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【発明の名称】 アルカリ可溶性セルロースの製造方法と微結晶セルロースの製造方法
【発明者】 【氏名】川上 浩良

【氏名】ケシュク シェリフ

【氏名】鮫島 一彦

【要約】 【課題】特別に調整したセルロース原料を用いることなく、常温でもアルカリ水溶液に可溶化可能な試料を調整し、簡単な操作で微結晶セルロースを得ることを可能にする方法を提示すること。

【解決手段】ケナフ、パルプなどのセルロース原料を一段目の加水分解処理を、0.40N〜2.8Nの低濃度の塩酸を用いて70〜90℃で2〜4時間で処理し、得られた液をろ過し、残渣に新しい一段目と同じ濃度の塩酸を加えて二段目の加水分解処理を沸騰還流条件下で2〜4時間処理し、得られた液をろ過し、残渣に0.5N〜4.5Nの酸を用いて三段目の加水分解処理は常温で一昼夜(24時間程度)処理し、ろ過した残渣を室温でアルカリ水溶液に溶かしてアルカリ可溶性セルロースを得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース原料を、高温下、低濃度の酸で処理することにより一段目の加水分解を行い、ろ過後の残渣に一段目と同じ濃度の酸を加えて沸騰還流下で二段目の加水分解を行い、得られた加水分解物をろ過水洗した後、常温にて高濃度の酸で三段目の加水分解を行なうことを特徴とするアルカリ可溶性セルロースの製造方法。
【請求項2】
一段目の加水分解を0.40N〜2.8Nの低濃度の酸を加えて70〜90℃で2〜4時間行い、二段目の加水分解を一段目と同じ濃度の酸を加えて沸騰還流下で行い、三段目の加水分解を常温にて0.5N〜4.5Nの酸を加えて行なうことを特徴とする請求項1記載のアルカリ可溶性セルロースの製造方法。
【請求項3】
前記セルロース原料は、ケナフ、木材パルプ又は微生物セルロースであることを特徴とする請求項1又は2記載のアルカリ可溶性セルロースの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法により製造されたアルカリ可溶性セルロースに有機溶媒を添加することにより微結晶セルロースを得ることを特徴とする微結晶セルロースの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース原料を穏和な条件で加水分解するアルカリ可溶性セルロースの製造方法と得られたアルカリ可溶性セルロースから微結晶セルロースを得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロース原料の加水分解法の従来技術は大略2つに分類できる。1つは、セルロース原料を完全に加水分解して単糖類を得る目的で行われるものであり、2つ目は、セルロース原料から微結晶セルロースを製造するために行われる部分加水分解法である。
【0003】
前者は、工業的に実用化されたものは無いが、分析法としては古典的なKlasonリグニン定量法として確立している。Klason法ではセルロース原料を、まず常温(20−25℃)で72%の濃硫酸を用いて前加水分解を行い、次いで3%の希硫酸濃度に希釈して沸騰させ、単糖にまで完全に加水分解を完成させる方法である。
【0004】
後者は、天然セルロースが非結晶領域と結晶領域から構成され、両者の加水分解速度が異なることを利用して微結晶セルロースを製造するための加水分解法である。しかし、実際には一段の加水分解ではアルカリ可溶なセルロースは得られず、補助的に物理的な手段(湿式粉砕、高速撹拌など)で微細化して微結晶セルロースを製造しているのが実情である。
【0005】
また、後者の範疇に入るが再生セルロースの工業的製造方法として、現在使用されている方法は二硫化炭素を用いるビスコース法と銅アンモニア溶液を用いる銅アンモニア法である。しかし、これらの方法では製造過程でそれぞれ毒性気体と重金属の排出が避けられない問題点がある。それを改良する方法としてセルロースの粘度平均重合度など、予めセルロースの物性を整えた後にアルカリ水溶液に、これを溶解させる方法などが提案されている(特許文献1)。
【0006】
さらにセルロース系材料の粉末をアスペクト比が2以下の粒子が80%以上となるようにした後で水性スラリーとして、これを加圧下で160℃以上に急速加熱して水可溶化物を得る方法が開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−316101号公報
【特許文献2】特開2006−28357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の微結晶セルロースを得る技術は、加水分解条件の検討が不十分で、補助的な物理的な後処理法を用いて微細化しているのが実情である。また、特許文献1記載の方法などはセルロース原料が高純度でないと再生セルロースが得られないことも問題とされる場合が多い。
【0008】
さらに特許文献2記載の方法では、セルロース原料を粉砕する必要があり、また得られたアスペクト比が2以下の粒子を含む水性スラリーを加圧下で160℃以上の高温に急速加熱することが必要である。
【0009】
そこで、本発明の課題は、特別に調整したセルロース原料を用いることなく、常温でもアルカリ水溶液に溶解可能な試料を調整してアルカリ可溶性セルロースを製造する方法と得られたアルカリ可溶性セルロースから簡単な操作で微結晶セルロースを得る方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記本発明の課題は、次の解決手段によって解決される。
請求項1記載の発明は、セルロース原料を高温下、低濃度の酸で処理することにより一段目の加水分解を行い、ろ過後の残渣に一段目と同じ濃度の酸を加えて沸騰還流下で二段目の加水分解を行い、得られた加水分解物をろ過水洗した後、常温にて高濃度の酸で三段目の加水分解を行なうアルカリ可溶性セルロースの製造方法である。
【0011】
請求項1記載の発明は、セルロース原料を多段階的な加水分解反応を利用して、得られるセルロースの極端な重合度の低下を抑えながらセルロース原料の内部まで加水分解することを特徴とするアルカリ可溶性セルロースの製造方法である。
【0012】
請求項2記載の発明は、一段目の加水分解を0.40N〜2.8Nの低濃度の酸を加えて70〜90℃で2〜4時間で行い、二段目の加水分解を一段目と同じ濃度の酸を加えて沸騰還流下で行い、三段目の加水分解を常温にて0.5N〜4.5Nの酸を加えて行なう請求項1記載のアルカリ可溶性セルロースの製造方法の好ましいケースである。
【0013】
従来のセルロース原料処理法では、HClを用いる一段の煮沸下での加水分解法が提案されているが、アルカリ水溶液への可溶化には成功していない。そこで、本発明では、固体であるセルロース原料を、液体である酸溶液と反応させる方法が2相系の界面反応であることを考慮し、三段の段階的加水分解を行う逐次反応、いわゆるトポケミカル反応を利用して、極端な重合度の低下を抑えながらセルロース原料の内部まで加水分解を行うことができるようにしたものである。
【0014】
本発明では、いわゆるトポケミカル反応を利用するものであり、該トポケミカル反応によりセルロース原料はアルカリ水溶液に易溶性となり、その後の利用が可能になる。例えば、アルカリ可溶性セルロースに溶媒を添加して微結晶セルロースを調製することができる。
【0015】
上記一段目の加水分解処理において、まず使用する酸の濃度が0.40N未満では最終的にセルロースの沈殿物が得られず、また2.8Nを超えても最終的にセルロースの沈殿物が得られないという不具合がある。また、加熱温度が70℃未満又は90℃を超え、加熱時間が2時間未満又は4時間を超えると、セルロースの収率が低下するという不具合がある。
【0016】
次に二段目の加水分解処理において、まず使用する酸の濃度が0.40N未満では最終的にセルロースの沈殿物が得られず、また2.8Nを超えても最終的にセルロースの沈殿物が得られないという不具合がある。また、酸の水溶液の沸騰温度で加熱処理を行うが、加熱時間が2時間未満では、最終的にセルロースの沈殿物が得られず、また、4時間を超えるとセルロースの収率が極端に悪くなる。前記酸の水溶液の沸騰温度で加熱処理を行う代わりにオートクレーブで処理する方法を用いても良いが、短時間で行うのが好ましい。
【0017】
さらに三段目の加水分解処理において、まず使用する酸の濃度が0.5N未満では最終的にセルロースの沈殿物が得られず、また4.5Nを超えても最終的にセルロースの沈殿物が得られないという不具合が生じるが、最終的に得られるセルロースの収率から判断すると、最適の酸の濃度は、3.0〜4.0Nのようである。また、酸の水溶液の沸騰温度で加熱処理を行うが、加熱時間は一昼夜程度でよい。
前記三段目の加水分解処理で得られた試料は、室温でアルカリ水溶液あるいは有機溶媒(たとえば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等)に易溶性となる。
【0018】
請求項3記載の発明は、前記セルロース原料が、ケナフ、木材パルプまたは微生物セルロースである請求項1又は2記載のアルカリ可溶性セルロースの製造方法である。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法により製造されたアルカリ可溶性セルロースに有機溶媒を添加することにより微結晶セルロースを製造する方法である。前記アルカリ水溶液あるいは有機溶媒からのセルロースの回収法には様々な方法があるが、例えば、特定の有機溶媒(エタノール、アセトンなど)を添加することによってセルロース水溶液あるいは有機溶媒から微結晶セルロースの沈殿を容易に分離、回収することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、三段階の加水分解処理による比較的緩和した加水分解条件下でセルロース原料から容易にアルカリ可溶性セルロースが得られる。また原料であるケナフなどの繊維作物のセルロース原料の純度を問わなく、いかなるセルロースでもマイルドな条件でアルカリ可溶性セルロースを得ることができる。また、セルロース原料からアルカリ可溶性セルロースを得るに当たって物理的処理を必要としないので、設備費用がかさむことがない。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の前記三段階の加水分解処理の最適条件下でアルカリ可溶性セルロースを得ることができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、セルロース原料として、ケナフ、木材パルプまたは微生物セルロースなどを用いることができので、広範囲のセルロース原料からアルカリ可溶性セルロースを得ることができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3記載の発明により得られたアルカリ可溶性セルロースから容易に微結晶セルロースを得ることができる。
【0024】
本発明で得られた微結晶セルロースは、現在市販されている市販品(たとえば旭化成(株)製)の純度より高いので、透析分離膜、紡糸原料、錠剤、食品添加物などに用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0026】
セルロース原料としてケナフを用いる場合の加水分解処理法について説明する。
一段目の加水分解は、ケナフを70〜75℃の1.13N塩酸で約3時間程度処理し、ろ過を行い、さらにろ過工程から回収した残渣に一段目と同じ濃度の酸を加えて二段目の処理を沸騰還流条件下で3時間行った。
【0027】
その後、処理物をろ過、水洗を行って加水分解された残渣を回収し、最後に三段目の処理として3.45N塩酸を用いて常温で24時間加水分解処理を施し、その後、得られた加水分解試料は室温で24〜28時間、10%NaOHに浸漬して1日又は2日間経過した後の溶解度を測定した。得られたアルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は66重量%であった。
【0028】
得られたセルロースの粘度平均重合度は次のようにして測定した。
まず、試薬特級のエチレンジアミン900gを0℃で蒸留水2414gに徐々に加え、さらにこれに試薬特級の酸化カドミニウム318gを0℃で攪拌しながら加え、−15℃で24時間静置する。その後前記混合物の上澄み液950mlにエチレンジアミン60ml、蒸留水155mlおよびカセイソーダ14gを加え、カドキセン原液とする。
【0029】
所定量のセルロースを6℃以下に保ちながら、前記カドキセン原液に溶解させ、カドキセン原液と同体積の蒸留水で希釈して、その濃度(c)を測定する。次に、このセルロース液の次式で定義される固有粘度[η]をブラウン、ウイクストリームの粘度式[η]=3.85×102・Mv0.76に代入して得た粘度平均分子量Mvを162で割って粘度平均重合度とする。
η=lim{(t/t0−1)/c}
ここで、tは20℃で水の落下秒数約80〜120秒のウベローデ型粘度計で測定した25℃におけるセルロース/カドキセン溶液の落下秒数、t0は2倍希釈したカドキセン溶液の落下秒数である。
【0030】
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度425であった。なお、セルロース原料としてパルプを用いて上述の手順で処理をした場合の粘度平均重合度は430であった。
【0031】
以下の実施例と比較例において、粘度平均重合度は左側の数値がケネフ、右側の数値がパルプの場合を表している。
【実施例2】
【0032】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を共に1.50N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は65重量%であった。
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度420、433であった。
【実施例3】
【0033】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を2.0N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は59重量%であった。
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度390、410であった。
【実施例4】
【0034】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を2.5N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は56重量%であった。
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度353、370であった。
【比較例1】
【0035】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を3.0N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。しかし、三段目の加水分解処理で得られた処理物は10%NaOHには溶解しなかったため、微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は0重量%であった。
【実施例5】
【0036】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を1.04N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は62重量%であった。
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度446、460であった。
【実施例6】
【0037】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を1.00N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は50重量%であった。
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度442、458であった。
【実施例7】
【0038】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を0.79N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は37重量%であった。
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度450、470であった。
【実施例8】
【0039】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を0.58N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は30重量%であった。
本実施例の微結晶セルロースの粘度平均重合度452、463であった。
【比較例2】
【0040】
セルロース原料としてケナフを用いて一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を0.38N塩酸とした他は、実施例1と全て同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。しかし、三段目の加水分解処理で得られた処理物は10%NaOHには溶解しなかったため、微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は0重量%であった。
【0041】
実施例1〜比較例2における結果を表1に示すが、三段目の加水分解処理を3.45N塩酸で行う場合には一段目と二段目の加水分解処理は3.0N未満で0.38Nを越える塩酸濃度で行うことが良いことが分かる。
【表1】


【0042】
次に、上記実施例1〜8と比較例1、2の結果からセルロース原料としてケナフを用いた場合の一段目の70〜75℃での加水分解処理時の塩酸濃度と二段目の沸騰還流条件下での加水分解処理の塩酸濃度を収率の一番良かった1.13N塩酸に固定し、三段目の常温で24時間加水分解処理を行う適切な塩酸濃度を決めるために、0.5N〜5.0Nの塩酸を用いて常温で24時間加水分解処理を施し、その後、得られた加水分解試料は室温で10%NaOHに溶かすことを以下の実施例で試みた。
【実施例9】
【0043】
本実施例ではケナフの三段目の加水分解処理を行う塩酸濃度は0.5Nであったが、10%NaOHに溶けないものがあった。三段目の加水分解処理後の不溶解分をろ過した後のアルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率はそれぞれ10重量%であった。
【実施例10】
【0044】
三段目の常温で24時間加水分解処理を1.0N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合も10%NaOHに溶けないものがあった。該不溶解分をろ過した後のアルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は13重量%であった。
【実施例11】
【0045】
三段目の常温で24時間加水分解処理を1.5N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合も10%NaOHに溶けないものがあった。該不溶解分をろ過した後のアルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は20重量%であった。
【実施例12】
【0046】
三段目の常温で24時間加水分解処理を2.0N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合も10%NaOHに溶けないものがあった。該不溶解分をろ過した後のアルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は25重量%であった。
【実施例13】
【0047】
三段目の常温で24時間加水分解処理を2.5N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合も10%NaOHに溶けないものがあった。該不溶解分をろ過した後のアルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は37重量%であった。
【実施例14】
【0048】
三段目の常温で24時間加水分解処理を3.0N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合は10%NaOHにほとんど溶けたので、該アルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は50重量%であった。
【実施例15】
【0049】
三段目の常温で24時間加水分解処理を3.5N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合も10%NaOHにほとんど溶けたので、該アルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は66重量%であった。
【実施例16】
【0050】
三段目の常温で24時間加水分解処理を4.0N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合も10%NaOHにほとんど溶けたので、該アルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加することによってセルロース水溶液から微結晶セルロースの沈殿を分離、回収した。得られた微結晶セルロースのセルロース原料に対する収率は61重量%であった。
【比較例3】
【0051】
三段目の常温で24時間加水分解処理を5.0N塩酸を用いて行ったこと以外は実施例9と同一条件でケナフの加水分解処理と微結晶セルロースの回収を行った。この場合も10%NaOHに溶けないものがあった。該不溶解分をろ過した後のアルカリ溶液に有機溶媒(エタノールなど)を添加しても微結晶セルロースの沈殿を分離、回収出来なかった。
【0052】
上記実施例9〜16と比較例3の一連の実験から三段目の常温で24時間加水分解処理を行う適切な塩酸濃度は3.0N〜4.0Nであることが分かった。
【0053】
実施例9〜16と比較例3の結果を表2に示す。
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、ケナフ、木材パルプ、微生物セルロース等の様々な資材からセルロースの可溶化が可能であり、例えば、ケナフの利用に繋がれば森林破壊を抑えることができ、地球環境問題に多大な貢献する可能性が高く、また、ケナフなどの栽培条件などを規定することで、微量成分の少ない高純度のセルロースを容易に得ることができるので、医療分野や食品など微量の金属が問題になる分野にも用いることができる可能性があり、将来の産業上の利用可能性が高い。
【出願人】 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
【出願日】 平成18年10月30日(2006.10.30)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義

【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子


【公開番号】 特開2008−111007(P2008−111007A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−293601(P2006−293601)