トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 硬化性樹脂組成物および被覆材
【発明者】 【氏名】伊藤 正一

【要約】 【課題】硬化収縮率が小さい上に、耐熱性、特に耐熱水性に優れた硬化性樹脂組成物および被覆材を提供する。

【構成】本発明の硬化性樹脂組成物は、下記(A)〜(F)成分を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(F)成分を含有する硬化性樹脂組成物。
(A)重合性二重結合を1つ有する単官能モノマー:40〜60質量%、
(B)重合性二重結合を2つ以上有する多官能モノマー:15〜40質量%、
(C)流動パラフィン:3〜10質量%、
(D)単官能モノマー(A)に溶解または膨潤可能なポリマー:5〜30質量%、
(E)シランカップリング剤:0.1〜5質量%、
(F)重合禁止剤:0.1〜0.5質量部。
(ただし、(A)〜(F)成分の合計は100質量%である。)
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物100質量部に対して、骨材200〜700質量部を含有する被覆材。
【請求項3】
骨材が下記(a)〜(d)の組成からなる請求項2に記載の被覆材。
(a)粒子径0.7mm以上の成分:20〜50質量%、
(b)粒子径0.25mm以上0.7mm未満の成分:20〜50質量%、
(c)粒子径0.1mm以上0.25mm未満の成分:5〜15質量%、
(d)粒子径0.1mm未満の成分:10〜30質量%。
(ただし、(a)〜(d)成分の合計は100質量%である。)
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築材用の被覆材に用いられる硬化性樹脂組成物に関する。さらには、コンクリート等の土木建築材表面に塗膜を形成するための被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントコンクリートまたはアスファルトコンクリートからなる床面、壁面、道路面等の土木建築材には、ラジカル重合性樹脂などを含む被覆材を塗布して、耐候性、機能性等を向上させることがある。
被覆材としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、アクリルシラップ等のラジカル重合性樹脂が使用される。
上記被覆材のうち、アクリルシラップは、(メタ)アクリル酸エステルとアクリル系重合体と特定範囲の融点のパラフィン及び/又はワックスとを含むものである。このアクリルシラップによれば、塗工作業性に優れ、数時間という短時間で硬化でき、特に冬季施工時の低温下においても比較的短時間で硬化できる。しかも、その硬化物は、強度、耐候性、耐薬品性、耐汚染性、耐磨耗性等に優れる。
しかし、食品工場の厨房等、蒸気または熱湯が間欠的に接触して高温多湿になる場所では、アクリルシラップからなる塗膜にフクレ、割れ等が生じることがあり、耐久性に問題があった。
そこで、熱に対する耐久性を有する硬化性樹脂組成物として、例えば、特許文献1では、特定組成のアクリルシラップからなる被覆材が提案されている。
【特許文献1】特開2002−20440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の被覆材では、耐熱性、特に熱湯がかかった際の耐熱性(耐熱水性)が不足することがあった。
また、被覆材においては、硬化後に発生する引っ張り応力の指標となる硬化収縮率が小さいことが求められるが、特許文献1に記載の被覆材では、硬化収縮率を小さくすることについて充分に検討されていない。
本発明は、硬化収縮率が小さい上に、耐熱性、特に耐熱水性に優れた硬化性樹脂組成物および被覆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記(A)〜(F)成分を含有する。
(A)重合性二重結合を1つ有する単官能モノマー:40〜60質量%、
(B)重合性二重結合を2つ以上有する多官能モノマー:15〜40質量%、
(C)流動パラフィン:3〜10質量%、
(D)単官能モノマー(A)に溶解または膨潤可能なポリマー:5〜30質量%、
(E)シランカップリング剤:0.1〜5質量%、
(F)重合禁止剤:0.1〜0.5質量部。
(ただし、(A)〜(F)成分の合計は100質量%である。)
本発明の被覆材は、上述した硬化性樹脂組成物100質量部に対して、骨材200〜700質量部を含有するものである。
本発明の被覆材は、骨材が下記(a)〜(d)の組成からなることが好ましい。
(a)粒子径0.7mm以上の成分:20〜50質量%、
(b)粒子径0.25mm以上0.7mm未満の成分:20〜50質量%、
(c)粒子径0.1mm以上0.25mm未満の成分:5〜15質量%、
(d)粒子径0.1mm未満の成分:10〜30質量%。
(ただし、(a)〜(d)成分の合計は100質量%である。)
【発明の効果】
【0005】
本発明の硬化性樹脂組成物および被覆材は、硬化収縮率が小さい上に、耐熱性、特に耐熱水性に優れている。したがって、本発明の被覆材から形成される塗膜は、熱湯がかかる場合であっても耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記(A)〜(F)成分を含有するものである。
(A)重合性二重結合を1つ有する単官能モノマー(以下、「単官能モノマー(A)」という。)
(B)重合性二重結合を2つ以上有する多官能モノマー(以下、「多官能モノマー(B)という。」)
(C)流動パラフィン
(D)単官能モノマー(A)に溶解または膨潤可能なポリマー(以下、「ポリマー(D)という。」)
(E)シランカップリング剤
(F)重合禁止剤
【0007】
[単官能モノマー(A)]
単官能モノマー(A)は、該硬化性樹脂組成物から得られる被覆材の塗工作業性、硬化性、得られる塗膜の強度、耐候性、耐薬品性、耐汚染性、耐磨耗性等の各種物性を制御する成分である。
単官能モノマー(A)としては、重合可能な炭素−炭素の二重結合を1つ有するものであればよく、具体的には、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー等が挙げられる。
【0008】
アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素含有モノマー類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の非重合性の官能基を有するモノマー類;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環型(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
本発明において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味する。
ビニル系モノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
これら単官能モノマー(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
単官能モノマー(A)の含有量は、硬化性樹脂組成物(100質量%)中、40〜60質量%であり、41〜55質量%であることが好ましい。単官能モノマー(A)の含有量が40質量%以上であることにより、該硬化性樹脂組成物から得られる被覆材の塗工作業性、硬化性および物性を容易に制御できる。単官能モノマー(A)の含有量が60質量%以下であることにより、被覆材が充分に硬化して、強度を向上させることができる。
【0010】
[多官能モノマー(B)]
多官能モノマー(B)は、該硬化性樹脂組成物から得られる被覆材の塗工作業性、得られる塗膜の耐熱性、強度を制御する成分である。
【0011】
多官能モノマー(B)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル;部分エステル等の多官能重合性単量体類などが挙げられる。
多官能モノマー(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
多官能モノマー(B)の含有量は、硬化性樹脂組成物(100質量%)中、15〜40質量%であり、20〜35質量%であることが好ましい。多官能モノマー(B)の含有量が、15質量%以上であることにより、耐熱性に優れた(具体的には、荷重たわみ温度(HDT)が110℃を超える)被覆材の塗膜を得ることができる。多官能モノマー(B)の含有量が40質量%以下であることにより、被覆材の塗膜の強度を確保でき、また、反応時間を適度に遅くでき、可使時間を長くできる。さらに、硬化性樹脂組成物の製造コスト上昇を抑制できる。
【0013】
[流動パラフィン(C)]
流動パラフィン(C)は、得られる塗膜の硬化収縮率を制御する成分である。
流動パラフィン(C)の具体例としては、常温では液体で、沸点の観点では潤滑油留分に属し、純度の高い液状飽和炭化水素の混合物である。流動パラフィン(C)の中でも、主成分がパラフィン炭化水素ではなく、アルキルナフテン炭化水素混合物であるものが好ましい。
流動パラフィン(C)の含有量は、硬化性樹脂組成物(100質量%)中、3〜10質量%であり、5〜9質量%が好ましい。流動パラフィン(C)の含有量が10質量%以下であることにより、顔料等の着色剤を添加したときの色分かれを防止でき、得られる塗膜の仕上がりが良好になる。また、流動パラフィン(C)の含有量が3質量%以上であることにより、硬化収縮率が小さくなり、得られる塗膜の形状安定性が高くなる。
【0014】
[ポリマー(D)]
ポリマー(D)の具体例としては、単官能モノマー(A)と同様のモノマーが重合した重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロースアセテートブチレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリマー(D)の種類および分子量は、硬化性樹脂組成物の所望の粘度、硬化時間、強度、柔軟性に応じて適宜選択すればよい。
【0015】
ポリマー(D)の含有量は、硬化性樹脂組成物(100質量%)中、5〜30質量%であり、10〜25質量%が好ましい。ポリマー(D)の含有量が30質量%以下であることにより、重合を適度に抑制でき、塗工作業性を容易に制御できる。ポリマー(D)の含有量が5質量%以上であることにより、塗工作業性が高くなる。
【0016】
[シランカップリング剤(E)]
シランカップリング剤(E)は、同一分子中の異なった部分がそれぞれ異なる成分と反応可能な化合物である。
シランカップリング剤(E)の具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤(E)の中でも、耐熱水性がより高くなることから、下記式(1)で表されるシランカップリング剤が好ましい。
【0017】
CH=C(CH)COOCSi(OCH (1)
【0018】
シランカップリング剤(E)の含有量は、硬化性樹脂組成物(100質量%中)、0.1〜5質量%であり、0.5〜3質量%であることが好ましい。シランカップリング剤(E)の含有量が5質量%以下であることにより、単官能モノマー(A)や多官能モノマー(B)の硬化物と、後述する被覆材を構成する骨材との間の密着性が高くなる。また、該硬化性樹脂組成物から得られる被覆材と土木建築材との密着性が良好になり、耐熱(水)性、耐久性に優れる。シランカップリング剤(E)の含有量が0.1質量%以上であることにより、被覆材の塗膜の強度ならびに耐熱(水)性がより良好となる。
【0019】
[重合禁止剤(F)]
重合禁止剤(F)は、硬化性樹脂組成物の可使時間の時間調整ならびに保存安定性を持たせるものである。重合禁止剤(F)の具体例としては、ハイドロキノン、メトキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ジフェニルピクリルヒドラジル、ジーp−フルオルフェニルアミン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ベンゾキノン、クロラニル、p−t−ブチルカテコール等が挙げられる。
本発明の重合禁止剤(F)としては、硬化性樹脂組成物の可使時間を容易に調整できることから、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが好ましい。
【0020】
重合禁止剤(F)の含有量は、硬化性樹脂組成物(100質量%)中、0.1〜0.5質量%であり、0.1〜0.2質量%であることが好ましく、0.1〜0.15質量%であることがより好ましい。重合禁止剤(F)の含有量が0.1質量%以上であることにより、硬化性樹脂組成物の硬化時間が遅くでき、被覆材の可使時間が長くなり、塗工作業性が高くなる。また、重合禁止剤(F)の含有量が0.5質量%以下であることにより、被覆材の硬化時間が過度に長くなることを防止できる。
【0021】
[その他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物においては、必要に応じて、パラフィンワックス(G)、芳香族3級アミン(H)、ベンゾトリアゾール誘導体等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、アエロジル等のチクソトロピック性付与剤などが任意の割合で含まれてもよい。
【0022】
パラフィンワックス(G)が含まれていれば、大気との遮断層が塗膜の表面に形成されるため、空気中の酸素によってラジカル重合が阻害されることを抑制できる。その結果、硬化性樹脂組成物の空気乾燥性や低温硬化性を良好にしたり、得られる塗膜の耐水性、光沢、耐汚れ性等を向上させたりすることができる。
【0023】
パラフィンワックス(G)としては、例えば、以下の(1)〜(3)等が挙げられる。
(1)天然ワックス:キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン、鯨蝋等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス等。
(2)合成ワックス:フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素,モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス;硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス等。
(3)天然ワックスや合成ワックス等の配合ワックス等。
【0024】
パラフィンワックス(G)では、融点の異なる2種類以上のものが併用されていることが好ましい。
また、パラフィンワックス(G)の融点は、30〜80℃であることが好ましい。
【0025】
パラフィンワックス(G)の含有量は、硬化性樹脂組成物(100質量%)中、0.1〜5質量%であることが好ましい。パラフィンワックス(G)の含有量が0.1質量%以上であれば、空気中の酸素遮断効果により、表面硬化性がより向上する。パラフィンワックス(G)の含有量が5質量%以下であれば、(A)〜(D)成分との相溶性が良好になる。
【0026】
芳香族3級アミン(H)は、公知のレドックス触媒であり、被覆材を硬化させる硬化促進剤として用いられる。芳香族3級アミン(H)としては、窒素原子に直接少なくとも1個の芳香族残基が結合しているものが好ましい。
芳香族3級アミン(H)としては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N−(2−ヒドロキシエチル)N−メチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。いずれもp(パラ)体の例を挙げたが、o(オルト)体、m(メタ)体であってもよい。これらの中でも、硬化性樹脂組成物からのホルムアルデヒド放散量が少ないことから、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンが好ましい。
【0027】
硬化性樹脂組成物(100質量%)中の芳香族3級アミン(H)の含有量は、硬化性がより高くなることから、0.1〜10質量%が好ましく、さらに塗工作業性および得られる塗膜の物性がより高くなることから、0.3〜5質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0028】
硬化性樹脂組成物の調製方法としては特に制限されず、例えば、各成分を容器内で攪拌して混合する方法などが挙げられる。
【0029】
以上説明した硬化性樹脂組成物は、(A)〜(F)成分を特定範囲で含有するため、硬化収縮率が小さい上に、耐熱性、特に耐熱水性に優れている。また、この硬化性樹脂組成物はアクリルシラップであるから、塗工作業性に優れ、数時間という短時間で硬化でき、特に冬季施工時の低温下においても比較的短時間で硬化できる。しかも、その硬化物は、強度、耐候性、耐薬品性、耐汚染性、耐磨耗性等に優れる。
【0030】
(被覆材)
本発明の被覆材は、上述した硬化性樹脂組成物と、骨材とを含有するものである。
骨材としては、例えば、珪砂、砂利、砥石等、セメントまたはモルタルに用いられる粗骨材または細骨材;炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム;ガラスビーズ等が挙げられる。
また、骨材は、必要に応じて、カルシウム、マグネシウム、カドミウム、チタン等からなる無機顔料;フタロシアニンブルー等の有機顔料等を含有していてもよい。
【0031】
骨材は、塗工作業性、硬化仕上がり性、耐熱性の観点から、粒子径の異なる成分が組み合わされていることが好ましく、具体的には、下記の組成からなることが好ましい。
(a)粒子径0.7mm以上の成分が20〜50質量%、
(b)粒子径0.25mm以上0.7mm未満の成分が20〜50質量%、
(c)粒子径0.1mm以上0.25mm未満の成分が5〜15質量%、
(d)粒子径0.1mm未満の成分が10〜30質量%。
ただし、(a)〜(d)の合計は100質量%である。
(a)粒子径0.7mm以上の成分が20質量%以上であれば、被覆材の硬化性がより高くなり、50質量%以下であれば、塗工作業性がより高くなり、また、塗膜の仕上がりがより良好になる。
なお、(a)の成分の粒子径は、被覆材を塗工した際の表面美観をそこなう恐れがあることから、4mm以下であることが好ましい。
(b)粒子径0.25mm以上0.7mm未満の成分が20質量%以上あるいは50質量%以下であれば、塗工作業性がより高くなる。
(c)粒子径0.1mm以上0.25mm未満の成分が5質量%以上あるいは15質量%以下であれば、塗工作業性がより高くなる。
(d)粒子径0.1mm未満の成分が10質量%以上あるいは30質量%以下であれば、骨材の混合性がより高くなり、塗工作業性がより高くなり、また、耐熱性がより高くなる。
なお、(d)の成分の粒子径は、被覆材を混合した際に飛散し、作業環境性が悪化する恐れがあることから、0.03mm以上であることが好ましい。
【0032】
骨材の配合量は、硬化性樹脂組成物と骨材との混合性、塗工作業性、硬化性等の点から、硬化性樹脂組成物100質量部に対して200〜700質量部である。骨材の配合量が、硬化性樹脂組成物100質量部に対して200質量部以上であることにより、塗工後の硬化収縮率を小さくでき、得られる塗膜の形状安定性が高くなり、700質量部以下であることにより、塗工作業性が高くなる。
【0033】
被覆材の使用方法の一例について説明する。
本例の被覆材の使用方法では、被覆材に硬化剤(I)を添加した後、これをローラー、コテ等を用いた公知の塗工方法によって、土木建築材に塗布し、そのまま放置する。この方法では、硬化剤(I)を添加することにより、速やかに重合反応が進行して、被覆材を硬化させることができる。
硬化剤(I)としては、単官能モノマー(A)および多官能モノマー(B)のラジカル重合を開始させることができる各種重合開始剤が挙げられる。
硬化剤(I)の具体例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられる。
硬化剤(I)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
硬化剤(I)の添加量は、被覆材の可使時間が20〜60分となるように適宜選択することが好ましい。そのような可使時間にするためには、硬化剤(I)の添加量が、硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。硬化剤(I)の添加量が0.1質量部以上であれば、可使時間を60分以下にでき、硬化性が良好になる。硬化剤(I)の添加量が10質量部以下であれば、可使時間を20分以上にでき、また、被覆材の塗工作業性、各種物性がより高くなる。
【0035】
被覆材の塗膜が硬化する際の硬化収縮率は、硬化収縮時に発生する塗膜内の引っ張り応力が充分に小さくなることから、0.2%以下であることが好ましい。ここで、硬化収縮率は、JIS A 1129−1に準じて求めた値である。
【0036】
被覆材から得られる塗膜の厚みは5〜20mmの範囲が好ましい。得られる塗膜の厚みが20mm以下であれば、硬化時の発熱による温度の上昇を抑えることができ、硬化収縮率をより小さくでき、塗膜の外観を良好にできる。また、塗膜の厚みが5mm以上であれば、耐熱水性がより高くなる。
【0037】
また、被覆材から得られる塗膜の荷重たわみ温度(JIS K 7191)は高いことが好ましく、具体的には、荷重たわみ温度が110℃を超えることが好ましい。このような荷重たわみ温度では、耐熱性、特に耐熱水性が充分に高くなる。
【0038】
本発明の被覆材から形成される塗膜は、中塗り層として使用してもよいし、流し延べ工法のように上塗り層を設けずにそのまま最外層としてもよい。
【0039】
以上説明した被覆材は、上記硬化性樹脂組成物を含有しているため、硬化収縮率が小さい上に、耐熱性、特に耐熱水性に優れている。したがって、本発明の被覆材から形成される塗膜は、熱湯がかかる場合であっても耐久性に優れる。
しかも、本発明の被覆材は、硬化時の雰囲気温度に左右されず、−10℃〜+40℃の範囲といった幅広い温度の作業領域において硬化可能である。
このような被覆材は、例えば、厨房、食品工場等の塗り床材等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示す。
以下の例における「部」は全て「質量部」を意味する。硬化収縮率、湿度以外の「%」は「質量%」を意味する。また、以下の例における可使時間および骨材の粒子径分布は以下のように測定した。
(可使時間)
硬化性樹脂組成物の可使時間は、硬化性樹脂組成物100質量部に対し過酸化ベンゾイル50%顆粒品2質量部を添加し、添加後から、硬化性樹脂組成物がゲル化して使用できなくなるまでの時間を温度20℃の条件下で測定し、その時間を可使時間とした。
【0041】
(粒子径分布)
骨材の粒子径分布は、JIS A 1102に基づき、JIS Z 8801(標準ふるい)に規定する標準網ふるいを用い、ふるい分け試験により測定した。
【0042】
〔調製例1〕
硬化性樹脂組成物1の調製:
撹拌機、温度制御装置、コンデンサーを備えた容器に、メタクリル酸メチル54.0部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20.0部、流動パラフィン(Witco WHITE OIL、島貿易製、商品名:Carnation)5.0部、シランカップリング剤として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン(株)製、商品名SZ−6030)1.0部、重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.12部、融点54℃のパラフィンワックス1(日本精蝋製、商品名:Paraffin Wax−130)0.3部、融点65℃のパラフィンワックス2(日本精蝋製、商品名:Paraffin Wax−150)0.3部、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(日本乳化剤製)0.78部を添加した。
次いで、容器内を攪拌しながら、アクリルポリマー1(スチレン単位/メタクリル酸メチル単位の質量比が73/27の共重合体、Tg=100℃、Mw=65,000)18.5部を徐々に添加し、60℃で2時間溶解後、冷却して、硬化性樹脂組成物1を得た。
【0043】
〔調製例2〜5〕
表1に示す組成とした以外は、調製例1と同様にして硬化性樹脂組成物2〜5を各々得た。
【0044】
〔調製例6〕
表1に示す組成とし、アクリルポリマー1の代わりにアクリルポリマー2(メタクリル酸メチル単位/アクリル酸n−ブチル単位の質量比が60/40の共重合体、Tg=65℃、Mw=42,000)を使用した以外は、調製例1と同様にして硬化性樹脂組成物6を得た。
【0045】
【表1】


【0046】
表中の略号は、下記の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル、
2EHA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル、
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、
3EGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、
PTEO:N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン。
【0047】
〔製造例1〕
プライマーとしてDR−80((株)菱晃製)100部に対して、重合開始剤として過酸化ベンゾイル50%顆粒品(化薬アクゾ(株)製、商品名:カドックスB−CH50)を2部添加してプライマー組成物を得た。次いで、そのプライマー組成物を、硬化後の塗膜が0.3mm厚になるようにウールローラーでコンクリート面に、雰囲気温度およびコンクリート面の温度が20℃条件下にて塗工して、プライマー層を形成した。
また、硬化性樹脂組成物1の100部に硬化剤として過酸化ベンゾイル50%顆粒品2部を添加し、充分攪拌した。これに、鹿島シリカサンド3A(美州興産(株)製、カシマ珪砂3A号)175部、5号珪砂((株)菱晃製、KZ−005)175部、6号珪砂((株)菱晃製、KZ−006)50部、8号珪砂((株)菱晃製、KZ−008)100部からなる表2に示す粒子径分布の骨材500部を混合、攪拌して、被覆材を得た。
そして、この被覆材を、硬化後の厚みが10mmになるようにコテでプライマー層の上に塗工して、ベースコート層を形成した。
ベースコート層の塗工作業性、硬化性、荷重たわみ温度、耐熱水性および硬化収縮率を以下のように評価した。その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】


【0049】
(塗工作業性)
硬化性樹脂組成物をコテで塗工する際の塗工作業性を、下記評価基準に基づき評価した。
○:良好。
×:糸引きまたは塗工ムラが発生。
【0050】
(硬化性)
硬化性樹脂組成物を塗工してから1時間経過後の表面を指触して、硬化性を下記評価基準に基づき評価した。
○:タックがなく、硬化性に優れていた。
×:タックがあり、硬化性が低かった。
【0051】
(荷重たわみ温度)
硬化性樹脂組成物を23℃、湿度60%の雰囲気で4cm×4cm×16cmの型枠中に流し込み、2時間かけて硬化させ、得られた硬化物を24時間養生した。その後、JIS K 7191に準ずる方法で試料を切り出し、荷重たわみ温度を測定した。
【0052】
(耐熱水性)
・熱水サイクル試験1
硬化性樹脂組成物を塗工してから1時間経過した後の試験体において、下記の熱冷水浸漬繰り返し試験を行い、下記評価基準に基づき評価した。
熱冷水浸漬条件:(i)99℃の熱水に2時間浸漬し、(ii)10〜20℃の冷水に1時間浸漬し、(iii)1時間大気中に静置した。(i)〜(iii)の工程を1サイクルとし、これを20サイクル繰り返した後、外観を観察した。
○:異常なし。
×:異常発生。
・熱水サイクル試験2
(i)〜(iii)の工程を50サイクル繰り返した以外は、熱水サイクル試験2と同様にして評価した。
【0053】
(硬化収縮率)
JIS A 1129−1に記載されたコンパレータ法測定機(理化学研究所社製、技協2型コンパレータ)を用いて測定を実施した。測定では、まず、400×100×20mmの型に、硬化前の硬化性樹脂組成物と骨材と硬化剤とを混合した被覆材を流し込んだ。次いで、被覆材の表面に目印のついた2枚の金属板を置き、硬化する前の2枚の金属板の目印間距離(初期値)と、硬化後(6時間後)の2枚の金属板の目印間距離(硬化後距離)とを測定し、硬化収縮率を下記式より求めた。
硬化収縮率(%)={(初期値[cm]−硬化後距離[cm])/初期値[cm]}×100
【0054】
〔製造例2〕
硬化性樹脂組成物1の代わりに硬化性樹脂組成物2を用いたこと以外は製造例1と同様にして、プライマー層上にベースコート層を形成した。そして、製造例1と同様にしてベースコート層を評価した。その結果を表2に示す。
【0055】
〔製造例3〕
硬化性樹脂組成物1の代わりに硬化性樹脂組成物3を用いたこと以外は製造例1と同様にして、プライマー層上にベースコート層を形成した。そして、製造例1と同様にしてベースコート層を評価した。その結果を表2に示す。
【0056】
〔製造例4〕
硬化性樹脂組成物1の100部に硬化剤として過酸化ベンゾイル50%顆粒品2部を添加し、充分攪拌した。これに、鹿島シリカサンド3A180部、5号珪砂210部、6号珪砂90部、8号珪砂120部からなる表2に示す粒子径分布の骨材600部を混合、攪拌して、被覆材を得た。
そして、この被覆材を用いたこと以外は製造例1と同様にして、プライマー層上にベースコート層を形成した。そして、製造例1と同様にしてベースコート層を評価した。その結果を表2に示す。
【0057】
〔製造例5〕
硬化性樹脂組成物1の代わりに硬化性樹脂組成物4を用いたこと以外は製造例1と同様にして、プライマー層上にベースコート層を形成した。そして、製造例1と同様にしてベースコート層を評価した。その結果を表3に示す。
この製造例5は、硬化性樹脂組成物中の重合禁止剤(F)の含有量が0.1%未満の例である。
【0058】
【表3】


【0059】
〔製造例6〕
硬化性樹脂組成物1の代わりに硬化性樹脂組成物5を用いたこと以外は製造例1と同様にして、プライマー層上にベースコート層を形成した。そして、製造例1と同様にしてベースコート層を評価した。その結果を表3に示す。
この製造例6は、硬化性樹脂組成物中の多官能モノマー(B)の含有量が15%未満で、シランカップリング剤(E)を含有しない例である。
【0060】
〔製造例7〕
硬化性樹脂組成物1の代わりに硬化性樹脂組成物6を用いたこと以外は製造例1と同様にして、プライマー層上にベースコート層を形成した。そして、製造例1と同様にしてベースコート層を評価した。その結果を表3に示す。
この製造例7は、流動パラフィン(C)及びシランカップリング剤(E)を含有しない例である。
【0061】
〔製造例8〕
製造例1と同様にして、プライマー層を形成した。
硬化性樹脂組成物1の100部に重合開始剤として過酸化ベンゾイル50%顆粒品2部を添加し、充分攪拌した。これに、鹿島シリカサンド3A300部、5号珪砂225部、6号珪砂75部、8号珪砂150部からなる表2に示す粒子径分布の骨材750部を混合、攪拌して、被覆材を得た。
そして、この被覆材を用い、製造例1と同様にしてベースコート層を形成し、このベースコート層を製造例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
この製造例8は、骨材の配合量が700部を超える例である。
【0062】
〔製造例9〕
製造例1と同様にして、プライマー層を形成した。
硬化性樹脂組成物1の100部に硬化剤として過酸化ベンゾイル50%顆粒品2部を添加し、充分攪拌した。これに、鹿島シリカサンド3A120部、5号珪砂150部、6号珪砂120部、8号珪砂210部からなる表2に示す粒子径分布の骨材600部を混合、攪拌して、被覆材を得た。
そして、この被覆材を用い、製造例1と同様にしてベースコート層を形成し、このベースコート層を製造例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
この製造例9は、骨材中に粒子径0.1mm未満のものが30%を超えて含まれる例である。
【0063】
特定組成の硬化性樹脂組成物と特定粒子径分布の骨材とを含む製造例1〜4の被覆材は、塗工作業性、硬化性に優れる上に、得られたベースコート層の耐熱性、耐熱水性に優れ、硬化収縮率が小さかった。
硬化性樹脂組成物中の重合禁止剤(F)の含有量が0.1%未満であった製造例5の被覆材は、硬化性樹脂成分の可使時間が非常に短く、塗工面の修正(凸凹、平滑、ならし)にかける時間を充分に取れなかった。
多官能モノマー(B)の含有量が15%未満、シランカップリング剤(E)を含有しない製造例6の被覆材では、得られたベースコート層の耐熱性、耐熱水性が低かった。
流動パラフィン(C)及びシランカップリング剤(E)を含有しない製造例7の被覆材では、得られたベースコート層の耐熱性、耐熱水性が低く、硬化収縮率が大きかった。
骨材の配合量が700部を超えていた製造例8の被覆材では、塗工作業性が低く、得られたベースコート層の耐熱水性が低かった。
骨材中に粒子径0.1mm未満のものが30%を超えて含まれる製造例9の被覆材では、塗工作業性が低く、得られたベースコート層の耐熱水性が低かった。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義

【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦


【公開番号】 特開2008−7595(P2008−7595A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177975(P2006−177975)