トップ :: C 化学 冶金 :: C07 有機化学

【発明の名称】 キヌクリジン誘導体の新規な塩
【発明者】 【氏名】早川 昌彦
【氏名】三水 清寛
【氏名】上林 裕始
【氏名】池田 賢
【氏名】竹内 誠
【課題】(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル(化合物A)を、医薬品又は医薬品の原体として使用するための、保存安定性が高く、特に湿度に対する安定性を有する化合物Aの酸付加塩の提供。

【解決手段】化合物Aと、(-)-(2S,3S)-酒石酸、(+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸、(+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸、(-)-L-フェニルアラニン、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、臭化水素酸、ナフタレン-2-スルホン酸、セバシン酸、(+)-カンファー-10-スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸及びリン酸メチル塩からなる群より選択される酸との酸付加塩は、医薬品又は医薬品の原体として使用するに際して問題となる程度の吸湿性を示さず、医薬品又は医薬品原体としてきわめて有用な化合物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステルと、群Sより選択される酸との酸付加塩。ここで、群Sは(-)-(2S,3S)-酒石酸、(+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸、(+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸、(-)-L-フェニルアラニン、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、臭化水素酸、ナフタレン-2-スルホン酸、セバシン酸、(+)-カンファー-10-スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸及びリン酸メチルからなる群である。
【請求項2】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (-)-(2S,3S)-酒石酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項3】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項4】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項5】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (-)-L-フェニルアラニン塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項6】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル ベンゼンスルホン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項7】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル シクロヘキサンスルファミン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項8】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル 臭化水素酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項9】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル ナフタレン-2-スルホン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項10】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル セバシン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項11】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-カンファー-10-スルホン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項12】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル p-トルエンスルホン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項13】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル エタンスルホン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項14】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル メタンスルホン酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項15】
(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル リン酸メチル塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、殊にムスカリンM3受容体拮抗剤として有用な、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル(以下、化合物Aと言う。)の新規な酸付加塩に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物Aは、以下の化学構造を有し、ムスカリンM3受容体に対して親和性及び選択性を有し、M3受容体拮抗薬として、M3が関与する種々の疾患、特に、神経性頻尿、神経因性膀胱、夜尿症、不安定膀胱、膀胱痙縮、慢性膀胱炎等における尿失禁及び頻尿等の泌尿器疾患、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息及び鼻炎等の呼吸器疾患、過敏症大腸症候群、痙性大腸炎及び憩室炎等の消化器疾病の予防又は治療剤として有用であることが知られている(特許文献1)。
【0003】
【化1】


また、化合物Aの酸付加塩としては、上記特許文献1の実施例10に化合物Aの塩酸塩が開示されているのみで、他の酸付加塩に関しては、上記特許文献1に記載の塩酸塩の他、具体的に知られている酸付加塩はない。
【0004】
【特許文献1】日本国特許第3014457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化合物Aの酸付加塩として唯一知られる化合物A 塩酸塩は、結晶性無水物として得ることができるが、一般的な環境下における相対湿度であるおよそ70%(室温)において吸湿し潮解し、さらには、長期間保存時に不純物が増加する性質を有する酸付加塩であることが判明した。
従って、より安全な医薬品又は医薬品の原体を供給するために、吸湿性がより低く、特に湿度に対するより高い安定性を有する塩酸塩以外の化合物Aの酸付加塩を見出すことが切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々の化合物Aの酸付加塩について検討を行ったところ、意外にも化合物Aの特定の酸付加塩が、公知化合物である塩酸塩と比して吸湿性に優れ、湿度に対する高い安定性を有することを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明によれば、化合物Aと、群Sより選択される酸との酸付加塩が提供される。ここで、群Sは(-)-(2S,3S)-酒石酸、(+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸、(+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸、(-)-L-フェニルアラニン、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、臭化水素酸、ナフタレン-2-スルホン酸、セバシン酸、(+)-カンファー-10-スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸及びリン酸メチルからなる群である。
【0007】
具体的には、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (-)-(2S,3S)-酒石酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (-)-L-フェニルアラニン塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル ベンゼンスルホン酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル シクロヘキサンスルファミン酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル 臭化水素酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル ナフタレン-2-スルホン酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル セバシン酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-カンファー-10-スルホン酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル p-トルエンスルホン酸塩、、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル エタンスルホン酸塩、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル メタンスルホン酸塩及び(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル リン酸メチル塩からなる群より選択される、(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル、即ち化合物Aの酸付加塩が本発明により提供される。
【0008】
なお、これらの塩のうち、好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (-)-(2S,3S)-酒石酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (-)-L-フェニルアラニン塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル ベンゼンスルホン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル シクロヘキサンスルファミン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル 臭化水素酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル ナフタレン-2-スルホン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル セバシン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル (+)-カンファー-10-スルホン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル p-トルエンスルホン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル エタンスルホン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル メタンスルホン酸塩であり;別の態様として好ましくは(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル リン酸メチル塩である。
なお、シクロヘキサンスルファミン酸はシクロヘキシルスルファミン酸とも呼ばれ、セバシン酸はデカン二酸とも呼ばれ、(+)-カンファー-10-スルホン酸は(+)-[(1S,4R)-7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル]メタンスルホン酸とも呼ばれ、p-トルエンスルホン酸は4-メチルベンゼンスルホン酸とも呼ばれる。
【0009】
また、本発明によれば、上記の(-)-(1R)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸 (3R)-キヌクリジン-3-イルエステル、即ち化合物Aの酸付加塩を有効成分とする医薬組成物、特にムスカリンM3受容体拮抗剤である医薬組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の、化合物Aと上記群Sより選択される酸との酸付加塩は、公知化合物である化合物A 塩酸塩と比較し、吸湿性が改善し、また、格段に湿度に対する安定性が向上した、医薬品又は医薬品原体としてきわめて有用な化合物である。
特に、一般的に知られているように、吸湿性が改善された医薬品又は医薬品原体は、その保管状態での湿度における保存上、及び品質管理上の問題が軽減され、また錠剤やカプセル剤等の固形製剤を製造する際に、有効成分の重量変化に基づく製剤上の問題が軽減されることが知られている。即ち、本発明の化合物Aの酸付加塩は、吸湿性が改善しているため、安定した保存、容易な品質管理が期待でき、製剤上においても扱いの容易な化合物であると言え、これにより、より品質の高い、より優れた医薬品の提供に資するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の化合物Aの酸付加塩は、医薬品又は医薬品原体として使用可能な程度に湿度に対して安定であり、特に医薬品又は医薬品原体として使用する際に問題となる程度の吸湿性がなく、保存下においても化学的に安定である、若しくは安定であることが期待できる。従って、本発明のいずれの酸付加塩も医薬品又は医薬品原体として、特に固形製剤の医薬品原体として好適である。
【0012】
(製造法)
本発明の化合物Aの酸付加塩は、以下の製造法により製造することができる。
即ち、化合物Aのフリー体の重量に対して、1 mL/gから100 mL/gの溶媒を加えた後、塩として用いる酸又は酸を含有する溶液を、化合物Aに対して0.5乃至2.0等量の範囲で、室温下加える。不溶物が残存する場合には、同一あるいは異なる溶媒を添加するか、加熱することにより溶解させて溶液とした後に、攪拌下あるいは静置の状態で、室温あるいは冷却下に放置する。溶媒添加や加熱操作でも溶解しない不溶物がある場合には、結晶の晶出前にろ過し、不溶物を除去することができる。このような操作を経て生じた結晶を濾取し、適切な溶媒で洗浄することにより、目的とする化合物Aの酸付加塩を得ることができる。なお、室温まで冷却する際には、放冷するだけでなく、徐冷若しくは急冷することが良好な結晶を取得するのに有効な場合がある。
上記の造塩操作で用いることができる溶媒としては、水、酢酸、アセトン、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸 n-ブチル、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、エタノール(EtOH)、酢酸エチル(EtOAc)、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル(iPrOAc)、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(2-PrOH)、酢酸プロピル、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、DMF、DMA、1,4-ジオキサン、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、THF、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエテン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエテン、1,1,1-トリクロロエタン、ジイソプロピルエーテル等を挙げることができる。
このようにして得られた結晶は、通常当業者が採用する方法で再結晶を行うことにより、より純度の高い結晶を得ることができる。
なお、上記製造法の原料化合物である、化合物Aのフリー体は、上述の特許文献1、即ち、日本国特許第3014457号公報に記載の方法若しくはそれに準じた方法、又は当業者にとって自明である方法によって製造することができる。
【0013】
本発明の化合物Aの酸付加塩は、医薬品の製造原体として、本発明の化合物Aの酸付加塩の1種以上と、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等と組み合わせて、医薬品の製造に使用することができる。医薬品の製造は、当分野にて通常使用されている方法によって行うことができる。
本発明の化合物Aの酸付加塩を含有する医薬品としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与製剤、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等の非経口投与製剤のいずれの形態であってもよい。特に、化合物Aの酸付加塩の結晶を製造原体とする、経口投与用の錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤は、安定な固形製剤として有利である。
【0014】
経口投与のための固体組成物においては、1種以上の活性物質が、少なくとも1種の不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、繊維素グリコール酸カルシウム等の崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤等を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性のフィルムで被覆してもよい。
【0015】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含有する。水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、EtOH等のアルコール類、ポリソルベート80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤、溶解補助剤等の補助剤を含んでいてもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
本発明の医薬組成物は、その有効成分としてムスカリンM3受容体拮抗剤である、本発明の化合物Aの酸付加塩を含有しているため、ムスカリンM3受容体が関与する種々の疾患の治療や予防、あるいは検査に供することができる。即ち、本発明の医薬組成物は、具体的には例えば、過活動膀胱、不安定膀胱、神経因性膀胱、膀胱炎等の泌尿器疾患における、尿意切迫感、頻尿、尿失禁、夜尿症若しくは過反射膀胱の治療剤として;外科治療やカテーテルによる膀胱痙縮の治療剤若しくは予防剤として;慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息、鼻炎等の呼吸器疾患の治療剤として;過敏性大腸症候群等の消化器疾患の治療剤として;消化管検査時の弛緩剤として;近視治療剤若しくは散瞳剤として;多汗症の治療剤若しくは予防剤として;有用である。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではなく、本発明の範囲を限定するものでもない。
なお、熱分析及び粉末X線回折は以下の方法により行った。
【0017】
(1)熱分析
(DSC)
試料およそ3 mgを専用のアルミニウム製サンプルパンに充填し、窒素雰囲気下(50 mL/min)において、測定範囲を室温〜300 ℃とし、昇温速度10 ℃/minで試料とリファレンス(空のアルミニウム製サンプルパン)との間に発生する熱量変化を連続的に測定し記録した。なお、データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った。(装置:TA Instrument製 Hi-Res DSC 2910)
(TGA)
試料およそ3 mgを専用の白金製サンプルパンに充填し、窒素雰囲気下(100 mL/min)において、測定範囲を室温〜300 ℃とし、昇温速度10 ℃/minで試料重量を連続的に測定し記録した。なお、データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った。(装置:TA Instrument製 Hi-Res TGA2950)
【0018】
(2)粉末X線回折
試料およそ10 mgを専用のサンプルホルダー(横5 mm、縦18 mm、深さ0.2 mm)に充填し、以下の条件下に試料の粉末X線回折を測定し記録した。なお、データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った。(装置:MAC Science(現Bruker)製 MXP18TAHF22)
(条件)
線源:Cu、波長:1.54056 Å、測定範囲:3.00 ~ 40.00 °、サンプリング間隔:0.02 °、スキャン速度:3.00 °/min、管電圧:40 kV、管電流:200 mA、発散スリット:1.00 °、散乱スリット:1.00 °、受光スリット:0.15 mm
【0019】
なお、各種スペクトルから得られる数値は、その結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件等によって多少の変動がある場合がある。従って、それらの数値は厳密に解されるべきではない。
【0020】
参考例1 化合物Aのフリー体の製造
日本国特許第3014457号公報に記載の方法に準じて製造した。
【0021】
参考例2 比較化合物である化合物A 塩酸塩の製造
日本国特許第3014457号公報に記載の方法に準じて製造した。
【0022】
実施例1 化合物A (-)-(2S,3S)-酒石酸塩の製造
化合物Aのフリー体26.0 gをEtOH 260 mLに溶解し、(-)-(2S,3S)-酒石酸10.8 gを加えた後、加熱することにより溶解した。室温に放冷後、20時間攪拌した。得られた結晶をろ取することにより、30.6 gの白色結晶を得た。得られた結晶1.00 gをEtOH 10 mLに懸濁し、水0.4 mLを加え加熱溶解した。室温に放冷後6時間攪拌し、得られた結晶をろ取することにより、標題の化合物871 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 25.9 ℃):
1.40-1.98(4H,m),2.00-2.25(1H,m),2.70-3.20(7H,m),3.33-3.53(2H,m),3.83-3.94(1H,m),3.99(2H,s),4.85(1H,brs),6.25(1H,brs),7.08-7.37(9H,m).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:194 ℃
実施例1の化合物の粉末X線回折スペクトルを図17に示す。
【0023】
実施例2 化合物A (+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸塩の製造
化合物Aのフリー体180 mgをEtOH 1.8 mLに溶解し、(+)-(2S,3S)-ジ-O-ベンゾイル酒石酸180 mgを加え、室温にて12時間攪拌した。生じた結晶をろ取し、EtOHで洗浄後、減圧乾燥することにより、標題の化合物284 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70 ℃):
1.52-1.90(4H,m),2.16(1H,brs),2.76-3.16(7H,m),3.37-3.56(2H,m),3.89(1H,dt,J=13.2,5.4Hz),4.85-4.92(1H,m),5.68(2H,s),6.23(1H,s),7.11-7.33(9H,m),7.43-7.55(4H,m),7.57-7.63(2H,m),7.90-7.96(4H,m).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:159 ℃
実施例2の化合物の粉末X線回折スペクトルを図18に示す。
【0024】
実施例3 化合物A (+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸塩の製造
化合物Aのフリー体1.00gをEtOH 20 mLに溶解し、(+)-(2S,3S)-ジ-O-(4-メチルベンゾイル)酒石酸1.12 gを加え、室温にて22時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物1.60gを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70 ℃):
1.53-1.88(4H,m),2.15(1H,brs),2.32-2.38(6H,m),2.76-3.16(7H,m),3.42(1H,ddd,J=13.6,8.8,5.2Hz),3.50(1H,dd,J=14.4,8.8Hz),3.90(1H,dt,J=13.2,5.2Hz),4.88(1H,dt,J=8.8,4.4Hz),5.64(2H,s),6.23(1H,s),7.11-7.34(13H,m),7.77-7.84(4H,m).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:160 ℃
実施例3の化合物の粉末X線回折スペクトルを図19に示す。
【0025】
実施例4 化合物A (-)-L-フェニルアラニン塩の製造
化合物Aのフリー体1.13 gをEtOH 11.25 mLに溶解し、(-)-L-フェニルアラニン515 mg及び水4.5 mLを加え加熱溶解した後、室温にて10時間攪拌した。得られた結晶をろ取し、水-EtOHの混合溶媒で洗浄後、減圧乾燥することにより、標題の化合物1.12 gを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70.0 ℃):
1.20-1.36(1H,m),1.41-1.70(3H,m),1.86-1.95(1H,m),2.50-2.95(8H,m),3.03-3.17(2H,m),3.33-3.47(2H,m),3.84-3.95(1H,m),4.60-4.71(1H,m),6.23(1H,s),7.11-7.33(14H,m).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:118 ℃及び235 ℃
実施例4の化合物の粉末X線回折スペクトルを図20に示す。
【0026】
実施例5 化合物A ベンゼンスルホン酸塩の製造(1)
化合物Aのフリー体2.69 gをEtOAc 40 mLに溶解し、ベンゼンスルホン酸一水和物1.31 gを加え、室温にて1時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取後2-ブタノン30 mLに懸濁し、水0.35 mLを加え加熱溶解した。室温まで放冷後60時間攪拌し、得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物2.49 gを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70 ℃):
1.65-1.99(4H,m),2.23(1H,brs),2.77-2.96(2H,m),3.06-3.32(5H,m),3.44(1H,ddd,J=13.6,8.4,5.2Hz),3.66(1H,dd,J=13.6,8.4Hz),3.91(1H,dt,J=12.8,5.6Hz),4.97(1H,dt,J=8.4,4.4Hz),6.25(1H,s),7.11-7.35(12H,m),7.59-7.64(2H,m),9.39(1H,brs).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:178 ℃
実施例5の化合物の粉末X線回折スペクトルを図21に示す。
【0027】
実施例5−1 化合物A ベンゼンスルホン酸塩の製造(2)
化合物Aのフリー体7.00 gをアセトン70 mLに溶解し、ベンゼンスルホン酸一水和物3.40 gおよびtert-ブチルメチルエーテル70 mLを加え、メカニカルスターラーを用いて室温にて9時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物8.10 gを白色結晶として得た。
1H-NMRは、実施例5のそれとよく一致していたが、DSC及び粉末X線回折は実施例5と実施例5−1とが結晶多形であることを示唆していた。
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:170 ℃
実施例5−1の化合物の粉末X線回折スペクトルを図22に示す。
【0028】
実施例6 化合物A シクロヘキサンスルファミン酸塩の製造
化合物Aのフリー体500 mgを2-PrOH 5 mLに溶解し、シクロヘキサンスルファミン酸494 mgを加え、室温にて13時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物550 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70℃):
1.00-1.35(10H,m),1.46-2.08(14H,m),2.23(1H,brs),2.77-3.30(11H,m),3.44(1H,ddd,J=13.6,8.8,5.2Hz),3.64(1H,dd,J=13.8,8.8Hz),3.91(1H,dt,J=12.8,5.6Hz),4.96(1H,dt,J=8.4,4.4Hz),6.25(1H,s),7.10-7.36(9H,m).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:127 ℃及び170 ℃
実施例6の化合物の粉末X線回折スペクトルを図23に示す。
【0029】
実施例7 化合物A 臭化水素酸塩の製造
化合物Aのフリー体200 mgをEtOH 1.0 mLに溶解し、47%臭化水素酸95 mgを加えた。攪拌下、ジイソプロピルエーテル1.1 mLを加え、5 ℃にて18時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物165 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70℃):
1.65-1.98(4H,m),2.24(1H,brs),2.77-2.97(2H,m),3.05-3.35(5H,m),3.45(1H,ddd,J=13.6,8.8,5.2Hz),3.65(1H,dd,J=13.2,8.4Hz),3.91(1H,dt,J=12.8,5.6Hz),4.97(1H,dt,J=8.8,4.4Hz),6.26(1H,s),7.11-7.35(9H,m),9.68(1H,brs).
元素分析(理論値:C23H26N2O2.HBrとして):
C, 62.31, H, 6.14, N, 6.32, Br, 18.02. (実測値)C, 62.04, H, 6.10, N, 6.09, Br, 17.73.
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:199 ℃
実施例7の化合物の粉末X線回折スペクトルを図24に示す。
【0030】
実施例8 化合物A ナフタレン-2-スルホン酸塩の製造
化合物Aのフリー体100mgをEtOH 1.0 mLに溶解し、2-ナフタレンスルホン酸水和物65 mgを加え、26時間攪拌した。得られた結晶をろ取することにより、標題の化合物79 mgを淡灰色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70 ℃):
1.65-2.00(4H,m),2.24(1H,brs),2.77-2.97(2H,m),3.05-3.32(5H,m),3.45(1H,ddd,J=14.0,9.2,5.2Hz),3.65(1H,dd,J=14.0,8.8Hz),3.90(1H,dt,J=12.8,5.6Hz),4.97(1H,dt,J=8.0,4.4Hz),6.25(1H,s),7.12-7.34(9H,m),7.49(2H,dt,J=10.4,4.0Hz),7.74(1H,dd,J=8.4,1.6Hz),7.82(1H,d,J=8.0Hz),7.85-7.95(2H,m),8.14(1H,s),9.35(1H,brs).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:178 ℃
実施例8の化合物の粉末X線回折スペクトルを図25に示す。
【0031】
実施例9 化合物A セバシン酸塩の製造
化合物Aのフリー体300 mgをEtOH 1.0 mLに溶解し、セバシン酸171 mgを加え、3時間攪拌した。得られた結晶をろ取し、エタノールで洗浄することにより、標題の化合物165 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 26.1 ℃):
1.16-2.00(17H,m),2.17(4H,t,J=7.2),2.50-2.97(7H,m),3.02-3.08(1H,m),3.28-3.50(1H,m),3.78-3.98(1H,m),4.65(1H,brs),6.24(1H,brs),7.12-7.26(10H,m).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:127 ℃
実施例9の化合物の粉末X線回折スペクトルを図26に示す。
【0032】
実施例10 化合物A (+)-カンファー-10-スルホン酸塩の製造
化合物Aのフリー体200 mgをアセトン2 mLに溶解し、(+)-カンファー-10-スルホン酸138 mgを加え、室温にて5時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物191 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6: 70 ℃):
0.76(3H,s),1.08(3H,s),1.20-1.33(2H,m),1.65-1.98(7H,m),2.18-2.28(2H,m),2.37-2.42(1H,m),2.65-2.97(4H,m),3.05-3.31(5H,m),3.44(1H,ddd,J=13.6,8.8,4.8Hz),3.65(1H,dd,J=13.6,8.4Hz),3.91(1H,dt,J=13.2,5.6Hz),4.97(1H,dt,J=8.8,4.4Hz),6.25(1H,s),7.11-7.35(9H,m),9.44(1H,brs).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:198 ℃
実施例10の化合物の粉末X線回折スペクトルを図27に示す。
【0033】
実施例11 化合物A p-トルエンスルホン酸塩の製造
化合物Aのフリー体200 mgをアセトン1.5 mL及びtert-ブチルメチルエーテル0.5 mLの混合溶液に溶解し、p-トルエンスルホン酸一水和物105 mgを加え、室温にて17時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取し、標題の化合物83 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6:70 ℃):
1.65-2.00(4H,m),2.24(1H,brs),2.28(3H,s),2.76-2.96(2H,m),3.05-3.30(5H,m),3.44(1H,ddd,J=13.6,8.0,5.0Hz),3.65(1H,dd,J=13.6,8.0Hz),3.91(1H,dt,J=12.8,5.6Hz),4.97(1H,dt,J=8.4,4.4Hz),6.25(1H,s),7.09(2H,d,J=7.6Hz),7.11-7.35(9H,m),7.47-7.52(2H,m),9.38(1H,brs).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:150 ℃
実施例11の化合物の粉末X線回折スペクトルを図28に示す。
【0034】
実施例12 化合物A エタンスルホン酸塩の製造
化合物Aのフリー体100 mgを2-ブタノン1.0 mLに溶解し、エタンスルホン酸31 mgを加え、室温にて6.5時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物95 mgを白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6:70℃):
1.07(3H,t,J=7.6Hz),1.62-2.10(4H,m),2.24(1H,brs),2.39(2H,q,J=7.6Hz),2.76-2.96(2H,m),3.08-3.32(5H,m),3.44(1H,ddd,J=13.6,8.8,4.8Hz),3.65(1H,dd,J=13.6,8.8Hz),3.91(1H,dt,J=12.4,5.2Hz),4.92-5.02(1H,m),6.25(1H,s),7.10-7.35(9H,m),9.51(1H, brs).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:233 ℃
実施例12の化合物の粉末X線回折スペクトルを図29に示す。
【0035】
実施例13 化合物A メタンスルホン酸塩の製造
化合物Aのフリー体200 mgを2-ブタノン 1.0mLに溶解し、メタンスルホン酸53 mgのiPrOAc 1.0mL溶液を加え、室温にて0.5時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物187 mgを白色結晶として得た。
1H-NHR(DMSO-d6:70 ℃):
1.62-2.02(4H,m),2.24(1H,brs),2.30(3H,s),2.76-2.96(2H,m),3.00-3.34(5H,m),3.44(1H,ddd,J=13.6,8.8,4.8Hz),3.65(1H,dd,J=13.6,8.6Hz),3.91(1H,dt,J=13.2,5.2Hz),4.90-5.40(1H,m),6.25(1H,s),7.08-7.36(9H,m),9.37(1H,brs).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:178 ℃
実施例13の化合物の粉末X線回折スペクトルを図30に示す。
【0036】
実施例14 化合物A リン酸メチル塩の製造
化合物Aのフリー体200 mgをEtOAc 2.0 mLと2-ブタノン 0.5 mLの混合溶媒に溶解し、リン酸メチル 98 mgを加え、室温にて22時間攪拌した。得られた沈殿物をろ取することにより、標題の化合物124 mgを白色結晶として得た。
1H-NHR(DMSO-d6:70 ℃):
1.43-1.54(1H,m),1.57-1.81(3H,m),2.01-2.10(1H,m),2.77-2.99(7H,m),3.29-3.46(2H,m),3.42(3H,d,J=10.8Hz),3.90(1H,dt,J=13.2,5.6Hz),4.76-4.84(1H,m),6.24(1H,s),7.12-7.33(9H,m).
DSCにおける吸熱ピークトップ温度:195 ℃
実施例14の化合物の粉末X線回折スペクトルを図31に示す。
【0037】
本発明の化合物Aの酸付加塩の効果は、以下の試験例によって確認された。
【0038】
試験例1 吸湿性の評価
試料およそ5 mgを専用の石英製ホルダーに充填し、以下の条件下に試料の各湿度における重量を連続的に測定し記録した。なお、データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った。(装置:SMS製 動的水蒸気吸着測定装置 DVS Advantage)
(条件)
測定温度:25 ℃、測定前乾燥:なし、開始湿度:5 %RH、最大湿度:95 %RH、終了湿度:5 %RH、ステップ:5 %RH、平衡基準:0.03 wt% in 5 min、最大平衡化時間:180 min、サンプリング間隔:20 sec、データ記録間隔:1 min
【0039】
これらの試験で得られたチャートを図1〜図14に示す。また、測定条件範囲における重量変化を表1に示す。
【表1】


【0040】
図1及び表1に示すとおり、公知化合物である化合物Aの塩酸塩は、相対湿度65%程度から急激に吸湿し、相対湿度75%以上では吸湿による15%以上の重量変化が認められ、測定条件範囲内である5〜95%の相対湿度における重量変化は35%を超え、その変化は潮解を伴うものであった。一方、図2〜図16及び表1に示すとおり、本発明の化合物Aの酸付加塩は、公知化合物である化合物Aの塩酸塩と比較して、吸湿性が改善されており、医薬品又は医薬品原体としてより優れた性質を有することが確認された。
【0041】
試験例2 安定性の評価(1)
試料およそ0.5 mgをガラス製バイアルに量り取り、以下の保存条件で強制分解試験を行った。
条件1:120 ℃−密栓−24時間
条件2:25 ℃−相対湿度93%−開放−5日間
条件3:25 ℃−NUV(近紫外光)照射−密栓−5日間
保存後の試料をMeOH 1 mLで溶解したものを試料溶液とし、試料溶液をMeOHで100倍に希釈したものを標準溶液とし、標準溶液を用いて試料溶液中の不純物を定量した。なお、データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った。(装置:Agilent 製LC-MSD 1100シリーズ)
【0042】
これらの試験結果を表2に示す。
【表2】


【0043】
試験例3 安定性の評価(2)
試料およそ5 mgを10 mLのガラス製メスフラスコに量り取り、以下の保存条件で過酷試験を行った。
条件1:5 ℃−遮光−密栓
条件2:40 ℃−相対湿度75%−開放
条件3:60 ℃−遮光−密栓
条件4:80 ℃−遮光−密栓
条件5:25 ℃−D65(1000 lux)−密栓
化学安定性:保存後の試料の入ったメスフラスコの標線までMeOHで満たし、溶解したものを試料溶液とし、試料溶液をMeOHで100倍希釈したものを標準溶液とし、標準溶液を用いて試料溶液中の不純物を定量した。なお、不純物の検出は210 nmのUVで行い、データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った。(装置:Agilent 製LC-MSD 1100シリーズ)
【0044】
これらの試験結果を表3に示す。
【表3】


【0045】
表2及び表3に示すとおり、公知化合物である化合物Aの塩酸塩は、保存により不純物が増加することが明らかとなった。特に、湿度(試験例2の条件2及び試験例3の条件2)、及び光(試験例2の条件3及び試験例3の条件5)に対する安定性が高くないことが明らかとなった。一方、表2及び表3に示すとおり、本発明の化合物Aの酸付加塩は、公知化合物である化合物Aの塩酸塩と比較して、保存による不純物の増加はほとんど認められず、物理化学的に非常に安定であり、医薬品又は医薬品原体としてより優れた性質を有することが確認された。なお、実施例4及び実施例6の化合物は融点が若干低いため、熱に対する安定性に関する試験である試験例2の条件1においては、融解したため若しくは融点付近での保存条件であったため、不純物の増加が認められたものと考えられる。
【0046】
試験例4 膀胱ムスカリンM3受容体に対する機能的親和性
Ikeda et al., 2002, Naunyn-Schmiedeberg’s Archives of Pharmacology, Vol.366, p.97-103の方法に基づき、被験化合物の膀胱ムスカリンM3受容体に対する機能的親和性を、細胞内Ca2+の変化を指標に測定した。以下、その方法を簡単に述べる。
上皮を除いたモルモット膀胱から平滑筋細胞を単離し、カルシウム感受性の蛍光色素であるFura2を付加し、さらに20 mM HEPES(pH 7.4)及び0.1%ウシ血清アルブミンを加えたフェノールレッドを含まないHanks緩衝液に懸濁した。細胞懸濁液の490 μLを持続的に攪拌しながら28 ℃に保温し、340 nmで励起したときの500 nmの蛍光の、380 nmで励起したときの500 nmの蛍光に対する比を観察した。それぞれの細胞懸濁液に5 μLの被験化合物とカルバコール溶液を続けて2分間隔で添加し、刺激直前からピークまでの増加分をデータ解析に用いた。50%刺激若しくは50%抑制に必要な濃度、即ちEC50若しくはIC50は、シグモイダルカーブを当てはめて求め、その後被験化合物のIC50値はカルバコールのEC50値に基づいてCheng-Prusoff方程式を使ってKi値に変換した。
その結果を表4に示す。
【表4】


上記に示すとおり、本発明の化合物Aの酸付加塩は、ムスカリンM3受容体に対して医薬として用いるために十分な親和性を有していることが明らかとなった。
【0047】
試験例5 麻酔マウスのカルバコール誘発膀胱収縮抑制作用
被験化合物の膀胱収縮に対する抑制作用の評価方法は以下の通りである。
体重30-35 gの雌性マウスを致死量よりやや低い用量のペントバルビタールナトリウム(75 mg/kg i.v.)で麻酔し、体温保持のため加温板上に仰向けに置いた。ポリエチレンカテーテル(PE10)を尿道から膀胱に留置し、尿道開口部に巾着縫合で固定した。大腿静脈には、薬液を3 mLの容量で注入するためのカテーテルを挿入した。膀胱カテーテルは三方活栓を介して圧トランスデューサーにつないだ。膀胱は、カテーテルを通じて尿を排出して空とし、およそ100 μLの生理食塩水で膨らませて膀胱内圧を測定した。
膀胱内圧が安定したあと、ムスカリン作動薬であるカルバコール10 μg/kgを15分若しくはそれ以上の間隔で投与した。この方法により、2時間の間、再現性をもって、全身状態の悪化を伴わずに膀胱収縮が起きた。三回のカルバコールへの反応を得たあと、被験化合物を投与した10分後にカルバコールを注入する操作を用量を増やして繰り返した。被験化合物当たり4乃至5匹のマウスを用い、化合物投与前の反応の抑制率を求め、50%抑制に必要な被験化合物の用量(ID50)を直線回帰分析で求めた。なお、律動的膀胱収縮を示すマウスはデータ解析に用いなかった。
その結果、実施例1の化合物のID50値は0.079 mg/kg、実施例4の化合物のID50値は0.090 mg/kg、実施例5の化合物のID50値は0.059 mg/kg、実施例7の化合物のID50値は0.050 mg/kg、実施例8の化合物のID50値は0.057 mg/kgであった。
以上の結果より、本発明の化合物Aの酸付加塩は、ムスカリン作動薬であるカルバコールにより誘発される膀胱収縮に対して、その抑制作用を有することが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】公知化合物である化合物Aの塩酸塩の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図2】実施例1の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図3】実施例2の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図4】実施例3の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図5】実施例4の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図6】実施例5の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図7】実施例5−1の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図8】実施例6の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図9】実施例7の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図10】実施例8の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図11】実施例9の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図12】実施例10の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図13】実施例11の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図14】実施例12の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図15】実施例13の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図16】実施例14の化合物の吸脱水等温曲線を示す図である。
【図17】実施例1の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図18】実施例2の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図19】実施例3の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図20】実施例4の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図21】実施例5の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図22】実施例5−1の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図23】実施例6の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図24】実施例7の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図25】実施例8の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図26】実施例9の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図27】実施例10の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図28】実施例11の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図29】実施例12の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図30】実施例13の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図31】実施例14の化合物の粉末X線回折スペクトルを示す図である。

特許の図
【出願人】 【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
【出願日】 平成17年3月25日(2005.3.25)
【代理人】 【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓

【識別番号】100109357
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 恵美子

【識別番号】100117846
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 ▲頼▼子
【公開番号】 特開2008−308406(P2008−308406A)
【公開日】 平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願番号】 特願2005−88872(P2005−88872)