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【発明の名称】 鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法とその装置
【発明者】 【氏名】土井 研一

【氏名】浜崎 雄一郎

【要約】 【課題】鹿角霊芝から水のみからなる加圧熱水で効率よく有用物質を抽出する方法である。

【解決手段】純水を溶媒4として2.0〜5.0MPaの高圧状態に加圧し、沸点以上の温度、即ち155℃〜185℃で加熱して加圧熱水とし、抽出装置本体2に装入されている鹿角霊芝に抽出時間接触させて反応させ、βグルカン等の有用物質を抽出する。抽出されたβグルカン等の有用物質は、装置内において、背圧弁9で定圧を保持しているが、回収時に圧力開放し回収される。又、溶媒4の昇温段階の100℃で抽出時間接触反応させ、トリテルペノイド類を効率的に抽出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鹿角霊芝から有用物質を抽出する方法において、
飽和蒸気圧以上の圧力で加圧し抽出温度までに加熱した加圧熱水を前記鹿角霊芝に接触させて抽出時間の間加水分解し、前記鹿角霊芝から主にβグルカンを抽出する
ことを特徴とする鹿角霊芝から有用物質の抽出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記鹿角霊芝は、前記加水分解の前処理として所定の熱処理温度で所定の熱処理時間かけて加熱処理されたものである
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記加圧熱水を前記抽出温度まで加熱する方法は、所定時間かけて徐々に昇温し加熱する
ことを特徴とする鹿角霊芝から有用物質の抽出方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記抽出温度に達する前に、常温から100℃〜120℃の範囲で、前記飽和蒸気圧以上の圧力に加圧した前記加圧熱水により所定時間の間加水分解し、前記鹿角霊芝から主にトリテルペノイド類を抽出する
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記飽和蒸気圧以上の圧力は、0.1MPa〜5.0MPaの範囲の圧力である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記抽出温度は、145℃〜190℃の範囲の温度である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記抽出時間は、120分以内である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記抽出された主にβグルカンからなる有用物質は、冷却させ圧力開放し液相状態で回収するようにした
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項9】
請求項2に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記熱処理温度は、90℃〜135℃の範囲の温度である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法において、
前記熱処理時間は、1日〜2ヶ月の範囲の時間である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法。
【請求項11】
鹿角霊芝から有用物質を抽出する装置において、
水を貯蔵する水貯蔵装置と、
前記水貯蔵装置から取り出された水を飽和蒸気圧以上の圧力にする加圧装置と、
前記水貯蔵装置から取り出された水を抽出温度までに加熱する加熱装置と、
前記圧力と前記抽出温度を維持して供給される加圧熱水を、所定の抽出時間前記鹿角霊芝に接触させ、有用物質を抽出する抽出装置本体と、
前記抽出された有用物質を冷却させる冷却装置と、
前記冷却されるまでの有用物質を前記圧力のもとで液相を保持させる背圧装置と、
前記背圧装置の切換えで、前記圧力を開放して前記抽出された液相の有用物質を排出して回収する回収装置と
からなる鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置において、
前記飽和蒸気圧以上の圧力は、0.1MPa〜5.0MPaの範囲の圧力である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置。
【請求項13】
請求項11に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置において、
前記抽出温度は、145℃〜190℃の範囲の温度である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置。
【請求項14】
請求項11に記載の鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置において、
前記抽出時間は、120分以内である
ことを特徴とする鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鹿角霊芝の中から食品や医薬品に有用なβグルカン等の有用物質を抽出する抽出方法とその装置に関する。更に詳しくは、鹿角霊芝に溶媒として高圧加熱された加圧熱水を接触させ、βグルカン等の有用物質を効率よく抽出する抽出方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物には、生理活性機能を有する多種の有用成分が多く含まれている。これらの有効成分は天然化合物として、例えば、きのこ類には多く含まれており、特に鹿角霊芝には免疫賦活性等の機能を有するβグルカンが多量に含まれていることが最近の研究で明らかになっている。きのこは成長すると、傘が開き胞子を放出するが、この胞子に栄養分が多く含まれている。この栄養分の中の1つであるβグルカンは特に免疫賦活性作用が大きく、抗がん性に優れていると評価されている。中でもβ(1―3)Dグルカンの効果が大きい。このβ(1―3)Dグルカンは前述のようにきのこ類に多く含まれており、特に鹿角霊芝に多く含有されていることが知られている。
【0003】
鹿角霊芝とは、自然界では霊芝数万本に数本しか出現しないといわれる貴重なきのこである。形状が鹿の角に類似していることから鹿角霊芝と呼ばれている。この鹿角霊芝には前述したように他のきのこに比べ並外れたβグルカンを含むことが知られており、鹿角霊芝の乾燥体の53%のβ(1―3)Dグルカンが含有しているといわれている。又、例えば、アガリスクきのこの3〜5倍のβグルカンが含まれているともいわれている。βグルカンとは多糖類の一種で、他の多糖類と異なり免疫活性作用があり、前述のように特に抗がん作用を活性させる特徴がある。このβグルカンを体内に吸収させるためには、低分子単糖類にする必要があるが、現状の酵素法、加熱法、微粉化等の技術での可溶化率は1〜5%程度といわれている。
【0004】
この鹿角霊芝からβグルカンを抽出する抽出技術については、従来から具体的な例が知られている。例えば、鹿角霊芝を爆砕処理し、次いで微粉砕した後、微アルカリ性緩衝液中でプロテアーゼの存在下、又は非存在下で加温処理してβグルカンを抽出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。又、鹿角霊芝の細胞内の水を、この水と二酸化炭素流体との双方に相溶性をもつ媒体、例えばエチルアルコールで置換し、この細胞内の水をエチルアルコールで置換している鹿角霊芝を、二酸化炭素流体と接触させ、細胞内の水の一部を二酸化炭素流体に置換し、圧力を一挙に減じて細胞内を体積膨張させ細胞壁を破壊しβグルカンを抽出する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−37016号公報
【特許文献2】特開2006−129716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
βグルカンは、鹿角霊芝の細胞壁を構成している堅い構造物質の植物繊維である。この鹿角霊芝を人間がそのまま食しても、βグルカンの堅い細胞壁は、人間のもつ消化酵素では分解されずそのまま排泄されてしまう。このため、βグルカンの免疫賦活作用が抗がん性に優れているとされながらも、例えば、この粉末を服用しても腸から吸収されず、充分な生理作用を得ることができないのが現状である。
【0006】
又、βグルカンは、水にもアルコール類にも殆ど溶解しないことから、βグルカンの有効成分を抽出することは限られたものとなる。そのため、鹿角霊芝からβグルカンの有効成分を取り出すために、例えば活性剤や酵素を用いる酵素法、加熱法、微粉化法等、種々の方法が試みられ提案されており、特に鹿角霊芝特有の堅い細胞壁の破壊等を、これらの方法で行い抽出を行なっているのが現状である。
【0007】
しかしながら、現状の方法によって細胞膜を破壊したとしても、効率的にβグルカンの有効成分を取り出すことができるとは限らない。それは、細胞膜破壊に伴なって、例えば爆砕や熱的破壊によって、目的とする有効成分が熱的破壊を受けてその有効性を失うおそれがあるからである。また、酵素法は多くの工程で時間を要し、抽出技術としては非能率的である。従って、従来の抽出方法は、必ずしも含有されているβグルカンの有効成分を、そのまま効率的に抽出されているわけではない。しかも、細胞膜を破壊させるためにも、現状はその抽出に多くの工程を要し、また抽出時間も多く要している。更に水以外の溶媒を使用する場合は、最終段階でβグルカンの有効成分を分離しなければならない。
【0008】
本発明の目的は、溶媒を水のみとし、加圧熱水を利用し操作が容易で短時間に鹿角霊芝からβグルカンの有効成分を効率よく抽出するための抽出方法とその装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、低コストで鹿角霊芝からβグルカンの有効成分を抽出する抽出方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明の鹿角霊芝からの有用物質の抽出方法は、鹿角霊芝から有用物質を抽出する方法において、飽和蒸気圧以上の圧力で加圧し抽出温度までに加熱した加圧熱水を前記鹿角霊芝に接触させて抽出時間の間加水分解し、前記鹿角霊芝から主にβグルカンを抽出することを特徴とする。
【0010】
本発明の鹿角霊芝からの有用物質の抽出装置は、鹿角霊芝から有用物質を抽出する装置において、水を貯蔵する水貯蔵装置と、前記水貯蔵装置から取り出された水を飽和蒸気圧以上の圧力にする加圧装置と、前記水貯蔵装置から取り出された水を抽出温度までに加熱する加熱装置と、前記圧力と前記抽出温度を維持して供給される加圧熱水を、所定の抽出時間前記鹿角霊芝に接触させ、有用物質を抽出する抽出装置本体と、前記抽出された有用物質を冷却させる冷却装置と、前記冷却されるまでの有用物質を前記圧力のもとで液相を保持させる背圧装置と、前記背圧装置の切換えで、前記圧力を開放して前記抽出された液相の有用物質を排出して回収する回収装置とからなる。
【0011】
この鹿角霊芝からのβグルカンの抽出には、加水分解の前処理として、鹿角霊芝を所定の熱処理温度で、所定の熱処理時間をかけて熱処理を行うと良い。また、加圧熱水を抽出温度まで加熱する方法は、一気に行うことなく所定時間かけて徐々に昇温し加熱させる。更に、βグルカンの抽出温度までに加熱する前に、常温から100℃〜120℃の範囲で、飽和蒸気圧以上の圧力に加圧した前記加圧熱水を、所定時間の間鹿角霊芝に接触させて加水分解により、鹿角霊芝から主にトリテルペノイド類を抽出することもできる。
【0012】
以下、本発明を構成する主な要素毎に説明する。
[鹿角霊芝]
本発明で使用する鹿角霊芝は、天然、又は人工栽培されたものを使用する。この鹿角霊芝は、採取した生の状態、又はこれを自然、又は人工的に乾燥させたものを用いる。乾燥させた鹿角霊芝を細片、又は粉状に切断、又は粉砕したものを抽出に用いる 。細片、又は粉状への切断は、凍結されたもの、又は常温のものを食品用の公知の切断機、又は粉砕機を用いる。
【0013】
[前処理]
本発明でいう前処理は、鹿角霊芝を加水分解する前の前処理として乾燥、又は酸化のための加熱処理を行うことをいう。この前処理は、鹿角霊芝を酸化させるために行うものであり、この酸化により鹿角霊芝から有用物質を抽出するとき、加水分解の進行を効率的に行うための処理である。この前処理のための熱処理温度を高く、かつ熱処理を長時間行うと、鹿角霊芝の細胞破壊と同時にβグルカンそのものの分解も起きるので、最適な温度、時間は限られる。本発明でいう前処理のための熱処理温度は、90℃〜135℃の範囲の温度であり、熱処理時間は1日〜2ヶ月である。好ましくは、この熱処理温度は、省エネルギー、及びβグルカンの分解を防ぐ意味で、95℃〜105℃が好ましい。また、熱処理時間は3日(72時間)以内が好ましい。
【0014】
[加圧熱水]
本発明でいう加圧熱水とは、鹿角霊芝に接触させて加水分解して有用物質を抽出するときに用いる媒体であり、飽和蒸気圧以上の圧力に加圧、加熱された液相の水である。水は、不純物が少ない蒸留水、又はイオン交換水が好ましい。
【0015】
[βグルカンの抽出]
本発明のβグルカンの抽出は、飽和蒸気圧以上の圧力で加圧し抽出温度までに加熱された液相状態の加圧熱水を、鹿角霊芝に接触させて抽出時間の間加水分解して行う。本発明でいう飽和蒸気圧以上の圧力は、0.1MPa〜5.0MPaの範囲の圧力である。βグルカンを抽出するために最終的に到達するときの抽出温度とは、145℃〜190℃の範囲の温度であり、好ましくは155℃〜185℃の範囲である。抽出のための時間は、省エネルギーの観点、及びβグルカンが分解しないという観点からは、可能な限り短い時間が良い。このための抽出時間は、概ね120分以内が好ましい。この120分以内とは、設定した抽出温度に達したとき、実質的にβグルカンの抽出が完了していることもあるので、0分を含む概念である。また、主にβグルカンを含む抽出液は、冷却させ圧力を開放して常温で液相状態で回収する。
【0016】
[熱処理温度と抽出温度]
本発明の前処理のための熱処理温度と抽出温度との関係は、次のように推定される。加圧熱水によるβグルカンの抽出のための抽出温度は、本発明では145℃〜190℃であり、好ましくは155℃〜185℃の範囲である。加水分解の前処理として、熱処理時間が長くなると抽出温度は低くなり、熱処理時間が短くなると抽出温度は高くなる傾向がある。これは、高い熱処理温度に長時間鹿角霊芝を空気中で晒すと、鹿角霊芝の細胞膜の破壊とβグルカンそのものの分解も起きているためと推定される。熱処理時間が短時間の場合、細胞破壊も同様に発生しているが、βグルカンの分解は大きくは起きていない状態が保たれていると推定される。
【0017】
[他の有用物質の抽出]
本発明の有用物質の抽出は、鹿角霊芝からβグルカンの抽出が主であるが、鹿角霊芝から常温から約100℃〜120℃の範囲で、加圧熱水により加水分解されて抽出されるトリテルペノイド類も有効に抽出することができる。抽出温度が100℃以下では、殆ど検出することができず、抽出温度が120℃以上であれば、トリテルペノイド類は分解することが判明した。本発明の有用物質の抽出は、βグルカン、トリテルペノイド類以外も、加水分解が可能なものであれば、抽出可能な温度領域が判明すれば、他の有用物質も有効に抽出することができる。前記抽出温度までに加熱する前に、常温から100℃〜120℃の範囲で前記飽和蒸気圧以上の圧力に加圧した前記加圧熱水で前記抽出時間の間加水分解し、前記鹿角霊芝から主にトリテルペノイド類を抽出する
【発明の効果】
【0018】
本発明の鹿角霊芝からの有用物質の抽出は、溶媒に水のみを使用し、この溶媒を加圧、加熱して鹿角霊芝に接触させ、最適な条件で反応させることによって、βグルカン等の有用物質を効率よく抽出できるようになった。抽出方法が簡素で、短時間に抽出できるようになった。この結果、低コストで大量のβグルカン等の有用物質を抽出できることとなった。また、溶媒が水のみのために抽出した有用物質を含む水溶液をそのまま、又は食品等に添加して食することができる等の利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施の態様を説明する。本実施の形態は、主に食品や医薬品に使用される有用物質を抽出する技術であり、その抽出対象は特に鹿角霊芝(以下「原料」という)に適用し、この原料から生理活性機能を有する有用な機能性物質、即ちβグルカン等の有用物質を最適条件の溶媒を使用して抽出する技術とその抽出装置である。
【0020】
次に、有用物質を抽出するための装置の構成を説明する。有用物質はβグルカン、トリテルペノイド類、ラノスタン系化合物等種々あるが、以下、有用物質をβグルカンに代表させて説明する。図1は、主にβグルカンの抽出装置1の概要図で、模式的に示した図である。リアクタ2aは反応器として示しているが、本発明の構成の中心をなす抽出装置本体2の一部をなしている。内部には細片或いは細粉化した原料Aを装入している。端的にいうと、抽出装置本体2に装入されている原料Aを加圧加熱した溶媒に接触させてβグルカンを抽出する。
【0021】
本実施の形態に関する抽出装置の構成は、抽出装置本体2以外に予め溶媒を貯蔵している溶媒タンク3と、この溶媒タンク3内の溶媒4を取り出し所定の圧力に高めて送り出す高圧ポンプ5と、送り出された溶媒4を所定の温度に加熱する加熱装置(熱交換器)6と、この加熱装置6で加熱された溶媒4が供給される前述した抽出装置本体2と、この抽出装置本体2で抽出されたβグルカン7を冷却するための冷却装置8と、βグルカン7の高圧状態を維持させる背圧弁9と、この背圧弁9を介して排出されるβグルカン7を回収する回収装置10等から構成されている。
【0022】
抽出装置本体2は、この中心部に細片化された原料Aを貯蔵するためのリアクタ2aが設けられ、このリアクタ2aはステンレス製のものであり、この入口と出口に多孔質フィルタを備えた構造になっている。このリアクタ2aの外側に、これを加熱して維持するリアクタ加熱装置であるマントルヒータ2bが設けられている。この抽出装置本体2の溶媒供給側には、リボンヒータ2cが設けられており、このリボンヒータ2cは加熱装置6で加熱された溶媒4の加熱温度を、供給経路の中で所定の温度に維持できるように保温させるためのものである。従って、溶媒4は、この抽出工程の系の中においては、温度低下することなく抽出温度を維持して原料Aに接触させることができる。
【0023】
次に、このβグルカン7を抽出する方法を図に従って詳細に説明する。前述したとおり、抽出装置本体2のリアクタ2aには溶媒4が供給されるが、この溶媒4はイオン交換水等の純水な水である。溶媒4は、予め専用の溶媒タンク3に貯蔵しておく。この溶媒タンク3から取り出された溶媒4は、高圧ポンプ5により高圧にして加熱装置6に送り出される。高圧ポンプ5において、溶媒4は、本実施の形態では0.1〜5.0MPaの設定圧力で加圧される。この圧力は圧力計5aで表示され目視で確認することができる。
【0024】
溶媒4はこのように高圧化されて加熱装置6に導かれ加熱される。この加熱装置6は、例えば加熱用蛇管6aで構成され、加熱された油槽6b、或いは塩浴等にこの加熱用蛇管6aが浸され、溶媒4はこの加熱用蛇管6aを通過するときの熱交換により抽出温度に加熱されるようになっている。しかし、この加熱装置6はこの構成に限定されるものではなく、他の加熱方法でもよい。
【0025】
この溶媒4のβグルカンの抽出のための抽出温度は、本発明では145℃〜190℃であるが、好ましくは155℃〜185℃の範囲である。この温度までの温度上昇は、常温段階から時間をかけて徐々に昇温させるようにしている。鹿角霊芝を加水分解する前の前処理として、本発明の熱処理温度は、90℃〜135℃で1日〜2ヶ月の間加熱処理を行っている。好ましくは、この熱処理温度は、95℃〜105℃が良い。熱処理時間が長くなると抽出温度は低くなり、熱処理時間が短くなると抽出温度は高くなる傾向がある。後述する実験1では、熱処理温度125℃で7日間の熱処理時間で、前処理した原料を使用したβグルカンの抽出の場合、特に160℃の抽出温度の場合に抽出率が高い結果を得ている。また、実験4では、熱処理温度105℃で3日間(72時間)の熱処理時間で、前処理した原料を使用したβグルカンの抽出の場合、170℃の抽出温度の場合に抽出率が高い結果を得ている。
【0026】
このときの抽出時間は2時間以内である。30分以内であっても好結果を得ている。又、βグルカンを抽出するため抽出温度160℃、170℃等の温度まで昇温させる過程で、100℃〜120℃の温度範囲で飽和蒸気圧以上の圧力を加えながら、所用時間保持して加水分解し抽出を行うと、トリテルペノイド類が抽出され、その抽出量が多いことが判明しており、好結果を得ている。
【0027】
この溶媒4の設定温度は、βグルカン7を抽出するために最も適する温度であるが、これは後述する実施例(実験例)により確認されている。また、原料Aに関しては原料に施す最適な熱処理温度、及び熱処理時間は後述する実施例により確認されている。従って、原料Aに最適な条件として、常に一定になるように溶媒4が供給され接触維持される。このように加圧、加熱するのは、原料Aからβグルカン7を多く抽出させ、抽出の収率を向上させるためである。この溶媒4は、抽出装置本体2に供給されるに際しては、熱電対等の温度センサーにより温度管理がなされる。この温度管理により、リアクタ加熱装置のマントルヒータ2bによって溶媒4を原料Aに合わせ最適温度に設定することができ、又、常に一定の温度に保持することもできる。
【0028】
このようにして、抽出温度をコントロールすることができる。下限は溶媒4の凝固点以上であるが、装置全体の耐圧性を上げると、高温側は臨界点以上の温度でも設定可能である。この条件の範囲にある溶媒4を抽出装置本体2にパイプを介して供給し、抽出装置本体2内に装入されている原料Aと接触させβグルカン7の抽出を行う。
【0029】
抽出装置本体2は、主にβグルカン7を抽出するためのものである。抽出装置本体2は図では簡略的に示しているが、端的にいうと、ステンレス製で内部が空洞の円筒体をベースにしたものである。この抽出装置本体2の両端部には、ステンレス製の多孔質フィルタが着脱自在に固定されている。この多孔質フィルタは、例えば2〜100μmの範囲の貫通した孔が形成されたものである。
【0030】
この多孔質フィルタの材質は、ステンレスであるが、ステンレスに限らず多孔質セラミックなどでもよい。予め破砕してある原料Aの粒径などに合わせ、最も適した孔の開けたものを選択して固定すればよい。本実施の形態においては、熱処理を施した原料Aを使用しているが、熱処理を施さない原料Aであってもよい。
【0031】
又、この抽出装置本体2の両端部には、溶媒4を供給する供給口と抽出された有用物質の排出口が設けられている。この抽出装置本体2に装入されている原料Aは細切片或いは粉末状にされたもので、抽出し易い形態に破砕、又は切断したものである。
【0032】
この原料Aは、多孔質フィルタの間に挟持されているので、抽出装置本体2から流出することはない。抽出装置本体2の外周には、リアクタ加熱装置であるマントルヒータ2bが組み込まれ、加圧加熱された溶媒4を一定の温度、即ち鹿角霊芝からのβグルカン抽出のための最適温度、例えば160℃で常に加熱保持している。
【0033】
このマントルヒータ2bは、抽出装置本体2を外部から伝熱ヒータ或いは熱媒体油で加熱するための熱交換器である。この抽出装置本体2における有効な抽出時間は、120分以内である。この抽出時間の範囲は、βグルカンを効率的に抽出するときの範囲であるが、実際には原料Aの抽出条件に合わせ抽出する有用物質に合わせ最適な時間を設定する。
【0034】
抽出装置本体2から排出されたβグルカン7は有用成分を有する溶液として、冷却装置8に送り込まれ、βグルカン7は大気圧下での溶媒の沸騰温度以下(通常室温レベル)まで冷却される。この冷却は、βグルカン7の熱分解や熱変性を抑え、流出する溶媒4の沸騰を防止するためのものである。冷却させる媒体は水道水であり、水道水を通水させて冷却を行う。この冷却は水道水である必要はなく、例えば循環式の冷媒を使用してもよい。冷却されたβグルカン7は、最終的に背圧弁9により排出されるまでは一定の圧力を維持するようになっている。回収時には、この背圧弁9を切換えて圧力保持を開放して外部に有用物質を排出し回収タンク10に回収する。
【0035】
この背圧弁9は、溶媒4を高圧状態にして供給する工程、即ち高圧ポンプ5以降の工程で冷却終了時までの間を、抽出温度に於ける溶媒4の圧力を0.1〜5.0MPaで維持し、装置内で有用物質を液相に保つために設けられている。圧力を保持することで、溶媒4の沸点以上の温度領域での抽出操作が可能となる。又、この抽出装置1には、これら一連の流れの中で温度コントローラ、圧力コントローラ等を電気的に制御するためのコントロール装置やスイッチ類が付随して設けられている。
【0036】
以上、主に装置の構成を中心に説明したが、さらにその抽出技術について詳述する。本発明の特徴は溶媒に純水(イオン交換水)を使用し加圧熱水とし、その加圧熱水の最適使用条件を設定したことにある。この加圧熱水は、蒸発潜熱が不要なため、比較的昇温速度が速く、又加水分解能を有するなどの特徴がある。又、超臨界水と比べ気相状態をもたない液相としての加圧熱水が加水分解プロセスに効果がある。さらに、加圧熱水による熱触媒ハイドロサーマルプロセスは水を触媒として加水分解を行うので、一般的に元来水を多く含むバイオマスに対しては脱水をする必要がないなどの特徴もある。
【0037】
抽出の方法として、少なくとも飽和蒸気圧以上の所定の圧力と、所定の温度で設定した加圧熱水を設定した抽出時間の間、原料Aに接触させることで効率的に抽出を行なえる。この抽出は、所定の圧力と所定の温度を2段階に切り換えて、加圧熱水をその温度と圧力に応じた抽出時間の間、原料Aに接触させ抽出を行なうこともできる。これは各々の抽出温度での有効成分の抽出が、連続的な処理工程の中で同時に行うことができる特徴がある。例えば、抽出温度に対して図2に示すように、前処理条件によって異なるが、鹿角霊芝において、110℃と170℃に所定圧力と温度を設定し、各々の抽出温度時に抽出時間抽出すると、2種類の有用物質を抽出できる。
【0038】
即ち、温度110℃前後の温度領域では、主にトリテルペノイド類が抽出され、温度170℃前後の温度領域では主にβグルカンの有効成分の抽出ができる。図2において、トリテルペノイド類の抽出温度を110℃としているが、この抽出温度が上限として120℃までは抽出も可能である。又、下限として抽出温度が100℃までは抽出可能であるが、100℃以下の温度では、トリテルペノイド類は殆ど抽出されない。従って、抽出温度により、抽出される有用物質は全く異なる。これを一連の抽出工程で連続的に抽出処理を行なうと、非常に効率よく2種の有用物質を含む混合物質を同時に短時間に得ることができる。
【0039】
トリテルペノイド類とは、苦味の強い物質で、化学的に分離され構造があきらかにされたものは30種程度といわれ、その1つに有機ゲルマニウムがあり鹿角霊芝に多く含まれていることが知られている。このトリテルペノイド類の効能は、がん細胞の増殖抑制作用の他、抗アレルギー作用、抗高血圧作用、抗血栓作用、コレステロール降下作用、肝障害改善作用、エイズウィルス抑制作用、等に効果があるといわれている。
【0040】
このようにトリテルペノイド類が100℃〜120℃の範囲で効率よく抽出できることは、実験的に確認されているところであり、βグルカンが145℃〜190℃で効率よく抽出できることは本発明により実証されている。このように2段階で連続抽出処理することは、2種の有用物質を同時に抽出できて極めて効率的な抽出方法である。説明は2段階としたが、抽出する有用物質が多ければ、それに合わせ多段階の抽出処理を行なってもよいことはいうまでもない。以上、本発明に関わる実施の形態について説明したが、本発明は、これに限定されないことはいうまでもない。本実施の形態は、βグルカンの抽出を中心に説明したが、他の有用物質抽出の適用は可能である。次に本実施の形態に基づく実施例を説明する。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を実験例として説明する。実験は図1に示す構成の装置に準じた実験装置で行った。この実験方法を具体的に詳述すると、実験準備段階で、溶媒は水で、水道水で純水を製造するための純水器(イオン交換器)に入れ純水(イオン交換水)にし、脱気を行う。試料は2〜10mm程度に粉砕機で粉砕する。試料の鹿角霊芝は、含水率14〜15%である。前処理として試料の熱処理を行う。この熱処理は、オーブン(島津製N−500K)で、90℃〜135℃の環境下、1日〜2ヶ月の期間熱養生を行う。この熱処理により、加圧熱水による加水分解が容易になり、有用物質の抽出効率が高くなる。この理由は、定かではないが、鹿角霊芝の細胞膜がこの加熱処理により、細胞膜が酸化し分解しやすくするためと推定される。
【0042】
次に操作盤の主電源を入れ、データロガー、パソコン、ポンプ、オイルバスの電源を入れる。リアクタを繋ぎ、100ml/minで約10分間通水し洗浄する。試料を入れたリアクタをセットし、マントルヒータをリアクタに被せる。次に本実験を行う。運転開始に伴ない、オイルバススイッチを入れた後、熱伝対の温度が設定温度になったことを確認し、冷却器に冷却水を流し、蛇管6aをオイルバス6に浸し、リボンヒーター2c、マントルヒーター2bのスイッチをオンにする。ポンプ流量を10ml/minにセットする。次に昇温過程に移り、データロガーとポンプ5のスイッチを同時に押しスタートさせる。時間はパソコン内の時計で管理する。圧力は背圧弁9で調整し、0.1MPa〜5.0MPaとし、背圧弁9より出てくるものをビーカーで採取する。これを任意の温度になるまで続ける。
【0043】
次に温度保持過程に移り、データロガーから出力された数値をみて、昇温状況を確認する。熱電対の温度が設定温度付近にあることを確認する。熱電対の温度差が(±1〜5℃程度)になるように、リボンヒーター2c、マントルヒーター2bのスイッチオン,オフで調整する。背圧弁9より出てくるものをビーカーで採取する。これが抽出液である。任意の時間これを続ける。そして、採取した抽出液を分析する。βグルカンの分析は、ムタロターゼ・GOD法(酵素発色)により定量した。トリテルペノイド類の分析は、TLC法(薄層クロマトグラフィー)で行った。
【0044】
[実験1]
実験1は、主にβグルカンの最適な抽出温度を探るための実験である。実験方法の概要は次の通りである。
前処理:原試料を125℃で7日間加熱した。
試 料:前処理した原試料(約1cmのピース)をリアクタ2aに装入した。
方 法:120、140、160、180℃の各々において昇温し、3時間保持した。各抽出温度への昇温時間は120℃で40分、140℃で43分、160℃で53分、180℃で55分である。昇温時間、その保持時間中に、30分(min.)毎に抽出物を採集して、それぞれのβグルカン量を測定した。
条 件:試料10.0g(約1cmの細片)、流速10ml/min、圧力5.0MPa、フィルター有り。
溶 媒:イオン交換水
抽出法:流過式リアクタを用いた加圧熱水で抽出した。
分 析:βグルカンの分析は、ムタロターゼ・GOD法(グルコースCII−Test Wako:和光純薬工業株式会社製(日本国大阪府))により定量した。
【0045】
[実験1の結果と考察]
表1は、各抽出液中の水溶性βグルカン濃度(mg/100ml)を示したものである。
【表1】


120℃〜180℃の加熱温度において、各原試料を各抽出温度まで、時間毎に抽出された抽出液のβグルカン濃度を計測した。この表1の結果の理解を容易にするため、図3〜図6に各抽出温度毎に棒グラフで示した。結果は、1.5時間以内の抽出で、βグルカンの大半を抽出可能であり、更にいえば1.0時間以内で大半のβグルカンの抽出が可能となることを示している。160℃の抽出温度では、抽出時間が30分以内での抽出が最も多い結果となった。この結果は加圧熱水により、最適条件を設定して行うと短時間で抽出ができることを実証している。
【0046】
表2は、表1の結果を抽出液中のβグルカン含有量(g/10g)に置き換えて示したものである。
【表2】


【0047】
表3は、抽出対象の物質収支を示したものである。
【表3】


【0048】
原料、残渣、βグルカン、ロスその他の分類で、各抽出温度においての抽出後の結果を示したものである。結果は160℃の場合が、抽出されたβグルカンが最も多く、かつ他の抽出成分も最も多く、抽出後の残渣(原試料の残渣)が最も少なくことが判明した。従って、βグルカンの抽出温度は、160℃が最適で、かつ他の成分も多く抽出されていることが判明した。
【0049】
図7は、表3の結果の理解を容易にするために棒グラフ化して示した図である。
[実験2]
実験2は、鹿角霊芝を加圧熱水により抽出する前に、前処理として原試料を熱処理したときの効果を探るための実験である。熱処理をしない未処理のものから、3ヶ月間熱養生した原試料のものを使用した。実験方法の概要は次の通りである。
前処理:原試料を125℃で、表4に示す各熱処理時間行った。即ち、各熱処理時間とは、未処理(H−1実験)、48時間(H−2実験)、96時間(H−3実験)、144時間(M−1実験)、72時間(M−2実験)、120時間(M−3実験)である。
方 法:常温から155℃に昇温し、2.5時間保持した。各抽出温度への昇温時間は、H−1実験で50分、H−2実験で51分、H−3実験で53分、M−1実験50分、M−2実験で52分、M−3実験で47分、抽出(1ヶ月)で50分、抽出(3ヶ月)で52分である。その保持時間中の1.5時間、及び2.5時間に、その抽出物を採集して、それぞれのβグルカン量を測定した。
これ以外の実験条件、溶媒、βグルカンの測定方法等は、実験1と同一条件である。
【0050】
[実験2の結果と考察]
表4は、各抽出液中の水溶性βグルカン濃度(mg/100ml)を示したものである。
【表4】


【0051】
表4は、前処理のための125℃の熱処理温度で、各熱処理時間に対応した結果を示したとおり、どの熱処理時間においても、155℃の温度を保持した抽出温度で、1.5時間以内における結果が最も抽出効率が良い。
【0052】
表5は、表4に準じ、抽出液中のβグルカン含有量(g/10g)を示したものである。実験条件は、実験2と全く同一であるが、前処理として1ヶ月、3ヶ月間熱処理したものを加えた実験結果を示したものである。単位(g/10g)は、原試料10g質量当たりのβグルカンの抽出質量(g)を示したものである。但し、表5中の1ヶ月間及び3ヶ月間熱処理したした原試料は、熱処理温度を125℃で処理したものである。表5で示した通り、結果は表4と同様の結果であり、1ヶ月、3ヶ月の長期に亘る前処理のための熱処理時間であっても、抽出温度で、1.5時間以内における結果が最も抽出効率が良い。また、72時間以上の熱処理時間は、実質的にβグルカンの抽出量が変わらないことが伺える。
【表5】


【0053】
加熱による前処理をしない原試料と、加熱による前処理した原試料との間に、βグルカンの抽出率に差が生じたのは、125℃による加熱による前処理により、細胞壁(膜)が酸化し、破壊され易くなり、加圧熱水で加水分解が促進されたと推察される。表4のデータから、2日以上熱処理を行えば、有効と推察される。また、3ヶ月では、1ヶ月以上に比べて抽出率が低下しており、3ヶ月以上の熱処理、即ち過剰な酸化はあまり意味がないものと推察される。
【0054】
[実験3]
実験3は、100℃未満の加圧熱水による抽出ではβグルカンが抽出されず、テルペノイド類が抽出されることを探るための実験である。
前処理:なし
試 料:原試料(約1cmのピース)をリアクタ2aに装入した。
方 法:常温から表6に示す各抽出温度に昇温した後、抽出時間は1.0時間とした。各抽出温度への昇温時間は、実験D−1で32分、実験D−2で30分、実験D−3で37分、実験D−4で0分である。
条 件:試料10.0g(約1cmの細片)、流速10ml/min.、圧力2.0MPa、フィルター有り。
溶 媒:イオン交換水
これら以外の実験条件、溶媒、βグルカンの測定方法等は、実験1と同一条件である。
【0055】
[実験3の結果と考察]
表6は、前処理として熱処理を施さない原試料に対して、100℃以下の抽出温度、即ち90℃、70℃、50℃、25℃の各温度のイオン交換水でβグルカンの抽出を行なった結果で、そのイオン交換水中のβグルカンの量を検出したものである。
【表6】


表6から分かるように、100℃以下の抽出温度ではβグルカンは殆ど抽出されない結果となった。なお、前述したTLC法により検出したが、テルペノイド類も抽出されないことが判明した。
【0056】
[実験4]
実験4は、150℃から190℃の加圧熱水による抽出温度範囲で、βグルカンの最適な抽出温度を詳細に探るための実験である。抽出温度150℃から190℃の範囲において、厳密に抽出効率を計測するために5℃の範囲で実験した。ただし、前処理条件を実験1〜3とは変更した。実験方法の概要は次の通りである。
【0057】
前処理:原試料を105℃で、3日(72時間)間加熱した。前処理のための熱処理温度は、省エネルギーの観点から言えば、可能な限り低い温度で短期間が好ましい。しかしながら、食品等の実験で行われている乾燥温度は、一般的に105℃、或いは135℃とされていることを考慮して、この実験4では、105℃を前処理のための熱処理温度と設定した。また、前処理のための熱処理時間の3日(72時間)は、実験2の結果から決定した。
方 法:常温から表7に示す各抽出温度に昇温されたときの昇温時、昇温後30分間、昇温後30〜60分間のβグルカン量(g)を測定した。各抽出温度への昇温時間は、150℃で64分、155℃で74分、160℃で70分、165℃で60分、170℃で59分、175℃で53分、180℃で60分、185℃で59分、190℃で59分である。
条 件:試料10.0g(約1cmの細片)、流速10ml/min.、圧力2.0MPa、フィルター有り。
溶 媒:イオン交換水
これら以外の実験条件、溶媒、βグルカンの測定方法等は、実験1と同一条件である。
【0058】
表7及び図8は、実験4の各抽出温度へ昇温までの昇温時(1)、昇温後の30分間(2)、30−60分間(3)のβグルカンの抽出量(g/10g)を示すものである。
【表7】


【0059】
表8は、各抽出温度での、残渣、抽出物の総量、βグルカン抽出量、及びβグルカンを除いたその他の抽出量(g/10g)を示す結果である。
【表8】


【0060】
[実験4の結果と考察]
実験1の結果では160℃近傍の温度で最大量のβグルカンが抽出できた。これに対して、表7に示した結果は170℃がピーク値を示している。実験1と実験4とは、前処理条件が大きく異なっている。実験1の前処理は、原試料を125℃で7日間加熱したものであった。これに対して、実験4は、原試料を105℃で、3日(72時間)間加熱したものを用いた。
【0061】
即ち、実験1と実験4では、前処理条件が異なっている。実験1の高い熱処理温度と長時間の熱処理で、鹿角霊芝の細胞破壊とβグルカンそのものの分解も起きている、と推定される。実験4の熱処理時間と熱処理温度では、細胞破壊も同様に発生しているが、βグルカンの分解は大きくは起きていない状態が保たれている、と推定される。その結果として、細胞破壊が十分に進行した実験1の熱処理温度と熱処理時間では、実験4の抽出温度に比して、比較的低い温度でもβグルカンが抽出できたものであり、そのピークが160℃である。
【0062】
しかしながら、実験4の前処理条件で細胞破壊は、十分であったと考察されるが、中には、破壊寸前の細胞も存在していたと推測できる。βグルカンについては、分解されるまでは進行してはおらず、抽出する温度域がおのずと高くなってしまったものと推測される。従って、実験4の前処理条件では、抽出温度が170℃で最高を示したものである。要するに、βグルカンが最高に抽出された抽出温度が、実験1より実験4において約10℃前回より高くなった原因は、鹿角霊芝の細胞破壊とβグルカンの分解に原因があったと思われる。
【0063】
実験1と実験4の抽出量は、実験1は、乾燥重量ベースで16%、実験4では33%となった。この事実は、前述した説明の裏付けとなるもので、熱処理温度が高く、熱処理時間が長かった実験1は、βグルカンそのものの分解が起きていたと考えられる。あるいは、分解寸前のβグルカンが多く存在し、加圧熱水に接触することにより分解してしまったと考えられる。この結果で、βグルカンの特性が明らかになったと考えられる。
【0064】
[実験5]
実験5は、実験4で求めた170℃のβグルカン抽出温度において、最も効率的に抽出できる前処理のための熱処理温度を求めるための実験である。実験方法の概要は次の通りである。
前処理:原試料を90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃で、3日(72時間)間加熱した。72時間の設定は、実験2の結果から設定した。
方 法:常温から抽出温度170℃に昇温後、60分間抽出した抽出液のβグルカン量を分析した。分析は、より高い精度を求めるために(1)、(2)に同一原試料、同一方法でβグルカン量を抽出して、その平均値をβグルカン量とした。熱処理温度105℃のβグルカン量は、実験4の結果を採用した。
抽出温度170℃への昇温時間は、熱処理温度90℃のもので52分、以下95℃で51分、100℃で52分、105℃で59分、110℃で50分、115℃で50分、120℃で50分である。
これら以外の実験条件、溶媒、βグルカンの測定方法等は、実験4と同一条件である。
【0065】
表9及び図9は、熱処理温度の違いによるβグルカン抽出量(g/10g)を示す結果である。
【表9】


【0066】
表10は、各熱処理温度での、残渣、抽出物の総量、βグルカン抽出量、及びβグルカンを除いたその他の抽出量(g/10g)を示す結果である。
【表10】


【0067】
[実験5の結果と考察]
表9、10に示すように、熱処理温度100℃がβグルカンの抽出量の最高値を示した。なお、熱処理温度は、省エネルギーの観点から言えば、低い方が好ましい。この結果から、実験4で設定した熱処理温度105℃が妥当な設定であったことが伺える。ただし、抽出物の量では、熱処理温度120℃が最高の抽出量を示しているが、この熱処理温度ではβグルカンが崩壊していることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、βグルカンを抽出するための抽出装置を模式的に示した概要図である。
【図2】図2は、トリテルペノイド類とβグルカンを抽出する形態の説明図である。
【図3】図3は、4段階の抽出温度で時間毎に抽出した抽出液中のβグルカン濃度のデータ図で、抽出温度が120℃の場合を示す。
【図4】図4は、4段階の抽出温度で時間毎に抽出した抽出液中のβグルカン濃度のデータ図で、抽出温度が140℃の場合を示す。
【図5】図5は、4段階の抽出温度で時間毎に抽出した抽出液中のβグルカン濃度のデータ図で、抽出温度が160℃の場合を示す。
【図6】図6は、4段階の抽出温度で時間毎に抽出した抽出液中のβグルカン濃度のデータ図で、抽出温度が180℃の場合を示す。
【図7】図7は、抽出対象の物質収支を示したデータ図である。
【図8】図8は、抽出温度別のβグルカンの抽出量のデータ図である。
【図9】図9は、熱処理温度別のβグルカンの抽出量のデータ図である。
【符号の説明】
【0069】
A…鹿角霊芝
1…抽出装置
2…抽出装置本体
3…溶媒タンク
4…溶媒
5…高圧ポンプ
6…加熱装置
7…βグルカン
8…冷却装置
9…背圧弁
10…回収装置
【出願人】 【識別番号】000168193
【氏名又は名称】株式会社ミゾタ
【出願日】 平成19年11月9日(2007.11.9)
【代理人】 【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成

【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫

【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信


【公開番号】 特開2008−138195(P2008−138195A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2007−291425(P2007−291425)