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【発明の名称】 アルキル変性多糖類
【発明者】 【氏名】横山 宏明

【氏名】森 芳彦

【要約】 【課題】単独で使用した場合においても十分な乳化力と泡質の向上効果を有する新規なアルキル化変性多糖類を提供すること。

【解決手段】多糖類またはその誘導体の水酸基の一部が、短鎖アルキルグリシジルエーテルによりアルキル変性されたアルキル変性多糖類、該アルキル化変性多糖類を1種又は2種以上含有する水中油型乳化剤を使用することにより得られる水中油型エマルションおよび該水中油型エマルションを含む皮膚外用剤、化粧料及び毛髪化粧料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類またはその誘導体の水酸基の一部が、下記一般式(1)で表される基の1種又は2種以上で置換されたアルキル変性多糖類。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【請求項2】
前記多糖類が、セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、グアーガム、ヒドロキシアルキルグアーガム、カルボキシアルキルグアーガム、ヒドロキシアルキル/カルボキシアルキルグアーガムから選ばれる1種または2種以上である請求項1に記載のアルキル変性多糖類。
【請求項3】
前記アルキル変性多糖類が、下記一般式(2)で表されるアルキルグリシジルエーテルによりアルキル変性されたものである請求項1又は2に記載のアルキル変性多糖類。
【化2】


(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【請求項4】
前記アルキル変性多糖類のアルキル置換度が、構成グルコース単位当たり0.01〜1.00である請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルキル変性多糖類。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルキル変性多糖類を1種、又は2種以上含有する水中油型乳化剤。
【請求項6】
請求項5に記載の水中油型乳化剤を使用することにより得られる水中油型エマルション。
【請求項7】
請求項6に記載の水中油型エマルションを含有する皮膚外用剤、化粧料及び毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル変性多糖類及びそれらを使用した皮膚外用剤、化粧料及び毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型エマルションからなる皮膚外用剤及び化粧料においては、剤形の安定性を保持するためにアルキル変性多糖類が使用されている。特許文献1には、アルキル化多糖類と非イオン界面活性剤を含有する水中油型乳化剤組成物が記載されている。また、特許文献2にはアルキル化多糖類、リン脂質、イオン性界面活性剤を必須成分とする水中油型用の乳化剤組成物が記載されている。
【0003】
しかしながら、上記文献に記載された方法では乳化力を高めるため、アルキル化多糖類以外の界面活性剤を添加する必要があり、化粧料等に配合された他の成分が目的とする効果を発揮することを妨げることがあった。
【特許文献1】特開2003−003013号公報
【特許文献2】特開2005−179241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明が本発明が解決しようとする課題は、単独で使用した場合においても十分な乳化力と泡質の向上効果を有する新規なアルキル変性多糖類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、多糖中の水酸基の一部が、下記一般式(1)で表される基の1種又は2種以上で置換されたアルキル変性多糖類を用いることにより安定性が良好な水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0006】
本発明の第二主題は、前記アルキル化変性多糖類を1種又は2種以上含有する水中油型乳化剤を使用することにより得られる水中油型エマルションおよび該水中油型エマルションを含む皮膚外用剤、化粧料及び毛髪化粧料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルキル変性多糖類は、多糖中の水酸基の一部を特定の置換基で変性することで、従来のアルキル変性多糖類と比較し、優れた乳化力と泡質の向上効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態について詳述する。
本発明に関わるアルキル変性多糖類は、多糖中の水酸基の一部が、下記一般式(1)で表される基の1種又は2種以上で置換されたアルキル変性多糖類である。
【化2】


(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0009】
本発明に用いる多糖類としては、動植物、魚介類、海藻、種子、樹液、微生物産出物から得られるものを用いることができる。具体的には、アルギン酸、カラギーナン、寒天、ファーセラン、クインシード、コンニャクマンナン、タマリンドガム、フェヌクリークガム、タラガム、デキストリン、デンプン、アラビアガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、ガッティガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、セルロース等を用いることができる。
【0010】
更には、前記多糖類の誘導体を用いることもできる。具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、カルボキシメチルグアーガム、ヒドロキシエチル/カルボキシメチルグアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースエチルエーテル、ヒドロキシプロピルデンプン等が挙げられ、乳化力と泡質の向上効果の点でヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0011】
一般式(1)のRは、炭素数1〜5で、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、乳化力と泡質の向上効果の点で好ましくは、炭素数2〜4である。
【0012】
これら多糖類ないしその誘導体のアルキル変性は公知の方法により行うことができる。例えば、前述した多糖類ないしその誘導体に、苛性ソーダ等のアルカリ存在下、アルキルグリシジルエーテルを添加し、40〜80℃で数時間混合反応させた後中和し、洗浄、乾燥することで得ることができる。ここでいうアルキルグリシジルエーテルとしては、下記一般式(2)で示されるものが好適に使用でき、式中Rとしては直鎖状又は分岐状のアルキル基が特に好ましい。


(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
具体的にはメチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0013】
アルキル変性多糖類のアルキル置換度とは、構成グルコース単位当たりのアルキル置換基の数を示し、H−NMRを用いた測定により確認が可能である。その値は乳化力と泡質の向上効果の点で0.01〜1.00が好ましく、0.05〜0.50がより好ましく、0.10〜0.40が特に好ましい。
【0014】
本発明に係るアルキル変性多糖類は、水中油型エマルションの乳化剤として好適に使用することができる。油性成分としては、具体的には、スクワラン、オリーブスクワラン、流動パラフィン等の炭化水素系油、オリーブ油、ホホバ油等の植物油、牛脂等の動物油、ミツロウ、カルナバロウ、ラノリン、キャンデリラロウ等のロウ類等が挙げられる。
【0015】
本発明に係るアルキル変性多糖類を用いて水中油型エマルションを調整する際は、パドルミキサー、ホモミキサー等の通常の乳化装置が使用できる。
【0016】
前記水中油型エマルションは皮膚外用剤、化粧料及び毛髪化粧料として好適に使用することができるが、それらの剤型は限定されず、任意の剤型を取ることができる。また、上記(必須)成分の他に本発明の効果を損なわない範囲で、その剤型によって通常当該化粧料組成物に配合される各種成分を加え常法により製造することができるが、中でも毛髪処理用組成物として好ましく使用できる。剤型としては、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアワックス、ヘアローション、ヘアミスト等が挙げられ、いずれも化粧料組成物のコンディショニング効果、使用後の仕上がり感の向上及び泡立ちの効果を損なうことなく、その泡質を改善することができる。また、使用感触向上効果から、皮膚洗浄剤、洗顔料への利用も可能である。また、使用部位や使用場面に合わせて、固体、粉体、液体、ジェル、クリーム、エアゾール、フォームなど様々な態様をとることが可能である。
【0017】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例1〜3に本発明のアルキル変性多糖類の具体的製造方法を示し、比較例1〜4に対照として用いた各種ポリマーを示した。なお、アルキル変性多糖類のアルキル置換度は、溶解可能な重水素溶媒にてアルキル変性多糖類の1質量%溶液を調整しH−NMRにて測定を行い、構成グルコースの水素とアルキル基の水素の積分曲線の高さの比より、アルキル置換度を決定した。
【0018】
(実施例1)
窒素導入管、温度計、コンデンサー、滴下ロート、アンカー型攪拌翼を備えた内容積1Lのガラス製フラスコ中に、80容積%のイソプロパノール(IPA)水溶液488g、苛性ソーダ(NaOH)3.5g、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)107gを仕込み、窒素気流下、1時間攪拌し、分散液を調整した。その後、60℃に昇温し、ブチルグリシジルエーテル(BGE)5.2gを滴下し、60℃にて10時間反応を行った。反応後冷却し、スラリーを塩酸にてpHが中性を示すまで中和し、ろ過物をIPA500gにて2回洗浄し、固形物をろ過により取り出した。取り出したろ過物を減圧下で加熱乾燥し、ブチル置換度が0.05のアルキル変性多糖類を得た。
【0019】
(実施例2)
アルキルグリシジルエーテルがBGE13.0gである以外は、実施例1と同様の装置及び操作を行い、ブチル置換度が0.13のアルキル化変性多糖類を得た。
【0020】
(実施例3)
アルキルグリシジルエーテルがBGE26.0gである以外は、実施例1と同様の装置及び操作を行い、ブチル置換度が0.30のアルキル化変性多糖類を得た。
【0021】
(比較例1)
アルキルグリシジルエーテルがドデシル/テトラデシル(70/30)グリシジルエーテル10.0gである以外は、実施例1と同様の装置及び操作を行い、アルキル置換度が0.014のアルキル化変性多糖類を得た。
【0022】
(比較例2)
一般的な変性多糖類としてヒドロキシエチルセルロース(商品名:HEC AH−15F(住友精化(株)製))を用いた。
【0023】
(比較例3)
一般的な天然系カチオン性ポリマーとして、ポリクオタニウム−10(商品名:カチナールHC−100(東邦化学工業(株)製))を用いた。
【0024】
(比較例4)
一般的な合成系カチオン性ポリマーとしてポリクオタニウム−7(商品名:MEポリマー09W(東邦化学工業(株)製))を用いた。
【0025】
各種アルキル変性多糖類及び各種成分を配合した化粧料について実使用試験を実施した。それぞれについて表1、表2に示す配合により化粧料を調整し、比較し下記基準により評価した。なお、配合する界面活性剤及びポリマーの配合量は純分換算値である。
【0026】
本発明において用いる評価基準を示す。
(1)泡質
各種アルキル変性多糖類及び各種成分を配合した毛髪洗浄料について実使用試験を実施した。それぞれについて表1に示す配合により洗浄料を調整し、イオン交換水で20倍に希釈したとき、得られた洗浄料について泡質の評価を官能的に比較し下記基準により評価した。各毛髪洗浄料の泡質について、パネラー10名により、以下の評価基準に基づいて実使用試験を実施し、平均点を算出した。
5点:クリーミィである。
4点:ややクリーミィである。
3点:普通
2点:ややクリーミィでない。
1点:クリーミィでない。
【表1】


【0027】
アルキル変性多糖類のアルキル置換度が高い値を示すほど、洗浄時の泡質が優れていることが明らかとなった。
【0028】
(2)乳化力試験
各化粧料の乳化力について表2に示す処方で以下の方法で乳化力試験を行った。実施例1〜3のアルキル化変性多糖類及び比較例1〜5のポリマーをホホバ油に加え加温溶解又は分散し、70℃にてホモミキサーで3,000rpmで攪拌しながら70℃の精製水を徐々に加え乳化を行い、5分間攪拌を保持した。次にパドル攪拌にし、水冷しながら攪拌を行い25℃まで冷却した。得られた乳化物を目盛り付きシリンダーに移し、室温にて一定時間ごとに分離した水の容量を測定し、次式により6時間後の水の分離率を算出し、乳化力を評価した。この時、分離水分率の値が小さいほど乳化力が優れていることとなる。

分離水分率(%)=(分離した水の量/使用した水の量)×100

【0029】
【表2】


【0030】
比較例(2)、比較例(3)及び比較例(4)の様な一般的な天然系ポリマー及び合成系ポリマー、又は比較例(5)の様なポリマー無配合の場合は乳化力が劣る結果となった。これに対して、実験例の乳化物は分離水分率が低い値を示し、本発明のアルキル変性多糖類は乳化力に優れていることが確認された。
【0031】
上記効果は、短鎖のアルキル基を導入することにより発揮される効果であり、短鎖のアルキル化剤が欠けた場合には得られない効果である。

【出願人】 【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
【出願日】 平成18年10月31日(2006.10.31)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−111052(P2008−111052A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−295367(P2006−295367)