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【発明の名称】 コア物質への糖鎖付加方法
【発明者】 【氏名】山口 真範

【要約】 【課題】グリコサミノグリカン糖鎖などの糖鎖をコアタンパク質などのコア物質に、その水溶性に左右されることなく高効率的に付加する方法を提供すること。

【解決手段】少なくとも以下の3つの工程を含んでなることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の3つの工程を含んでなることを特徴とするコア物質への糖鎖付加方法。
工程A: キシロシルセリン結合(Xyl−Ser)を有する糖タンパク質および/またはそのタンパク質分解酵素による分解生成物である糖ペプチドに対し、アルキニル基含有アルコールの存在下でエンド−β−キシロシダーゼを用いて糖鎖転移反応を起こさせ、糖鎖の還元末端にアルキニル基を導入してアルキニル基含有糖鎖を得る工程。
工程B: コア物質にアジド基を導入してアジド基含有物質を得る工程。
工程C: 工程Aで得たアルキニル基含有糖鎖と工程Bで得たアジド基含有物質を反応させ、両者を結合して糖鎖付加物質を得る工程。
【請求項2】
糖タンパク質がプロテオグリカンであり、糖鎖がグリコサミノグリカン糖鎖であることを特徴とする請求項1記載の糖鎖付加方法。
【請求項3】
糖ペプチドがプロテオグリカンのタンパク質分解酵素による分解生成物であるペプチドグリカンであることを特徴とする請求項1記載の糖鎖付加方法。
【請求項4】
アルキニル基含有アルコールがプロパルギルアルコールであることを特徴とする請求項1記載の糖鎖付加方法。
【請求項5】
工程Aで得るアルキニル基含有糖鎖が一般式:X−4Xylβ1−O−(CH−C≡CH(Xは1個以上の糖残基を表し、mは1〜6の整数を表す)で表されることを特徴とする請求項1記載の糖鎖付加方法。
【請求項6】
工程Bで得るアジド基含有物質が下記の一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載の糖鎖付加方法。
【化1】



[式中、YはO,S,NHのいずれかを表し、Zはコア物質を表し、nは1以上の整数を表す]
【請求項7】
工程Cで得る糖鎖付加物質が下記の一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1記載の糖鎖付加方法。
【化2】



[式中、X,Y,Z,m,nはそれぞれ前記と同義である]
【請求項8】
一般式:X−4Xylβ1−O−(CH−C≡CH(Xとmは前記と同義である)で表されることを特徴とするアルキニル基含有糖鎖。
【請求項9】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とするアジド基含有物質。
【化3】



[式中、Y,Z,nはそれぞれ前記と同義である]
【請求項10】
下記の一般式(2)で表されることを特徴とする糖鎖付加物質。
【化4】



[式中、X,Y,Z,m,nはそれぞれ前記と同義である]
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコサミノグリカン糖鎖などの糖鎖をコアタンパク質などのコア物質に効率的に付加する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子工学の進歩に伴い、外来遺伝子を組み込んだ大腸菌に異種タンパク質を生産させることは今や困難なことではない。しかしながら、真核生物が生産するタンパク質は大半のものが糖鎖の付加を伴うのに対し、大腸菌が生産するタンパク質は糖鎖の付加を伴わないため、真核生物に大腸菌が生産したタンパク質を投与した場合、そのタンパク質には糖鎖が付加されていないことに起因して、真核生物が生産するタンパク質とは違って十分な機能を示さないといった現象や生体内における安定性に欠けるといった現象が見られることがある。このような問題を解決するために、糖鎖を持つタンパク質を動物細胞に生産させることも行われているが、動物細胞を用いた異種タンパク質の生産は大腸菌を用いたそれよりも困難であったりコストが高くついたりするのが一般的である。従って、大腸菌が生産するタンパク質のように糖鎖を持たない物質に糖鎖を付加する方法がこれまでにも検討されている。例えば特許文献1では、プロテオグリカンのコアタンパク質とグリコサミノグリカン糖鎖の結合部位にあるキシロシルセリン結合(Xyl−Ser)に作用する糖加水分解酵素であるエンド−β−キシロシダーゼを用いた糖鎖転移反応を利用して人工的にプロテオグリカンを合成する方法が提案されており、その実施例では、もとのプロテオグリカンにあったグルコサミノグリカン糖鎖を人工ペプチドに転移させることに成功している。
【特許文献1】特開2003−339396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の方法は、エンド−β−キシロシダーゼの糖加水分解酵素としての本来の機能の副反応(逆反応)を利用するという点において独創的なものであり、一定の評価を受けている。しかしながら、この方法では、糖鎖の付加対象となるコア物質(アクセプター)の水酸基と水との間で競争反応が起こるので、水中に高濃度にコア物質を存在させなければ糖鎖の付加を効率的に行うことができず、このため高濃度に水に溶解できない物質、例えば、疎水性化合物やタンパク質などへの糖鎖の付加は困難であるといった問題を有する。
そこで本発明は、グリコサミノグリカン糖鎖などの糖鎖をコアタンパク質などのコア物質に、その水溶性に左右されることなく高効率的に付加する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特許文献1に記載の方法のようにエンド−β−キシロシダーゼを用いて直接的に糖鎖をコア物質に付加するのではなく、糖鎖にアルキニル基としてプロパルギル基を導入するとともにコア物質にアジド基を導入し、両者をクリックケミストリー(click chemistry)と称される1,2,3−トリアゾールユニットを形成する1,3−双極子付加反応に付すことにより、コア物質の水溶性に左右されることなく、糖鎖をコア物質に高効率的に付加できることを知見した。
【0005】
上記の点に鑑みてなされた本発明のコア物質への糖鎖付加方法は、請求項1記載の通り、少なくとも以下の3つの工程を含んでなることを特徴とする。
工程A: キシロシルセリン結合(Xyl−Ser)を有する糖タンパク質および/またはそのタンパク質分解酵素による分解生成物である糖ペプチドに対し、アルキニル基含有アルコールの存在下でエンド−β−キシロシダーゼを用いて糖鎖転移反応を起こさせ、糖鎖の還元末端にアルキニル基を導入してアルキニル基含有糖鎖を得る工程。
工程B: コア物質にアジド基を導入してアジド基含有物質を得る工程。
工程C: 工程Aで得たアルキニル基含有糖鎖と工程Bで得たアジド基含有物質を反応させ、両者を結合して糖鎖付加物質を得る工程。
また、請求項2記載の糖鎖付加方法は、請求項1記載の糖鎖付加方法において、糖タンパク質がプロテオグリカンであり、糖鎖がグリコサミノグリカン糖鎖であることを特徴とする。
また、請求項3記載の糖鎖付加方法は、請求項1記載の糖鎖付加方法において、糖ペプチドがプロテオグリカンのタンパク質分解酵素による分解生成物であるペプチドグリカンであることを特徴とする。
また、請求項4記載の糖鎖付加方法は、請求項1記載の糖鎖付加方法において、アルキニル基含有アルコールがプロパルギルアルコールであることを特徴とする。
また、請求項5記載の糖鎖付加方法は、請求項1記載の糖鎖付加方法において、工程Aで得るアルキニル基含有糖鎖が一般式:X−4Xylβ1−O−(CH−C≡CH(Xは1個以上の糖残基を表し、mは1〜6の整数を表す)で表されることを特徴とする。
また、請求項6記載の糖鎖付加方法は、請求項1記載の糖鎖付加方法において、工程Bで得るアジド基含有物質が下記の一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0006】
【化5】


【0007】
[式中、YはO,S,NHのいずれかを表し、Zはコア物質を表し、nは1以上の整数を表す]
【0008】
また、請求項7記載の糖鎖付加方法は、請求項1記載の糖鎖付加方法において、工程Cで得る糖鎖付加物質が下記の一般式(2)で表されることを特徴とする。
【0009】
【化6】


【0010】
[式中、X,Y,Z,m,nはそれぞれ前記と同義である]
【0011】
また、本発明のアルキニル基含有糖鎖は、請求項8記載の通り、一般式:X−4Xylβ1−O−(CH−C≡CH(Xとmは前記と同義である)で表されることを特徴とする。
また、本発明のアジド基含有物質は、請求項9記載の通り、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0012】
【化7】


【0013】
[式中、Y,Z,nはそれぞれ前記と同義である]
【0014】
また、本発明の糖鎖付加物質は、請求項10記載の通り、下記の一般式(2)で表されることを特徴とする。
【0015】
【化8】


【0016】
[式中、X,Y,Z,m,nはそれぞれ前記と同義である]
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グリコサミノグリカン糖鎖などの糖鎖をコアタンパク質などのコア物質に、その水溶性に左右されることなく高効率的に付加する方法を提供することができ、例えば、医薬品となる糖鎖を持つ物質の糖鎖を持たない物質からの効率的な製造を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のコア物質への糖鎖付加方法は、少なくとも以下の3つの工程を含んでなることを特徴とするものである。
工程A: キシロシルセリン結合(Xyl−Ser)を有する糖タンパク質および/またはそのタンパク質分解酵素による分解生成物である糖ペプチドに対し、アルキニル基含有アルコールの存在下でエンド−β−キシロシダーゼを用いて糖鎖転移反応を起こさせ、糖鎖の還元末端にアルキニル基を導入してアルキニル基含有糖鎖を得る工程。
工程B: コア物質にアジド基を導入してアジド基含有物質を得る工程。
工程C: 工程Aで得たアルキニル基含有糖鎖と工程Bで得たアジド基含有物質を反応させ、両者を結合して糖鎖付加物質を得る工程。
以下、本発明のコア物質への糖鎖付加方法を工程ごとに説明する。
【0019】
(工程A)
工程Aは、キシロシルセリン結合を有する糖タンパク質および/またはそのタンパク質分解酵素による分解生成物である糖ペプチドに対し、アルキニル基含有アルコールの存在下でエンド−β−キシロシダーゼを用いて糖鎖転移反応を起こさせ、糖鎖の還元末端にアルキニル基を導入してアルキニル基含有糖鎖を得る工程である。
【0020】
キシロシルセリン結合を有する糖タンパク質としては、例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸などの硫酸化多糖からなるグリコサミノグリカン糖鎖がコアタンパク質に結合したプロテオグリカンが挙げられる。プロテオグリカンは、サケ軟骨由来のコンドロイチン硫酸を持つものを始め、種々の構造を有するものが知られている。グリコサミノグリカン糖鎖は、4糖からなる結合領域(−GlcAβ1−3Galβ1−3Galβ1−4Xylβ1−)を介し、コアタンパク質のグリコサミノグリカン糖鎖結合コンセンサス配列(−Glu/Asp−X−Ser−Gly−)中のセリン残基の水酸基に共有結合したものであり、本発明におけるコア物質への付加対象となる糖鎖である。キシロシルセリン結合を有する糖タンパク質のタンパク質分解酵素による分解生成物である糖ペプチドとしては、例えば、プロテオグリカンのタンパク質分解酵素による分解生成物であるペプチドグリカン(コアタンパク質が酵素分解されて2〜20個程度のアミノ酸残基からなるペプチド化したもの)が挙げられる。ペプチドグリカンは、糖鎖転移反応を効率的に起こさせることができ、また、目的とするアルキニル基含有糖鎖の精製が容易であるといった利点を有する。プロテオグリカンからペプチドグリカンを得るために用いることができるタンパク質分解酵素としては、例えば、アクチナーゼが挙げられる。
【0021】
工程Aにおいて用いるエンド−β−キシロシダーゼは、特許文献1にも記載されている、プロテオグリカンのコアタンパク質とグリコサミノグリカン糖鎖の結合部位にあるキシロシルセリン結合に作用する糖加水分解酵素であり、例えば、ホタテ貝中陽腺由来のものが知られている(高垣啓一ら、J.Biol.Chem.265:854−860,1990.など)。工程Aにおけるエンド−β−キシロシダーゼを用いた糖鎖転移反応条件としては、例えば、キシロシルセリン結合を有する糖タンパク質および/またはそのタンパク質分解酵素による分解生成物である糖ペプチドに対し、過剰量のアルキニル基含有アルコールの存在下、pH4.5〜5.5の水溶液中、36℃〜38℃にて1時間〜5日間インキュベートするといった条件が挙げられる。このような糖鎖転移反応条件を採用することにより、糖鎖の還元末端にアルキニル基が導入されたアルキニル基含有糖鎖を効率的に得ることができる。このようにして得られるアルキニル基含有糖鎖としては、例えば、一般式:X−4Xylβ1−O−(CH−C≡CH(Xとmは前記と同義である)で表されるものが挙げられる(アルキニル基含有アルコールがプロパルギルアルコールであってコア物質への付加対象となる糖鎖がグリコサミノグリカン糖鎖の場合には一般式:X’−GlcAβ1−3Galβ1−3Galβ1−4Xylβ1−O−CH−C≡CHで表される(X’は繰り返し2糖単位を表す))。糖鎖のアクセプターをアルキニル基含有アルコールとする利点としては、例えば、アルキニル基含有アルコールは高濃度に水に溶解できるので糖鎖転移反応を効率的に起こさせることができること、糖鎖に反応性が高いアルキニル基を導入することができることで後の工程でコア物質との結合を効率的に行わせることができることが挙げられる。また、糖鎖のアクセプターをタンパク質やペプチドとした場合には糖加水分解酵素の純度が低いとそこに混入するタンパク質分解酵素の作用でアクセプターの酵素分解が起こってしまい目的物が得られないことがあるが、糖鎖のアクセプターをアルキニル基含有アルコールとした場合には糖加水分解酵素の純度が低くてもこのような問題が起こらないことも利点として挙げられる。
【0022】
(工程B)
工程Bは、コア物質にアジド基を導入してアジド基含有物質を得る工程である。コア物質へのアジド基の導入は、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドや1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの存在下でコア物質と4−アジド安息香酸を反応させることで行うことができる。この場合、コア物質としては、例えば、4−アジド安息香酸と反応してエステル結合やチオエステル結合やアミド結合を生成することができる水酸基やチオール基やアミノ基を少なくとも1個有する、合成高分子化合物を含む有機化合物やタンパク質やペプチドなどが挙げられる。このようにして得られるアジド基含有物質としては、例えば、下記の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0023】
【化9】


【0024】
[式中、Y,Z,nはそれぞれ前記と同義である]
【0025】
(工程C)
工程Cは、工程Aで得たアルキニル基含有糖鎖と工程Bで得たアジド基含有物質を反応させ、両者を結合して糖鎖付加物質を得る工程である。この工程は、クリックケミストリー(click chemistry)と称される公知の1,3−双極子付加反応に付すことにより行うことができる(Warren G.Lewisら、Angew.Chem.Int.Ed.41:1053−1057.2002.など)。このようにして得られる糖鎖付加物質としては、例えば、下記の一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0026】
【化10】


【0027】
[式中、X,Y,Z,m、nはそれぞれ前記と同義である]
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0029】
実施例1:合成高分子化合物への糖鎖付加
(工程A)
以下の反応式に示す反応を行った。
【0030】
【化11】


【0031】
特許第3731150号公報に記載の方法に従ってサケ鼻軟骨から調製したプロテオグリカン200mgとアクチナーゼ(アクチナーゼE:科研製薬社製)20mgを0.1Mトリス塩酸緩衝液(10mM塩化カルシウム含有,pH8.0)20mL中で37℃にて24時間インキュベートして得たコンドロイチン6硫酸を持つペプチドグリカン(1)(平均分子量2万:昭和電工社製のサイズ排除クロマトグラフィーShodex OH pack SB−803 HQによりプルランスタンダードを用いて算出)の2重量%水溶液70μLに、プロパルギルアルコール65μLと0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)97μLを加え、次いで、高垣啓一らの前掲の文献(J.Biol.Chem.265:854−860,1990.)に従って精製したホタテ貝中陽腺由来のエンド−β−キシロシダーゼ11μgを加えて37℃にて24時間インキュベートした。その後、反応液を凍結乾燥し、その残渣を蒸留水100μLに溶解した。得られた溶解液をカートリッジカラム(C18−Sep−Pac:ウォーターズ社製)に供し、溶出溶媒として水2mLを用いて粗精製を行った。次いで、得られた溶出液をそのままサイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G−25:アマシャムバイオサイエンス社製)に供し、溶出溶媒として水3mLを用いて目的とするプロパルギル基含有糖鎖(2)を含む溶出液を得、これを凍結乾燥することで目的とするプロパルギル基含有糖鎖(2)を得た。
【0032】
プロパルギル基含有糖鎖(2)のデータ
・ FT−IR(KBr);3294,2933,2093,1578,1412,1356,1151,1077,1026,931,704cm−1
・ 白色粉末
【0033】
(工程B)
以下の反応式に示す反応を行った。
【0034】
【化12】


【0035】
コア物質としての平均分子量550のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(3)100mg(0.18mmol)と4−アジド安息香酸(4)89mg(0.55mmol)をジクロロメタン2mLに溶解し、さらに4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)17mg(0.14mmol)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)112mg(0.55mmol)を加え、室温にて24時間攪拌した。その後、反応液を0℃に冷却し、メタノール0.5mLを加え、5分間攪拌してから減圧濃縮した。得られた残渣をクロロホルムを用いて抽出し、有機層を2M塩酸水溶液で洗浄した後、さらに水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥してから減圧濃縮した。得られたシラップをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、溶出溶媒としてクロロホルム:メタノール=20:1の混合溶媒100mLを用いて目的とするアジド基含有物質(5)を含む溶出液を得、これを減圧濃縮することで目的とするアジド基含有物質(5)を定量的に得た。
【0036】
アジド基含有物質(5)のデータ
H−NMR(CDCl):δ=8.05(d,2H,J=8.6Hz),7.07(d,1H,J=8.6Hz),4.46(m,2H),3.82(m,2H),3.69−3.64(m,42H),3.54(m,2H),3.37(s,3H,PEGOMe
・ MALDI−TOF MS m/z 平均分子量695)
・ 黄土色オイル状物質
【0037】
(工程C)
以下の反応式に示す反応を行った。
【0038】
【化13】


【0039】
Warren G.Lewisらの前掲の文献(Angew.Chem.Int.Ed.41:1053−1057.2002.)に従い、窒素気流下にて、工程Aで得たプロパルギル基含有糖鎖(2)の2重量%水溶液40μLに、工程Bで得たアジド基含有物質(5)の180μMジメチルスルフォキシド溶液10μL、10mM硫酸銅水溶液15μL、リガンドとして1mMジイソプロピルアミン水溶液15μLを順に加え、37℃にて12時間インキュベートした。その後、反応液を凍結乾燥し、その残渣を蒸留水100μLに溶解した。得られた溶解液をサイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G−25:アマシャムバイオサイエンス社製)に供し、溶出溶媒として水:エタノール=9:1の混合溶媒3mLを用いて粗精製を行った。得られた溶出液を凍結乾燥し、その残渣を蒸留水100μLに溶解した。得られた溶解液をカートリッジカラム(C18−Sep−Pac:ウォーターズ社製)に供し、溶出溶媒として水2mLを用いて未反応のプロパルギル基含有糖鎖(2)を溶出させて除去した後、溶出溶媒として水:メタノール=1:1の混合溶媒2mLを用いて目的とする糖鎖付加物質(6)を含む溶出液を得、これを減圧濃縮することで目的とする糖鎖付加物質(6)を得た(アジド基含有物質(5)を基にした収率:100%)。
【0040】
糖鎖付加物質(6)のデータ
・ MALDI−TOF MS m/z 平均分子量8700
H−NMR(DO):δ=8.71(s),8.50(s),8.38(s),8.24(d,J=6.8Hz),8.03(d,J=8.6Hz,Ph),7.94(dd,J=6.8Hz, J=12.0Hz),7.17(d,J=6.8Hz,Ph),4.49(br−d),4.44(m),3.88(m),3.86(m),3.71−3.69(m),3.63(s,PEGOCH),3.61−3.53(m,sugar parts),3.31(s,3H,PEGOMe),3.30−3.29(m),1.83(s,AcN)
・ セルロースアセテート膜電気泳動後のアルシアンブルー染色に陽性(グルコサミノグリカン糖鎖の存在の検出)
・ 黄土色オイル状物質
【0041】
比較例1:
特許文献1に記載の方法に従って、コンドロイチン6硫酸を持つペプチドグリカン(1)の2重量%水溶液70μLに、コア物質としての平均分子量550のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(3)65mgと0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)97μLを加え、次いで、エンド−β−キシロシダーゼ11μgを加えて37℃にて24時間インキュベートしたが、糖鎖転移反応は起こらず、目的とする糖鎖付加物質は得られなかった。
【0042】
【化14】


【0043】
実施例2:タンパク質への糖鎖付加
(工程A)
実施例1の工程Aと同様にして目的とするプロパルギル基含有糖鎖(2)を得た。
【0044】
(工程B)
以下の反応式に示す反応を行った。
【0045】
【化15】


【0046】
4−アジド安息香酸(4)5mg(0.03mmol)をN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)200μLに溶解し、さらに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)6mg(0.03mmol)を加え、室温にて30分間インキュベートした。得られた溶液をコア物質としてのウシ血清アルブミン(7)の0.1%水溶液1mLに4℃にて滴下し、4℃にて24時間インキュベートした。その後、遠心分離を行って不溶物を沈殿させ、上清をサイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G−25:アマシャムバイオサイエンス社製)に供し、溶出溶媒として水3mLを用いて目的とするアジド基含有物質(8)を含む溶出液を得、これを凍結乾燥することで目的とするアジド基含有物質(8)を9.4mg得た。
【0047】
アジド基含有物質(8)のデータ
・ ESI−MS m/z 分子量67082
・ 白色粉末
【0048】
(工程C)
以下の反応式に示す反応を行った。
【0049】
【化16】


【0050】
Warren G.Lewisらの前掲の文献(Angew.Chem.Int.Ed.41:1053−1057.2002.)に従い、窒素気流下にて、工程Aで得たプロパルギル基含有糖鎖(2)の2重量%水溶液20μLに、工程Bで得たアジド基含有物質(8)の0.1重量%水溶液10μL、10mM硫酸銅水溶液15μL、リガンドとして1mMジイソプロピルアミン水溶液15μLを順に加え、37℃にて24時間インキュベートした。その後、反応液を凍結乾燥し、その残渣を蒸留水100μLに溶解した。得られた溶解液をサイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G−25:アマシャムバイオサイエンス社製)に供し、溶出溶媒として水:エタノール=9:1の混合溶媒2mLを用いて目的とする糖鎖付加物質(9)を含む溶出液を得、これを凍結乾燥することで目的とする糖鎖付加物質(9)を得た(アジド基含有物質(8)を基にした収率:100%)。
【0051】
糖鎖付加物質(9)のデータ
・ 平均分子量8万:昭和電工社製のサイズ排除クロマトグラフィーShodex OH pack SB−803 HQによりプルランスタンダードを用いて算出(主たる糖鎖付加数:単位コア物質あたり2〜3)
・ 上記のサイズ排除クロマトグラフィーを用いた高速液体クロマトグラフィー(溶出液0.2M塩化ナトリウム水溶液:流速1mL/分:検出UV280nm)で保持時間8分
・ 黄白色粉末
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、グリコサミノグリカン糖鎖などの糖鎖をコアタンパク質などのコア物質に、その水溶性に左右されることなく高効率的に付加する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
【出願人】 【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
【出願日】 平成18年12月15日(2006.12.15)
【代理人】 【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣

【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一

【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史


【公開番号】 特開2008−150464(P2008−150464A)
【公開日】 平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願番号】 特願2006−338914(P2006−338914)