい。
ここで、本発明において、「超親水(性)」とは、水との接触角が10°以下であるものを指し、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を用いてなる本発明の超親水性材料では、凹凸表面が、水との接触角が10°以下であることを意味する。
ここで、水との接触角は、協和界面科学(株)製、CA−Zにより測定することができる。
【0018】
このような本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、下記の本発明の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法により製造されることが好ましい。
即ち、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法は、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程〔以下、適宜、「グラフトポリマー層形成工程」と称する。〕と、該グラフトポリマー層中に、体積平均粒径が1μm以上の無機微粒子を付与し、更に、当該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い、凹凸表面を有する有機−無機複合層を形成する工程と、〔以下、適宜、「表面凹凸有機−無機複合層形成工程」と称する。〕と、を有する方法が適用されることが好ましい。
以下、「グラフトポリマー層形成工程」、及び「表面凹凸有機−無機複合層形成工程」について順に説明する。なお、各工程の説明では、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を超親水性材料に適用した場合の好ましい態様についてもあわせて説明する。
【0019】
<グラフトポリマー層形成工程>
本工程では、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する。
支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させる方法としては、(1)支持体を基点として、重合可能な2重結合を有する化合物を表面グラフト重合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法や、(2)支持体と反応する官能基を有するポリマーと支持体表面とを化学結合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法がある。
この2つの方法について以下に説明する。
【0020】
(1)支持体を基点として、重合可能な2重結合を有する化合物を表面グラフト重合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法
この方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる方法である。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱などの方法で支持体表面上に活性種を与え、その活性種を基点として、支持体と接するように配置された重合可能な2重結合を有する化合物を重合させる方法である。この方法によれば、生成するグラフトポリマー鎖の末端が支持体表面に直接結合され、固定される。
【0021】
本発明を実施するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には、表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線等の放射線照射グラフト重合法が記載されている。光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びY.Ikada et al,Macromolecules vol.19、page 1804(1986)などに記載の方法を適用することができる。
具体的には、PETなどの高分子表面を、プラズマ、若しくは、電子線にて処理して表面に活性種であるラジカルを発生させ、その後、その活性種を有する支持体表面と重合可能な2重結合を有する化合物(例えば、モノマー)と、を反応させることによりグラフトポリマー鎖を生成させることができる。
光グラフト重合は、上記記載の文献のほかに、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)に記載されるように、フィルム支持体の表面に光重合性組成物を塗布して、ラジカル重合化合物を接触させて光を照射することによっても実施することができる。
【0022】
(1)の方法によってグラフトポリマー鎖を生成する際に有用な化合物は、重合可能な2重結合を有していることが必要である。また、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用の形成性を考慮すると、重合可能な2重結合を有し、且つ、極性基を有する化合物であることが好ましい。更に、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との間に共有結合を形成することを考慮すると、重合可能な2重結合を有し、且つ、特定元素アルコキシド基を有する化合物であることが好ましい。
また、製造される有機−無機ハイブリッド材料を超親水性材料に適用する場合には、グラフトポリマー鎖中に親水性基を有することが好ましい。そのため、(1)の方法では、分子内に2重結合を有し、且つ、極性基の1種である親水性基を有する化合物を用いることが好ましい。
この方法に適用される化合物としては、分子内に2重結合を有し、必要に応じて極性基及び/又は特定元素アルコキシド基を有していれば、ポリマーでも、オリゴマーでも、モノマーでも、これらいずれの化合物をも用いることができる。
本発明において有用な化合物の一つは、極性基(親水性基)を有するモノマーである。
【0023】
本発明で有用な極性基(親水性基)を有するモノマーとは、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマーや、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離し得る酸性基を有するモノマーが挙げられるが、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基、などの非イオン性の基を有する極性基(親水性基)を有するモノマーを用いることもできる。
【0024】
本発明において、特に有用な極性基(親水性基)を有するモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン酸塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0025】
本発明で有用な極性基(親水性基)を有するマクロマーは、”新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている合成法により得ることができる。また、山下雄他著”マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。
具体的には、アクリル酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルアセトアミドなど、上記の具体的に記載した極性基(親水性基)を有するモノマーを使用して、文献記載の方法に従い極性基を有するマクロマーを合成することができる。
【0026】
本発明で使用される極性基(親水性基)を有するマクロマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸基含有モノマーから誘導されるマクロマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロマーとして有用に使用することができる。
これらの中でも、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用が強く形成される点から、極性基としてアミド基を有するマクロマーを用いることが好ましい。
これらのマクロマーのうち有用な分子量は、400〜10万の範囲、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万の範囲である。
【0027】
また、本発明におけるグラフトポリマー鎖は、先に述べたように、その鎖中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基(以下、適宜、特定元素アルコキシド基と称する)を有することが好ましい。この特定元素アルコキシド基は、後述する架橋剤(金属アルコキシド)との加水分解及び縮重合反応を経て共有結合を形成しうる置換基である。このようにグラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有することで、後述の有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造とグラフトポリマー鎖との間に共有結合を形成することができる。
(1)の表面グラフト重合法を用いる場合には、特定元素アルコキシド基を有するモノマーやマクロマーを用いることが好ましい。この特定元素アルコキシド基として代表的なシランカップリング基を例に挙げて具体的に説明する。本発明に好適なシランカップリング基として、下記一般式(I)に示すような官能基を例示することができる。
【0028】
【化1】


【0029】
上記一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数8以下の炭化水素基を表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
及びRは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0030】
上記一般式(I)に示すような官能基を有するモノマーとしては、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリイソプロピルシラン、メタクリロキシプロピル(トリスメトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0031】
本発明において、(1)の方法を用いる場合には、極性基を有するモノマーやマクロマーと、シランカップリング基などの特定元素アルコキシド基を有するモノマーやマクロマーと、を用い、表面グラフト重合法にて共重合させて、グラフトポリマー鎖を生成することが好ましい。中でも、極性基としてアミド基を有するモノマーやマクロマーを用いることがより好ましい。
また、製造される有機−無機ハイブリッド材料を超親水性材料に適用する場合には、共重合させる際に、極性基の1つである親水性基を有するモノマーやマクロマーを用いることが好ましい。
【0032】
(2)支持体と反応する官能基を有するポリマーと支持体表面とを化学結合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法
この方法においては、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と支持体表面の官能基とを化学反応させることでグラフトポリマー鎖を生成させることができる。支持体と反応する官能基としては、支持体表面の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。
主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーである。
また、この時に使用されるポリマーは、更に極性基(親水性基)を有することが好ましく、極性基を有するポリマーとしては、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドなどを挙げることができる。
これら以外にも、前述の(1)の方法で使用される極性基を有するモノマーの重合体、若しくは、極性基を有するモノマーを含む共重合体を使用することもできる。
なお、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用が強く形成される点から、極性基としてアミド基を有するポリマーを用いることが好ましい。
また、製造される有機−無機ハイブリッド材料を超親水性材料に適用する場合には、(2)の方法において、極性基の1種である親水性基を有するポリマーを用い、親水性を有するグラフトポリマー層を形成することが好ましい。
【0033】
一方、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーは、更にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基(特定元素アルコキシド基)を有することが好ましい。このポリマーを用いることで、生成されるグラフトポリマー鎖中に特定元素アルコキシド基を導入することができる。このようにグラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有することで、後述の有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造とグラフトポリマー鎖との間に共有結合を形成することができる。
本発明においては、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーが、極性基としてアミド基と特定元素アルコキシド基との両方を有することが特に好ましい。
【0034】
本発明において、ゾルゲル架橋構造との極性相互作用の形成性や、共有結合の形成性の点から、上記のような方法で生成したグラフトポリマー鎖中は、アミド基及び/又は特定元素アルコキシド基を有することが好ましい。
本発明におけるグラフトポリマー鎖中のアミド基の好ましい導入量は、10mol%〜90mol%の範囲であり、また、特定元素アルコキシド基の導入量としては、10mol%〜90mol%の範囲であること好ましい。
【0035】
本発明におけるグラフトポリマー鎖は、その鎖中に、上述のような極性基(親水性基)や特定元素アルコキシド基を有することが好ましいが、これらの基以外にも、架橋性基や重合性基などが導入され、それらの基を用いることで、グラフトポリマー鎖間で架橋構造を形成していてもよい。
【0036】
〔支持体〕
本発明における支持体としては、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば、如何なる形状のものでも使用することが可能であり、有機−無機ハイブリッド材料や超親水性材料の用途に応じて、適宜選択すればよい。
支持体としてフィルムを使用する場合、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ナイロン66フィルム、ナイロン6フィルム、メタキシリデンジアミン共重合ポリアミドフィルム等のポリアミドフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドイミドフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム;ポリフェニレンフィルム;ポリスルフォンフィルム;ポリフェニレンスルフィッドフィルム;等が挙げられる。これらの中でも、コストパフォーマンス等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが好ましい。これらのフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいし、単独で使用しても、異なる性質のフィルムを積層して使用してもよい。
また、これら以外にも、ガラス、金属、セラミック等からなる支持体を用いてもよい。
【0037】
また、支持体として用いられるフィルムには、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤や安定剤を含有させたり、塗布したりしてもよい。用い得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤などが挙げられる。また、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理、粗面化処理などの表面処理を施してもよい。
【0038】
支持体がフィルムである場合、その厚さは、使用目的の適性を考慮して、適宜、設定することができるため、特に制限を受けるものではないが、一般的な実用の観点から、3μm〜1mmの範囲であることが好ましく、可撓性や加工性の観点から、10〜300μmの範囲であることがより好ましい。
【0039】
このような支持体は、それ自体がエネルギー付与により活性種を発生しうるものであれば、そのまま使用してもよいが、グラフトポリマー鎖を形成する開始種の発生をより効率よく行う目的で、支持体表面に重合開始能を有する表面層を有していてもよい。
重合開始能を有する表面層としては、低分子や高分子の重合開始剤を含有する層であることが好ましい。中でも、安定性、耐久性の観点から、重合開始剤を架橋反応により固定化してなる重合開始層であることが好ましく、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層であることがより好ましい。
この側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層については、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0169〕に記載に詳細に記載されており、この重合開始層を本発明に適用することができる。
【0040】
<表面凹凸有機−無機複合層形成工程>
本工程では、前述のグラフトポリマー層形成工程で得られたグラフトポリマー層中に、体積平均粒径が1μm以上の無機微粒子を付与し、更に、該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い、凹凸表面を有する有機−無機複合層を形成する。
本工程では、無機微粒子をグラフトポリマー層中に付与し、更に、グラフトポリマー層中にゾルゲル架橋構造を形成することで、形成された有機−無機複合層の表面に凹凸形状が形成される。
このように、本発明における有機−無機複合層は、グラフトポリマー鎖からなる有機成分と、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行うことにより形成された架橋構造(ゾルゲル架橋構造)及び無機微粒子からなる無機成分と、が混在する層となる。
【0041】
まず、本工程において用いられる体積平均粒径が1μm以上の無機微粒子について説明する。
無機微粒子としては、ケイ素、スズ、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、アンチモンのいずれかの酸化物、及び炭素からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子が挙げられる。中でも、グラフトポリマー層への付与の際に用いられる溶液中での分散安定性、また、粒径が比較的整い、かつ、微細な粒子を容易に入手できる点で、ケイ素酸化物が好ましく、特にコロイダルシリカが好ましい。
このような無機微粒子の体積平均粒径は1μm以上であることを要し、1.2μm以上であることがより好ましい。また、凹凸表面の耐久性の点から、その上限値は、5μmであることが好ましい。
無機微粒子の体積平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒径測定装置(LA−700、堀場製作所(株)製)により測定することができる。
【0042】
上記のような無機微粒子は、微粒子粉末、及び市販の無機微粒子を分散させた分散物が使用できる。また、微粒子粉末を溶液中に分散させて分散物を調製する際には、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、ロールミル分散機、高圧分散機等従来公知の分散機を使用することができるが、均一かつ微細に分散できるという点で超音波分散機が好ましい。
【0043】
無機微粒子をグラフトポリマー層中に付与する方法としては、上記のように調製された分散液をグラフトポリマー層上に塗布する方法を用いればよい。また、製造工程の簡易化の点から、無機微粒子を後述の架橋剤を含有する塗布液組成物中に添加し、それをグラフトポリマー層上に塗布する方法を用いることが好ましい。
無機微粒子を含有する分散液における無機微粒子の含有量は、有機−無機微粒子の表面に形成する凹凸形状に応じて調整すればよいが、一般的には、5〜70質量%の範囲であることが好ましい。なお、この含有量の好ましい範囲は、架橋剤を含有する塗布液組成物中に無機微粒子を添加した場合も同様である。
【0044】
また、本工程において、グラフトポリマー層中にゾルゲル架橋構造を形成する際には、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行うことにより形成された架橋構造を形成しうる化合物(以下、単に、「架橋剤」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
本発明における架橋剤としては、例えば、下記一般式(II)で表される化合物が用いられる。
下記一般式(II)で表される化合物は、グラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有する場合、その特定元素アルコキシド基と加水分解及び縮重合することで、グラフトポリマー鎖とゾルゲル架橋構造との間に共有結合を形成することができる。これにより、強固な有機−無機複合層を形成することができる。
【0045】
【化2】


【0046】
前記一般式(II)中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRがアルキル基を表す場合、その炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0047】
以下に、一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0048】
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0049】
このような架橋剤を用いてグラフトポリマー層中にゾルゲル架橋構造を形成するには、この架橋剤をエタノールなどの溶媒に溶解後、必要に応じて、触媒等を加えて塗布液組成物を調製し、これをグラフトポリマー層上に塗布し、加熱、乾燥する方法を用いることができる。この方法により、架橋剤が加水分解及び重縮合することにより、ゾルゲル架橋構造が形成される。
なお、上述のように、この塗布液組成物は無機微粒子や無機物質を含有していてもよく、このような塗布液組成物を用いることで、グラフトポリマー層への無機微粒子や無機物質の付与と架橋剤の付与とを同時に行ってもよい。
ここで、加熱温度と加熱時間は、塗布液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から、加熱温度は200℃以下であることが好ましく、加熱時間(架橋時間)は1時間以内が好ましい。
【0050】
塗布液組成物中の架橋剤の含有量は、形成するゾルゲル架橋構造の量に応じて、決定すればよいが、形成される有機−無機複合層の表面硬度及び支持体への密着性の観点から、一般的には、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0051】
また、グラフトポリマー鎖がその鎖中に特定元素アルコキシド基を有する場合、塗布液組成物中の架橋剤の含有量は、特定元素アルコキシド基に対して、架橋剤中の架橋性基が5mol%以上、更に10mol%以上となる量に調整されることが好ましい。
この際、架橋剤の含有量の上限は、特定元素アルコキシド基と十分架橋できる範囲内であれば特に制限はないが、大過剰に添加した場合、架橋に関与しない架橋剤により、形成された有機−無機複合層がべたつくなどの問題を生じる可能性がある。
【0052】
前記塗布液組成物を調製する際に用いる溶媒としては、架橋剤及びその他の成分を、均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0053】
また、前記塗布液組成物には、架橋剤の加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上、好ましい反応効率を得ようとする場合、触媒は必須である。
この触媒としては、酸、或いは塩基性化合物をそのまま用いるか、或いは水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いることができる。触媒を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよいが、濃度が高い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、塗布液組成物中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0054】
酸性触媒或いは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0055】
また、この塗布液組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を目的に応じて使用することができる。例えば、塗布液の均一性を向上させるため界面活性剤などを添加することができる。
【0056】
なお、本発明においては、以下の方法でグラフトポリマー層、及び有機−無機複合層を形成してもよい。
即ち、例えば、前記したような極性基と特定元素アルコキシド基とに加え、更に、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマー、架橋剤、無機微粒子、及び触媒を含有する塗布液組成物を調製し、それをプラズマ若しくは電子線等にて処理して表面に活性種であるラジカルを発生させた支持体上に塗布し、加熱、乾燥させる方法が挙げられる。
この方法では、前記ポリマーが有する支持体と反応する官能基と、支持体とが反応することで、支持体に直接結合したグラフトポリマーが生成し、グラフトポリマー層が形成される。また、塗布液組成物を加熱、乾燥させる際に、架橋剤の加水分解及び縮重合反応が生じ、グラフトポリマー層中に架橋構造を形成することができる。
つまり、このような方法によれば、塗布液組成物を調製し、それを塗布、加熱、乾燥させるという一連の工程により、グラフトポリマー層と有機‐無機複合層とを一度に形成することができる。
【0057】
なお、この塗布液組成物を調製するにあたっては、別途親水性ポリマーを含んでいてもよい。親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、先に挙げたグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な極性基を有するモノマーを重合することにより得ることができる。親水性ポリマーの含有量は固形分換算で、10質量%以上、50質量%未満とすることが好ましい。含有量が50質量%以上になると膜強度が低下する傾向があり、また、10質量%未満であると、皮膜特性が低下し、膜にクラックが入るなどの可能性が高くなり、いずれも好ましくない。
【0058】
以上述べたように、本発明における有機−無機複合層の形成は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年〕、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明における有機−無機複合層の形成に適用することができる。
【0059】
この有機−無機複合層の膜厚は、有機−無機ハイブリッド材料の用途等により選択できるが、一般的には0.1μm〜10μmの範囲が好ましく、0.5μm〜10μmの範囲が更に好ましい。この膜厚の範囲で、十分な強度、及び耐摩耗性が得られ、且つ、カールの発生や、可撓性や耐屈曲性の低下も生じにくいので、好ましい。
また、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を超親水性材料に適用する場合には、有機−無機複合層の膜厚を上記の範囲にすることで、好ましい濡れ性とその耐久性、持続性が得られる。
【0060】
以上説明したように、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法では、無機微粒子を用いて有機−無機複合層の表面に凹凸形状を形成するが、無機微粒子を用いることなく凹凸形状を形成して、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を作製してもよい。
例えば、グラフトポリマー層中でゾルゲル架橋構造を形成する際の条件を調整することで、凹凸表面を有する有機−無機複合層を形成し、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を製造することができる。
【0061】
以上のように、本発明において、有機−無機複合層は、支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー鎖と、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中に形成されるゾルゲル架橋構造と、により構成されており、更に、凹凸表面を有している。この有機−無機複合層を有する本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、有機−無機複合層の凹凸表面と支持体との密着性に優れたものとなる。
従って、本発明の有機−無機ハイブリッド材料を超親水性材料に適用した場合、超親水性を有し、その持続性に優れるものとなる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0063】
[実施例1]
<支持体>
膜厚188μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(A4100、東洋紡(株)社製)を用い、グロー処理装置として平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件で酸素グロー処理を行ってPET支持体を得た。
【0064】
−酸素グロー処理条件−
初期真空 :1.2×10−3Pa
酸素圧力 :0.9Pa
RFグロー :1.5kW
処理時間 :60sec
【0065】
<グラフトポリマー層の形成1>
次に、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、エタノール混合溶液(N,N−ジメチルアクリルアミド:メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン=1:1(モル比)、濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この混合溶液に、上記PET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体をエタノールで充分洗浄して、その構造内に特定元素アルコキシド基であるシランカップリング基及びアミド基を有するグラフトポリマー鎖が支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有するPET支持体を支持体Aとした。
【0066】
<表面凹凸有機−無機複合層の形成1>
得られた支持体Aに、エタノール、水、テトラエトキシシラン、リン酸、コロイダルシリカ、及びポリビニルアルコールを以下の量で含む塗布液組成物1を室温で24時間撹拌したものを塗布し、100℃、10分間加熱乾燥して有機−無機複合層を形成することにより、有機−無機ハイブリッド材料Aを得た。ここで形成された有機−無機複合層の膜厚は、2.4μmであった。
【0067】
−塗布液組成物1−
・テトラエトキシシラン〔架橋剤〕 0.9g
・エタノール 3.7g
・水 8.7g
・リン酸水溶液(0.85%水溶液) 1.3g
・コロイダルシリカ(体積平均粒径:1.4μm) 0.36g
・ポリビニルアルコール水溶液(95%ケン化、10質量%水溶液) 3.0g
【0068】
[実施例2]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、テトラメトキシチタネート1.0gに代えた以外は、実施例1と同様の方法で有機−無機ハイブリッド材料Bを得た。なお、有機−無機ハイブリッド材料Bにおいて、有機−無機複合層の膜厚は、3.2μmであった。
【0069】
[実施例3]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、テトラメトキシジルコネート1.6gに代えた以外は、実施例1と同様の方法で有機−無機ハイブリッド材料Cを得た。なお、有機−無機ハイブリッド材料Cにおいて、有機−無機複合層の膜厚は、2.8μmであった。
【0070】
[実施例4]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、トリメトキシアルミネート0.7gに代えた以外は、実施例1と同様の方法で有機−無機ハイブリッド材料Dを得た。なお、有機−無機ハイブリッド材料Dにおいて、有機−無機複合層の膜厚は、3.0μmであった。
【0071】
[実施例5]
実施例1において、<グラフトポリマー層の形成1>を下記<グラフトポリマー層の形成2>に変更して支持体Bを作製し、更に、<有機−無機複合層の形成1>において用いた支持体Aを支持体Bに変更して有機−無機ハイブリッドフィルムBを作製した以外は、実施例1と同様の方法で有機−無機ハイブリッド材料Eを得た。
【0072】
<グラフトポリマー層の形成2>
アクリルアミド水溶液(濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この水溶液に実施例1で用いたPET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体を蒸留水で充分洗浄して、その構造内にアミド基を有するグラフトポリマー鎖が支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有するPET支持体を支持体Bとした。
【0073】
[実施例6]
<グラフトポリマー層の形成3>
メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン・エタノール溶液(濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この溶液に、実施例1で用いたPET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体を蒸留水で充分洗浄して、その構造内に特定元素アルコキシド基であるシランカップリング基を有するグラフトポリマー鎖が支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有するPET支持体を支持体Cとした。
【0074】
<有機−無機複合層の形成2>
得られた支持体Cに、エタノール、水、テトラエトキシシラン、リン酸、及びコロイダルシリカを以下の量で含む塗布液組成物2を室温で5時間撹拌したものを塗布し、100℃、10分間加熱乾燥して有機−無機複合層を形成することにより、有機−無機ハイブリッドFを得た。ここで形成された有機−無機複合層の膜厚は、2.9μmであった。
【0075】
−塗布液組成物2−
・エタノール 10.5g
・テトラエトキシシラン[架橋剤] 3.5g
・水 1.0g
・リン酸水溶液(0.85%水溶液) 1.0g
・コロイダルシリカ(体積平均粒径:1.4μm) 0.30g
【0076】
[比較例1]
実施例1において用いた支持体(グラフトポリマー層を有すPET支持体)Aを、ポリエチレンテレフタレートに代えた以外は、実施例1と同様の方法で有機−無機ハイブリッド材料Gを得た。
【0077】
〔有機−無機ハイブリッド材料の性能評価〕
実施例1〜6、比較例1の有機−無機ハイブリッド材料A〜Gについて、以下のようにして性能評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0078】
1.表面形状の測定
有機−無機ハイブリッド材料A〜Gの比表面積率、算術平均粗さRa(nm)、及び凸部の高さ(最大高低差P−V)を、簡易AFM(nanopics、セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0079】
2.超親水性の評価
有機−無機ハイブリッド材料A〜Gの表面に対して、協和界面科学(株)製、CA−Zを用い、純水の滴下後、20秒後の角度を測定した。水滴接触角が5°以下であるものを○とした。結果を表1に示す。
【0080】
3.密着性の評価
JIS K5400に準拠し、有機−無機ハイブリッド材料A〜Gの表面に対して、ロータリーカッターにて1mm角の碁盤目100マスを付け、セロテープ(ニチバン(株)製、登録商標)を圧着させたのち、30000mm/minの速度で90度の剥離試験を3回実施した。評価は、剥離試験後に残存する升目の数を測定することにより行った。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】


【0082】
表1の結果より、有機−無機複合層を有する実施例の有機−無機ハイブリッド材料A〜Fは、好適な表面凹凸形状、及び超親水性を有し、支持体と凹凸表面との密着性が良好であることがわかる。
これにより、実施例の有機−無機ハイブリッド材料A〜Fは、超親水性を有し、その持続性を有する超親水性材料として好適であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、超親水性材料(本発明の超親水性材料)、超親水性による防曇性を利用した防曇防汚性材料などの用途として好適に用いることが可能である。
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−7728(P2008−7728A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182289(P2006−182289)