トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物

【発明の名称】 セルロース化合物、並びにこれを用いたセルロース組成物、光学フィルムおよび画像表示装置
【発明者】 【氏名】大屋 豊尚

【氏名】川西 弘之

【要約】 【課題】光学フィルムに好適である新規なセルロース化合物、並びに該セルロース化合物を用いた、湿度によるレターデーション変化が少なく光弾性定数の小さいセルロース組成物およびセルロースフィルムを提供する。

【解決手段】下記式(1)〜(3)を満足するセルロース化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とするセルロース化合物。
式(1): 1.5≦A+B≦3
式(2): 0<A≦3
式(3): 0≦B<3
(式中、Aはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する−C(=O)−L−S−R1で表される基の置換度を表す。Lは2価の連結基を表し、該連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)は1以上10以下である。Sは硫黄原子を表す。R1は炭素数1〜30のアルキル基を表す。Bはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する炭素数2〜10の脂肪族アシル基の置換度を表す。)
【請求項2】
前記Lで表される連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)が1以上6以下であることを特徴とする請求項1記載のセルロース化合物。
【請求項3】
前記Lが炭素数1以上6以下のアルキレン基を表すことを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロース化合物。
【請求項4】
前記R1が炭素数1〜10のアルキル基を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース化合物。
【請求項5】
前記の炭素数2〜10の脂肪族アシル基がアセチル基、プロピオニル基またはブチリル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース化合物。
【請求項6】
前記のA及びBが下記式(4)〜(6)を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース化合物。
式(4): 2.0≦A+B≦3
式(5): 0.05≦A≦1.5
式(6): 1.5≦B≦2.95
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロース化合物を含有することを特徴とするセルロース組成物。
【請求項8】
前記セルロース組成物が、固体、溶液、溶融物、ゲル、ペレット、またはフィルムであることを特徴とする請求項7記載のセルロース組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロース化合物を含有することを特徴とするセルロースフィルム。
【請求項10】
面内のレターデーション(Re)が下記式(i)を満足し、且つ、厚み方向のレターデーション(Rth)が下記式(ii)を満足することを特徴とする請求項9記載のセルロースフィルム。
式(i): 0nm≦Re≦80nm
式(ii): 0nm≦Rth≦300nm
【請求項11】
少なくとも1方向に0.1%〜500%延伸されたことを特徴とする請求項9又は10に記載のセルロースフィルム。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムを用いたことを特徴とする位相差フィルム。
【請求項13】
偏光膜と該偏光膜を挟持する2枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、請求項9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは請求項12記載の位相差フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項14】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは請求項12記載の位相差フィルム上に、液晶性化合物を配向させて形成した光学異方性層を有することを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項15】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは請求項12記載の位相差フィルム上に、反射防止層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項16】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは請求項12記載の位相差フィルム、請求項13記載の偏光板、請求項14記載の光学補償フィルムおよび請求項15記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに好適である新規なセルロース化合物に関する。更に、本発明は、該セルロース化合物を用いた、湿度によるレターデーション変化が少なく、光弾性定数の小さいセルロース組成物、該セルロース組成物からなる高品位なセルロースフィルム、並びに該セルロースフィルムを用いた位相差フィルム、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテートは、その透明性、強靭性および光学的等方性から、写真感光材料の支持体として用いられているほか、液晶表示装置や有機EL表示装置をはじめとする画像表示装置用の光学フィルムとしてその用途を拡大してきている。液晶表示装置用の光学フィルムとしては、偏光板保護フィルムや、フィルムを延伸して面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させ、STN(Super Twisted Nematic)方式などの液晶表示装置の位相差膜として使用されている。
【0003】
セルロースアセテートは比較的親水的な高分子であるため、光学フィルムとして用いた場合には、湿度変動による寸度および配向状態の変化が起こりやすく、それに起因して、環境の変化に伴うがレターデーションの変化やフィルムのカールが起こりやすいという性質を有している。
このような湿度依存性は用途によっては好ましくない場合があり、湿度依存性を改良する手段として、セルロースのアセチル基とプロピオニル基の混合エステル(セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース混合アシレート)を用い、その溶液を支持体上へ流延し、溶媒の一部を蒸発させた後、支持体上から剥離してセルロースフィルムを形成する溶液製膜法を用いて製造したセルロースフィルムが提案されている(特許文献1)。セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートは、セルロースアセテートの湿度依存性を改良することができる有用な化合物であるが、アセチル基をプロピオニル基、あるいはブチリル基に置き換えることによって光弾性が大きくなる特徴がある。温度あるいは湿度の変化によって光学フィルムへの応力が変化すると、液晶表示装置において部分的なレターデーションの変化が生じ、いわゆる「額縁故障」、あるいは「コーナームラ」と呼ばれる光学ムラが発生することがあり、近年の液晶テレビの大型化に伴い、このような光学ムラを生じにくいフィルム材料が要求されている。光弾性の大きなフィルム材料ではこのような故障が顕著になるため、特に、偏光板の保護フィルムに用いる材料としては、環境の変化によるレターデーションの変動が少なく、かつ、光弾性が小さい材料が適している。
【0004】
液晶表示装置の方式としては、従来のSTN型に加えて、VA(Vertical Alignment)方式、OCB(Optical Compensated Bend)方式、あるいはIPS(In-Plane Switching)方式の表示素子が開発され、それぞれの液晶モードに応じた、様々なレターデーション発現性を有する光学フィルム材料が要求されている。
具体的には、面内方向のレターデーション(Re)に対して、厚み方向のレターデーション(Rth)が大きい光学特性を発現させることが要求されることがある。セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、あるいは、セルロースアセテートブチレートは、製膜を実施した後に、延伸を行うことによってReとRthを発現させることが可能であるが(特許文献2)、Reに対してRthを増加させることは一般的な一軸延伸では困難であり、工業的な生産性がやや低下する二軸延伸を用いることが必要である。液晶の光学補償方式の多様化に伴い、生産性の高い一軸延伸によって、Rthを選択的に発現できる光学フィルム材料が求められている。
【0005】
セルロースアセテートプロピオネート、あるいは、セルロースアセテートブチレート以外のセルロースアシレートとしては、フェニルアセチルセルロ−ス、フェニルプロピオニルセルロースの合成例が開示されている(非特許文献1、非特許文献2)。これらの芳香族基を含有するセルロースアシレートは、側鎖の分極率が大きいために、延伸によって大きなRe、Rthの絶対値を発現すると同時に、光弾性定数が大きいという特徴があり、光学フィルムの用途によってはその特性が問題となる場合がある。
また、セルロースアシレートのアシル基として、カルボニル基−連結基−硫黄原子−アルキル基の一般式で表される基を有するセルロース化合物は知られていない。また、該化合物を用いたセルロース組成物、ならびに、光学フィルムについても従来は知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−200098号公報
【特許文献2】特開2001−188128号公報
【非特許文献1】Koksnes Kimija,1巻,51−4頁(1977年)
【非特許文献2】Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,(1968),6(4),1061-4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、光学フィルムに好適である新規なセルロース化合物を提供することにある。更に、本発明は、該セルロース化合物を用いた、湿度によるレターデーション変化が少なく、光弾性定数の小さいセルロース組成物、該セルロース組成物からなる高品位なセルロースフィルム、並びに該セルロースフィルムを用いた位相差フィルム、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム及び画像表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を進めた結果、特定の構造のセルロース化合物を用いることによって、湿度によるレターデーション変化が少なく、光弾性定数の小さいセルロース組成物ならびにフィルムを製造することができ、更に、該フィルムはReに対してRthの発現性が大きい光学特性を有するという予想外の効果を発現することを知見した。
【0009】
さらに、該セルロース組成物からなるフィルムを作成することにより、溶液製膜法のみならず溶融製膜を行った場合においても、高品位なセルロース光学フィルム、位相差フィルム、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム並びに画像表示装置を提供できることを見出した。
【0010】
かくして本発明の上記目的は、以下の構成を有する本発明により達成された。
[態様1]
下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とするセルロース化合物。
式(1): 1.5≦A+B≦3
式(2): 0<A≦3
式(3): 0≦B<3
(式中、Aはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する−C(=O)−L−S−R1で表される基の置換度を表す。Lは2価の連結基を表し、該連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)は1以上10以下である。Sは硫黄原子を表す。R1は炭素数1〜30のアルキル基を表す。Bはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する炭素数2〜10の脂肪族アシル基の置換度を表す。)
[態様2]
前記Lで表される連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)が1以上6以下である2価の基を表すことを特徴とする態様1記載のセルロース化合物。
[態様3]
前記Lが炭素数1以上6以下のアルキレン基を表すことを特徴とする態様1又は2に記載のセルロース化合物。
[態様4]
前記R1が炭素数1〜10のアルキル基を表すことを特徴とする態様1〜3のいずれか一項に記載のセルロース化合物。
[態様5]
前記の炭素数2〜10の脂肪族アシル基がアセチル基、プロピオニル基またはブチリル基であることを特徴とする態様1〜4のいずれか一項に記載のセルロース化合物。
[態様6]
前記のA及びBが下記式(4)〜(6)を満足することを特徴とする態様1〜5のいずれか一項に記載のセルロース化合物。
式(4): 2.0≦A+B≦3
式(5): 0.05≦A≦1.5
式(6): 1.5≦B≦2.95
[態様7]
態様1〜6のいずれか一項に記載のセルロース化合物を含有することを特徴とするセルロース組成物。
[態様8]
前記セルロース組成物が、固体、溶液、溶融物、ゲル、ペレット、またはフィルムであることを特徴とする態様7記載のセルロース組成物。
[態様9]
態様1〜6のいずれか一項に記載のセルロース化合物を含有することを特徴とするセルロースフィルム。
[態様10]
面内のレターデーション(Re)が下記式(i)を満足し、且つ、厚み方向のレターデーション(Rth)が下記式(ii)を満足することを特徴とする態様9記載のセルロースフィルム。
式(i): 0nm≦Re≦80nm
式(ii): 0nm≦Rth≦300nm
[態様11]
少なくとも1方向に0.1%〜500%延伸されたことを特徴とする態様9又は10に記載のセルロースフィルム。
[態様12]
態様9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムを用いたことを特徴とする位相差フィルム。
[態様13]
偏光膜と該偏光膜を挟持する2枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、態様9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは態様12記載の位相差フィルムであることを特徴とする偏光板。
[態様14]
態様9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは態様12記載の位相差フィルム上に、液晶性化合物を配向させて形成した光学異方性層を有することを特徴とする光学補償フィルム。
[態様15]
態様9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは態様12記載の位相差フィルム上に、反射防止層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
[態様16]
態様9〜11のいずれか一項に記載のセルロースフィルムまたは態様12記載の位相差フィルム、態様13記載の偏光板、態様14記載の光学補償フィルムおよび態様15記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規な該セルロース化合物によって、湿度によるレターデーション変化が少なく、光弾性定数の小さいセルロース組成物、該セルロース組成物からなる高品位なセルロースフィルム、並びに該セルロースフィルムを用いた位相差フィルム、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム及び画像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明のセルロース組成物やその製造方法などについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
<セルロース化合物>
本発明のセルロース組成物に好ましく用いられるセルロース化合物について詳細に記載する。
【0014】
(基本的な構造)
セルロースを構成する、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロース化合物は、これらの水酸基の一部または全部を化学修飾した重合体(ポリマー)である。本発明において置換度とは、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースの水酸基が置換されている割合(例えば、100%のエステル化は置換度=1と表す)の合計を意味する。したがって、セルロースの2位、3位および6位のすべてが100%エステル化した場合、置換度は最大の3となる。
なお、天然のセルロース原料は由来とする生物や精製方法に対応してグルコース以外の構成糖(例えば、キシロース、マンノースなど)の重合体(ヘミセルロース)や、リグニンなどの糖以外の成分を含有する場合があるが、本発明においては、これらを含有するセルロース原料を原料として製造された高分子についても、セルロース化合物と総称する。
【0015】
本発明の組成物に用いられるセルロース化合物は、少なくとも−C(=O)−L−S−R1で表される基(Lは2価の連結基を表し、該連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)は1以上10以下である。Sは硫黄原子を表す。R1は炭素数1〜30のアルキル基を表す。)でセルロースの水酸基を構成する水素原子が置換されており、好ましくは、更に、炭素数2ないし10の脂肪族アシル基でセルロースの水酸基を構成する水素原子が置換されていることを特徴とする。
【0016】
(−C(=O)−L−S−R1で表される基)
まず、−C(=O)−L−S−R1で表される基について説明する。本発明のセルロース化合物において−C(=O)−L−S−R1で表される基は、一種類であっても複数の種類であっても良い。
ここで、Lは2価の連結基を表し、該連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)は1以上10以下である。Sは硫黄原子を表す。R1は炭素数1〜30のアルキル基を表す。
【0017】
Lは2価の連結基を表し、該連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)は1以上10以下、好ましくは1以上6以下、更に好ましくは1以上4以下、特に好ましくは1ないし3である。本明細書における「連結基の主鎖を構成する原子」には水素原子は含まれず、また、連結基の主鎖に置換した置換基を構成する原子の数は含まれない。ここでいう「置換基」には、後述のR1で表されるアルキル基の置換基の例として挙げられているような1価の基に加えて、=Oなどの多価の基も含まれる。また、連結基の主鎖に環構造を含む場合には、環を構成する原子の数を含むが、該環に結合した水素原子および該環に置換した置換基を構成する原子の数は含まない。
Lとして好ましくは、アルキレン基(好ましくは炭素数1ないし6、更に好ましくは炭素数1ないし4、特に好ましくは炭素数1ないし3である。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6ないし10、更に好ましくは炭素数6ないし9、特に好ましくは炭素数6ないし8である。)、−O−ならびにこれらの複合置換基(例えば、−OCH2CH2−など)である。
Lとして更に好ましくは、アルキレン基(好ましくは炭素数1ないし6、更に好ましくは炭素数1ないし4、特に好ましくは炭素数1ないし3である。)、特に好ましくは、−CH2−、−CH2CH2−、および、−(CH2)3−である。
Lは置換基を有していてもよく、置換基の好ましい例としては、後述のR1で表されるアルキル基の置換基の例を挙げることができる。
【0018】
次に、R1について説明する。
1は炭素数1〜30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20であり、更に好ましくは炭素数1〜10であり、特に好ましくは炭素数1〜4である。
炭素数が30を超える場合は、高分子のガラス転移温度がフィルム用途として用いるときに適切ではない場合がある。
好ましいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などを挙げることができる。更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基である。
【0019】
1で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などが挙げられる。
また、これらの置換基は互いに連結して環を形成してもよい。
【0020】
−C(=O)−L−S−R1で表される基の好ましい組合せを挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
好ましくは、メチルメルカプトアセチル、エチルメルカプトアセチル、プロピルメルカプトアセチル、イソプロピルメルカプトアセチル、ブチルメルカプトアセチル、イソブチルメルカプトアセチル、t−ブチルメルカプトアセチル、ヘプチルメルカプトアセチル、ヘキシルメルカプトアセチル、シクロヘキシルメルカプトアセチル、オクチルメルカプトアセチル、(2−エチルヘキシル)メルカプトアセチル、デシルメルカプトアセチル、ドデシルメルカプトアセチル、2−(メチルメルカプト)プロピオニル、2−(エチルメルカプト)プロピオニル、2−(プロピルメルカプト)プロピオニル、2−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル、2−(ブチルメルカプト)プロピオニル、2−(イソブチルメルカプト)プロピオニル、2−(t−ブチルメルカプト)プロピオニル、2−(ヘプチルメルカプト)プロピオニル、2−(ヘキシルメルカプト)プロピオニル、2−(シクロヘキシルメルカプト)プロピオニル、2−(オクチルメルカプト)プロピオニル、2−[(2−エチルヘキシル)メルカプト]プロピオニル、2−(デシルメルカプト)プロピオニル、2−(ドデシルメルカプト)プロピオニル、3−(メチルメルカプト)プロピオニル、3−(エチルメルカプト)プロピオニル、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル、3−(イソブチルメルカプト)プロピオニル、3−(t−ブチルメルカプト)プロピオニル、3−(ヘプチルメルカプト)プロピオニル、3−(ヘキシルメルカプト)プロピオニル、3−(シクロヘキシルメルカプト)プロピオニル、3−(オクチルメルカプト)プロピオニル、3−[(2−エチルヘキシル)メルカプト]プロピオニル、3−(デシルメルカプト)プロピオニル、3−(ドデシルメルカプト)プロピオニル、4−(メチルメルカプト)ブチリル、4−(エチルメルカプト)ブチリル、4−(プロピルメルカプト)ブチリル、4−(イソプロピルメルカプト)ブチリル、4−(ブチルメルカプト)ブチリル、4−(イソブチルメルカプト)ブチリル、4−(t−ブチルメルカプト)ブチリル、4−(ヘプチルメルカプト)ブチリル、4−(ヘキシルメルカプト)ブチリル、4−(シクロヘキシルメルカプト)ブチリル、4−(オクチルメルカプト)ブチリル、4−[(2−エチルヘキシル)メルカプト]ブチリル、4−(デシルメルカプト)ブチリル、4−(ドデシルメルカプト)ブチリル、メチルメルカプトヘキサノイル、エチルメルカプトヘキサノイル、メチルメルカプトオクタノイル、エチルメルカプトオクタノイル、メチルメルカプトデカノイル、エチルメルカプトデカノイルなどを挙げることができる。
【0021】
更に好ましくは、メチルメルカプトアセチル、エチルメルカプトアセチル、プロピルメルカプトアセチル、イソプロピルメルカプトアセチル、ブチルメルカプトアセチル、イソブチルメルカプトアセチル、ブチルメルカプトアセチル、ヘプチルメルカプトアセチル、ヘキシルメルカプトアセチル、シクロヘキシルメルカプトアセチル、オクチルメルカプトアセチル、2−(メチルメルカプト)プロピオニル、2−(エチルメルカプト)プロピオニル、2−(プロピルメルカプト)プロピオニル、2−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル、2−(ブチルメルカプト)プロピオニル、2−(イソブチルメルカプト)プロピオニル、2−(ヘキシルメルカプト)プロピオニル、3−(メチルメルカプト)プロピオニル、3−(エチルメルカプト)プロピオニル、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル、3−(イソブチルメルカプト)プロピオニル、3−(ヘキシルメルカプト)プロピオニル、4−(メチルメルカプト)ブチリル、4−(エチルメルカプト)ブチリル、4−(プロピルメルカプト)ブチリル、4−(イソプロピルメルカプト)ブチリル、4−(ブチルメルカプト)ブチリル、メチルメルカプトヘキサノイル、エチルメルカプトヘキサノイル、メチルメルカプトオクタノイル、エチルメルカプトオクタノイル、を挙げることができる。
【0022】
特に好ましくは、メチルメルカプトアセチル、エチルメルカプトアセチル、プロピルメルカプトアセチル、イソプロピルメルカプトアセチル、ブチルメルカプトアセチル、3−(メチルメルカプト)プロピオニル、3−(エチルメルカプト)プロピオニル、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル、4−(メチルメルカプト)ブチリル、4−(エチルメルカプト)ブチリル、4−(プロピルメルカプト)ブチリル、を挙げることができる。
【0023】
(炭素数2〜10の脂肪族アシル基)
次に、炭素数2〜10の脂肪族アシル基について説明する。
本発明のセルロース化合物における脂肪族アシル基は、好ましくは、炭素数2ないし6であり、更に好ましくは炭素数2ないし4であり、特に好ましくは炭素数2である。
本発明のセルロース化合物において該脂肪族アシル基は、一種類であっても複数の種類であっても良い。
好ましい脂肪族アシル基の例としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、イソブチリル、ピバロイルなどを挙げることができる。さらに好ましくは、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイルであり、特に好ましくはアセチル、プロピオニル、ブチリルである。
【0024】
本発明において、−C(=O)−L−S−R1で表される基、ならびに炭素数2ないし10の脂肪族アシル基は、同時または逐次に任意の方法ならびに順序により導入しても良い。
例えば、セルロース原料に対して、2種のアシル基を混合アシル化する方法、まず、一種類の置換基を導入し、ついで、別の置換基を導入する方法などから、目的とするセルロース化合物の化学構造ならびに置換態様によって選択すればよい。
【0025】
(置換度)
本発明の組成物に用いられるセルロース化合物は、下記式(1)〜(3)の置換度を満足することを特徴とする。
式(1): 1.5≦A+B≦3
式(2): 0<A≦3
式(3): 0≦B<3
(式中、Aはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する−C(=O)−L−S−R1で表される基の置換度を表す。Lは2価の連結基を表し、該連結基の主鎖を構成する原子の数(但し、該主鎖を構成する原子に結合した水素原子及び置換基の原子の数を除く。)は1以上10以下である。Sは硫黄原子を表す。R1は炭素数1〜30のアルキル基を表す。Bはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する炭素数2ないし10の脂肪族アシル基の置換度を表す。)
なお、セルロース化合物において複数の種類の前記脂肪族アシル基が置換されている場合には、Bは置換されている前記脂肪族アシル基の合計の置換度を表す。
【0026】
本発明の組成物に用いられるセルロース化合物は、下記式(4)〜(6)を満足することが好ましい。すなわち、下記式(4)〜(6)において、前記の置換度A及び置換度Bがそれぞれ下記の式(5)又は(6)に規定された範囲内のものであり、かつ、当該置換度A及びBの合計が下記式(4)に規定された範囲内にあることが好ましい。
式(4): 2.0≦A+B≦3
式(5): 0.05≦A≦1.5
式(6): 1.5≦B≦2.95
【0027】
本発明の組成物に用いられるセルロース化合物は、下記式(7)〜(9)を満足することがさらに好ましい。すなわち、下記式(7)〜(9)において、前記の置換度A及び置換度Bがそれぞれ下記の式(8)又は(9)に規定された範囲内のものであり、かつ、当該置換度A及びBの合計が下記式(7)に規定された範囲内にあることがさらに好ましい。
式(7): 2.3≦A+B≦3
式(8): 0.1≦A≦1.5
式(9): 1.5≦B≦2.9
【0028】
本発明の組成物に用いられるセルロース化合物は、下記式(10)〜(12)を満足することが特に好ましい。すなわち、下記式(10)〜(12)において、前記の置換度A及び置換度Bがそれぞれ下記の式(11)又は(12)に規定された範囲内のものであり、かつ、当該置換度A及びBの合計が下記式(10)に規定された範囲内にあることが特に好ましい。
式(10): 2.6≦A+B≦3
式(11): 0.2≦A≦1.2
式(12): 1.8≦B≦2.8
【0029】
A+Bが1.5未満の場合は、セルロースアシレートが親水的過ぎることにより、セルロースアシレート組成物の湿度依存性が悪化して好ましくない。A+Bは1.5以上であれば用途によっては良好な性質を発現するが、本発明のセルロースアシレート組成物がフィルムである場合は、2.0以上が好ましく、2.3以上がさらに好ましく、2.6以上であることが特に好ましい。
Aは0を超え、3以下であれば任意の値を取ることができるが、本発明のセルロースアシレート組成物がフィルムである場合は、好ましい光学特性を発現する目的では0.05以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.2以上が特に好ましい。上限については、コスト、フィルムの面状等の特性の観点から、2.0以下が好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。
Bは0以上3未満であれば任意の値を取ることができるが、本発明のセルロースアシレート組成物がフィルムである場合は、好ましい光学特性、力学物性ならびに製膜適性を発現する目的では0.5以上が好ましく、1.5以上がさらに好ましく、1.8以上が特に好ましい。上限については、光学特性ならびに製造適性の観点から、2.95以下が好ましく、2.9以下がさらに好ましく、2.8以下が特に好ましい。
【0030】
(具体例)
本発明の組成物に用いられるセルロース化合物の好ましい例としては、メチルメルカプトアセチルセルロース、エチルメルカプトアセチルセルロース、プロピルメルカプトアセチルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチルセルロース、ブチルメルカプトアセチルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリルセルロース、
【0031】
メチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、エチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、
【0032】
メチルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、エチルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・プロピオニルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・プロピオニルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・プロピオニルセルロース、
【0033】
メチルメルカプトアセチル・ブチリルセルロース、エチルメルカプトアセチル・ブチリルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・ブチリルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・ブチリルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・ブチリルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・ブチリルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・ブチリルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・ブチリルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・ブチリルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・ブチリルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・ブチリルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・ブチリルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・ブチリルセルロース、
【0034】
メチルメルカプトアセチル・アセチル・プロピオニルセルロース、エチルメルカプトアセチル・アセチル・プロピオニルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・アセチル・プロピオニルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・アセチル・プロピオニルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・アセチル・プロピオニルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチル・プロピオニルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・アセチル・プロピオニルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・アセチル・プロピオニルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・アセチル・プロピオニルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・アセチル・プロピオニルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・アセチル・プロピオニルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・アセチル・プロピオニルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・アセチル・プロピオニルセルロース、
【0035】
メチルメルカプトアセチル・アセチル・ブチリルセルロース、エチルメルカプトアセチル・アセチル・ブチリルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・アセチル・ブチリルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・アセチル・ブチリルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・アセチル・ブチリルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチル・ブチリルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・アセチル・ブチリルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・アセチル・ブチリルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・アセチル・ブチリルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・アセチル・ブチリルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・アセチル・ブチリルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・アセチル・ブチリルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・アセチル・ブチリルセルロース、などを挙げることができる。
【0036】
更に好ましくは、メチルメルカプトアセチルセルロース、エチルメルカプトアセチルセルロース、プロピルメルカプトアセチルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチルセルロース、ブチルメルカプトアセチルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリルセルロース、
【0037】
メチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、エチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、
【0038】
メチルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、エチルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・プロピオニルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・プロピオニルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・プロピオニルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・プロピオニルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・プロピオニルセルロース、を挙げることができる。
【0039】
特に好ましくは、メチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、エチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、プロピルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、イソプロピルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、ブチルメルカプトアセチル・アセチルセルロース、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(エチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(プロピルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(イソプロピルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、3−(ブチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロース、4−(メチルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、4−(エチルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、4−(プロピルメルカプト)ブチリル・アセチルセルロース、を挙げることができる。
【0040】
<セルロース化合物の製造方法>
本発明のセルロース化合物の一般的な合成方法については、特開平6−329561号公報、特開平5−240848号公報、Macromol.Chem.Phys.,1996年,197巻,953-964頁、Macromol.Chem.Phys.,2002年,203巻,961-967頁、Org.Biomol.Chem.,2004年,2巻,402-407頁、前述の非特許文献1、2などに詳細に記載されており、本発明においても適宜適用することができる。
【0041】
(原料および前処理)
セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92質量%〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。
セルロース原料がシート状や塊状である場合は、あらかじめ解砕しておくことが好ましく、セルロースの形態は綿状、羽毛状、あるいは粉末状になるまで解砕が進行していることが好ましい。
【0042】
(活性化処理)
本発明において、セルロース原料はエステル化に先立って、活性化剤と接触させる前処理(活性化)を行うことが好ましい。活性化剤としてはカルボン酸を使用することが好ましい。添加方法としては噴霧、滴下、浸漬などの任意の方法から選択することができ、活性化はいかなる温度ならびに時間を要して行ってもよい。
【0043】
本発明のセルロース化合物は、以下の文献ならびにこれらの引用文献に記載の一般的方法を単独または組み合わせて適用することによっても合成することができる。
「セルロースの事典」131−144ページ、セルロース学会編、2000年
「Comprehensive Cellulose Chemistry,Volume 2」、Wiley-Vch、2001年
【0044】
本発明のセルロース化合物の合成法としては、1段階あるいは多段階の合成から選択できる。
1段階合成法は、セルロースからエステル化を実施することにより合成するもので、エステル化剤(酸無水物あるいは酸ハライドなど)として2種類以上の混合物または、2種類のカルボキシル基で構成される混合酸無水物を用いて反応させればよい。
多段階合成法は、セルロースから合成中間体を一旦合成し、それを次工程の出発物質として合成する製造法であり、1段階での合成が化学的製造適性、工業的生産性、あるいは経済性の点で適さない場合などに選択することができる。
ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの安価な化合物をエステル化して本発明の化合物を合成する場合などに、特に有用である。工業的なセルロース化合物の製造法においては、エステル化、加水分解、解重合などを、中間体を取り出すことなく逐次的に行って製造する場合もあるが、このような合成法も多段階合成法の範疇と考えることができる。
【0045】
(ろ過)
セルロース化合物中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物などを除去または削減する目的として、反応混合物(ドープ)のろ過を行ってもよい。ろ過は、反応中から本発明のセルロース化合物の再沈殿までの間のいかなる工程において行ってもよい。ろ過圧や取り扱い性の制御の目的から、ろ過に先立って適切な溶媒で希釈することも好ましい。
【0046】
(再沈殿)
反応により得られたセルロース化合物溶液を、貧溶媒(水、アルコールなどを含む溶媒)中に混合するか、セルロース化合物溶液中に、貧溶媒を混合することにより、セルロース化合物を再沈殿させ、洗浄を行うことにより目的のセルロース化合物を得ることができる。再沈殿は連続的に行っても、一定量ずつバッチ式で行ってもよい。また、温度により沈降性が変動する場合には、その性質に応じて、冷却、加熱、煮沸などの操作を行っても良い。セルロース化合物溶液の濃度、貧溶媒の組成、沈殿方法をセルロース化合物の置換様式あるいは重合度により調整することで、再沈殿したセルロース化合物の形態や見かけ密度、あるいは分子量分布を制御することも好ましい。
【0047】
(洗浄)
生成したセルロース化合物は洗浄処理することが好ましい。洗浄溶媒はセルロース化合物の溶解性が低く、かつ、不純物を除去することができるものであればいかなるものでもよいが、通常は水、またはアルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)のような貧溶媒が用いられる。洗浄液の温度は、好ましくは15℃〜100℃であり、さらに好ましくは25℃〜90℃であり、特に好ましくは30℃〜80℃である。洗浄処理はろ過と洗浄液の交換を繰り返すいわゆるバッチ式で行っても、連続洗浄装置を用いて行ってもよい。洗浄の進行はいかなる手段で追跡を行ってよいが、水素イオン濃度、イオンクロマトグラフィー、電気伝導度、ICP、元素分析、原子吸光スペクトルなどの方法を好ましい例として挙げることができる。
【0048】
(安定化)
洗浄後のセルロース化合物は、熱安定性を向上させたり、カルボン酸臭を低下させることを目的として、弱アルカリ(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物など)の水溶液や有機溶剤溶液などで処理することも好ましい。
残存させる安定化剤の量と種類は、洗浄液の量、洗浄の温度、時間、攪拌方法、洗浄容器の形態、安定化剤の組成や濃度により制御できる。
【0049】
(重合度)
本発明で用いられるセルロース化合物の重合度は、GPC法による数平均重合度が好ましくは80〜1000、より好ましくは100〜850、さらに好ましくは120〜650であり、特に好ましくは130〜450である。このとき、GPC法による数平均重合度とは、数平均分子量を繰り返し単位の平均分子量で除すことで求めることができる。
平均重合度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布測定の他に、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)などの方法によっても測定できる。これらについては、さらに特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明においては、セルロース化合物の重量平均重合度/数平均重合度が1.0〜5であることが好ましく、1.3〜4であることがさらに好ましく、1.5〜3.5であることが特に好ましい。
また、本発明で用いられるセルロース化合物の数平均分子量の範囲は、24000〜500000が好ましく、30000〜430000がより好ましく、36000〜310000がさらに好ましく、39000〜230000が特に好ましい。
【0050】
本発明において置換基の平均置換度は、1H−NMRあるいは13C−NMRにより決定することができる。
【0051】
本発明においては異なる2種類以上のセルロース化合物を混合あるいは層を分けて用いてもよい。
【0052】
(乾燥)
本発明においてセルロース組成物の含水率を好ましい量に調整するためには、セルロース組成物を乾燥することが好ましい。乾燥の方法については、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されないが、加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独または組み合わせで用いることで効率的に行うことが好ましい。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは50〜100℃である。本発明のセルロース組成物は、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
【0053】
(形態)
本発明のセルロース組成物は粒子状、粉末状、繊維状、塊状、溶液、溶融物、フィルムなど種々の形状を取ることができる。
フィルム製造の原料としては粒子状または粉末状であることが好ましいことから、乾燥後のセルロース組成物は、粒子サイズの均一化や取り扱い性の改善のために、粉砕や篩がけを行ってもよい。セルロース組成物が粒子状であるとき、使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子サイズを有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子サイズを有することが好ましい。セルロース組成物粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。また、本発明のセルロース組成物は、見かけ密度が好ましくは0.5〜1.3g/cm3、さらに好ましくは0.7〜1.2g/cm3、特に好ましくは0.8〜1.15g/cm3である。見かけ密度の測定法に関しては、JIS K−7365に規定されている。
本発明のセルロース組成物は安息角が10〜70度であることが好ましく、15〜60度であることがさらに好ましく、20〜50度であることが特に好ましい。
【0054】
<セルロースフィルムの光学的性質>
次に、本発明のセルロースフィルムについて説明する。本発明のセルロースフィルムは、下記の式(i)および(ii)を満足することが好ましい。
式(i): 0nm≦Re≦80nm
式(ii): 0nm≦Rth≦300nm
Reは0nm〜60nmがより好ましく、0nm〜30nmが特に好ましい。Rthは0nm〜250nmがより好ましく、0nm〜200nmが特に好ましい。
【0055】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(13)及び式(14)によりRthを算出することもできる。
【0056】
【数1】


【0057】
式(13)中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
【0058】
【数2】


【0059】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)や各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRにおいてnx、ny、nzが算出される。この算出されたnx、ny、nzによりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0060】
本発明のセルロースフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、以下に記載する溶融製膜法または溶液製膜法により製造することが好ましい。
【0061】
<溶融製膜>
本発明のセルロースフィルムを溶融製膜法により製造する場合の好ましい態様について説明する。
【0062】
本発明において、セルロース化合物は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明のセルロース化合物以外の高分子成分や、各種添加剤を適宜混合することもできる。混合される成分はセルロース化合物との相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上となるようにする。
【0063】
溶融製膜に用いるセルロース組成物の220℃の溶融粘度(製造されるセルロースフィルムの220℃の溶融粘度)は、好ましくは100Pa・s〜2000Pa・s、より好ましくは120Pa・s〜1500Pa・s、さらに好ましくは150Pa・s〜1000Pa・sである。
重合度が好ましい範囲よりも大き過ぎると、溶融粘度が高くなり過ぎて製膜が困難になることがある。一方、重合度が好ましい範囲よりも小さ過ぎると、フィルムとしての強度が下がり過ぎるほか、溶融粘度が下がり過ぎて混練中に充分な剪断を掛けられず混練が不十分になることがある。
溶融粘度を上記の好ましい範囲にするには、セルロース化合物の数平均重合度が70〜250であることが好ましく、より好ましくは90〜200、特に好ましくは120〜180である。また、重量平均重合度は150〜700であることが好ましく、より好ましくは200〜550、特に好ましくは250〜500である。
【0064】
(安定剤)
本発明においては、高温溶融製膜時のセルロース化合物の安定性を保つために、安定剤を添加することが有効である。特に、分子量500以上であるフェノール系安定剤の少なくとも一種、および分子量500以上である亜リン酸エステル系安定剤またはチオエーテル系安定剤から選ばれる少なくとも一種を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定剤は、公知の任意のフェノール系安定剤を使用することができる。好ましいフェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する安定剤も好ましい素材として挙げられる。
【0065】
また、酸化防止効果を有する分子量500以上の亜リン酸エステル系安定剤を含有することも好ましい。これらの化合物の例としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物から挙げることができる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材の中から選択して用いることができる。
【0066】
また、チオエーテル系安定剤としては、公知の任意のチオエーテル系安定剤を用いることができる。これらの安定剤の使用に際しては、フェノール系安定剤の少なくとも一種、および亜リン酸エステル系安定剤またはチオエーテル系安定剤から選ばれる少なくとも一種がセルロース化合物に対してそれぞれ0.02〜3質量%含有することが好ましく、特には0.05〜1質量%含有することである。フェノール系安定剤と、亜リン酸エステル系安定剤またはチオエーテル系安定剤の含有量はその比率は特に限定されないが、好ましくは1/10〜10/1(質量部)であり、より好ましくは1/5〜5/1(質量部)であり、さらに好ましくは1/3〜3/1(質量部)であり、特には1/3〜2/1(質量部)が好ましい。
【0067】
さらに、本発明においては同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する安定剤も推奨される。それらの素材は特開平10−273494号公報に記載されている。さらに、特開昭61−63686号公報に記載の長鎖脂肪族アミン、特開平6−329830号公報に記載の立体障害アミン基を含む化合物、特開平7−90270号公報に記載のヒンダードピペリジニル系光安定剤、特開平7−278164号公報に記載の有機アミン等も使用し得る。
【0068】
(可塑剤)
溶融セルロース化合物に可塑剤を添加すれば、セルロース化合物の結晶融解温度(Tm)を下げることができる。本発明に用いる可塑剤の分子量は特に限定されないが、好ましくは高分子量の可塑剤が挙げられ、例えば分子量は500以上が好ましく、より好ましくは550以上であり、さらには600以上が好ましい。可塑剤の種類としては、リン酸エステル類、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などが挙げられる。それらの可塑剤の形状としては固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。溶融製膜を行なう場合は、揮発性の低いものを特に好ましく使用することができる。
【0069】
これらの可塑剤の添加量は、溶融製膜に用いるセルロース組成物の0質量%〜15質量%が好ましく、0質量%〜10質量%がより好ましく、0質量%〜8質量%が特に好ましい。これらの可塑剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。
【0070】
(紫外線吸収剤)
溶融製膜に用いるセルロース組成物には、紫外線防止剤を添加してもよい。紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。その添加量は、調製する溶融物(メルト)の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0071】
(微粒子)
本発明においては、溶融製膜に用いるセルロース組成物に微粒子を添加することも好ましく行われる。
本発明において微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられるが、いずれか一方でも、両方を含んでいてもよい。本発明におけるセルロース化合物に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、好ましくは5nm〜3μmであり、より好ましくは5nm〜2.5μmであり、特に好ましくは20nm〜2.0μmである。微粒子の添加量は、セルロース化合物に対して0.005〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらには0.02〜0.4質量%が特に好ましい。本発明において「平均一次粒子サイズ」とは、分散状態(非凝集状態)にある微粒子の粒子サイズをいい、平均一次粒子サイズは、動的光散乱法(数nm〜1μm)、レーザー回折(0.1μm〜数千μm)、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法(数十nm〜1μm)などの既知の方法により測定することができる。
【0072】
無機化合物の微粒子の好ましい例としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、V25、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。好ましく、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、およびV25の少なくとも1種が好ましく、さらに好ましくはSiO2、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2である。
【0073】
さらに、無機化合物からなる微粒子は、セルロース組成物ならびにフィルム中で安定に存在させるために表面処理されていることが好ましい。無機微粒子は、表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としては、カップリング剤を使用する化学的表面処理と、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とがあるが、本発明においてはカップリング剤の使用が好ましい。前記カップリング剤としては、オルガノアルコキシ金属化合物(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等)が好ましく用いられる。微粒子として無機微粒子を用いた場合(特にSiO2を用いた場合)ではシランカップリング剤による処理が特に有効である。前記シランカップリング剤としてはオルガノシラン化合物が使用可能である。前記シランカップリング剤の使用量は特に限定されないが、好ましくは無機微粒子に対して0.005〜5質量%使用することが推奨され、さらには0.01〜3質量%が好ましい。
【0074】
(離型剤)
溶融製膜に用いるセルロース組成物は、フッ素原子を有する化合物を含むことも好ましい。前記フッ素原子を有する化合物は、離型剤としての作用を発現でき、低分子量化合物であっても重合体であってもよい。重合体としては、特開2001−269564号公報に記載の重合体を挙げることができる。前記フッ素原子を有する重合体として好ましいものは、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含有してなる単量体を重合せしめた重合体である。前記重合体に係わるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体としては、分子中にエチレン性不飽和基とフッ素化アルキル基とを有する化合物であれば特に制限はない。またフッ素原子を有する界面活性剤も利用でき、特に非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0075】
(ペレット化)
上記セルロース化合物と添加物は溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
【0076】
(溶融製膜の具体的方法)
以下に、溶融製膜の具体的な方法について説明する。
(1)乾燥
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を乾燥して、含水率を好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下にする。
【0077】
(2)溶融押出し
乾燥したセルロース化合物樹脂を押出機の供給口からシリンダー内に供給する。
押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5が好ましく、より好ましくは3.0〜4.0である。L(スクリュー長)/D(スクリュー径)は20〜70が好ましい。より好ましくは24〜50である。
樹脂の酸化防止のために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。
【0078】
(3)濾過
押し出し機出口にて、ブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。
高精度濾過のために、ギアポンプ通過後にリーフ型ディスクフィルター型を濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、単段で行っても、多段で行ってもよい。濾材はステンレス鋼,スチールを用いることが好ましく、中でもステンレス鋼が望ましい。濾材は線材を編んだもの、金属焼結濾材が使用でき、特に後者が好ましい。
【0079】
(4)ギアポンプ
厚み精度向上(吐出量の変動減少)のために、押出機とダイスの間にギアポンプを設置するのが好ましい。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も好ましい。ギアポンプ内の滞留部分が樹脂劣化の原因となるため、滞留の少ない構造が好ましい。
【0080】
(5)ダイ
ダイ内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイのいずれのタイプでも構わない。また、Tダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れてもよい。
ダイのクリアランスは40〜50mm間隔で調整可能であることが好ましく、25mm間隔以下で調整可能であることがより好ましい。また、下流のフィルム厚みを計測してダイの厚み調整にフィードバックさせる方法も厚み変動の低減に有効である。
機能層を外層に設けるため、多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分〜60分であり、より好ましくは4分〜30分である。
【0081】
(6)キャスト
ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、タッチロールを用いることも好ましい。
この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。このようにして得た未延伸フィルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは50μm〜200μmである。
【0082】
(7)巻き取り
巻き取り前に両端をトリミングすることが好ましい。トリミングされた部分はフィルムなどのセルソース誘導体の原料として再利用してもよい。好ましい巻き取り張力は1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは3kg/m幅〜20kg/m幅である。巻き取り張力は、一定の巻き取り張力で巻き取ってもよいが、巻取り径に応じてテーパーをつけ巻取ることがより好ましい。
またニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
巻き取り前に、少なくとも片面にラミネートフィルムを付けてもよい。
【0083】
本発明のセルロースアシレート組成物がフィルムである場合、残留有機溶媒量は好ましくは0.03質量%以下、さらに好ましくは0.02%以下、特に好ましくは0.01%以下である。残留溶媒がこのような範囲にある場合には、溶媒の臭気の発生や、溶媒の蒸発によるフィルムの特性変化が起きにくく好ましい。溶融製膜法は残留溶媒を少なくするのに有効な方法である。
残留溶媒の量は、ガスクロマトグラフィー法などにより測定することができる。
【0084】
<溶液製膜>
次に、本発明のセルロースフィルムを溶液製膜法により製造する場合の好ましい態様について説明する。溶液製膜については、公開技法2001-001745などにも詳細が記載されている。
本発明においては、セルロース化合物が溶解し流延,製膜できて、その目的が達成できる限りは、セルロース化合物の溶媒は特に限定されない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤、ならびに、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる非塩素系有機溶媒を挙げることができる。
【0085】
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0086】
また塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒とは併用して用いてもよい。併用される非塩素系有機溶媒については、特に限定されないが、酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができる。
【0087】
本発明の組成物に用いられるセルロース化合物は、有機溶媒に10〜35質量%溶解させることが好ましい。より好ましくは13〜30質量%であり、特には15〜28質量%溶解しているセルロース化合物溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロース化合物を実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロース化合物溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロース化合物溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロース化合物からフィルムを作成するのに適した溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
【0088】
本発明のセルロース化合物の溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく、さらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号各公報などにセルロース化合物溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロース化合物の有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明に用いられるセルロース化合物溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0089】
本発明に用いられるセルロース化合物溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲内にあることが好ましい。
粘度および動的貯蔵弾性率の測定方法を以下に説明する。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求める。なお、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。
本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であることが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万が好ましい。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paであることが好ましい。
【0090】
(溶液製膜の具体的方法)
次に、本発明のセルロースフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースフィルムを製造する方法および設備は、従来セルロースフィルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロース化合物溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギアポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離,延伸などに分類される。
【0091】
本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。さらには−30〜40℃であることが好ましく、特には−20〜30℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロース化合物溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロース化合物から有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できる。
【0092】
流延工程では1種類のセルロース化合物溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロース化合物溶液を同時およびまたは逐次共流延してもよい。
【0093】
<セルロースフィルムの処理>
(延伸)
以上のようにして、溶融製膜法あるいは溶液製膜法によって製造した本発明のセルロースフィルムは、面状の改良、Re,Rthの発現、線膨張率の改善などを目的として、延伸することが好ましい。
延伸は製膜工程中、オン−ラインで実施してもよく、製膜完了後、一度巻き取った後オフ−ラインで実施してもよい。すなわち、溶融製膜の場合、延伸は製膜中の冷却が完了しない実施してもよく、冷却終了後に実施してもよい。
延伸はガラス転移温度Tg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、特に好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は0.1%〜500%、さらに好ましくは10%〜300%、特に好ましくは30%〜200%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
【0094】
このような延伸は縦延伸、横延伸、およびこれらの組み合わせによって実施される。縦延伸は、(1)ロール延伸(出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸)、(2)固定端延伸(フィルムの両端を把持し、これを長手方向に次第に早く搬送し長手方向に延伸)、等を用いることができる。さらに横延伸は、テンター延伸(フィルムの両端をチャックで把持しこれを横方向(長手方向と直角方向)に広げて延伸)、等を使用することができる。これらの縦延伸、横延伸は、それだけで行なってもよく(1軸延伸)、組み合わせて行ってもよい(2軸延伸)。2軸延伸の場合、縦、横逐次で実施してもよく(逐次延伸)、同時に実施してもよい(同時延伸)。
縦延伸、横延伸の延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、特に好ましくは30%/分〜800%/分である。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
【0095】
このような延伸に引き続き、縦または横方向に0%〜10%緩和することも好ましい。さらに、延伸に引き続き、150℃〜250℃で1秒〜3分熱固定することも好ましい。
このようにして延伸した後の膜厚は10〜300μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、30μm〜100μmが特に好ましい。
【0096】
上述の未延伸または延伸セルロースフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板を組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。
【0097】
(光弾性係数)
本発明のセルロースフィルムは、偏光板保護フィルム、または位相差板として使用されることが好ましい。偏光板保護フィルム、または位相差板として使用した場合には、吸湿による伸張、収縮による応力により複屈折(Re,Rth)が変化する場合がある。このような応力に伴う複屈折の変化は光弾性係数(光弾性定数)として測定できるが、その範囲は、5×10-7(cm2/kgf)〜30×10-7(cm2/kgf)が好ましく、6×10-7(cm2/kgf)〜25×10-7(cm2/kgf)がより好ましく、7×10-7(cm2/kgf)〜16×10-7(cm2/kgf)であることが特に好ましい。
【0098】
(表面処理)
未延伸、または、延伸後のセルロースフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。
【0099】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液に浸漬してもよく、鹸化液を塗布してもよい。浸漬法の場合は、NaOHやKOH等のpH10〜14の水溶液を20℃〜80℃に加温した槽を0.1分から10分通過させたあと、中和、水洗、乾燥することで達成できる。
これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレットに内容の記載が挙げられる。
【0100】
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
【0101】
<機能層との組み合わせ>
本発明のセルロースフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板の形成)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
【0102】
[偏光膜]
(偏光膜の素材)
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素または二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素または二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。
二色静止基礎の例としては、例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
【0103】
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーまたは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
なかでも水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。
ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0104】
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合してもよく、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与してもよい。架橋は、光、熱またはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許第23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
【0105】
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
【0106】
(偏光膜の延伸)
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がより好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸により実施することができる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸により実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。
【0107】
延伸の終了後、好ましくは50℃〜100℃、より好ましくは60℃〜90℃の温度範囲で、好ましくは0.5分〜10分、より好ましくは1分〜5分間乾燥する。
このようにして得られる偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、特に好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
【0108】
(貼り合せ)
上記鹸化後のセルロースフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、セルロースフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45°になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
【0109】
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光板を作成することができる。
【0110】
[光学補償層の付与(光学補償シートの作成)]
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
【0111】
(配向膜)
上記表面処理したセルロースフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。
【0112】
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、または液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
【0113】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーまたは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0114】
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0115】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、または液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
【0116】
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0080]〜[0100]に記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
【0117】
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。2種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報の段落番号[0023]〜[0024]に記載の化合物等が挙げられる。架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0118】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行ってよい。
【0119】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。
【0120】
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、液晶表示装置を製造する際に行う液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムまたはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
【0121】
(光学異方性層)
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、または架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0122】
1)棒状液晶性分子
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
棒状液晶性分子については、「季刊化学総説第22巻 液晶の化学」(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および「液晶デバイスハンドブック」日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
【0123】
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。具体的には、例えば特開2002−62427号公報の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
【0124】
2)円盤状液晶性分子
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻,141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されている。
円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載されている。
【0125】
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0151]〜[0168]に記載の化合物等が挙げられる。
【0126】
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
【0127】
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子または配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子または円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
【0128】
(光学異方性層の他の組成物)
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、または配向を阻害しないことが好ましい。
【0129】
重合性モノマーとしては、例えば、特開2002−296423号公報の段落番号[0018]〜[0020]に記載のものが挙げられる。
界面活性剤としては、特にフッ素系化合物が好ましく、具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]に記載の化合物が挙げられる。
【0130】
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースアシレートを挙げることができる。セルロースアシレートの好ましい例としては、特開2000−155216号公報の段落番号[0178]に記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1質量%〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0131】
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70℃〜170℃がより好ましい。
【0132】
(光学異方性層の形成)
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
【0133】
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
【0134】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。
【0135】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがより好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることが特に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0136】
(偏光膜との組み合わせ)
この光学補償フィルムと偏光膜を組み合わせることも好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
【0137】
偏光膜と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
【0138】
[反射防止層の付与(反射防止フィルムの作製)]
反射防止フィルムは、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)を、透明支持体上に設けてなる。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜の形成方法として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法等が挙げられる。
【0139】
一方、生産性が高い反射防止フィルムとして、無機粒子をマトリックスに分散した分散物を塗布することにより薄膜を積層した反射防止フィルムも各種提案されている。塗布による反射防止フィルムとして、表面に微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した層を最上層に形成した反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースフィルムは上記いずれの方式で製造する反射防止フィルムにも適用できるが、塗布による方式(塗布型)で製造する反射防止フィルムに適用することが特に好ましい。
【0140】
(塗布型反射防止フィルムの層構成)
透明支持体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)を順に形成した層構成からなる反射防止フィルムは、屈折率が以下の関係を満足するように設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間には、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなるものであってもよい。例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0141】
反射防止フィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが特に好ましい。
【0142】
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止フィルムの高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上の無機化合物が挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
【0143】
このような超微粒子とするためには、粒子表面を表面処理剤で処理する技術(例えば、特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報に記載されるシランカップリング剤で処理する技術や、特開2001−310432号公報等に記載されるアニオン性化合物あるいは有機金属カップリング剤で処理する技術)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする技術(例えば、特開2001−166104等に記載される技術)、特定の分散剤を併用する技術(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号明細書、特開2002−2776069号公報等に記載される技術)等を利用することができる。マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
【0144】
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上有する多官能性化合物を含有する組成物、加水分解性基を有する有機金属化合物およびその部分縮合体の組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。これらの組成物に用いる化合物として、例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載される硬化性膜を挙げることができる。
【0145】
高屈折率層の屈折率は、一般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
【0146】
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる層である。低屈折率層の屈折率は一般に1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
低屈折率層は、耐擦傷性や防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させるためには表面に滑り性を付与することが有効であり、具体的には従来公知のシリコーン化合物や含フッ素化合物を導入した薄膜層の形成法を適用することができる。
【0147】
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性または重合性の官能基を含む化合物であることが好ましい。
【0148】
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物はポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基または重合性官能基を有し、膜中で橋かけ構造を形成しているものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例えば、サイラプレーン(チッソ社製、商品名)等)、両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましく、60〜120nmであることが特に好ましい。
【0149】
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設けることができる。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成することが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基を有する有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物であることが好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0150】
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等に記載されるものが挙げられる。
【0151】
(前方散乱層)
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
【0152】
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等に記載される技術を用いることができる。
【0153】
(その他の層)
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0154】
(塗布方法)
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書)により、塗布により形成することができる。
【0155】
(アンチグレア機能)
反射防止フィルムは、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止フィルムの表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止フィルムがアンチグレア機能を有する場合、反射防止フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0156】
反射防止フィルムの表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
【0157】
<液晶表示装置>
本発明のセルロースフィルム、該セルロースフィルムを用いた偏光板、位相差フィルムおよび光学フィルムは、TNモード液晶表示装置、IPSモード液晶表示装置、OCBモード液晶表示装置などに好ましく組み込むことができる。
【0158】
本発明によれば、光学フィルムに好適である新規なセルロース化合物を得ることができる。更に、本発明によれば、該セルロース化合物を用いた、湿度によるレターデーション変化が少なく、光弾性定数の小さいセルロース組成物、該セルロース組成物からなる高品位なセルロースフィルム、並びに該セルロースフィルムを用いた位相差フィルム、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム及び画像表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0159】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0160】
(物性評価)
(1)平均分子量
GPC装置(東ソー社製HLC-8220GPC、商品名)を用いて下記条件で測定して、数平均分子量(Mn)ならびに重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、検量線はポリスチレン(TSK標準ポリスレン:分子量1050、5970、18100、37900、190000、706000)を用いて作成した。得られた平均分子量を、下記(2)の方法で決定した置換度から求めた1繰り返し単位あたりの分子量で除して、重量平均重合度(DPw)、数平均重合度(DPn)とした。
溶離液:DMF
流量:1ml/分
検出器:RI
試料濃度 0.5%
【0161】
(2)置換度
1H−NMR法ならびに13C−NMR法により、セルロース化合物の面積強度比を比較することにより、置換度を決定した。
【0162】
(3)ガラス転移温度(Tg)
DSCの測定パンにセルロースフィルムを20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から240℃まで昇温した後、30℃まで−50℃/分で冷却した。この後、再度30℃から240℃まで昇温してベースラインが低温側から変位し始める温度をTgとした。
【0163】
実施例1
<3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロースP−1の調製>
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、アセチルセルロース(平均アセチル置換度2.4)50質量部、アセトン500質量部、ピリジン29質量部を取り、40℃で攪拌して均一な溶液を作製した。混合物を5℃に冷却し、3−(メチルメルカプト)プロピオニルクロリド40質量部を0.5時間かけて添加した後、内温を40℃まで上昇させて3時間攪拌した。メタノール50質量部を添加して40℃でさらに0.5時間攪拌した後、内温を25℃まで冷却した。メタノール5000質量部に攪拌しながら反応混合物を加え、沈降した粗体を濾取した。粗体を50℃のメタノール3000質量部で洗浄した後に脱液する操作を繰り返して精製し、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロースP−1を得た。
得られたP−1は、アセチル置換度2.38、3−(メチルメルカプト)プロピオニル置換度0.42、数平均分子量73400、重量平均分子量203000であった。
【0164】
実施例2
<3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロースP−2の調製>
アセチルセルロース(平均アセチル置換度2.4)に代えてアセチルセルロース(平均アセチル置換度2.1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3−(メチルメルカプト)プロピオニル・アセチルセルロースP−2を得た。
得られたP−2は、アセチル置換度2.08、3−(メチルメルカプト)プロピオニル置換度0.52、数平均分子量78600、重量平均分子量210600であった。
【0165】
実施例3
<メチルメルカプトアセチル・アセチルセルロースP−3の調製>
3−(メチルメルカプト)プロピオニルクロリドに代えてメチルメルカプトアセチルクロリドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、メチルメルカプトアセチル・アセチルセルロースP−3を得た。
得られたP−3は、アセチル置換度2.38、メチルメルカプトアセチル置換度0.48、数平均分子量70300、重量平均分子量199000であった。
【0166】
実施例4
<メチルメルカプトアセチル・アセチルセルロースP−4の調製>
アセチルセルロース(平均アセチル置換度2.4)に代えてアセチルセルロース(平均アセチル置換度2.1)を、3−(メチルメルカプト)プロピオニルクロリド40質量部に代えてメチルメルカプトアセチルクロリド35質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アセチル・メチルメルカプトアセチルセルロースP−4を得た。
得られたP−4は、アセチル置換度2.05、メチルメルカプトアセチル置換度0.54、数平均分子量69700、重量平均分子量189400であった。
【0167】
実施例5〜12
得られるセルロース化合物に表1記載の置換基が導入されるように、原料のセルロース化合物および塩化物を適宜変更したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の化合物(表1に記載)P−5〜P−12について調製した。P−5〜P−12の各置換基の置換度、数平均分子量および重量平均分子量を表1に示す。
【0168】
【表1】


【0169】
実施例13
<セルロースフィルムの調製(溶液製膜)>
(セルロース組成物溶液の作製)
(i)溶剤の調製
溶媒組成が、ジクロロメタン(82.0質量%)、メタノール(15.0質量%)、ブタノール(3.0質量%)からなる溶剤を調製した。
【0170】
(ii)セルロース組成物の調製(乾燥)
実施例1〜12で作製したセルロース化合物(P−1〜P−12)ならびに、比較例としてセルロースアセテートC−1(ダイセル化学工業社製;アセチル置換度=2.82)、セルロースアセテートプロピオネートC−2(イーストマンケミカル社製;製品番号482−20;アセチル置換度=0.16、プロピオニル置換度=2.65、Mn=66200、Mw=211000)を、それぞれ120℃で乾燥させて、含水率を0.5%以下とした。
【0171】
(iii)添加剤の添加
下記組成の添加剤を(i)で得られた溶剤に添加した。なお、下記の添加量(質量%)は全てセルロース化合物の絶乾燥質量に対する割合である。
〔添加剤組成〕
可塑剤A(トリフェニルホスフェート) 3.1質量%
可塑剤B(ビフェニルジフェニルホスフェート) 1質量%
【0172】
(iv)膨潤・溶解
前記(iii)で得られた添加剤を含んだ溶液中に、前記(ii)の各セルロース化合物を撹拌しながら添加した。撹拌停止後、25℃で3時間膨潤させてスラリーを作製した。該スラリーを再度撹拌し、セルロース化合物を完全に溶解した。
【0173】
(v)ろ過・濃縮
この後、前記スラリーを絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙社製、#63、商品名)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025、商品名)にて濾過し、セルロース組成物溶液を得た。セルロース組成物溶液の濃度は25質量%(全固形分×100/(全固形分量+溶剤量)であった。
【0174】
(セルロースフィルムの調製(溶液製膜))
上述のセルロース組成物溶液を35℃に加温し、下記のバンド方法で鏡面ステンレス支持体上に流延した。該バンド方法においては、セルロース組成物溶液をギーサーに通して、15℃に保温したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号公報に記載の形態に類似するものを用いた。また、流延部の空間温度を40℃とし、さらに熱供給のための空気を風速30m/秒で送風した。残留溶剤が100質量%となった時点でセルロースフィルムを鏡面ステンレス支持体から荷重20g/cmで剥ぎ取り、40℃〜120℃の間を昇温速度が30℃/分となるように昇温(除昇温)した。その後、120℃で5分、さらに145℃で20分乾燥した後、30℃/分で徐冷し、セルロースフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与し、ロール状に巻き取った。
【0175】
(評価)
<面状の目視観察>
得られた各セルロースフィルムの面状を目視で観察し、流動筋が感知されないレベルを良好と判断した。
<光線透過率の測定>
UV−3100PC分光光度計(商品名、島津製作所製)により、580nmの光線透過率(100μm換算)を測定した。
<光弾性定数の測定>
まず、試料フィルムを1cm幅×10cm長(測定方向(MD又はTD)が10cmになるようにする)に切り出した。これをエリプソ測定装置(M−150、商品名、日本分光製)にセットし、長手方向(10cm長)に沿って100g、200g、300g、400g及び500gの荷重をかけながら、順次25℃・相対湿度60%において632.8nmの光でそれぞれReを測定した。次いで、横軸に応力(荷重をフィルム断面積で割った値(kgf/cm2))、縦軸にRe変化(nm)をプロットし、この傾きから光弾性定数(cm2/kgf)を求めた。
<Re及びRthの測定>
ReおよびRthについて、80%RH(相対湿度)と10%RHでのRe及びRthを波長550nmにて測定を行った。
これらの結果を表2に示す。
【0176】
【表2】


【0177】
表2の結果から明らかなように、前記の−C(=O)−L−S−R1で表される基および脂肪族アシル基がセルロースに置換した本発明のセルロース化合物P−1〜P−12から作製した本発明のセルロースフィルム101〜112はいずれも、光弾性定数が小さく、Re及びRthの湿度依存性が小さいことがわかった。また、面状が良好で、高い光線透過率を示すことがわかった。
これに対して、アセチル基のみがセルロースに置換した比較用試料113は、光弾性定数は小さいが、Rthの湿度依存性が非常に大きいことが分かった。また、アセチル基及びプロピオニル基がセルロースに置換した比較用試料114は、湿度依存性は改良されているが、光弾性定数は本発明の化合物と比較すると大きいことが分かった。
以上の結果から明らかなように、本発明のセルロース化合物は光学フィルムとして好適に用いることができ、本発明のセルロース化合物から作製した本発明のセルロースフィルムは良好な性質を示すことがわかった。
【0178】
実施例14
(延伸フィルムの作製と評価)
実施例13で作製したセルロースフィルム101〜114を延伸し、それぞれのセルロースフィルムのTgより10℃高い温度で、15%のTD延伸をした。かかる延伸方法で作製した延伸セルロースフィルム201〜214のReおよびRthを測定した。ReおよびRthの測定は実施例13記載の方法と同様にして行った。その結果を表3に示す。
【0179】
【表3】


【0180】
表3の結果から明らかなように、前記の−C(=O)−L−S−R1で表される基および脂肪族アシル基がセルロースに置換した本発明のセルロースフィルム201〜212はいずれも、延伸によってReに対して大きなRthを発現することがわかった。また、本発明のセルロースフィルム201〜212はいずれも、Re及びRthの湿度依存性が小さいことがわかった。
これに対し、アセチル基のみがセルロースに置換した比較用試料213はRthの湿度依存性が非常に大きく、また、アセチル基及びプロピオニル基がセルロースに置換した比較用試料214はReの湿度依存性が本発明のセルロースフィルム201〜212に比べて大きいことが分かった。
【0181】
実施例15
(偏光板の作製と評価)
(1)セルロースフィルムの鹸化
上述の本発明の未延伸セルロースフィルム(実施例13)と、それを延伸した延伸セルロースフィルム(実施例14)のそれぞれについて、下記の方法で鹸化を行なった。
1.5mol/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液を鹸化液として用いた。これを60℃に調温し、セルロースフィルムを2分間浸漬した。この後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
【0182】
(2)偏光膜の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を作製した。
【0183】
(3)貼り合わせと評価
このようにして得た偏光膜と、上記鹸化処理した未延伸、延伸セルロースフィルムのうちから2枚選び、これらで上記偏光膜を挟んだ後、ポリビニルアルコール(PVA)(クラレ社製、PVA−117H、商品名)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースフィルムとの長手方向が90°となるように張り合わせた。このうち未延伸、延伸セルロースフィルムを特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置に25℃・相対湿度60%下で取り付け、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込んだ。本発明のセルロースフィルムを使用したものは、いずれも色調変化が小さく、表示むらの少ない良好な性能が得られた。
また、特開2002−86554号公報の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が斜め45°となるように延伸した偏光板についても同様に、本発明のセルロースフィルムを用いて作製したものは、上記同様に良好な結果が得られた。
【0184】
実施例16
(光学補償フィルムの作製と評価)
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、上述の鹸化済みの本発明の延伸セルロースフィルムを使用し、これを、特開2002−62431号公報の実施例9に記載のベンド配向液晶セルに25℃・相対湿度60%下で取り付け、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込んだ。本発明のセルロースフィルムを使用したものはコントラストの変化の小さい良好な表示性能が得られた。
【0185】
さらに特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムに代わって、本発明の延伸セルロースフィルムに変更し光学補償フィルターフィルムを作製した。この場合も同様に、良好な光学補償フィルムを作製できた。
また、本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板、位相差偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いたところ、良好な液晶表示装置を得た。
【0186】
実施例17
(低反射フィルムの作製と評価)
発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従い、上述の延伸セルロースフィルムを用いて低反射フィルムを作製したところ、本発明のセルロースフィルムを使用したものは、良好な光学性能が得られた。
【0187】
実施例18
(液晶表示装置の作製と評価)
さらに上記低反射フィルムを、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、良好な液晶表示装置を得た。
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年9月27日(2006.9.27)
【代理人】 【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三


【公開番号】 特開2008−81603(P2008−81603A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−263421(P2006−263421)