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【発明の名称】 セルロースアシレートの製造方法
【発明者】 【氏名】上田 伸二

【要約】 【課題】バイオマス資源から作られた原料を用いてセルロースアシレートを製造することにより、液晶表示装置用偏光板や写真フィルムに使用されるセルローストリアセテートフィルムをはじめ多くのセルロースアシレート製品分野において、持続的に発展可能な循環型の市場を作り出し、京都議定書の地球温暖化ガス(CO2等)削減に貢献する。

【解決手段】セルロースアシレートの製造方法において、綿花リンタ及び木材パルプ等のバイオマス資源から作られたセルロースと、セルロース系バイオマス又はデンプン系バイオマスから生成されたエタノールから発酵法により生成された酢酸とを原料してセルローストリアセテートを生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿花リンタ及び/又は木材パルプなどのバイオマス資源から生成されたセルロースと、バイオマス資源から生成されたカルボン酸とを原料として生成されたセルロースアシレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のセルロースアシレートの製造方法において、
前記カルボン酸が、セルロース系バイオマス又はデンプン系バイオマスから生成されたエタノールから発酵法により生成された酢酸であることを特徴とするセルロースアシレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス資源から生成されるセルロースアシレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアシレートは、液晶表示装置用偏光板保護フィルム又は光学補償フィルム等の光学フィルム及び写真用フィルムに使用されるセルローストリアセテートフィルムをはじめ多くのセルロースアシレート製品用に大量に製造されている。
【0003】
これらのセルロースアシレート製品の一部は回収されているものの大部分は廃棄物として焼却されているのが現状である。セルロースアシレートの原料は、セルロースとカルボン酸である。このうちセルロースについては、綿花リンタ及び木材パルプ等のバイオマス資源から生成されているが、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸は石油をはじめとする化石燃料を原料としている。従って、セルロースアシレート製品を焼却することは化石燃料を焼却することになり、京都議定書で取り上げられているCO2ガスなどの地球温暖化ガスを増加させることになる。
【0004】
このようなセルロースアシレートの製造方法としては、例えば特許文献1〜特許文献7及び非特許文献1が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−166501号公報
【特許文献2】特開平9−286801号公報
【特許文献3】特開平10−45804号公報
【特許文献4】特開平10−130301号公報
【特許文献5】特開平11−269304号公報
【特許文献6】特開2000−154202号公報
【特許文献7】特表2005−530865号公報
【特許文献8】特表2006−503730号公報
【特許文献9】特開2006−30937号公報
【非特許文献1】プラスチック講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)
【非特許文献2】日本農芸化学会ABCシリーズ3 バイオマス(日本農芸化学会編集、朝倉書店、1983年発行)
【非特許文献3】Appl. Env. Microbiol. 67,2001 K.Nakada, et al :Characterization of Acetic Acid Bacteria in Traditional Acetic Acid Fermentation of Rice Vinegar(Komesu) and Unpolished Rice Vinegar(Krosu) Produced in Japan
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学フィルムや写真フィルムの業界をはじめとして、セルロースアシレート製品を扱う業界では、まだセルロースアシレート製品の製造方法を見直して、化石燃料の使用を抑止しようという活動は活発にはおこなわれておらず、改善が求められていた。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、化石燃料を原料として使用することのない、環境に優しいセルロースアシレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、セルロースアシレートの原料のうち化石燃料から生成されるカルボン酸をバイオマス資源から生成されたものを使用することにより、上記の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成により達成される。
【0010】
[1]綿花リンタ及び/又は木材パルプなどのバイオマス資源から生成されたセルロースと、バイオマス資源から生成されたカルボン酸とを原料として生成されたセルロースアシレートの製造方法、
[2]カルボン酸がセルロース系バイオマス又はデンプン系バイオマスから生成されたエタノールから発酵法により生成された酢酸である[1]に記載のセルロースアシレートの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係るセルロースアシレートの製造方法によれば、化石燃料を使用することなく、廃棄焼却された場合にも京都議定書で取り上げられているCO2ガス等の地球温暖化ガスを増加させることのない、環境に優しいセルロースアシレートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のセルロースアシレートの製造方法に用いられるセルロースについて説明する。
【0013】
セルロースは、綿花リンタ及び木材パルプ等のバイオマス資源から生成される。セルロースの生成方法は、例えば上述した非特許文献1の第48頁〜第50頁に記載されている。
【0014】
本発明のセルロースアシレートの製造方法に用いられるカルボン酸について説明する。
【0015】
カルボン酸として代表的なものは酢酸であるが、プロピオン酸、酪酸も好ましい。カルボン酸特に酢酸の生成方法は、例えば上述した非特許文献2の第27頁〜第50頁、及び非特許文献2の第102頁〜第124頁等に記載されたバイオマス資源からエタノールを生成し、さらにエタノールを発酵法で酢酸に酸化する方法(非特許文献3参照)、又は非特許文献1の第49頁に記載された糖蜜から酢酸を生成する方法が好ましい。石油やカーバイドを原料にして酢酸を生成する方法は、CO2ガス等の地球温暖化ガスを増加させることになり、好ましくない。
【0016】
セルロースアシレートの製造方法にはカルボン酸の無水物も使用されるが、カルボン酸の無水物特に無水酢酸の生成方法は、例えば非特許文献1の第51頁〜第54頁に記載されているように、上述の酢酸を利用して無水酢酸を生成するのが好ましい。
【0017】
セルロースアシレートの製造方法には、上記のセルロース、酢酸、無水酢酸及び触媒として硫酸を用いるのが一般的である。セルロースアシレートの製造方法は、非特許文献の第154頁〜第156頁、特許文献1の第2頁、特許文献2の第3頁、特許文献3の第3頁、特許文献4の第5頁、特許文献5の第3頁〜第4頁、特許文献6の第3頁、特許文献7の第1頁〜第17頁等に記載されている。
【0018】
本発明の製造方法により得られたセルロースアシレートは、液晶表示装置用偏光板保護フィルム又は光学補償フィルムなどの光学フィルム及び写真用フィルムに使用されることが一般的である。
【0019】
本発明の製造方法により得られたセルロースアシレートを用いた光学フィルムは、例えば特許文献8の第34頁〜第38頁に記載されたソルベントキャスト法により製造することができるが、溶融流延法によっても製造することができる。
【0020】
上記ソルベントキャスト法において使用される溶媒としては、特許文献8の第32頁〜第34頁に記載の溶媒を使用することができる。
【0021】
本発明の製造方法により得られたセルロースアシレートを用いた光学フィルムにおいては、添加剤として、特許文献8の第11頁〜第32頁に記載されたレタデーション制御剤、特許文献9の第13頁〜第93頁に記載の化合物、特許文献8の第38頁〜第39頁に記載の可塑剤ほかの化合物を加えることができる。
【0022】
本発明の製造方法により得られたセルロースアシレートを用いた光学フィルムの製造にあたっては、特許文献8の第39頁〜第40頁に記載の延伸処理、表面処理の工程を施すことができるが、延伸処理を施さなくてもよい。
【0023】
以上述べてきたセルロースアシレートフィルムの用途については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)第45頁〜第59頁に記載されている。
【実施例1】
【0024】
以下の実施例にて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
(1)酢酸の生成
ブラジル産の砂糖エタノールから酢酸菌を用いた発酵法により酢酸を生成し、蒸留濃縮した。
【0026】
(2)セルローストリアセテートの製造
綿花リンタから精製したセルロースと(1)で生成した酢酸及び硫酸を用いて、非特許文献1の第48頁〜第56頁に記載の方法に従い、セルローストリアセテートを製造した。なお、製造工程において、無水酢酸は(1)の酢酸を転化することにより生成した。
【0027】
以上の方法により、バイオマス資源から生成した原料を用いて、セルロースアシレートを製造することができた。このセルローストリアセテートを用いて、本明細書に記載した方法によって、セルローストリアセテートフィルムを作成することにより、焼却廃棄した場合にも地球温暖化ガスを増加させないセルローストリアセテートフィルムを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年11月22日(2006.11.22)
【代理人】 【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏

【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸

【識別番号】100142066
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 直樹

【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫


【公開番号】 特開2008−127508(P2008−127508A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−316297(P2006−316297)