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【発明の名称】 (メタ)アクリル系組成物、それを用いた(メタ)アクリル系硬化性組成物と接着剤、並びにマイクロカプセルの製造方法
【発明者】 【氏名】中野 辰夫

【要約】 【課題】超高速固着性(メタ)アクリル系接着剤を提供する。

【構成】(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在させたマイクロカプセル状の(メタ)アクリル系組成物であって、前記(メタ)アクリル系モノマーが2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含有することを特徴とする(メタ)アクリル系組成物と、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、とを配合してなることを特徴とする(メタ)アクリル系硬化性組成物と(メタ)アクリル系接着剤。前記(メタ)アクリル系組成物は、水に水溶性の重合開始剤を加え、更に撹拌下で、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを加え、しかも前記(メタ)アクリル系モノマーが2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有していることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法で提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在させたマイクロカプセル状の(メタ)アクリル系組成物であって、前記(メタ)アクリル系モノマーが2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含有することを特徴とする(メタ)アクリル系組成物。
【請求項2】
マイクロカプセル中の(メタ)アクリル系モノマーが、2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリル系モノマー中に20質量%以上含有するであることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル系組成物。
【請求項3】
2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが2.2−BIS[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリル系組成物。
【請求項4】
マイクロカプセル中の還元剤が、バナジルアセチルアセトネート又はバナジウムアセチルアセトネートであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルの直径が、100μm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルの殻の厚みが5〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物に、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、を配合してなることを特徴とする(メタ)アクリル系硬化性組成物。
【請求項8】
重合開始剤が、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルとは異なるマイクロカプセルに内在されていることを特徴とする請求項7記載の(メタ)アクリル系硬化性組成物。
【請求項9】
重合開始剤がクメンハイドロパーオキサイドであることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の(メタ)アクリル系硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系硬化性組成物に、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、を配合してなることを特徴とする(メタ)アクリル系接着剤。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系硬化性組成物に、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、を配合してなることを特徴とする2剤型の(メタ)アクリル系接着剤。
【請求項12】
重合開始剤が、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルとは異なるマイクロカプセルに内在されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の(メタ)アクリル系接着剤。
【請求項13】
重合開始剤がクメンハイドロパーオキサイドであることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系硬化性組成物。
【請求項14】
水に、水溶性の重合開始剤を加え、更に撹拌下で、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを加え、しかも前記(メタ)アクリル系モノマーが2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有していることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項15】
予め水に分散剤を添加していることを特徴とする請求項14記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項16】
分散剤がゼラチンであることを特徴とする請求項15に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項17】
水溶性重合開始剤がクメンハイドロパーオキサイドであり、還元剤がバナジルアセチルアセトネート又はバナジウムアセチルアセトネートである請求項14乃至16のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項18】
(メタ)アクリル系モノマーが2.2−BIS[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンであることを特徴とする請求項14乃至17のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性、硬化性に優れ、金属、紙、布、コンクリート構造体等のいろいろな用途に好適に用いられる(メタ)アクリル系接着剤、それに用いるマイクロカプセル化された(メタ)アクリル系組成物と(メタ)アクリル系硬化性組成物、更に、前記マイクロカプセルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリル系樹脂は、耐久性がよいこと、環境に優しいことなどから、成形材料や塗料、接着剤などの分野で幅広く利用されている。
【0003】
(メタ)アクリル系接着剤は、アクリル系モノマーやオリゴマーを重合開始剤としての有機過酸化物と、有機過酸化物を分解してラジカルを発生させる硬化剤とを使用して、重合、硬化することにより接着が行われる。
【0004】
また、有機過酸化物と硬化剤との組み合わせは硬化開始剤系と呼ばれているが、2剤型アクリル系接着剤とは、硬化開始剤系を(A)有機過酸化物を含有する組成物と(B)硬化剤を含有する組成物とからなる(A)と(B)の2剤に硬化開始剤系成分を分離したアクリル系接着剤である。このものでは、(A)と(B)との2剤を使用直前に混合して被着体に塗布して接着が行われるのである。
【0005】
(A)に使用する有機化酸化物については、常温での半減時間の長いクメンハイドロパーオキサイド(以下CHPと略記する)やジイソプロピルベンゼンハイイドロパーオキサイドが、保存安定性の面から一般に使用されており、有機過酸化物を分解して硬化させる、所謂、硬化剤についても、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に開示されている。
【特許文献1】特公昭52−018478号公報。
【特許文献2】英国特許第715382号明細書。
【特許文献3】米国特許第3591438号明細書。
【特許文献4】米国特許第3625930号明細書。
【0006】
(B)に使用される硬化剤については、大別して、エチレンチオウレア誘導体と金属石鹸があるが、エチレンチオウレア誘導体では金属表面への接着性が優れ、例えば鉄/鉄剥離などでは凝集破壊する特徴を有している。しかしながら、嫌気性(大気酸素により重合禁止を受けやすい性質)が強く、無数の細孔を有しているコンクリート表面や厚紙などに接着しない欠点がある。
【0007】
一方、金属石鹸、特に、コバルト、バナジウム、マンガン、などの石鹸が酸素で硬化する所謂ドライヤー効果を示し、かつ、クメンハイドロパーオキサイドやメチルエチルケトンパーオキサイドのようなハイドロパーオキサイドを常温で分解してラジカルを発生させるレドックス系を形成する材料として知られている(特許文献5参照)。更に、特許文献6や特許文献7などには、超高速硬化レドックス系が開示されている。
【特許文献5】特公昭55−002205号公報。
【特許文献6】特公昭51−017966号公報。
【特許文献7】特公昭52−024516号公報。
【0008】
しかしながら、極めて超高速で硬化接着できることは生産性や利便性から好ましいことではあるが、2剤型接着剤とした場合は2剤の混合中に硬化が始まるために、接着不良を発生するという本質的な欠点を有している。
【0009】
これを回避する方法として特許文献8では、過酸化ベンゾイルを溶剤に溶解した芯剤液を、ゼラチンなどでマイクロカプセル化して過酸化ベンゾイルを分解するN、N−ジメチル−P−トルイジンを含有する接着剤配合液に分散させた1剤型接着剤が開示されているが、過酸化ベンゾイルは自然分解の半減温度が低く、保存中に有効量が低下するという本質的な欠点と、過酸化ベンゾイルを溶解している溶剤が接着剤中に残留するので本質的には溶剤含有接着剤となっており、溶剤のブリードなどの欠点を有している。
【特許文献8】特公昭53−5894号公報。
【0010】
尚、芯剤液を構成する有機過酸化物について溶剤や可塑剤が選択されるのは高濃度の有機過酸化物を含むモノマーは安定に存在できない欠点があるからで、自然分解の半減温度が高いクメンハイドロパーオキサイドであっても、モノマー中の濃度が10質量%程度以上に上がると保存性が著しく低下し、短期間でゲル化してしまうからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、(メタ)アクリル系接着剤の持つ優れた特性を維持しながら、上記のような従来技術の欠点を解消して、超高速固着性(メタ)アクリル系接着剤を提供することを目的になされたものである。
【0012】
本発明は、前記従来技術の改善を狙いにいろいろ検討した結果、水に水溶性の重合開始剤を加え、更に撹拌下で(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを加えるという簡単な操作により(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とをマイクロカプセルに内在させることができ、しかも前記マイクロカプセル化された(メタ)アクリル系組成物を用いた(メタ)アクリル系硬化性組成物、接着剤は、当該マイクロカプセルを簡単な外力で破壊することで硬化開始を制御できること、そして適当な硬化開始剤系を選択することで超高速固化性をも有することができる(メタ)アクリル系硬化性組成物、接着剤が得られるということを見いだし、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、次の通りである。
(1)(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在させたマイクロカプセル状の(メタ)アクリル系組成物であって、前記(メタ)アクリル系モノマーが2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含有することを特徴とする(メタ)アクリル系組成物。
(2)マイクロカプセル中の(メタ)アクリル系モノマーが、2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリル系モノマー中に20質量%以上含有するであることを特徴とする(1)の(メタ)アクリル系組成物。
(3)2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが2.2−BIS[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンであることを特徴とする(1)又は(2)の(メタ)アクリル系組成物。
(4)マイクロカプセル中の還元剤が、バナジルアセチルアセトネート又はバナジウムアセチルアセトネートであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの(メタ)アクリル系組成物。
(5)(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルの直径が、100μm以上10mm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの(メタ)アクリル系組成物。
(6)(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルの殻の厚みが5〜100μmであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの(メタ)アクリル系組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれかの(メタ)アクリル系組成物に、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、を配合してなることを特徴とする(メタ)アクリル系硬化性組成物。
(8)重合開始剤が、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルとは異なるマイクロカプセルに内在されていることを特徴とする(7)の(メタ)アクリル系硬化性組成物。
(9)重合開始剤がクメンハイドロパーオキサイドであることを特徴とする(7)又は(8)の(メタ)アクリル系硬化性組成物。
(10)(1)〜(6)のいずれかの(メタ)アクリル系硬化性組成物に、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、を配合してなることを特徴とする(メタ)アクリル系接着剤。
(11)(1)〜(6)いずれかの(メタ)アクリル系硬化性組成物に、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、を配合してなることを特徴とする2剤型の(メタ)アクリル系接着剤。
(12)重合開始剤が、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在するマイクロカプセルとは異なるマイクロカプセルに内在されていることを特徴とする(10)又は(11)の(メタ)アクリル系接着剤。
(13)重合開始剤がクメンハイドロパーオキサイドであることを特徴とする(10)〜(12)いずれかの(メタ)アクリル系硬化性組成物。
(14)水に、水溶性の重合開始剤を加え、更に撹拌下で、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを加え、しかも前記(メタ)アクリル系モノマーが2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有していることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
(15)予め水に分散剤を添加していることを特徴とする(14)のマイクロカプセルの製造方法。
(16)分散剤がゼラチンであることを特徴とする(15)のマイクロカプセルの製造方法。
(17)水溶性重合開始剤がクメンハイドロパーオキサイドであり、還元剤がバナジルアセチルアセトネート又はバナジウムアセチルアセトネートである(14)〜(16)のいずれかのマイクロカプセルの製造方法。
(18)(メタ)アクリル系モノマーが2.2−BIS[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンであることを特徴とする(14)〜(17)のいずれかのマイクロカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の(メタ)アクリル系組成物は、マイクロカプセル化されて、そのマイクロカプセル表面は当該(メタ)アクリル系組成物の硬化体からなるので、マイクロカプセルの表面が(メタ)アクリル系組成物や重合開始剤と接しても重合開始することがないが、その状態下で外力により当該マイクロカプセルを破壊するときには、速やかに(メタ)アクリル系組成物の重合が開始し、硬化するという特性を発揮できるので、これを用いて超高速固着性(メタ)アクリル系接着剤が容易に、安定して提供できる。
【0015】
本発明の(メタ)アクリル系硬化性組成物は、前記マイクロカプセル化した(メタ)アクリル系組成物を用いているので、貯蔵安定性に富みながら、接着に際して僅かな外力を加えることで硬化開始し、急速に固化する特徴を有している。当該(メタ)アクリル系硬化性組成物を用いて本発明の(メタ)アクリル系接着剤が容易に、安定して提供できる。更に、本発明の(メタ)アクリル系組成物に、前記マイクロカプセルとは異なる他種のマイクロカプセルに重合開始剤(必要ならば(メタ)アクリル系モノマーやオリゴマーを含んでいても良い)を内在させておけば、全体としては粉末状の、接着作業性に優れる(メタ)アクリル系硬化性組成物、接着剤を提供できるし、本発明の(メタ)アクリル系組成物を(メタ)アクリル系モノマーやオリゴマー(以下単に「(メタ)アクリル系モノマー」という。)に分散させた(A)液を用意し、少なくとも重合開始剤を含む(B)液を作成して、両者を合わせて2液型の接着剤として用いることができ、この場合についても優れた接着作業性を確保することができる。
【0016】
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、水に水溶性の重合開始剤を加え、撹拌下で(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを加えることを特徴としており、この製法により本発明のマイクロカプセルを安定して提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とをマイクロカプセルに内在させたことを特徴とする(メタ)アクリル系組成物であり、また、当該マイクロカプセルを製造しえる、水に水溶性の重合開始剤を加え、更に撹拌下で(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを加えることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法である。以下、前者の発明を製造することを例にして後者の発明を説明する。
【0018】
本発明のマイクロカプセル製造方法は、生成するマイクロカプセル粒子の合体を防止するための保護コロイドを含む水を溶媒とし、この中に若干の水溶性を有する有機過酸化物であるクメンハイドロパーオキサイド等の重合開始剤を微量添加しておき、媒体を攪拌しながら、親油性が高くしかも重合体が架橋してモノマーに溶解や膨潤しないで固体化する2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル系モノマー中に水溶性は高いが超高速度で前記媒体中の媒体に溶解しているクメンハイドロパーオキサイド等の重合開始剤を分解してラジカルを発生させるバナジルアセチルアセトネート等の還元剤を添加してなる芯剤液(マイクロカプセルの内部液)を、媒体を攪拌しながら、急速に投入することで、粒子化と同時に粒子表面から媒体中に溶出するバナジルアセチルアセトネートと媒体のクメンハイドロパーオキサイドが瞬時に反応して、ラジカルを発生、粒子表面に重合膜を生成してマイクロカプセルを形成するものである。
【0019】
本発明のマイクロカプセルの媒体として用いる保護コロイドとしては、ゼラチンポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダなど多くの合成物や天然物が挙げられるが、本発明者の検討結果に基づけば、ゼラチンが好ましい材料であるが、他の保護コロイド材料と混合して用いても良い。ゼラチンを使用する場合は0.5質量%以上15質量%以下の水溶液とすることが好ましい。0.5質量%異常であれば分散不良を発生することもなく、また、15質量%以下ならば粘度が高すぎることもない。前記範囲の中で2〜7質量%がより好ましい範囲である。
【0020】
更に、マイクロカプセル膜形成剤として作用する、水溶性を有する重合開始剤である有機過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイドやメチルエチルケトンパーオキサイドなどが挙げられるが、室温でほとんど分解することのないクメンハイドロパーオキサイドが作業性の面からも最も好ましい。配合量に関しては、芯剤液100質量部当り0.01質量部以上0.5質量部以下が好ましいが、重合開始剤の分解生成や未分解の重合開始剤を少なくさせ洗浄の負荷を軽減する観点から0.02質量部〜0.06質量部が一層好ましい。
【0021】
本発明の芯剤液に用いる還元剤としては、バナジルアセトアセトネート等があげられるが、中には固体の粉体のものが含まれるので、液状とするために、(メタ)アクリル系モノマーが溶媒として用いられる。本発明に於いては、マイクロカプセル製造時に溶媒として水を用いるので、前記(メタ)アクリル系モノマーとしては親油性の高いモノマーが用いられ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロトリエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、2.2−BIS[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン類、スチレン、αメチルスチレン、ジビニルベンゼンなど等が挙げられる。これらはマイクロカプセルの物性を調整する目的で、2種類以上混合して使用することが望ましい。
【0022】
本発明の芯剤液に用いる(メタ)アクリル系モノマー(以下単に「モノマー」と略す。)に関しては、2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む必要がある。2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体は架橋して芯剤液に溶解しにくくなりマイクロカプセル化を一層確実にするからである。単官能モノマー単独では芯剤液に溶解してしまい膜を形成できないので、単官能モノマー量は芯剤液に用いられるモノマー100質量部中80質量部未満に制限される。即ち、本発明に於いて、芯剤液に用いる(メタ)アクリル系モノマーについて、2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを20質量%以上含有することが好ましい。
この配合割合が高くなるほど硬質膜のマイクロカプセルとなる。
【0023】
前記2個以上のビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリル系モノマーとしては、2.2−BIS[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業社製NKエステルBPE−100)は好ましい。しかし、前記物質は粘度が高いので、希釈剤として或いは硬化体の特性の改良剤として、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ロームアンドハース社製M57T)を添加することが好ましい。
【0024】
更に、芯剤液には還元剤が加えられるが、高速硬化作用があるバナジルアセチルアセトネート又はバナジウムアセチルアセトネートが好ましく選択される。バナジウムアセチルアセトネートは高価な材料であることから、バナジルアセチルアセトネートが好ましく用いられる。芯剤液中のモノマー100質量部に対して2質量部以上20質量部以下が好ましい。2質量部以上でマイクロカプセルを配合した接着剤の速硬化を充分に期待できるようになるし、20質量部以下ならば芯剤液粘度が高すぎることもない。5〜10質量部が一層好ましい。
【0025】
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、攪拌している水溶液媒体中に芯剤液を投入するだけで、数分後にマイクロカプセルが得られ、格別の条件設定は不要である。例えば、特公昭46−030282号公報で開示されている、尿素樹脂膜を形成する方法などでは温度を上げたり、長時間の熟成などのために、媒体の水へバナジルアセチルアセトネートが流出してしまい大部分のマイクロカプセル粒子中のバナジルアセチルアセトネートの濃度が極めて低い状態となるし、また一般的な高温ゼラチン水溶液からのコアセベーションでも同様の結果を示してしまうが、本発明の方法では前記した通りに特別の条件設定をする必要がなく、しかも短時間でマイクロカプセルが形成されるので、高い濃度の還元剤を含有するマイクロカプセルが得られる特徴がある。
【0026】
上下通りに、本発明の製造方法によれば、本発明になる(メタ)アクリル系組成物を得ることができる。
【0027】
本発明になる(メタ)アクリル系組成物は、前記製造方法の条件を適宜選択することにより、いろいろな性状のマイクロカプセルとすることができる。
【0028】
まず、本発明の(メタ)アクリル系組成物のマイクロカプセルの大きさや殻の厚みは主に、芯剤液中のモノマー、還元剤の種類と濃度、更にマイクロカプセル化する際の重合開始剤濃度、攪拌条件等により制御され、大きさとしては直径(外側の直径を示し、数平均直径を意味する)が100μm以上10mm以下のものが、殻の厚みについては5〜100μmのものが得られる。マイクロカプセルの性状は、用途に応じて大きさや殻の厚さが選択される。例えば、直径についてはアンカー材の用途については大きい方が好ましく1mm〜5mmが、接着剤の用途について100μm〜1mmが好ましく、殻の厚みに関してはアンカー材の用途について50μm〜100μmが、接着剤の用途について5〜50μmが好ましい。
【0029】
本発明は、前記の(メタ)アクリル系組成物に、更に、重合開始剤、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー、を配合してなることを特徴とする(メタ)アクリル系硬化性組成物であり、(メタ)アクリル系接着剤である。前記マイクロカプセルが外力により破壊されることで、マイクロカプセル内部に存在した(メタ)アクリル系モノマー、還元剤がマイクロカプセル外に存在している重合開始剤(必要により(メタ)アクリル系モノマーも存在している)とが接触し、重合反応が開始され、急速に硬化する特徴があり、可使時間が長く、しかも初期高速固着性に優れる(メタ)アクリル系接着剤が提供できる。
【0030】
特に、重合開始剤がクメンハイドロパーオキサイドを用いる場合、マイクロカプセル中の還元剤にバナジルアセチルアセトネート又はバナジウムアセチルアセトネートが選択されていることとあいまって、超高速硬化する性質を発揮できる。また、当該組成物を適宜2つに分けて2剤型とし、接着を予定する二つの面にそれぞれを塗布し、両者を接合させるときに面同士を合わせる外力によりマイクロカプセルを破壊して硬化反応を開始させ、接着することもできる。
【0031】
また、本発明において、重合開始剤が、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在する前記のマイクロカプセルとは異なるマイクロカプセルに内在されている形態のものを選択するとき、粉末状の(メタ)アクリル系硬化性組成物、接着剤を得ることができる。
【実施例1】
【0032】
以下、実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。尚、各種物性は次の測定法に基づく。
【0033】
接着強度
接着試験片 :鉄(テストピース社製 SPCC)
表面処理:アセトン脱脂後、150メッシュ金剛砂サンドブラスト
表面処理:150メッシュ金剛砂サンドブラスト
鉄/鉄引っ張りせん断強度:JIS K−6855
【0034】
固着時間
平滑な表面の25.4mm×100mmの鉄試験片の一端を23℃雰囲気で、ラップ長12.7mmで接合して、接着後指触で動かなくなるまでの時間とした。
【0035】
(実施例1)
<マイクロカプセルの製造>
(ゼラチン水溶液の調整)
1000mlのビーカー中にゼラチン(関東化学社製 ゼラチン末)50gを950gのイオン交換水中に投入して70℃で攪拌し水溶液とし室温に放置冷却した。
【0036】
(1%クメンハイドロパーオキサイド溶液の調整)
クメンハイドロパーオキサイド(日本油脂社製 パークミルH80)を1g秤量してイオン交換水を加え100gとした。
【0037】
(芯剤液の調整)
50mlのビーカーに2.2−BIS[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業社製 NKエステルBPE−100)(以下BPE−100と略記する。)25gとジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ロームアンドハース社製 QM−57T)25gを採り、次いで、バナジルアセチルアセトネート(新興化学工業社製 バナジルアセトアセトネート50D)5gを投入して混合した。
【0038】
(マイクロカプセルの合成)
200mlトールビーカーに、前記の5%ゼラチン水溶液100gを投入し、前記の1%クメンハイドロパーオキサイド水溶液2mlを注射器で投入した。次いで、アンカー型攪拌器で約500rpmの速度で攪拌した。この時の温度は23℃であった。攪拌しながら同じ温度の前記芯剤液55gを全て投入した。1分後に300rpmに攪拌速度を低下して、5分後に攪拌を停止し、100mlの水道水を添加して、アスピレーターで吸引ろ過し、マイクロカプセルを回収し、更に水道水で2回洗浄、ろ過した。次いで、紙で乾燥箱を作り、生成物を1夜風乾した。
【0039】
顕微鏡下でマイクロカプセルの粒子径を測定した結果、平均直径360μmの球状であった。更に、ガラス板2枚の間で押し潰し、アセトンで洗浄乾燥後、顕微鏡でカプセル壁の厚さを実測した結果、約30μmであった。
【0040】
(実施例2)
実施例1の芯剤液に関して、BPE−100を8.5gとジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(QM-57Tと略記する)41.5gに変化させたこと以外は実施例1と同じの条件でマイクロカプセルを合成した。結果、マイクロカプセルの大きさや殻の厚さは実施例とほぼ同一であったが、加圧すると高さが約1/3程度まで変形する可とう性のある柔らかいマイクロカプセルが得られた。
【0041】
(実施例3)
実施例2の芯剤液に関して、BPE−100単独の50gに変化させたこと以外は実施例2と同じ条件でマイクロカプセルを合成した。結果、マイクロカプセルの大きさや殻の厚さは実施例とほぼ同一であったが、加圧するとほとんど変形せず破壊して芯剤液を放出する硬質のマイクロカプセルが得られた。
【0042】
(実施例4)
実施例1の条件で、媒体液および芯剤液の温度を40℃に上げて実施した結果、舞ころカプセルの平均粒径は300μmとなり、マイクロカプセル膜厚は13μmとなった。
【実施例2】
【0043】
(実施例5)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄化学社製 ライトエステルHO)20g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ロームアンドハース社製QM−57T)40g、1,2−ポリブタジェンウレタン変成ジメタクリレート(日本曽達社製TE−2000)40g、パラフィンワックス(日本精鑞社製)1gを配合、攪拌混合しながら70℃まで加熱してパラフィンワックスを溶解してから、シリカ超微粉末(日本エアロジル社製AS−380)3gを添加し、混合分散させてから25℃に冷却した。次いで、クメンハイドロパーオキサイド(日本油脂社製パークミルH80)2g、リン酸エステル中和品(ユニケミカル社製ホスマーMH)0.25gを投入して、攪拌混合してクメンハイドロパーオキサイド含有主剤を得た。次いで、実施例1で得たマイクロカプセルを10部配合して、1剤型接着剤を得た。
【0044】
(固着および接着強度の測定)
サンドブラストした鉄試験片2枚間に接着剤を約0.5g塗布して手で試験片を重ね合わせ加圧した後3回擦りあわせた後、固定していると約35秒後に固着した。同様にして12.7mmラップで接合後、1夜放置してせん断強度を測定した結果、21.6MPaの接着強度を示した。
【0045】
(実施例6)(A剤の製造)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート20g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート40g、1,2−ポリブタジェンウレタン変成ジメタクリレート40g、パラフィンワックス1gを投入して攪拌混合しながら70℃まで加熱してパラフィンワックスを溶解してからシリカ超微粉末3gを投入し、混合分散してから25℃に冷却した。次いで、リン酸エステル中和液0.3g、クメンハイドロパーオキサイド2gを投入して攪拌混合してA剤を得た。
【0046】
(B剤の製造)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート20g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート40g、1,2−ポリブタジェンウレタン変成ジメタクリレート40g、パラフィンワックス1gを配合し、攪拌混合しながら70℃まで加熱してパラフィンワックスを溶解してから、シリカ超微粉末3gを投入し、混合分散してから、2-エチルイミダゾール(四国化成社製キュアゾール2EZ)0.27gを投入し攪拌混合した。次いで、オクチル酸コバルト(シントーファインケミカル社製オクトライフCo8:コバルト含有量=8質量%)2gを投入し、攪拌混合して溶解後に、リン酸エステル中和液0.3gを投入し、攪拌混合して、25℃まで冷却後に、実施例1のマイクロカプセル4部を投入混合してB剤を得た。
【0047】
(試験片の作成と評価結果)
幅25mm長さ300mmの鋼板試験片を2枚用意して、上記A剤とB剤をスタテックミキサー通過混合後に1枚の試験片上に帯状に塗布した。次いで、もう一方の試験片を接合加圧してマイクロカプセルを押しつぶすと約20秒後に固着した。また、20分放置したスタテックミキサーの詰まりもなかった。
【0048】
(比較例1)
10質量%ゼラチン水溶液を100mlセパラフラスコに入れ、70℃に加熱攪拌しながら10%炭酸ソーダ液でPH=9とした。次いで、芯剤液としてBPE−100を20gに1gのバナジルアセトアセトネートを添加混合して、投入した。次いで、酢酸でPH=5として、10%硫酸ソーダを20g添加してコアセルベートさせ、氷水で冷却して内温を15℃とした。しかし、ゼラチン球内にはバナジルアセトアセトネートの存在を示す緑色および緑色粉体は所々にしか見当たらず、媒体水は強い青緑色を示し、バナジルアセトアセトネートが流出してしまったことをしめしていた。次いで、ホルマリン添加50℃に加熱してゼラチン球を硬化させた。しかし、単球にはならず、ブロック体が得られた。球内部にはバナジルアセトアセトネートの痕跡が認められる程度であった。
【0049】
(比較例2)
実施例3の芯剤液BPE−100にかえて全量をトリメチロールプロパントリメタクリレート(油脂製品社製 ライトエステルTMP)で実施した結果、平均粒径300μmの粒子を形成したが、内部まで硬化しており、マイクロカプセルを形成してなかった。
【0050】
(比較例3)
実施例1の芯剤液のQM57Tに変えて、2ヒドロキシプロピルメタクリレート(油脂製品社製 ライトエステルHOP)で実施例1と同様に実施した結果、平均粒径380μmの粒子を形成したが、内部まで硬化しており、マイクロカプセルを形成してなかった。また、媒体液へのバナジルアセトアセトネート流出量も多かった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の(メタ)アクリル系組成物は、マイクロカプセル化されて、そのマイクロカプセル表面は当該(メタ)アクリル系組成物の硬化体からなるので、マイクロカプセルの表面が(メタ)アクリル系組成物や重合開始剤と接しても重合開始することがないが、その状態下で外力により当該マイクロカプセルを破壊するときには、速やかに(メタ)アクリル系組成物の重合が開始し、硬化するという特性を発揮できるので、これを用いて超高速固着性(メタ)アクリル系接着剤が容易に、安定して提供でき、産業上極めて有用である。
【0052】
本発明の(メタ)アクリル系硬化性組成物並びに接着剤は、可使時間が長く採れ、しかも外圧により硬化開始して急速に硬化する初期硬化特性に優れるので、例えば、ガラス筒容器や筒状フィルム製袋などに、また、構造体や建築材壁、木材など多くの壁材に金属棒などを固定するいわゆるアンカー材としての応用など、いろいろな分野に利用可能である。
【0053】
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、極めて短時間で格別の条件設定をすることなく、(メタ)アクリル系モノマーと還元剤とを内在させたマイクロカプセル状の(メタ)アクリル系組成物を提供することができ、産業上極めて有用である。
【出願人】 【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−7585(P2008−7585A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177665(P2006−177665)