トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 極性官能基を付与された水添ブロック共重合体の製造方法および該極性官能基を付与された水添ブロック共重合体
【発明者】 【氏名】鈴木 憲司

【氏名】前田 瑞穂

【要約】 【課題】特定の構造単位を有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体の水素添加物に極性官能基を付与させることによる、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体の製造方法、および該極性官能基を付与された水添ブロック共重合体を提供すること。

【構成】少なくとも1個のメチル基がベンゼン環に結合したメチルスチレン由来構造単位(a)を含有する芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAを1個以上と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBを1個以上有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体を水素添加触媒存在下、水素添加して得られる水添ブロック共重合体を、塩基の存在下、有機アルカリ金属化合物を作用させて芳香環上のメチル基の水素原子を引き抜いてアニオンを形成させ、次いで該アニオン化された水添ブロック共重合体に、極性官能基付与剤を反応させることを特徴とする、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体の製造方法、および該極性官能基を付与された水添ブロック共重合体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のメチル基がベンゼン環に結合したメチルスチレン由来構造単位(a)を含有する芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAを1個以上と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBを1個以上有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体を水素添加触媒存在下、水素添加して得られる水添ブロック共重合体を、塩基の存在下、有機アルカリ金属化合物を作用させてベンゼン環上のメチル基の水素原子を引き抜いてアニオンを形成させ、次いで該アニオン化された水添ブロック共重合体に、極性官能基付与剤を反応させることを特徴とする、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1個のメチル基がベンゼン環に結合したメチルスチレン由来構造単位(a)を含有する芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAを1個以上と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBを1個以上有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体を水素添加触媒存在下、水素添加して得られる水添ブロック共重合体を、塩基の存在下、有機アルカリ金属化合物を作用させてベンゼン環上のメチル基の水素原子を引き抜いてアニオンを形成させ、次いで該アニオン化された水添ブロック共重合体に、極性官能基付与剤を反応させて得られる、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のメチル基がベンゼン環に結合したメチルスチレン由来構造単位(a)[以下、構造単位(a)と略称することがある]を含有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体の水素添加物(以下、本明細書において単に「水添ブロック共重合体(I)」と略称することがある)に極性官能基を付与させることによる、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体の製造方法、および該極性官能基を付与された水添ブロック共重合体に関する。
より詳しくは、本発明は、特定の位置に極性官能基を付与された水添ブロック共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体またはその水素添加物は、その優れた力学的特性、弾性、柔軟性、接着性等を活かして、各種熱可塑性エラストマー組成物の原料、樹脂改質剤、接着剤などに用いられている。しかしながら、かかる芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体またはその水素添加物は非極性であるため、一般にポリオレフィン類、ポリスチレン類、石油系軟化剤などの非極性材料とは親和性を有するものの、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチックなどの極性材料とは親和性を有さない。また、一般にこれらのエンジニアリングプラスチックは、芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体より優れた耐熱性を有しているものが多く、樹脂改質剤として芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体またはその水素添加物を添加することは親和性の面からも不利である上、耐熱性が低下するなどの問題を有している。このため、芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体またはその水素添加物に極性および耐熱性を付与することが望まれている。
【0003】
芳香族ビニル化合物系(共)重合体に極性を付与するために、分子に極性官能基を導入する方法としては、例えば
[1]sec−ブチルリチウムを重合開始剤としてスチレンをアニオン重合させた際の活性末端、すなわちポリ(スチリル)リチウムにエチレンオキサイドを付加させ、水を添加して、分子末端に水酸基を導入する方法(非特許文献1参照);
[2]アルキルリチウム化合物等を開始剤としてn−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量に達した時点でエチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド等のオキシラン骨格を有する化合物、あるいはε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン(ピバロラクトン)等のラクトン系化合物などを付加させ、次いでアルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素含有化合物を添加して重合を停止して分子末端に水酸基を導入する方法(特許文献1参照);
[3]少なくとも1個の、不飽和度が20%を越えないオレフィン化合物重合体ブロックを有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体と、不飽和カルボン酸またはその誘導体とを、押出機中でラジカル開始剤存在下で反応させ、不飽和カルボン酸またはその誘導体の付加量が平均値として該ブロック共重合体100質量部あたり0.05〜20質量部であり、かつトルエン不溶分が0.05質量%以下である変性ブロック共重合体を製造する方法(特許文献2参照);
などが挙げられる。
【0004】
【非特許文献1】ジャーナル オブ ポリマー サイエンス、パートA ポリマー ケミストリー(J.Polym.Sci.Part A Polym.Chem.)、第26巻、2031−2037頁(1998年)
【特許文献1】特開平10−57527号公報、段落0018等
【特許文献2】特開昭63−81113号公報、特許請求の範囲等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、[1]および[2]の方法による極性官能基の分子鎖への導入は末端に限られており、分子鎖の末端以外への極性官能基の導入、および分子鎖への複数の極性官能基の導入化は不可能であるため、極性付与の効果は小さい。[3]の方法は極性官能基を導入可能な部位がオレフィン化合物重合体ブロックに限定され、かつ導入できる極性官能基の種類も限られる。また、反応工程上、生成する変性ブロック共重合体の洗浄は困難であるため、副生成物や未反応物が除去できず混入したままとなるという問題がある。
しかして、本発明の目的は、構造単位(a)を含有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体の水素添加物に極性官能基を付与させることによる、極性および耐熱性を有する、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体の製造方法、および該極性官能基を付与された水添ブロック共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の目的は、
〔1〕少なくとも1個のメチル基がベンゼン環に結合したメチルスチレン由来構造単位(a)[以下、構造単位(a)と略称する]を含有する芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAを1個以上と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBを1個以上有する芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(I)と略称する]を水素添加触媒存在下、水素添加して得られる水添ブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(I)と略称する]を、塩基の存在下、有機アルカリ金属化合物を作用させてベンゼン環上のメチル基の水素原子を引き抜いてアニオンを形成させ、次いで該アニオン化された水添ブロック共重合体に、極性官能基付与剤を反応させることを特徴とする、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(I)と略称する]の製造方法;および
〔2〕〔1〕の方法で得られる、ブロック共重合体(I)を提供することによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特にブロック共重合体(I)の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAに極性官能基を複数個導入することが可能となり、極性が付与されかつ耐熱性(例えば70℃における引張永久伸び)に優れたブロック共重合体(I)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明について詳細に説明する。
ブロック共重合体(I)の重合体ブロックAにおいて、構造単位(a)を構成するメチルスチレンとしては、例えばo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、3,4,5−トリメチルスチレン、2−メチル−4−エチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレンなどが挙げることができる。重合体ブロックAはこれらの構造単位(a)の1種類のみから構成されていてもよいし2種類以上から構成されていてもよい。そのうちでも、p−メチルスチレンに由来する構造単位が好ましい。
【0009】
重合体ブロックAはブロック共重合体(I)のハードセグメントに相当し、構造単位(a)におけるベンゼン環に結合したメチル基は、有機アルカリ金属化合物が作用してその水素原子が引き抜かれることにより、極性官能基が導入される部位である。
【0010】
重合体ブロックAにおける構造単位(a)の割合は、ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロックAの質量[ブロック共重合体(I)が2個以上の重合体ブロックAを有する場合はその合計質量]に対し1質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、40質量%以上であるのがさらに好ましく、そしてすべての単位が構造単位(a)からなっていてもよい。構造単位(a)の割合が1質量%未満であると、重合体ブロックAに極性官能基が導入されにくい傾向となる。重合体ブロックAにおける構造単位(a)とそれ以外の芳香族ビニル化合物単位との結合形態は、ランダム、ブロック、テーパードなどのいずれの形態であってもよい。
【0011】
また構造単位(a)以外の芳香族ビニル化合物単位としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデンなどからなる単位を挙げることができ、中でもスチレンからなる単位が好ましい。
【0012】
ブロック共重合体(I)は、上記の構造単位(a)を含む芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックAの他に、構造単位(a)を含まない芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックを有していてもよい。
【0013】
重合体ブロックAの含有量はブロック共重合体(I)の全構成量に対して10〜40質量%の範囲であるのが好ましい。10質量%より低い場合には重合体ブロックAのハードセグメントとしての凝集力が充分でなく、擬似架橋点が充分に形成されないため、ブロック共重合体(I)が充分な耐熱性(例えば70℃での弾性回復性)を示さない傾向となる。また、40質量%より大きい場合、ブロック共重合体(I)からなる熱可塑性エラストマーが柔軟性に欠ける傾向となる。
【0014】
重合体ブロックAは、構造単位(a)を含む芳香族ビニル化合物からなる構造単位と共に、必要に応じて他の重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよい。その場合の他の重合性単量体からなる構造単位の割合は、ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロックAの質量[芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体(I)が2個以上の重合体ブロックAを有する場合はその合計質量]に基づいて20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。その場合の他の重合性単量体としては、例えばブタジエン、イソプレンなどを挙げることができる。
【0015】
一方、ブロック共重合体(I)における重合体ブロックBを構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。重合体ブロックBはこれらの共役ジエン化合物の1種類のみから構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。中でもブタジエン、イソプレンまたはブタジエンとイソプレンの混合物から構成されているのが好ましい。なお、重合体ブロックBのミクロ構造の種類および含有量は特に制限はない。また、2種以上の共役ジエン化合物を併用した場合、それらの結合形態はランダム、ブロック、テーパード、またはそれらの2種以上の組み合わせからなっていることができる。
【0016】
前記したとおり、重合体ブロックBは、イソプレン単位からなるポリイソプレンブロック、ブタジエン単位からなるポリブタジエンブロック、或いはイソプレン単位とブタジエン単位の混合物からなる共重合体ブロックであることが好ましい。
【0017】
重合体ブロックBは、共役ジエン化合物からなる構造単位とともに、必要に応じて他の重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよい。その場合、他の重合性単量体の割合は、ブロック共重合体(I)を構成する重合体ブロックBの質量[ブロック共重合体(I)が2個以上の重合体ブロックBを有する場合はその合計質量]に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。その場合の他の重合性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどを挙げることができる。
【0018】
ブロック共重合体(I)は、重合体ブロックAと重合体ブロックBとが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれでもよい。中でも、重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合形式は直鎖状であることが好ましく、重合体ブロックAをAで、また重合体ブロックBをBで表したときに、例えばA−B−Aで示されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで示されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aで示されるペンタブロック共重合体などを挙げることができる。中でも、トリブロック共重合体(A−B−A)が、ブロック共重合体(I)の製造の容易性などの点から好ましい。
【0019】
ブロック共重合体(I)の数平均分子量は特に制限されないが、好ましくは30000〜1000000の範囲であり、より好ましくは40000〜300000の範囲である。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0020】
ブロック共重合体(I)は、例えば、次のような公知のアニオン重合法によって製造することができる。すなわち、アルキルリチウム化合物などを開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの重合反応に不活性な有機溶媒中で、構造単位(a)を構成するメチルスチレンまたは構造単位(a)を構成するメチルスチレンと芳香族ビニル化合物の混合物、共役ジエン化合物を逐次重合させてブロック共重合体(I)を形成する。
【0021】
係るブロック共重合体(I)を含む反応混合液から、好ましくはブロック共重合体(I)を単離せずに、引き続き水素添加触媒を加え、水素雰囲気下で水素添加してブロック共重合体(I)を得ることができる。この水素添加反応は、水素添加触媒としてニッケル、コバルトなどの第9、10族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウムなどからなる有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒などの存在下で、通常、反応温度として20〜100℃の範囲で、水素圧力0.1〜10MPaの範囲の条件下で行う。
【0022】
ブロック共重合体(I)において、重合体ブロックBより重合体ブロックAに、官能基が導入された場合の方が、得られるブロック共重合体(I)の耐熱性(例えば、70℃における弾性回復性)が優れる傾向となる。ブロック共重合体(I)において、水素添加率が高いほど、重合体ブロックAに官能基が導入される割合が高くなるため、ブロック共重合体(I)を構成する水素添加された重合体ブロックBの共役ジエン化合物単位に基づく炭素−炭素二重結合の95%以上が水素添加されていることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、99%以上が水素添加されていることがさらに好ましい。
なお、水素添加された重合体ブロックBの共役ジエン化合物単位に基づく炭素−炭素二重結合の水素添加率は、ヨウ素価滴定、赤外分光光度計、核磁気共鳴などの測定手段により、水素添加反応前後における重合体ブロックB中の炭素−炭素二重結合の量を測定し、その測定値から算出することができる。
【0023】
このようにして得られるブロック共重合体(I)を含む反応混合液から、好ましくはブロック共重合体(I)を単離せずに、反応混合液に塩基を添加して、該塩基の存在下、有機アルカリ金属化合物を作用させて構造単位(a)のベンゼン環上のメチル基の水素原子を引き抜いてアニオンを形成させ、次いで該アニオン化された水添ブロック共重合体(I)に、極性官能基付与剤を反応させることで、ブロック共重合体(I)を得ることができる。なお、ブロック共重合体(I)を含む反応混合液からブロック共重合体(I)を、スチームストリッピング法のような高温の水蒸気を吹き込むことにより溶媒を短時間で留去する方法、メタノールやアセトンなどのブロック共重合体(I)の貧溶媒に反応混合液を添加して析出させる再沈殿法などの、重合体溶液からの公知の重合体単離手段により一旦単離した後、前記した反応を行なうことによりブロック共重合体(I)を得てもよいが、前者の方法の方が簡便である。以下、この反応について説明する。
【0024】
有機アルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、i−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、α−ナフチルリチウム、β−ナフチルリチウム、アリルリチウム、ベンジルリチウム等が挙げられる。これらのアルキル金属は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用することもできる。中でも、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムが好ましい。
【0025】
有機アルカリ金属化合物の添加量は、導入する極性官能基の数によって適宜調節することができるが、極性および耐熱性を効果的に発現させる観点からは、構造単位(a)1モルに対し、0.001モル〜5モルの範囲が好ましく、0.005モル〜1モルの範囲がより好ましい。
【0026】
塩基としては、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、ジオキサンなどのエーテル;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミンなどの3級アミン;ピリジンなどの含窒素芳香族化合物;カリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−アミルアルコキシド、カリウム1,1−ジメチル−1−ブトキシドなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。これらの塩基は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用することもできる。中でも、テトラヒドロフラン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、カリウムtert−ブトキシドが好ましい。
【0027】
塩基の添加量は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して0.5モル以上であることが好ましく、1〜10モルの範囲であることがより好ましい。0.5モルより少ない場合、構造単位(a)のベンゼン環上のメチル基のアニオン化反応が十分に起こらない傾向となる。
【0028】
極性官能基付与剤としては、導入する極性官能基の種類によって適宜選択される。例えばカルボキシル基を導入する場合は二酸化炭素が挙げられ、水酸基を導入する場合は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシドなどのエポキシド;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド;アセトン、ベンゾフェノンなどのケトンが挙げられ、アミノ基を導入する場合は、例えば、エチレンイミドなどのイミド、ビニルピリジン、ε−カプロラクタム、β−プロピオラクタム、ジメチルプロピオラクタムなどのラクタムなどが挙げられ、フッ素原子含有基を導入する場合は、例えば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート、フルオロスチレンが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上併用することもできる。
【0029】
極性官能基付与剤の添加量は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して1モル以上であることが好ましく、1〜2モルの範囲であることがより好ましい。1モルより少ない場合、充分に極性官能基が導入されない傾向となる。
【0030】
本発明のブロック共重合体(I)の製造方法は、前記の方法で得られるブロック共重合体(I)を含む反応混合液から、好ましくはブロック共重合体(I)を単離せずに、反応混合液に塩基を添加して、該塩基の存在下、有機アルカリ金属化合物を−50〜80℃の範囲、好ましくは−20〜60℃の範囲で30〜300分の範囲の時間で作用させて、構造単位(a)のベンゼン環上のメチル基の水素原子を引き抜いてアニオンを形成させ、次いで該アニオン化された水添ブロック共重合体(I)に、極性官能基付与剤を添加して同温度で反応させ、必要に応じて水、無機酸水溶液などを添加して反応を停止することで、ブロック共重合体(I)を得ることができる。反応時間は、添加する極性官能基付与剤の種類や量によっても異なるが、通常、1〜60分の範囲である。
【0031】
このようにして得られたブロック共重合体(I)は、反応混合液から、重合体を含む溶液から重合体を単離する際に通常用いられる手段、例えば、メタノールやアセトンなどのブロック共重合体(I)の貧溶媒に反応混合液を添加して析出させる再沈殿法などを適用することにより単離することができる。
【0032】
本発明のブロック共重合体(I)の極性官能基含有量は、酸価滴定、水酸基価滴定、赤外分光光度計、核磁気共鳴などの、導入した極性官能基の種類に応じて最も適したそれ自体公知の測定手段により、単位重量あたりの極性官能基の濃度を測定し、その測定値からブロック共重合体(I)1分子あたりの極性官能基数(f値)として算出することができる。極性及び耐熱性を効果的に発現させる観点から、f値は2以上で100以下であることが極めて好ましい。2より小さい場合、ブロック共重合体(I)の極性および耐熱性が発現しにくい傾向となる。
【0033】
芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体では、一般に、雰囲気温度が、ハードセグメントとしての役割を果たす芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックのガラス転移温度付近以上の温度になると、該重合体ブロックの凝集力が弱まり、充分な耐熱性を示さなくなるが、本発明の方法では、ハードセグメントとしての役割を果たす重合体ブロックAに極性官能基を導入することができ、重合体ブロックAの凝集力を強めることができるため、ソフトセグメントとしての役割を果たす重合体ブロックBだけに極性官能基を導入した場合に比べて、本発明の、極性官能基を付与された水添ブロック共重合体は耐熱性(例えば70℃での弾性回復性)に優れる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0035】
実施例1
(1)撹拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン40kg、sec−ブチルリチウム(11質量%、シクロヘキサン溶液)250mlを加え、この溶液にp−メチルスチレン1.5kgを30分かけて加えて50℃で60分間重合し、次にイソプレンとブタジエンの混合物(イソプレン/ブタジエン=50/50;質量比)7.0kgを60分かけて加えて50℃で90分間重合し、さらにp−メチルスチレン1.5kgを30分かけて加えて50℃で60分間重合することで、ポリp−メチルスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリp−メチルスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。係る反応混合液の一部をサンプリングし、GPC分析を行なったところ、反応混合液中に含まれるポリp−メチルスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリp−メチルスチレントリブロック共重合体の数平均分子量は50000であり、一方、H−NMRによって測定したp−メチルスチレン含有量は30質量%であった。
【0036】
(2)上記反応混合液をシクロヘキサン50kgで希釈したのち、別途オクチル酸ニッケル(64質量%、シクロヘキサン溶液)60gにトリイソプロピルアルミニウム(20質量%、シクロヘキサン溶液)350gを加えて調製した水素添加触媒を反応混合液に添加して、80℃、水素圧力1MPaで3時間水素添加反応を行なって、上記したポリp−メチルスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリp−メチルスチレントリブロック共重合体の水素添加物〔以下、ブロック共重合体1と略称する。〕を含む反応混合液を得た。この反応混合液の一部をサンプリングし、GPC分析を行なったところ、反応混合液中に含まれるブロック共重合体1の数平均分子量は51000であり、一方、H−NMRによって測定したp−メチルスチレン含有量および水素添加されたポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックのイソプレン/ブタジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の水素添加率はそれぞれ29質量%、99%であった。
【0037】
(3)次いで、上記ブロック共重合体1を含む反応混合液に、テトラヒドロフラン1.2kgを添加して50℃に冷却し、この混合液にtert−ブチルリチウム(14質量%、ペンタン溶液)1200mlを液の温度を40〜60℃の範囲に保つようにして添加し、添加終了後、同温度で3時間攪拌した。この反応混合液を、二酸化炭素0.18kgを溶解させたシクロヘキサン10kg中に50℃で30分間かけて注ぎ、60℃で1時間反応させた後、10質量%リン酸水溶液1.6kgを添加した。ブロック共重合体1を含む有機相を、アセトン200kgで再沈処理することにより、ブロック共重合体1を単離した。
得られたブロック共重合体(ブロック共重合体(I)−1と略称する。)の一部をサンプリングし、GPC分析を行なったところ、該ブロック共重合体(I)−1の数平均分子量は51000であった。
【0038】
(4)得られたブロック共重合体(I)−1を約1g精秤して容量500mlの三角フラスコに入れ、フェノールフタレイン5mgをトルエン200mlで溶解させた溶液を加えてブロック共重合体(I)−1を完全に溶解させた。この溶液を、水酸化カリウムのエタノール溶液(0.05mol/l)で滴定した。滴下量から下式によりf値(ブロック共重合体1分子あたりの極性官能基数)を算出した。結果を表1に示す。
f値(個/分子)=0.05×V×M
V:水酸化カリウムのエタノール溶液(0.05mol/l)の滴下量(l)
M:ブロック共重合体(I)−1の数平均分子量
【0039】
(5)一方、得られたブロック共重合体(I)−1を約25g用いて、熱プレス機で230℃、10MPaで3分間プレスし、厚さ0.1cmのシートを作製した。得られたシートからJIS K 6262に記載された方法に従って短冊状2号の試験片を打ち抜き、この試験片に2cm幅の標線を付け、25℃および70℃の2種類の温度条件下で50%伸長して2時間保持した後、開放し、それぞれの温度条件下で30分静置した後に標線間の長さ(l(cm))を測定して、下式によって引張永久伸び(%)を算出した。結果を表1に示す。
引張永久伸び(%)=100×(l−2)/2
【0040】
比較例1
実施例1における(1)および(2)と同様の操作を行ない、ブロック共重合体1をアセトンで再沈処理することにより単離した。得られたブロック共重合体1を用いて、実施例1における(5)と同様の操作を行ない、引張り永久伸び(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
比較例2
実施例1において、p−メチルスチレンの代わりにスチレンを同量用いたこと以外には実施例1の(1)、(2)および(3)の操作を同様に行った。(2)の操作で得られたポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物のGPC分析による数平均分子量は51000であり、H−NMRによって測定したスチレン含有量および水素添加されたポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックのイソプレン/ブタジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の水素添加率はそれぞれ29質量%、99%であった。また、(3)で得られたブロック共重合体(ブロック共重合体(I)−2と略称する。)の一部をサンプリングし、GPC分析を行なったところ、該ブロック共重合体(I)−2の数平均分子量は51000であった。
得られたブロック共重合体(I)−2を用いて、実施例1における(4)および(5)の操作と同様にして、そのf値および引張り永久伸び(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0042】
比較例3
(1)撹拌装置付き耐圧容器中に、シクロヘキサン40kg、sec−ブチルリチウム(11質量%、シクロヘキサン溶液)250mlを加え、この溶液にスチレン1.5kgを30分かけて加えて50℃で30分間重合し、次にイソプレンとブタジエンの混合物(イソプレン/ブタジエン=50/50;質量比)7.0kgを60分かけて加えて50℃で90分間重合し、さらにスチレン1.5kgを30分かけて加えて50℃で30分間重合することで、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。係る反応混合液の一部をサンプリングし、GPC分析を行なったところ、反応混合液中に含まれるポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の数平均分子量は50000であり、一方、H−NMRによって測定したスチレン含有量は30質量%であった。
【0043】
(2)上記反応混合液に、50℃でテトラヒドロフラン1.2kgを添加し、この混合液にtert−ブチルリチウム(14質量%、ペンタン溶液)1200mlを液の温度を40〜60℃の範囲に保つようにして添加し、添加終了後、同温度で3時間攪拌した。この反応混合液を、二酸化炭素0.18kgを溶解させたシクロヘキサン10kg中に50℃で30分間かけて注ぎ、60℃で1時間反応させた。
【0044】
(3)次いで、上記反応混合液をシクロヘキサン50kgで希釈し、別途オクチル酸ニッケル(64質量%、シクロヘキサン溶液)60gにトリイソプロピルアルミニウム(20質量%、シクロヘキサン溶液)350gを加えて調製した水素添加触媒を添加して、80℃、水素圧力1MPaで5時間水素添加反応を行なったのち、10質量%リン酸水溶液1.6kgを添加した。ブロック共重合体2を含む有機相を、アセトン200kgで再沈処理することにより、ブロック共重合体2を単離した。得られたブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体2と略称する。)の一部をサンプリングし、GPC分析を行なったところ、該ブロック共重合体2の数平均分子量は51000であり、H−NMRによって測定したスチレン含有量および水素添加されたポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックのイソプレン/ブタジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の水素添加率はそれぞれ29質量%、95%であった。
得られたブロック共重合体2を用いて、実施例1における(4)および(5)の操作と同様にして、そのf値および引張り永久伸び(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】


【0046】
表1に示した結果より、本発明の実施例1で得られたブロック共重合体(I)−1は、比較例1で得られたブロック共重合体1および比較例2で得られたブロック共重合体(I)−2に比べて、f値が大きく、70℃における引張永久伸びが小さいことから、極性が高く、耐熱性に優れることが分かる。また、比較例3で得られたブロック共重合体2は、実施例1で得られたブロック共重合体(I)−1とf値は同等であるが、カルボキシル基が導入されている部位は重合体ブロックBにおける炭素−炭素二重結合のα位であり、構造単位(a)のメチル基にカルボキシル基が導入されている、すなわち重合体ブロックAにカルボキシル基が導入されている点が異なる。この一次分子構造の差異に由来して、実施例1で得られたブロック共重合体(I)−1の引張永久伸び、特に70℃における引張り永久伸びは比較例3で得られたブロック共重合体2と比べて小さく、耐熱性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明で得られるブロック共重合体(I)は、その極性および耐熱性を活かして極性樹脂改質剤などに有効に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−1819(P2008−1819A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173441(P2006−173441)