トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 多糖類微粒子及びその製造方法
【発明者】 【氏名】永岡 昭二

【氏名】伊原 博隆

【氏名】佐藤 賢

【氏名】石橋 崇正

【氏名】奥薗 一彦

【氏名】山本 哲也

【要約】 【課題】安価かつ簡便に製造可能であり、更に、粒径1μm未満のナノサイズオーダーの粒径を、任意に制御し得る多糖類微粒子及びその製造方法を提供する。

【解決手段】酸溶媒に対して多糖類を溶解させた多糖類溶液を、この多糖類溶液100体積部に対して100体積部以上とした分散媒としての二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩よりなる群より選んだ少なくとも一種とを含む水溶液、若しくは、二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液に滴下した後、該多糖類溶液と分散媒との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類を会合・析出させ、これにより、その粒径が1μm未満の任意の数値に制御可能となっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸溶媒(A)に対して多糖類(M)を溶解させた多糖類溶液(MAq)を、この多糖類溶液(MAq)100体積部に対して100体積部以上とした分散媒(DS)としての二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩よりなる群より選んだ少なくとも一種とを含む水溶液に滴下した後、該多糖類溶液(MAq)と分散媒(DS)との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類(M)を会合・析出させ、これにより、その粒径が1μm未満の任意の数値に制御可能となっていることを特徴とする多糖類微粒子。
【請求項2】
酸溶媒(A)に対して多糖類(M)を溶解させた多糖類溶液(MAq)を、この多糖類溶液(MAq)100体積部に対して100体積部以上とした分散媒(DS)としての二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液に滴下した後、該多糖類溶液(MAq)と分散媒(DS)との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類(M)を会合・析出させ、これにより、その粒径が1μm未満の任意の数値に制御可能となっていることを特徴とする多糖類微粒子。
【請求項3】
前記多糖類(M)は、該多糖類(M)をなすピラノース環の構造内にプラス電荷に帯電する官能基を備えるカチオン性多糖類である請求項1又は2記載の多糖類微粒子。
【請求項4】
前記酸溶媒(A)として塩酸を用いることで、そのpHが略中性となる多糖類塩酸塩とされる請求項1〜3の何れか一つに記載の多糖類微粒子。
【請求項5】
前記酸溶媒(A)をなす酸は、乳酸である請求項1〜3の何れか一つに記載の多糖類微粒子。
【請求項6】
前記酸溶媒(A)中における酸の存在量は、1〜30重量%の範囲に設定される請求項1〜5の何れか一つに記載の多糖類微粒子。
【請求項7】
前記多糖類(M)は、キトサンである請求項1〜6の何れか一つに記載の多糖類微粒子。
【請求項8】
多糖類(M)を酸溶媒(A)に投入・溶解させて多糖類溶液(MAq)とし、この多糖類溶液(MAq)100体積部に対して、100体積部以上とした分散媒(DS)としての二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩よりなる群より選んだ少なくとも一種とを含む水溶液に該多糖類溶液(MAq)を滴下し、前記多糖類溶液(MAq)と分散媒(DS)との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類(M)を会合・析出させることで、その粒径が1μm未満で、任意に制御された多糖類を製造するようにしたことを特徴とする多糖類微粒子の製造方法。
【請求項9】
多糖類(M)を酸溶媒(A)に投入・溶解させて多糖類溶液(MAq)とし、この多糖類溶液(MAq)100体積部に対して、100体積部以上とした分散媒(DS)としての二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液に該多糖類溶液(MAq)を滴下し、前記多糖類溶液(MAq)と分散媒(DS)との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類(M)を会合・析出させることで、その粒径が1μm未満で、任意に制御された多糖類を製造するようにしたことを特徴とする多糖類微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記多糖類(M)として、該多糖類(M)をなすピラノース環の構造内にプラス電荷に帯電する官能基を備えるカチオン性多糖類が使用される請求項8又は9記載の多糖類微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記分散媒(DS)に対する、前記多糖類溶液(MAq)の滴下は、1.0ml/秒以下で実施される請求項8〜10の何れか一つに記載の多糖類微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記酸溶媒(A)として塩酸が使用される請求項8〜11の何れか一つに記載の多糖類微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記酸溶媒(A)をなす酸として、乳酸が使用される請求項8〜11の何れか一つに記載の多糖類微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記水素イオンの除去と共に、酸溶媒(A)を構成する塩及び分散媒(DS)を構成する塩も併せて除去される請求項8〜13の何れか一つに記載の多糖類微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記水素イオン等の除去には、透析膜が使用される請求項8〜14の何れか一つに記載の多糖類微粒子の製造方法。
【請求項16】
前記多糖類(M)の酸溶媒(A)への溶解は、加熱によって達成され、かつ多糖類微粒子(10)の析出は冷却によって達成される請求項8〜15の何れか一つに記載の多糖類微粒子の製造方法。
【請求項17】
前記分散媒(DS)に対する、前記多糖類溶液(MAq)の滴下が、複数箇所で実施される請求項8〜16の何れか一つに記載の多糖類微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、医用材料及びケミカル分野の素材として有用である、キトサン等の多糖類からなる多糖類微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多数の単糖類がグリコシド結合することによって形成されている多糖類は、生体に不可欠な素材であり、また、自然界に多量に存在して枯渇することがなく、更には生分解性があるため、廃棄に伴う環境汚染問題の発生もないものである。
このような多糖類の一例として、化学的安定性が高いキチンを脱アセチル化して得られるキトサンが挙げられる。このキトサンは、キチンが有するアセチル基が、化学的に高い活性を備え、かつプラスに帯電しているアミノ基に置換されている。このためキトサンは、マイナスに帯電した、例えば、カルボキシル基等を有する物質と容易に結合する特性を備えている。一方、カルボキシル基は、各種細菌、ウィルス及びバクテリアの一部を構成する物質でもある。
【0003】
このためキトサンは、前述の各種細菌、ウィルス及びバクテリアを、アミノ基−カルボキシル基の結合によって分子内に取り込み、タンパク質化させて無害とし得る効果、すなわち、抗アレルギー性や抗菌性等の効果を示す。従って、医療分野では、創傷被覆剤や、歯磨き粉等のオーラルケア用途剤(ミュータンス連鎖状球菌に対する抗菌効果や、口腔粘膜の細胞活性効果があり、口中炎症、歯茎浮腫及び出血等に有効)等として好適に使用し得る。この他の多糖類についても、前述した高い生体適合性や廃棄容易性といった利点があるため、例えば、金属部品に対する洗浄剤用途、シリコンウエハー等に対する化学物理研磨洗浄剤用途、化粧品分野での粉体特性改良剤用途並びに塗料分野での増粘・分散・被膜形成剤用途に対する応用が期待されている。
【0004】
前述した用途、殊に化粧品の分野では、微粒子状の多糖類に対する要望が強い。多糖類として代表的なキトサンを微粒子化する場合、一般に、以下の方法でなされている。すなわち、キトサンを酸に溶解させて、これに界面活性剤及び有機溶媒を加えることで、所謂Water/Oilエマルジョンとし、更に、加熱蒸発やアルコール等の貧溶媒の使用による水分除去や、特定溶液混合による凝固によって微粒子化する方法である。
しかしながら、この方法の場合、(1)3μm未満、特に1μmレベルを下回る微粒子の製造は困難であり、また、(2)界面活性剤や有機溶媒といった、環境高負荷物質の使用が不回避であるため、環境低負荷が求められる今日の情勢にはそぐわない点に課題がある。
【0005】
この他にも、1)溶液状キトサンを凝固浴中に滴下し、凝固させることを特徴とする粒状キトサン製形態の製造方法(例えば、特許文献1参照)、2)低分子量キトサンを酸性水溶液に溶解し、該溶解液を塩基性溶液中に落下せしめて多孔質キトサンを凝固析出させることを特徴とする粒状多孔質キトサンの製造方法(例えば、特許文献2参照)、3)キトサンを酸性水溶液中に溶解して得た溶解液を塩基性溶液中で凝固再成し、生成した凝固物を洗浄後粉砕分散せしめ、該分散液を高温雰囲気中に加圧空気と共に吐出乾燥することを特徴とする超微小球状キトサンの製造方法(例えば、特許文献3参照)、4)キトサンの酸性水溶液を疎水性分散媒中に分散させ、攪拌下に水分を蒸発させることを特徴とする粒状多孔質キトサンの製造方法(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
しかしながら、これらの特許文献1〜4は、高価な試薬の使用や、煩雑な操作が必要とされ、安価かつ簡便な製造法とは言い難く、更なる製造効率の良い製造方法が求められているのが現状である。
【0006】
これに対して、簡便な製造方法として、例えば、キトサンの酸性水溶液に乳化剤を含む疎水性溶剤を加え、十分にかきまぜてエマルジョンを形成させ、次いでこのエマルジョンをアルカリ水溶液中にかきまぜながら注入して、キトサンを粉粒状に凝固析出させることを特徴とする微粒状多孔質キトサンの製造方法(例えば、特許文献5参照)が知られている。
しかしながら、この特許文献5には、形成される微粒状多孔質キトサン粒子の大きさとして、2〜300μmが製造できるとの記載があるが、実施例1では、13〜127μm(平均径約74μm)、実施例2では、5〜10μm、実施例3では、2.5〜22μm(平均径約12μm)、実施例4では、9〜85μmであり、実際上、平均径3μm未満となるキトサンを得ることは難しく、特に、ナノレベルの粒子径を発現するキトサンの製造は困難である点に課題がある。
【特許文献1】特開昭60−215003号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開昭61−040337号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開昭62−062827号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平1−301701号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開昭58−057401号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の技術に内包する課題及び現状等に鑑み、これらを好適に解決すべく提案されたものであって、安価かつ簡便に製造可能であり、更に、ナノサイズオーダーの粒径を、任意に制御し得る多糖類微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討した結果、下記の発明を完成するに至ったのである。
すなわち、前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
酸溶媒に対して多糖類を溶解させた多糖類溶液を、この多糖類溶液100体積部に対して100体積部以上とした分散媒としての二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩よりなる群より選んだ少なくとも一種とを含む水溶液に滴下した後、該多糖類溶液と分散媒との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類を会合・析出させ、これにより、その粒径が1μm未満の任意の数値に制御可能となっていることを要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、安価かつ簡便であり、かつ環境負荷を抑えると共に、多糖類粒子の微細化をなし得る。また、容易にその粒径を制御し得る。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項2に記載の発明は、
酸溶媒に対して多糖類を溶解させた多糖類溶液を、この多糖類溶液100体積部に対して100体積部以上とした分散媒としての二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液に滴下した後、該多糖類溶液と分散媒との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類を会合・析出させ、これにより、その粒径が1μm未満の任意の数値に制御可能となっていることを要旨とする。
【0011】
従って、請求項2に係る発明によれば、安価かつ簡便であり、かつ環境負荷を抑えると共に、多糖類粒子の微細化をなし得る。また、容易にその粒径を制御し得る。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記多糖類は、該多糖類をなすピラノース環の構造内にプラス電荷に帯電する官能基を備えるカチオン性多糖類であることを要旨とする。従って、請求項3に係る発明によれば、より利用性の高い多糖類微粒子が得られる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一つに記載の発明において、前記酸溶媒として塩酸を用いることで、そのpHが略中性となる多糖類塩酸塩とされることを要旨とする。従って、請求項4に係る発明によれば、多糖類微粒子の利用用途をより幅広くし得る。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一つに記載の発明において、前記酸溶媒をなす酸は、乳酸であることを要旨とする。従って、請求項5に係る発明によれば、より好適に多糖類粒子を微小化し得る。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一つに記載の発明において、前記酸溶媒中における酸の存在量は、1〜30重量%の範囲に設定されることを要旨とする。従って、請求項6に係る発明によれば、多糖類を好適に微小化し得る。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一つに記載の発明において、前記多糖類は、キトサンであることを要旨とする。従って、請求項7に係る発明によれば、多糖類微粒子の使用用途を拡げ得る。
【0017】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項8に記載の発明は、多糖類を酸溶媒に投入・溶解させて多糖類溶液とし、この多糖類溶液100体積部に対して、100体積部以上とした分散媒としての二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩よりなる群より選んだ少なくとも一種とを含む水溶液に該多糖類溶液を滴下し、前記多糖類溶液と分散媒との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類を会合・析出させることで、その粒径が1μm未満で、任意に制御された多糖類を製造するようにしたことを要旨とする。
【0018】
従って、請求項8に係る発明によれば、微細な多糖類粒子を安価かつ簡便であり、かつ環境負荷を抑えつつ製造し得る。また、容易にその粒径を制御し得る。
【0019】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項9に記載の発明は、多糖類を酸溶媒に投入・溶解させて多糖類溶液とし、この多糖類溶液100体積部に対して、100体積部以上とした分散媒としての二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液に該多糖類溶液を滴下し、前記多糖類溶液と分散媒との混合溶液から、少なくとも過剰な水素イオンを除去することで、該多糖類を会合・析出させることで、その粒径が1μm未満で、任意に制御された多糖類を製造するようにしたことを要旨とする。
【0020】
従って、請求項9に係る発明によれば、微細な多糖類粒子を安価かつ簡便であり、かつ環境負荷を抑えつつ製造し得る。また、容易にその粒径を制御し得る。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9記載の発明において、前記多糖類として、該多糖類をなすピラノース環の構造内にプラス電荷に帯電する官能基を備えるカチオン性多糖類が使用されることを要旨とする。従って、請求項10に係る発明によれば、より利用性の高い多糖類微粒子を製造し得る。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項8〜10の何れか一つに記載の発明において、前記分散媒に対する、前記多糖類溶液の滴下は、1.0ml/秒以下で実施されることを要旨とする。従って、請求項11に係る発明によれば、より好適に多糖類の微小化を達成し得る。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項8〜11の何れか一つに記載の発明において、前記酸溶媒として塩酸が使用されることを要旨とする。従って、請求項12に係る発明によれば、より利用用途が幅広い多糖類微粒子を製造し得る。
【0024】
請求項13に記載の発明は、請求項8〜11の何れか一つに記載の発明において、前記酸溶媒をなす酸として、乳酸が使用されることを要旨とする。従って、請求項13に係る発明によれば、多糖類微粒子をより好適に製造し得る。
【0025】
請求項14に記載の発明は、請求項8〜13の何れか一つに記載の発明において、前記水素イオンの除去と共に、酸溶媒を構成する塩及び分散媒を構成する塩も併せて除去されることを要旨とする。従って、請求項14に係る発明によれば、多糖類微粒子の析出をより好適に実施し得る。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項8〜14の何れか一つに記載の発明において、前記水素イオン等の除去には、透析膜が使用されることを要旨とする。従って、請求項15に係る発明によれば、多糖類微粒子をより好適に製造し得ると共に、その析出もより好適になし得る。
【0027】
請求項16に記載の発明は、請求項8〜15の何れか一つに記載の発明において、前記多糖類の酸溶媒への溶解は、加熱によって達成され、かつ多糖類微粒子の析出は冷却によって達成されることを要旨とする。従って、請求項16に係る発明によれば、より多様な多糖類を好適に微細化し得る。
【0028】
請求項17に記載の発明は、請求項8〜16の何れか一つに記載の発明において、前記分散媒に対する、前記多糖類溶液の滴下が、複数箇所で実施されることを要旨とする。従って、請求項17に係る発明によれば、効率的に多糖類の微小化を達成し得る。
【発明の効果】
【0029】
以上に説明した如く、本発明に係る多糖類微粒子及びその製造方法によれば、安価かつ単純に、ナノサイズオーダーの微小な多糖類微粒子を、その粒径を制御しつつ製造し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明に係る多糖類微粒子につき、その製造方法と共に、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら、以下に詳述する。
本発明は、キトサン等の多糖類を、酸溶媒によって溶解(会合が解かれた状態)させて得た多糖類溶液を、所要量以上とされた特定の分散媒に対して、所要の速度以下となるように滴下し、更に該多糖類溶液と分散媒との混合溶液から、該多糖類の溶解を達成し、系内に過剰に存在する水素イオンを除去することで、その粒径が1μm未満で、かつ任意の数値に制御可能とした多糖類微粒子であることを特徴とするものでものである。
なお、本発明において使用される「多糖類」は、その重量平均分子量(以下、単に「平均分子量」という)によって会合をなした場合の粒径が、該平均分子量の増加に伴って大きくなると考えられる。そこで、本発明においては、その平均分子量が600,000以下、好ましくは、平均分子量が400,000以下程度の多糖類、更に好ましくは、平均分子量が60,000〜400,000を使用することが望ましい。
【0031】
また、本発明で使用する分散媒としては、二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩よりなる群より選んだ少なくとも一種とを含む水溶液、若しくは、二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液を使用することで、その粒径が1μm未満となるナノ(nm)オーダレベルとされた多糖類微粒子であることを特徴とするものである。
なお、以下に説明する実施形態(実施例を含む)において、多糖類としてその有用性が高く、かつ該多糖類をなすピラノース環の構造内にプラス電荷に帯電する官能基を備えるカチオン性多糖類であるキトサンを使用した例を用いて説明する。ここで、多糖類としては、前述のカチオン性以外にアニオン性多糖類や、ノニオン性多糖類が存在するが、これらの電荷的性質や、これに関係なく結合し得る物質を多糖類を溶かし得る酸性溶媒由来の塩や、分散媒由来の塩として採用することで、同様の機構による、多糖類の微粒子化は可能である。
また、本発明において「滴下」とは、制御された速度によって、徐々に供給することを意味している。
【0032】
本発明において、多糖類微粒子の製造工程は、図1に示す如く、該多糖類微粒子の原料となる多糖類と特定の酸溶媒とを混合・溶解させて多糖類溶液を得る溶解工程S1と、多糖類溶液を所定の速度範囲で、所定量以上の特定の分散媒に滴下して、sea−island効果(詳細は後述する段落0037、以下同様)を発現させ、会合状態となった際に所要粒径の多糖類微粒子を形成するだけの量となるように、会合が解かれた状態の多糖類を区分して粒子化する滴下工程S2と、該多糖類溶液と分散媒との混合溶液から、少なくとも系内に存在し、該多糖類の溶解をなしている過剰な水素イオン(カチオン性多糖類の場合、該カチオン性基に対して過剰となっている水素イオン)を除去して、該滴下工程S2で得るべき多糖類微粒子の粒径に対応して、例えば、球状に区分された多糖類を会合状態する析出工程S3とから基本的に構成される。
【0033】
前記溶解工程S1は、図2に示す如く、前記多糖類M及び酸溶媒Aを混合して充分に攪拌することで、該多糖類Mを溶解させて多糖類微粒子を形成する基となる多糖類溶液MAqとする工程である。この溶解工程S1の実施によって、会合状態にあったキトサン〔図2(a)参照〕は、該キトサンをなす分子(以下、単に「分子」という)内及び分子間の水素結合による会合が解かれた状態、すなわち、溶解状態〔図2(b)参照〕とされる。
なお、本工程S1については、室温での溶解が困難な場合には、適宜、キトサンが溶解する程度の温度まで加熱すればよい。また、キトサンを溶解させた後、不溶解分については濾過等の任意の手段で除去してもよい。なお、図2(a)及び(b)中において破線は、水素結合を表している。
【0034】
前記多糖類Mとして、本実施形態では、キトサンを使用しているが、キトサンの他、キチン、セルロース及びプルラン(でんぷん)等の、多数の単糖類がグリコシド結合することによって生じる高分子化合物である一般的な多糖類Mが使用可能である。従って、本発明では、キトサン以外の上記各微粒子も製造可能である。ここで、キトサン等の多糖類の濃度は、特に限定されないが、通常、ハンドリング等の点から、0.1〜30重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.5〜10重量%が望ましい。
【0035】
前記酸溶媒Aとしては、例えば、酢酸、蟻酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸または安息香酸等の水溶性有機酸や、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられ、例えば、多糖類Mがキトサンの場合には、アニン性基を分子内に一個もった有機酸、或いは塩酸または硝酸等の一価アニオンの無機酸が、単独または2種以上組み合わせて適宜使用される。
これらの酸は水溶液として使用されるため、例えば、乳酸等のようにその性状が固体の場合には、水等の溶媒に溶解させることで使用される。また、sea−island効果をより効率的に発現させるため、好ましい酸としては、その溶液とした際に粘性を発現する乳酸等の使用が好ましい。
また、前記酸溶媒Aについては、その濃度は特に限定されない。しかし、前述(段落0033)の如く、混合される多糖類Mの水酸基等に由来する分子内及び分子間の水素結合を阻害して、キトサンを溶解させる程度の水素イオンの供給が可能とされる、通常で、0.1〜30重量%、好ましくは、0.5〜10重量%の範囲内が望ましい。また、酸溶媒Aの選択は、多糖類Mの溶解及び析出(会合)に大きな影響を与えるが、詳細は後述(段落0045)する。
【0036】
前記滴下工程S2は、図3及び図4に示す如く、前記多糖類溶液MAqを制御下に分散媒DSに滴下することで、混合溶液としつつsea−island効果を発現させ、これにより該分散媒DS中に会合状態となった際に所要粒径の多糖類微粒子10を形成するだけの量とし得るように、会合が解かれた状態となっている多糖類Mを所要量毎に分散させる工程である。
具体的には、滴下工程S2は、分散媒DS内に多糖類溶液MAqを滴下して〔図3(a)参照〕、これを該分散媒DS内で微小液滴とする滴下段階S21〔図3(b)参照〕と、多糖類溶液MAqの全量を分散媒DSに滴下して、該分散媒DS内に存在する該多糖類溶液MAqの微小液滴の合一によって、所要の大きさとする合一段階S22とからなる〔図3(a)及び(b)参照〕。
【0037】
ここで、本発明における「sea−island効果」とは、一方が多量成分であり、他方が少量成分である二成分系が存在する場合、多量成分間中に存在する少量成分〔図3(a)参照〕は、該多量成分が連続相に移行しようとする力を駆動力として、徐々に小さな塊に分かれて小さくなろうとする〔図3(b)参照〕現象である。
従って、充分に多量にある分散媒DSに対して、少量の多糖類溶液MAqを加えれば、該多糖類溶液MAqがこの効果によって、自律的により小さな塊へと変化し続けることになる。そして分散媒DS及び糖類溶液MAqの夫々の総量の比率や、粘度その他諸物性によって決定される最小の大きさに至ることになる。
【0038】
本発明において、上記sea−island効果を好適になすために、前記分散媒DSへの多糖類溶液MAqの滴下は、好ましくは、1.0ml/秒以下、更に好ましくは、0.5ml/秒以下、特に好ましくは、0.2ml/秒以下に設定することが望ましい。
この値が1.0ml/秒を超えると、前記多糖類溶液MAqが滴下される分散媒DSの局所部位において、該多糖類溶液MAqが大量に存在する状態となって、sea−island効果の好適に発現しなくなってしまう。そしてこのsea−island効果の発現によって、前記滴下段階S21が進行・完了する。
前記分散媒DSの量は、前記多糖類溶液MAqの全量の滴下が完了するまで、前述のsea−island効果を継続的に発現させるため、該多糖類溶液MAq100体積部に対して、100体積部以上、好ましくは400体積部以上、更に好ましくは700体積部以上、特に好ましくは800〜1,500体積部に設定されている。この数値が100体積部未満であると、前記多糖類溶液MAqの分散媒DS内での存在量が、該多糖類溶液MAqの滴下進行に伴って増大して、該多糖類溶液MAqの好適な微小液滴化が困難となり、多糖類微粒子における1μm未満の粒径が達成困難となってしまう。
なお、本発明において、滴下の実施形態については、特に制限されるものではなく、製造の効率化を図る目的で、複数箇所での滴下も有効、例えば、1箇所での滴下の速度を0.5ml/秒
の場合では、10〜1,000箇所での滴下も有効であり、上記sea−island効果を好適になすことができるように、上記滴下の流速(1.0ml/秒以下)と、滴下箇所の数とを適宜調整して好適に実施することができる。また、噴霧状の該多糖類溶液MAqを分散媒DSに投入する方式も可能である。
【0039】
滴下工程S2における合一段階S22は、その全量が分散媒DS内に存在している多糖類溶液MAqの微小液滴が、互いに衝突し合って合一することにより、その大きさを増大させる段階である。
この段階S22で最終的に到達する前記多糖類溶液MAqの液滴の大きさは、基本的にsea−island効果によって微小化しようとする力と、前記分散媒DS内に存在する量によって変動する衝突回数との平衡によって決定される。これは、前記分散媒DSに対して滴下する多糖類溶液MAqの量と、該多糖類溶液MAqの該分散媒DS内での液滴の大きさとは比例すること、すなわち、該分散媒DSに滴下する多糖類溶液MAqの総量によって、得られる多糖類微粒子の大きさを制御し得ることを意味する。
【0040】
この滴下工程S2で使用される分散媒DSとしては、(a)二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩よりなる群より選んだ少なくとも一種とを含む水溶液、若しくは、(b)二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液が使用される。そして、これらは、夫々多糖類溶液MAqへ与える作用が異なるため、以下に分説する。また、この理解に資するため、多糖類としてキトサンを使用した場合の溶解及び析出(会合)について説明する。
キトサンは、基本的に単糖類であるグルコサミンが、グリコシド結合によって連続した高分子であり、最小単位である該グルコサミン中には水酸基とアミノ基とが存在している。そして(1)水酸基のO(δ−)とH(δ+)との分極による水素結合と、(2)プラスに荷電したアミノ基同士の、アニオンを介したイオン結合とによって、分子内及び/または分子間の会合状態(度合い)が決定されている。そして、その会合の度合いが一定値以上(大きい)となると、水に対して不溶化して析出し、一定値未満(小さい)となると、水に対して溶解することになる。ここで複数のアミノ基を結合させるためには、少なくとも電荷が−2以上となるアニオン、例えば、硫酸イオン等の二価以上のアニオンの介在が必要となる。
【0041】
つまり、二価以上のアニオンが存在する分散媒DSに多糖類溶液MAqを滴下すると、一つの作用として、基本的に水素結合を阻害してキトサンの会合度合いを低下させていた酸溶媒A由来の水素イオン量が、分散による希釈とアニオンとの結合にともない減少することで該水素結合が回復して、その結果、該会合度合いが大きくなり、キトサンが析出する。その作用に加え、更に、二価以上のアニオンが複数のアミノ基の間に存在し、該アミノ基を介して多価アニオンのコンプレックスが生成されるため、よりキトサンの会合度合いが大きくなる。
【0042】
このように、二価以上のアニオンの水溶液を分散媒として使用する場合、会合度合いを大きくする複数の作用が働くために粒子の大きさ(粒径)が増大する傾向にあり、ナノサイズオーダー微粒子の製造を試みようとすると、sea−island効果を最大限に発現させる必要があり、該分散媒DSに滴下する多糖類溶液MAqの滴下総量及び滴下速度が制限されることとなる。
【0043】
この際、(a)二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、よりなる群より選んだ少なくとも一種を含む水溶液、例えば、硫酸、リン酸、ホウ酸のマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種を含む水溶液を分散媒DSとして使用した場合は、マグネシウムイオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオンのキレート作用によりキトサン分子間の会合度合い(機会)が調節されるため、前述の多糖類溶液MAqの滴下総量及び滴下速度の制限が緩やかとなる。
上記(a)における二価以上のアニオンのマグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩等の水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常、粒子の生成率とコストの点から、0.1〜5重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.2〜3重量%が望ましい。
【0044】
また、(b)上記二価以上のアニオンの金属塩の少なくとも一種と塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種とを含む水溶液を分散媒DSとして使用した場合は、共存する塩化物イオンが1つのアミノ基のみ結合し、アミノ基を介した多価アニオンのコンプレックス生成が調節されるため、前述の多糖類溶液MAqの滴下総量及び滴下速度の制限が緩やかとなる。
上記二価以上のアニオンの金属塩としては、例えば、硫酸、リン酸、ホウ酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、マグネシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種が挙げられる。また、塩化物イオンの金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化銀などの塩化物イオンの金属塩の少なくとも一種が挙げられる。
【0045】
上記(b)における二価以上のアニオンの金属塩及び塩化物イオンの金属塩の水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常、粒子の生成率とコストの点から、二価以上のアニオンの金属塩で0.1〜5重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.2〜3重量%が望ましく、また、塩化物イオンの金属塩で0.05〜10重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.1〜3重量%が望ましい。
【0046】
また、前述の如く、そのアニオンの価数が多糖類微粒子の粒径に大きな影響を与えるのと同様に、先の溶解工程S1で使用される酸溶媒Aの種類も、多糖類Mの析出に殊に大きな影響を及ぼしている。すなわち、酸溶媒Aとして、例えば、二価のアニオンである硫酸イオンを備える硫酸を使用する場合、多糖類Mを混合しても全く溶解しないと考えられる。
これは、水素イオンによる水素結合の阻害に由来する会合状態の解除によって発現する溶解量よりも、複数のアミノ基とのコンプクレックス生成に由来して発現する会合量の方が大きいためである。このようにより微細な多糖類微粒子の製造を考える場合、一価のアニオンの酸や金属塩の使用が好ましい。なお、前述の酸におけるアニオンの価数については、その数字だけでなく、酸解離定数(pKa)も重要な指標となる。具体的に、pKaが低い硫酸の如き無機酸の場合は、前述の如く、酸溶媒Aとしての使用に向かない。これに対して、同じ無機酸であっても炭酸またはリン酸や、各種有機酸等のpKaの高い物質は採用可能である。
【0047】
本発明において、前記析出工程S3は、混合溶液中に存在し、キトサンの会合を阻害する要因となっている、水素イオン或いは水素イオン及びアニオン(以下、「会合阻害物質」という)を除去し、該キトサンを会合・析出させる工程である。
本析出工程S3は、混合溶液中から会合阻害物質を除去し得る方法であれば、公知の如何なる方法でも採用可能である。しかし、混合溶液中から会合阻害物質を除去するまでは、キトサンの会合、すなわち、析出は完全ではないため、その粒径が変動してしまう虞がある。
【0048】
従って、物理的な力を加える、例えば、濾過またはデカンテーションや、sea−island効果に影響を及ぼす混合溶液からの水分等、特定成分だけの除去は好ましくない。そのため、前記会合阻害物質だけを除去可能な、透析膜等の使用が好適である。また余りにその透析速度が大きな場合には、キトサンの会合に影響を与える各物質の移動させる駆動力となってしまうため、その速度も1.0ml/秒以下、好ましくは、0.5ml/秒以下、特に好ましくは、0.2ml/秒以下であることが好ましい。なお、下限値は、透析膜を使用の場合は、0.05ml/秒以上である。
【0049】
このように構成される本発明における多糖類微粒子及びその製造方法では、(1)sea−island効果、及び(2)多価アニオンが介する会合へのマグネシウムイオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオンのキレート作用、若しくは、塩化物イオンの作用によって、多糖類微粒子の微粒子化(平均粒径1μm未満のナノサイズオーダー)を可能とし、(3)最終的に多糖類Mの会合状態を制御することで、方法的な観点から多糖類微粒子の微粒子化及び粒径制御を可能としている。
【0050】
また、本実施形態のように、多糖類Mとしてキトサンを使用する場合、その会合度合いを決定する1つの要因であるアミノ基へのアニオンの結合は、該キトサンの高い化学的活性を阻害してしまう。従って、キトサンの使用時において前記アミノ基からアニオンが解離していることが望まれる。このため前記酸溶媒Aとしては、アニオンが塩化物イオンであると共に、pKaの高い塩酸等を使用することが好ましい。
【0051】
また、このように塩素等のハロゲン化物を用いる場合、その使用時においてはアミノ基と塩素との電離生成物であるアンモニウムイオンとハロゲン化物(塩素)イオンとが中和して、電荷的に中性になる。このため、これまで同様の使用において酸性を呈していたキトサン(溶液)に比較して、その使用用途を格段に拡げることが可能となっている。
【実施例】
【0052】
次に、本発明に係る多糖類微粒子についての試験例(実施例及び比較例)を示して、本発明を更に詳述する。
なお、全試験例とも、溶解工程S1において、多糖類溶液としては、多糖類としてキトサンを、酸溶媒として乳酸水溶液(濃度4.4重量%)を夫々採用して混合攪拌して得た、濃度5.0重量%のキトサン乳酸水溶液を使用した。また、析出工程S3においては、透析膜を使用した塩析法によって過剰な混合溶液中の水素イオン及び分散媒に係る塩を除去している。
【0053】
(試験例1:実施例1〜2及び比較例1)
分散媒の二価以上のアニオンの金属塩の種類と、得られる多糖類微粒子の粒径との関係について、前記多糖類溶液を使用し、分散媒として濃度0.5重量%の下記表1に記載した実施例1、2及び比較例1に係わる硫酸ナトリウム、硫酸鉄、硫酸マグネシウム水溶液を液温を40℃まで加熱して使用し、160mlの分散媒に対して総量40mlの該多糖類溶液を、速度0.2ml/秒で滴下した。その後、水溶液を5℃まで急冷すると共に、前述の塩析(速度0.1ml/秒)を実施して多糖類微粒子を得た。
そして、得られた多糖類微粒子の粒径を、顕微鏡法(ハイロックス社製マイクロスコープ)によって測定した。この結果を下記表1に示す。
【0054】
【表1】


【0055】
上記表1の結果から明らかなように、多糖類微粒子は、分散媒に使用する二価以上のアニオンの金属塩の種類、すなわち、マグネシウム塩、鉄塩を選定した場合に、粒径が1μm未満のナノサイズオーダーまで小さくなることが確認された。
【0056】
(試験例2:実施例3〜5)
分散媒への塩化物イオンの金属塩の併用と、得られる多糖類微粒子の粒径との関係について、前記多糖類溶液を使用し、分散媒として前記試験例1と同種類・同濃度の硫酸塩と濃度2.5重量%となるように調整した塩化ナトリウムとを含む金属塩水溶液を夫々使用することで得た混合溶液から、上記試験例1に準じた条件下で、実施例3〜5に係る多糖類微粒子を作製した。
そして、得られた多糖類微粒子の粒径を、顕微鏡法(ハイロックス社製マイクロスコープ)によって測定した。これらの結果を下記表2に示す。
【0057】
【表2】


【0058】
上記表2の結果から明らかなように、多糖類微粒子は分散媒に二価以上のアニオンの金属塩と塩化物イオンの金属塩を併用した場合に、粒径が、特にナノサイズオーダーまで小さくなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、工業的観点(量、質、コスト)から安定した粒径が1μm未満のナノサイズオーダーまで小さくなる多糖微粒子の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の好適な実施例に係る多糖類微粒子の製造工程を示す工程図である。
【図2】実施例に係る溶解工程S1を示す状態図である。
【図3】実施例に係る滴下工程S2における滴下段階S21(sea−island効果)を示す状態図である。
【図4】実施例に係る滴下工程S2における合一段階S22を示す状態図である。
【符号の説明】
【0061】
10 多糖類微粒子
A 酸溶媒
M 多糖類
MAq 多糖類溶液
DS 分散媒
【出願人】 【識別番号】505145127
【氏名又は名称】永岡 昭二
【識別番号】000117858
【氏名又は名称】伊原 博隆
【識別番号】506350252
【氏名又は名称】西日本長瀬株式会社
【識別番号】000208787
【氏名又は名称】第一製網株式会社
【出願日】 平成18年10月18日(2006.10.18)
【代理人】 【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介

【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義

【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂

【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介


【公開番号】 特開2008−101080(P2008−101080A)
【公開日】 平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願番号】 特願2006−283751(P2006−283751)