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【発明の名称】 アルキルエーテル化セルロースの製造方法
【発明者】 【氏名】谷岡 弘章

【要約】 【課題】高置換度で、副生塩が比較的少なく、かつ溶解剤を回収して再利用することも可能なアルキルエーテルセルロースの製造方法を提供する。

【解決手段】セルロース(A)の水酸基(a)を、イオン液体(B)中でジアルキルカーボネート(C)を用いてアルキル化反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロースの製造方法であり、イオン液体を構成するカチオンが、イミダゾリウムカチオンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、該製造方法で得られたアルキルエーテル化セルロースはアルキル基置換度が2.1〜2.9で、アルカリ金属の中和塩の含有量は100ppm以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース(A)の水酸基(a)を、イオン液体(B)中でジアルキルカーボネート(C)を用いてアルキル化反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロースの製造方法。
【請求項2】
該イオン液体(B)を構成するカチオン(b)が、イミダゾリウムカチオン(b1)である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
さらに、金属酸化物(D)の存在下でアルキル化反応を行う請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
該金属酸化物(D)が、アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛または酸化マグネシウムである請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
該イオン液体(B)が、セルロース(A)の水酸基(a)をイオン液体中でジアルキルカーボネート(C)を用いてアルキル化反応させた後に回収して得られた回収イオン液体である請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の製造方法で得られた、アルキル基置換度が2.1〜2.9であるアルキルエーテル化セルロース。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか記載の製造方法で得られ、アルカリ金属の中和塩の含有量が100ppm以下であるアルキルエーテル化セルロース。
【請求項8】
セルロース(A)の水酸基(a)がアルキル化されたアルキルエーテル化セルロースであって、アルカリ金属の中和塩の含有量が100ppm以下であることを特徴とするアルキルエーテル化セルロース。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルエーテル化セルロースの製造方法に関する。より詳細には、イオン液体中でのアルキルエーテル化セルロースの製造方法および該製造方法で得られたアルキルエーテル化セルロースに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、分子内のグルコース環単位に存在する3個の水酸基が分子内や分子間で水素結合をすることにより、水や一般的な有機溶媒への溶解性が乏しくなっている。このため、溶解性の観点から利用上大きな支障となっていた。セルロースに様々な置換基を導入した誘導体化が行われており、アルキルエーテル基を導入する場合は、従来から、アルカリ水中で膨潤させた上でアルキルハロゲン化物を用いるwilliamson合成が行われているが、膨潤状態での反応であるため置換度は比較的低かった。
セルロースを溶解する溶解剤として、例えば、塩化リチウムを溶解させたジメチルアセトアミドを使用する方法(非特許文献1)やイオン液体を使用する方法(特許文献2)が開発され、これらの溶解剤を用いてアルキルハロゲン化物でアルキル化反応した場合は、比較的高い置換度のものが得られている。
【0003】
しかしながら、両者の製造法では、従来の方法と同様にエーテル化剤としてアルキルハロゲン化物を使用するため、多量のアルカリを使用してセルロースを膨潤させる必要があり、その結果、エーテル化反応後に、そのアルカリ金属とハロゲン化アルキルとの中和塩が大量に発生してしまう。
電子材料用バインダーや医薬品用途では、金属イオンならびにハロゲンアニオンが悪影響を与えるため、アルカリ金属の中和塩の含有量が極力少ない高純度アルキルエーテル化セルロースが求められており、この塩を除去するため、洗浄工程を繰り返し行うが必要があり、その結果、廃液が多量に発生してしまうという問題点がある。
また、前者のリチウムクロライド/ジメチルアセトアミドを溶解剤として使用する方法では、ジメチルアセトアミドがアルカリにより分解されるため、これらの溶解剤を回収することは不可能に近く、再使用できないためコストアップの原因となっていた。
一方、後者の製造方法では、反応で副生した中和塩をイオン液体から分離することは困難であり、電気分解などの煩雑な工程が必要となるため、比較的高価で多量に使用しなければならないイオン液体が再利用できず、コストアップの原因となる。
【0004】
【非特許文献1】PolymerVol28(1987)1385−1390
【特許文献1】国際公開WO2005/054298号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、高置換度で、理論的に中和塩が副生成せず、かつ溶解剤を回収して再利用することも可能なアルキルエーテルセルロースの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、セルロース(A)の水酸基(a)を、イオン液体(B)中でジアルキルカーボネート(C)を用いてアルキル化反応させることを特徴とするアルキルエーテル化セルロースの製造方法;並びにこの製造方法によって得られたアルキル基置換度が2.1〜2.9であるアルキルエーテル化セルロース、およびアルキルエーテル化セルロースに含まれるアルカリ金属の中和塩が100ppm以下であることを特徴とするアルキルエーテル化セルロースである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法は、アルカリ金属の中和塩が比較的少ないので精製し易く、かつ溶解剤を回収して再利用することも可能であり経済的なアルキルエーテル化セルロースの製造方法である。
また、本発明のアルキルエーテル化セルロースは、高置換度で、かつアルカリ金属の中和塩の含有量が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のアルキルエーテル化セルロースの製造方法は、セルロース(A)の水酸基(a)を、イオン液体(B)中でジアルキルカーボネート(C)を用いてアルキル化反応させることを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法において使用できるセルロース(A)としては、綿リンター、木材パ
ルプもしくは溶解パルプなどから得られる植物系セルロース、アセトバクター属などに属する微生物の産出するバクテリアセルロース、再生セルロース、微結晶セルロースおよび天然多糖類などが挙げられる。
セルロースの溶解機構はセルロースの膨潤を経て溶解剤に溶解することから、セルロースの形状としては溶解剤との接触面積が大きい粉末状が好ましい。
【0010】
本発明の製造方法でアルキル化剤として用いられるジアルキルカーボネート(C)としては、アルキル基の炭素数が1〜10のジアルキルカーボネート、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジオクチルカーボネートおよびジドデシルカーボネートなどが挙げられる。
これらのうち好ましいのは、アルキル基の炭素数が1〜5のものであり、特に好ましいのは、反応性の観点からジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートである。
ジアルキルカーボネート(C)の使用量としては、セルロース100重量部に対し、10から5,000重量部が好ましく、更に好ましくは、100から3,000重量部、特に好ましくは、200から2,000重量部である。
【0011】
本発明において反応溶剤として使用されるセルロースの溶解剤であるイオン液体(B)は、セルロースをアルキル化反応時の温度で溶解するイオン液体であればよい。
ここで、「イオン液体」とは、通常は常温(25℃)で液状である、カチオンおよびアニオンから構成される塩を一般には総称されているが、本発明においては必ずしも常温で液体である必要はなく、セルロースをアルキル化反応時の温度(後述するように130〜180℃)以下の融点を有するものであれば使用することができる。従って、その融点が150℃以下であり、取り扱いの観点から好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは常温以下である。
【0012】
イオン液体(B)を構成するカチオンとしては、イミダゾリウムカチオン(b1)、ピリジニウムカチオン(b2)およびアルキルアンモニウムカチオン(b3)などが挙げられる。
【0013】
イミダゾリウムカチオン(b1)としては下記のものが挙げられる。
例えばN−メチルイミダゾリウム、N−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムおよび1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
【0014】
ピリジニウムカチオン(b2)としては、N−プロピルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、1,4−ジメチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウムおよび1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムなどが挙げられる。
【0015】
アルキルアンモニウムカチオン(b3)としては下記のものが挙げられる。トリメチルアンモニウム、エチルジメチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられ、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオンが好ましい。
【0016】
イオン液体(B)を構成するカチオンとしては、(b1)〜(b3)のそれぞれのうちの1種でも、またはそれぞれのうちの2種以上の併用でもいずれでもよい。
これらのカチオンうち、溶解性の観点から好ましいのはイミダゾリウムカチオン(b1)、ピリジニウムカチオン(b2)、さらに好ましいのはイミダゾリウムカチオン(b1)である。
【0017】
イオン液体(B)を構成するアニオンとしては、ハロゲンアニオン、カルボキシレートアニオン、スルホネートアニオン、リン酸アニオンが挙げられる。
これらのうち、溶解性の観点から好ましくはハロゲンアニオン、カルボキシレートアニオンおよびリン酸アニオンであり、さらに好ましくはカルボキシレートアニオン、ハロゲンアニオンである。
【0018】
イオン液体(B)のうち、このようなイオン液体としては、例えば、イミダゾリウムカチオン(b1)とクロライドアニオンとの組合せ、 イミダゾリウムカチオン(b1)とカルボキシレートアニオンとの組合せなどが挙げられ、具体的には1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(−20℃以下)、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(0℃)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(−20℃以下)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(73℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(84℃)である。
【0019】
本発明のアルキルエーテル化セルロースの製造方法は、通常、以下のような工程(1)〜(4)で行われる。
(1)イオン液体にセルロースを溶解させる。
イオン液体にセルロースを溶解させる工程は、イオン液体をイオン液体の融点以上に加熱し溶解させた後、セルロースを徐々に投入して、セルロースを分散させ、攪拌しながら加熱することで溶解させる。一部、不溶解分が残っていても差し支えない。
イオン液体(B)100重量部に対するセルロースの添加量としては、通常1〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部、特に好ましくは10〜20重量部である。イオン液体(B)は、新しいものでよいが、後述のようにその一部もしくは全部に回収イオン液体を使用してもよい。回収イオン液体を使用することにより、経済的な製造ができる。
溶解操作は、通常の攪拌を行えばよいが、例えばホモジナイザーを使うなどして、特別に高速で攪拌する必要はない。溶解性を向上させる目的で加熱、もしくはマイクロ波を照射しさせて溶解してもよい。
【0020】
(2)ジアルキルカーボネート(C)を加えて、アルキル化反応を行う。
ジアルキルカーボネート(C)は、少量ずつを分割投入しても、連続的に滴下しても、または一括投入してもよい。
高温加熱ではセルロースは溶融する前に熱分解するため、反応温度は低温でアルキル化反応を進行させることが好ましい。
セルロースの熱分解開始温度(約230℃前後)以下であることが必要であり、一方、温度が高いほどアルキル化反応が速く、かつセルロースの溶解度も高いため、反応温度としては、通常130℃〜200℃である。
【0021】
アルキル化反応の反応時間は、通常1〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
反応の終点は、通常、系内の圧力を測定して確認でき、系内圧力が一定となった時点を終点とすることが好ましい。
この工程では、ジアルキルカーボネート(C)に由来する二酸化炭素とアルキルアルコールが副生し、二酸化炭素は系外に飛散し、アルキルアルコールは炭素数1〜10であれば同様に系外に除去される。
イオン液体(B)が触媒能を有するのでアルキル化反応は比較的低温で進行させることができる。
【0022】
なお、反応をさらに促進させるために、金属酸化物(D)の存在下でアルキル化反応を行ってもよい。
金属酸化物(D)としては、アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが挙げられる。
好ましくは、アルミナ、ハイドロタルサイトである。具体例としては アルミナ、キョーワード2000(協和化学(株)製の塩基性吸着剤)使用できる。
金属酸化物の使用量としては、反応性の観点からセルロース100重量部に対し、100重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。
【0023】
(3)精製工程
反応後に得られた液を、5〜50倍量の70℃以上の熱水に攪拌しながら滴下投入することでアルキルエーテル化セルロースを析出させる。
これより温度の低い温水では目的物のアルキル化セルロースが温水には一部溶解するので、温度の高い熱水を投入する必要がある。
さらに、70℃以上の熱水中で1時間攪拌することで、析出したアルキルエーテル化セルロース中に包含するイオン液体(B)を熱水で洗浄除去する。析出したアルキルエーテル化セルロースは、濾過、遠心分離またはデカンテーションなどの操作を用いて取り出すことができ、熱水またはスチーム洗浄を繰り返し行うことで含まれる不純物を低減することができる。
【0024】
(4)イオン液体の回収と精製
上記の精製工程で、アルキルエーテル化セルロースを取り出した残りのイオン液体 (B)と水の混合物は、80〜200℃に昇温し、減圧下で水を蒸発させることで回収イオン液体を得ることができる。回収イオン液体は、通常、水分は1%以下である。
【0025】
上記の製造方法によって得られたアルキルエーテル化セルロースは、アルキル基置換度が従来の方法と同等またはそれ以上であり、好ましくは2.1〜2.9、さらに好ましくは2.3〜2.9である。
本発明において、アルキル基置換度とは、セルロースの構成グルコース単位に含まれる3個の水酸基のうち、アルキル化反応により置換されたアルキル基の個数の平均値である。
【0026】
なお、アルキル基置換度は、Zeisel法によって求められる。
具体的には、ヨウ化水素酸による開裂の後、生成するヨウ化アルキルに臭素・酢酸溶液およびヨウ化カリウム溶液を加え、ヨウ素酸を発生させる。この後、ヨウ化カリウムと希硫酸を加え、遊離したヨウ素を0.05mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定することで滴定量から置換度を求める。詳細は後述する。
【0027】
本発明の製造方法で得られたアルキルエーテル化セルロースに含まれるアルカリ金属の中和塩は、好ましくは100ppm以下であり、高純度である。
セルロースをアルカリ化した後にアルキルハライドでアルキル化する従来の方法で得られるアルキルエーテル化セルロース中には、副生生物としてのアルカリ金属の中和塩の含有が不可避であった。
そのアルカリ金属の中和塩としては、アルカリ金属とハロゲンとの中和塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウムなど);アルカリ金属と有機酸との中和塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)が挙げられる。
なお、アルキルエーテル化セルロースに含まれるアルカリ金属の中和塩の含有量は、蛍光X線法で測定できる。
【0028】
本発明のアルキルエーテル化セルロースは高置換度および高純度であるため、電子材料用バインダー、医薬品用途、化粧用途に極めて有用である。
電子材料用バインダーとしては、コンデンサー、IC基板、ハニカム状触媒抗体、圧電素子等などの用途に有用である。
医薬品用途としては、錠剤、顆粒剤、丸薬等の腸溶性コーティング剤、防湿皮膜基剤、徐放性コーティング剤、苦味マスキング剤等に利用できる。
化粧品用途としては、洗浄剤、増粘剤、整髪剤等に利用できる。
さらに塗料用増粘剤、建材用保水剤等にも利用できる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例および製造例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の部は重量部を示す。
【0030】
実施例1
攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド100gおよびパルプ(日本製紙ケミカル(株)製、重合度=約1,200)10gを加え、90℃で1時間攪拌することで溶解させた。ジメチルカーボネート150gを加え、180℃で10時間反応させることで、メチルエーテル化を反応を行った。アルキル化反応に伴い分解して炭酸ガスが発生するので圧抜きを行った。
この反応溶液を85〜90℃の熱水1,000gに投入し、目的物質である本発明のメチルセルロースを析出させた。
遠心分離機で18,000Gで30分間脱水・分離し、得られた固形物にさらに水を200g加えて30分間攪拌して水洗したのち、上記と同様の条件で遠心分離機で脱水した。水洗−脱水の操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間減圧乾燥して、置換度2.9のメチルセルロース 8.4gを得た。アルカリ金属の中和塩の含有量を蛍光X線分析装置(Axios;スペクトリス(株)製)を用いて測定したが、検出限界(使用した機器では10ppm)以下であった。また、置換度はZeisel法により求めたメトキシル基含量から算出した。
上記の精製工程で得られた、イオン液体と水との混合物約1,200gを、攪拌装置および冷却管を装備した反応糟に仕込み、減圧度−0.09MPaG、100〜105℃で、5時間かけて脱水し、回収イオン液体90gを製造した。イオン液体中の残存水分量は0.8%であった。
【0031】
実施例2〜7
実施例2〜4は表1に記載のイオン液体200g、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート150gを使用したこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。
また、実施例5はイオン液体の代わりに回収イオン液体を使用したこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。
さらに、実施例6、7は金属酸化物5gをさらに追加して使用したこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。
アルキル基置換度およびアルカリ金属の中和塩の含有量を表1に示す。
【0032】
なお、アルキル基置換度は、以下のZeisel法[D.G.Anderson, Anal. Chem., 43, 894(1971)]で求めたアルコキシ基含量から算出した。
また、蛍光X線によるアルカリ金属の中和塩の含有量はすべて検出限界以下であった。
【0033】
<メトキシル基含量およびアルキル置換度の定量方法>
(1)試料15mgとヨウ化水素酸6mLを分解フラスコに入れた後、窒素を通じて、150℃で1時間加熱する。生成するヨウ化メチルを気相に追い出し,この後1重量%の赤リン懸濁液で洗浄し吸収管に送る。吸収管には、酢酸カリウム15gを酢酸/無水酢酸混液(9/1)150mLに溶解し、その溶液145mLを量り、臭素5mLを加えておく。
(2)酢酸ナトリウム三水和物溶液が入った共栓三角フラスコに、吸収管の内容物を加える。吸着管の内壁に付着した内容物は、水を加えることで流し出す。次に、振り混ぜながら臭素の赤色が消えるまで、ギ酸を加える。
(3)共栓三角フラスコにヨウ化カリウム3gと希硫酸15mLを加え、栓をして軽く振り混ぜ、5分間放置する。遊離したヨウ素を0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定する。
(4)下記式からまずメトキシル基含量を算出し、これを用いて本発明のアルキル置換度を算出する。
メトキシル基含量(%)(Cm)=滴定量(mL)×51.72/試料量(mg)
アルキル置換度=(Cm×162)/(3100−Cm×14)
【0034】
なお、表1中の略号は以下の化合物を表す。
EMICl:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド
EMIAc:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート
BMICl:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド
回収EMICl:実施例1で回収1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド
DMC:ジメチルカーボネート
DEC:ジエチルカーボネート
Al23:アルミナ(SIGMA−ALDRICH社製)
KW2000:「キョーワード2000」(協和化学(株)製のハイドロタルサイト)
【0035】
【表1】


【0036】
比較例1
オートクレーブ反応容器にパルプ10g、48%水酸化ナトリウム水溶液30gを投じ、60℃で30分攪拌した後、アルキルエーテル化剤としてのエチルクロライド106gを110℃で徐々に4時間かけて加え、さらに20時間反応させエチルエーテル化を終了した。
その後、実施例1と全く同様にして精製し、アルキル基置換度2.2のエチルセルロース を得た。
【0037】
比較例2
オートクレーブ反応容器にパルプ10g、ジメチルカーボネート150gおよびKW2000を10gを投入し、60℃で30分攪拌した後、180℃で10時間反応させアルキル化を行った。反応物を濾過し、KW2000を除去した後、実施例1と全く同様にして精製し、アルキル基置換度0.7のエチルセルロース を得た。
【0038】
比較例3
オートクレーブ反応容器にパルプ10g、EMIClを100gを投じ、90℃1時間攪拌することで溶解させた。48%水酸化ナトリウム水溶液30gを加え、60℃で30分攪拌した後、エチルクロライド30gを110℃で4時間かけて徐々に加え、さらに20時間反応させエチルエーテル化を終了した。
その後、実施例1と全く同様にして精製し、アルキル基置換度2.7のエチルセルロース を得た。
比較例1〜3のものの置換度およびアルカリ金属の中和塩の含有量を表2に示す。
【0039】
【表2】


【0040】
表1からわかるように、本願発明の製造方法は従来の方法に比べて、置換度が高く、かつ、アルカリ金属の中和塩の含有量が低い。
一方、表2からわかるように、従来のエーテル化剤としてエチルクロライドを使用する比較例1および3では、アルカリ化剤として水酸化ナトリウムを多量に使用するため、アルカリ金属の中和塩が多量に発生してしまう。
また、アルカリでセルロースを膨潤させることなく、アルキル化剤としてジメチルカーボネートを使用して反応させた比較例2では、セルロースが十分に膨潤していないために反応性が乏しく、高置換度の誘導体を得ることができず、十分な増粘特性が得られない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のアルキルエーテル化セルロースは高置換度および高純度であるため、電子材料用バインダー、医薬品用途、化粧用途に極めて有用である。
電子材料用バインダーとしては、コンデンサー、IC基板、ハニカム状触媒抗体、圧電素子等に利用できる。
医薬品用途としては、錠剤、顆粒剤、丸薬等の腸溶性コーティング剤、防湿皮膜基剤、徐放性コーティング剤、苦味マスキング剤等に利用できる。
また、化粧品用途としては、洗浄剤、増粘剤、整髪剤等に利用できる。さらに塗料用増粘剤、建材用保水剤等にも利用できる。
【出願人】 【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
【出願日】 平成19年11月28日(2007.11.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−156623(P2008−156623A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2007−307132(P2007−307132)