トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 セルロースN−置換カーバメート、これを用いた塗工膜、光学補償用塗工膜、偏光板、液晶表示装置、並びにその製造方法
【発明者】 【氏名】塚本 美智徳

【氏名】日色 知樹

【氏名】藤井 貞男

【要約】 【課題】煩雑なフィルム化工程を必要とせずに光学補償用塗工膜を安価に提供し、フィルム貼り付け等の手間を必要とせずにその特性を有する光学素子を提供することである。さらに、セルロース N−置換カーバメートを含有し、薄膜化された光学素子とするために、面内の屈折率のうち最大のものをn、最小のものをn、厚み方向の屈折率をn、膜厚をdとした時に、(n+n)/2−nで表される値が負であり、その絶対値がより大きな光学補償用塗工膜の形成方法を提供し、その形成方法を用いて製造した光学素子を提供することである。

【解決手段】セルロース N−置換カーバメートを含有して形成されることを特徴とする光学補償用塗工膜とすること、及び、前記セルロース N−置換カーバメート、及びそれを溶解可能な溶媒を含有する塗工液を基板に塗工し塗工基板とした後、この塗工基板を乾燥することを特徴とする光学補償用塗工膜の形成方法とすること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメート。
【請求項2】
カーバメート基の窒素原子に結合した2つの水素原子のうち、少なくとも一つが下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基で置換されており(Nに結合した置換基)、かつ、複数のN−置換カーバメート基の該Nに結合した置換基が同一又は異なって、下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基であることを特徴とする請求項1記載のセルロース N−置換カーバメート。
【化1】


(式中R、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【化2】


(式中R、R、R、R、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【化3】


(式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のセルロース N−置換カーバメートを含有してなることを特徴とする光学材料。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のセルロース N−置換カーバメートを含有してなることを特徴とする液晶表示装置用光学補償材料。
【請求項5】
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のセルロース N−置換カーバメートを含有して形成されることを特徴とする光学補償用塗工膜。
【請求項6】
膜面内の屈折率のうち最大のものをn、最小のものをnとし、厚み方向の屈折率をn、膜厚をdとした時に、以下の数式1を満たすことを特徴とする請求項5記載の光学補償用塗工膜。
〔(n+n)/2−n〕×d<0 (数式1)
【請求項7】
下記(A)、(B)を含有して形成される光学補償用塗工膜形成用塗工液。
(A)請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のセルロース N−置換カーバメート
(B)(A)成分が溶解可能な溶媒
【請求項8】
請求項7記載の光学補償用塗工膜形成用塗工液を基材上に塗布後乾燥して形成したことを特徴とする、光学補償用塗工膜。
【請求項9】
請求項7記載の光学補償用塗工膜形成用塗工液を基板に塗工し塗工基板とした後、該塗工基板を乾燥することを特徴とする光学補償用塗工膜の形成方法。
【請求項10】
該塗工基板を下限0℃、上限40℃の範囲の温度で1次乾燥した後、更に、該塗工基板を下限80℃、上限300℃で2次乾燥することを特徴とする請求項9記載の光学補償用塗工膜の形成方法。
【請求項11】
1次乾燥時間が3分以上であることを特徴とする請求項10記載の光学補償用塗工膜の形成方法。
【請求項12】
光学補償用塗工膜形成用塗工液を基板に塗工し塗工基板とした後、(B)成分の蒸気にさらして塗工膜をアニーリングし、更に乾燥することを特徴とする請求項9乃至11記載の光学補償用塗工膜の形成方法。
【請求項13】
請求項9乃至請求項12記載の形成方法を用いて製造したことを特徴とする光学補償用塗工膜。
【請求項14】
請求項5,6,8,13のいずれか一項に記載の光学補償用塗工膜を、制御された複屈折性を有するフィルムの少なくとも一方の面に形成させてなることを特徴とする積層光学補償フィルム。
【請求項15】
請求項14記載の制御された複屈折性を有するフィルムが、正の複屈折性を有する材料からなるフィルムであることを特徴とする積層光学補償フィルム。
【請求項16】
偏光子の少なくとも片面に請求項14又は請求項15のいずれか1項に記載の積層光学補償フィルムを偏光子保護フィルムとして装着したことを特徴とする偏光板。
【請求項17】
請求項5,6,8,13のいずれか1項に記載の光学補償用塗工膜、又は請求項14,15のいずれか1項に記載の積層光学補償フィルム、又は請求項16記載の偏光板を備えた液晶表示装置。
【請求項18】
下記(A)、(B)を含有して形成される塗工液。
(A)請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のセルロース N−置換カーバメート
(B)(A)成分が溶解可能な溶媒
【請求項19】
請求項18記載の塗工液を基材上に塗布後乾燥して形成したことを特徴とする塗工膜。
【請求項20】
膜面内の屈折率のうち最大のものをn、最小のものをnとし、厚み方向の屈折率をn、膜厚をdとした時に、以下の数式1を満たすことを特徴とする非液晶性の高分子からなる塗工膜。
〔(n+n)/2−n〕×d<0 (数式1)
【請求項21】
請求項19又は請求項20のいずれか1項に記載の塗工膜を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の光学装置に好適に用いることが可能な光学材料に関するものである。または、塗工液、塗工膜、光学補償用塗工膜、更にはこれらを用いた積層光学補償フィルム、偏光板、液晶表示装置に関するものである。または、光学補償用塗工膜の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の各種光学装置には、液晶セル、偏光子等と共に、各種膜が用いられている(本願において膜とは、他の基材上に直接形成した層、これを基材から剥離して取り出したフィルム、更には直接溶液キャスティング、溶融キャスティング等により単独で形成したフィルム等が含まれるものとする)。特に、装置中の他の構成により生じる複屈折を補償する為の光学補償用の膜が一般的に用いられている(例えば、視野角の拡大等の用途に用いられている)。このような光学補償用の膜を形成する為の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン等のポリマーが用いられ、一般的には、製膜工程(フィルム化)、延伸工程(位相差付与)、貼り合わせ工程を経て各種装置に組み込まれている。しかし、これらの方法では、フィルム化が必要なだけでなく、このフィルムを貼り合わせる手間も必要となり、更に簡便な方法が求められていた。
【0003】
これらの問題を解消するために、ポリイミドのペーストを塗布する薄膜形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法は、n<n=nの光学特性を有する系を形成することは可能であるが、n>n≧nの光学特性をもつもの、換言すれば、〔(n+n)/2−n〕×dとして表される厚み位相差の値が負になるものを形成することはできなかった。
【0004】
これに対して、光異性化しうる官能基を有する高分子化合物の溶液を塗布、乾燥後、光を照射して高分子の配向を制御するもの、又は、液晶ポリマーの溶液あるいは液晶ポリマーの溶融物を塗布、乾燥後、ポリマーのガラス転移温度で熱処理して液晶を配向させ、冷却することにより配向を固定化することで、n>n≧nの光学特性を有する膜を形成することが検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの方法ではポリイミドのペースト塗布による位相差層形成に比べ、光異性化しうる官能基を有する高分子化合物を用いる場合は光照射をしなければならないという煩雑さがあり、液晶ポリマーを用いる場合は一般に液晶が高価であり、コスト高になるという欠点がある。
【0006】
ところで、装置中の他の構成により生じる複屈折を補償する為には、その厚み方向の位相差と符号が逆で、〔(n+n)/2−n〕×dで表される厚み位相差の絶対値が大きな光学補償用材料を用いることが有効である。そして、そのためには、(n+n)/2−nで表される値の絶対値が大きくなる材料を、大きくなる形成方法で形成することが特に有効である。なぜなら、(n+n)/2−nで表される値の絶対値が十分でなく膜厚を大きくする必要がある場合には、膜形成後の液晶表示装置構成部品が嵩張るだけでなく、膜の材料コストが増大する等の問題が生じるからである。
【特許文献1】特開2001−290023号公報
【特許文献2】特開平7−13022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、煩雑な工程を必要とせずに光学補償用の膜を安価に提供することである。さらには、〔(n+n)/2−n〕×d<0の特性をもつ光学補償用の膜を煩雑な工程を必要とせずに安価に提供することである。
【0008】
また、この様な用途に好適に使用可能な材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを含有して形成されることを特徴とする光学補償用塗工膜により上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、
セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを提供した。
【0011】
また、カーバメート基の窒素原子に結合した2つの水素原子のうち、少なくとも一つが下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基で置換されており(Nに結合した置換基)、かつ、複数のN−置換カーバメート基の該Nに結合した置換基が同一又は異なって、下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基であることを特徴とする前記セルロース N−置換カーバメートを提供した。
【0012】
【化1】


(式中R、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0013】
【化2】


(式中R、R、R、R、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0014】
【化3】


(式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
また、前記セルロース N−置換カーバメートを含有してなることを特徴とする光学材料、液晶表示装置用光学補償材料を提供した。
【0015】
また、下記(A)、(B)を含有して形成される塗工液、光学補償用塗工膜形成用塗工液を提供した。
【0016】
(A)前記セルロース N−置換カーバメート
(B)(A)成分が溶解可能な溶媒
また、前記セルロース N−置換カーバメートを含有して形成されることを特徴とする光学補償用塗工膜、また、前記光学補償用塗工膜形成用塗工液を基材上に塗布して形成した光学補償用塗工膜、更には、膜面内の屈折率のうち最大のものをn、最小のものをnとし、厚み方向の屈折率をn、膜厚をdとした時に、以下の数式1を満たすことを特徴とする光学補償用塗工膜を提供した。
【0017】
〔(n+n)/2−n〕×d<0 (数式1)
また、前記光学補償用塗工膜形成用塗工液を基板に塗工し塗工基板とした後、該塗工基板を乾燥することを特徴とする光学補償用塗工膜の形成方法を提供した。
【0018】
更には、該塗工基板を下限0℃、上限40℃の範囲の温度で1次乾燥した後、更に、該塗工基板を下限80℃、上限300℃で2次乾燥することを特徴とする光学補償用塗工膜の形成方法を提供した。
【0019】
また、光学補償用塗工膜形成用塗工液を基板に塗工し塗工基板とした後、(B)成分の蒸気にさらして塗工膜をアニーリングし、更に乾燥することを特徴とする光学補償用塗工膜の形成方法を提供した。
【0020】
また、前記光学補償用塗工膜を、制御された複屈折性を有するフィルムの少なくとも一方の面に形成させてなる積層光学補償フィルム、更には前記制御された複屈折性を有するフィルムが、正の複屈折性を有する材料からなるフィルムであることを特徴とする積層光学補償フィルムを提供した。
【0021】
また、これらを偏光子の少なくとも片面に偏光子保護フィルムとして装着したことを特徴とする偏光板を提供した。
【0022】
また、前記各種発明の膜、光学素子等を備えた液晶表示装置を提供した。
【0023】
更には、膜面内の屈折率のうち最大のものをn、最小のものをnとし、厚み方向の屈折率をn、膜厚をdとした時に、以下の数式1を満たすことを特徴とする非液晶性の高分子からなる塗工膜、またこの塗工膜を備えた液晶表示装置を提供した。
【0024】
〔(n+n)/2−n〕×d<0 (数式1)
【発明の効果】
【0025】
本発明の光学補償用塗工膜を用いると、煩雑なフィルム化工程やフィルム貼り付け等の手間を必要とせずに光学素子が製造でき、特に〔(n+n)/2−n〕×d<0の光学補償層を有する光学素子が製造できる。またこれにより得られる光学補償用塗工膜は、(n+n)/2−nで表される値が負で、その絶対値が比較的大きい為、光学素子を薄肉化する為に有効に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、セルロース N−置換カーバメート、または、これを含有してなる光学材料、液晶表示装置用光学補償材料、更にはこれを含有して形成される光学補償用塗工膜に関するものである。
【0027】
本発明の前記セルロース N−置換カーバメートは、セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がカーバメート化され、さらに、窒素原子に結合した2つの水素原子のうち、少なくとも一つが下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基で置換されており(Nに結合した置換基)、かつ、複数のN−置換カーバメート基の該Nに結合した置換基が同一又は異なって、下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基である。
【0028】
【化4】


(式中R、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0029】
【化5】


(式中R、R、R、R、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0030】
【化6】


(式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
本発明における、セルロース N−置換カーバメートは(以下(A)成分と言うことがある)、例えば、各種木材パルプ、綿リンター、綿リント等から得られるセルロースを原料とし、ピリジン、トリエチルアミン等の塩基触媒存在下でイソシアネート系化合物を反応させる既知の方法により製造することができる。また、反応生成物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基により部分加水分解することによって、N−置換カーバメート化率の制御されたものを製造することもできる。尚、前記の反応時に使用する塩基触媒は溶媒としても使用することができる。その他の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒を好適に用いることができる。更に、セルロースの溶媒に対する溶解性を向上させるために塩化リチウム等の無機塩を添加することもできる。また、イソシアネート系化合物の例としては、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【化7】


(式中R20、R21、R22、R23、R24は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0032】
【化8】


(式中R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
【0033】
【化9】


(式中R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
これらのイソシアネート系化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明では、上記イソシアネート系化合物の入手性の観点から、R20、R21、R、R23、R24が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のアリールオキシ基、炭素数7〜16のアラルキル基、炭素数7〜16のアラルキルオキシ基、炭素数1〜17のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(4)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを用いることが好ましい。又はR25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜17のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(5)、(6)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを用いることが好ましい。R20、R21、R22、R23、R24が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、炭素数1〜13のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(4)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを用いることがより好ましい。又はR25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜13のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(5)、(6)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの繰り返し単位であるグルコース構造の3つの水酸基のうち、下限0.05、上限2.95の範囲で水酸基がN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを用いることがより好ましい。
【0035】
一般式(4)〜(6)で表されるイソシアネート系化合物を具体的に例示すると、フェニルイソシアネート、o−トリルイソシアネート、m−トリルイソシアネート、p−トリルイソシアネート、2−エチルフェニルイソシアネート、3−エチルフェニルイソシアネート、4−エチルフェニルイソシアネート、2−プロピルフェニルイソシアネート、3−プロピルフェニルイソシアネート、4−プロピルフェニルイソシアネート、2−ブチルフェニルイソシアネート、3−ブチルフェニルイソシアネート、4−ブチルフェニルイソシアネート、2,3−ジメチルフェニルイソシアネート、2,4−ジメチルフェニルイソシアネート、2,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、3,4−ジメチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,3−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4−ジエチルフェニルイソシアネート、2,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニルイソシアネート、3,4−ジエチルフェニルイソシアネート、3,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4,6−トリメチルフェニルイソシアネート、2−メトキシフェニルイソシアネート、3−メトキシフェニルイソシアネート、4−メトキシフェニルイソシアネート、2−エトキシフェニルイソシアネート、3−エトキシフェニルイソシアネート、4−エトキシフェニルイソシアネート、2−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−ビフェニリルイソシアネート、3−ビフェニリルイソシアネート、4−ビフェニリルイソシアネート、2−フェノキシフェニルイソシアネート、3−フェノキシフェニルイソシアネート、4−フェノキシフェニルイソシアネート、2’−ベンジルフェニルイソシアネート、3’−ベンジルフェニルイソシアネート、4’−ベンジルフェニルイソシアネート、2−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、3−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、4−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、2−アセトキシフェニルイソシアネート、3−アセトキシフェニルイソシアネート、4−アセトキシフェニルイソシアネート、2−フルオロフェニルイソシアネート、3−フルオロフェニルイソシアネート、4−フルオロフェニルイソシアネート、2−クロロフェニルイソシアネート、3−クロロフェニルイソシアネート、4−クロロフェニルイソシアネート、2−ブロモフェニルイソシアネート、3−ブロモフェニルイソシアネート、4−ブロモフェニルイソシアネート、2−ヨードフェニルイソシアネート、3−ヨードフェニルイソシアネート、4−ヨードフェニルイソシアネート、2,4−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,6−ジフルオロフェニルイソシアネート、3,4−ジフルオロフェニルイソシアネート、3,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,4−ジクロロフェニルイソシアネート、2,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,6−ジクロロフェニルイソシアネート、3,4−ジクロロフェニルイソシアネート、3,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,4−ジブロモフェニルイソシアネート、2,5−ジブロモフェニルイソシアネート、2,6−ジブロモフェニルイソシアネート、3,4−ジブロモフェニルイソシアネート、3,5−ジブロモフェニルイソシアネート、2,4−ジヨードフェニルイソシアネート、2,5−ジヨードフェニルイソシアネート、2,6−ジヨードフェニルイソシアネート、3,4−ジヨードフェニルイソシアネート、3,5−ジヨードフェニルイソシアネート、2,3,4−トリフルオロフェニルイソシアネート、2,3,4−トリクロロフェニルイソシアネート、2,3,4−トリブロモフェニルイソシアネート、2,3,4−トリヨードフェニルイソシアネート、2−フルオロ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−フルオロ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−フルオロ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−フルオロ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−クロロ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−クロロ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−クロロ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−クロロ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ブロモ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−ブロモ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−ブロモ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−ブロモ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ヨード−5−メチルフェニルイソシアネート、2−ヨード−6−メチルフェニルイソシアネート、3−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、3−ヨード−4−メチルフェニルイソシアネート、4−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、4−ヨード−3−メチルフェニルイソシアネート、5−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ニトロフェニルイソシアネート、3−ニトロフェニルイソシアネート、4−ニトロフェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、2−ナフチルイソシアネート、1−メチル−2−ナフチルイソシアネート、2−メチル−1−ナフチルイソシアネート、1−メトキシ−2−ナフチルイソシアネート、2−メトキシ−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリフルオロメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリフルオロメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリクロロメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリクロロメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリブロモメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリブロモメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリヨードメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリヨードメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−アセトキシ−2−ナフチルイソシアネート、2−アセトキシ−1−ナフチルイソシアネート、1−フルオロ−2−ナフチルイソシアネート、2−フルオロ−1−ナフチルイソシアネート、1−クロロ−2−ナフチルイソシアネート、2−クロロ−1−ナフチルイソシアネート、1−ブロモ−2−ナフチルイソシアネート、2−ブロモ−1−ナフチルイソシアネート、1−ヨード−2−ナフチルイソシアネート、2−ヨード−1−ナフチルイソシアネート、1−ニトロ−2−ナフチルイソシアネート、2−ニトロ−1−ナフチルイソシアネート等が挙げられる。これら及び前記イソシアネート系化合物を反応して得られるセルロース N−置換カーバメートは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、セルロースはその構成単位であるグルコース残基当たり3個の水酸基を有している。従って、これらの水酸基を置換する場合に、グルコース残基当たりの置換度(以下、DSと称する)は最大3になる。本発明においては、DSの下限は好ましくは0.05、より好ましくは1.0、さらに好ましくは1.9であり、上限は好ましくは2.95、より好ましくは2.9、さらに好ましくは2.8である。DSが0.05より低いと溶媒に溶け難くなる傾向があり、2.95より高いと光学補償用塗工膜とした際、基板に対する接着性が低下する傾向がある。本発明では、DSが異なるセルロース N−置換カーバメートの2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0037】
これらの材料を用いることにより、塗工膜、更には光学補償用塗工膜の(n+n)/2−nで表される値の絶対値を大きくすることが可能であり、また、その値を負にすることが容易となる。
【0038】
さらに、(A)成分の数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは500000、より好ましくは300000、さらに好ましくは200000である。数平均分子量が5000より小さいと塗工膜強度が低下する傾向があり、数平均分子量が500000より大きいと溶媒(以下(B)成分と言うことがある)に溶け難くなる傾向がある。なお、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なるセルロース N−置換カーバメートの2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0039】
以下、塗工液、光学補償用塗工膜形成用塗工液について説明する。塗工液は、(A)前記セルロース N−置換カーバメート、(B)(A)成分が溶解可能な溶媒、を含有してなる。
【0040】
(B)成分の溶媒としては、(A)成分が可溶であれば特に限定されるものではないが、具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼンの異性体混合物等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1,1−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン等のアミド系溶媒;ピロリジン、ピペリジン、ピロール等のアミン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特にエーテル系の溶媒が(n+n)/2−nで表される値の絶対値を大きくしやすい理由で好ましい。
【0041】
本発明では、溶媒量は、(A)成分と(B)成分の総重量に対する(A)成分の割合が下限1重量%、上限70重量%の範囲で用いるのが好ましく、下限2重量%、上限60重量%の範囲で用いるのがより好ましく、下限3重量%、上限50重量%の範囲で用いるのがさらに好ましい。(A)成分の割合が1重量%より小さい場合は塗工膜厚が薄くなり、必要な膜厚が得られ難くなる傾向があり、70重量%より大きい場合は塗工液の粘度が高くなり、作業性が劣る傾向がある。
【0042】
次に、本発明の塗工膜、光学補償用塗工膜形成用塗工液の特性を改質する目的で添加することが可能な樹脂について説明する。当該添加することが可能な樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等が例示されるが、これらは本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0043】
次に、本発明の塗工膜、塗工液の特性を改質する目的で加えることが可能な添加剤について説明する。添加剤としては、酸化防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGANOX 1010、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330等のヒンダードフェノール類)、加工安定剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製HP−136、IRGANOX E201、IRGAFOS 168等)、光安定剤(例えば、三共ライフテック製サノールLS−765、サノールLS−770等のヒンダードアミン類)、紫外線吸収剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製TINUVIN P、TINUVIN 213、TINUVIN 326等のベンゾトリアゾール類)、接着性改良剤(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤)、シラノール縮合触媒(例えば、川研ファインケミカル製アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM等のアルミニウムキレート類)、可塑剤(例えば、ジ2−エチルヘキシルフタレート、ジイソブチルアジペート等のエステル類)、界面活性剤(例えば、住友スリーエム製Fluorad FC−430、Fluorad FC−4430等のフッ素系化合物)、帯電防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGASTAT P18、IRGASTAT P22等)等が挙げられ、これらは本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0044】
本発明の塗工液は、例えば上記各成分を溶媒の融点以上、沸点以下の温度で、混合後静置又は攪拌混合等することにより得られる。
【0045】
次に、塗工液、光学補償用塗工膜形成用塗工液を塗布する基板について説明する。基板としては、各種のものが使用可能であるが、特に用途から考えると透明であることが好ましい。基板に使用される具体的な化合物の例としては、ポリカーボネート系重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル;アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合又はラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系重合体;アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアリレート;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;国際公開第01/37007号パンフレットに記載される化合物等が挙げられる。
【0046】
また、これらの材料は、例えば溶液流延法、溶融流延法、押出法、カレンダー法等により製膜し、無延伸、または一軸延伸法、二軸延伸法、収縮性フィルムを用いて収縮させる方法等により延伸し、基板として用いることができる。一方、ガラス板、カラーフィルター、液晶セル等を基板として使用することも可能である。本発明で用いる基板は、塗工液、光学補償用塗工膜形成用塗工液を塗布(片面塗布でも両面塗布でもよい)して塗工膜、光学補償用塗工膜を形成した後、この積層状態をそのまま各種光学装置に組み込んでも良いし(この方法によれば、より簡便に光学素子を形成することができる。例えば、基板自体を保護フィルムとして偏光子に貼り付けた、光学補償機能を併せ持つ偏光板等が挙げられる。)、または、塗工膜、光学補償用塗工膜を基板から剥離して膜自体を各種光学装置に組み込んで使用しても良い(この方法は、製造時の簡便性において前者に劣るものの、転写法等の利用によりやはり簡便性に優れている。また、塗布時の溶媒が光学装置へダメージを与える心配がない為、塗工液の選択範囲を広げることができる。)。
【0047】
次に、制御された複屈折性を有するフィルム(本発明においては、塗工膜を基板上に形成し、この積層構造をそのまま光学素子またはその一部として用いる場合であって、特に基板の複屈折性が制御されている際に、その基板のことをこの様に表すこととする)について説明する。制御された複屈折性を有するフィルムとしては、正の複屈折性、負の複屈折性、ゼロ複屈折のいずれであっても所望の複屈折性に制御されていれば各種フィルムを用いることができるが、特に、視野角補償の観点から、正の複屈折性を有する材料からなるフィルムを好適に用いることができる。正の複屈折性を有する材料を具体的に例示すると、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、セルロース系樹脂、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート等が挙げられる。因みに、正の複屈折性を有する材料を一般的な縦一軸延伸等を行ってフィルムとした場合、光学的に正の一軸性を有し、かつ、その光軸がフィルム面に対して平行であるAプレートとなり、本発明の光学補償用塗工膜と共に用いられた場合に、液晶表示装置の暗状態の光漏れを低減する等の光学補償機能が発現し、有用である。
【0048】
制御された複屈折性を有するフィルムの好ましい面内位相差((nxf−nyf)×d,但し、該フィルムの面内の屈折率のうち最大のものをnxf、最小のものをnyf、膜厚をd(nm)とした場合)は、590nm光で測定した場合、面内位相差が下限0nm、上限600nmになるように制御されていることが好ましく、下限0nm、上限500nmになるように制御されていることがより好ましく、下限0nm、上限400nmになるように制御されていることがさらに好ましい。面内位相差が600nmより大きいと、該フィルム面に本発明の光学補償用塗工膜を形成させてなる積層光学補償フィルムの位相差補償効果が低下する傾向にある。
【0049】
次に、本発明の塗工膜、光学補償用塗工膜の形成方法について説明する。塗工膜、光学補償用塗工膜は、前記基板の片面又は両面に本発明の塗工液を塗工して塗工基板とした後、この塗工基板を乾燥することにより基板上に好適に作製できる。塗工方法としては、グラビヤロールコート法、マイヤーバーコート法、ドクターブレードコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カレンダーコート法、スキーズコート法、キスコート法、バーコート法、スロットダイコート法、スピンコート法等が挙げられる。
【0050】
乾燥方法としては、前記塗工基板を、例えば空気中又は窒素等の不活性ガス中に放置(風乾)する方法、熱風オーブン、赤外線加熱炉等で加熱乾燥する方法、真空乾燥機等で減圧乾燥する方法等により、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
【0051】
乾燥温度条件としては、定温、多段階昇温のいずれも用いることができる。定温の場合、下限−30℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限0℃、上限280℃がより好ましく、下限10℃、上限260℃がさらに好ましい。乾燥温度が−30℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、300℃より高いと塗工膜や基板の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。尚、上記の温度範囲は比較的広いが、(n+n)/2−nで表される値の絶対値をより大きくするためには下限に近い低い温度で行うことが望ましい(塗工膜内部構造の形成がより進む)。但し、この様な低い温度では乾燥時間が非常に長くなるので、実際には溶媒の沸点等も考慮し、所望の(n+n)/2−nで表される値を得られる範囲で温度を選択する必要がある。このような定温乾燥を用いることができるが、効果的に乾燥させるためには多段階に温度を上げることが好ましく、経済的観点から1次乾燥、2次乾燥の2段乾燥が特に好ましい。
【0052】
2段乾燥を行う場合、1次乾燥は、下限0℃、上限40℃の温度範囲が好ましく、下限5℃、上限35℃がより好ましく、下限10℃、上限30℃がさらに好ましい。また、その乾燥時間は3分以上であることが好ましい。1次乾燥は、(n+n)/2−nで表される値の絶対値をより大きくするための塗工膜内部構造の基礎形成に有効である。1次乾燥温度が0℃より低いと塗工膜内部構造の基礎形成に必要な乾燥時間が長くなる傾向があり、40℃より高いと、(n+n)/2−nで表される値の絶対値をより大きくするために必要な塗工膜内部構造の基礎形成がされ難くなる傾向がある。
【0053】
2次乾燥においては、下限80℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限90℃、上限280℃がより好ましく、下限100℃、上限260℃がさらに好ましい。2次乾燥は、溶媒を完全に除去する点に加え、一次乾燥で形成した塗工膜内部構造の基礎を発展させ、実際に(n+n)/2−nで表される値の絶対値をより大きくするために有効である。2次乾燥温度が80℃より低いと塗工膜内部構造の確立が不十分になる傾向があり、300℃より高いと塗工膜や基板の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0054】
さらに本発明は、塗工液、光学補償用塗工膜形成用塗工液を基板に塗工し塗工基板とした後、(B)成分の蒸気にさらして塗工膜をアニーリングし、更に乾燥することにより光学補償用塗工膜の形成方法とすることもできる。
【0055】
アニーリングは塗工膜のレベリング性向上、応力緩和等のために行うことが好ましく、例えば面内位相差の低減、面内位相差の振れの低減等に有効である。本発明では、アニーリングは、(B)成分の蒸気中に塗工基板の塗工膜を上にして水平に静置して行うことが好ましい。アニーリング時の温度は種々設定できるが、下限−30℃、上限〔(B)成分の沸点(℃)〕の範囲が好ましく、下限−15℃、上限〔(B)成分の沸点(℃)−5℃〕がより好ましく、下限0℃、上限〔(B)成分の沸点(℃)−10℃〕がさらに好ましい。アニーリング時の温度が−30℃より低いとアニーリング時間が長くなる傾向があり、アニーリング時の温度が(B)成分の沸点(℃)より高いと塗工膜の基板からの流れ出しが生じ易くなる傾向がある。アニーリング時の圧力は種々設定でき、大気圧、加圧下、又は減圧下で行うことができるが、作業性の点で大気圧が好ましい。
【0056】
この様にして形成された塗工膜、光学補償用塗工膜は、基板と共に光学素子として各種光学装置に組み込んでも良いし、基板から一旦引き剥がした後、膜のみを光学素子として各種光学装置に組み込んで使用しても良い。
【0057】
一方、本発明の光学補償用塗工膜は、面内の屈折率のうち最大のものをn、最小のものをnとし、厚み方向の屈折率をn、膜厚をdとした時に、〔(n+n)/2−n〕×d<0の特性をもつことが好ましい。また、光学補償用塗工膜の厚みをd(nm)とすると、面内位相差は、(n−n)×dで表され、厚み位相差は、〔(n+n)/2−n〕×dで表されるが、面内位相差は590nm光による測定において、下限0nm、上限300nmが好ましく、下限0nm、上限200nmがより好ましく、下限0nm、上限100nmがさらに好ましい。面内位相差が300nmより大きいと液晶セル等の複屈折による位相差の補償が困難になる傾向がある。また、厚み位相差は590nm光による測定において、下限−1000nm、上限−1nmが好ましく、下限−800nm、上限−10nmがより好ましく、下限−600nm、上限−20nmがさらに好ましい。厚み位相差が−1000nmより小さいと液晶セル等の複屈折による位相差の補償が困難になる傾向がある。
【0058】
次に、本発明の積層光学補償フィルムについて説明する。本発明の積層光学補償フィルムは、前記光学補償用塗工膜を、制御された複屈折性を有するフィルムの少なくとも一方の面に形成させてなるもので、特に前述の通り、制御された複屈折性を有するフィルムが正の複屈折性を有する材料から形成されていることが好ましい。
【0059】
次に、本発明の偏光板について説明する。偏光板としては、例えば、偏光子の両面にポリエステル系接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等の接着剤を用いて保護フィルムを貼り合わせたもの等が挙げられる。偏光子の例としては、親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着配向して作製した偏光子、ポリビニルアルコール系フィルムを脱水処理してポリエンを形成させ、配向して作製した偏光子、ポリ塩化ビニルフィルムを脱塩酸処理してポリエンを形成させ、配向して作製したものが挙げられる。偏光子に使用される親水性高分子フィルムとしては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物フィルム等が挙げられる。保護フィルムとしては、先に基板として例示したもの等が使用可能である。また、特に先述の積層光学補償フィルムを用いることもできる(この場合、偏光板の機能に加えて、偏光板に光学補償の機能を追加することができる)。本発明の積層光学補償フィルムを保護フィルムとして使用する場合は、偏光子の両面に用いることもできるし、片面に本発明の積層光学補償フィルムを使用し、反対の面には単に前記基板等を用いることもできる。また、これらの偏光板を作製後に本発明の光学補償用塗工膜を別途設けることもできる。
【0060】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。液晶表示装置としては、例えば、光源/導光板/光拡散フィルム/レンズフィルム/輝度向上フィルム/偏光板/液晶セル/偏光板の順に構成された表示装置等が挙げられるが、液晶セルの入射光側及び/又は出射光側に本発明の積層光学補償フィルムを装着すること及び/又は液晶セルの入射光側及び/又は出射光側の偏光板に本発明の偏光板を装着することにより本発明の液晶表示装置とすることができる。液晶セルの方式としては、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式等挙げられる。
【0061】
なお、本発明の光学補償用塗工膜、該光学補償用塗工膜形成用塗工液、それらを用いて製造した光学素子および積層光学補償フィルムは、VA方式、IPS方式、OCB方式等の液晶セルを用いた液晶表示装置の視野角拡大用途に使用できる。本発明における光学補償用塗工膜の光学特性の性能を十分に発揮するためには、IPS方式が特に好ましい。また、前記光学補償用塗工膜、該塗工膜形成用塗工液、それらを用いて製造した光学素子および積層光学補償フィルムは、ビデオ、カメラ、携帯電話、パソコン、テレビ、モニター、自動車のインパネ等の液晶表示装置作製部品等に好適に使用できる。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0063】
3次元屈折率〔(n,n,n)又は(nxf,nyf,nzf)〕の算出
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、25℃下で590nm光による測定を行い、3次元屈折率を算出した。得られた結果から、面内位相差を(n−n)×d又は(nxf−nyf)×dにより求めた。また、厚み位相差を〔(n+n)/2−n〕×d又は〔(nxf+nyf)/2−nzf〕×dにより求めた。但し、遅相軸を傾斜中心軸として位相差の測定を行った際、傾斜角の増加とともに位相差が増加した場合は位相差の符号判定を行うために次の方法を併用した。作製した光学素子上にポリカーボネート製λ/4板を重ね合わせ、λ/4板の配向角が0±1度になるように自動複屈折計KOBRA−WRに装着した後、遅相軸を傾斜中心軸とし、25℃下で590nm光による位相差測定を行った。測定結果が、λ/4板単体の位相差より上昇した場合は傾斜角の増加とともに光学素子単体の位相差も正の方向に上昇しているとみなし、λ/4板単体の位相差より低下した場合は傾斜角の増加とともに光学素子単体の位相差も負の方向に低下しているとみなして、先に測定した光学素子単体の位相差に正負の符号を付与し、3次元屈折率を算出した。得られた結果から、面内位相差を(n−n)×d又は(nxf−nyf)×dにより求めた。また、厚み位相差を〔(n+n)/2−n〕×d又は〔(nxf+nyf)/2−nzf〕×dにより求めた。
【0064】
(実施例1)セルロース N−フェニルカーバメート(2)の合成
冷却管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた500mlの4つ口フラスコに、60℃で7時間真空乾燥したセルロース(旭化成ケミカルズ製アビセルTG−F20)1.0gを入れ、ピリジン100mlを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)7.7gを加えた。窒素を導入し、攪拌しながら110℃に昇温した後、7時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をエタノール400ml中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られたポリマーにアセトン30mlを加えて溶解した後、純水400ml中に滴下して沈殿を生じさせた。濾別後水洗し、60℃で4時間真空乾燥した後、ポリマーをソックスレー抽出器に入れた。メタノールによるソックスレー抽出を20回行った後、25℃で4時間真空乾燥することによって、1.9gのセルロース N−フェニルカーバメート(1)を得た(以下、合成品(1)と呼ぶことがある。)。合成品(1)のDSはプロトンNMR分析の結果、3であった。なお、DSは、セルロース骨格由来のプロトンの化学シフト(3.4〜5.5ppm)面積とフェニル基のプロトンの化学シフト(6.7〜7.8ppm)面積を比較することによって決定した。
【0065】
続いて、冷却管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、前記合成品(1)0.8gを入れ、テトラヒドロフラン25mlを加えて溶解した後、30重量%水酸化ナトリウム/メタノール溶液0.035gを加え、25℃で2時間攪拌後、40℃に昇温し、30分間攪拌した。続いて、酢酸0.08gをテトラヒドロフラン5mlに溶かした溶液を添加し、攪拌しながら窒素ブローによる溶媒蒸発操作により、反応液中のテトラヒドロフランを約20mlまで濃縮した。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール200ml中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、25℃で2時間真空乾燥することによって、0.72gの部分加水分解されたセルロース N−フェニルカーバメート(2)を得た(以下、合成品(2)と呼ぶことがある。)。合成品(2)の置換度DSはプロトンNMR分析の結果、2.88であった。なお、DSは、セルロース骨格由来のプロトンの化学シフト(3.4〜5.5ppm)面積とフェニル基のプロトンの化学シフト(6.7〜7.8ppm)面積を比較することによって決定した。
【0066】
(実施例2)セルロース N−フェニルカーバメート(3)の合成
冷却管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、前記合成品(1)0.8gを入れ、テトラヒドロフラン25mlを加えて溶解した後、30重量%水酸化ナトリウム/メタノール溶液0.087gを加え、25℃で30分間攪拌後、40℃に昇温し、30分間攪拌した。この加温時、反応液は増粘した。続いて、酢酸0.2gをテトラヒドロフラン5mlに溶かした溶液を添加すると、粘度は低下した。攪拌しながら窒素ブローによる溶媒蒸発操作により、反応液中のテトラヒドロフランを約20mlまで濃縮した後、25℃まで放冷し、反応液をメタノール200ml中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、25℃で3時間真空乾燥することによって、0.68gの部分加水分解されたセルロース N−フェニルカーバメート(3)を得た(以下、合成品(3)と呼ぶことがある。)。合成品(3)の置換度DSはプロトンNMR分析の結果、2.72であった。なお、DSは、セルロース骨格由来のプロトンの化学シフト(3.4〜5.5ppm)面積とフェニル基のプロトンの化学シフト(6.7〜7.8ppm)面積を比較することによって決定した。
【0067】
(実施例3)
合成品(2)0.15gに酢酸ブチル0.85gを加え、25℃下で溶解した。次に、この塗工液をバーコーターを用いて150μm厚のガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に塗工した後、120℃で1分間、空気中で乾燥して光学素子を作製した。乾燥後の塗工膜厚(d(nm))は、光学素子全体の厚みを測定し、ガラス基板の厚みを差し引くことにより求めた。次に、上記によって得られた光学素子の物性測定を行い、結果を表1に示した。
【0068】
尚、偏光顕微鏡を用いて塗工膜形成過程を確認したが、乾燥工程を通して液晶相の形成は確認されなかった。また、塗工膜の示差走査熱量分析(DSC分析)を行ったが、液晶相への相転移もみられなかった。
【0069】
(実施例4)
合成品(2)0.15gにエチルセロソルブアセテート0.85gを加え、25℃下で溶解した。次に、この塗工液をバーコーターを用いて150μm厚のガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に塗工した後、エチルセロソルブアセテートの蒸気が充満したガラス容器に入れ、密閉後、25℃で19時間アニーリングした。その後、塗工基板を取り出し、120℃で1分間、空気中で乾燥して光学素子を作製した。乾燥後の塗工膜厚(d(nm))は、光学素子全体の厚みを測定し、ガラス基板の厚みを差し引くことにより求めた。次に、上記によって得られた光学素子の物性測定を行い、結果を表1に示した。尚、アニーリング前の塗工品とアニーリング後の塗工品を比べると、目視による塗工膜のレベリング性はアニーリング後の方が良好であった。
【0070】
尚、偏光顕微鏡を用いて塗工膜形成過程を確認したが、乾燥工程を通して液晶相の形成は確認されなかった。また、塗工膜の示差走査熱量分析(DSC分析)を行ったが、液晶相への相転移もみられなかった。
【0071】
(実施例5)
合成品(3)0.12gにエチルセロソルブアセテート0.88gを加え、25℃下で溶解した。次に、この塗工液をバーコーターを用いて150μm厚のガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に塗工した後、エチルセロソルブアセテートの蒸気が充満したガラス容器に入れ、密閉後、25℃で19時間アニーリングした。その後、塗工基板を取り出し、120℃で1分間、空気中で乾燥して光学素子を作製した。乾燥後の塗工膜厚(d(nm))は、光学素子全体の厚みを測定し、ガラス基板の厚みを差し引くことにより求めた。次に、上記によって得られた光学素子の物性測定を行い、結果を表1に示した。
【0072】
尚、偏光顕微鏡を用いて塗工膜形成過程を確認したが、乾燥工程を通して液晶相の形成は確認されなかった。また、塗工膜の示差走査熱量分析(DSC分析)を行ったが、液晶相への相転移もみられなかった。
【0073】
(実施例6)
合成品(2)0.25gにエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.25gを加え、25℃下で溶解した。次に、この塗工液をバーコーターを用いて150μm厚のガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に塗工し塗工基板とした。その後、この塗工基板を25℃で1.5時間、空気中で乾燥して光学素子を作製した。乾燥後の塗工膜厚(d(nm))は、光学素子全体の厚みを測定し、ガラス基板の厚みを差し引くことにより求めた。次に、上記によって得られた光学素子の物性測定を行った。その結果を表2に示す。
【0074】
尚、偏光顕微鏡を用いて塗工膜形成過程を確認したが、乾燥工程を通して液晶相の形成は確認されなかった。また、塗工膜の示差走査熱量分析(DSC分析)を行ったが、液晶相への相転移もみられなかった。
【0075】
(実施例7)
塗工基板を120℃で1分間、空気中で乾燥して光学素子を作製したこと以外は実施例6と同様の操作を行った。得られた光学素子の物性測定を行った。その結果を表2に示す。
【0076】
尚、偏光顕微鏡を用いて塗工膜形成過程を確認したが、乾燥工程を通して液晶相の形成は確認されなかった。また、塗工膜の示差走査熱量分析(DSC分析)を行ったが、液晶相への相転移もみられなかった。
【0077】
(実施例8)
塗工基板を25℃で1.5時間、空気中で乾燥し、更に、120℃で1分間、空気中で乾燥して光学素子を作製したこと以外は実施例6と同様の操作を行った。得られた光学素子の物性測定を行った。その結果を表2に示す。25℃で1.5時間、空気中で乾燥しただけの実施例6及び120℃で1分間、空気中で乾燥しただけの実施例7よりも(n+n)/2−nで表される値の絶対値が大きな光学素子が得られている。
【0078】
尚、偏光顕微鏡を用いて塗工膜形成過程を確認したが、乾燥工程を通して液晶相の形成は確認されなかった。また、塗工膜の示差走査熱量分析(DSC分析)を行ったが、液晶相への相転移もみられなかった。
【0079】
【表1】


【0080】
【表2】


(実施例9)
ガラス基板の代わりに41μm厚のセルロースアセテートフィルム(面内位相差:1nm,厚み位相差:30nm)を用い、その上に20900nmの塗工膜を形成して積層光学補償フィルムを作製したこと以外は実施例3と同様の操作を行った。得られた積層光学補償フィルムの物性測定を行った結果、面内位相差は7nm、厚み位相差は−48nmであった。
【0081】
(実施例10)
ガラス基板の代わりに87μm厚のシクロオレフィンポリマーフィルム(面内位相差:215nm,厚み位相差:100nm)を用い、その上に23300nmの塗工膜を形成して積層光学補償フィルムを作製したこと以外は実施例3と同様の操作を行った。得られた積層光学補償フィルムの物性測定を行った結果、面内位相差は210nm、厚み位相差は37nmであった。
【0082】
(実施例11)
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を含浸させ、延伸することにより偏光子を作製した。この偏光子の片面にポリアクリル系接着剤を用いて80μm厚のセルロースアセテートフィルムを貼り合わせた。さらに、偏光子の反対の面に実施例9で作製した積層光学補償フィルムを塗工膜面が外側になるようにポリアクリル系接着剤を用いて貼り合わせ、光学補償層を有する偏光板を作製した。
【0083】
(実施例12)
IPS方式の液晶セルを装着した液晶表示装置を用意し、実施例9で作製した積層光学補償フィルムを液晶セルの出射光側に重ね合わせた表示装置を作製した。表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても色表示が変わることなく、良好な画像が得られた。
【0084】
(実施例13)
IPS方式の液晶セルを装着した液晶表示装置を用意し、出射光側の偏光板をはずして代わりに実施例11で作製した偏光板を塗工膜面が液晶セルの出射光側になるように液晶セルに貼り合わせた表示装置を作製した。表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても色表示が変わることなく、良好な画像が得られた。
【0085】
(比較例1)
実施例9で作製した積層光学補償フィルムを使用しないこと以外は実施例12と同様の操作を行った。その結果、斜め方向から見た際、液晶表示装置構成部材の複屈折により正面から見た時と色表示が異なっていた。
【0086】
(比較例2)
実施例11で作製した偏光板を使用せず、出射光側の偏光板をそのまま用いたこと以外は実施例13と同様の操作を行った。その結果、斜め方向から見た際、液晶表示装置構成部材の複屈折により正面から見た時と色表示が異なっていた。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【出願日】 平成18年10月25日(2006.10.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−106157(P2008−106157A)
【公開日】 平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願番号】 特願2006−290565(P2006−290565)