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【発明の名称】 カーボネート化セルロース系化合物およびその製造方法ならびにゲル状電解質
【発明者】 【氏名】薩摩 道夫

【氏名】岸井 豊

【要約】 【課題】製造が容易であり、ゲル状電解質に適用した場合に、イオン伝導度と電解液の保持性が共に良好となる新規なセルロース系化合物を提供する。

【解決手段】下記式(1)(各記号の定義は、明細書中の定義の通りである)で表される繰り返し単位を有するヒドロキシアルキルセルロースのヒドロキシル基の少なくとも一部を、−OC(=O)OR8で表される基(R8の定義は、明細書中の定義の通りである。)で置換した構造を有するカーボネート化セルロース系化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】


〔式中、nは、2以上の整数を示し、R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子または(R7O)mHで表される基(R7は低級アルキレン基を示し、mは1以上の整数を示す)を示す。〕で表される繰り返し単位を有するヒドロキシアルキルセルロースのヒドロキシル基の少なくとも一部を、−OC(=O)OR8で表される基(R8は、置換基を有していてもよい炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基を示す。)で置換した構造を有するカーボネート化セルロース系化合物。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基の50モル%以上が前記−OC(=O)OR8で表される基で置換されている構造である請求項1に記載のカーボネート化セルロース系化合物。
【請求項3】
下記式(1)
【化2】


〔式中、nは、2以上の整数を示し、R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子または(R7O)mHで表される基(R7は低級アルキレン基を示し、mは1以上の整数を示す)を示す。〕で表される繰り返し単位を有するヒドロキシアルキルセルロースのヒドロキシル基の一部を、−OC(=O)OR8で表される基(R8は、置換基を有していてもよい炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基を示す。)で置換し、さらに残りのヒドロキシル基の水素原子の一部または全部を、イソシアネート化合物残基で置換した構造を有するカーボネート化セルロース系化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のカーボネート化セルロース系化合物を用いたゲル状電解質。
【請求項5】
下記式(1)
【化3】


〔式中、nは、2以上の整数を示し、R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子または(R7O)mHで表される基(R7は低級アルキレン基を示し、mは1以上の整数を示す)を示す。〕で表される繰り返し単位を有するヒドロキシアルキルセルロースと、XCOOR8で表されるハロゲン化蟻酸エステル(R8は、置換基を有していてもよい炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)とを、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジアルキルエーテル、ジアルキルカーボネート、酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いて反応させることを特徴とするカーボネート化セルロース系化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質に用いられ得る新規なセルロース系化合物およびその製造方法に関し、また、当該セルロース系化合物を用いた高分子ゲル電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池の電解質として、電解液の漏液のない高分子固体電解質の適用が検討されている。しかし、高分子固体電解質をそのまま用いたのでは、イオン伝導度が低いという問題がある。
【0003】
高分子固体電解質のイオン伝導度を向上させるために、ポリマーを電解液で膨潤させたゲル状の電解質が開発されている。このようなゲル状電解質を二次電池に適用するには、ゲル状電解質が高いイオン伝導度を有すると同時に、このものが正極と負極との間のセパレータを兼ねるため、十分な機械的強度を有することが必要である。しかし、ゲル状電解質の強度を上げるためにはポリマーの割合を増やせば良いが、電解液の割合が減少する分イオン伝導性は低下する。逆に、電解液量を増やせばイオン伝導性は改善されるが強度が低下し、ゲル状電解質の電解液保持能を超え、電解液の滲み出しといった問題も生じることになる。ゲル状高分子電解質を用いた電池の場合、イオン伝導性は電池の性能に、電解液の滲み出しは電池の安全性に直接影響する重要な因子であり、ゲル状電解質は、イオン伝導性が良好であると同時に漏液のないことが求められている。
【0004】
このような状況において、ゲル状電解質用のポリマーとしては、様々なポリマーが検討されており、特許文献1には、イオン伝導性および形状保持性に優れるゲル状電解質として、セルロース系化合物を用いたゲル状電解質が提案されている。しかし、当該セルロース系化合物には、ヒドロキシル基が多く存在し、これらヒドロキシル基は、Liイオンと反応してLiイオン取り込んでしまうため、電池特性を低下させるという問題があった。
【0005】
一方で、特許文献2には、セルロースのヒドロキシル基をカーボネート化した化合物が、また、特許文献3には、セルロースに近い構造である澱粉のヒドロキシル基を、カーボネート化した化合物が開示されている。しかし、これら文献には、これらのカーボネート化した化合物を、リチウム二次電池用ゲル状電解質に使用することについては、なんら記載がない。また、特許文献2および3では、これらカーボネート化した化合物の製造には、高極性のアミド系溶媒等を使用している。これは、澱粉およびセルロールは、非極性溶媒に対する溶解性が低く、非極性溶媒中での反応が困難であると考えられていたためである。高極性のアミド系溶媒等を用いた場合、反応後の精製において水洗分離、溶媒の濃縮等の操作を行うことが困難であり、その結果、精製工程が煩雑になり、カーボネート化した化合物を容易に製造することができないという問題があった。
【特許文献1】特開平8−225626号公報
【特許文献2】特開平5−65301号公報
【特許文献3】特開2004−359737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、製造が容易であり、ゲル状電解質に適用した場合に、イオン伝導度と電解液の保持性が共に良好となる新規なセルロース系化合物を提供することを目的とする。本発明はまた、イオン伝導度と電解液の保持性が共に良好なゲル状電解質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(1)
【0008】
【化1】


【0009】
〔式中、nは、2以上の整数を示し、R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子または(R7O)mHで表される基(R7は低級アルキレン基を示し、mは1以上の整数を示す)を示す。〕で表される繰り返し単位を有するヒドロキシアルキルセルロース〔以下、ヒドロキシアルキルセルロース(1)ともいう。〕のヒドロキシル基(以下、OH基と記すことがある。)の少なくとも一部を、−OC(=O)OR8で表される基(R8は、置換基を有していてもよい炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基を示す。)で置換した構造を有するカーボネート化セルロース系化合物である。
本発明のカーボネート化セルロース系化合物は、前記ヒドロキシル基の50モル%以上が前記−OC(=O)OR8で表される基で置換されている構造であることが好ましい。
本発明のカーボネート化セルロース系化合物の別の態様は、ヒドロキシアルキルセルロース(1)のヒドロキシル基の一部を、−OC(=O)OR8で表される基(R8は、置換基を有していてもよい炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基を示す。)で置換し、さらに残りのヒドロキシル基の水素原子の一部または全部を、イソシアネート化合物残基で置換した構造を有するカーボネート化セルロース系化合物である。
本発明はまた、上記のカーボネート化セルロース系化合物を用いたゲル状電解質である。
本発明はさらに、ヒドロキシアルキルセルロース(1)と、XCOOR8で表されるハロゲン化蟻酸エステル(R8は、置換基を有していてもよい炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)とを、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジアルキルエーテル、ジアルキルカーボネート、酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いて反応させることを特徴とするカーボネート化セルロース系化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物は、製造が容易であり、ゲル状電解質に適用した場合には、イオン伝導度と電解液の保持性が共に良好なゲル状電解質が得られる。従って、当該カーボネート化セルロース系化合物を用いた電解質を含むリチウム二次電池は、イオン伝導度が良好であり、漏液の問題がないものとなる。本発明の製造方法は、カーボネート化セルロース系化合物の精製が容易となるため、類似の化合物の製造に用いられていた高極性アミド系溶媒を用いた従来の方法よりも、カーボネート化セルロース系化合物の製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物の構造の基となるヒドロキシアルキルセルロース(1)についてまず説明する。
【0012】
式(1)において、nは2以上の整数であり、好ましくは2000〜26000であり、より好ましくは2000〜10000である。
【0013】
7は、低級アルキレン基を示し、低級アルキレン基とは炭素数1〜4のアルキレン基のことをいい、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。当該低級アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよく、例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基(−CH2CH(CH3)−)、テトラメチレン基等が挙げられる。
7として最も好ましくは、原料調達の容易さから、プロピレン基である。
なお、ヒドロキシアルキルセルロース(1)のR7の化学構造は、すべて同一である必要はない。R7は、上記の定義内であれば、1種の基のみならず2種以上の基であってもよい。
【0014】
mは1以上の整数であり、好ましくは1〜10である。
【0015】
1〜R6は、それぞれ独立して水素原子または−(R7O)mHで表される基を示す。−(R7O)mHで表される基には、酸素が含まれているため、単なる(無修飾の)セルロースをカーボネート化したものに比べて本発明のカーボネート化セルロース系化合物は極性が高くなり、電池としての特性に優れるようになる。
【0016】
ヒドロキシアルキルセルロース(1)はヒドロキシアルキルセルロースであるため、全繰り返し単位中のR1〜R6のすべてが水素原子であるということはない。また、式(1)において、一繰り返し単位中にR1〜R6で表される6つの基が存在するが、各繰り返し単位間でR1〜R6が表す基は異なっていても良い。例えば、ある一つの繰り返し単位では、R1は水素原子であり、別の繰り返し単位では、R1は−(R7O)mHで表される基であってもよい。すべての繰り返し単位中の全R1〜R6に対する−(R7O)mHで表される基の割合としては、50〜100モル%が好ましい。この範囲内においては、カーボネート化反応時、カーボネート化セルロース系化合物の溶媒への溶解性が向上するため、反応性が向上し、また、カーボネート化セルロース系化合物が柔軟になり、かつ極性が上がるため、電池特性がより高くなる。
【0017】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物は、ヒドロキシアルキルセルロース(1)のOH基の少なくとも一部が、−OC(=O)OR8で表される基で置換された構造を有する。当該カーボネート構造をセルロース系化合物に導入することにより、セルロース系化合物のイオン伝導性を、従来の変性セルロース系化合物よりも高めることができる。
【0018】
ここで、R8は、置換基を有していてもよい炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基である。
【0019】
8で示される炭素数12以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が例示できる。
【0020】
8で示される炭素数12以下のアルキル鎖にエーテル結合が導入された基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよく、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基などのアルコキシアルキル基、エトキシエトキシエチルなどのポリオキシアルキレン基等が例示できる。
【0021】
8で示される炭素数12以下の芳香族基の例としては、フェニル基、トルイル基などのアリール基等が挙げられる。
【0022】
8で示される炭素数12以下の、アルキル基、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基、または芳香族基は、全体としての炭素数が12以下となる範囲内で置換基を有していてもよい。当該置換基の例としては、炭素数4以下のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基など)、メトキシエチル基、メトキシブチル基等が挙げられる。
【0023】
8としては、炭素数12以下の、アルキル基およびアルキル鎖にエーテル結合が導入された基が好ましく、特に極性向上の観点から、アルキル鎖にエーテル結合が導入された基が好ましい。
【0024】
なお、本発明のカーボネート化セルロース系化合物のR8の化学構造は、すべて同一である必要はない。R8は、上記定義内の1種の基のみならず、上記定義内の2種以上の基であってもよい。
【0025】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物は、前記OH基の少なくとも一部が−OC(=O)OR8で表される基で置換された構造となるが、OH基は、一般に電池特性を低下させ、またカーボネート化セルロース系化合物の可撓性の発現に悪影響を及ぼすので、前記OH基は、−OC(=O)OR8で表される基に50%以上置換されることが好ましく、70%以上置換されることがより好ましい。
【0026】
ヒドロキシアルキルセルロース(1)は、一繰り返し単位中に6つのOH基が存在するが、各繰り返し単位間で−OC(=O)OR8で表される基に置換されるOH基の数および位置は異なっていても良い。例えば、ある一繰り返し単位では6つのOH基が全て−OC(=O)OR8で表される基に置換されており、別の繰り返し単位では、3つのOH基が全て−OC(=O)OR8で表される基に置換されており、さらに別の繰り返し単位では、6つのOH基がそのまま置換されずに残っているような構造であってもよい。
【0027】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物の製造方法については、特に制限はないが、製造の容易さ(特に、溶媒の入手の容易さ、取り扱いの容易さ)から、ヒドロキシアルキルセルロース(1)とハロゲン化蟻酸エステル(R8は、前記と同義であり、Xはハロゲン原子を示す。)とを、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジアルキルエーテル、ジアルキルカーボネート、酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を溶媒として用いて反応させることが好ましい。当該反応は、活性水素を有しないアルカリ性化合物の存在下で行うことが好ましい。
【0028】
ハロゲン化蟻酸エステルのXで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。本発明のカーボネート化セルロース系化合物のR8は、ハロゲン化蟻酸エステルのR8に由来するため、ハロゲン化蟻酸エステルのR8には、本発明のカーボネート化セルロース系化合物に導入したいR8を選択すればよい。
【0029】
ハロゲン化蟻酸エステルは、公知方法により合成し、または市販品として入手することができ、ハロゲン化蟻酸エステルの使用量は、原料のヒドロキシアルキルセルロース(1)のOH基1モルに対し、1〜5モルが好ましく、1〜3モルがより好ましい。1モルより少ないと、十分なカーボネート化が行われず、5モルより多いと、未反応物や副生成物などの不純物が増加し、好ましくない。
【0030】
ヒドロキシアルキルセルロース(1)は、公知方法により合成して入手することができる。例えば、セルロースと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物とを反応させることにより製造することができる。また、市販品として入手することも可能である。
【0031】
本発明の製造方法では、溶媒として、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジアルキルエーテル、ジアルキルカーボネート、酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用する。これらは、ヒドロキシアルキルセルロースに対する溶解力は乏しいが、カーボネート化セルロース系化合物を溶解可能な溶媒である。従来技術では、無修飾のセルロースおよび澱粉のカーボネート化には、溶媒として、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンなどの高極性のアミド系溶媒等が用いられてきた。しかし、これらの溶媒は、高極性、高沸点の溶媒であるため、反応後の精製において水洗分離、溶媒の濃縮等を行うことが困難であった。しかし、本発明の製造方法では、反応においては、原料のヒドロキシアルキルセルロースが反応前に溶解していなくても、カーボネート化セルロース系化合物を可溶な溶媒(すなわち、上記列挙した溶媒)を用いることにより、反応性良くカーボネート化セルロース系化合物を得ることができることが明らかになった。この溶媒の選択により、本発明の製造方法は、従来の方法に比べ、精製工程が簡易なものとなり、カーボネート化セルロース系化合物の製造が容易となる。
【0032】
ジアルキルエーテルとしては、炭素数6以下のものが好ましく、ジエチルエーテルがより好ましい。
ジアルキルカーボネートとしては、炭素数6以下のものが好ましく、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートがより好ましい。
酢酸アルキルエステルとしては、炭素数6以下のものが好ましく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等であり、酢酸エチルがより好ましい。
【0033】
溶媒の使用量として好ましくは、原料のヒドロキシアルキルセルロース(1)1gに対し、2〜100gである。
【0034】
活性水素を有しないアルカリ性化合物の例としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等が挙げられる。当該アルカリ性化合物の使用量として好ましくは、原料のヒドロキシアルキルセルロース(1)のOH基1モルに対し0.9〜1.5モル当量である。
【0035】
反応温度と時間は、使用するヒドロキシアルキルセルロースの有するOH基、ハロゲン化蟻酸エステルおよび溶媒の量等により適宜決定すればよいが、反応温度としては、0〜50℃が好ましく、反応時間としては、3〜72時間が好ましい。
【0036】
反応混合物より、目的のカーボネート化セルロース系化合物は、常法に従い精製して単離することができる。例えば、必要によりトルエン等の水と分離する溶媒を加えた後、飽和食塩水等で洗浄を行う。次いで有機層を硫酸マグネシウム等で乾燥後、溶媒を除去して乾燥し、カーボネート化セルロース系化合物を単離することができる。
【0037】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物にOH基が残っている場合には、OH基は、一般的に電池特性を低下させるために、OH基の水素原子(H)をイソシアネート化合物残基で置換することが好ましい。
【0038】
ここで、イソシアネート化合物残基とは、イソシアネート化合物のイソシアネート基がOH基と反応して生成する(イソシアネート化合物の−N=C=O基の窒素原子に水素原子が付加し、炭素原子にOH基の酸素原子が結合してできる)イソシアネート化合物由来の基のことをいう。よって、カーボネート化セルロース系化合物のOH基のHを、イソシアネート化合物残基で置換するには、例えば乾燥条件下で、OH基とイソシアネート化合物を反応させればよい。また、イソシアネート化合物残基は、多官能イソシアネート化合物の残基であってもよく、このとき、カーボネート化セルロース系化合物が架橋される。
【0039】
イソシアネート化合物の例としては、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および1モルのトリメチロールプロパンにこれらのジイソシアネート3モルを付加させたトリイソシアネート化合物等を挙げることができ、なかでも1モルのトリメチロールプロパンにヘキサメチレンジイソシアネート3モルを付加させたトリイソシアネート化合物が好ましい。
【0040】
あるいは、本発明のカーボネート化セルロース系化合物にOH基が残っている場合には、OH基を、常法によりエステル化してもよい。
【0041】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物を、ゲル状電解質に適用した場合には、イオン伝導度と電解液の保持性が共に良好なゲル状電解質を得ることができる。また、本発明のカーボネート化セルロース系化合物は、柔軟性にも優れる。
【0042】
一実施態様として、前記ゲル状電解質は、本発明のカーボネート化セルロース系化合物および電解液を含み、当該電解液は、電解質塩および溶媒を含む。
【0043】
電解質塩の例としては、LiPF6、LiBF4、LiN(C25SO22、LiAsF6、LiSbF6、LiAlF4、LiGaF4、LiInF4、LiClO4、LiN(CF3SO22、LiCF3SO3、LiSiF6、LiN(CF3SO2)(C49SO2)等のリチウム金属塩が挙げられる。
【0044】
電解液を構成する溶媒の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の直鎖状カーボネートが挙げられる。
【0045】
上記ゲル状電解質は、常法に従い作製すればよい。例えば、本発明のカーボネート化セルロース系化合物の溶液を塗布および乾燥してフィルム化し、電解質塩を含む電解液に浸漬することにより製造することができる。イソシアネート化合物を添加する場合は、添加混合液が流動性を保っている間に流延させればよい。
【0046】
当該カーボネート化セルロース系化合物を用いた電解質はリチウム二次電池に適用でき、当該リチウム二次電池は、イオン伝導度が良好であり、漏液の問題がないものとなる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0048】
(カーボネート化セルロース系化合物の合成)
実施例1
300mLの三口フラスコに、バキュームスターラー、塩化カルシウム管付きコンデンサーおよび窒素導入管を取り付け、フラスコ内を窒素置換した。乾燥した窒素雰囲気下でテトラヒドロフラン90g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製HPC−L)10gおよびピリジン9.5gを加えた。この溶液を氷冷バスで10℃程度にまで冷却し、一様に攪拌しながらゆっくりとクロロ蟻酸メトキシブチル20gを滴下した。全量を滴下した後、ゆっくりと20℃まで温度を上げ、48時間そのまま攪拌を続けた。
【0049】
この溶液を攪拌しながらトルエン200mLを加え、飽和食塩水200mLで3回洗浄した後、分離した有機層(上液)を分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去し、乾燥してゴム状のカーボネート化セルロース系化合物を得た。NMRにより解析した結果、原料のヒドロキシプロピルセルロースのOH基の75%がカーボネート残基(−OC(=O)OR8で表される基)で置換されていた。
【0050】
実施例2
実施例1においてクロロ蟻酸メトキシブチル20gの代わりにクロロ蟻酸2−エチルヘキシル23gを使用した以外は、実施例1と同様にして、カーボネート化セルロース系化合物を得た。NMRにより解析した結果、原料のヒドロキシプロピルセルロースのOH基の80%がカーボネート残基で置換されていた。
【0051】
(電解質の評価)
実施例1および2で得られたカーボネート化セルロース系化合物の10%ジメチルホルムアルデヒド溶液に、それぞれ当該カーボネート化セルロース系化合物のOH基と当量の3官能イソシアネート化合物(1モルのトリメチロールプロパンにヘキサメチレンジイソシアネート3モルを付加させたトリイソシアネート化合物;日本ポリウレタン製、コロネートHL)を混合した。これをPTFE製シャーレに展開し、乾燥した後、50℃にて5日間加熱して厚み50μmのポリマーフィルムを得た。1MLiPF6 EC/DMC(1/2)溶液にこのポリマーフィルム0.5gを浸漬し、室温にて2日間放置した。その後、表面の液を拭き取り、ゲル状電解質フィルムを得た。
【0052】
また、比較例1として、1MLiPF6 EC/DMC(1/2)溶液に多孔質ポリオレフィンフィルム(空孔率約35%、厚さ約25μm)0.1gを浸漬し、室温にて2日間放置後、表面の液を拭き取って得た電解質フィルムを用意した。
【0053】
これらの電解質フィルムの電導度および漏液の有無を、以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0054】
(電導度測定)
実施例および比較例の電解質フィルムを、アルゴングローブボックス内にて直径10mmの白金板で10gの荷重をかけて挟みこみ、インピーダンス測定装置(Princeton Applied Research製263Aポテンショスタットおよび5210 Lock in amplifier)を用い、室温(23℃)にて複素インピーダンス法により高周波数側の円弧と低周波数側の直線との交点の実数成分インピーダンスを求め、以下の式により電導度σ(S/cm)を算出した。
σ=d/(R・A)
d:サンプル厚み(cm)、R:インピーダンス(Ω)、A:サンプル断面積(cm2
【0055】
(漏液の評価)
上記の10gの荷重を除去したときに、電極面における液の流出の有無を目視にて判定した。
【0056】
【表1】


【0057】
表1より、本発明のカーボネート化セルロース系化合物をゲル状電解質に適用すれば、漏液がなく、電導度も良好なゲル状電解質となることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のカーボネート化セルロース系化合物は、リチウム二次電池等のゲル状電解質に好適である。また、本発明の製造方法は、カーボネート化セルロース系化合物を容易に製造でき有用である。
【出願人】 【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
【出願日】 平成18年10月3日(2006.10.3)
【代理人】 【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一

【識別番号】100115152
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 茂


【公開番号】 特開2008−88329(P2008−88329A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−272074(P2006−272074)