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【発明の名称】 放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法
【発明者】 【氏名】大阿久 亮平

【氏名】長澤 尚胤

【氏名】八木 敏明

【氏名】玉田 正男

【要約】 【課題】低濃度のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を使用し、かつ低照射線量によってCMCハイドロゲルを安価に製造することにある。

【解決手段】5重量部以下の低濃度のCMCと塩化カルシウムなどの金属塩との水溶液に、3kGy以上のγ線を照射し、CMCをゲル化させ、得られたゲルを水に浸漬させて金属塩を離脱させ、ハイドロゲルを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩とカルボキシメチル化されている多糖類の低濃度水溶液に、放射線を照射し、該多糖類に放射線橋かけを生じさせゲル化した後、該ゲルを水に浸漬させて金属塩を脱離させ、ハイドロゲルを得ることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法において、前記カルボキシル化されている多糖類が、5重量部以下のカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法において、前記金属塩が塩化カルシウムであることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法において、前記放射線がγ線であり、その放射線の照射線量が3kGy以上であることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【請求項5】
5重量部以下の低濃度のカルボキシメチルセルロースと金属塩との水溶液に、3kGy以上のγ線を照射し、該カルボキシメチルセルロースをゲル化させ、該ゲルを水に浸漬させて金属塩を離脱させ、ハイドロゲルを得ることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法において、前記金属塩が塩化カルシウムであることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法において、前記金属塩が塩化カリウムであることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法において、前記金属塩が塩化ナトリウムであることを特徴とする放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射によってカルボキシメチルセルロース(CMC)をゲル化させる、放射線橋かけ型CMCハイドロゲル(以下、単にCMCハイドロゲルという。)の製造方法に関する。本発明は、特に、CMCのゲル化に要する放射線照射線量が極めて少なくて済むCMCハイドロゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMCは、現在最も一般的に使用されている水溶性高分子である。CMC水溶液にγ線などの放射線を照射し、CMCの分子同士を橋かけさせることで、セルロースの分子が三次元の網目構造をとり、この網目構造の内部に水をしっかり捉えたゲルが得られることが知られている。このようにして得られたゲルは、環境保全型の安全性の高いゲルであるため、食品、医薬品、保水材等に幅広く使用されている。
【0003】
このように、CMC水溶液にγ線などの放射線照射を行いCMCハイドロゲルに調製する方法が、例えば、特開2001−2703号公報に開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−2703
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の図1及び図3から明らかなように、一般的にCMC濃度が高くなるにつれて、またγ線の照射線量が大きくなるにつれて、ゲル分率は増加し、膨潤度は低下する。したがって、上述のような従来方法では、多量のCMCハイドロゲルを得ようとする場合には、多量のCMCを使用する必要があり、さらにはγ線の照射線量を大きくする必要があり、製造コストが高いという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、低濃度のCMC水溶液などの低濃度の多糖類水溶液を使用し、かつ低照射線量によって多糖類ハイドロゲルを安価に製造することができるハイドロゲルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基本的には、5重量部以下という低濃度の多糖類水溶液に塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加し、多糖類の分子鎖間距離を縮めておいて、電離性放射線を照射して放射線橋かけさせることにある。本発明では、金属イオンの作用によって、分子鎖間距離を縮めることにより、従来例よりも低照射線量で多糖類の橋かけを行わせることができる。
【0008】
本発明のより具体的かつ好適なゲルの製造方法は、金属塩とカルボキシメチル化されている多糖類の低濃度水溶液に、電離性放射線を照射し、該多糖類に放射線橋かけを生じさせゲル化した後、該ゲルを水に浸漬させて金属塩を脱離させ、放射線橋かけ型ハイドロゲルを得るものである。
【0009】
CMC水溶液に限らず、カルボキシメチル化されている多糖類(CM−キチン、CM−キトサン、CM−デンプン)水溶液に金属塩を添加してもゲル化が促進されるが、カルボキシメチル化されている低濃度の多糖類は、5重量部以下のカルボキシメチルセルロースであることが最も好適である。
【0010】
また、ゲルの生成効率を高めるためには、金属塩が塩化カルシウムであることが好ましいが、塩化カリウムや塩化ナトリウムであっても良い。価数が大きい金属塩ほど低金属塩濃度でゲル化しやすい傾向があるが、3価の金属塩は物理ゲルを生成しやすくゲル化の制御が困難である。2価の金属塩、特に塩化カルシウムがゲル化の制御に適している。
【0011】
さらに、上述の製造方法において使用される放射線はγ線であり、その放射線の照射線量は3kGy以上であることが好ましい。しかし、γ線以外でも、橋かけを生じさせるエネルギーを与えられる放射線、例えば、電子線などを使用しても良い。
【0012】
さらに、より一層好適な製造方法においては、5重量部以下の低濃度のカルボキシメチルセルロースと、塩化カルシウム、塩化カリウム又は塩化ナトリウムの金属塩との水溶液に、3kGy以上のγ線を照射し、該カルボキシメチルセルロースをゲル化させ、該ゲルを水に浸漬させて金属塩を離脱させ、ハイドロゲルを得るようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、30kGyとか40kGyという高照射線量を与えても十分なゲル分率が得られなかった、5重量部以下という低濃度の多糖類であっても、金属塩を添加することによって多糖類の分子鎖間距離を縮めることによって、低照射線量を与えるだけで大きなゲル分率を得ることができる。すなわち、多糖類の使用量が少なくて済み、電離性放射線の照射線量も低くて済むので、ゲルの製造コストを大幅に低下できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法について詳細に説明する。なお、これらの実験は、いずれも大気圧下で室温にて行なわれた。
初めに、本発明の理解を助けるために、図1を参照して、本発明の原理について説明する。図1は、本発明の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法の概略構成を示すフローチャートである。図1では、塩化カルシウム、CMCなどの具体的物質やその濃度を揚げて説明しているが、これは単なる一例であって、後述されるようにこれらの物質やその濃度に限定されるものではない。
【0015】
最初に、金属イオンを作るため、塩化カルシウムの粉末を準備する(ステップ101)。この塩化カルシウム粉末に超純水を加え、マグネチックスターラーなどの攪拌器によって混合し、均一な1重量部塩化カルシウム水溶液を調製する(ステップ102)。その後、調製された1重量部塩化カルシウム水溶液にCMC2.2(ここで、2.2は置換度を示す。)を加えて攪拌し、5重量部CMC2.2と1重量部塩化カルシウムを含む水溶液を調製する(ステップ103)。この水溶液に適量のγ線を照射してCMCに放射線橋かけを生じさせてゲル化する(ステップ104)。最後に、調製されたゲルを水に浸漬させ、ゾル分と金属塩を溶出させ、金属イオンを含まないCMCハイドロゲルを得る(ステップ105)。以上の実施例では、塩化カルシウム水溶液を調製し、その水溶液にCMC2.2を加えているが、この手順は逆であっても大きな問題はない。また、最終ステップにおいて、ゾル分と金属塩を溶出させるために水に浸漬させる時間は、添加する金属イオンによっても異なるが、ほぼ48時間程度で十分である。
【0016】
このようにして調製された本発明によるハイドロゲルは、従来のCMC水溶液に金属塩を添加したCM基と金属イオンとの相互作用型物理ゲルとは異なり、調製したゲルに有害な金属イオンを含まないという特徴がある。また、金属塩を添加する効果により、CMC濃度が低く、電離性放射線の照射線量が僅かであってもCMCをゲル化することが可能になった。
【0017】
これらの特徴を図2を用いてより具体的に説明する。図2は、従来技術と本発明によるゲル分率の相違を示すグラフである。各グラフは、CMC濃度の相違を示し、グラフの横軸は放射線の照射線量(kGy)を、縦軸はゲル分率(%)を示している。点線のグラフは従来技術を説明するためのものであり、実線は本発明を説明するためのものである。まず左下のグラフから明らかなように、金属塩を添加しない従来技術においては、5重量部の低濃度のCMC2.2では、照射する放射線量が30kGyに達して初めてゲル化が始まり、40kGyを照射してもゲル分率は30%程度が限度である。また、中央のグラフから、CMC濃度を40重量部に上げても80%以上のゲル分率を得るためには、20kGy以上の放射線を照射する必要があることがわかる。これに対して、金属塩を添加する本発明の製造方法によれば、5重量部の低濃度のCMC2.2であっても、照射線量3kGy程度からゲル化が始まり、照射線量が5kGyで、ゲル分率が80%に達することがわかる。
【0018】
以下に、本発明の放射線橋かけ型ハイドロゲルの製造方法に関し、本発明者等が行った幾つかの実施例について説明する。なお、以下の実施例において使用された原料のCMCは、いずれもダイセル化学工業(株)製のものであり、その詳細は次の通りである。
CMC A:1重量部水溶液の25℃の粘度142 (mPa・s) 置換度2.2
CMC B:1重量部水溶液の25℃の粘度1610(mPa・s) 置換度0.65
CMC C:1重量部水溶液の25℃の粘度126 (mPa・s) 置換度0.89
CMC D:1重量部水溶液の25℃の粘度387 (mPa・s) 置換度0.95
CMC E:1重量部水溶液の25℃の粘度1728(mPa・s) 置換度0.95
CMC F:1重量部水溶液の25℃の粘度1640(mPa・s) 置換度1.34
CMC G:1重量部水溶液の25℃の粘度3410(mPa・s) 置換度1.1
CMC H:1重量部水溶液の25℃の粘度5710(mPa・s) 置換度0.86
実施例1(CMC水溶液のゲル分率及び膨潤度に対する塩化カルシウム濃度依存性)
【0019】
塩化カルシウムに超純水100重量部を加えて塩濃度0.001〜1重量部(0.000068〜0.068mol/L)になるようにした金属塩水溶液に、5重量部のCMC Aを加えて金属塩添加のCMC水溶液とした。このサンプルにγ線20kGyを照射し、その後照射サンプルを超純水に浸漬させてゾルと金属塩成分を脱離させ、かつ膨潤させた。
【0020】
その結果を図3及び図4に示す。図3はCMC水溶液中の塩化カルシウム濃度とゲル分率の関係を示す。図3において、横軸は塩化カルシウム濃度(mol/L)を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。図3からわかるように、塩化カルシウム濃度が0.01重量部(0.00068mol/L)から1重量部(0.068mol/L)に増加するにつれて、ゲル分率は約20%から99%に上昇した。また、図4はCMC水溶液中の塩化カルシウム濃度と膨潤度の関係を示す。添加する塩化カルシウムの濃度によるが、乾燥ゲル1gの膨潤度は約90から7,000となった。
実施例2(CMC/CaCl水溶液のゲル分率及び膨潤度に対する線量依存性)
【0021】
塩化カルシウムに超純水100重量部を加えて塩濃度が1重量部(0.068mol/L)になるようにした金属塩水溶液に、5重量部のCMC Aを加えて金属塩添加のCMC水溶液とした。このサンプルにγ線0〜40kGyを照射し、その後照射サンプルを超純水に浸漬させてゾルと金属塩成分を脱離させ、且つ膨潤させた。
【0022】
その測定結果を図5及び図6に示す。図5はCMC/塩化カルシウム水溶液の線量とゲル分率の関係を示す。図5の横軸は線量(kGy)を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。この例では、3kGyからゲル化し始め5kGyで80%のゲル分率に達した。また、図6はCMC/塩化カルシウム水溶液の線量と膨潤度の関係を示す。図6の横軸は線量(kGy)を示し、縦軸は膨潤度を示す。この例では、乾燥ゲル1gの膨潤度は、約45から2500であった。
実施例3(CMCのゲル分率に対する置換度及び分子量の影響)
【0023】
(1)置換度(DS=Degree of Substitution)の影響
100重量部の水にCMC B、E、Fを5重量部加えてCMC水溶液としたサンプル1と、1重量部塩化カルシウム(=0.068mol/L)に100重量部の水を加えて金属塩水溶液とし、さらにCMCを加えて金属塩添加のCMC水溶液としたサンプル2にγ線20kGy照射した。その後、照射サンプルを超純水に浸漬させてゾルと金属塩成分を脱離させた。
図7にCMCの置換度とゲル分率の関係を示す。図7の横軸は置換度を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。この例では、置換度が1.34からゲル化が始まり、金属塩添加の効果が認められた。
【0024】
(2)分子量(絶対粘度=AV=Absolute Viscosity)の影響
100重量部の水にCMC C、D、E、G、Hを5重量部加えてCMC水溶液としたサンプル1と、1重量部塩化カルシウム(=0.068mol/L)に水100重量部加えて金属塩水溶液とし、さらにCMCを加えて金属塩添加のCMC水溶液としたサンプル2にγ線20kGy照射した。その後、照射サンプルを超純水に浸漬させてゾルと金属塩成分を脱離させた。
【0025】
図8にCMC水溶液の絶対粘度とゲル分率の関係を示す。図8の横軸は絶対粘度(mPa・s)を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。金属塩が添加されたサンプル2では、絶対粘度3410mPa・s以上の金属塩添加のCMC水溶液でゲル化が起こり始めた。しかし、金属塩無添加サンプル1ではゲル化は確認できなかった。
【0026】
以上の(1)及び(2)結果から、置換度は1以上、分子量は絶対粘度で約3410以上のCMCが金属塩添加のCMC水溶液の放射線橋かけに好ましいことがわかった。
実施例4(CMC水溶液のゲル分率及び膨潤度に対する種々の金属塩濃度依存性)
【0027】
塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムに100重量部の水を加えて金属塩濃度が0.01〜1重量部(0.0000267〜0.073mol/L)となるようにした金属塩水溶液に5重量部のCMC Aを加え5、10、20、40kGyのγ線を照射した。
【0028】
図9にCMC水溶液中の種々の金属塩濃度とゲル分率の関係を示す。図9の横軸は金属塩濃度(mol/L)を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。この例では、金属塩を添加したサンプルから10〜100%ゲルを得た。金属無添加のCMC水溶液ではゲル化を確認できなかった。また、図10にCMC水溶液中の種々の金属塩濃度と膨潤度の関係を示す。図10の横軸は金属塩濃度(mol/L)を示し、縦軸は膨潤度を示す。この例では、乾燥ゲル1gの吸水量は約75〜5500となった。
実施例5(CMC/種々の金属塩水溶液のゲル分率に対する線量依存性)
【0029】
図11にCMC/種々の金属塩水溶液の線量とゲル分率の関係を示す。図11の横軸は線量(kGy)を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。この例では、3kGy照射でゲル化が始まった。そして、20kGy照射で80%以上のゲル分率に達した。
実施例6(CMC水溶液のゲル分率及び膨潤度に対する塩化ナトリウム濃度依存性)
【0030】
塩化ナトリウムに水100重量部を加え、濃度が0.1、0.5、1.0、35.8重量部(それぞれ、0.017、0.086、0.17、6.12mol/L)になるようにした金属塩水溶液に5重量部のCMC Aを加えて金属塩添加CMC水溶液とした。このサンプルに20kGyのγ線を照射した。その後、照射サンプルを超純水に浸漬させてゾルと金属塩成分を脱離させ、且つ膨潤させた。CMC水溶液中の塩化ナトリウム濃度とゲル分率の関係を図12に示す。図12において、横軸は塩化ナトリウム濃度(mol/L)を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。この例では、塩化ナトリウム濃度0.1重量部(0.017mol/L)ではゲル化は起こらなかった。0.5重量部(0.086mol/L)で約50%、塩化ナトリウム飽和状態の35.8重量部(6.12mol/L)で約70%のゲル分率に達した。一価の金属塩で物理ゲルの生成は認められなかった。
【0031】
この実施例におけるCMC水溶液中の塩化ナトリウム濃度と膨潤度の関係を図13に示す。図13の横軸は塩化ナトリウム濃度(mol/L)を示し、縦軸は膨潤度を示す。この例では、このゲルの乾燥ゲル1g当たりの吸水量は約85〜2000gであった。
実施例7(CMC/一価の金属塩水溶液のゲル分率及び膨潤度に対する線量依存性)
【0032】
塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウムに100重量部の水を加えてナトリウムイオン濃度が0.50Mとなるような金属塩水溶液とし、さらに5重量部のCMC Aを加えてCMC水溶液とし5、10、20、40kGyのγ線を照射した。
その結果を図14及び図15に示す。図14にCMC/一価の金属塩水溶液の線量とゲル分率の関係を示す。図14の横軸は放射線の線量(kGy)を示し、縦軸はゲル分率(%)を示す。この例では、金属塩を添加したCMC水溶液のゲル分率は20〜100%に達し、特に塩化カリウム、塩化ナトリウムでは5kGyでも高いゲル分率となった。
【0033】
また、図15にCMC/一価の金属塩水溶液の線量と膨潤度の関係を示す。図15の横軸は放射線の線量(kGy)を示し、縦軸は膨潤度を示す。この例では、このゲルの乾燥ゲル1g当たりの吸水量は約80〜750gであった。金属塩無添加のCMC水溶液においては5、10、20kGy照射ではゲルを得られなかった。
実施例8(その他の多糖類水溶液への金属塩添加効果)
【0034】
(1)カルボキシメチルキチン(CM−キチン) DS=0.81 脱アセチル化度(DDA)=24.6%
100重量部の水にCM‐キチンを5、7、10重量部加えたCM‐キチン水溶液サンプルと、1重量部の塩化カルシウムに100重量部の水とCM−キチン粉末を加えて金属塩添加のCM−キチン水溶液としたサンプルにγ線を20kGy照射した。
表1にCM−キチンの照射結果を示す。CM−キチン5重量部では金属塩添加と無添加ともにγ線照射後ゲル化が認められなかったが、7重量部に金属塩を添加したサンプルに照射するとゲル化が生じた。
【0035】
【表1】


【0036】
(2)カルボキシメチルキトサン(CM−キトサン)DS=0.54 DDA=61.8%
100重量部の水にCM−キトサンを5、6、10重量部加えたCM−キトサン水溶液サンプル1と、1重量部の塩化カルシウムに100重量部の水とCM−キトサン粉末を加えて金属塩添加のCM−キトサン水溶液としたサンプル2に、それぞれγ線を20kGy照射した。
表2にCM−キトサンの照射結果を示す。CM−キトサン5重量部では金属塩添加と無添加ともにγ線照射後ゲル化が認められなかったが、6重量部に金属塩を添加したサンプルに照射するとゲル化が生じた。
【0037】
【表2】


【0038】
(3)カルボキシメチルデンプン(CMS) DS=0.15
100重量部の水にCMSを5、10重量部加えたCMS水溶液サンプル1と、0.1重量部の塩化カルシウムに100重量部の水とCMSを加えて金属塩添加のCMS水溶液としたサンプル2に、それぞれγ線を5kGy照射した。
表3にCMSの照射結果を示す。7重量部のCMS水溶液ではゲル化が認められなかったが、金属塩を添加したCMS水溶液ではゲル化が生じた。
【0039】
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のようにして生成されたゲルは、工業、農業、医療、食品等の広範囲の分野において利用可能である。以下にその一例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係るCMCハイドロゲルは生分解性と優れた吸水性、保水性を有する環境保全型の材料である。現在、紙おむつや生理用品に利用されている吸水剤は生分解性を有しないアクリルアミド系の材料であり、焼却処分されている。しかし、生分解性を有する本発明に係るCMCハイドロゲルをそれらに利用することによって、焼却処分せずに直接土壌に廃棄することが可能となる。また、ガーデニング用や砂漠化した土壌の保水剤としての利用、油田開発や埋め立て開発などのボーリング作業時の吸水材としての利用、食品への利用、さらには工業廃水の浄化剤としての利用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るゲルの製造方法の概略構成を示すフローチャートである。
【図2】従来技術と本発明によるゲル分率の相違を示すグラフである。
【図3】CMC水溶液中の塩化カルシウム濃度とゲル分率の関係を示す。
【図4】CMC水溶液中の塩化カルシウム濃度と膨潤度の関係を示す。
【図5】CMC/塩化カルシウム水溶液の線量とゲル分率の関係を示す。
【図6】CMC/塩化カルシウム水溶液の線量と膨潤度の関係を示す。
【図7】CMCの置換度とゲル分率の関係を示す。
【図8】CMC水溶液の絶対粘度とゲル分率の関係を示す。
【図9】CMC水溶液中の種々の金属塩濃度とゲル分率の関係を示す。
【図10】CMC水溶液中の種々の金属塩濃度と膨潤度の関係を示す。
【図11】CMC/種々の金属塩水溶液の線量とゲル分率の関係を示す。
【図12】CMC水溶液中の塩化ナトリウム濃度とゲル分率の関係を示す。
【図13】CMC水溶液中の塩化ナトリウム濃度と膨潤度の関係を示す。
【図14】CMC/一価の金属塩水溶液の線量とゲル分率の関係を示す。
【図15】CMC/一価の金属塩水溶液の線量と膨潤度の関係を示す。
【符号の説明】
【0042】
CMC カルボキシメチルセルロース
DS 置換度
AV 絶対粘度
CM カルボキシメチル
CMS カルボキシメチルデンプン
【出願人】 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
【出願日】 平成18年10月11日(2006.10.11)
【代理人】 【識別番号】100074631
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 幸彦


【公開番号】 特開2008−94951(P2008−94951A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−277930(P2006−277930)