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【発明の名称】 酸処理キチン・キトサンおよびキチン・キトサンペースト
【発明者】 【氏名】林 哲正

【氏名】小菅 栄市

【要約】 【課題】本発明は、キチン・キトサンの有する優れた作用を向上せしめることを課題とする。

【構成】分子量5万以上の高分子キチン・キトサンを酸によって処理することによって、分子量を殆んど低下させることなく水膨潤性とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量5万以上の高分子キチン・キトサンを酸によって処理したことを特徴とする酸処理キチン・キトサン。
【請求項2】
請求項1に記載の酸処理キチン・キトサンを水に投入して膨潤せしめたことを特徴とするキチン・キトサンペースト。
【請求項3】
請求項2に記載のキチン・キトサンペーストを含有するこんにゃくからなることを特徴とする機能性こんにゃく食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、こんにゃく等の食品に添加して免疫機能強化作用、抗コレステロール作用、細菌の増殖抑制作用等を発揮する酸処理キチン・ キトサンに関するものであり、更に本発明は該酸処理キチン・キトサンを水に投入膨潤せしめたキチン・キトサンペーストおよび該ペーストを含有する機能性こんにゃく食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キトサンはかに殻、えび殻等の主成分であるキチンを加水分解することによって得られる天然多種類であるが、血中コレステロールを改善する作用があることが知られ、例えば、こんにゃく等に食品添加物として添加した機能性食品が提供されている。
従来使用されているキチン・キトサンとしては、分子量10万以上の高分子キチン・キトサン、あるいは分子量6000以下の低分子キチン・キトサンがある(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−137187号公報
【特許文献2】特開平06−181702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高分子キチン・キトサンは水に不溶であり、食品に添加するために微粉末にして添加する食品にざらつき感を与えないようにすることが必要であったが、磨砕機によって微粉末にする手間がかかり、また磨砕中に低分子化起り、水溶性になって添加した食品の製造中、あるいは調理中に流失するおそれがある。
またキチン・キトサンには病原菌や重金属のような有害物質と結合して体外に排出する作用を有するが、高分子キチン・キトサンは水に不溶であるから、有害物質と結合しにくく、低分子キチン・キトサンは低分子であるために有害物質との結合力が弱く、有害物質排出作用が充分に発揮されない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決するための手段として、分子量5万以上の高分子キチン・キトサンを酸によって処理した酸処理キチン・キトサンを提供するものであり、実用的には該酸処理キチン・キトサンを水に投入して膨潤せしめたキチン・キトサンペーストを提供するものである。
上記キチン・キトサンペーストは、例えばこんにゃく等に添加して有用な機能性こんにゃく食品を提供する。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
高分子キチン・キトサンは、官能基として水酸基およびアミノ基を有する。したがって高分子キチン・キトサンは水素結合によって高度に架橋した状態にあると思われ、したがって水に不溶である。
そこで該高分子キチン・キトサンを酸液に浸漬すると、水素結合が部分的に切断され、低分子化を起すことなく水に対して膨潤性を有するようになる。
このように酸処理キチン・キトサンを水に膨潤させればペースト状になり、こんにゃく等の食品に添加してもざらつき感を与えないようになる。
また該高分子キチン・キトサンは水に膨潤して網状に広く拡がり、含有するアミノ基は酸と反応してカチオン化することによって重金属イオン、農薬、脂肪酸基等の有害なアニオン、あるいは病原菌やウイルス等のアニオンと効率良く結合して体外に排出する。
【0007】
〔効果〕
したがって本発明の酸処理キチン・キトサンは食品添加物として極めて有用であり、食品に添加されて強力な血中コレステロール改善作用、細菌の増殖抑制作用、有害物質の体外排出作用を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を以下に詳細に説明する。
【0009】
〔キチン・キトサンの酸処理〕
本発明では分子量5万以上の高分子キチン・キトサンを酸液によって処理する。使用される酸としては、例えば塩酸、硫酸、スルファミン酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸が使用される。使用する酸液としては、具体的には塩酸の場合には0.5ノルマル〜5ノルマル程度の濃度の水溶液、酢酸やクエン酸の場合には0.5質量%〜10質量%程度の濃度の水溶液が使用される。
酸処理は上記酸溶液に粉末状の高分子キチン・キトサンはを添加し、攪拌混合し膨潤させる。上記酸溶液に対する該キチン・キトサン添加量は通常5質量%〜10質量%程度とする。
上記酸処理によってキチン・キトサンペーストが直接調製される。
【0010】
〔機能性こんにゃく食品の製造〕
本発明の機能性こんにゃく食品に使用されるこんにゃく原料としては、こんにゃくいもを生のまま潰したもの、あるいは煮てから潰したもの、またはこんにゃくいもを切断、乾燥、摩砕して製粉して得た荒粉、該荒粉を更に風選してマンナン粒子を取り出した精粉、あるいはこれらの混合物がある。
【0011】
本発明に使用されるゲル化剤としては、灰汁、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ物質がある。該アルカリ物質と共にあるいは該アルカリ物質に代えて澱粉あるいは架橋澱粉、澱粉リン酸エステル等の澱粉受性物、セルロースあるいはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース等のセルロース変性物、海草抽出物である寒天、カラギーナン、フアーセレラン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、植物種子粘質物であるグァーガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、植物樹脂粘質物であるアラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、植物果実粘質物であるペクチン、アラビノガラクタン、微生物産生粘質物であるキサンタンガム、スクレロガムブルラン、デキストラン、動物性たんぱく質であるゼラチン、アルブミン、カゼイン、植物性たんぱく質である大豆たんぱく質、小豆たんぱく質、小麦たんぱく質等の多糖類等の高粘度化剤が使用されてもよい。上記アルカリ物質と多糖類とはそれぞれ二種以上使用されてもよい。
【0012】
上記したようにこんにゃくのゲル化剤として灰汁水酸化カルシウム等が使用され、この場合にはこんにゃくにはカルシウムが十分含まれているが、更に所望なればカルシウムを添加してもよい。上記カルシウムは例えば有機酸のカルシウム塩、天然カルシウム含有物等の形態で添加される。上記有機酸のカルシウム塩としては、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム等が例示される。また上記天然カルシウム含有物としては、サンゴ粉、骨粉、貝殻粉等が例示される。更に上記天然カルシウム含有物を酢酸、塩酸等の酸によって溶解抽出した液状カルシウムも使用可能である。
上記有機酸のカルシウム塩、天然カルシウム含有物、および液状カルシウムはそれぞれ二種以上使用されてもよいし、有機酸のカルシウム塩の一種または二種以上と天然カルシウムの一種または二種以上、あるいは液状カルシウムの一種または二種以上とを併用してもよい。
【0013】
体内への摂取効率からみて望ましい有機酸のカルシウム塩としては、乳酸カルシウムがあり、また望ましい天然カルシウム含有物としてはサンゴ粉がある。サンゴ粉は乳酸カルシウムよりも水に溶け易く、かつ体内にも摂取され易く、更に使用基準もなく、多量に添加出来、その上若干のゲル化作用も有するので、最も望ましいものである。
カルシウムは骨や歯の主要成分であり、同時に体液のPHを調整してアルカリ性に保ち、各種ホルモンの分泌や神経細胞間の情報伝達に関与し、免疫力を増強し、筋肉の収縮を司どる。
【0014】
上記したようにこんにゃくのゲル化剤としては灰汁、水酸化カルシウム等が使用されるが、該ゲル化剤の不純分としてマグネシウムが共存している。しかし所望なれば更にマグネシウムを添加してもよい。マグネシウムはカルシウム拮抗剤としての作用がありカルシウムと一緒に摂取することが望ましく、またマグネシウムの欠乏は心臓血管病、糖尿病、肥満、肝炎、肝硬変、妊娠中毒症、腎結石、種々の内分泌疾患等の原因となる。マグネシウムは天然塩、海藻粉、米ぬか、あるいは上記天然カルシウム含有物等に多量に含まれているので、こんにゃくにはこれら天然マグネシウム高含有物をマグネシウム源として添加するのが望ましい。
【0015】
上記成分以外本発明の機能性こんにゃく食品には、蔗糖、オリゴ糖、あるいはアスパルテーム、キシリトール、エリスリトール、D−キシロース、グリチルリチン酸二ナトリウム、スクラロース、D−ソルビトール、オリゴ糖等の低カロリーまたはノンカロリー甘味料、フレーバー、着色料、香辛料等の調味料や添加物が添加されてもよい。
【0016】
本発明の機能性こんにゃく食品を製造するには、上記こんにゃく原料に前記キチン・キトサンペースト、所望なればカルシウム、マグネシウムを添加した水を加えたペーストに所望なれば更に上記他の成分を添加すると共に上記ゲル化剤および/または高粘度化剤を添加して所定の型に充填するか、あるいは紐状に押出すか、あるいは紐状に押出し同時にカッターで寸断して粒状にし、加熱ゲル化せしめる。
【0017】
ゲル化剤の種類または添加量は最終製品に望まれる性状により適宜選択調節されるが、通常こんにゃく原料100重量部に対して0.02〜0.05重量部程度添加される。
【0018】
上記キチン・キトサンペーストの添加量は、こんにゃく原料100重量部に対してペースト中のキチン・キトサンが0.5〜60重量部程度になるように設定する。
有機酸のカルシウム塩および/または天然カルシウム含有物あるいは上記マグネシウム高含有物の添加量は、通常こんにゃく原料100重量部に対してそれぞれ0.2重量部以上、望ましくは10重量部以下とされる。この範囲の添加量でカルシウムおよびマグネシウムはこんにゃく中に充分補強され、かつ原料ペーストのゲル化あるいは最終製品の味覚を阻害しない。
ゲル化は通常70〜90℃程度の加熱下に行われる。
【0019】
以下に本発明の実施例を述べる。
【実施例1】
【0020】
〔キチン・キトサンペーストAの調製〕
分子量5万以上のキチン・キトサン粉末(100メッシュ全通)0.5kgを5質量%酢酸水溶液9.5kg中に投入し、70℃に加温して3時間攪拌し、該キチン・キトサンペースト粉末を膨潤せしめ、5質量%キチン・キトサンペーストAを調製した。
【実施例2】
【0021】
〔キチン・キトサンペーストBの調製〕
分子量5万以上のキチン・キトサン粉末(100メッシュ全通)0.6kgを10質量%クエン酸水溶液19.4kg中に投入し、60℃に加温して4時間攪拌し、該キチン・キトサンペースト粉末を膨潤せしめ、3質量%キチン・キトサンペーストBを調製した。
【実施例3】
【0022】
〔キチン・キトサンペーストCの調製〕
分子量5万以上のキチン・キトサン粉末(100メッシュ全通)0.8kgを1N塩酸水溶液19.2kg中に投入し、65℃に加温して3時間攪拌し、該キチン・キトサンペースト粉末を膨潤せしめ、4質量%キチン・キトサンペーストCを調製した。
【0023】
〔抗菌試験〕
1.キチン・キトサンペースト試料
キチン・キトサンペーストA(5質量%キチン・キトサン)を使用した。
2.菌株
牛乳房炎由来ブドウ球菌(Staphlococcusu aureus)、ベロ毒素産生大腸菌(Esche- richia coli)、およびサルモネラ菌(Salmonelia Typhimuriumu)の三菌株を使用し た。
3.培地
上記キチン・キトサンペーストをMuller-Hinton broth(Difco)で2倍希釈した希釈 液1mlとMuller-Hinton agar(Difco) 19mlを混合してpH5.22の培地を作成 した。
4.菌液試料の調製
各菌株をDrain Heart Infusion(Difco) で18時間培養し、培養菌液を104 /ml の菌数になるように滅菌生理食塩水で希釈して菌液試料とした。
5.抗菌試料
上記培地に上記菌液試料を白金耳で約2cm画線塗抹した後、37℃、18時間培 養し、その後各菌株の発育の有無によって発育阻止濃度(質量%)を求めた。
6.結果
結果を表1に示す。
【0024】
【表1】


【0025】
表1を見れば、キチン・キトサンペーストは優れた抗菌性を有することが認められる。
【実施例4】
【0026】
〔こんにゃく食品の製造〕
キチン・キトサンA10kgを水65kg中に溶解し、更にこんにゃく精粉(100メッシュ全通)5kgを投入し、よく攪拌した後1.5時間放置して糊状ペーストとする。該ペーストに0.5重量%濃度の石灰乳150g を添加混合して該ペーストのpHを11.5程度に調節した後、押出し機から紐状に押出し、カッターによって寸断した上で90℃、20分間の加熱を行ないゲル化させる。得られたこんにゃくは粒状であり、冷水中に投入して冷却する。このようにして機能性粒状こんにゃく食品が製造される。
【実施例5】
【0027】
こんにゃく精粉(100メッシュ全通)5kg、キチン・キトサンペーストB30kg、サンゴ粉を酢酸によって溶解抽出した液状カルシウム(マグネシウム含有)25g を急速攪拌混合した後2時間放置して糊状ペーストとする。該ペーストに0.5重量%の水酸化カルシウム水溶液130g を添加混合して該ペーストのPHを11.5程度に調節した後、実施例1と同様に粒状にし、80℃、20分の加熱処理によってゲル化させ、その後室温で冷却して粒状のこんにゃく食品を製造した。
【実施例6】
【0028】
キチン・キトサンペーストC12kg、乳酸カルシウム20g 、サンゴ粉30g 、わかめ粉30g を水70kg中に溶解分散し、更にこんにゃく精粉(100メッシュ全通)5kgを投入し、よく攪拌した後2時間放置して糊状ぺーストとする。該ペーストに0.5重量%濃度の石灰乳100g 、カラギーナン50g を添加混合して該ペーストのpHを11.5程度に調節した後、所定の型に流し込んで90℃、30分間の加熱を行ないゲル化させる。得られたコンニャクは型から取出し冷水中に投入して冷却する。このようにして所定の形に成形された機能性こんにゃく食品が製造される。
【実施例7】
【0029】
キチン・キトサンペーストA10kg、アルギン酸1kg、エリスリトールまたは乳果オリゴ2kgを水70kg中に溶解分散し、更にこんにゃく精粉(100メッシュ全通)5kgを投入し、よく攪拌した後2時間放置して糊状ぺーストとする。該ペーストに0.5重量%濃度の水酸化カルシウム水溶液130g を添加混合して該ペーストのpHを11.5程度に調節した後、所定の型に流し込んで100℃前後で30分間の加熱を行ないゲル化させ、得られたコンニャクは型から取出し所定の形に成形された機能性こんにゃく食品が製造される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明では高分子のキチン・キトサンの分子量を殆んど低下させることなく酸処理によって水膨潤性にするから、このような酸処理キチン・キトサンは免疫機能強化作用、抗コレステロール作用、肝臓病改善作用、高血圧改善作用、抗菌作用、重金属等の有害物質を体外に排出する作用等生体調節のすべてを持ち合わせており、免疫力を強化し、老化を抑制し、ガン、高血圧、糖尿病等の成人病を予防し、また肩こり、腰痛、リウマチ、喘息、腎臓病等の病気を回復させ、更に生体リズムを調節すると云う優れた機能を有するものであるから食品添加物等として産業上利用可能である。


【出願人】 【識別番号】502001983
【氏名又は名称】林 哲正
【識別番号】593226191
【氏名又は名称】小菅 栄市
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100075476
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐見 忠男


【公開番号】 特開2008−1829(P2008−1829A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173804(P2006−173804)