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【発明の名称】 制吐剤
【発明者】 【氏名】池水 昭一

【氏名】岩崎 裕次

【氏名】池水 智博

【要約】 【課題】ネコの嘔吐症状に対して優れた抑制効果を有する安全性の高い制吐剤を提供することである。

【解決手段】キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分として含有することを特徴とする制吐剤であり、前記酸性キシロオリゴ糖が、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、かつ、平均重合度が2.0〜15.0であるのが好ましく、前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たもの」であるのが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分として含有することを特徴とする制吐剤。
【請求項2】
前記酸性キシロオリゴ糖がキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜15.0である前記請求項1に記載の制吐剤。
【請求項3】
前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで、該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たもの」である前記請求項1又は2に記載の制吐剤。
【請求項4】
ウロン酸が、グルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸である請求項1〜3のいずれか1項に記載の制吐剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された制吐剤を有効量含有することを特徴とする家畜用飼料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載された制吐剤を有効量含有することを特徴とするペットフード。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載された制吐剤を有効量含有することを特徴とするペット用機能性食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用の制吐剤に関し、さらには、ネコの嘔吐症状に対して、優れた抑制効果を有する安全性の高い制吐剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ネコは、イヌとともに愛玩動物として古くから飼育されてきた。近年では、ネコやイヌ等の動物を飼育することによるアニマル・セラピー(動物介在療法)が注目されている。これは、高齢者や障害者が動物と触れ合うことにより、ストレスを低減したり、孤独感を癒したりすることで、精神的な安定、生きがいや責任感を得ることができるというものである。また、急速な核家族化、独居化及び少子化により、一人で居る時間の長い子供や高齢者にとってネコは家族の一員のような存在となり、単なるペットではなくコンパニオンアニマルとも呼ばれるようになってきた。
【0003】
このような背景から、ネコの健康管理にも目が注がれ、栄養バランスに配慮したペットフードが与えられるようになってきた。しかしながら、ネコは雑食であるうえ、放し飼いが多い為、食物や飲料水中の細菌、ウイルス又は毒素等を原因とする嘔吐や下痢を起こしやすい。また、飼い主の不在による孤独感や室内中心の生活による運動不足等により溜まったストレスを原因とした自律神経の失調による嘔吐も多い。嘔吐の繰り返しにより、体力の消耗、栄養失調又は脱水症状から死に至るケースもある。更に、嘔吐により室内外が不衛生になり、ネコだけでなくオーナーの健康にも悪影響を及ぼすこともある。一方、ブリーディングの場では、人気の高い高価な純系種のネコの嘔吐や下痢による発育不良や死亡が問題となっている。これは、仔ネコの免疫機能が未発達であるために、細菌やウイルスの感染に対応出来ないこと、及び純系種が細菌やウイルスの感染に遺伝的に弱いことに起因する。
【0004】
ネコの嘔吐を抑える薬剤(制吐剤)としては、主にヒト用の制吐薬が代用されている。ヒト用制吐薬としては、メトクロプラミド(商品名:プリンペラン)等の嘔吐中枢抑制作用のある中枢性制吐薬や、アミノ安息香酸エチル等の胃粘膜の知覚神経を麻痺させて反射的嘔吐を抑制する末梢性制吐薬又はその他の制吐薬が知られている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、ヒト用制吐薬には、アナフィラキシーショック等の副作用の問題がある。また、味覚が敏感な為に通常時でも薬剤投与が困難なネコへの嘔吐時の投与は、オーナーへの負担が大変大きく、嫌がられている。従って、副作用がなく、制吐効果があり、ペットフード等に添加して容易にネコへの投与可能な制吐剤が求められている。
一方、キシロオリゴ糖入りのペットフードとしては、本出願人らの提案が知られているが、酸性キシロオリゴ糖の効果については記載されていない(特許文献3参照)。
また、酸性キシロオリゴ糖の生理作用に関する提案は、例えば、酸性キシロオリゴ糖組成物を含有する腸内環境改善剤(特許文献4参照)、酸性キシロオリゴ糖を含有するヒスタミン遊離抑制剤(特許文献5参照)等の提案がなされているが、制吐剤としての報告はない。
【特許文献1】特開平5−230057号公報
【特許文献2】特開平5−170745号公報
【特許文献3】特開2002−369658号公報
【特許文献4】特開2004−182609号公報
【特許文献5】特開2004−059481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ネコの嘔吐症状に対して優れた抑制効果を有する安全性の高い制吐剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決する為、鋭意研究した結果、ウロン酸を有し、かつ、平均重合度が2以上15以下の酸性キシロオリゴ糖組成物が、特に優れた制吐効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決する為、本発明は、以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は、「キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分として含有することを特徴とする制吐剤。」である。
本発明の第2は、前記第1発明において、「酸性キシロオリゴ糖が、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜15.0である制吐剤。」である。
本発明の第3は、前記第1または第2の発明において、「酸性キシロオリゴ糖が、リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たものである制吐剤。」である。
本発明の第4は、前記第1〜第3のいずれかの発明において、「ウロン酸が、グルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸である制吐剤。」である。
本発明の第5は、「前記第1〜第4のいずれかの発明における制吐剤を有効量含有することを特徴とする家畜用飼料。」である。
本発明の第6は、「前記第1〜第4のいずれかの発明における制吐剤を有効量含有することを特徴とするペットフード。」である。
本発明の第7は、「前記第1〜第4のいずれかの発明における制吐剤を有効量含有することを特徴とするペット用機能性食品。」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ネコに対して、安全性が高く、かつ、優れた嘔吐抑制効果を有する薬剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の構成について詳述するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
本発明の制吐剤は、キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖組成物を有効成分として含有することを特徴とする。キシロオリゴ糖とは、キシロースの2量体であるキシロビオース、3量体であるキシロトリオース、あるいは4量体〜20量体程度のキシロースの重合体を言う。本発明における酸性キシロオリゴ糖とは、キシロオリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものを言う。
また、キシロースの重合度が異なる酸性キシロオリゴ糖の混合組成物であっても良い。一般的には、天然物から製造するために、このような組成物として得られることが多い。以下、主として酸性キシロオリゴ糖組成物について説明する。
【0009】
酸性キシロオリゴ糖組成物の重合度は、正規分布又はその他の分布をとる。平均重合度としては、2.0〜15.0であるのが好ましく、なかでも、2.0〜11.0であるのが好ましい。キシロース鎖長の上限と下限との差は20以下が好ましく、10以下がより好ましい。ウロン酸は、天然では、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸又はデルタマン硫酸等の種々の生理活性を持つ多糖の構成成分として知られている。本発明におけるウロン酸としては、特に限定されないが、グルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸が好ましい。
【0010】
上記のような酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることが出来れば、その製法は、特に限定されないが、(1)木材からキシランを抽出し、それを酵素的に分解する方法(セルラーゼ研究会発行、セルラーゼ研究会報第16巻、2001年6月14日発行、p17−26)と、(2)リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで、該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られたキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有する酸性キシロオリゴ糖を分離する方法と、を挙げることができる。特に、(2)の方法が、5〜10量体の比較的重合度の高いものを大量、かつ、安価に製造することができる点で好ましい。以下に、(2)の方法の概要を示す。
【0011】
酸性キシロオリゴ糖組成物は、化学パルプ由来のリグノセルロース材料を原料とし、加水分解工程、濃縮工程、希酸処理工程、精製工程を経て得ることができる。加水分解工程では、希酸処理、高温高圧の水蒸気(蒸煮・爆砕)処理又はヘミセルラーゼ等による酵素分解処理によって、リグノセルロース中のキシランを選択的に加水分解し、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体として得る。濃縮工程では逆浸透膜等により、キシロオリゴ糖−リグニン様物質複合体が濃縮され、低重合度のキシロオリゴ糖や低分子の夾雑物などを除去することができる。濃縮工程は逆浸透膜を用いることが好ましいが、限外濾過膜、塩析又は透析なども使用可能である。得られた濃縮液の希酸処理工程により、複合体からリグニン様物質が遊離し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖とを含む希酸処理液を得ることができる。この時、複合体から切り離されたリグニン様物質は酸性下で縮合して沈殿するので、セラミックフィルターや濾紙などを用いて、濾過等して除去することができる。希酸処理工程では、酸による加水分解を用いることが好ましいが、リグニン分解酵素などによる酵素分解なども用いることができる。
【0012】
精製工程は、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程からなる。一部のリグニン様物質は、可溶性高分子として溶液中に残存するが、限外濾過工程で除去される。着色物質等の夾雑物は、活性炭を用いた脱色工程によってそのほとんどが取り除かれる。限外濾過工程では、限外濾過膜を用いることが好ましいが、逆浸透膜、塩析又は透析などを用いることができる。こうして得られた糖液中には、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖とが溶解している。この糖液を、イオン交換樹脂を用いた吸着工程に導入して、目的の酸性キシロオリゴ糖のみを取り出すことができる。以下、糖液を吸着工程に導入して酸性キシロオリゴ糖を精製する概要について説明する。
【0013】
糖液をまず強陽イオン交換樹脂にて処理し、糖液中の金属イオンを除去する。ついで、強陰イオン交換樹脂を用いて糖液中の硫酸イオンなどを除去する。この工程では、硫酸イオンの除去と同時に弱酸である有機酸の一部と着色成分の除去も同時に行われる。強陰イオン交換樹脂で処理された糖液は、もう一度、強陽イオン交換樹脂で処理し、更に、金属イオンを除去する。最後に弱陰イオン交換樹脂で処理し、酸性キシロオリゴ糖を樹脂に吸着させる。
樹脂に吸着した酸性キシロオリゴ糖を、金属塩の低濃度水溶液によって溶出することにより、夾雑物を含まない酸性キシロオリゴ糖溶液を得ることができる。金属塩としては、NaCl、CaCl、KCl又はMgCl等を挙げることができる。得られた溶液を、例えば、スプレードライ処理や凍結乾燥処理により、白色の酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。
【0014】
化学パルプ由来のリグノセルロースを原料とし、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体とした酸性キシロオリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済的である点と、キシロースの平均重合度の高い酸性キシロオリゴ糖組成物が容易に得られる点とにある。キシロースの平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ又はヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0015】
酸性キシロオリゴ糖組成物を配合した制吐剤は、直接的に摂取することもでき、飲料や食品に添加したりして間接的に摂取することもできる。また、本発明の制吐剤は、粉体化することもでき、打錠して錠剤化することもできる。
本発明に於ける酸性キシロオリゴ糖組成物を配合した制吐剤は、ネコやイヌ用のペットフードや機能性食品、家畜用飼料として用いることができる。また、他の食品、経腸栄養剤、他の栄養成分と混合して用いることができる。これらの場合、いずれも、食品・飼料中にキシロオリゴ糖を0.1〜20質量%含有するように配合する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。また、本実施例では断りのない限り、「%」は、「質量%」を示す。
まず、各測定法の概要、本発明で有効成分として含有させた酸性キシロオリゴ糖(UX10)の調製例を示す。
<測定法の概要>
(1) 全糖量の定量
全糖量は、検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、フェノール硫酸法(「還元糖の定量法」、学会出版センター発行)にて定量した。
(2) 還元糖量の定量
還元糖量は、検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、ソモジ−ネルソン法(「還元糖の定量法」、学会出版センター発行)にて定量した。
(3) ウロン酸量の定量
ウロン酸量は、検量線をD−グルクロン酸(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、カルバゾール硫酸法(「還元糖の定量法」、学会出版センター発行)にて定量した。
(4) 平均重合度の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15,000rpmにて15分間遠心分離して不溶物を除去し、上清液を得た。この上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
(5) 酸性キシロオリゴ糖の分析方法
オリゴ糖鎖の分布はイオンクロマトグラフ(ダイオネクス(株)社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−10)を用いて分析した。分離溶媒には100mMのNaOH水溶液を用い、溶出溶媒には前述の分離溶媒に酢酸ナトリウムを500mMとなるように添加し、溶液比で、分離溶媒:溶出溶媒=10:0〜4:6となるような直線勾配を組み分離した。得られたクロマトグラムより、キシロース鎖長の上限と下限との差を求めた。
(6) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15,000rpmにて15分間遠心分離して不溶物を除去し、上清液を得た。この上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
(7) 酵素力価の定義
酵素として用いたキシラナーゼの活性測定には、カバキシラン(シグマ(株)社製)を用いた。酵素力価の定義は、キシラナーゼがキシランを分解することで得られる還元糖の還元力をDNS法(「還元糖の定量法」、学会出版センター発行)を用いて測定し、1分間に1マイクロモルのキシロースに相当する還元力を生成させる酵素量を1ユニットとした。
【0017】
<調製例1>
混合広葉樹チップ(国内産広葉樹70%、ユーカリ30%)を原料として、クラフト蒸解及び酸素脱リグニン工程により、酸素脱リグニンパルプスラリー(カッパー価9.6、パルプ粘度25.1cps)を得た。スラリーからパルプを濾別、洗浄した後、パルプ濃度10%、pH8に調製したパルプスラリーを用いて、以下のキシラナーゼによる酵素処理を行った。
バチルスsp.S−2113株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター、寄託菌株FERM BP−5264)の生産するキシラナーゼを1単位/パルプgとなるように添加した後、60℃で120分間処理した。その後、濾過によりパルプ残渣を除去し、酵素処理液1050Lを得た。
次に、得られた酵素処理液を濃縮工程、希酸処理工程、精製工程の順に導入した。濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR−7410)を用いて濃縮液(40倍濃縮)を調製した。希酸処理工程では、得られた濃縮液のpHを3.5に調整した後、121℃で60分間加熱処理し、リグニンなどの高分子夾雑物の沈殿を形成させ、この沈殿をセラミックフィルター濾過で取り除いて、希酸処理溶液を得た。
精製工程では、希酸処理溶液を限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に導入した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外濾過膜(オスモニクス社製、分画分子量8000)で濾過処理した後、濾液を活性炭(770g、和光純薬工業(株)製)処理及びセラミックフィルター濾過処理した。吸着工程では、精製工程で得られた脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)、強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)各100kgを充填したカラムに順次導入した後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100kgを充填したカラムに導入した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムに75mMのNaCl水溶液を導入して、弱陰イオン交換樹脂に吸着した酸性キシロオリゴ糖を溶出させ、溶出液を得た。得られた溶出液をスプレードライ処理して、酸性キシロオリゴ糖の白色粉末(全糖量353g、回収率13.1%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖をUX10とする。前述の測定方法により、UX10は平均重合度10.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0018】
<調製例2:酸性キシロオリゴ糖粉末剤>
調製例1で得たUX10粉末にデキストリンを加え、酸性キシロオリゴ糖粉末剤を数百包作製した。酸性キシロオリゴ糖粉末剤1包(1000mg)の組成は、酸性キシロオリゴ糖250mg及びデキストリン750mgとした。
【0019】
次に、酸性キシロオリゴ糖の制吐作用を実施例及び比較例で示す。嘔吐症状を示し、元気のないネコ20匹を選択した。これらのネコをA群及びB群(各群10匹)に分け、それぞれ以下の実施例1及び比較例1に使用した。
【0020】
<実施例1>
A群は標準的なネコ用ペットフード、即ち9%以上の粗蛋白質、2%以上の粗脂肪、1%以下の粗繊維質を含むキャットフードであるオーシャンフィッシュ缶(Natural Balance社)に上記調製例2で得た酸性キシロオリゴ糖粉末剤1包全部を降り掛けたペットフードを与えて6日間飼育した。このとき、各粉末剤のネコに対する嗜好性は良好であり、ペットフードの上に降り掛けることで容易に投与することが出来た。投与開始後の各時期の獣医師による嘔吐及びQOL(Quality of Life:生活の質)の所見「著明改善(劇的に改善)」、「改善(明らかに改善)」、「やや改善(何らかの改善)」、「不変」、「悪化」をもとに、改善状況を診断した。その結果を表1に示す。なお、「著名改善」が確認でき次第、診断を終了した。
【0021】
<比較例1>
B群は上記実施例1に使用した標準的なネコ用ペットフードのみを与えて、上記実施例1と同様に飼育し、診断した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】


【0023】
A群のすべてのネコについては、6日までに嘔吐症状及びQOLの著しい改善が見られた。B群は嘔吐症状が回復することはなく、3例は脱水症状と衰弱が進んで悪化した。なお、酸性キシロオリゴ糖を配合したペットフードを与えたA群におけるペットフードの摂食状態は良好であった。
【0024】
酸性キシロオリゴ糖の安全性試験として、急性経口毒性試験及び皮膚刺激性試験を行い、実施例2とした。
【0025】
<実施例2>
<安全性試験>
<急性経口毒性試験>
60質量%の酸性キシロオリゴ糖(UX10)水溶液を、ICR系マウス(雄、6週齢、日本チャールズリバー(株)製)に胃ゾンデを用いて、経口投与した(投与量:5g/マウス体重1kg、各群10匹)。投与してから2週間後まで、死亡例はなかった。又、体重推移については、ブランク(水投与群)と比較しても、有意差(P<0.05)は認められなかった。
<皮膚刺激性試験>
2質量%の酸性キシロオリゴ糖(UX10)水溶液100μlを、除毛後のC3Hマウス(雄、6週齢、日本チャールズリバー(株)製)の背皮に、約1ヶ月間、連続塗布した(1回/日、各群10匹)。塗布期間及び塗布終了後の2週間に亘り、マウス背皮に、紅斑、浮腫、炎症等の異常は特に観察されなかった。また、体重推移については、ブランク(水塗布群)と比較しても、有意差(P<0.05)は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により、嘔吐抑制効果に優れた、安全性の高い制吐剤が提供される。
【出願人】 【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子製紙株式会社
【出願日】 平成18年12月28日(2006.12.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−163233(P2008−163233A)
【公開日】 平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願番号】 特願2006−355616(P2006−355616)