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【発明の名称】 非結晶セルロース誘導体
【発明者】 【氏名】佐藤 伸治

【氏名】藤原 一弘

【氏名】細川 幸司

【要約】 【課題】優れた吸水性、保水性、分散安定性、チキソトロピー性を有し、食品、医薬・化粧品、農薬、樹脂、塗料、染色、製紙、繊維、土木等の様々な分野で利用できる新規なセルロース誘導体を提供する。

【構成】無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4であり、且つ非結晶であることを特徴とする水不溶性及び/又はカルボキシメチルセルロース又はその塩。レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計50%粒子径に於いて、水を分散媒として測定した値のメタノールを分散媒として測定した値に対する比が2.0以上であることを特徴とする前記カルボキシルセルロース又はその塩。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4であり、且つ非結晶であることを特徴とする水不溶性及び/又は水膨潤性のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
【請求項2】
レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計50%粒子径に於いて、水を分散媒として測定した値のメタノールを分散媒として測定した値に対する比が2.0以上であることを特徴とする請求項1記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は新規なセルロース誘導体に関するものであり、詳しくは、優れた吸水性、保水性、分散安定性、チキソトロピー性を有し、食品、医薬・化粧品、農薬、樹脂、塗料、染色、製紙、繊維、土木等の様々な産業分野で利用できるカルボキシメチルセルロース又はその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
微結晶セルロースは、パルプ、リンター等の天然セルロースをはじめとするセルロース材料を塩酸や硫酸等の鉱酸で加水分解することにより非結晶部分を除去して結晶部分のみを取り出し、精製乾燥して得られる水不溶性の微細セルロース粒子である。微結晶セルロースは、吸水性、保水性、保形性、分散安定性、チキソトロピー性などの機能を有することから、食品添加剤、医薬品賦形剤、分散剤、充填剤等の分野で使用されている。
【0003】
微結晶セルロースの各性能をより向上させる方法として、表面に軽度にカルボキシメチルエーテル基を導入して水不溶性のセルロース誘導体とする方法がある(特許文献1,2)。しかしこの方法では、微結晶セルロースの粒子内部に結晶部分を残す為、依然として吸水性・保水性に乏しく、水中での分散安定性も低下し容易に沈降すると言う実用上の欠点を有している。一方、天然のセルロースやリグノセルロースを原料とする方法も開示されている(特許文献3)が、その方法で得られる製品も上記欠点の十分な解決に至っていない。
【0004】
【特許文献1】特公昭45−19438号公報
【特許文献2】特公平3−2881号公報
【特許文献3】特開平10−251301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するために創案されたものであり、優れた吸水性、保水性、分散安定性、チキソトロピー性を有し、食品、医薬・化粧品、農薬、樹脂、塗料、染色、製紙、繊維、土木等の様々な分野で利用できる新規なセルロース誘導体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、優れた吸水性、保水性、分散安定性、チキソトロピー性を示す水不溶性、水膨潤性のセルロース誘導体を開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、セルロースの結晶構造が完全に破壊された状態で、かつ、軽度にカルボキシメチル化されたカルボキシメチルセルロース又はその塩は、内部にもカルボキシメチルエーテル基が導入され、優れた水不溶性・水膨潤性を示す。その結果、所期の性能を満足できることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4であり、且つ非結晶であることを特徴とする水不溶性及び/又は水膨潤性のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
〔2〕レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計50%粒子径に於いて、水を分散媒として測定した値のメタノールを分散媒として測定した値に対する比が2.0以上であることを特徴とする前記〔1〕記載のカルボキシメチルセルロース又はその塩。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、水不溶性及び/又は水膨潤性を示し、従来のカルボキシメチルセルロース又はその塩と比較して吸水性、保水性、保形性、舌触り、チキソトロピー性が格段に優れている。吸水性については、高ショ糖濃度(〜80%程度)の溶液についても、高い吸水性を示すので、高ショ糖食品のベタツキ防止、糖衣の潮解性防止にも優れる。水中で用いる場合は、水に溶解しない物質及び粒子の分散安定性、再分散性、乳化安定性などを改善することができる。例えば、カーボンブラックなどの難分散性の粒子や硫酸バリウムなどの重い(沈降しやすい)粒子などの懸濁粒子安定性向上効果が格段に優れている。特に、カーボンブラックを懸濁安定化することができれば、導電性塗料などの添加剤として利用することができる。さらに、液体中の気泡状物質の安定性にも優れている。
従って、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は食品、医薬・化粧品、農薬、樹脂、塗料、染色、製紙、繊維、土木等の様々な産業分野で利用できる。
例えば、ココアや粉末飲料のケーキング防止;たれ類・ドレッシング・ケチャップなどのダレ性改良;ホイップクリームの泡性改良;糖衣を有する食品(菓子など)や医薬品(錠剤など)の保存性改良などの各効果を得ることができる。また、フェイスパウダー・ファンデーションなど化粧品に配合することにより、汗の給水を促進し、前記化粧品を顔に塗った際のてかり防止、メイク落ち防止効果などのほか、つや消し効果も得ることができる。さらに、歯磨き粉の曳糸性改良、絆創膏のかぶれ防止等にも利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基がカルボキシメチルエーテル基に置換された構造を持つ。カルボキシルセルロースは、塩の形態であっても良く、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などとすることができる。本発明においてセルロースとは、D−グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」とも言う。)がβ1−4結合で連なった構造の多糖を意味する。一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。天然セルロースとしては、晒または未晒木材パルプ、精製リンター、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等が例示される。晒又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹等が挙げられる。また、晒又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合わせた方法でも良く、例えば、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に、化学的に精製され、主として薬品に溶解して使用する、人造繊維、セロハンなどの主原料となる溶解パルプを用いてもよい。再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。微細セルロースとは、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとするセルロース系素材を酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等によって解重合処理したものや、前記セルロース系素材を機械的に処理したものが例示される。
【0010】
本発明において無水グルコース単位とは、カルボキシメチル置換度の単位であり、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基(−OH)のうちカルボキシメチルエーテル基(−OCH2COOH)に置換されているものの割合を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4であることが必要である。カルボキシメチル置換度が0.05未満では、カルボキシメチルエーテル基に由来する吸水、膨潤部分が十分形成されず、本発明の特徴とする吸水性、保水性、分散安定性、チキソトロピー性等の性能を発揮することができない。一方、0.4を超えると水溶性部分が増加して水への溶解が起こり易くなり、本発明の特徴を十分に発揮できない。
当該カルボキシメチル置換度は、試料中のカルボキシメチルセルロースを中和するのに必要な水酸化ナトリウム等の塩基の量を測定して確認することができる。この場合、カルボキシメチルエーテル塩の場合には、測定前に予めカルボキシメチルセルロースに変換しておく。測定の際には、塩基、酸を用いた逆滴定、フェノールフタレイン等の指示薬を適宜組み合わせることができる。
【0011】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、非結晶である。カルボキシメチル置換度が上記範囲を満たしていても、非結晶でなければ、化学的反応性、吸水性に乏しい結晶領域が残っていることに起因して十分な吸水性、保水性を発揮することができない。
【0012】
カルボキシメチルセルロース又はその塩が非結晶であることは、X線回折による測定により確認することができる。具体的には、X線回折の測定の結果、非結晶領域に由来する2θ=18.5°の回折ピーク以外には結晶領域に由来する回折ピークを生じないことが確認されれば、非結晶であるということができる。例えば、セルロースI型結晶では、X線回折による測定で2θ=22.6°に002面の回折強度に由来するピークを生じる。これに対し、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩の場合は、微結晶セルロースを原料に使用した場合でも2θ=22.6°の回折ピークは消失していることが必要である。
【0013】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、水不溶性及び/又は水膨潤性を示す。すなわち、水不溶性及び水膨潤性のうちの少なくとも一方を示すことが必要であり、好ましくは両方を示すものである。
水不溶性とは、水にまったく溶解しないことを示す。例えば、試料を水に1〜2重量%添加して3〜6時間撹拌後の状態を目視判定して不溶であれば水不溶性と判断することができる。
一方、水膨潤性とは、水に浸漬等接触した場合に体積が増加する(膨潤する)ことを示す。例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計50%粒子径に於いて、水を分散媒として測定した値のメタノールを分散媒として測定した値に対する比(水を分散媒として測定した値/メタノールを分散媒として測定した値)として表現することができ、該数値が2.0以上であることが好ましい。2.0未満では吸水、膨潤が不十分となり優れた吸水性、保水性、水中分散安定性、チキソトロピー性を発揮できないおそれがある。尚、上限は、カルボキシメチルセルロース又はその塩が水不溶性を示す範囲であれば、特に限定はない。レーザー回折・散乱式粒度分布計としては、水、メタノールのそれぞれを分散媒とした場合の測定が可能であれば特に限定されず、例えば、マイクロトラック Model−9220−SRA(日機装(株)製)等を用いることができる。
【0014】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を製造するにあたっては、公知のカルボキシメチルセルロース又はその塩の製法を適用することができる。即ち、原料セルロースをマーセル化剤(アルカリ)で処理してマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を調製した後に、エーテル化剤を添加してエーテル化反応させることで本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を製造することができる。
原料のセルロースとしては、上述のセルロースであれば特に制限なく用いることができるが、セルロース純度が高いものが好ましく、特に、溶解パルプ、リンターを用いることが好ましい。これらを用いることにより、純度の高い非結晶のカルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることができる。
【0015】
マーセル化剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩等を使用することができる。エーテル化剤としてはモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ソーダ等を使用することができる。
【0016】
水溶性の一般的なカルボキシメチルセルロース(DS0.5以上)の製法の場合のマーセル化剤とエーテル化剤のモル比は、エーテル化剤としてモノクロロ酢酸を使用する場合では2.00〜2.45が一般的に採用される。その理由は、2.00以下であるとエーテル化反応が不十分となるため、未反応のモノクロロ酢酸が残って無駄が生じること、及び2.45以上であると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸による副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成するため、不経済であることにある。
【0017】
しかしながら、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を得るためには極めて軽度にカルボキシメチルエーテル基を導入する必要がある。そのために、添加するエーテル化剤のモル数を低くすると、一般的に採用されているモル比ではマーセル化剤の添加モル数も少なくすることになる。その結果、セルロース内部、特に化学的反応性に乏しい結晶部分でのマーセル化が不十分となり、結晶構造が完全には破壊されないおそれがある。
【0018】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を調製する際には、セルロース内部、特に化学的反応性に乏しい結晶部分の結晶構造を破壊すること、及び、極めて軽度にカルボキシメチル化することが必要である。従って、セルロース内部も十分なマーセル化を行うために結晶構造を完全に破壊するに十分なマーセル化剤を添加するとともに、エーテル化剤の添加モル数は少量とすることが好ましい。マーセル化剤の添加量は、原料セルロースの無水グルコース単位当り、通常は1.0〜4.0モル、好ましくは1.2〜3.0モルとなるように調整することができる。前記マーセル化剤の添加量は、本発明で添加することのできるエーテル化剤に対し、通常は過剰である。過剰のマーセル化剤はエーテル化反応の際には副反応の原因となり不経済である。従って、エーテル化剤を添加する前に、反応系中に残存するマーセル化剤と添加するエーテル化剤のモル比(マーセル化剤/エーテル化剤)が2.0〜3.0、好ましくは2.2〜2.8になるように予めマーセル化剤を圧搾脱液して除去するか、鉱酸、有機酸などで中和しておくことが好ましい。
【0019】
本発明のセルロース誘導体の製造に使用する溶媒としては、低級アルコールを挙げることができる。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、または2種以上の混合物と水の混合媒体などである。溶媒の使用量は、一般に、原料セルロースに対し3〜20重量倍とすることができる。尚、低級アルコールと水の合計に対する低級アルコールの割合は60〜95重量%とすることができる。
【0020】
マーセル化処理は、原料セルロースと溶媒、マーセル化剤を混合して行うことができる。この際、反応温度は、通常0〜70℃、好ましくは10〜60℃である。また、反応時間は通常15分〜4時間、好ましくは30分〜2時間である。その後エーテル化処理を行うが、その前に必要に応じて、過剰のマーセル化剤を圧搾脱液して除去するか、鉱酸か有機酸で中和しておいてもよい。エーテル化処理では、エーテル化剤を原料セルロースに添加してエーテル化反応を行う。得られるカルボキシメチルセルロース又はその塩の性質、特にカルボキシメチル置換度は、原料セルロースの種類、エーテル化反応の反応系の溶媒組成、機械的条件、反応温度及び反応時間、その他の要因によって変化する。そのため、前記置換度が0.05〜0.4の範囲となるように、反応条件、特にエーテル化剤の添加量を調整することが必要となる。前記置換度にする際のエーテル化剤の添加量は、一般的には、無水グルコース単位当たり0.05〜1.0モルとすることができる。エーテル化反応の反応温度は、通常50〜90℃、好ましくは60〜80℃である。反応時間は通常30分〜6時間、好ましくは1時間〜3時間である。
【0021】
反応終了後、残存するアルカリ金属塩を鉱酸または有機酸で中和する。必要に応じて副生する無機塩、有機酸塩等を含水メタノールで洗浄して除去し、乾燥、粉砕、分級して本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を得る。特に乾式粉砕や湿式粉砕を施すと、より微細化されたカルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることができる。さらに、分散安定性やチキソトロピー性が更に向上し、食品に添加した場合の異物感が飛躍的に改善される点でも好ましい。乾式粉砕で用いる装置としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等が例示される。湿式粉砕で用いる装置としてはホモジナイザー、マスコロイダー、パールミル等の装置が例示される。
【0022】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、セルロースの結晶構造を破壊されセルロース表面のみならず、内部にもカルボキシメチルエーテル基が導入されることにより、その内部の親水性も高くなっているので、水が容易に内部へ浸入することが可能となり、非常に高い吸水性、保水性を発現する。また、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は水中では溶解せず、吸水、膨潤して容積比の高いゲル状物質となるので、水中での分散安定性が極めて高く、沈降した場合にもハードケーキを形成することがなく容易に再分散する。
【0023】
更には、吸水、膨潤したゲル状粒子の表面にはカルボキシメチルエーテル基とセルロース水酸基が存在し、カルボキシメチルエーテル基に由来するアニオン同士の静電反発とセルロース水酸基同士の水素結合により、ゲル状粒子同士が水中で安定な三次元網目構造を形成することも高い分散安定性の発現に寄与している。
【0024】
また、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は水中で三次元網目構造を形成することに起因する構造粘性を発現する。その構造は撹拌等のシェアによって容易に破壊され粘度は急激に低下するが、撹拌を停止すると速やかにその構造が復元して増粘する、即ち優れたチキソトロピー性を示す。
【0025】
更には、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、セルロースの結晶構造が完全に破壊され、セルロース表面のみならず、内部にもカルボキシメチルエーテル基が導入されている。そのため、高い親水性を示す。そのため、水中では吸水、膨潤して容積比の高いゲル状物質となり、メタノール等の有機溶媒中では吸液も膨潤もしないことが多い。この変化は、レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定すると、その平均粒子径は水を分散媒として測定した値とメタノールを分散媒として測定した値の比が2.0以上のときに顕著である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、配合量を示す「部」はすべて「重量部」を示す。
【0027】
実施例1
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム30部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を26部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸11部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(DS)0.16のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。
【0028】
実施例2
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム33部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を16部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸19部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.28のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。
【0029】
実施例3
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム38部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を13部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸26部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.38のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。
【0030】
比較例1
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム30部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸9部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.03のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。
【0031】
比較例2
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム49部を水78部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸37部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.45のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。
【0032】
比較例3
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム23部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸23部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.34のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。
【0033】
[無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(DS)の測定]
試料約2.0gを精秤して、300ml共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール(無水メタノール1Lに特級濃硝酸100mlを加えた液)100mlを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC)をカルボキシメチルセルロース(H−CMC)にした。その絶乾H−CMC1.5〜2.0gを精秤し、300ml共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mlでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOH100mlを加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。DSは滴定に要した0.1N−H2SO4の量(ml)を次式に代入して算出した。
A=((100×F'−0.1N−H2SO4(ml)×F)×0.1)/H−CMCの絶乾重量(g)
DS=0.162×A/(1−0.058×A)(mol/C6
A:H−CMC1gを中和するのに必要な1N−NaOHの量(ml)
F:0.1N−H2SO4のfactor
F':0.1N−NaOHのfactor
【0034】
[結晶化度の測定]
セルロースI型の結晶化度は、試料のX線回折を測定することで求めた。X線回折の測定は、試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(RAD−2Cシステム、理学電気社製)を用いて測定した。結晶化度の算出はSeagelらの手法(L.Seagel,J.J.Greely et al,Text.Res.J.,29,786,1959)、並びにKamideらの手法(K.Kamide,et al,polymer J.,17,909,1985)を用いて行い、X線回折図の2θ=4°〜32°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出した。
χC=(I002C−Ia)/I002C×100
χC=セルロースI型の結晶化度(%)
002C:2θ=22.6°,002面の回折強度
a :2θ=18.5°,アモルファス部分の回折強度
【0035】
[膨潤度の測定]
レーザー回折・散乱式粒度分布計(マイクロトラック Model−9220−SRA、日機装(株)製)により測定される体積累計50%粒子径(平均粒子径)において、膨潤溶媒である水を分散媒に用いて測定した値の非膨潤溶媒であるメタノールを分散媒に用いて測定した値に対する比を膨潤度とした。
[溶解性試験]
実施例1〜3および比較例1〜3のカルボキシメチルセルロースナトリウム2gを水100ml中に加え、スターラーで3時間撹拌後、その状態を目視判定した。尚、評価は以下の様に定めた。尚、試料のうち一部でも不溶性を示せばその部分を分離、抽出等して不溶性のカルボキシメチルセルロース又はその塩として利用可能である。よって、下記評価のうち「×」のほか「△」である試料は、水不溶性を示すものと判断できる。
○:溶解、△:一部溶解、×:不溶
なお、実施例1〜3および比較例1〜3のカルボキシメチルセルロースナトリウムを、以降、試料という。
【0036】
[保水性試験]
試料の分散液(水に対し1重量%の試料を分散させたもの)を適当な遠心カップと呼ばれるろ過容器で吸引ろ過し、容器ごと遠心器の遠沈管の中に入れ、3,000G、15分間遠心脱水した。脱水後の試料を取り出して秤量し、次に105℃で乾燥して絶乾重量を求めた。保水度は下式から算出した。
保水度=(A−B)/B×100(%)
A:遠心脱水後の試料重量
B:絶乾後の試料重量
【0037】
[分散安定性試験]
試料30gに水270gを加え、8,000rpmで5分間撹拌する。その100mlを100mlのメスシリンダーに入れ、24時間静置下後、発生する上澄み液の容積(ml)を測定した。上澄み液の容積が小さい程、分散安定性が高い評価となる。
【0038】
【表1】


【0039】
表1から明らかなように、実施例1〜3のカルボキシメチルセルロースナトリウムは、高い膨潤度および保水性を示した。また、分散安定性試験においては、24時間経過後も上澄み液がほとんどなく均一に分散しており、高い分散安定性を示した。尚、比較例2のカルボキシメチルセルロースナトリウムは、水に完全に溶解してしまうため、膨潤度、保水性、分散安定性の測定ができなかった。
【0040】
[各種懸濁粒子の分散安定性試験]
1.カーボンブラックの分散安定性
カーボンブラックを1重量%になるように水に懸濁し、その懸濁液に実施例2のカルボキシメチルセルロースナトリウムを表2の添加率になるように加え、懸濁液を調製した。懸濁液を500mlメスシリンダーに入れ、調製直後、10分後、3日後のカーボンブラックの分散状態を目視にて判断し、以下の三段階で評価した。
○:分散状態良好、△:一部沈降、×:固液分離
結果を表3に示す。また、3日後の各サンプルの分散状態を図1に示す。
【0041】
【表2】


【0042】
【表3】


【0043】
表3及び図1から明らかなように、実施例2のカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加したサンプルにおいては、3日経過しても分散状態が良好であり、カーボンブラックの懸濁粒子安定性の向上効果が確認された。
【0044】
2.硫酸バリウムの分散安定性
硫酸バリウムと水と実施例2のカルボキシメチルセルロースナトリウムを表4の添加率になるように加え、懸濁液を調製した。懸濁液を500mlメスシリンダーに入れ、調製直後、10分後、5日後の硫酸バリウムの分散状態を目視にて判断し、以下の三段階で評価した。
○:分散状態良好、△:一部沈降、×:固液分離
結果を表5に示す。また、5日後の各サンプルの分散状態を図2に示す。
【0045】
【表4】


【0046】
【表5】


【0047】
表5及び図2から明らかなように、実施例2のカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加すると、5日経過しても分散状態が良好であり、硫酸バリウムの懸濁粒子安定性の向上効果が確認された。
【0048】
[再分散性試験]
表6に示す処方でココア飲料を調製し、24時間後に上下に1回、2回、3回振った後の再分散性を目視にて判断し、以下の3段階で評価した。
○:完全に分散した △:一部固形分が底面に残る ×:ほとんどの固形分が底面に残る
結果を表7に示す。
【0049】
【表6】


【0050】
【表7】


【0051】
表7から明らかなように、実施例2のカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加したサンプルにおいてはケーキングがなく、数回振ると完全に分散することから、ココアをはじめとする粉末飲料のケーキング防止及び分散性改良効果が確認された。
【0052】
[高ショ糖濃度での吸水性試験]
ショ糖濃度0%、20%、40%、60%(すべてw/wで調整)のショ糖水溶液を調製した。実施例2のカルボキシメチルセルロースナトリウム4gに、30度に調温した前記ショ糖水溶液を少しずつ添加した。吸水されない水溶液が滲み、CMCが流動し始めるところを終点として、吸水性を測定した。吸水倍量は、カルボキシメチルセルロースナトリウム粉体1g当たりのショ糖水溶液の吸水量を測定した。結果を表8に示す。
【0053】
【表8】


【0054】
表8の結果から明らかなように、高濃度のショ糖溶液においても、水と同程度の吸水性を有し、水をカルボキシメチルセルロースナトリウム内に保持することが判明した。このことから、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を糖衣などに配合することにより糖衣内で水を保持することができ、その結果、糖衣表面に水が出てこないため、ベタツキを防止できることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、実施例におけるカーボンブラックの分散安定性の結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例における硫酸バリウムの分散安定性の結果を示す図である。
【出願人】 【識別番号】502368059
【氏名又は名称】日本製紙ケミカル株式会社
【出願日】 平成19年3月14日(2007.3.14)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明


【公開番号】 特開2008−56889(P2008−56889A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−65183(P2007−65183)