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【発明の名称】 セルロースカーバメート誘導体並びにその合成方法
【発明者】 【氏名】塚本 美智徳

【氏名】日色 知樹

【氏名】藤井 貞男

【要約】 【課題】副生成物の発生を抑制したセルロースカーバメート誘導体の合成方法を提供するとともに、その合成方法によるセルロースカーバメート誘導体を提供することである。さらに、セルロースカーバメート誘導体の精製方法を提供し、その精製方法によるセルロースカーバメート誘導体を提供することである。

【解決手段】塩基触媒の存在下、セルロースとイソシアネート系化合物を反応させてセルロースカーバメート誘導体とする際、含水率が7重量%以下のセルロースを用いることを特徴とするセルロースカーバメート誘導体の合成方法とすること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基触媒の存在下、セルロースとイソシアネート系化合物を反応させてセルロースカーバメート誘導体とする際、含水率が7重量%以下のセルロースを用いることを特徴とするセルロースカーバメート誘導体の合成方法。
【請求項2】
塩基触媒がピリジンであることを特徴とする請求項1記載のセルロースカーバメート誘導体の合成方法。
【請求項3】
ピリジンの含水率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項2記載のセルロースカーバメート誘導体の合成方法。
【請求項4】
イソシアネート系化合物が下記一般式(1)〜(3)で表わされる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のセルロースカーバメート誘導体の合成方法。
【化1】


(式中R、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【化2】


(式中R、R、R、R、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【化3】


(式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【請求項5】
請求項1乃至請求項4記載の合成方法により得られるセルロースカーバメート誘導体をメタノール中で洗浄し、不純物を除去するセルロースカーバメート誘導体の精製方法。
【請求項6】
請求項5記載の精製方法により不純物含有量を10重量%以下としたことを特徴とする、セルロースカーバメート誘導体。
【請求項7】
請求項6記載のセルロースカーバメート誘導体をアルカリにより部分加水分解したことを特徴とする、セルロースカーバメート誘導体。
【請求項8】
請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載のセルロースカーバメート誘導体を含有してなることを特徴とする光学材料。
【請求項9】
請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載のセルロースカーバメート誘導体を含有してなることを特徴とする液晶表示装置用光学補償材料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースカーバメート誘導体並びにその合成方法に関するものである。また、セルロースカーバメート誘導体を含有してなる光学材料、液晶表示装置用光学補償材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の各種光学装置には、液晶セル、偏光子等と共に、各種膜が用いられている(本願において膜とは、他の基材上に直接形成した層、これを基材から剥離して取り出したフィルム、更には直接溶液キャスティング、溶融キャスティング等により単独で形成したフィルム等が含まれるものとする)。特に、装置中の他の構成により生じる複屈折を補償する為の光学補償用の膜が一般的に用いられている(例えば、視野角の拡大等の用途に用いられている)。このような光学補償用の膜を形成する為の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン等のポリマーが用いられ、一般的には、製膜工程(フィルム化)、延伸工程(位相差付与)、貼り合わせ工程を経て各種装置に組み込まれている。しかし、これらの方法では、フィルム化が必要なだけでなく、このフィルムを貼り合わせる手間も必要となり、更に簡便な方法が求められていた。
【0003】
これらの問題を解消するために、ポリイミドのペーストを塗布する薄膜形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法は、n<n=nの光学特性を有する系を形成することは可能であるが、n>n≧nの光学特性をもつもの、換言すれば、〔(n+n)/2−n〕×dとして表される厚み位相差の値が負になるものを形成することはできなかった。
【0004】
これに対して、光異性化しうる官能基を有する高分子化合物の溶液を塗布、乾燥後、光を照射して高分子の配向を制御するもの、又は、液晶ポリマーの溶液あるいは液晶ポリマーの溶融物を塗布、乾燥後、ポリマーのガラス転移温度で熱処理して液晶を配向させ、冷却することにより配向を固定化することで、n>n≧nの光学特性を有する膜を形成することが検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの方法ではポリイミドのペースト塗布による位相差層形成に比べ、光異性化しうる官能基を有する高分子化合物を用いる場合は光照射をしなければならないという煩雑さがあり、液晶ポリマーを用いる場合は一般に液晶が高価であり、コスト高になるという欠点がある。
【特許文献1】特開2001−290023号公報
【特許文献2】特開平7−13022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、上記課題を解決するためにはセルロースカーバメート誘導体を用いることが有効であることが判明した。しかし、セルロースカーバメート誘導体を合成する際に、副生成物が同時に形成され、このままでは上記用途に用いるには問題があることが判明した。
【0007】
そこで本発明の目的は、副生成物の発生を抑制したセルロースカーバメート誘導体の合成方法を提供するとともに、その合成方法によるセルロースカーバメート誘導体を提供することである。
【0008】
さらに、セルロースカーバメート誘導体の精製方法を提供し、不純物含有量の低減されたセルロースカーバメート誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、塩基触媒の存在下、セルロースとイソシアネート系化合物を反応させてセルロースカーバメート誘導体とする際、含水率が7重量%以下のセルロースを用いることを特徴とするセルロースカーバメート誘導体の合成方法とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、
塩基触媒の存在下、セルロースとイソシアネート系化合物を反応させてセルロースカーバメート誘導体とする際、含水率が7重量%以下のセルロースを用いることを特徴とするセルロースカーバメート誘導体の合成方法(請求項1)であり、
塩基触媒がピリジンであることを特徴とする請求項1記載のセルロースカーバメート誘導体の合成方法(請求項2)であり、
ピリジンの含水率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項2記載のセルロースカーバメート誘導体の合成方法(請求項3)であり、
イソシアネート系化合物が下記一般式(1)〜(3)で表わされる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のセルロースカーバメート誘導体の合成方法(請求項4)であり、
【0011】
【化1】


(式中R、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0012】
【化2】


(式中R、R、R、R、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0013】
【化3】


(式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
請求項1乃至請求項4記載の合成方法により得られるセルロースカーバメート誘導体をメタノール中で洗浄し、不純物を除去するセルロースカーバメート誘導体の精製方法(請求項5)であり、
請求項5記載の精製方法により不純物含有量を10重量%以下としたことを特徴とする、セルロースカーバメート誘導体(請求項6)であり、
請求項6記載のセルロースカーバメート誘導体をアルカリにより部分加水分解したことを特徴とする、セルロースカーバメート誘導体(請求項7)であり、
請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載のセルロースカーバメート誘導体を含有してなることを特徴とする光学材料(請求項8)であり、
請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載のセルロースカーバメート誘導体を含有してなることを特徴とする液晶表示装置用光学補償材料(請求項9)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセルロースカーバメート誘導体の合成方法を用いると、副生成物の発生が抑制でき、精製が簡便になる。さらに、本発明のセルロースカーバメート誘導体の精製方法を使用すると、該誘導体を光学補償用塗工膜、光学素子等に用いた際、透明性等の光学特性が優れた液晶表示装置用光学補償材料が得られることから、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のセルロースカーバメート誘導体(以下(A)成分と言うことがある)の合成方法は、原料として、例えば各種木材パルプ、綿リンター、綿リント等から得られるセルロースを用い、塩基触媒存在下でイソシアネート系化合物を反応させるものである。イソシアネート系化合物の添加方法は、セルロース、塩基触媒が存在する系へ、一括投入しても連続滴下又は間欠滴下してもよい。反応温度は、15℃から反応溶媒の沸点(℃)の範囲で好適に行うことができる。
【0017】
尚、原料となるセルロースは、含水率が下限0重量%、上限7重量%であることが好ましく、下限0重量%、上限6重量%であることがより好ましく、下限0重量%、上限5重量%であることがさらに好ましい。含水率が7重量%より大きいとセルロースカーバメート誘導体合成時にイソシアネート系化合物と水が反応して多量の副生成物を生じる傾向にある。セルロースの含水率を調整するための方法としては、空気又は窒素等の不活性ガス雰囲気の熱風オーブン、赤外線加熱炉等で加熱乾燥する方法、真空乾燥機等で減圧乾燥する方法等により、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
【0018】
また、塩基触媒としては、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピロール等が挙げられるが、溶媒としても用いることができ、簡便であることから、ピリジンが好適に用いられる。ピリジンの含水率は、下限0重量%、上限0.1重量%であることが好ましく、下限0重量%、上限0.08重量%であることがより好ましく、下限0重量%、上限0.06重量%であることがさらに好ましい。含水率が0.1重量%より大きいとセルロースカーバメート誘導体合成時にイソシアネート系化合物と水が反応して多量の副生成物を生じる傾向にある。ピリジンの含水率を調整するための方法としては、モレキュラーシーブス、カルシウムヒドリド等の脱水剤による乾燥、単蒸留、多段蒸留、減圧蒸留等による水分除去、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
【0019】
塩基触媒の使用量の下限は、原料となるセルロースの水酸基の等量数と同モル量、上限は、原料となるセルロースの水酸基の等量数の100倍モル量が好ましく、更に好ましくは、下限が原料となるセルロースの水酸基の等量数と同モル量、上限が原料となるセルロースの水酸基の等量数の80倍モル量、より好ましく、下限が原料となるセルロースの水酸基の等量数と同モル量、上限が原料となるセルロースの水酸基の等量数の60倍モル量である。塩基触媒の使用量が原料となるセルロースの水酸基の等量数と同モル量より少ないとセルロースのカーバメート誘導体化が不十分になる傾向があり、原料となるセルロースの水酸基の等量数の100倍モル量より多いと経済的に不利になる傾向がある。
【0020】
尚、ピリジン以外の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒を前記塩基触媒の使用量と同じ範囲内で好適に用いることができる。
【0021】
更に、原料セルロースの溶媒に対する溶解性を向上させ、均一系で反応を行うために塩化リチウム等の無機塩を添加することもできる。添加量としては、下限0.1重量%、上限20重量%が好ましく、下限0.2重量%、上限15重量%がより好ましく、下限0.3重量%、上限10重量%がさらに好ましい。添加量が0.1重量%より少ないとセルロースの溶解性向上効果が不十分になる傾向があり、添加量が20重量%より多いと精製時の除去操作が煩雑になる傾向がある。
【0022】
また、前記イソシアネート系化合物の例としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化4】


(式中R、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0024】
【化5】


(式中R、R、R、R、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0025】
【化6】


(式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
これらのイソシアネート系化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明では、上記イソシアネート系化合物の入手性の観点から、R、R、R、R、Rが、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のアリールオキシ基、炭素数7〜16のアラルキル基、炭素数7〜16のアラルキルオキシ基、炭素数1〜17のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(1)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロースカーバメート誘導体とすることが好ましい。又はR、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜17のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(2)、(3)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロースカーバメート誘導体とすることが好ましい。R、R、R、R、Rが、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、炭素数1〜13のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(1)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロースカーバメート誘導体とすることがより好ましい。又はR、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜13のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(2)、(3)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロースカーバメート誘導体とすることがより好ましい。
【0027】
一般式(1)〜(3)で表されるイソシアネート系化合物を具体的に例示すると、フェニルイソシアネート、o−トリルイソシアネート、m−トリルイソシアネート、p−トリルイソシアネート、2−エチルフェニルイソシアネート、3−エチルフェニルイソシアネート、4−エチルフェニルイソシアネート、2−プロピルフェニルイソシアネート、3−プロピルフェニルイソシアネート、4−プロピルフェニルイソシアネート、2−ブチルフェニルイソシアネート、3−ブチルフェニルイソシアネート、4−ブチルフェニルイソシアネート、2,3−ジメチルフェニルイソシアネート、2,4−ジメチルフェニルイソシアネート、2,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、3,4−ジメチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,3−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4−ジエチルフェニルイソシアネート、2,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニルイソシアネート、3,4−ジエチルフェニルイソシアネート、3,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4,6−トリメチルフェニルイソシアネート、2−メトキシフェニルイソシアネート、3−メトキシフェニルイソシアネート、4−メトキシフェニルイソシアネート、2−エトキシフェニルイソシアネート、3−エトキシフェニルイソシアネート、4−エトキシフェニルイソシアネート、2−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−ビフェニリルイソシアネート、3−ビフェニリルイソシアネート、4−ビフェニリルイソシアネート、2−フェノキシフェニルイソシアネート、3−フェノキシフェニルイソシアネート、4−フェノキシフェニルイソシアネート、2’−ベンジルフェニルイソシアネート、3’−ベンジルフェニルイソシアネート、4’−ベンジルフェニルイソシアネート、2−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、3−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、4−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、2−アセトキシフェニルイソシアネート、3−アセトキシフェニルイソシアネート、4−アセトキシフェニルイソシアネート、2−フルオロフェニルイソシアネート、3−フルオロフェニルイソシアネート、4−フルオロフェニルイソシアネート、2−クロロフェニルイソシアネート、3−クロロフェニルイソシアネート、4−クロロフェニルイソシアネート、2−ブロモフェニルイソシアネート、3−ブロモフェニルイソシアネート、4−ブロモフェニルイソシアネート、2−ヨードフェニルイソシアネート、3−ヨードフェニルイソシアネート、4−ヨードフェニルイソシアネート、2,4−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,6−ジフルオロフェニルイソシアネート、3,4−ジフルオロフェニルイソシアネート、3,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,4−ジクロロフェニルイソシアネート、2,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,6−ジクロロフェニルイソシアネート、3,4−ジクロロフェニルイソシアネート、3,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,4−ジブロモフェニルイソシアネート、2,5−ジブロモフェニルイソシアネート、2,6−ジブロモフェニルイソシアネート、3,4−ジブロモフェニルイソシアネート、3,5−ジブロモフェニルイソシアネート、2,4−ジヨードフェニルイソシアネート、2,5−ジヨードフェニルイソシアネート、2,6−ジヨードフェニルイソシアネート、3,4−ジヨードフェニルイソシアネート、3,5−ジヨードフェニルイソシアネート、2,3,4−トリフルオロフェニルイソシアネート、2,3,4−トリクロロフェニルイソシアネート、2,3,4−トリブロモフェニルイソシアネート、2,3,4−トリヨードフェニルイソシアネート、2−フルオロ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−フルオロ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−フルオロ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−フルオロ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−クロロ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−クロロ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−クロロ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−クロロ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ブロモ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−ブロモ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−ブロモ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−ブロモ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ヨード−5−メチルフェニルイソシアネート、2−ヨード−6−メチルフェニルイソシアネート、3−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、3−ヨード−4−メチルフェニルイソシアネート、4−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、4−ヨード−3−メチルフェニルイソシアネート、5−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ニトロフェニルイソシアネート、3−ニトロフェニルイソシアネート、4−ニトロフェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、2−ナフチルイソシアネート、1−メチル−2−ナフチルイソシアネート、2−メチル−1−ナフチルイソシアネート、1−メトキシ−2−ナフチルイソシアネート、2−メトキシ−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリフルオロメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリフルオロメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリクロロメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリクロロメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリブロモメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリブロモメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリヨードメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリヨードメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−アセトキシ−2−ナフチルイソシアネート、2−アセトキシ−1−ナフチルイソシアネート、1−フルオロ−2−ナフチルイソシアネート、2−フルオロ−1−ナフチルイソシアネート、1−クロロ−2−ナフチルイソシアネート、2−クロロ−1−ナフチルイソシアネート、1−ブロモ−2−ナフチルイソシアネート、2−ブロモ−1−ナフチルイソシアネート、1−ヨード−2−ナフチルイソシアネート、2−ヨード−1−ナフチルイソシアネート、1−ニトロ−2−ナフチルイソシアネート、2−ニトロ−1−ナフチルイソシアネート等が挙げられる。これら及び前記イソシアネート系化合物を反応して得られるセルロースカーバメート誘導体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
【0028】
また、上記にて得られるセルロースカーバメート誘導体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリにより部分加水分解することによって、N−置換カーバメート化率の制御されたものとすることもできる。アルカリの量としては、部分加水分解する等量と同量を用いることがN−置換カーバメート化率を制御する上で特に好ましい。また、加水分解時の溶媒としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等セルロースカーバメート誘導体を溶解し、かつ、溶媒自体が加水分解されないものが特に好ましい。加水分解温度としては、下限−5℃、上限〔該溶媒の沸点(℃)〕が好ましく、下限0℃、上限〔該溶媒の沸点(℃)−5℃〕がより好ましく、下限5℃、上限〔該溶媒の沸点(℃)−10℃〕がさらに好ましい。加水分解温度が−5℃より低いと加水分解反応に長時間を有する傾向にあり、〔該溶媒の沸点(℃)〕より高いと密閉系を必要とし、操作が煩雑になる傾向がある。
【0029】
部分加水分解されたセルロースカーバメート誘導体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。さらに、部分加水分解する前のセルロースカーバメート誘導体の1種以上を併用することもできる。
【0030】
また、セルロースはその構成単位であるグルコース残基当たり3個の水酸基を有している。従って、これらの水酸基を置換する場合に、グルコース残基当たりの置換度(以下、DSと称する)は最大3になる。本発明においては、DSの下限は好ましくは0.05、より好ましくは0.1、さらに好ましくは0.2であり、上限は好ましくは3、より好ましくは2.95、さらに好ましくは2.9である。DSが0.05より低いと溶媒に溶け難くなる傾向がある。本発明では、DSが異なるセルロースカーバメート誘導体の2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0031】
さらに、(A)成分の数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは500000、より好ましくは300000、さらに好ましくは200000である。数平均分子量が5000より小さいと光学補償用塗工膜に用いた際、塗工膜強度が低下する傾向があり、数平均分子量が500000より大きいと溶媒(以下(B)成分と言うことがある)に溶け難くなる傾向がある。なお、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なるセルロースカーバメート誘導体の2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0032】
次に、本発明のセルロースカーバメート誘導体の精製方法について説明する。
【0033】
セルロースカーバメート誘導体が溶解し難く、不純物が溶解し易い溶媒に、合成したセルロースカーバメート誘導体を入れて洗浄することにより、好適に精製することができる。溶媒としては上記観点から、特にメタノールが好ましい。精製方法としては、メタノール中に合成したセルロースカーバメート誘導体を入れて攪拌洗浄する方法、ソックスレー抽出器に入れて抽出洗浄する方法、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。洗浄温度は、下限15℃、上限はメタノールの沸点(℃)が好ましく、下限25℃、上限メタノールの沸点(℃)がより好ましく、下限35℃、上限メタノールの沸点(℃)がさらに好ましい。洗浄温度が15℃より低いと洗浄に長時間を有する傾向にあり、メタノールの沸点(℃)より高いと密閉系を必要とし、操作が煩雑になる傾向がある。
【0034】
また、精製後のセルロースカーバメート誘導体中の不純物含有量は、下限0重量%、上限10重量%が好ましく、下限0重量%、上限8重量%がより好ましく、下限0重量%、上限6重量%がさらに好ましい。不純物含有量が10重量%より多いと、該セルロースカーバメート誘導体を光学補償用塗工膜、光学素子等に用いた際、透明性等の光学特性が劣る傾向にある。
【0035】
次に、光学補償用塗工膜形成用塗工液(以下、単に塗工液と言うことがある)について説明する。塗工液は、(A)前記セルロースカーバメート誘導体、(B)(A)成分が溶解可能な溶媒、を含有してなる。
【0036】
(B)成分の溶媒としては、(A)成分が可溶であれば特に限定されるものではないが、具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼンの異性体混合物等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1,1−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン等のアミド系溶媒;ピロリジン、ピペリジン、ピロール等のアミン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特にエーテル系の溶媒が、形成される膜、フィルム等の複屈折を大きくしやすく、光学補償用途に用いる際には好ましい。
【0037】
溶媒量は、(A)成分と(B)成分の総重量に対する(A)成分の割合が下限1重量%、上限70重量%の範囲で用いるのが好ましく、下限2重量%、上限60重量%の範囲で用いるのがより好ましく、下限3重量%、上限50重量%の範囲で用いるのがさらに好ましい。(A)成分の割合が1重量%より小さい場合は塗工膜厚が薄くなり、必要な膜厚が得られ難くなる傾向があり、70重量%より大きい場合は塗工液の粘度が高くなり、作業性が劣る傾向がある。
【0038】
該塗工液は、例えば上記各成分を溶媒の融点以上、沸点以下の温度で、混合後静置又は攪拌混合等することにより得られる。
【0039】
次に、上記塗工液等を塗布して光学素子等を形成する為に用いる基板について説明する。基板としては、各種のものが使用可能であるが、特に基板ごと光学素子として用いる場合には、用途から考えると透明であることが好ましい。基板に使用される具体的な化合物の例としては、ポリカーボネート系重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル;アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合又はラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系重合体;アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアリレート;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;国際公開第01/37007号パンフレットに記載される化合物等が挙げられる。
【0040】
また、これらの材料は、例えば溶液流延法、溶融流延法、押出法、カレンダー法等により製膜し、無延伸、または一軸延伸法、二軸延伸法、収縮性フィルムを用いて収縮させる方法等により延伸し、基板として用いることができる。一方、ガラス板、カラーフィルター、液晶セル等を基板として使用することも可能である。本発明で用いる基板は、塗工液を塗布(片面塗布でも両面塗布でもよい)して塗工膜を形成した後、この積層状態をそのまま各種光学装置に組み込んでも良いし(この方法によれば、より簡便に光学素子を形成することができる。例えば、基板自体を保護フィルムとして偏光子に貼り付けた、光学補償機能を併せ持つ偏光板等が挙げられる。)、または、塗工膜を基板から剥離して膜自体を各種光学装置に組み込んで使用しても良い(この方法は、製造時の簡便性において前者に劣るものの、転写法等の利用によりやはり簡便性に優れている。また、塗布時の溶媒が光学装置へダメージを与える心配がない為、塗工液の選択範囲を広げることができる。)。
【0041】
次に、光学補償用塗工膜の形成方法について説明する。光学補償用塗工膜は、前記基板の片面又は両面に前記塗工液を塗工して塗工基板とした後、この塗工基板を乾燥することにより基板上に好適に作製できる。塗工方法としては、グラビヤロールコート法、マイヤーバーコート法、ドクターブレードコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カレンダーコート法、スキーズコート法、キスコート法、バーコート法、スロットダイコート法、スピンコート法等が挙げられる。
【0042】
乾燥方法としては、前記塗工基板を、例えば空気中又は窒素等の不活性ガス中に放置(風乾)する方法、熱風オーブン、赤外線加熱炉等で加熱乾燥する方法、真空乾燥機等で減圧乾燥する方法等により、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
【0043】
乾燥温度条件としては、定温、多段階昇温のいずれも用いることができる。定温の場合、下限−30℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限0℃、上限280℃がより好ましく、下限10℃、上限260℃がさらに好ましい。乾燥温度が−30℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、300℃より高いと塗工膜や基板の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。このような定温乾燥を用いることができるが、効果的に乾燥させるためには多段階に温度を上げることが好ましく、経済的観点から1次乾燥、2次乾燥の2段乾燥が特に好ましい。
【0044】
次に、光学素子の製造方法について説明する。ここでいう光学素子は、基板と該基板上に塗工された光学補償用塗工膜から形成される場合であっても、また該光学補償用塗工膜を該基板から一旦引き剥がした後、膜単体で光学用に使用する素子も含む。
【0045】
光学素子は、前記基板の片面又は両面に前記塗工液を前記光学補償用塗工膜の形成方法で説明した塗工方法を用いて塗工後、乾燥することにより好適に製造できる。
【0046】
乾燥は、同光学補償用塗工膜の形成方法で説明した乾燥方法、乾燥温度を用いることにより好適に行うことができる。
【0047】
光学補償用塗工膜は、面内の屈折率のうち最大のものをn、最小のものをnとし、厚み方向の屈折率をn、膜厚をdとした時に、〔(n+n)/2−n〕×d<0の特性をもつことが好ましい。特に、前記セルロースカーバメート誘導体を(B)成分として例示した溶媒等に溶解した溶液を用い、溶液キャスト法で製膜した未延伸膜において〔(n+n)/2−n〕×d<0の関係を満たすセルロースカーバメート誘導体を含有して形成した光学補償用塗工膜により前記特性が得られることが好ましい。光学補償用塗工膜の厚みをd(nm)とすると、面内位相差は、(n−n)×dで表され、厚み位相差は、〔(n+n)/2−n〕×dで表されるが、面内位相差は590nm光による測定において、下限0nm、上限300nmが好ましく、下限0nm、上限200nmがより好ましく、下限0nm、上限100nmがさらに好ましい。面内位相差が300nmより大きいと液晶セル等の複屈折による位相差の補償が困難になる傾向がある。また、厚み位相差は590nm光による測定において、下限−1000nm、上限−1nmが好ましく、下限−800nm、上限−10nmがより好ましく、下限−600nm、上限−20nmがさらに好ましい。厚み位相差が−1000nmより小さいと液晶セル等の複屈折による位相差の補償が困難になる傾向がある。
【0048】
なお、光学補償用塗工膜、該光学補償用塗工膜形成用塗工液、それらを用いて製造した光学素子は、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式等の液晶セルを用いた液晶表示装置の視野角拡大用途に使用できる。本発明のセルロースカーバメート誘導体を用いた光学補償用塗工膜の光学特性の性能を十分に発揮するためには、IPS方式が特に好ましい。また、前記光学補償用塗工膜、該塗工膜形成用塗工液、それらを用いて製造した光学素子は、ビデオ、カメラ、携帯電話、パソコン、テレビ、モニター、自動車のインパネ等の液晶表示装置作製部品等に好適に使用できる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0050】
3次元屈折率(n,n,n)の算出
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、25℃下で590nm光による測定を行い、3次元屈折率を算出した。得られた結果から、面内位相差を(n−n)×dにより求めた。また、厚み位相差を〔(n+n)/2−n〕×dにより求めた。但し、遅相軸を傾斜中心軸として位相差の測定を行った際、傾斜角の増加とともに位相差が増加した場合は位相差の符号判定を行うために次の方法を併用した。作製した光学素子上にポリカーボネート製λ/4板を重ね合わせ、λ/4板の配向角が0±1度になるように自動複屈折計KOBRA−WRに装着した後、遅相軸を傾斜中心軸とし、25℃下で590nm光による位相差測定を行った。測定結果が、λ/4板単体の位相差より上昇した場合は傾斜角の増加とともに光学素子単体の位相差も正の方向に上昇しているとみなし、λ/4板単体の位相差より低下した場合は傾斜角の増加とともに光学素子単体の位相差も負の方向に低下しているとみなして、先に測定した光学素子単体の位相差に正負の符号を付与し、3次元屈折率を算出した。得られた結果から、面内位相差を(n−n)×dにより求めた。また、厚み位相差を〔(n+n)/2−n〕×dにより求めた。
【0051】
(実施例1)セルロース N−フェニルカーバメート(1)の合成
冷却管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた500mlの4つ口フラスコに、60℃で7時間真空乾燥したセルロース(旭化成ケミカルズ製アビセルTG−F20、含水率2重量%)1.0gを入れ、モレキュラーシーブス3Aを入れて25℃で1日乾燥したピリジン(含水率0.03重量%)100mlを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)7.7gを加えた。窒素を導入し、攪拌しながら110℃に昇温した後、7時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をエタノール400ml中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られたポリマーにアセトン30mlを加えて溶解した後、純水400ml中に滴下して沈殿を生じさせた。濾別後水洗し、60℃で4時間真空乾燥することによって、2.2gのセルロース N−フェニルカーバメート(1)を得た(以下、合成品(1)と呼ぶことがある。)。
【0052】
(実施例2)合成品(1)の精製によるセルロース N−フェニルカーバメート(2)の作製
実施例1で得られた合成品(1)をソックスレー抽出器に入れ、メタノールによるソックスレー抽出(メタノールの沸点で洗浄)を20回行った後、25℃で4時間真空乾燥することによって、1.9gのセルロース N−フェニルカーバメート(2)を得た(以下、合成品(2)と呼ぶことがある。)。合成品(2)のDSはプロトンNMR分析の結果、3であり、不純物ピークは確認されなかった。すなわち、プロトンNMR分析では、合成品(2)の不純物含有量は0重量%である。また、合成品(1)と合成品(2)を比較することにより、合成品(1)の不純物含有量は、13.6重量%と算出された。なお、DSは、セルロース骨格由来のプロトンの化学シフト(3.4〜5.5ppm)面積とフェニル基のプロトンの化学シフト(6.7〜7.8ppm)面積を比較することによって決定した。
【0053】
(実施例3)セルロース N−フェニルカーバメート(3)の合成
冷却管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、前記合成品(2)0.8gを入れ、テトラヒドロフラン25mlを加えて溶解した後、30重量%水酸化ナトリウム/メタノール溶液0.035gを加え、25℃で2時間攪拌後、40℃に昇温し、30分間攪拌した。続いて、酢酸0.08gをテトラヒドロフラン5mlに溶かした溶液を添加し、攪拌しながら窒素ブローによる溶媒蒸発操作により、反応液中のテトラヒドロフランを約20mlまで濃縮した。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール200ml中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、25℃で2時間真空乾燥することによって、0.72gの部分加水分解されたセルロース N−フェニルカーバメート(3)を得た(以下、合成品(3)と呼ぶことがある。)。合成品(3)の置換度DSはプロトンNMR分析の結果、2.88であった。なお、DSは、セルロース骨格由来のプロトンの化学シフト(3.4〜5.5ppm)面積とフェニル基のプロトンの化学シフト(6.7〜7.8ppm)面積を比較することによって決定した。
【0054】
(実施例4)
合成品(2)0.15gに酢酸ブチル0.85gを加え、25℃下で溶解した。次に、この塗工液をバーコーターを用いて150μm厚のガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に塗工した後、120℃で1分間、空気中で乾燥して光学素子を作製した。乾燥後の塗工膜厚(d(nm))は、光学素子全体の厚みを測定し、ガラス基板の厚みを差し引くことにより求めた。次に、上記によって得られた光学素子の物性測定を行い、結果を表1に示した。
【0055】
(実施例5)
合成品(3)を用いたこと以外は実施例4と同様の操作を行った。得られた光学素子の物性測定を行い、結果を表1に示した。
【0056】
【表1】


(比較例1)セルロース N−フェニルカーバメート(4)の合成
含水率が10重量%のセルロース(旭化成ケミカルズ製アビセルTG−F20)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。反応液をエタノール400ml中に滴下して沈殿を生成させ、濾別後、得られたポリマーにアセトンを加えたが、溶解性の低い副生成物が多量にあり、精製が煩雑であった。
【0057】
(比較例2)
合成品(4)を用いたこと以外は実施例4と同様の操作を行った。得られた光学素子は白濁し、透明性の低いものであった。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【出願日】 平成18年10月25日(2006.10.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−106158(P2008−106158A)
【公開日】 平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願番号】 特願2006−290566(P2006−290566)